ゲスト
(ka0000)
誰も知らない
マスター:守崎志野

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 3~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2017/12/01 19:00
- リプレイ完成予定
- 2017/12/10 19:00
オープニング
●
光あるところに影がある、とはよく言ったものだ。
『蒼の英雄』の再来を思わせる、覚醒した転移者達の戦いは人々に語られ広まっていく。
その一方で精霊に認められることも無くハンターにもなれず、寄る辺も無く彷徨い、或いは戦闘や犯罪に巻き込まれて死んでいく転移者達はどうだろうか。
見送る者も語る者も無いままに恨みを呑み、虚しさを抱いて異郷に消えた者がどれだけいたのか、知る者はいない。
「今年は良い出来だったな」
麦を収穫する手を止めた壮年の男が感慨深く辺りを見回した。
周囲を囲む柵の内側には複数の種類が植え付けられた豆や麦の畑、そして住居や作業場として使われる小屋が幾つも建てられ、日が暮れるまでにと収穫作業や作付け、乾燥などの作業に勤しむ二十人程の人々。
男性も女性も、そして少数だが子供もいる。皆、元を正せば覚醒することの無かった転移者だ。
『捨てるつもりの命なら、私に預けて戴けませんか?』
いきなりの環境変化を受け入れられず、野垂れ死に寸前だった男にそんな言葉を掛けたのは要塞都市に小さな店を持つ商人だった。
自分もリアルブルーからの転移者であり、非覚醒者だとその商人は言った。
辺境は危険な未開地だが、それだけに可能性に満ちている。そして食料自給率が低い為に農作物には価値がある。
そのままでは無理でも、リアルブルーでは当たり前に行われている品種や土壌の改良を始め様々な知識や技術を使えば辺境を豊かな地に変えることも可能では無いか、と。
その時はどうせ死ぬだけならと捨て鉢な気持ちでここに来たのだが、自分達の努力が小さくとも形になっていく内に何処か変わり始めていた。
「このままここで生きていくのも悪くないかもしれないな」
「正気?」
男の呟きに、十代半ばの少女が零した。
「今は平穏無事でも、明日はわからないじゃないか」
吐き捨てるような口調だが、男が不快になることは無かった。
ここに来る前に余程酷い目に遭ったのか、当初少女は死んだ目をして一言も口を利かず、人から言われるままに動くだけの人形のようだった。だが、今は自分の思いを自分から口にするようになっている。
「パンが焼き上がりましたよぅ!」
その声に我に返ると、小屋の一つからお腹の大きな女性が手を振っていた。
明日のことはわからない。それでも作物が実り、新しい命が宿る。
今行く、と答えようとした瞬間。
「がっ!」
声は言葉にならなかった。
何が起こったのかと見開いた目に映ったのは自分に突き刺さった矢羽根と柵を破って来る辺境の部族、そして迫ってくる刃の鈍い光だった。
●
こんなことをして何になる。
八つ当たりに過ぎないでは無いか。
襲撃者達の心の底に在ったささやかな理性の声は、血の色を見た時に塗りつぶされて代わりに異様な高揚感が取って代わる。
何が蒼の英雄だ、奴らが歪虚を連れてきたのだ。
その証拠に転移者が増える程に歪虚が増えて行くではないか。
それに、奴らはこの土地に踏み込んで雑魔に襲われることすら無くのうのうと作物を食み、暮らしている。
奴らが歪虚と繋がっているからだ。
自分達は戦いの果てに同族も土地も失い、体力の弱い子供から飢えと病で次々と倒れ、今や滅ぶのを待つだけというのに!
だから、これは無辜の民に対する虐殺などでは無い。正しい戦いなのだ。
殺せ、歪虚の手先共を滅ぼせ!
抵抗する者は勿論、逃げようとする者や命乞いをする者、子供だけはと庇う女性にも容赦なく刃を振るい、棍棒を打ち下ろす。
その有様を、小屋の一つから上がった火の手が赤々と照らし出した。
●
ああ、やっぱり。結局こうなるんだ。
自分より年下の子を二人抱えて小屋の奥に隠れた少女は唇を噛んだ。
勝手な期待と失望に翻弄され、親切ごかしの人間に裏切られ、やっとそんなものとは縁遠いところに来たと思ったら今度はこれだ。
もう、聞き覚えのある声は聞こえない。
穏やかに自分の話を聞いてくれた男も、大きなお腹を抱えてパンを焼いた女も殺されたのだろう。
どうしてあの人達が殺されなければならなかった?
