• 戦闘

ひび割れた欠片たち

マスター:神宮寺飛鳥

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
プレイング締切
2014/12/09 12:00
リプレイ完成予定
2014/12/18 12:00

オープニング

「――間違いない。咎人キアラだ」
 エルフハイムの最奥地、神霊樹の眠るオプストハイム。古来からこの里を収める長老達は渋い表情で議論に興じていた。
 元々長老会という名の決定装置は頻繁に招集されるべきものではない。実際ここ数年の間、議会が開かれる事自体が稀だった筈。
 それもこれも、全てはあのサルヴァトーレ・ロッソなる異界の船がやってきてから。人間の国と歪虚、そして維新派エルフまでが活動を活発化させている。
「悩ましいですな。“咎人”までが動き出すとは……」
「咎人ジュリは人間に拿捕されたと聞く。あれもここ数年の間鳴りを潜めていた筈が、急に活動を再開した物であったな?」
「ジュリとキアラは元は行動を共にしていましたが、最近は別行動だったと聞いています。今回の騒動には無関係かと」
 エルフハイムの高官でもある“図書館”の司書の一人が資料を片手に口を挟む。老人達は次々に溜息を零し、テーブルの上を陰気な声が行き交う。
「キアラはジュリとは違う。あ奴は元々器の候補者であった。器とそれに伴う術、エルフハイムの神秘に近づきすぎている」
「だのにこれまで何の問題も起きていなかったのは、奴が腐っても器の候補者としての矜持を持っていたから。それもいつまで持つかはわかりません。時の流れは膨大です」
「……里を抜け罪を重ねる咎人どもめ。やつらの生、それその物が害悪よ」
 ――咎人。それはエルフハイムが罪の烙印を押し、その生命を刈り取る対象として定めた者達である。
 エルフハイムの住人が森の外に出る事そのものは罪ではない。エルフには旅をし、見聞の理を持ち帰る風習があるからだ。
 しかし中にはエルフハイムに反旗を翻す者達もいる。ことエルフハイムにおいて裏切りは最も重い罪。その償いは命を以って全うするしかない。
「やむを得まい。目についてしまった以上罰を下さぬわけにはいかん。執行者を送り出す」
「お言葉ですが。キアラもまた元執行者です。警備隊の中でも腕が立ち、こと森林地帯におけるサイレントキリングにおいて右に出る者はいません」
「現行の執行者では荷が重いか……。あの時代は様々な事が重なりすぎた。だからこそあんな異常を来す個体が現れる」
「今の執行者の中で腕の立つ者をあてがうしかあるまい。何分外の事だ。追撃に関してはある程度任せる」
「では、器の扱いは器の関係者に任せるが良かろう。――ジエルデ、貴様の手駒から追手を用意せよ。器殺しは貴様の得意分野であろう」
 年齢だけではなく、外見も老人となった長老エルフ達の中、その末席にまだ若さを保つ女が一人座っていた。
 場違いとも言えるほど女は瑞々しく、しかし他の長老の例にもれず、その瞳はとうに死んでいる。
「承知いたしました」
「くれぐれも情けはかけるでないぞ、ジエルデ。“アイリスの大罪”、その二の舞いだけは避けねばならぬ」
「……無論です。私は同胞を裁き、同胞を討ち、その亡骸を葬る為だけにここにいるのですから」
 誰にも見えぬように作った握り拳。大丈夫、声は震えてなんかいないし、その瞳に涙なんて溢れない。
 殺して殺して殺しまくる。同胞殺しの異端は、いつも通りその役割に従事した。



「これより咎人キアラの追撃戦を開始します。今この時より貴方はハジャを名乗り、外部の者として振る舞いなさい」
 オプストハイムの一画。木漏れ日の下に黒衣の男が立っていた。ジエルデの言葉に従い男は黒衣を剥ぎ取り素顔を露わにする。
「了解。これよりハジャ・エルフハイムとして咎人殲滅を開始します……っと。で? 戦力はまさか俺だけかい?」
「我々の任務は本来器の守護、そこに穴を作る事は出来ません」
「咎人狩りにソロで行くのはきっついなー。俺に死ねって言ってるよね、それ。しかも俺が抜けても戦力に穴は出来ませんときた」
「逆です。あなた一人で十分で、あなたならば死なないと踏んでいるだけの事」
 単発の男は軽く肩を竦める。どちらにせよ異論はない。執行者なんて役割、そのへんで野垂れ死んで上等だ。
「委細任せますが、一つ。帝国軍がキアラを拿捕する前にその生命を奪うのが前提条件です」
「あー。奴は知りすぎてるからな。ご愁傷様。けど元器候補か。あんたも複雑な心境と見た」
 軽口にジエルデは殺意めいた視線で応じる。この話題に関してはハジャが悪い。誰にだって踏み抜いてはいけない地雷というものがある。
「執行者の俺が言うのもなんだが、こんな事いつまで繰り返すのかねえ、爺さん達は」
「この森が終わるまで、いつまででも、永遠にでも、ですよ」
 目を反らし呟いた言葉はまるで悲鳴のようだ。ハジャはニンマリと笑い、女の肩を叩く。
「確認するが、細かい手段は本日のおまかせで構わないんだな?」
「ええ。追撃暗殺は門外漢です」
「じゃあ俺流でやらせてもらうが――後で文句言うのはナシだかんな?」



