• 無し

演想──好感と反感

マスター:凪池シリル

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在5人 / 3~5人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2017/12/02 09:00
リプレイ完成予定
2017/12/11 09:00

オープニング

「すみません! すみません! 先ほど舞台に出ていたの貴方ですよね!?」
 伊佐美 透(kz0243)が、チャリティーの、あの舞台の後、適当に会場を歩いていた時だ。向けられた声に振り向くと、駆け寄ってくる男性がいた。四十代か五十代だろうか。体系も顔立ちも丸っこく、柔和な笑みを浮かべている。
「……すみません。実は私こういうものでして」
 男はすっと名刺を差し出してきた。
『イベント企画・運営 (株)ゼロエンゲージ 代表取締役 中橋源二』
「私、今日この場所へは、まさにハンターが来ると聞いてやってきたのです! ハンター、ひいては異世界からの来訪者! この存在が持つ魅力を、もっと効果的かつ恒常的にこの世界に発信できないかと!」
 男──中橋源二、なのだろう──は、ずずいっと詰め寄ってきて、両手を掲げながら高らかに言った。
「つまり、再演や別公演の心づもりはありませんかとお話ししたい訳ですよ!」
「……。いえその。正直、今日のような突発企画ではなく、計画立ててそれを実行するのは難しいかなと思ってるんですが。色々……」
「成程──しかし、二世界の間で協力し合う者が互いに居るのであれば、そこに工夫の余地はありませんかね?」
 考え込む源二を、ただ突っ立って見ているしかできなかった。
 ──正直、まさかいきなりこんな話が舞い込んでくるとまでは、予想していなかった。
 ただ、いつかきちんとこの世界に戻ってくることが叶った時に、再びこの世界に溶け込めるのが少しでも早くなるように、とか、まだその程度のつもりで。
 ああ、そうだ。それから。本格的にそういう事になるなら、何より先に筋を通さねばならない場所も、有るし。
「いや、まあ、そうですな。失礼。さすがに今私の話だけでこの場で私を信じてすぐ返事をしろと言うのも確かに無理難題ですな」
 無言のままの透に何を思ったのか、源二は落ち着きを取り戻してそう言った。実際、知らない会社をすぐに信用は出来ないというのも事実だ。
「その名刺はぜひお持ちください。もし興味がありましたら、秋葉原にお立ち寄りが可能な際にいつでも寄っていただければ」

 帰還した後日。クリムゾンウェストでの自室。名刺を弄びながら、ゆっくりとあの日のことを思い返す。舞台に立った、その想いと共に。
 ──久々に舞台に立ったその時、ずっと眠らせていた歯車がきちんと回っていくのを、確かに感じた。
 演技したい、という想い、形に、自分の声は、手足は思った以上にちゃんと応えてくれた。だが、歯車からは軋んだ音も聞こえた。このまま時間を置けばまた錆び付くだろうとも。
 ……また演じたい。その想いは偽れない。
 しかし。
「秋葉原にお立ち寄りが可能な際……な……」
 現状、その可能性として最も起こりうるのは。
 リアルブルーにVOIDが出現することである。
 分かってはいたが。そもそも、元の事務所に連絡を取ろうと思った時にも考えたことではあるが。
「まあやっぱり、故郷に戻るためには、故郷に異変が起きる必要があるってのは、しんどい話だよな」
 あまりにも痛ましい異変、それに深く傷ついた人を見てきただけに。こうして下手に強く意識してしまうと、リアルブルー出身のハンターの現状はやはり、やりきれないものがある。
「それでも……覚悟して踏み出した、一歩なんだ」
 別に望むわけじゃない。今それはまだ、ほっといても起こりうるものなのだ。そう言い聞かせて。透はハンターオフィスで連日それを、待った。



