ゲスト
(ka0000)
ツミビトならざる貴兄の幻影
マスター:文ノ字律丸

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在8人 / 6~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2018/02/22 15:00
- リプレイ完成予定
- 2018/03/03 15:00
オープニング
――お兄様は優れたお人でした。精神に優れ、肉体に優れ、そしてハンターとしても優秀なお人でした。私はそんなお兄様をずっとお慕い申し上げておりました。
「貴様はもはやウラジーミルの家にはふさわしくないのだ」
少女が、叔父夫婦にそんな罵声を浴びせられたのは、とある晩餐の最中。
ウラジーミル家前当主ヴォコバン後妻の娘として寵愛を受けていた少女だったが、ヴォコバンが事故により急逝すると、彼女が一族から向けられる視線は180度変わってしまった。
理由は、遺産だった。
ヴォコバンは遺言により、ほとんどの遺産を少女が受け取るようにと綴っていたため、少女がウラジーミル家にいられると、面白くないと考える輩がいたのだ。
その筆頭が叔父夫婦だった。
リアルブルーのように法治が常識となっているならいざ知らず、ここはクリムゾンウェスト。法があるにせよ、それは徹底的ではなく抜け道も多かった。
少女にとって体裁の悪いことに、彼女の母親である娼婦上がりの女は他に男を作って、1年以上も前にどこかへ蒸発してしまった後だった。
もはや、少女はどこぞとも知らぬ野に解き放たれ野垂れ死にするか、自ら娼館に行って生きる活路を見いだすかの二択しか、選ぶことができなかった。
そんな少女を救ったのは、彼女の腹違いの兄だった。
「待ってください。この子はまだ10歳なんですよ! お願いします、この子にそんな過酷な運命を背負わせるなんて……」
「まだ10歳ではない、もう10歳だ。そいつは子供とはいえ、女だぞ。股を開けばいかようにも生きられよう」
「あ、あんたって人は……ッ!」
「わかったわかった、慈悲をくれてやろう。北方に前当主の隠れ館があったはずだ。あれをくれてやるから、貴様も一緒について行ってやれ。ほら、10歳の子供に辺境は辛いだろ? なあ、お兄様よぉ」
「欲に目がくらんだ化け物め……」
「化け物……? 俺を歪虚と罵るか? 俺は、ウラジーミル家次期当主だぞ! さあ、早く荷物を纏めてこの屋敷から出て行け!! 目障りな奴が二人も減って、俺は大満足だ!!」
少女は幼いながらも、自分のせいで兄が窮地に追い込まれているのがわかった。
「……お兄様」
心配して、兄の袖口を引っ張る。
「大丈夫だよ、アリス。お前は兄さんが守るからな」
そして、少女と、その兄はウラジーミルの屋敷から追い出された。
わずかな路銀と、館のさび付いた鍵を手に。
二人は、北方のなだらかな丘にある小さな館で暮らし始めた。
辺鄙な土地で、人との交流もわずかしかない。
それでも、少女は不幸に思わなかった。悲しくはなかった。
このまま時が止まってしまえばいいのにと、いつも思っていた。
愛する兄を見つめながら。
そんな安寧の時間が二年も続き――。
「アリス、二、三日、家を空けるが大丈夫だね?」
「お兄様、アリスはもう十二ですわ。心配されることもありません」
「そうだったね。もう、立派なレディだ」
「はい。お兄様」
「じゃあ、行ってくるよ」
兄は妹の唇に接吻をする。
妹はそのとろけるような熱に、目を潤ませた。
あの日から、兄は帰ってこなかった。
代わりに届いたのは、兄が歪虚との戦いに敗れ亡くなったというハンターズソサエティからの事後報告。
だが、少女はいつまでも兄を待ち続けた。
兄は死んでなんかいない。
いつか帰ってくる。
そして――その願いが届いた。
「あら、お兄様!! 遅かったですわ!! わたくし、死んでしまうかと思った」
「焦らすのがお好きですのね、まったく、いつまでも子供みたい」
「うふふ、そんなことを言って、わたくしをからかっているのですね」
「さあ、夕餉にいたしましょう」
「お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様――――ああ、お兄様」
「……え、お兄様? やり残したことがある? そうですわね、あの愚蒙な豚共を生かしておくことはできませんわ。ええ、やりましょう。お手伝いしますわ」
「お兄様、久しぶりに、キスして……」
●ハンターオフィス
その日届いた事件性の依頼を受付嬢が読み始めた。
「ウラジミール家当主ミリア・ウラジミールとその妻バナジが殺害されました。犯人は二人。実行犯が歪虚であるということ。そのため、我々が動くことになりました」
ハンターの一人が挙手し、犯人の所在を質問した。
受付嬢はこともなげに頷き、返答をする。
「犯人のアジトは北方北部。幻獣の森にほど近いエリアに建つ、館です。それから犯人の詳細なのですが――」
受付嬢は資料を読んで、唇を噛むように黙した。
