ゲスト
(ka0000)
千慮の一失 千愚の一慮
マスター:守崎志野

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 不明
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 3~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2018/01/23 12:00
- リプレイ完成予定
- 2018/02/01 12:00
オープニング
●
いきなり迫って来た刃は、あの時を思わせた。
咄嗟に少女は傍にあった何かを手に取り、突き出した。
鉄錆の臭いを含んだ赤が、視界に広がる。
●
「つまり、あなたはここで働きたいという事ね、ケイカ」
要塞都市にある商店の簡素な事務室で、この店の主であり転移者達による辺境の開拓を進めるシャハラザード、通称シャハラの目が一人の少女に注がれる。濃い色のベールに覆われた表情はうかがい知れないが、その口調は穏やかだ。
体格や声からすると女性。経歴からすると五十路に近い年齢の筈であり、相応しい落ち着きある物腰であるが、不思議な若々しさも漂う。
「はい、よろしくお願いします」
ケイカと呼ばれた少女はまだ十四、五の幼さが残る容貌よりも大人びた雰囲気で応える。
「私としては働き手が増えるのは歓迎なのだけれど。でも、本当にここでいいの?リゼリオかポルトワールなら紹介出来るところがあるし、ここよりは安全だと思うのだけれど」
「いいえ。私のような人間にとって、この世界に安全な場所などありませんから」
ケイカは元々覚醒しなかった転移者であり、路地裏にまるでボロ屑のように打ち捨てられていたのをシャハラが見つけた。そうなった理由や経緯について彼女は一切語ろうとしなかったが、それでもシャハラの計画で拓かれた辺境の集落に映り住んで自分を取り戻しつつあった。だが、一ヶ月程前に集落は生活が逼迫した部族に襲われてほぼ全滅し、通りがかったハンターに助けられたのは彼女を含めて三人だった。
「戦闘力という点では覚醒者や長年修行してきた人には到底敵いません。でも、力はそれだけではないと思いますから」
精神的な傷が癒えた筈もなかろうが、それでも彼女は何かを掴もうとすることを選んだ。
「あなたがはっきりと決めているなら私に否やは無いわ、ケイカ。あなたはその年でかなりの教育を受けたようだし、飲み込みも早い。私にとってはいい話だわ」
そう言うと、シャハラは卓上に置かれた書類の一つを手に取った。
「それじゃ、早速だけど仕事に掛かって貰えるかしら。内容はこの土地の聞き取り調査。詳しい事は」
と、後に控えた二十歳を少し過ぎた位の温厚そうな青年を振り返る。
「フリッツから聞いて頂戴」
●
まだ用事があるからとシャハラが出て行った後、フリッツは仕事の内容を説明し始めた。
「この店の手配で開拓を進めている土地が幾つか辺境に点在してるのは知ってるだろうけど、それらで最近不穏な動きがある」
今回の調査対象になる開拓地は最初に出来た実験場とも言えるところだ。この地にあった作物を育てるだけで無く土壌や品種の改良、治水の問題にも取り組んでいる。人数は五十人程で転移者が四分の三、クリムゾンウエスト出身者が四分の一というところだ。
「この両者は元々関係が微妙だったんだけど」
元来リアルブルーからの転移者とクリムゾンウエスト出身者とでは常識や習慣、当たり前とされてきた知識の存在など何もかもが大きく違う。それが仕事や居住を共にすれば当然軋轢は起こってくるだろう。
当初は転移者が主に技術や研究系、クリムゾンウエスト出身者が作業系と仕事の役割分担を行う事で上手くいっていたのだが、開拓が軌道に乗るに従って様子が変わってきた。
転移者達はクリムゾンウエスト出身者の口出しが気に食わず、クリムゾンウエスト出身者はこの世界をろくに知りもしない転移者達が実質自分達の上にいることが気に障る。どこにでもありそうな摩擦なのだが。
