ゲスト
(ka0000)
空の青
マスター:湖欄黒江

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2014/12/13 07:30
- リプレイ完成予定
- 2014/12/22 07:30
オープニング
●
リアルブルーから来たというその客人は、不思議な土産物を持参していた。
自らを元『工業デザイナー』と名乗った上で差し出したのは、小さな金属の筒。
筒の滑らかな側面を彩る不思議な絵に、家族総出で魅入ったものだ。
擬人化された、青い毛並のシマリスらしき生き物が、
見たことのない青い乗り物(客人はそれを『飛行機』と呼んだ)にまたがり、
手を振りながら青い空を飛んでいく絵。
目を見張るほど青く鮮やかに煌めくその筒は、
『チッピー・ブルーのスカイソーダ』と呼ばれる飲料の缶詰だった。
一人前のデザイナーとして、初めて任された仕事の成果。
大喜びで商品サンプルを持ち帰る途中に、クリムゾンウェストへ飛ばされてしまった――
そんな身の上話をしながら、客人は缶の爪を開け、中身をガラスのコップに注いで配った。
異界からもたらされた、驚くべき青さと甘さを持つ炭酸飲料の味に誰もが言葉をなくした。
それはまさに一夜の魔法だった。
●
さる旧帝国貴族の長子・トロップマン伯爵は、
医師から余命1年を宣告されて以来、グラズヘイム王国領の片田舎にある小さな屋敷に籠りきりだった。
財産は大して残っておらず、家族もない。もはやこの世に未練はない。死ぬには良い頃合い。
1日の大半を何をするともなくぼんやりと過ごし、気の向いた折には両親が帝国領から持ち帰った雑多な遺品や、
いずれ自分自身の遺品となる所蔵品を整理し、始末するだけの生活が続いた。
余命宣告から半年ほど経ったある日。
整理中の荷物の中から不意に、木箱に収められた小さな玩具が見つかった。
それはソフトグライダーとか呼ばれる、リアルブルー製の手投げ式飛行機で、
子供の頃、別荘に父が招いた転移者の男からもらったものだった。
すっかり忘れていた。確か缶入り飲料のオマケについていたとかで、飲料ひと箱と一緒に男が置いていった。
始めの内は西方世界にふたつとない珍しい玩具に夢中になったものの、
あの後すぐに革命が起こって家族ともども国を追われ、
ろくに遊ぶ機会もなくなってしまったが、未だにちゃんと残っていたとは。
青く塗られた飛行機の翼に描かれた、笑顔で手を振るシマリスの絵。
そう、チッピー・ブルーとかいう名前のシマリスで、職業は飛行士――
伯爵は飛行機を右手に持って庭へ出た。
庭師に暇を出してから何か月も経ち、辺り一面雑草だらけだ。
思い出せるかぎりの手つきで投げ上げた飛行機は、
晴れ渡った冬空をバックに宙返りして、それから草叢へ落ちた。
●
その夜、伯爵は眠れなかった。
飛行機と共に受け取った、リアルブルー製の缶飲料ひと箱。どこにいった?