「……歪虚の一体は元ハンターのハンス・ウラジーミル。そして、協力者はその妹のアリス・ウラジーミル。妹の方はまだ人間らしい、とのこと」
世もないとばかりに暗く落ち込む声で、受付嬢はハンター達に宣言する。
「目的は、堕落者ハンス・ウラジーミルの討伐。ならびに、アリス・ウラジーミルの救出。これは、ハンターズソサエティの沽券に関わる事態です。くれぐれも失念しないように」
「貴様はもはやウラジーミルの家にはふさわしくないのだ」
少女が、叔父夫婦にそんな罵声を浴びせられたのは、とある晩餐の最中。
ウラジーミル家前当主ヴォコバン後妻の娘として寵愛を受けていた少女だったが、ヴォコバンが事故により急逝すると、彼女が一族から向けられる視線は180度変わってしまった。
理由は、遺産だった。
ヴォコバンは遺言により、ほとんどの遺産を少女が受け取るようにと綴っていたため、少女がウラジーミル家にいられると、面白くないと考える輩がいたのだ。
その筆頭が叔父夫婦だった。
リアルブルーのように法治が常識となっているならいざ知らず、ここはクリムゾンウェスト。法があるにせよ、それは徹底的ではなく抜け道も多かった。
少女にとって体裁の悪いことに、彼女の母親である娼婦上がりの女は他に男を作って、1年以上も前にどこかへ蒸発してしまった後だった。
もはや、少女はどこぞとも知らぬ野に解き放たれ野垂れ死にするか、自ら娼館に行って生きる活路を見いだすかの二択しか、選ぶことができなかった。
そんな少女を救ったのは、彼女の腹違いの兄だった。
「待ってください。この子はまだ10歳なんですよ! お願いします、この子にそんな過酷な運命を背負わせるなんて……」
「まだ10歳ではない、もう10歳だ。そいつは子供とはいえ、女だぞ。股を開けばいかようにも生きられよう」
「あ、あんたって人は……ッ!」
「わかったわかった、慈悲をくれてやろう。北方に前当主の隠れ館があったはずだ。あれをくれてやるから、貴様も一緒について行ってやれ。ほら、10歳の子供に辺境は辛いだろ? なあ、お兄様よぉ」
「欲に目がくらんだ化け物め……」
「化け物……? 俺を歪虚と罵るか? 俺は、ウラジーミル家次期当主だぞ! さあ、早く荷物を纏めてこの屋敷から出て行け!! 目障りな奴が二人も減って、俺は大満足だ!!」
少女は幼いながらも、自分のせいで兄が窮地に追い込まれているのがわかった。
「……お兄様」
心配して、兄の袖口を引っ張る。
「大丈夫だよ、アリス。お前は兄さんが守るからな」
そして、少女と、その兄はウラジーミルの屋敷から追い出された。
わずかな路銀と、館のさび付いた鍵を手に。
二人は、北方のなだらかな丘にある小さな館で暮らし始めた。
辺鄙な土地で、人との交流もわずかしかない。
それでも、少女は不幸に思わなかった。悲しくはなかった。
このまま時が止まってしまえばいいのにと、いつも思っていた。
愛する兄を見つめながら。
そんな安寧の時間が二年も続き――。
「アリス、二、三日、家を空けるが大丈夫だね?」
「お兄様、アリスはもう十二ですわ。心配されることもありません」
「そうだったね。もう、立派なレディだ」
「はい。お兄様」
「じゃあ、行ってくるよ」
兄は妹の唇に接吻をする。
妹はそのとろけるような熱に、目を潤ませた。
あの日から、兄は帰ってこなかった。
代わりに届いたのは、兄が歪虚との戦いに敗れ亡くなったというハンターズソサエティからの事後報告。
だが、少女はいつまでも兄を待ち続けた。
兄は死んでなんかいない。
いつか帰ってくる。
そして――その願いが届いた。
「あら、お兄様!! 遅かったですわ!! わたくし、死んでしまうかと思った」
「焦らすのがお好きですのね、まったく、いつまでも子供みたい」
「うふふ、そんなことを言って、わたくしをからかっているのですね」
「さあ、夕餉にいたしましょう」
「お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様――――ああ、お兄様」
「……え、お兄様? やり残したことがある? そうですわね、あの愚蒙な豚共を生かしておくことはできませんわ。ええ、やりましょう。お手伝いしますわ」
「お兄様、久しぶりに、キスして……」
●ハンターオフィス
その日届いた事件性の依頼を受付嬢が読み始めた。
「ウラジミール家当主ミリア・ウラジミールとその妻バナジが殺害されました。犯人は二人。実行犯が歪虚であるということ。そのため、我々が動くことになりました」
ハンターの一人が挙手し、犯人の所在を質問した。
受付嬢はこともなげに頷き、返答をする。
「犯人のアジトは北方北部。幻獣の森にほど近いエリアに建つ、館です。それから犯人の詳細なのですが――」
受付嬢は資料を読んで、唇を噛むように黙した。
「……歪虚の一体は元ハンターのハンス・ウラジーミル。そして、協力者はその妹のアリス・ウラジーミル。妹の方はまだ人間らしい、とのこと」
世もないとばかりに暗く落ち込む声で、受付嬢はハンター達に宣言する。