「それが積もり積もって険悪な空気になってきてる。例えばこの前の襲撃事件のようにね」
言いながらフリッツは資料を見ているケイカの表情を伺った。その顔から知り得る感情は今のところ、無い。
全くあの部族は使えなかったとフリッツは胸中で呟いた。こっちとしてはあの集落の転移者が土地から居なくなれば良かったのだから、収穫を強奪してさっさと逃げるか、或いはすぐに皆殺しにすれば良かったものを。
もたついてハンターと出くわした上に、自害も出来ず捕縛されるとは。
(所詮は野蛮人か……まあ、だからこそ都合が良いんだが)
自分の関与がバレるようなヘマはしていない。代わりはいくらでも居る。
「なので、こちらで介入する必要があると判断した訳だ。今回は、まず双方の言い分を」
「フリッツさん、質問いいですか?」
「どうぞ」
「いくら何でも変化が急すぎませんか?最近まで、多少の摩擦はあっても互いの立場を理解していたようですし、周辺の部族との関係も悪くなかったとなっていますけど」
「そうだね。もしかすると歪虚の介入もあり得るかもしれない」
したり顔で頷きながら、便利なものだとフリッツは内心で嘲笑った。
多少引っかかりがあったとしても『歪虚の仕業では?』と言っておけば誰もこちらを疑いもしない。そして歪虚との戦いに傾注しすぎた帝国は国民と国土が疲弊してきている。辺境が豊かになれば将来帝国との関係逆転もあり得る。
シャハラは辺境を豊かにし、取引相手として育てることが将来への投資だと言うが、それではコストに対する見返りが小さすぎる。
将来的には疲弊した帝国を金と物で裏から支配することを目指すべきなのだ。その為に、いずれは自分がシャハラが築いたものを乗っ取り、辺境の富を一手に握ってやる。
ケイカにもその為の捨て石になって貰う。
「だから、ハンターオフィスにも同行の依頼を出しておいたからね。くれぐれも気をつけて。くれぐれも、ね」
●
何が偶然だ。食材に毒草が混じるなんて、偶然に起こる訳が無い。
あいつらは詳しい筈なのだから。
収穫物が盗まれたのに気付かなかった?
奴らが手引きしたのでは無いか?
密やかな囁きの中、ケイカとハンター達が訪れる。
「聞き取りは皆を集めての方が良いでしょうか?それとも時間は掛かるけど個別の方が正直なところが聞けるでしょうか?」
……あの小娘は歪虚よりも人を憎んでいる。
……もしかしたら……
ケイカに向けられた刃が動くまで、あと少し。
いきなり迫って来た刃は、あの時を思わせた。
咄嗟に少女は傍にあった何かを手に取り、突き出した。
鉄錆の臭いを含んだ赤が、視界に広がる。
●
「つまり、あなたはここで働きたいという事ね、ケイカ」
要塞都市にある商店の簡素な事務室で、この店の主であり転移者達による辺境の開拓を進めるシャハラザード、通称シャハラの目が一人の少女に注がれる。濃い色のベールに覆われた表情はうかがい知れないが、その口調は穏やかだ。
体格や声からすると女性。経歴からすると五十路に近い年齢の筈であり、相応しい落ち着きある物腰であるが、不思議な若々しさも漂う。
「はい、よろしくお願いします」
ケイカと呼ばれた少女はまだ十四、五の幼さが残る容貌よりも大人びた雰囲気で応える。
「私としては働き手が増えるのは歓迎なのだけれど。でも、本当にここでいいの?リゼリオかポルトワールなら紹介出来るところがあるし、ここよりは安全だと思うのだけれど」
「いいえ。私のような人間にとって、この世界に安全な場所などありませんから」
ケイカは元々覚醒しなかった転移者であり、路地裏にまるでボロ屑のように打ち捨てられていたのをシャハラが見つけた。そうなった理由や経緯について彼女は一切語ろうとしなかったが、それでもシャハラの計画で拓かれた辺境の集落に映り住んで自分を取り戻しつつあった。だが、一ヶ月程前に集落は生活が逼迫した部族に襲われてほぼ全滅し、通りがかったハンターに助けられたのは彼女を含めて三人だった。