両親の遺品にも、自分の所蔵品にもそれらしいものはなかったし、
あるいは国外脱出の際に金に替えてしまったのかも知れないが、もし帝国領内に残してきたとしたら。
冷たい寝床の中で、何度も寝返りを打ちながら思い返す。
客人が別荘を訪れた数日後、革命の知らせに家族ともども大慌てで父の領地へ戻った筈だ。
あのとき、大きな荷物は別荘に残してきたような憶えがある。
飲料の箱も別荘のどこかに隠しておいたのではないか。
客人のその後は分からない。地球への未練を捨てて新しい仕事を探す、
その為の口添えを父へ頼みに、彼は訪れた。革命騒ぎで連絡も絶え、今頃どうしていることやら。
しかし客人が生きていようといまいと『チッピー・ブルーのスカイソーダ』はリアルブルーの産物であり、
この西方世界に存在するのはあのひと箱きり。
だから、別荘まで取りに行かなければ『スカイソーダ』は絶対に手に入らない。
ああ、余命幾ばくもない今頃になって、こんな未練を思い出すとは。
そうだ、何としてもあの『スカイソーダ』をもう1度味わいたい。
夢も恋も知らず、故郷を遠く離れて何ひとつ残さず終わろうとする我が生涯の中で、
たったひとつ鮮烈に輝く少年時代の青い光。
何としても取り戻したい。
●
「……オフィスが派遣した調査員によれば、
当時の管理人はトロップマン家からの給金が途絶えたことで別荘を放棄、
その際に持ち運びが容易な銀器や装飾品を盗んだことは認めましたが、
例の物品に関しては全く知らない様子とのこと。
また、革命直後からゴブリンの群れが周辺に出没し始めたとのことで、
ひときわ人里離れた場所にある問題の別荘は、
近隣の別荘地で当時相次いだ盗難目的の侵入を免れている可能性があります。
よって『チッピー・ブルーのスカイソーダ』は現在も邸内に残存しているものと考え、
今回の捜索・回収依頼が作成されました。
別荘に通じる山道は今では使う者もなく、整備がされていません。
周辺地域では過去、何度かゴブリンの小規模な討伐が行われていますが、
地元自警団の規模に対して群れは少数で、大きな被害をもらたす恐れもなかった為、
山中、別荘周辺に存在するであろう彼らのねぐらは放置されたままです。
トロップマン家の別荘がゴブリンに侵入され、ねぐらに使われているということもあり得ます。
『スカイソーダ』を収めた段ボール箱は、そのままで屋内のどこかに安置されているものと思われます。
発見次第段ボールごと、あるいは別の入れ物に移し替えるなどして、安全な場所まで運び出して下さい。
整備されていない山道、朽ちた建物、そしてゴブリンと、
現場には物品の安全な回収を妨げる危険が数多く存在しています。
物品本体が損傷してしまわぬよう、くれぐれもご注意をお願いします」
リアルブルーから来たというその客人は、不思議な土産物を持参していた。
自らを元『工業デザイナー』と名乗った上で差し出したのは、小さな金属の筒。
筒の滑らかな側面を彩る不思議な絵に、家族総出で魅入ったものだ。
擬人化された、青い毛並のシマリスらしき生き物が、
見たことのない青い乗り物(客人はそれを『飛行機』と呼んだ)にまたがり、
手を振りながら青い空を飛んでいく絵。
目を見張るほど青く鮮やかに煌めくその筒は、
『チッピー・ブルーのスカイソーダ』と呼ばれる飲料の缶詰だった。
一人前のデザイナーとして、初めて任された仕事の成果。
大喜びで商品サンプルを持ち帰る途中に、クリムゾンウェストへ飛ばされてしまった――
そんな身の上話をしながら、客人は缶の爪を開け、中身をガラスのコップに注いで配った。
異界からもたらされた、驚くべき青さと甘さを持つ炭酸飲料の味に誰もが言葉をなくした。
それはまさに一夜の魔法だった。
●
さる旧帝国貴族の長子・トロップマン伯爵は、
医師から余命1年を宣告されて以来、グラズヘイム王国領の片田舎にある小さな屋敷に籠りきりだった。
財産は大して残っておらず、家族もない。もはやこの世に未練はない。死ぬには良い頃合い。
1日の大半を何をするともなくぼんやりと過ごし、気の向いた折には両親が帝国領から持ち帰った雑多な遺品や、
いずれ自分自身の遺品となる所蔵品を整理し、始末するだけの生活が続いた。
余命宣告から半年ほど経ったある日。
整理中の荷物の中から不意に、木箱に収められた小さな玩具が見つかった。
それはソフトグライダーとか呼ばれる、リアルブルー製の手投げ式飛行機で、
子供の頃、別荘に父が招いた転移者の男からもらったものだった。
すっかり忘れていた。確か缶入り飲料のオマケについていたとかで、飲料ひと箱と一緒に男が置いていった。
始めの内は西方世界にふたつとない珍しい玩具に夢中になったものの、
あの後すぐに革命が起こって家族ともども国を追われ、
ろくに遊ぶ機会もなくなってしまったが、未だにちゃんと残っていたとは。
青く塗られた飛行機の翼に描かれた、笑顔で手を振るシマリスの絵。
そう、チッピー・ブルーとかいう名前のシマリスで、職業は飛行士――
伯爵は飛行機を右手に持って庭へ出た。
庭師に暇を出してから何か月も経ち、辺り一面雑草だらけだ。
思い出せるかぎりの手つきで投げ上げた飛行機は、
晴れ渡った冬空をバックに宙返りして、それから草叢へ落ちた。
●
その夜、伯爵は眠れなかった。
飛行機と共に受け取った、リアルブルー製の缶飲料ひと箱。どこにいった?
