ゲスト
(ka0000)
雨の夜に
マスター:DoLLer

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在8人 / 4~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2014/11/28 09:00
- リプレイ完成予定
- 2014/12/07 09:00
オープニング
その夜、雨が降っていた。
都市部を離れたこの地域では月影や星明かりだけが頼りだ。それらが雲に隠されれば一寸先も見えぬ闇で覆われている。
「父ちゃん、大丈夫かな」
羊飼いの少年は暖炉に薪をくべながら、壁越しに聞こえる雨音を聞き取りながら、そう呟いた。
羊の様子が気になるから、と父親が雨の中、カンテラを持って出かけたのは数時間前だ。
この地域は地盤が固く穀物はあまり育たない。海もないし、主要な幹線道路からも離れている。そんな場所だからできる産業は牧畜が主となる。ゾンネンシュトラール帝国では主産業の一つだが、この地域の羊はお世辞にも良質とはいえない。毛は少ないし、肉も固い。
「クリームヒルト様が推してくれたからってなぁ。頑張りすぎだよ」
少年はため息をついた。羊は不肖なれど愛すべき家族。そういう感覚があった。それはきっと父親も同じだ。
そんな羊の評価を高めようと旧帝国の姫であるクリームヒルトは奔走してくれた。そのおかげで羊達の評価は少し見直されている。それに応えようと父親はこうした雨の夜でも羊達の面倒を見に出かけることは増えた。
「……にしても、遅いな」
どうせ見えはしないのだが、雨戸をちらりと開けて、少年は外を見やった。
……?
雨音に混じって、違う音がした。足音?
「怪我したかな。ったく、俺には羊は怯えさせたら暴れるから気を付けろっていうのにさ。こんな真っ暗な中で動けば、そりゃ驚かすだろうさ」
仕方のない父親だ。といいつつ、少年は速やかに包帯と薬草を取ろうと戸棚へ走るのと同時に、玄関から湿った冷たい空気が流れ込んでくる。その方向をちらりと少年が見やるより早く、声が響いた。
「逃げろっ!」
「!」
玄関から響いたのは父親の声だ。だが、遥かに遠い。では玄関にいるのは?
少年は身を凍りつかせた。怪我をしている男、というのは想像の範囲だったが、腕が半分もげおち、臓器をひきずりながら歩く様子など誰が想像できようか。その奥にいるのが父親だろう。こちらからではほとんど見えないが、血まみれの腕が動く人間の残骸を引き留めようとしているようだった。
「逃げろっ! 早くっ!!」
父親の言葉に重なるように、怨嗟の呻きが聞こえる。一つじゃない。
少年は父親の押しとどめも気にせず、人間だったものが進んでくる。少年はすぐさま裏口へと走った。なぜこんなのが襲ってきたのか、どこに逃げるのか、父親をどうやって助けるのか、考えはとめどないが、迷っている暇はなかった。
裏口からすぐさま厩へと走り、繋いであった馬に飛び乗った。雨は冷たく、地面を打つ音で包まれる中に紛れていくつもの断末魔が聞こえる。それでも馬の腹を蹴って少年は走った。
早く、早く。
「どうしたの? 大丈夫?」
体温を奪われて、体もうまく動かない。今どこに向かっているのか、時間はどれほど経ったのかもわからない混濁した意識の中で、少年を助けたのは。かつて羊飼いの父親に救いの手を差し伸べた女性、クリームヒルトだった。
「あら、あなた……羊飼いさんのところの子ね?」
「姫様……! 父ちゃんが、羊達が!」
凍えて口もまともに動かせなかったが、それでも少年はクリームヒルトにしがみつき、懇願した。だが、クリームヒルトの傍にいたでっぷりとした男はその懇願を聞いて眉間にしわを寄せるばかりか、クリームヒルトと少年の間に割って入る。
「なりませぬぞ、クリームヒルト様。どんな危険があるかわかりませぬ」
「危険だから、行かなきゃならないんじゃないの。ハンターにお願いするわ」
「どんな敵が、しかもどんな数で、目的は。それが判らずしてハンターをどう雇うというのです。我々の落ち度でハンターが無用な怪我すれば、我々にもその責を負わねばなりませぬぞ。ましてや、クリームヒルト様はこれから旧帝国民の拠り所とならねばならぬのです。それにこれからの活動に必要な資金源の確保に我々は方々に出向く最中で」
「アウグスト!」
太った男、アウグストの言葉を断ち切ってクリームヒルトは叱責した。
「人の拠り所となるなら、まず人を重んじることでしょう! 落ち度だのなんだのは後で考えることじゃない? わたしはこの子を介抱するから、アウグストはハンターオフィスへ行きなさい。お出会いする予定の先方には手紙を出しておいて」
「クリームヒルト様。そんな勝手は……」
「人の命以上に大切なものがあるなら教えてほしいわ。いい? 私は人々の為にある。一人でもそれをないがしろにはしない」
