ゲスト
(ka0000)
【天誓】精霊たちに安らぎの地を
マスター:ことね桃

このシナリオは5日間納期が延長されています。
- シナリオ形態
- ショート
関連ユニオン
APV- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在4人 / 3~4人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2017/10/27 15:00
- リプレイ完成予定
- 2017/11/10 15:00
オープニング
ゾンネンシュトラール帝国の帝都にそびえ立つ闘技場「コロッセオ・シングスピラ」。
かつて屈強な軍人や戦士たちが自らの武勇を示すために無数の戦いを繰り広げたこの施設には数え切れないほどの血と汗と涙がしみついている。
しかし大精霊サンデルマンの導きによりこの厳めしいコロッセオが精霊たちの仮住まいとして生まれ変わり、新たな局面を迎えていた。
このコロッセオ・シングスピラの外観は偉大にして優雅。しかしその内面は質実剛健を体現した合理性に満ち溢れる建造物である。
その威容に先日この闘技場に住まうことになった砂の精霊は『なんと勇壮な』と息を呑み、声を弾ませたという。
しかしこの機能美に満ちた構造物に慢性的な不満を持つ精霊がこのほど現れたのだ。
「此処ハトッテモ息苦シイノダワ!」
黒い毛並みと子犬の顔を持つ花の精霊フィー・フローレはその可愛らしい鼻を忌々しげにならした。
石造りの廊下は障害物となるであろう一切の飾りが取り払われ、綺麗に掃き清められている。
どこにいってもそうだ。無駄がなく、眩しいまでに清潔。
土にまみれながらも自然とともに生きてきた彼女にとって、それはとても不自由で窮屈なもののように思えて仕方がない。
そこで人間に文句のひとつでも言ってやろうかと思うものの、ここはあくまでも帝国軍管轄の施設。相手が帝国軍で相応の立場にある者と考えれば、会おうと考えるだけで身震いしてしまう。
「……ウゥ、ムシャクシャスル……」
フィーは肩をいからせながらも背を丸め、とぼとぼと与えられた自室に戻っていく。彼女の体を飾る白い花々も肩を落とすかのようにしょんぼりしぼんでいた。
そんな精霊の様子を柱の陰から静かに見つめる者がいた。コロッセオの美化を任されている若い帝国兵士アダムである。
「うーん、やっぱり自然精霊とここは相性が悪いのかなあ……」
精霊への敬意を示すため、精霊たちが寝静まっている間に徹底的な掃除を行っている彼。気持ちよく過ごしてもらえたらと思い、街で評判の絵や版画を飾ったり娯楽品を置いたりしているものの、精霊たちの反応は今ひとつだ。
「帝国軍人である俺が、ハンター以外の人間と精霊が交流を持つきっかけを作りたいと思うこと自体が傲慢なのかな……」
アダムは中庭に出ると、片隅に置いてある鉄の椅子に座りため息をついた。
中庭はかつて軍人たちの訓練に活用されていた場所で、中央に大きな木が植えられている以外は植物がなく、平らに均された砂地である。そこに砂がぞろりと集まると、たちまち大きな人の形を成した。
『どうした、若いの』
地を這うような低い声。この中庭に住み着いた砂の精霊グラン・ヴェルが現れたのだ。
「ああ、どうも。グランさん」
初めてこの精霊と会った際はその恐ろしげな巨体に驚いたものだが、何度か会ううちに意外なほどの気さくさに気づき、今では挨拶をかわすほどの仲になっている。
そんな精霊グランにアダムは今考えている不安を素直に口に出した。するとグランは顎を指先で撫でた後、迷いなく答える。
『ふむ。それは行き違いが起こっているのだろうな』
「行き違い?」
『ああ。我は元来闘争を好み、砂地に棲む者。だから戦士の血が染みた砂が満ちるこの地に住まうことはさほど苦ではない。しかし自然の中で長閑に過ごしていた者にとっては窮屈に感ずるのだろうよ。風にそよぐ草の香り、涼やかな水の音、土のぬくもり、その上に広がる無数の生命の営み……それらがこの地には欠けているのだからな』
「自然……ですか」
『お前は精霊に文化という名の喜びと娯楽を与えようとしたが、苛立った精霊はそれらをすぐに受け入れることができない。いや、この帝国の文化そのものがありのままの自然を拒み、都合良く変えるものであったな。我はお前の志を善なるものと信じるが……』
「……耳の痛い話です」
グランの声には抑揚がなく、その奥に秘められた感情を読み取ることができない。しかしアダムは胸を締め付けられるような思いに囚われ、俯いた。
『なあに、我々は全ての歪虚を討つまで耐えれば良いのだ。数百年を生きてきた我らにとって年月の流れなど一瞬の輝きに過ぎぬ。今はたしかに不快であれど、慣れれば苦にはならなくなるだろう』
「でも……俺はそれでもどうにかしたいと思うんですよ。帝国に住む精霊の皆さんは人間に含むものがありながら、それでも俺達と一緒に戦ってくれると決めてくださったんじゃないですか。だったらそれに少しでも応えたいって思うんですよ……」
アダムは悔しそうに呻く。そしてグランに小さく会釈すると再び通路に戻っていった。
『……頑張れよ、若いの』
グランは彫りの深い茶色の顔に僅かな笑みを浮かべると地面へと沈んでいった。
それから数日後のことである。
コロッセオの奥にある古い訓練所が建物の老朽化のために解体されることになった。
そこで解体後の土地の使い方を決めるべく、上官とともに現場を視察したアダムは思わず拳を握った。
(ここだ!)
