• 無し

王都第七街区 暴走ゴーレム、鎮圧

マスター:柏木雄馬

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在8人 / 4~8人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2017/11/09 22:00
リプレイ完成予定
2017/11/18 22:00

オープニング

 王都第六城壁の外に広がる難民街。通称『第七街区』── その中でも南門にほど近い『ドゥブレー地区』と呼ばれるエリアは空前の好景気に沸いていた。
 第七城壁の建設と上水道の整備──二つの公共事業によって、難民街に金が回り始めたのだ。更に、これまで老舗の大商人たちによって煮え湯を飲まされ続けてきた第五、第六街区といった新興の商人たちが、まだ何らしがらみのないこの地に地盤を築こうと我先に参入し、採算を度外視した初期投資によりその流れを加速する。
 第二・第三街区の大商人たちはその図体のでかさが災いして完全に出遅れた。だが、慌てはしなかった。彼らの商売の規模から言えばそれはまだ小さな市場であったし……それに、彼らには彼らなりの商売の仕方というものがある。

「この第七街区の土木現場にGnomeを導入するというのはどうだろう?」
 地区の『自治』を王国より委任されている『地域の実力者』ドニ・ドゥブレーの元を久方ぶりに訪れた『復興担当官』ルパート・J・グローヴァーは、挨拶もそこそこにいきなりそんなことを切り出した。
「なに、初期費用については心配いらない。機体は買取ではなくお得なリース。しかも今なら国から補助金も出る」
 鼻息荒いルパートに対して、ドニはのらりくらりと言質を与えぬまま会談をやり過ごした。そして、不満顔のルパートを宥め脅しつつ事務所から送り出す。
「……どうやらだいぶ鼻薬を嗅がされたようですね」
「担当官殿に指金を差した連中は、現場に派遣するGnomeを一括管理することで利益を得ようって腹か、或いはGnomeという未知の『商品』を扱うノウハウを得る事が目的か…… ともかく、それを成し得るだけの大手資本だ」
 ドニの言葉に、ノーサム商会の『番頭』、ジャック・ウェラーは露骨に顔をしかめた。ノーサム商会のオーナーは第七街区に出店する王都の新興商人たちの連合体『商人連合』の筆頭理事を務めている。
「……都合の良い連中です。第七街区の市場をここまで育てたのは私たちなのに、今頃来てその上前を撥ねようとは」
 ジャックの言葉にドニは内心、肩を竦めた。「皆と共に繁栄を」と連合の理念を謳いながら、商会がその実、裏では第七街区の商売を独占しようと、色々と汚い小細工を弄していることにドニはとっくに気づいている。
「……まぁ、あんなものが導入されて困るのは俺も同じだがな。城壁と水路の建設は『公共事業』──この貧しい第七街区の連中に金を回すのが目的だ。ただ作業を効率化すれば良いって話でもねぇ」

 数日後──
 ルパートに鼻薬を嗅がせた黒幕が次の手を打ってきた。
 この時期に行われるエクラ教の祭典──その祭りの出し物の目玉として、ゴーレムを使ったパレードとパフォーマンスを行う旨、ルパートを通して申請してきたのだ。
(……お題目が何にせよ、それが出資者に対するデモンストレーションであることは明らかだ。「あんな凄いものを何故導入しないのか」──利に敏い出資者連中にそう言われたら断り切れねぇ。そうでなくとも、導入派と反対派、それぞれの利益に基づいて連合は真っ二つに割れる……)
 それが分かっていても尚、直接の上役たる復興担当官に「祭りの余興」と言われてしまえばドニに断る術はない……

