ゲスト
(ka0000)
復讐よりも、報復よりも
マスター:須崎なう

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在5人 / 3~5人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2018/02/14 12:00
- リプレイ完成予定
- 2018/02/23 12:00
オープニング
百獣の王と呼ばれるライオンも、生まれたての頃から育てていれば主人に甘えるように。その異形のコボルドはある一人の老人にひどく懐いていた。
五年前のことになる。
生まれつき左耳は無く、幼体にしては一回り以上大きい体格。胎内から落ちると同時に母を死なせてしまったその異形のコボルドが群れから見放されるのは当然の流れだった。
生まれて間もないコボルドに狩りの知識はない。ただ衰弱死を待つだけだったそのコボルドに手を差し伸べたのは、当時、体の衰えを感じ引退を考えていた猟師の老人だった。
●
老人の息子がとある街の領主だったことも幸いし、普通より体格の大きいコボルドでも生活に支障のない広さの屋敷に住めた。老人はそのコボルドと家族のように接し、愛情を込めて育て、『リグル』という名前を与えられた。
「なぁリグル。次の月に孫たちが遊びにくるんじゃが、覚えておるか?」
もちろん覚えていた。
「グルルっ」と小さく鳴き、それを返事とする。
「そうか、そうか。孫たちも昔はリグルのこと怖がってたが……リグルも頑張ったからの。楽しみじゃわい」
頑張った、というのは少し大げさだとリグルは思った。
鋭く長い爪は必要がない。むしろ、絨毯に引っかかって大変だった。
ぎらつく牙も、見せると怖がられる。怖がられるのは寂しかった。だから極力口は開きたくない。
生まれもった大きな体躯も、相手を威圧してしまう。だから、なるべく二足で立つことを控えているだけだ。
だから頑張ったことといえば、まだ小さかった孫たち二人にだけは早く馴染めるようにと、強く甘えることを我慢したことくらいか。
「グルっ」
「リグルもいい子に育ったが、謙虚すぎていかんの」
その鳴き声だけでリグルの思いを汲み、老人はそう呟きながらリグルの頭を撫でた。
「グルルン!」
その撫でが心地いいのだろう。ぺたりと右耳を伏せ、ふかふかの毛並みと尻尾を上機嫌に揺らしながら幸せそうな顔を浮かべるのだった。
――――数時間後、その生活に亀裂が走るとは知らずに。
●
この街の人口は他の都市と比べても、これといって多いわけではない。
一番の特徴といえば、工業系の建造物が多いことだ。
増築や改築。あるいは逆に細い道を無理やりに通し、必要の無くなった建造物の中には使われなくなったまま放置されているものもある。
そんな街だからだろう。迷路のように入り組んだ路地が形成され、街の領主でさえもそのすべてを洗い出し切れてはいない。
そんな街に日陰者が多く潜むのは自然だった。
この街には工業地区が多い他にもう一つ、大きな特徴がある。
それは不良やチンピラといった柄の悪い連中が異常なほど多いということだ。
●
静謐な夜の空気にガラスの割れる音が響き渡り、そのコボルドは何事かと飛び起きた。
混乱したのは一瞬で、音源が主人である老人の部屋の方角だと気づくやいなや、全脚力を使って走り出だす。
壷が割れる音が鳴り。箪笥が倒れたのか、床が僅かに振動する。
聞こえてくるのは聞き覚えのない男の声だ。
「おいおいおい? ここってば領主の屋敷だろう? いくらなんでもシケすぎじゃねーか」
「アニキ! こっちの箪笥にゃなにもありやせんぜ!」
「あーあ、まじでなんもねえ。どうするよアニキ」
三人の男たちがそれぞれ愚痴をもらす。
「阿呆、が……。息子の屋敷と間違えるなんぞ、とんだ愚か者が忍び込んだものじゃの……」