土こそ肥沃ではないが使い道のない広い土地、若干傷んではいるが現役の水路、壁に囲まれ人の目から離れた立地。精霊が自由に羽を伸ばせる場所を作るとしたらここしかない。
彼は早速上官に精霊のための自然公園設営を提案した。とはいえ精霊が棲みやすさをしっかりと感じるようになるまでは数年どころか数十年の時が必要になるだろう。
もちろん上官は公園案の進言に難色を示したが、アダムの嘆願に根負けし、結果的に案のひとつとして帝国軍上層部へ送ることとなった。
……そして数日後自然公園案が驚くべき結末を迎えることとなった。なんと「やれるものならやってみたまえ」とサインされた皇帝陛下の書面が送られてきたのだから!
そこでアダムは有志を募り現場に向かう道すがら、ハンターオフィスに立ち寄る。
「もしかしたらハンターの中にも協力してくれる人がいるかもしれない。……どうか、精霊たちにとって良い縁があるように」
アダムは受付嬢に書面を手渡すと、足早に訓練所跡地へ向かうのだった。
かつて屈強な軍人や戦士たちが自らの武勇を示すために無数の戦いを繰り広げたこの施設には数え切れないほどの血と汗と涙がしみついている。
しかし大精霊サンデルマンの導きによりこの厳めしいコロッセオが精霊たちの仮住まいとして生まれ変わり、新たな局面を迎えていた。
このコロッセオ・シングスピラの外観は偉大にして優雅。しかしその内面は質実剛健を体現した合理性に満ち溢れる建造物である。
その威容に先日この闘技場に住まうことになった砂の精霊は『なんと勇壮な』と息を呑み、声を弾ませたという。
しかしこの機能美に満ちた構造物に慢性的な不満を持つ精霊がこのほど現れたのだ。
「此処ハトッテモ息苦シイノダワ!」
黒い毛並みと子犬の顔を持つ花の精霊フィー・フローレはその可愛らしい鼻を忌々しげにならした。
石造りの廊下は障害物となるであろう一切の飾りが取り払われ、綺麗に掃き清められている。
どこにいってもそうだ。無駄がなく、眩しいまでに清潔。
土にまみれながらも自然とともに生きてきた彼女にとって、それはとても不自由で窮屈なもののように思えて仕方がない。
そこで人間に文句のひとつでも言ってやろうかと思うものの、ここはあくまでも帝国軍管轄の施設。相手が帝国軍で相応の立場にある者と考えれば、会おうと考えるだけで身震いしてしまう。
「……ウゥ、ムシャクシャスル……」
フィーは肩をいからせながらも背を丸め、とぼとぼと与えられた自室に戻っていく。彼女の体を飾る白い花々も肩を落とすかのようにしょんぼりしぼんでいた。
そんな精霊の様子を柱の陰から静かに見つめる者がいた。コロッセオの美化を任されている若い帝国兵士アダムである。
「うーん、やっぱり自然精霊とここは相性が悪いのかなあ……」
精霊への敬意を示すため、精霊たちが寝静まっている間に徹底的な掃除を行っている彼。気持ちよく過ごしてもらえたらと思い、街で評判の絵や版画を飾ったり娯楽品を置いたりしているものの、精霊たちの反応は今ひとつだ。
「帝国軍人である俺が、ハンター以外の人間と精霊が交流を持つきっかけを作りたいと思うこと自体が傲慢なのかな……」
アダムは中庭に出ると、片隅に置いてある鉄の椅子に座りため息をついた。