有無を言わせぬ気迫でそう言うとクリームヒルトは羽織っていた外套を少年にかぶせ、自らの乗っていた馬車に案内した。アウグストは少々複雑そうな視線を送っていたが、断固とした調子のクリームヒルトの動作に諦めたのか、少年の乗っていた馬によいしょっと跨った。
「それでは行ってまいります。クリームヒルト様、王道を進むには、時に取捨選択も必要になるのですぞ。どうぞお忘れなく……」
その声は届かなかったのか、あえて聞き流したのかはわからないが、クリームヒルトは少年に肩を貸しつつ、そのまま馬車の中へと入って行った。
「安心して。私が付いているから」
クリームヒルトは朦朧とする少年に向かってそう囁いた。
都市部を離れたこの地域では月影や星明かりだけが頼りだ。それらが雲に隠されれば一寸先も見えぬ闇で覆われている。
「父ちゃん、大丈夫かな」
羊飼いの少年は暖炉に薪をくべながら、壁越しに聞こえる雨音を聞き取りながら、そう呟いた。
羊の様子が気になるから、と父親が雨の中、カンテラを持って出かけたのは数時間前だ。
この地域は地盤が固く穀物はあまり育たない。海もないし、主要な幹線道路からも離れている。そんな場所だからできる産業は牧畜が主となる。ゾンネンシュトラール帝国では主産業の一つだが、この地域の羊はお世辞にも良質とはいえない。毛は少ないし、肉も固い。
「クリームヒルト様が推してくれたからってなぁ。頑張りすぎだよ」
少年はため息をついた。羊は不肖なれど愛すべき家族。そういう感覚があった。それはきっと父親も同じだ。
そんな羊の評価を高めようと旧帝国の姫であるクリームヒルトは奔走してくれた。そのおかげで羊達の評価は少し見直されている。それに応えようと父親はこうした雨の夜でも羊達の面倒を見に出かけることは増えた。
「……にしても、遅いな」
どうせ見えはしないのだが、雨戸をちらりと開けて、少年は外を見やった。
……?
雨音に混じって、違う音がした。足音?
「怪我したかな。ったく、俺には羊は怯えさせたら暴れるから気を付けろっていうのにさ。こんな真っ暗な中で動けば、そりゃ驚かすだろうさ」
仕方のない父親だ。といいつつ、少年は速やかに包帯と薬草を取ろうと戸棚へ走るのと同時に、玄関から湿った冷たい空気が流れ込んでくる。その方向をちらりと少年が見やるより早く、声が響いた。
「逃げろっ!」
「!」
玄関から響いたのは父親の声だ。だが、遥かに遠い。では玄関にいるのは?
少年は身を凍りつかせた。怪我をしている男、というのは想像の範囲だったが、腕が半分もげおち、臓器をひきずりながら歩く様子など誰が想像できようか。その奥にいるのが父親だろう。こちらからではほとんど見えないが、血まみれの腕が動く人間の残骸を引き留めようとしているようだった。
「逃げろっ! 早くっ!!」
父親の言葉に重なるように、怨嗟の呻きが聞こえる。一つじゃない。
少年は父親の押しとどめも気にせず、人間だったものが進んでくる。少年はすぐさま裏口へと走った。なぜこんなのが襲ってきたのか、どこに逃げるのか、父親をどうやって助けるのか、考えはとめどないが、迷っている暇はなかった。
裏口からすぐさま厩へと走り、繋いであった馬に飛び乗った。雨は冷たく、地面を打つ音で包まれる中に紛れていくつもの断末魔が聞こえる。それでも馬の腹を蹴って少年は走った。
早く、早く。
「どうしたの? 大丈夫?」
体温を奪われて、体もうまく動かない。今どこに向かっているのか、時間はどれほど経ったのかもわからない混濁した意識の中で、少年を助けたのは。かつて羊飼いの父親に救いの手を差し伸べた女性、クリームヒルトだった。
「あら、あなた……羊飼いさんのところの子ね?」
「姫様……! 父ちゃんが、羊達が!」
凍えて口もまともに動かせなかったが、それでも少年はクリームヒルトにしがみつき、懇願した。だが、クリームヒルトの傍にいたでっぷりとした男はその懇願を聞いて眉間にしわを寄せるばかりか、クリームヒルトと少年の間に割って入る。
「なりませぬぞ、クリームヒルト様。どんな危険があるかわかりませぬ」
「危険だから、行かなきゃならないんじゃないの。ハンターにお願いするわ」
「どんな敵が、しかもどんな数で、目的は。それが判らずしてハンターをどう雇うというのです。我々の落ち度でハンターが無用な怪我すれば、我々にもその責を負わねばなりませぬぞ。ましてや、クリームヒルト様はこれから旧帝国民の拠り所とならねばならぬのです。それにこれからの活動に必要な資金源の確保に我々は方々に出向く最中で」
「アウグスト!」
太った男、アウグストの言葉を断ち切ってクリームヒルトは叱責した。
「人の拠り所となるなら、まず人を重んじることでしょう! 落ち度だのなんだのは後で考えることじゃない? わたしはこの子を介抱するから、アウグストはハンターオフィスへ行きなさい。お出会いする予定の先方には手紙を出しておいて」