「ンあ?? よれよれのジジィが調子に乗ったこといってんじゃねーぞ!!」
ゴスッという鈍い音が鳴るのと、コボルドが老人の寝室に飛び込むのは殆ど同時。
その獣の瞳に映り込んだのは、金属棒を振り下ろした男と、ぐったりと崩れ落ちる老人の姿……。
コボルドの思考が白で塗りつぶされ、次に、赤黒い斑点が思考を染め上げていく。
「ったく、あーあ。とんだ無駄骨じゃねーかよ…………、お?」
素っ頓狂に語尾を濁したのは、アニキと呼ばれていた男。
舎弟と思われる二人がその声に反応しようとするが、それよりも速く、舎弟の一人のシルエットがグシャリと折れた。
「……え?」
その声を発したのは、まだ無事なほうの舎弟だった。
視線の先には、その肩から夥しい血を流す舎弟仲間と、乱立する牙を突き立てた大型コボルドの姿……。
「ガウウウウウウウ…………」
低く唸る獣の声で正気に戻ったのか、アニキと舎弟、無事な二人が割れた窓へと引き返す。
その二人の背中目掛けて、コボルドは咥えていた意識のないチンピラをフルスイングで投げつけた。
ガッシャーンという、盛大な音が屋敷に響き渡る。
すでに割れていた窓ガラスが無残にはじけ、三人のチンピラは屋外へと投げ出された。
「…………」
その大型コボルド――リグルは横たわった主人へと顔を近づける。
「…………リ、グ……」
意識は朦朧としているようだが、確かに息はあった。
流血するような傷はないが、代わりにその片足は、不自然に折れ曲がっている。
「…………」
リグルは主人の体を押し、楽な体勢にしてやると、割れた窓を抜け星空の下へと姿をさらす。
外でガラスの破片と共に倒れているのは、右肩から血を流す意識のないチンピラただ一人だけ。
残りの二人はどうやら逃げたらしい。
●
その日の夜、屋敷の近隣に住んでいた人々は轟く雄叫びで目を覚ました。
その異変に気づき、いちはやく屋敷を訪れた住民が目撃したのは止めることなく吼え続ける大型コボルドの姿だったという。
●
リグルはやってきた目撃者を一瞥すると、獲物を追って夜の闇へと消えた。
五年前のことになる。
生まれつき左耳は無く、幼体にしては一回り以上大きい体格。胎内から落ちると同時に母を死なせてしまったその異形のコボルドが群れから見放されるのは当然の流れだった。
生まれて間もないコボルドに狩りの知識はない。ただ衰弱死を待つだけだったそのコボルドに手を差し伸べたのは、当時、体の衰えを感じ引退を考えていた猟師の老人だった。
●
老人の息子がとある街の領主だったことも幸いし、普通より体格の大きいコボルドでも生活に支障のない広さの屋敷に住めた。老人はそのコボルドと家族のように接し、愛情を込めて育て、『リグル』という名前を与えられた。
「なぁリグル。次の月に孫たちが遊びにくるんじゃが、覚えておるか?」
もちろん覚えていた。
「グルルっ」と小さく鳴き、それを返事とする。
「そうか、そうか。孫たちも昔はリグルのこと怖がってたが……リグルも頑張ったからの。楽しみじゃわい」
頑張った、というのは少し大げさだとリグルは思った。
鋭く長い爪は必要がない。むしろ、絨毯に引っかかって大変だった。
ぎらつく牙も、見せると怖がられる。怖がられるのは寂しかった。だから極力口は開きたくない。
生まれもった大きな体躯も、相手を威圧してしまう。だから、なるべく二足で立つことを控えているだけだ。
だから頑張ったことといえば、まだ小さかった孫たち二人にだけは早く馴染めるようにと、強く甘えることを我慢したことくらいか。
「グルっ」
「リグルもいい子に育ったが、謙虚すぎていかんの」
その鳴き声だけでリグルの思いを汲み、老人はそう呟きながらリグルの頭を撫でた。
「グルルン!」
