ゲスト
(ka0000)
男と、娘と、犬
マスター:硲銘介

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2014/12/13 09:00
- リプレイ完成予定
- 2014/12/22 09:00
オープニング
●男と、娘と、犬
●
月の照らす夜道を一人の男が歩いていた。
結構な距離を歩きとおしていたにも関わらず、男の足取りは軽かった。
とはいえ、男は旅慣れているという訳ではない。彼は細工師、指の動きこそ至妙の域だが、体力的には一般男性のそれより劣る程度だろう。
それでも、夜道を行く男は次第に歩みを速めてすらいく。その表情も疲れを訴えるものより、喜びの色が強いように見える。
何故か。男の仕事が特別旨くいったという訳ではない。
自身の手掛けた細工品を売りに町へ行き、売り切った辺りで引き上げ、こうして村へ帰るのが男の日常だった。
此度もそれは変わらず、むしろ今回は不調で、売り切るのに十日もかかってしまった。
品質を落としたつもりは無かったのだが、デザインの問題だろうか。今時の若者の感性と自分の作る物は噛み合わなくなってきているのかもしれない。
そんな反省を頭の中で繰り返しつつも、足は健気に歩を進めていく。毎回通る道だけに暗がりでも不安は無い。
疲れた体には応える小高い丘を上り終えて、男の顔が一層明るくなる。視線の先には、男の住まう村はずれの小さな家。窓からはまだ明かりが漏れている。
思わず、男は走り出していた。ここまでの疲れなど、どこかへ吹き飛んでしまったかのようだった。
明かりが点いているということはまだ眠っていないということ。随分遅くなってしまったが、娘はまだ起きているらしい。
男は走りながら、自身の首からぶら下げた花を象ったペンダントを見る。
それは彼の娘が、父親の為に作ってくれた物だ。形も歪で、花びらなんて今にも取れてしまいそうな不安定さ。自分が作った物には遠く及ばない、がらくたとさえ言える粗末な出来だった。
それでも、嬉しかった。むしろ不器用なりの頑張りを感じられるそれが愛おしくてたまらないとさえ思えた。
お返しにと、男も娘の為に仕立てた細工を送った。受注した鉱石の中に偶然紛れていた見たことの無い石を加工した物だったが、仕上がりは中々だと自負していた。
一品物のそれを受け取った、娘の嬉しそうな笑顔を思い出す。妻を早くに亡くした男にとって、彼女の見せるそんな表情が何よりも励ましだった。
今も、娘に早く会いたい、その一心で疲れているにも関わらず、こうして帰路を急いでいる。
息を切らしながら家の前まで来た男はすぐにドアをノックしようとした。
が、ふと思い立って愛犬の姿を見ておこうと留まった。自分の留守の間、娘と家を守ってくれていたもう一人の家族にも挨拶が必要だろう。
と、男は家の外にある犬小屋を覗いた――が、そこに愛犬の姿は無かった。
首を傾げる男。娘と家の中で遊んでいるのだろうか。仕事場を荒らされては困るから、家には入れないように普段から言いつけてあるのだが。
しかし、今回は自分にも落ち度がある。出先から手紙を送ってはいたが、こんなに長く家を空けてしまったのだから。娘も不安だったのかもしれない。
そう思うと怒る気も起きず、軽く注意する程度に留めよう、と男は決めた。気を取り直して再び、家の戸をノックする。
すぐに扉が開いて、満面の笑みで自分を迎える娘が現れる――筈だったのだが、いつまで待っても反応が無い。
灯りを点けたまま眠ってしまったのだろうか。荷物から鍵を取り出し、ドアを開け、家の中に入る。
――と、同時に男は絶句した。部屋の中は荒れ果てていた。鋭利なものでつけた様な傷がそこら中にあるだけでなく、家具の多くが損壊していた。
強盗――まずそう思ったが、戸締りはしてあった。何より、この荒れ方はそんなものではないように思えた。
次に、男の口から娘の名前が漏れた。同時に視線が部屋のあちこちを探る。焦燥感に襲われ、娘の名を叫ぶ。
――返事はない。慌てて、娘の寝室へ向かう。途中の廊下も傷だらけだったが、そんなことはどうでもよかった。ただ娘の身だけを案じて、走った。
そうしてすぐに部屋の前へ辿り着いて、扉を開けた――瞬間、何かが男の喉下を妁いた。
なんだ、これは。男に分かったのは何かが自分の喉を引き裂いたこと、そして、そこが妁けるように痛いこと。
激痛に悲鳴を上げようとするも、既に男が発するそれは声にならない。悲痛な音が家中に響き渡る。
首から血が滴る。視界が反転しそうになる程の激痛、男は立っていられなくなり転倒する。その拍子に花のペンダントが外れた。
ペンダントを拾おうと必死に体を捻って手を伸ばす。そんな場合じゃないのは分かっている。喉下からの流血はすぐに――どうにかできるものなら――何とかしなければ死んでしまう。それでも、手を伸ばした。
だが、それはすぐに止まった。力尽きたのではない。ぼやけていく視界の中に、自分と同じように床に広がる赤色、そこ、に、伏し、た――娘だったものが目に入った。
何かが男の顔を伝って床を濡らしていく。それが自分の流した血なのか、涙なのか――もう男には確かめる術も無い。