 時折、昔の夢を見る。
「キアラ、また姉御の指示を破って人間殺しまくったッスね?」
 ジュリというのは同じ組織の同僚だったエルフの女だ。お互い仲良く咎人認定だが、友人関係としては冷えきっていた。
「姉御も言ってただろ。積極的に命を奪うようではやってる事が同じだって」
「でも、未然に防ぐ事が善行じゃないかな。後で殺しておけば良かったなんて後悔しても間に合わないし。……アイリスはどう思う?」
 石造りの薄暗いアジトの一室。かすかな松明の灯りに照らされて女は振り返った。
 とても長い髪、そして氷のように冷たい眼差し。女は腕を組み息をつき。
「そのようなやり方を続ければいずれは人に、そして同胞に裁かれるでしょう。自戒なさいキアラ。その怒りも憎しみも尊い物ですが、人に当てつけるには濃すぎます」
 師匠でもある女にそう言われては考えてしまう。アイリスとジュリとキアラ、その三人は力も考え方も三つ巴にあった。
 だからこそ保たれていたバランスならば、アイリスが失踪した事を切欠に崩壊したとしても、なんらおかしな事もなかった。
 ゆっくりを瞼を開き、意図して夢から覚める。
 暗闇のロッジの中、まるで少女のような少年は月明かりを弾くナイフの切っ先にまどろんでいた。



 冒険都市リゼリオの酒場。そこでいつものようにくつろいでいたハンターの隣に一人の男が座った。
「マスター、この店で一番いい酒を。俺と、それからこいつにも」
 突然の申し出に目を向けるとそこには若いエルフの男が微笑んでいた。男は琥珀色の液体が注がれたグラスを掲げ。
「あんたハンターだろ? 見たところ腕も立ちそうだ。ちょっといい仕事があるんだが、付き合わんかね?」
 何の悪気もなさそうな笑顔で。気前よく羽振りよく、そう言った。

解説

●目的
咎人キアラの抹殺。


●概要
帝国領内で活動するエルフの犯罪者、キアラ・エルフハイムの抹殺を行う。
キアラはかつて帝国内で猛威を振るったとある犯罪組織の生き残りであり、現在は新たな組織の頭首となっている。
元はエルフハイム出身らしい事だけわかっているが、その他の来歴についての情報は存在しない。
キアラは森で活動する人間を無作為に襲撃、殺傷する覚醒者で、それなりの被害報告があがって新たにビンゴブックに名を連ねた。
今回の依頼人はハジャ・エルフハイムという賞金稼ぎで、キアラ抹殺の為の手を求めハンターに協力を求めた。
キアラは現在幾つかのアジトを転々としている。それらは全て森の奥深くにあり、森はキアラのテリトリーでもある。
尚、依頼人はその場でのキアラ抹殺を所望だが、犯罪者は殺すよりも生かして捕らえた方が帝国からの報酬は高額だ。


●敵戦力
『キアラ』
エルフハイム出身。猟撃士。
何故か女装しているが男。年齢はもうかなり行っている模様。
エルフハイムで罪を犯した者に与えられる咎人の称号を持つ一人。革命戦争前、テロリストとして各地で人間の殺戮に興じた。
謹製の弓で武装。ナイフでの近接戦もある程度対応出来る模様。人間嫌いだが……?


『エルフ兵』
キアランの部下。エルフハイムの始末屋に似た外見。
レイピアとショートソードの二刀流を使う少し強い個体が一人、その他一般兵的な個体が複数。


●???
『ハジャ』
エルフハイム出身の賞金稼ぎ。疾影士。
人間もハンターもばっちこい。誰とでも仲良くなるけどややウザい。


●特筆
PCはハジャと共に幾つかアジトを探し回り、お目当てのアジトを発見した所からリプレイ開始。その為探索は不要。
襲撃をかける時間は昼夜自由。ハジャはハンターとも順調に連携。
キアラを抹殺出来ずとも追い詰められればある程度の成功。キアラを生かして捕獲した場合は成功度が大きく低下する。

マスターより

お世話になっております、神宮寺でございます。

続きものです。おしタン4からの派生依頼です。
おしタン4と同じ人達が大体ぞろっと出てきます。
キアラは強いと言っても覚醒者がこぞってタコ殴りにすれば倒せない相手ではありません。
普通に依頼をこなすだけならばさほど難しくはありませんが、色々余計なことをすると……。
いえ、余計なことをした方が得られる物はあるかもしれませんが。

それでは承認致します。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2014/12/13 04:11

参加者一覧

  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • 【Ⅲ】命と愛の重みを知る
    フェリア(ka2870
    人間(紅)|21才|女性|魔術師
  • いつか、が来るなら
    イブリス・アリア(ka3359
    人間(紅)|21才|男性|疾影士

  • Σ(ka3450
    人間(蒼)|17才|男性|疾影士
  • 運命の回答者
    リサ=メテオール(ka3520
    人間(紅)|16才|女性|聖導士
  • 魂の灯火
    クリス・クロフォード(ka3628
    人間(蒼)|18才|男性|闘狩人
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/12/08 01:55:34
アイコン 相談卓
リサ=メテオール(ka3520
人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2014/12/08 23:43:57