「戦闘力という点では覚醒者や長年修行してきた人には到底敵いません。でも、力はそれだけではないと思いますから」
精神的な傷が癒えた筈もなかろうが、それでも彼女は何かを掴もうとすることを選んだ。
「あなたがはっきりと決めているなら私に否やは無いわ、ケイカ。あなたはその年でかなりの教育を受けたようだし、飲み込みも早い。私にとってはいい話だわ」
そう言うと、シャハラは卓上に置かれた書類の一つを手に取った。
「それじゃ、早速だけど仕事に掛かって貰えるかしら。内容はこの土地の聞き取り調査。詳しい事は」
と、後に控えた二十歳を少し過ぎた位の温厚そうな青年を振り返る。
「フリッツから聞いて頂戴」
●
まだ用事があるからとシャハラが出て行った後、フリッツは仕事の内容を説明し始めた。
「この店の手配で開拓を進めている土地が幾つか辺境に点在してるのは知ってるだろうけど、それらで最近不穏な動きがある」
今回の調査対象になる開拓地は最初に出来た実験場とも言えるところだ。この地にあった作物を育てるだけで無く土壌や品種の改良、治水の問題にも取り組んでいる。人数は五十人程で転移者が四分の三、クリムゾンウエスト出身者が四分の一というところだ。
「この両者は元々関係が微妙だったんだけど」
元来リアルブルーからの転移者とクリムゾンウエスト出身者とでは常識や習慣、当たり前とされてきた知識の存在など何もかもが大きく違う。それが仕事や居住を共にすれば当然軋轢は起こってくるだろう。
当初は転移者が主に技術や研究系、クリムゾンウエスト出身者が作業系と仕事の役割分担を行う事で上手くいっていたのだが、開拓が軌道に乗るに従って様子が変わってきた。
転移者達はクリムゾンウエスト出身者の口出しが気に食わず、クリムゾンウエスト出身者はこの世界をろくに知りもしない転移者達が実質自分達の上にいることが気に障る。どこにでもありそうな摩擦なのだが。
「それが積もり積もって険悪な空気になってきてる。例えばこの前の襲撃事件のようにね」
言いながらフリッツは資料を見ているケイカの表情を伺った。その顔から知り得る感情は今のところ、無い。
全くあの部族は使えなかったとフリッツは胸中で呟いた。こっちとしてはあの集落の転移者が土地から居なくなれば良かったのだから、収穫を強奪してさっさと逃げるか、或いはすぐに皆殺しにすれば良かったものを。
もたついてハンターと出くわした上に、自害も出来ず捕縛されるとは。
(所詮は野蛮人か……まあ、だからこそ都合が良いんだが)
自分の関与がバレるようなヘマはしていない。代わりはいくらでも居る。
「なので、こちらで介入する必要があると判断した訳だ。今回は、まず双方の言い分を」
「フリッツさん、質問いいですか?」
「どうぞ」
「いくら何でも変化が急すぎませんか?最近まで、多少の摩擦はあっても互いの立場を理解していたようですし、周辺の部族との関係も悪くなかったとなっていますけど」
「そうだね。もしかすると歪虚の介入もあり得るかもしれない」
したり顔で頷きながら、便利なものだとフリッツは内心で嘲笑った。
多少引っかかりがあったとしても『歪虚の仕業では?』と言っておけば誰もこちらを疑いもしない。そして歪虚との戦いに傾注しすぎた帝国は国民と国土が疲弊してきている。辺境が豊かになれば将来帝国との関係逆転もあり得る。
シャハラは辺境を豊かにし、取引相手として育てることが将来への投資だと言うが、それではコストに対する見返りが小さすぎる。
将来的には疲弊した帝国を金と物で裏から支配することを目指すべきなのだ。その為に、いずれは自分がシャハラが築いたものを乗っ取り、辺境の富を一手に握ってやる。
ケイカにもその為の捨て石になって貰う。
「だから、ハンターオフィスにも同行の依頼を出しておいたからね。くれぐれも気をつけて。くれぐれも、ね」
●
何が偶然だ。食材に毒草が混じるなんて、偶然に起こる訳が無い。
あいつらは詳しい筈なのだから。
収穫物が盗まれたのに気付かなかった?
奴らが手引きしたのでは無いか?