 千葉県幕張付近に出現した狂気の退治。他に周辺にVOID勢の活発な動きは認められず、おそらくはぐれ個体が海上から上陸したものと思われる。ただし海上に既に増援となりそうな狂気は発見されない。周辺住民の避難の完全に完了されたと確認次第、海浜幕張公園を拠点として散開する各個体を捜索し発見次第これを撃破のこと。二十代前半ほどと思われる軍服の青年──高瀬という名字と階級だけ名乗り、強化人間であると告げた──は、冷淡な態度を露わにハンターたちに告げた。
 作戦概要を読み上げた後、高瀬少尉は作戦に参加するハンターの資料を捲り始めた。もともと不機嫌そうな顔にさらに、片眉が吊り上がる。
「……小耳にはさんだのですが」
 そして、はっきりと自分に向けて話しかけられたことに透はぎょっとする。
「先日神奈川の方で舞台を演じたハンターと言うのは貴方ですか」
「はい……そうですが何か」
 似たようなやり取りしたばっかりの記憶があるなあと内心思った。あの時とは温度感が真逆だが。
「何か、と言われるならば。目障りです」
「……」
 流石に余りにもきっぱり言われすぎて絶句した。
「リアルブルーのことはリアルブルーの力で守ります。今後こちらでの戦局の中心は強化人間にシフトしていくべきだ。必要以上にハンターが悪目立ちするのは差し控えてもらいたい」
「……俺もリアルブルーの人間ですよ」
「でも力はクリムゾンウェストのものだ。仮に二つの世界が同時に危機に陥った時、貴方たちはこちらに来られるのか、と言う懸念は当然のことかと思いますが」
「……」
 返す言葉は出なくて、ただ、苦みに顔を顰めるしかない。もうお前はリアルブルーの存在じゃない、そう言われた気がして。来たくても来られるわけじゃない、その事実は、今まさにこの依頼を選んで参加したことで痛感している。
「分かったなら、ハンターが市民に露骨に人気取りに行くのは控えて欲しいですね」
「それは……! そんなつもりじゃない!」
「違うんですか? ──あなたがやっていることは結局、覚醒者であることを利用した売名行為ではないとでも?」
 目の前がちかちかと眩んだ。急激に頭に血が上ったせいだろう。激しい衝動はしかし、方向性が定まらなくて霧散した。ごちゃ混ぜになった感情の中に間違いなく怒りはあって、だが、その矛先は結局、大半が自分に突き立てられる。ああそうだ、最終的には結局、そういう事にもなるんだな、と。
 深呼吸する。言い聞かせる。むしろこうした反応の方が、覚悟していたことじゃないかと。存在をアピールすれば、返ってくるのは好意的な反応ばかりではない、と。覚悟していたからと言って傷つかずに済むかと言えば別問題なだけで。
「不本意に向こうに連れていかれ、望みもしないのに力を与えられたことに、同情はしますよ」
 優位を感じて余裕が出たのか、高瀬少尉はそう言ってくる。彼についてはもう、良かった。彼に対して、言い返せることも言いたいこともない。
 それでも。
 また、思った。『それでも』。
 想いに向けて踏み出した。容易なことではないとは分かっていた。だけど、この『それでも』があとどれほど積み重なっていくんだろう。
 ……そもそもこのまま歩み続けていいのかさえ、分からなくなる。
『住民避難、目視完了いたしました! 作戦行動を開始してください!』
 やがて、その連絡が入った。

解説

千葉県幕張付近に出現した狂気の退治。他に周辺にVOID勢の活発な動きは認められず、おそらくはぐれ個体が海上から上陸したものと思われる。ただし海上に既に増援となりそうな狂気は発見されない。周辺住民の避難の完全に完了されたと確認次第、海浜幕張公園を拠点として散開する各個体を捜索し発見次第これを撃破のこと。

本文の繰り返しになりますが、皆さまが受けた依頼の内容はこちらになります。
補足するなら敵はいつもの狂気の個体。
サイズ1で目玉から触手が出てて触手とレーザーで攻撃してくるあれになります。それが15~20体ほど。
OPの前半部分はNPCの回想であるためPL情報。後半、高瀬少尉と透のやり取りは、ガッツリ皆様の目の前で繰り広げられてます。

なのですが、正直に申し上げますとええ、いつものあれで、索敵に関しても軍が全面協力の上で、妨害電波も無いわけで。
戦闘面に関しては、重体出撃でもない限り、頑張るの一言で最低限の目標は達成できるんじゃないですかね、と言ってしまいます。
ですので、皆様紛れもなく戦闘依頼を受けてここにおりますが、敢えてわざとこのシナリオのジャンルを「無し」にさせていただいております。

勿論、依頼成功度、MVP、そう言ったものを、戦闘の精度を上げることで目指されても結構です。そのようにして示される意志もあるでしょう。
ただ、シナリオとしての成功度の評価は、そこのみに依存しません。今後の展開やNPCへの影響、このシナリオ単品としての物語へ寄与したか。そう言ったものも、評価の対象となり得ます。

この状況に想ったこと、この情報で思いついたこと、ありましたら、貴方らしくそこに字数をかけてみてください。そんなOPに、なってればいいんですが。

本OPは「演想─出会いの物語【界冥】」からの続きとなります。読まなくても参加は可能ですが、理解できない箇所があって気になるようでしたらご参照ください。

マスターより

凪池シリルです。演想第二回です。
ところで演想シリーズにチィの奴出てこないんでしょうか。こいつにあいつがくっついてないとなんか違和感はあるんですが実際。……いやまあ正直いると空気がよく分からなくなるのと……あと……OPにも字数制限があってですね……。
そんなわけで、我ながら書いててめんどくせえな、とか、またこれ系のNPCか、という気がひしひしとしてきましたが、よろしくお願いします。

関連NPC


  • 伊佐美 透(kz0243
    人間(リアルブルー)|28才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2017/12/10 07:13

参加者一覧

  • 矛盾に向かう理知への敬意
    初月 賢四郎(ka1046
    人間(蒼)|29才|男性|機導師

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人
  • 友よいつまでも
    大伴 鈴太郎(ka6016
    人間(蒼)|22才|女性|格闘士
  • Mr.Die-Hard
    トリプルJ(ka6653
    人間(蒼)|26才|男性|霊闘士
  • 我が辞書に躊躇の文字なし
    ルベーノ・バルバライン(ka6752
    人間(紅)|26才|男性|格闘士
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/11/27 23:39:39
アイコン 相談卓
大伴 鈴太郎(ka6016
人間(リアルブルー)|22才|女性|格闘士(マスターアームズ)
最終発言
2017/11/29 17:39:52