中庭はかつて軍人たちの訓練に活用されていた場所で、中央に大きな木が植えられている以外は植物がなく、平らに均された砂地である。そこに砂がぞろりと集まると、たちまち大きな人の形を成した。
『どうした、若いの』
地を這うような低い声。この中庭に住み着いた砂の精霊グラン・ヴェルが現れたのだ。
「ああ、どうも。グランさん」
初めてこの精霊と会った際はその恐ろしげな巨体に驚いたものだが、何度か会ううちに意外なほどの気さくさに気づき、今では挨拶をかわすほどの仲になっている。
そんな精霊グランにアダムは今考えている不安を素直に口に出した。するとグランは顎を指先で撫でた後、迷いなく答える。
『ふむ。それは行き違いが起こっているのだろうな』
「行き違い?」
『ああ。我は元来闘争を好み、砂地に棲む者。だから戦士の血が染みた砂が満ちるこの地に住まうことはさほど苦ではない。しかし自然の中で長閑に過ごしていた者にとっては窮屈に感ずるのだろうよ。風にそよぐ草の香り、涼やかな水の音、土のぬくもり、その上に広がる無数の生命の営み……それらがこの地には欠けているのだからな』
「自然……ですか」
『お前は精霊に文化という名の喜びと娯楽を与えようとしたが、苛立った精霊はそれらをすぐに受け入れることができない。いや、この帝国の文化そのものがありのままの自然を拒み、都合良く変えるものであったな。我はお前の志を善なるものと信じるが……』
「……耳の痛い話です」
グランの声には抑揚がなく、その奥に秘められた感情を読み取ることができない。しかしアダムは胸を締め付けられるような思いに囚われ、俯いた。
『なあに、我々は全ての歪虚を討つまで耐えれば良いのだ。数百年を生きてきた我らにとって年月の流れなど一瞬の輝きに過ぎぬ。今はたしかに不快であれど、慣れれば苦にはならなくなるだろう』
「でも……俺はそれでもどうにかしたいと思うんですよ。帝国に住む精霊の皆さんは人間に含むものがありながら、それでも俺達と一緒に戦ってくれると決めてくださったんじゃないですか。だったらそれに少しでも応えたいって思うんですよ……」
アダムは悔しそうに呻く。そしてグランに小さく会釈すると再び通路に戻っていった。
『……頑張れよ、若いの』
グランは彫りの深い茶色の顔に僅かな笑みを浮かべると地面へと沈んでいった。
それから数日後のことである。
コロッセオの奥にある古い訓練所が建物の老朽化のために解体されることになった。
そこで解体後の土地の使い方を決めるべく、上官とともに現場を視察したアダムは思わず拳を握った。
(ここだ!)
土こそ肥沃ではないが使い道のない広い土地、若干傷んではいるが現役の水路、壁に囲まれ人の目から離れた立地。精霊が自由に羽を伸ばせる場所を作るとしたらここしかない。
彼は早速上官に精霊のための自然公園設営を提案した。とはいえ精霊が棲みやすさをしっかりと感じるようになるまでは数年どころか数十年の時が必要になるだろう。
もちろん上官は公園案の進言に難色を示したが、アダムの嘆願に根負けし、結果的に案のひとつとして帝国軍上層部へ送ることとなった。
……そして数日後自然公園案が驚くべき結末を迎えることとなった。なんと「やれるものならやってみたまえ」とサインされた皇帝陛下の書面が送られてきたのだから!