「クリームヒルト様。そんな勝手は……」
「人の命以上に大切なものがあるなら教えてほしいわ。いい? 私は人々の為にある。一人でもそれをないがしろにはしない」
有無を言わせぬ気迫でそう言うとクリームヒルトは羽織っていた外套を少年にかぶせ、自らの乗っていた馬車に案内した。アウグストは少々複雑そうな視線を送っていたが、断固とした調子のクリームヒルトの動作に諦めたのか、少年の乗っていた馬によいしょっと跨った。
「それでは行ってまいります。クリームヒルト様、王道を進むには、時に取捨選択も必要になるのですぞ。どうぞお忘れなく……」
その声は届かなかったのか、あえて聞き流したのかはわからないが、クリームヒルトは少年に肩を貸しつつ、そのまま馬車の中へと入って行った。
「安心して。私が付いているから」
クリームヒルトは朦朧とする少年に向かってそう囁いた。
解説
羊飼いの少年がいた村が歪虚(おそらくゾンビ)に襲撃されたようです。状態は未確認なので、これを詳細に調査することが主目的になります。
クリームヒルトはオープニングで少年に助ける、といっていますが、依頼に訪れたアウグストからは村の調査することであって、それ以上のことは求めていませんので、若干の相違があることはご了承ください。
●達成条件および成功度合い
・村の被害を調査し、被害状況から襲撃した敵を特定する。
・留まっている歪虚は排除すること。
・生存者の確認、および保護。
・少年とクリームヒルトへの報告。
この4点がいくつ達成されたかで成功段階が決定されます。
●村
人口70人程度で、羊の牧畜が主なところです。人より羊の方が数倍多いです。
村とはいえ牧畜している為、その範囲はかなり広大です(馬で数時間は歩かないと端から端にたどり着けないレベル)。
住居は村中央に固まっています。20戸程度。
●敵
少年の証言からするとゾンビ複数体です。一般人の父親に足止めされる程度ですから、強さも並だと思われます。
数は不明。
●その他
羊飼いとここの村の羊は拙作「オンリーワンの羊を目指して」に登場していました。クリームヒルトとの出会いはその時のものです。
父親は生死不明。
クリームヒルトはオープニングで少年に助ける、といっていますが、依頼に訪れたアウグストからは村の調査することであって、それ以上のことは求めていませんので、若干の相違があることはご了承ください。
●達成条件および成功度合い
・村の被害を調査し、被害状況から襲撃した敵を特定する。
・留まっている歪虚は排除すること。
・生存者の確認、および保護。
・少年とクリームヒルトへの報告。
この4点がいくつ達成されたかで成功段階が決定されます。
●村
人口70人程度で、羊の牧畜が主なところです。人より羊の方が数倍多いです。
村とはいえ牧畜している為、その範囲はかなり広大です(馬で数時間は歩かないと端から端にたどり着けないレベル)。
住居は村中央に固まっています。20戸程度。
●敵
少年の証言からするとゾンビ複数体です。一般人の父親に足止めされる程度ですから、強さも並だと思われます。
数は不明。
●その他
羊飼いとここの村の羊は拙作「オンリーワンの羊を目指して」に登場していました。クリームヒルトとの出会いはその時のものです。
父親は生死不明。
マスターより
戦闘込みの調査シナリオです。
戦闘力よりも推測を元にどこに目を付けて調査するか、という方が有用になります。
正確な動きが判れば襲撃の真相は暴くことができるかもしれません。
戦闘力よりも推測を元にどこに目を付けて調査するか、という方が有用になります。
正確な動きが判れば襲撃の真相は暴くことができるかもしれません。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2014/12/01 10:48
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓です! ルナ・レンフィールド(ka1565) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2014/11/28 07:52:21 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/11/25 07:27:16 |
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クリームヒルトさんに質問 ユリアン・クレティエ(ka1664) 人間(クリムゾンウェスト)|21才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2014/11/26 09:38:31 |