そうして、視界は暗転する。全てが喪失する手前――男は犬の遠吠えを耳にした。
●
ハンターオフィスへとやってきた男――村人の代表という食料品店の主は悲痛な面持ちで語った。
細工師の父とその娘、二人暮らしの家族を襲った悲劇。
仕事で度々家を空ける父親と、周囲に心配をかけまいと振舞う健気な少女、彼らの家に獣から変じた雑魔が住み着いたという。
「しっかりした子だったのだけど、やはりまだ幼いから。私達も気にかけるようにしていたんだが……やはり、飼い犬が死んでしまったのがきっかけだったのだろう」
その家族には飼い犬がいた。少女にとっては、父の留守を一緒に守る友達だったという。だが――その友達は父親のいないその時に死んでしまったらしい。
病気か、寿命か。愛犬の死に傷心し少女はふさぎ込み、村の子供達の遊びの誘いも断り、一人家に篭っていた。亡骸と共に、父の帰還を待っていた。
「あの子、いつも親父さんが戻ると嬉しそうに一緒に買出しに来たんですよ。だけど、今回はそれが無くてね。ずっと姿が見えなくて、それで――」
様子を見に行った村人達が窓から家の様子を窺うと――闊歩する血濡れの異形を目にしたという。
彼らは直感的に悟った。死んだ飼い犬が雑魔に姿を変え、家族を襲ったのだと。
店主は語る。睦まじい少女と飼い犬の姿を今も思い出せるのに、それでも、恐ろしくて堪らないのだと。
「……村の平和の為なんです。あの犬を――いえ、雑魔を殺してください。それと……出来れば、せめて家族の遺体を弔ってやりたいと思うんです」
救うことは出来なかったけれど。店主はそう、最後に加えた。
●
月の照らす夜道を一人の男が歩いていた。
結構な距離を歩きとおしていたにも関わらず、男の足取りは軽かった。
とはいえ、男は旅慣れているという訳ではない。彼は細工師、指の動きこそ至妙の域だが、体力的には一般男性のそれより劣る程度だろう。
それでも、夜道を行く男は次第に歩みを速めてすらいく。その表情も疲れを訴えるものより、喜びの色が強いように見える。
何故か。男の仕事が特別旨くいったという訳ではない。
自身の手掛けた細工品を売りに町へ行き、売り切った辺りで引き上げ、こうして村へ帰るのが男の日常だった。
此度もそれは変わらず、むしろ今回は不調で、売り切るのに十日もかかってしまった。
品質を落としたつもりは無かったのだが、デザインの問題だろうか。今時の若者の感性と自分の作る物は噛み合わなくなってきているのかもしれない。
そんな反省を頭の中で繰り返しつつも、足は健気に歩を進めていく。毎回通る道だけに暗がりでも不安は無い。
疲れた体には応える小高い丘を上り終えて、男の顔が一層明るくなる。視線の先には、男の住まう村はずれの小さな家。窓からはまだ明かりが漏れている。
思わず、男は走り出していた。ここまでの疲れなど、どこかへ吹き飛んでしまったかのようだった。
明かりが点いているということはまだ眠っていないということ。随分遅くなってしまったが、娘はまだ起きているらしい。
男は走りながら、自身の首からぶら下げた花を象ったペンダントを見る。
それは彼の娘が、父親の為に作ってくれた物だ。形も歪で、花びらなんて今にも取れてしまいそうな不安定さ。自分が作った物には遠く及ばない、がらくたとさえ言える粗末な出来だった。
それでも、嬉しかった。むしろ不器用なりの頑張りを感じられるそれが愛おしくてたまらないとさえ思えた。
お返しにと、男も娘の為に仕立てた細工を送った。受注した鉱石の中に偶然紛れていた見たことの無い石を加工した物だったが、仕上がりは中々だと自負していた。
一品物のそれを受け取った、娘の嬉しそうな笑顔を思い出す。妻を早くに亡くした男にとって、彼女の見せるそんな表情が何よりも励ましだった。
今も、娘に早く会いたい、その一心で疲れているにも関わらず、こうして帰路を急いでいる。
息を切らしながら家の前まで来た男はすぐにドアをノックしようとした。
が、ふと思い立って愛犬の姿を見ておこうと留まった。自分の留守の間、娘と家を守ってくれていたもう一人の家族にも挨拶が必要だろう。
と、男は家の外にある犬小屋を覗いた――が、そこに愛犬の姿は無かった。
首を傾げる男。娘と家の中で遊んでいるのだろうか。仕事場を荒らされては困るから、家には入れないように普段から言いつけてあるのだが。
しかし、今回は自分にも落ち度がある。出先から手紙を送ってはいたが、こんなに長く家を空けてしまったのだから。娘も不安だったのかもしれない。
そう思うと怒る気も起きず、軽く注意する程度に留めよう、と男は決めた。気を取り直して再び、家の戸をノックする。
すぐに扉が開いて、満面の笑みで自分を迎える娘が現れる――筈だったのだが、いつまで待っても反応が無い。
灯りを点けたまま眠ってしまったのだろうか。荷物から鍵を取り出し、ドアを開け、家の中に入る。
――と、同時に男は絶句した。部屋の中は荒れ果てていた。鋭利なものでつけた様な傷がそこら中にあるだけでなく、家具の多くが損壊していた。