両親の遺品にも、自分の所蔵品にもそれらしいものはなかったし、
あるいは国外脱出の際に金に替えてしまったのかも知れないが、もし帝国領内に残してきたとしたら。
冷たい寝床の中で、何度も寝返りを打ちながら思い返す。
客人が別荘を訪れた数日後、革命の知らせに家族ともども大慌てで父の領地へ戻った筈だ。
あのとき、大きな荷物は別荘に残してきたような憶えがある。
飲料の箱も別荘のどこかに隠しておいたのではないか。
客人のその後は分からない。地球への未練を捨てて新しい仕事を探す、
その為の口添えを父へ頼みに、彼は訪れた。革命騒ぎで連絡も絶え、今頃どうしていることやら。
しかし客人が生きていようといまいと『チッピー・ブルーのスカイソーダ』はリアルブルーの産物であり、
この西方世界に存在するのはあのひと箱きり。
だから、別荘まで取りに行かなければ『スカイソーダ』は絶対に手に入らない。
ああ、余命幾ばくもない今頃になって、こんな未練を思い出すとは。
そうだ、何としてもあの『スカイソーダ』をもう1度味わいたい。
夢も恋も知らず、故郷を遠く離れて何ひとつ残さず終わろうとする我が生涯の中で、
たったひとつ鮮烈に輝く少年時代の青い光。
何としても取り戻したい。
●
「……オフィスが派遣した調査員によれば、
当時の管理人はトロップマン家からの給金が途絶えたことで別荘を放棄、
その際に持ち運びが容易な銀器や装飾品を盗んだことは認めましたが、
例の物品に関しては全く知らない様子とのこと。
また、革命直後からゴブリンの群れが周辺に出没し始めたとのことで、
ひときわ人里離れた場所にある問題の別荘は、
近隣の別荘地で当時相次いだ盗難目的の侵入を免れている可能性があります。
よって『チッピー・ブルーのスカイソーダ』は現在も邸内に残存しているものと考え、
今回の捜索・回収依頼が作成されました。
別荘に通じる山道は今では使う者もなく、整備がされていません。
周辺地域では過去、何度かゴブリンの小規模な討伐が行われていますが、
地元自警団の規模に対して群れは少数で、大きな被害をもらたす恐れもなかった為、
山中、別荘周辺に存在するであろう彼らのねぐらは放置されたままです。
トロップマン家の別荘がゴブリンに侵入され、ねぐらに使われているということもあり得ます。
『スカイソーダ』を収めた段ボール箱は、そのままで屋内のどこかに安置されているものと思われます。
発見次第段ボールごと、あるいは別の入れ物に移し替えるなどして、安全な場所まで運び出して下さい。
整備されていない山道、朽ちた建物、そしてゴブリンと、
現場には物品の安全な回収を妨げる危険が数多く存在しています。
物品本体が損傷してしまわぬよう、くれぐれもご注意をお願いします」
解説
今回の依頼の目的は、廃墟と化したトロップマン氏の別荘に潜入し、
リアルブルー製の缶入り炭酸飲料『チッピー・ブルーのスカイソーダ』を捜索、回収することです。
別荘は湖に臨む切り立った崖に建てられた、2階立ての石造りの邸宅です。
山道へ通じる北側に広い前庭と正面玄関があり、南側は高さ約50メートルの岩崖に面しています。
山道は整備されておらず、草木の生い茂る獣道と化しています。
別荘はアルファベットのH型をした建物で、
共有スペースを収めた中央棟と、客室のある東西両翼の3棟から成っています。
中央棟は1階に玄関ホール、ダイニングとキッチン、2階はサロンがあります。
同じく2階立ての東西両棟には、それぞれ4部屋の客室が設えられています。
中央棟と東西両棟は1・2階ともに廊下を通って行き来が可能です。
邸内へ進入するには北側の正面玄関、南側の勝手口、1階各部屋の窓が主要な出入口となるでしょう。
また、建物自体は石造りの頑丈なものですが、
一部の床や壁は長年の放置で劣化しており、何かのきっかけで破損する恐れがあります。
現在、別荘はゴブリンの群れのねぐらとなっています。
邸内と周辺、併せて10~15匹ほどのゴブリンが生活しているものと見られ、
