• 戦闘

水斬り

マスター:湖欄黒江

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2014/11/21 22:00
リプレイ完成予定
2014/11/30 22:00

オープニング


 久々の休暇を与えられた、帝国軍兵士のエドガルとシュヴァルツヴェルト。
 しかし遠出をするには休みは短すぎ、駐屯地の近場の街で遊ぶにしても、お目当ての店は夜まで開かない。
 だからといって、昼間を丸々寝て潰すのはもったいないと、男ふたりで川釣りになど出かけてみる。

 広くゆったりと流れる川の岸辺に朝の10時から腰を下ろし、
 水に糸を垂らし始めて、ほんの1時間ほど経ったころ。
 エドガルが、一向に魚のかからない竿を見つめてぼやきいた。
「……たまの休みにさぁ。若い、健康な男ふたりが並んで座って、川辺でぼーっとしてるのってさぁ。
 どう思うよ、健康的たぁ言い難いね。もう止めにしねぇか」
「もう飽きたのか? まだ1時間ちょっとだぞ、それでほいほい魚の釣れる訳がないだろ」
「本当に釣れんのか、この川は……死んでんじゃねぇのか。街のすぐそばだし、工場もあるしよ」

 シュヴァルツヴェルトが、向こう岸近くに浮かぶボートのひとつを黙って指さした。
 そこでは老人が、ちょうど貧相な川魚1尾を針から外し、魚籠へ放り込んでいるところだった。
 エドガルが顔をしかめる。
「あんなショボイ魚の為に、日暮れまでここで頑張れってことか? え、からかってんのかおい」
 シュヴァルツヴェルトは飄々として、紙巻の煙草をくわえて火をつけた。頭を抱えるエドガル。
「ああ、こんな爺くせぇ野郎と付き合わねぇで、兵舎に残ってサイコロ転がしてるほうがマシだった」
「借金は返したのか? ヤンの奴、耳揃えてきっかり返すまでお前を賭場に入れない、って言ってたぞ」
「……」


 魚はかからない。やがて正午の日差しが、きらきらと川面を輝かせる。
 小春日和といったところで、あちこちを大きな平底・屋根つきの遊覧船が、
 今年最後の川遊びをしようとはしゃぐ客を乗せて流している。
 そばを通りがかった船から、暖かい茶の香りが漂ってくると、
「くそっ、金持ちどもが」
 エドガルが悪態をついて、優雅に船遊びを楽しむ紳士淑女方々をねめつける。
「俺ぁいつまでもヒラの兵隊なんざしてねぇぜ。
 元手ができたらよ、事業家になるんだ。ブルジョワんなってやる。
 で、ここらにぼーんとデカい工場作って排水流して、あの金満家どもみーんな追っ払った上で儲けてやるのさ」
「だったら博打で金をスるより、貯金に励んだほうが良いな」
「……煙草寄越せよ」

 煙草を回し呑みしながら、ふたりは竿を握ってただ待った。
 当たりの予感は全くない。さりとて他に行く場所もなく、金もなく、
 エドガルは広々とした川を足下に置いてなお、見えない何かに自分が閉じ込められていくような心地がした。

 いっそ荒事のひとつでも起きてくれたら、退屈しのぎになるのに。
 釣り人同士がボートをぶつけて喧嘩になるとか、
 あの屋形船のお上品なご婦人たちが男でも取り合って戦って、
 高いドレスをびりびりに破き合ったり、川に落ちたりとか……。

 そんなエドガルの望みが叶ったせいかは知らないが、兎に角トラブルは起こってくれた。


 向こう岸の林をかき分けて、薄緑色の物体が川縁へ現れた。
 エドガルとシュヴァルツヴェルトがその正体を見極めるより早く、
 金属的な、甲高い鳴き声を伴って物体が飛翔する。
 物体は1番手近にあった老人のボートへ着地すると、何かの武器を振るって老人を打ち落とした。
「おい、何だよアレ」
「――カマキリだ」

 シュヴァルツヴェルトの言う通り、物体の正体は、人間よりも大きなカマキリの化け物だった。
 林から同じ姿かたちの化け物が更に4匹現れて、一斉に耳障りな鳴き声を上げる。
 近くを行き交う他の船でも、乗客たちが異変に気づいて騒ぎ出した。
 老人のボートに乗った1匹が翅を広げ、もう1艘別のボートへ乗り移る。
 そちらの船頭が巨大な鎌で斬り殺され、血飛沫を上げると、ほうぼうの船でパニックが始まった。
 エドガルとシュヴァルツヴェルトも、自分でも気づかぬ内に竿を置いて立ち上がり、
 200メートルほど川向こうで起こった惨劇に身構えていた。
「やべぇんじゃねぇのか。おい、ありゃ雑魔だろ」
 次々と船を捨て、水中に飛び込む川遊びの客たち。
 それぞれの船頭たちは必死に櫂を漕ぐが、カマキリ型雑魔たちの金切り声に怯えて手がおぼつかない。
 挙句、川の中央を進んでいた幌つきの遊覧ボートからは、船頭が真っ先に飛び降りてしまった。
「野郎、手前の船を捨てやがって!」
「まずいぞ。子供が乗ってる」