その撫でが心地いいのだろう。ぺたりと右耳を伏せ、ふかふかの毛並みと尻尾を上機嫌に揺らしながら幸せそうな顔を浮かべるのだった。
――――数時間後、その生活に亀裂が走るとは知らずに。
●
この街の人口は他の都市と比べても、これといって多いわけではない。
一番の特徴といえば、工業系の建造物が多いことだ。
増築や改築。あるいは逆に細い道を無理やりに通し、必要の無くなった建造物の中には使われなくなったまま放置されているものもある。
そんな街だからだろう。迷路のように入り組んだ路地が形成され、街の領主でさえもそのすべてを洗い出し切れてはいない。
そんな街に日陰者が多く潜むのは自然だった。
この街には工業地区が多い他にもう一つ、大きな特徴がある。
それは不良やチンピラといった柄の悪い連中が異常なほど多いということだ。
●
静謐な夜の空気にガラスの割れる音が響き渡り、そのコボルドは何事かと飛び起きた。
混乱したのは一瞬で、音源が主人である老人の部屋の方角だと気づくやいなや、全脚力を使って走り出だす。
壷が割れる音が鳴り。箪笥が倒れたのか、床が僅かに振動する。
聞こえてくるのは聞き覚えのない男の声だ。
「おいおいおい? ここってば領主の屋敷だろう? いくらなんでもシケすぎじゃねーか」
「アニキ! こっちの箪笥にゃなにもありやせんぜ!」
「あーあ、まじでなんもねえ。どうするよアニキ」
三人の男たちがそれぞれ愚痴をもらす。
「阿呆、が……。息子の屋敷と間違えるなんぞ、とんだ愚か者が忍び込んだものじゃの……」
「ンあ?? よれよれのジジィが調子に乗ったこといってんじゃねーぞ!!」
ゴスッという鈍い音が鳴るのと、コボルドが老人の寝室に飛び込むのは殆ど同時。
その獣の瞳に映り込んだのは、金属棒を振り下ろした男と、ぐったりと崩れ落ちる老人の姿……。
コボルドの思考が白で塗りつぶされ、次に、赤黒い斑点が思考を染め上げていく。
「ったく、あーあ。とんだ無駄骨じゃねーかよ…………、お?」
素っ頓狂に語尾を濁したのは、アニキと呼ばれていた男。
舎弟と思われる二人がその声に反応しようとするが、それよりも速く、舎弟の一人のシルエットがグシャリと折れた。
「……え?」
その声を発したのは、まだ無事なほうの舎弟だった。
視線の先には、その肩から夥しい血を流す舎弟仲間と、乱立する牙を突き立てた大型コボルドの姿……。
「ガウウウウウウウ…………」
低く唸る獣の声で正気に戻ったのか、アニキと舎弟、無事な二人が割れた窓へと引き返す。
その二人の背中目掛けて、コボルドは咥えていた意識のないチンピラをフルスイングで投げつけた。
ガッシャーンという、盛大な音が屋敷に響き渡る。
すでに割れていた窓ガラスが無残にはじけ、三人のチンピラは屋外へと投げ出された。
「…………」
その大型コボルド――リグルは横たわった主人へと顔を近づける。
「…………リ、グ……」
意識は朦朧としているようだが、確かに息はあった。
流血するような傷はないが、代わりにその片足は、不自然に折れ曲がっている。
「…………」
リグルは主人の体を押し、楽な体勢にしてやると、割れた窓を抜け星空の下へと姿をさらす。
外でガラスの破片と共に倒れているのは、右肩から血を流す意識のないチンピラただ一人だけ。
残りの二人はどうやら逃げたらしい。
●
その日の夜、屋敷の近隣に住んでいた人々は轟く雄叫びで目を覚ました。
その異変に気づき、いちはやく屋敷を訪れた住民が目撃したのは止めることなく吼え続ける大型コボルドの姿だったという。
●
リグルはやってきた目撃者を一瞥すると、獲物を追って夜の闇へと消えた。
解説
【解説】
目標:街中で徘徊する大型コボルドの対処
依頼があったのはOPの翌朝。
依頼者はこの街の領主。老人の息子である領主は、老人とそのコボルドの経緯を知っているため、老人とコボルドの関係は伝えてある。屋敷を襲ったのは街のチンピラだろう旨を話している。