 祭りの当日──
 目抜き通りで最も賑わう広小路の『舞台』に、鼓笛隊に先導されながら、カボチャの頭を乗っけた2台のノームが、それぞれ子供たちを乗せた巨大リアカーを曳きながら、手を振り、通りを練り歩きながら到着した。
 舞台の周りに仮設した階段状の観客席は既に人でいっぱいになっていて、座り切れなかった観客たちが辺りで立ち見を決め込んでいた。周囲の建物の二階や屋上にも人が鈴なりになっている。
「やぁ、やぁ、どうもどうも」
 招待客として観覧席へ赴いたドニに、貴賓席に座ったルパートが片手を上げてそう得意満面に挨拶をした。内面で苦虫を噛み潰しながら、一切表には出さずにドニが会釈を返した。
「貴方がドニ・ドゥブレー? 一度お会いしたかった」
 ルパートの隣に座った壮年の男が立ち上がり、ドニに声を掛けて来た。……この男が『差し金』だろうか? 痩身だがそれと感じさせない程、体格はいい。威圧的ではないくらいの威厳── 恐らくは実績から来ているのであろう自然な自信を身に着けている。
「お話は後程。今は出し物が始まってしまいますから」
 歌劇の席が密儀の場、というのはよくある話だ。それと知りながら、ドニは席につくと『舞台』に向き直った。……ルパートの紹介となれば会談は避けられない。だが、何もかも向こうの思惑通りというのは、何と言うか、そう、気に喰わない。
 ゴーレムを使った催し物は、どうやら役者たちとの共演による『演劇』のようだった。王国には猛獣を使った芝居仕立ての出し物があるが、それのゴーレム版といったところだろうか。
 話のモチーフは、王国の民の多くが知るおとぎ話の建国神話。当時、まだ一都市国家に過ぎなかったイルダーナのグラハム家が、新興宗教として弾圧されていたエクラ教徒たちを匿ったことで敵国の大軍に城を包囲されながら、大精霊に遣わされた聖女の助けを受けながら、遂には敵軍を打ち破り、後の大グラズヘイム王国へと繋がっていく物語だ。
 ……劇が始まった。子供たちが退屈せぬよう、コミカルな歌劇とサーカス的演出とを織り交ぜながら劇は進み……やがて、物語はいよいよクライマックス──王と敵将との一騎打ちの場面へ続く。
 事件が起こったのはその時だった。
 王と敵将の役を担ったゴーレム2台──事前に入力してあった刻令術に従い、巨大な木剣を打ち合わせていた彼らの内の1台が、突如、眼前の1台に組み付くという、事前の指示にはない挙動を取ったのだ。
「おい、どうした、コマンドに従え!」
 焦りつつも有線コントローラーに停止命令を入力する黒子の操縦者。だが、暴走する機体は、倒れながら既定の行動を繰り返すもう1台を馬乗りになって破壊して…… 劇の一部だと思って歓声を上げていた観客たちも、そのおかしな様子に気付いてザワつき始める。
「これはいったい……!?」
 お前の仕業か、と目で訊ねて来るルパートにドニが急ぎ首を横に振った。だが、同時に、その脳裏にはノーサム商会番頭のしたり顔が浮かび上がっている。
「チッ、嫌な予感ばかりが当たっちまう……!」
 ドニはそう舌を打つと、『あらかじめ手渡されていた』魔導電話を手に取った。そして、指示された操作に従い……こんなこともあろうかと彼が事前に雇っておいたハンターたちへ連絡を取る。
「……案の定だった。予定通り『乱入』してくれ」
 了解、という短い返事の直後…… 周囲の観客席から舞台に飛び出すハンターたち。
 新たな敵の出現を察知した暴走ゴーレムが、そちらに対して向き直った。

解説

1.状況と目的
 状況はOP本文の通り。地区の目抜き通りの広小路に仮設された『劇場』にて行われていた演劇の出し物で、出演していた刻令ゴーレムの1台が突如、暴走状態に相成りました。
 PCは、王都第七街区『ドゥブレー地区』の『地域の実力者』ドニに祭りの警備として雇われた、或いはボランティア等で祭りに参加していたハンターの一人となります。
 ドニの指示に従って『舞台』へと乱入し、件の暴走ゴーレムを破壊して事態を収拾してください。
 柏木分類『戦闘系』&『戦術系』。敵の撃破がシナリオの最低条件となります。

2.戦場
 第七街区ドゥブレー地区の目抜き通りの広小路。円形の広い環状交差点が祭りの仮設の舞台となっている。
 外周部には階段状に設営された仮設の観客席。人込みについては本文参照。北側中央の道路部分だけ観客席もなく出入り口として空いている。
 南側中央部、中段辺りは貴賓席。ドニ、ルパート、痩身の男らはここにいる。
 舞台の中央部には破壊された別のゴーレムが擱座している。
 観客たちは違和感を感じつつもまだ劇が継続していると思っている。

3.敵
暴走ゴーレム×1
 何らかの理由で暴走状態にある刻令ゴーレム。デモンストレーション用に改造された高レベル機(能力は柏木が再設定)
 暴走原因は不明。市販ゴーレムの刻令術の自律行動部分は潰されており、暴走することはないのだが……
 攻撃手段は石の身体による殴る蹴る。遺跡の中で遭遇する戦闘用ゴーレムの様な素早い動き。初期状態で得物は装備してないが……
 離れた所に対する攻撃手段は無いはずではあるが……
 通常、観客席を攻撃目標にすることはない。が、(例えば失敗条件の一つを満たした時の様な)とある状況下になると舞台外へも攻撃を開始するようになる。

マスターより

 ををっ、なんだか久しぶりの第七街区もの……! こんばんわ、柏木雄馬です。
 最近、シナリオが夜公開になることが多いことに気付き、挨拶をこんばんわに変えてみました。いえ、OPをいつ見るかは皆様次第なのであまり意味はないのですが…… うーん、では、その時の柏木の気分次第ということで!
 というわけで、繰り返しになりますがお久しぶりの第七街区ものです。ここまでドゥブレー地区が発展したのは皆様のお陰です。改めましてよろしくお願い致します。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2017/11/16 20:32

参加者一覧

  • 課せられた罰の先に
    クオン・サガラ(ka0018
    人間(蒼)|25才|男性|機導師
  • 黒猫とパイルバンカー
    葛音 水月(ka1895
    人間(蒼)|19才|男性|疾影士
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • 星を傾く者
    サクラ・エルフリード(ka2598
    人間(紅)|15才|女性|聖導士
  • 交渉人
    J・D(ka3351
    エルフ|26才|男性|猟撃士

  • ルネ(ka4202
    エルフ|16才|女性|聖導士

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人
  • 焔は絶えず
    ウルミラ(ka6896
    ドラグーン|22才|女性|霊闘士
依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
J・D(ka3351
エルフ|26才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2017/11/08 23:15:13
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/11/08 19:45:50