強盗――まずそう思ったが、戸締りはしてあった。何より、この荒れ方はそんなものではないように思えた。
次に、男の口から娘の名前が漏れた。同時に視線が部屋のあちこちを探る。焦燥感に襲われ、娘の名を叫ぶ。
――返事はない。慌てて、娘の寝室へ向かう。途中の廊下も傷だらけだったが、そんなことはどうでもよかった。ただ娘の身だけを案じて、走った。
そうしてすぐに部屋の前へ辿り着いて、扉を開けた――瞬間、何かが男の喉下を妁いた。
なんだ、これは。男に分かったのは何かが自分の喉を引き裂いたこと、そして、そこが妁けるように痛いこと。
激痛に悲鳴を上げようとするも、既に男が発するそれは声にならない。悲痛な音が家中に響き渡る。
首から血が滴る。視界が反転しそうになる程の激痛、男は立っていられなくなり転倒する。その拍子に花のペンダントが外れた。
ペンダントを拾おうと必死に体を捻って手を伸ばす。そんな場合じゃないのは分かっている。喉下からの流血はすぐに――どうにかできるものなら――何とかしなければ死んでしまう。それでも、手を伸ばした。
だが、それはすぐに止まった。力尽きたのではない。ぼやけていく視界の中に、自分と同じように床に広がる赤色、そこ、に、伏し、た――娘だったものが目に入った。
何かが男の顔を伝って床を濡らしていく。それが自分の流した血なのか、涙なのか――もう男には確かめる術も無い。
そうして、視界は暗転する。全てが喪失する手前――男は犬の遠吠えを耳にした。
●
ハンターオフィスへとやってきた男――村人の代表という食料品店の主は悲痛な面持ちで語った。
細工師の父とその娘、二人暮らしの家族を襲った悲劇。
仕事で度々家を空ける父親と、周囲に心配をかけまいと振舞う健気な少女、彼らの家に獣から変じた雑魔が住み着いたという。
「しっかりした子だったのだけど、やはりまだ幼いから。私達も気にかけるようにしていたんだが……やはり、飼い犬が死んでしまったのがきっかけだったのだろう」
その家族には飼い犬がいた。少女にとっては、父の留守を一緒に守る友達だったという。だが――その友達は父親のいないその時に死んでしまったらしい。
病気か、寿命か。愛犬の死に傷心し少女はふさぎ込み、村の子供達の遊びの誘いも断り、一人家に篭っていた。亡骸と共に、父の帰還を待っていた。
「あの子、いつも親父さんが戻ると嬉しそうに一緒に買出しに来たんですよ。だけど、今回はそれが無くてね。ずっと姿が見えなくて、それで――」
様子を見に行った村人達が窓から家の様子を窺うと――闊歩する血濡れの異形を目にしたという。
彼らは直感的に悟った。死んだ飼い犬が雑魔に姿を変え、家族を襲ったのだと。
店主は語る。睦まじい少女と飼い犬の姿を今も思い出せるのに、それでも、恐ろしくて堪らないのだと。
「……村の平和の為なんです。あの犬を――いえ、雑魔を殺してください。それと……出来れば、せめて家族の遺体を弔ってやりたいと思うんです」
救うことは出来なかったけれど。店主はそう、最後に加えた。
解説
一軒家に潜む犬型の雑魔を討伐して頂く依頼です。対象は一体だけです。
現在は家の中から出てきませんが、何かアクションを起こした場合にどうなるかは保障できません。
村に逃げ込まれ被害が出てはいけないので、確実に仕留めてください。
室内での戦いになると予想されます。
また、村人は家族を弔ってやりたいと話しています。
仕事の後には墓参りをしてあげると喜ばれるかもしれません。
現在は家の中から出てきませんが、何かアクションを起こした場合にどうなるかは保障できません。
村に逃げ込まれ被害が出てはいけないので、確実に仕留めてください。
室内での戦いになると予想されます。
また、村人は家族を弔ってやりたいと話しています。
仕事の後には墓参りをしてあげると喜ばれるかもしれません。
マスターより
はじめまして、硲銘介と申します。
この度、マスターとして参加させていただくことになりました。
よろしくお願い致します。
今回の依頼は犬型の雑魔退治となります。
悲劇に見舞われた親子の為、お力を貸していただければ幸いです。
重ねて、よろしくお願い致します。
この度、マスターとして参加させていただくことになりました。
よろしくお願い致します。
今回の依頼は犬型の雑魔退治となります。
悲劇に見舞われた親子の為、お力を貸していただければ幸いです。
重ねて、よろしくお願い致します。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2014/12/20 22:03
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談 アーヴィン(ka3383) 人間(クリムゾンウェスト)|21才|男性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2014/12/12 22:15:03 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/12/09 01:17:44 |