OPの老人は街の治療施設にいる。意識はある。
また、肩から血を流して気絶していたチンピラは意識こそまだ戻ってないものの、後遺症も残らず回復できる見込み。
被害状況は夜の目撃以降ゼロ。街でちらほらと大型コボルドの目撃情報があり。
逃げた二人のチンピラの所在は不明だが、まだ健在。チンピラ同士で迷路のような路地の情報を交換しつつ街を逃げ回っている模様。
大型コボルドの情報
・大きさは通常のコボルドの二倍ほど(二メートルくらい)。
・爪は切っているため爪攻撃はないが、パンチくらいはある。
・あとは噛み付き。
・通常にコボルドよりも、ややすばしっこい。
・人間の言葉を理解できる。
・知能は人間の子供と同程度と思われる。
・臭いで獲物(チンピラ二人)を追っている。
フィールドについてはお任せで。OPの街情報から好きな接触場所を考え、誘導するなり待ち伏せするなりして遭遇してください。
目標:街中で徘徊する大型コボルドの対処
依頼があったのはOPの翌朝。
依頼者はこの街の領主。老人の息子である領主は、老人とそのコボルドの経緯を知っているため、老人とコボルドの関係は伝えてある。屋敷を襲ったのは街のチンピラだろう旨を話している。
OPの老人は街の治療施設にいる。意識はある。
また、肩から血を流して気絶していたチンピラは意識こそまだ戻ってないものの、後遺症も残らず回復できる見込み。
被害状況は夜の目撃以降ゼロ。街でちらほらと大型コボルドの目撃情報があり。
逃げた二人のチンピラの所在は不明だが、まだ健在。チンピラ同士で迷路のような路地の情報を交換しつつ街を逃げ回っている模様。
大型コボルドの情報
・大きさは通常のコボルドの二倍ほど(二メートルくらい)。
・爪は切っているため爪攻撃はないが、パンチくらいはある。
・あとは噛み付き。
・通常にコボルドよりも、ややすばしっこい。
・人間の言葉を理解できる。
・知能は人間の子供と同程度と思われる。
・臭いで獲物(チンピラ二人)を追っている。
フィールドについてはお任せで。OPの街情報から好きな接触場所を考え、誘導するなり待ち伏せするなりして遭遇してください。
マスターより
すっごく久しぶりな初心者MS。須崎なうです。
今回の目標は大型コボルドの『対処』です。目標がちょっと曖昧ですが、物語がどのような結末になるかはプレイヤーさん達の裁量に任せます。
ちなみに、一作目のウィルズの話と同じ街が舞台で、ウィルズの事件から二ヶ月後となっています。利用できるものがあるかわかりませんが、そっちの情報から話題をつくってもオッケーです。
でも正直、一番心配なのは街の領主のメンタル……。
今回の目標は大型コボルドの『対処』です。目標がちょっと曖昧ですが、物語がどのような結末になるかはプレイヤーさん達の裁量に任せます。
ちなみに、一作目のウィルズの話と同じ街が舞台で、ウィルズの事件から二ヶ月後となっています。利用できるものがあるかわかりませんが、そっちの情報から話題をつくってもオッケーです。
でも正直、一番心配なのは街の領主のメンタル……。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2018/02/23 02:59
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 イルミナ(ka5759) エルフ|17才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2018/02/13 08:54:36 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/02/11 23:42:29 |