王国、帝国、同盟、辺境、そしてサルヴァトーレ・ロッソ。
　この４者が組んで進めることになったＣＡＭ研究。
　目玉である公開実験は辺境で行われる。

●公開実験場予定地付近
「問題は、だ」
　薄汚れた作業服の男が淡々とつぶやいている。
　ロッソから出発して既に１週間が経過した。
　全身が痒い。一度も風呂に入っていないからだ。
　心身が冷えて力が出ない。温かい食事をここ２、３日食べていないからだ。
「あたたかさが足りない」
　彼の背後には味も素っ気もないプレハブ小屋が建っていた。
　実験場予定地周辺工事の人員のための宿泊施設兼倉庫であり、宿泊施設でもあり食堂でもある。
「足りない……うへへ」
　いつの間にか限界を超えていたらしい。
　熟練現場監督は、虚ろな目をしてだらしなく口を半開きにして乾いた笑い声を響かせていた。

●ハンターギルド本部
「あん？」
　元ロッソ勤務、現ハンターの男が高速で瞬きをしていた。
　ハンターギルド本部のあちこちに浮かぶ依頼票という名の３Ｄディスプレイ。
　その１つに何故か見覚えがあったのだ。
「出張の志願者募集の張り紙かよ」
　ロッソの一部で使われていた文面に酷似している。
　臨時報酬や臨時休暇につられ、その後苛酷な仕事を押しつけられた記憶が鮮やかに蘇る。
　体を震わせ去っていく男を呼び止めるかのように、３Ｄディスプレイがこわくないよー、と言いたげなお勧め文句を連続で表示する。
『ごはん食べ放題』（男注：消費期限切れぎりぎりの不味いレーション山盛り）
『雄大な自然があるよ』（男注：野良犬やカラスの排除も仕事のうちってことだ）
『みんなの役に立つ素晴らしいしごとです』（男注：各地から集まる連中全員を収容できるようしろって？　トイレや獣避けの準備も必要だから……なんてブラックだ）
　依頼票には、建築資材と水食糧は現地に用意されている物を使ってください、と小さく書かれている。
　特に水と食糧は保存優先のため味は悪く、燃料がほとんど用意されていないため加熱もほとんどできない。
　愉快な文章とは裏腹の、苛酷な依頼であった。

　ログハウスを建てたり和風建築を建てたり、クリムゾンウェスト各国仕様の住居を建てたりする依頼です。
　まともに調理と食事が出来る食堂、清潔なトイレ、快適に睡眠可能な寝床を作ればつくるほど、実験予定日にあつまる予定の人々に喜ばれます。
　現時点では１０人が収容可能な建物とトイレしか無く、今回の依頼で最低１００名収容可能な建物とトイレとできれば食堂等を建てなくてはなりません。

　現場は整地が終わった縦横２００メートルの平地。
　近くに川はありません。正確には、あっても今回利用許可は出ないので、予め用意された水と食糧と資材を使って依頼を遂行してください。

　建築資材は豊富に用意されています。
　現地に用意されている食料は、堅焼きされたパンに乾涸らびた干し肉に美味しくないレーション。
　水はペットボトル入りが少量、後は大量の大瓶に入っています。
　出発前に希望すれば調理器具や少量の調味料、足りない燃料が提供されますので現地に運んでください。
　公開実験までには必要量の燃料が届けられます。残念ながら今回の依頼には関係有りません。

　現地にいるロッソ勤務の現場監督１名と熟練作業員５名は、ハンターが自由に使って問題有りません。


●敵１
野犬。１集団１匹～５匹で最大４集団。
ハンターのペットの犬より弱いです。主に夜に活動します。捕殺が推奨されていますが追い散らすだけでも構いません。

●敵２
カラス。１集団５～８羽で最大５集団。１羽当たりの戦闘力は、飛行能力込みで野犬と同程度。封を開けた水や食料を容赦なく狙います。主に昼間に活動します。捕殺以下同文。

　プレイングに悩んだときは、これやりたいっ、こう描写されたいっ、と熱意を叩きつければ基本的に良い感じ判定されます。
　もちろん緻密なプレイングも大歓迎です。