悔しい、恨めしい。
けれど自分は二人を抱えて息を殺していることしか出来ないのだ。
歪虚が人間の敵?とんでもない。
人を喰らうのは人間ではないか。
人間の敵は『人間』だ。
自分もこの子達もきっともうすぐ殺され、奴らは何事も無かったように人として生き延びるのだろう。
誰にも、何も、知られること無く。
●
やがて日が落ち、炎が集落を照らす。
商人から雑魔の発生を早期に警戒すべく巡回を依頼され、特に問題を見つけること無く依頼を終えようとしていたハンター達がその集落に通りがかったのはそんな時だった。
光あるところに影がある、とはよく言ったものだ。
『蒼の英雄』の再来を思わせる、覚醒した転移者達の戦いは人々に語られ広まっていく。
その一方で精霊に認められることも無くハンターにもなれず、寄る辺も無く彷徨い、或いは戦闘や犯罪に巻き込まれて死んでいく転移者達はどうだろうか。
見送る者も語る者も無いままに恨みを呑み、虚しさを抱いて異郷に消えた者がどれだけいたのか、知る者はいない。
「今年は良い出来だったな」
麦を収穫する手を止めた壮年の男が感慨深く辺りを見回した。
周囲を囲む柵の内側には複数の種類が植え付けられた豆や麦の畑、そして住居や作業場として使われる小屋が幾つも建てられ、日が暮れるまでにと収穫作業や作付け、乾燥などの作業に勤しむ二十人程の人々。
男性も女性も、そして少数だが子供もいる。皆、元を正せば覚醒することの無かった転移者だ。
『捨てるつもりの命なら、私に預けて戴けませんか?』
いきなりの環境変化を受け入れられず、野垂れ死に寸前だった男にそんな言葉を掛けたのは要塞都市に小さな店を持つ商人だった。
自分もリアルブルーからの転移者であり、非覚醒者だとその商人は言った。
辺境は危険な未開地だが、それだけに可能性に満ちている。そして食料自給率が低い為に農作物には価値がある。
そのままでは無理でも、リアルブルーでは当たり前に行われている品種や土壌の改良を始め様々な知識や技術を使えば辺境を豊かな地に変えることも可能では無いか、と。
その時はどうせ死ぬだけならと捨て鉢な気持ちでここに来たのだが、自分達の努力が小さくとも形になっていく内に何処か変わり始めていた。
「このままここで生きていくのも悪くないかもしれないな」
「正気?」
男の呟きに、十代半ばの少女が零した。
「今は平穏無事でも、明日はわからないじゃないか」
吐き捨てるような口調だが、男が不快になることは無かった。
ここに来る前に余程酷い目に遭ったのか、当初少女は死んだ目をして一言も口を利かず、人から言われるままに動くだけの人形のようだった。だが、今は自分の思いを自分から口にするようになっている。
「パンが焼き上がりましたよぅ!」
その声に我に返ると、小屋の一つからお腹の大きな女性が手を振っていた。
明日のことはわからない。それでも作物が実り、新しい命が宿る。
今行く、と答えようとした瞬間。
「がっ!」
声は言葉にならなかった。
何が起こったのかと見開いた目に映ったのは自分に突き刺さった矢羽根と柵を破って来る辺境の部族、そして迫ってくる刃の鈍い光だった。
●
こんなことをして何になる。
八つ当たりに過ぎないでは無いか。
襲撃者達の心の底に在ったささやかな理性の声は、血の色を見た時に塗りつぶされて代わりに異様な高揚感が取って代わる。
何が蒼の英雄だ、奴らが歪虚を連れてきたのだ。
その証拠に転移者が増える程に歪虚が増えて行くではないか。
それに、奴らはこの土地に踏み込んで雑魔に襲われることすら無くのうのうと作物を食み、暮らしている。
奴らが歪虚と繋がっているからだ。
自分達は戦いの果てに同族も土地も失い、体力の弱い子供から飢えと病で次々と倒れ、今や滅ぶのを待つだけというのに!
だから、これは無辜の民に対する虐殺などでは無い。正しい戦いなのだ。
殺せ、歪虚の手先共を滅ぼせ!