「目的は、堕落者ハンス・ウラジーミルの討伐。ならびに、アリス・ウラジーミルの救出。これは、ハンターズソサエティの沽券に関わる事態です。くれぐれも失念しないように」
解説
●目的
『堕落者ハンス・ウラジーミルの討伐』と『アリス・ウラジーミルの救出』
●敵情報
・堕落者ハンス・ウラジーミル
《外見》
人の言葉は操れない。目は虚ろ。部分的に皮膚が爛れ落ち。左腕は鋭利な刃になっている。右腕と両足は、霊闘士か狼男のように銀色の体毛で覆われ、巨大な爪が剥き出しになっている。生前は霊闘士だったため、その影響が出ているものと思われる。さすがに霊呪は使えないようだ。
《戦闘スタイル》
近距離型。素早く移動し、一気に攻撃を仕掛ける。
アリス・ウラジーミルを守りながら動くため、アリス・ウラジーミルから一定距離離れない。
《スキル》
・狼撃 一気に距離を詰め、速度の乗った攻撃を繰り出す。
・狼撃必撃 狼撃に加え、一度に3回攻撃をする。
(使用した後は反動で1ターン動けなくなる)
・受け流し 攻撃を受け流す。
《注意事項》
アリスに近寄るものは全て敵と見なす。
アリスを守ることが、彼に残された唯一の想い。
・妹アリス・ウラジーミル
《外見》
幼い少女。赤いドレスを着て、赤いケープを肩にかけている。銀髪のロングで、ウェーブがかっている。あと数年もすれば傾国の美女にすらなりうることが予想されるような、絶世の美少女。兄のことを心底から信頼し、彼がまだ生きていると本気で信じている。
《戦闘スタイル》
彼女に戦闘能力はない。
《スキル》
・妹の声 ハンス・ウラジーミルの戦闘意欲を向上させ、身体能力を向上させる。
・妹のキス ハンス・ウラジーミルを回復する。
《注意事項》
彼女は契約者ではない。
●バトルフィールド
《館》
開かれた場所に建つ、小さな洋館。
動き回るには少し狭い。
《館の外》
なだらかな丘陵で、館の周りには色とりどりの花が咲いている。
森までは、およそ50メートル。
(館の周りには遮蔽物が存在しない)
『堕落者ハンス・ウラジーミルの討伐』と『アリス・ウラジーミルの救出』
●敵情報
・堕落者ハンス・ウラジーミル
《外見》
人の言葉は操れない。目は虚ろ。部分的に皮膚が爛れ落ち。左腕は鋭利な刃になっている。右腕と両足は、霊闘士か狼男のように銀色の体毛で覆われ、巨大な爪が剥き出しになっている。生前は霊闘士だったため、その影響が出ているものと思われる。さすがに霊呪は使えないようだ。
《戦闘スタイル》
近距離型。素早く移動し、一気に攻撃を仕掛ける。
アリス・ウラジーミルを守りながら動くため、アリス・ウラジーミルから一定距離離れない。
《スキル》
・狼撃 一気に距離を詰め、速度の乗った攻撃を繰り出す。
・狼撃必撃 狼撃に加え、一度に3回攻撃をする。
(使用した後は反動で1ターン動けなくなる)
・受け流し 攻撃を受け流す。
《注意事項》
アリスに近寄るものは全て敵と見なす。
アリスを守ることが、彼に残された唯一の想い。
・妹アリス・ウラジーミル
《外見》
幼い少女。赤いドレスを着て、赤いケープを肩にかけている。銀髪のロングで、ウェーブがかっている。あと数年もすれば傾国の美女にすらなりうることが予想されるような、絶世の美少女。兄のことを心底から信頼し、彼がまだ生きていると本気で信じている。
《戦闘スタイル》
彼女に戦闘能力はない。
《スキル》
・妹の声 ハンス・ウラジーミルの戦闘意欲を向上させ、身体能力を向上させる。
・妹のキス ハンス・ウラジーミルを回復する。
《注意事項》
彼女は契約者ではない。
●バトルフィールド
《館》
開かれた場所に建つ、小さな洋館。
動き回るには少し狭い。
《館の外》
なだらかな丘陵で、館の周りには色とりどりの花が咲いている。
森までは、およそ50メートル。
(館の周りには遮蔽物が存在しない)
マスターより
お疲れ様です、文ノ字です。
今回は悲しいお話です。兄妹の悲恋というのは書いていて辛いものがありますね。
それだけに、燃えてくるのですが……。
あなたなら、彼女達の結末をどう左右しますか?
今回は悲しいお話です。兄妹の悲恋というのは書いていて辛いものがありますね。
それだけに、燃えてくるのですが……。
あなたなら、彼女達の結末をどう左右しますか?
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2018/02/25 09:36
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
【相談卓】悪夢の再会 コーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561) 人間(リアルブルー)|25才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2018/02/22 13:40:42 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/02/21 09:29:39 |