密やかな囁きの中、ケイカとハンター達が訪れる。
「聞き取りは皆を集めての方が良いでしょうか?それとも時間は掛かるけど個別の方が正直なところが聞けるでしょうか?」
……あの小娘は歪虚よりも人を憎んでいる。
……もしかしたら……
ケイカに向けられた刃が動くまで、あと少し。
解説
依頼内容:ケイカと共に開拓地での聞き取りを行う
可能なら真相の究明、又は両者に解決案の提示
開拓地:かなりの広さがあり、麦や豆類、牧草、薬の原材料等が作られている。
有志による自警団や見張りの為の櫓も組まれ、周辺の警戒も行われている
ほぼ全員が成人で男性の割合が多い(7:3)
皆仕事熱心だが内心は様々な不満を抱えている
クリムゾンウエスト出身者の半数は辺境出身だが他の者は王国・帝国・同盟とまちまち
聞き取りを始めて間もなくケイカが彼女を歪虚の手先と思い込んだ辺境出身者の一人に襲撃される
襲撃を看過すればケイカは死亡するが、その場合でも真相に繋がる情報を得られれば依頼失敗にはならない
(開拓民は全てを彼女の仕業と主張する)
事の起こりと思われるのは半月前に保存してあった豆類がごっそり盗まれた事
当番に当たっていた七人が交代で見張っていたにも関わらず誰も不審なものは見ていないと言っている為
(七人の中には転移者も辺境出身者もいるが、証言は一致している)
クリムゾンウエスト出身者の誰かが手引きしたのではないか・誰かが横流しをしているのではないか等の疑いが生じた
更にその後、食材に毒草(薬の材料)が混入するという事が発生
味に異常を感じて吐き出した為に実害は無かったが疑心暗鬼に拍車が掛かり、仕事に支障をきたす事態になっている
一方で共に働いてきた者を疑いたくないという気もあり、歪虚の介入を疑う者もいる
(但し、ハンターが調べても歪虚の存在・痕跡は確認できない)
※フリッツはOPにしか登場せず、彼の思惑はPL情報ですが、ケイカや開拓民に彼についての話を聞くことは出来ます
可能なら真相の究明、又は両者に解決案の提示
開拓地:かなりの広さがあり、麦や豆類、牧草、薬の原材料等が作られている。
有志による自警団や見張りの為の櫓も組まれ、周辺の警戒も行われている
ほぼ全員が成人で男性の割合が多い(7:3)
皆仕事熱心だが内心は様々な不満を抱えている
クリムゾンウエスト出身者の半数は辺境出身だが他の者は王国・帝国・同盟とまちまち
聞き取りを始めて間もなくケイカが彼女を歪虚の手先と思い込んだ辺境出身者の一人に襲撃される
襲撃を看過すればケイカは死亡するが、その場合でも真相に繋がる情報を得られれば依頼失敗にはならない
(開拓民は全てを彼女の仕業と主張する)
事の起こりと思われるのは半月前に保存してあった豆類がごっそり盗まれた事
当番に当たっていた七人が交代で見張っていたにも関わらず誰も不審なものは見ていないと言っている為
(七人の中には転移者も辺境出身者もいるが、証言は一致している)
クリムゾンウエスト出身者の誰かが手引きしたのではないか・誰かが横流しをしているのではないか等の疑いが生じた
更にその後、食材に毒草(薬の材料)が混入するという事が発生
味に異常を感じて吐き出した為に実害は無かったが疑心暗鬼に拍車が掛かり、仕事に支障をきたす事態になっている
一方で共に働いてきた者を疑いたくないという気もあり、歪虚の介入を疑う者もいる
(但し、ハンターが調べても歪虚の存在・痕跡は確認できない)
※フリッツはOPにしか登場せず、彼の思惑はPL情報ですが、ケイカや開拓民に彼についての話を聞くことは出来ます
マスターより
お世話になっております。
拙シナリオ『誰も知らない』から続く形になっていますが該当シナリオを読む必要はありません。
開拓地にいるのは非覚醒者ばかりなので戦闘らしい戦闘は起こらず、
ハンターに敵意や反感を持っている訳でもないので聞き取りや争わないように説得をするだけなら容易です
ただ、一連の事件を繋ぐものを見つけ、事の裏側に迫るのはやや難しいかもしれません。
よろしくお願いします。
拙シナリオ『誰も知らない』から続く形になっていますが該当シナリオを読む必要はありません。
開拓地にいるのは非覚醒者ばかりなので戦闘らしい戦闘は起こらず、
ハンターに敵意や反感を持っている訳でもないので聞き取りや争わないように説得をするだけなら容易です
ただ、一連の事件を繋ぐものを見つけ、事の裏側に迫るのはやや難しいかもしれません。
よろしくお願いします。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2018/01/31 06:29
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓 アルマ・A・エインズワース(ka4901) エルフ|26才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2018/01/23 05:38:22 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/01/22 12:04:54 |