そこでアダムは有志を募り現場に向かう道すがら、ハンターオフィスに立ち寄る。
「もしかしたらハンターの中にも協力してくれる人がいるかもしれない。……どうか、精霊たちにとって良い縁があるように」
アダムは受付嬢に書面を手渡すと、足早に訓練所跡地へ向かうのだった。
解説
目的:
精霊の棲みやすい空間を精霊たちと協力して作る。
場所:
コロッセオの奥にある旧訓練所。
50スクエア四方の広さがあり、前日に施設の類は解体されています。
現在は木と煉瓦の壁に囲まれた野原といった状態。
あとはどのように環境(水場や植物など)を整えるかを考えるだけです。
木や煉瓦などの資材はコロッセオで用意しておりますので、ベンチや花壇などを設置することも可能です。
お手伝いNPC:
アダム
帝国軍人。24歳。男。
コロッセオの美化を担当している軍人。
今回のプランの責任者となりました。
精霊と人間が仲良くなるようにできたらいいな、と思っています。
ただしグランの言葉が胸に突き刺さっているようで、今回のプランについては精霊主導でと考えているようです。
道や水路の整備など地道な作業についてはアダムに提案することで、後日帝国兵の有志がやってくれるそうです。
砂の精霊グラン・ヴェル
強面だけどなんだかんだで気のいい精霊。身長4m。
今回は木を植えたり土の入れ替えなどの力仕事を頑張るそうです。
彼の過去につきましては拙作「大剛の砂精霊」にて。
花の精霊フィー・フローレ
どう見てもコボルドですが精霊です。身長1m。
今回はお花の種を蒔いたり、植物に元気を与えたりするそうです。
帝国の軍人とはまともにコミュニケーションできませんが、ハンターに対しては態度がやわらかめ。
彼女の過去につきましては拙作「野菊の少女と薔薇色の牙」にて。
他にも精霊の有志が数体遊びに来るようです。
ハンターにかくれんぼや鬼ごっこといった簡単な遊びを求めてくることも……あるかも?
精霊の棲みやすい空間を精霊たちと協力して作る。
場所:
コロッセオの奥にある旧訓練所。
50スクエア四方の広さがあり、前日に施設の類は解体されています。
現在は木と煉瓦の壁に囲まれた野原といった状態。
あとはどのように環境(水場や植物など)を整えるかを考えるだけです。
木や煉瓦などの資材はコロッセオで用意しておりますので、ベンチや花壇などを設置することも可能です。
お手伝いNPC:
アダム
帝国軍人。24歳。男。
コロッセオの美化を担当している軍人。
今回のプランの責任者となりました。
精霊と人間が仲良くなるようにできたらいいな、と思っています。
ただしグランの言葉が胸に突き刺さっているようで、今回のプランについては精霊主導でと考えているようです。
道や水路の整備など地道な作業についてはアダムに提案することで、後日帝国兵の有志がやってくれるそうです。
砂の精霊グラン・ヴェル
強面だけどなんだかんだで気のいい精霊。身長4m。
今回は木を植えたり土の入れ替えなどの力仕事を頑張るそうです。
彼の過去につきましては拙作「大剛の砂精霊」にて。
花の精霊フィー・フローレ
どう見てもコボルドですが精霊です。身長1m。
今回はお花の種を蒔いたり、植物に元気を与えたりするそうです。
帝国の軍人とはまともにコミュニケーションできませんが、ハンターに対しては態度がやわらかめ。
彼女の過去につきましては拙作「野菊の少女と薔薇色の牙」にて。
他にも精霊の有志が数体遊びに来るようです。
ハンターにかくれんぼや鬼ごっこといった簡単な遊びを求めてくることも……あるかも?
マスターより
こんにちは!
新人なんですが帝国関連のシナリオが連続で4本目となりました。
もはや帝国の駄犬ことね桃です。
今回は帝国の精霊の保護活動の裏を描く! というとなんだかすごそうな話ですが、
実際は精霊さんの遊び場を精霊さんと交流しながら作ろう! というまったりシナリオです。
公園が完成するのはもっと後の話、今回は完成にむけて道筋をつけるまでのお話ですのでお気軽にどうぞ。
精霊が住みやすく、人も交わっていけるような、そんな素敵な自然公園ができるよう手伝ってくださる方。
精霊とちょっと交流してみたいとお考えの方。
レベル・クラス不問。アイデア大歓迎ですのでぜひぜひよろしくお願いします!
新人なんですが帝国関連のシナリオが連続で4本目となりました。
もはや帝国の駄犬ことね桃です。
今回は帝国の精霊の保護活動の裏を描く! というとなんだかすごそうな話ですが、
実際は精霊さんの遊び場を精霊さんと交流しながら作ろう! というまったりシナリオです。
公園が完成するのはもっと後の話、今回は完成にむけて道筋をつけるまでのお話ですのでお気軽にどうぞ。
精霊が住みやすく、人も交わっていけるような、そんな素敵な自然公園ができるよう手伝ってくださる方。
精霊とちょっと交流してみたいとお考えの方。
レベル・クラス不問。アイデア大歓迎ですのでぜひぜひよろしくお願いします!
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2017/11/10 21:31
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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![]() |
新しい精霊の棲家のご相談 エステル・クレティエ(ka3783) 人間(クリムゾンウェスト)|17才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2017/10/26 21:30:46 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/10/25 01:45:01 |