別荘へ接近・進入する際に大きな障害となる可能性があります。
『スカイソーダ』は250ミリリットル入りアルミ缶が30本、
段ボール1箱に収められた状態で邸内のどこかに安置されています。
ハンターがこれを運ぶ場合、缶1本につき装備コスト1の携帯品として扱われます。
缶や段ボールは、手元から落とすなどして衝撃を受けた場合は破損してしまうことがあります。
リアルブルー製の缶入り炭酸飲料『チッピー・ブルーのスカイソーダ』を捜索、回収することです。
別荘は湖に臨む切り立った崖に建てられた、2階立ての石造りの邸宅です。
山道へ通じる北側に広い前庭と正面玄関があり、南側は高さ約50メートルの岩崖に面しています。
山道は整備されておらず、草木の生い茂る獣道と化しています。
別荘はアルファベットのH型をした建物で、
共有スペースを収めた中央棟と、客室のある東西両翼の3棟から成っています。
中央棟は1階に玄関ホール、ダイニングとキッチン、2階はサロンがあります。
同じく2階立ての東西両棟には、それぞれ4部屋の客室が設えられています。
中央棟と東西両棟は1・2階ともに廊下を通って行き来が可能です。
邸内へ進入するには北側の正面玄関、南側の勝手口、1階各部屋の窓が主要な出入口となるでしょう。
また、建物自体は石造りの頑丈なものですが、
一部の床や壁は長年の放置で劣化しており、何かのきっかけで破損する恐れがあります。
現在、別荘はゴブリンの群れのねぐらとなっています。
邸内と周辺、併せて10~15匹ほどのゴブリンが生活しているものと見られ、
別荘へ接近・進入する際に大きな障害となる可能性があります。
『スカイソーダ』は250ミリリットル入りアルミ缶が30本、
段ボール1箱に収められた状態で邸内のどこかに安置されています。
ハンターがこれを運ぶ場合、缶1本につき装備コスト1の携帯品として扱われます。
缶や段ボールは、手元から落とすなどして衝撃を受けた場合は破損してしまうことがあります。
マスターより
子供の頃好きだったのに、いつの間にか作られなくなって、
今ではもう食べたり飲んだりできないお菓子や飲み物はありますか?
誰かのお土産でもらった食べ物がおいしかったのに、
食べきっちゃったらもうそれきり、ということもありますよね。
どうしてもというなら、今は通販なり何なりでどうにでもなったりするのかも知れないですが……。
お歳暮とかでもらったきり押入れに突っ込んで忘れていた、古いデザインの缶ジュース、
あるいは田舎の自販機で「これいつから入ってるんだろう?」というような、
古いラベルの飲み物を見つけたりするのにも不思議とロマンを感じます。飲む勇気はないけれど。
今ではもう食べたり飲んだりできないお菓子や飲み物はありますか?
誰かのお土産でもらった食べ物がおいしかったのに、
食べきっちゃったらもうそれきり、ということもありますよね。
どうしてもというなら、今は通販なり何なりでどうにでもなったりするのかも知れないですが……。
お歳暮とかでもらったきり押入れに突っ込んで忘れていた、古いデザインの缶ジュース、
あるいは田舎の自販機で「これいつから入ってるんだろう?」というような、
古いラベルの飲み物を見つけたりするのにも不思議とロマンを感じます。飲む勇気はないけれど。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2014/12/19 11:17
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓 喜屋武・D・トーマス(ka3424) 人間(リアルブルー)|28才|男性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2014/12/12 22:35:25 |
|
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/12/07 23:38:32 |