 シュヴァルツヴェルトの言う通り、そのボートの幌の下では5~8歳くらいの子供が3人、
 辺りをきょろきょろと見回して、成す術もなくしている。


 エドガルはやおら軍用コートとその下の衣服を脱ぎ、靴を放って、ズボンのみの姿になった。
「溺れてる奴らは助けようにも手が足りねぇ、まずはあのガキどもんとこまで行く。後は出たとこ勝負だ」
「任せた、俺は泳ぎは駄目だから。とりあえず他に人手と……、
 土手の向こう側に商工会議所があったな? そこで分樹を借りて、ハンターを呼ぶよ」
「ハンター? ……ああ転移門があっからな、ウチの隊のボンクラ連中よりかは早く来るかね」
 早速川へ飛び込もうとするエドガルを、シュヴァルツヴェルトが制止する。
 彼は自分の荷物を漁ると、訝る相棒へ1丁の猟銃を手渡した。
 エドガルは銃のレバーを操作し、弾丸を薬室へ送り込むと、
「12番径か。弾は?」
「5号」
「鳥撃ちじゃねぇか」
「鴨でもいるかと思って」
「あのサイズが相手じゃ、石ころ投げんのと大差ないぜ……ま、あるもので我慢するしかねぇ」

 弾薬を濡らさぬよう、脱いだコートで銃を包んで持つと、エドガルは水に入っていった。
 遊覧ボートでは子供たちが泣き出している。周囲の水面でも、泳ぎの得意でない大人たちが溺れかかっている。
 幸い、雑魔はあまり長い距離を飛べないようで、途中のボートで立ち往生しているが――
 いつまでも待ってくれているとは思えない。

解説

 今回の依頼の目的は、川遊びのボートを襲うカマキリ型雑魔5体を討伐することです。

 雑魔は体長約2メートル。全身を硬い甲殻で覆われ、腕部の鎌や、顎を使って人間を襲います。
 翅による飛行能力を有していますが、飛行可能距離は1度に最大20メートル強(12スクエア)、
 速度は徒歩の場合の2倍程度となります。

 現在、此岸から彼岸まで幅約200メートル(100スクエア)の水上を、6艘のボートが漂流しています。
 ハンター到着時点の位置関係は以下(数値は全てスクエア単位、ボートはB1~6と表記しています)。

 【此岸―25―B1―30―B2―15―B3―10―B4―10―B5―5―B6―5―彼岸】

 此岸~B4までの水面にはそれぞれ1人ずつ、船から飛び降りた客が泳げずその場に留まっている他、
 B2の船には3人の子供とエドガルが乗っています。
 ボートの移動力は1とし、漕ぎ手のいないボートは1ラウンド毎、左右どちらかへ1スクエア移動します。
 敵は、ボートを1体につき1艘ずつ足場として順々に飛行を繰り返し、此岸側へ移動しようとします。
 水中に落下した場合、陸かボートに泳いで這い上がるまで飛行できません。
 また、飛行中の敵に射撃または遠距離の魔法攻撃を命中させた場合、水中に落下させることができます。

 エドガルはハンターの要請に従って船を漕いだり、泳いだりする他、
 猟銃による射程4~20スクエアの射撃を行うことができます。
 弾数は5発程度、雑魔に対して大きなダメージは与えられませんが、前述の撃ち落とし行動は可能となります。

 ハンターたちは全員、此岸から出発することになりますが、
 必要に応じて2人乗りボート(移動力1)を最大3艘まで借りることができます。
 ボートに乗らず、川を泳いで渡るキャラクターに対しては水中戦闘ルールが適用されます。

マスターより

 水場を舞台とした戦闘シナリオです。
 要救助者は皆、水の上ないしは水の中。
 敵はボートを行き渡って、身動きのできない人々に襲いかかります。
 装備やスキルを工夫し、かつ居合わせた帝国軍兵士の協力を得なければ、
 全員を無事に救出することはできないでしょう。
 犠牲者をこれ以上増やさぬよう、頑張って下さい!
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2014/11/26 22:34

参加者一覧

  • 戦闘鬼
    月架 尊(ka0114
    人間(蒼)|16才|男性|疾影士

  • ネグロ・ノーチェ(ka0237
    人間(紅)|17才|男性|猟撃士

  • 竜潜 神楽(ka1498
    エルフ|12才|女性|機導師
  • HappyTerror
    リオン(ka1757
    人間(蒼)|20才|女性|疾影士
  • 赤き大地の放浪者
    エアルドフリス(ka1856
    人間(紅)|30才|男性|魔術師

  • 堂島 龍哉(ka3390
    人間(蒼)|28才|男性|猟撃士
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/11/16 21:06:20
アイコン 作戦相談卓
月架 尊(ka0114
人間(リアルブルー)|16才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2014/11/21 21:03:18