抵抗する者は勿論、逃げようとする者や命乞いをする者、子供だけはと庇う女性にも容赦なく刃を振るい、棍棒を打ち下ろす。
その有様を、小屋の一つから上がった火の手が赤々と照らし出した。
●
ああ、やっぱり。結局こうなるんだ。
自分より年下の子を二人抱えて小屋の奥に隠れた少女は唇を噛んだ。
勝手な期待と失望に翻弄され、親切ごかしの人間に裏切られ、やっとそんなものとは縁遠いところに来たと思ったら今度はこれだ。
もう、聞き覚えのある声は聞こえない。
穏やかに自分の話を聞いてくれた男も、大きなお腹を抱えてパンを焼いた女も殺されたのだろう。
どうしてあの人達が殺されなければならなかった?
悔しい、恨めしい。
けれど自分は二人を抱えて息を殺していることしか出来ないのだ。
歪虚が人間の敵?とんでもない。
人を喰らうのは人間ではないか。
人間の敵は『人間』だ。
自分もこの子達もきっともうすぐ殺され、奴らは何事も無かったように人として生き延びるのだろう。
誰にも、何も、知られること無く。
●
やがて日が落ち、炎が集落を照らす。
商人から雑魔の発生を早期に警戒すべく巡回を依頼され、特に問題を見つけること無く依頼を終えようとしていたハンター達がその集落に通りがかったのはそんな時だった。
解説
目的:生存者から事態に関する証言を得る
場所:緩やかな傾斜地に囲まれた盆地にある小さな開拓集落
かつては周辺で放牧をしていた少数部族がいたが、その部族が歪虚との戦いや貧困から崩壊・離散した後、
土地は放置されていた
状況:既に日が落ちているので柵の外側は暗い
集落内は小屋を燃やす火で照らされており、気付かれずに外側から様子を見ることが出来る
畑の間に十五軒程度の小屋が点在し、半数が燃えている
収穫を終えた畑や燃える小屋の入り口には十数体の遺体が放置され
襲撃者達はまだ燃えていない小屋に押し入って収穫物を持ち出しては火を付けている(人数は五人確認できる)
生存者の姿は見当たらないが商人から聞いた人数よりも遺体の数がやや少ない
襲撃者は崩壊した少数部族の生き残りで、普通の人間(非覚醒者)
武器を持っているが質が悪い上に手入れも満足にされていない
やつれた様子もあり、ハンターがまともに戦えば取るに足らない程度の戦力
歪虚の気配は無い
場所:緩やかな傾斜地に囲まれた盆地にある小さな開拓集落
かつては周辺で放牧をしていた少数部族がいたが、その部族が歪虚との戦いや貧困から崩壊・離散した後、
土地は放置されていた
状況:既に日が落ちているので柵の外側は暗い
集落内は小屋を燃やす火で照らされており、気付かれずに外側から様子を見ることが出来る
畑の間に十五軒程度の小屋が点在し、半数が燃えている
収穫を終えた畑や燃える小屋の入り口には十数体の遺体が放置され
襲撃者達はまだ燃えていない小屋に押し入って収穫物を持ち出しては火を付けている(人数は五人確認できる)
生存者の姿は見当たらないが商人から聞いた人数よりも遺体の数がやや少ない
襲撃者は崩壊した少数部族の生き残りで、普通の人間(非覚醒者)
武器を持っているが質が悪い上に手入れも満足にされていない
やつれた様子もあり、ハンターがまともに戦えば取るに足らない程度の戦力
歪虚の気配は無い
マスターより
Fでは初めまして、守崎志野と申します。
歪虚の侵攻という大きな災厄の前では顧みられることも無く忘れられて行くであろう小さな出来事。
華やかな戦いとも輝かしい名誉とも無縁な、名も無き人々のありふれた悲劇。
それが目の前にあったとしたら?
襲撃者の制圧を優先するか、生き残った開拓者の救助を優先するか、方法は自由です。
ご縁がありましたらよろしくお願いします。
歪虚の侵攻という大きな災厄の前では顧みられることも無く忘れられて行くであろう小さな出来事。
華やかな戦いとも輝かしい名誉とも無縁な、名も無き人々のありふれた悲劇。
それが目の前にあったとしたら?
襲撃者の制圧を優先するか、生き残った開拓者の救助を優先するか、方法は自由です。
ご縁がありましたらよろしくお願いします。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2017/12/11 10:20
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 J・D(ka3351) エルフ|26才|男性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2017/12/01 15:29:03 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/11/28 00:01:52 |