ゲスト
(ka0000)
或る少女と歯車の思い出―贈物―
マスター:佐倉眸

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在7人 / 3~7人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2018/04/01 22:00
- リプレイ完成予定
- 2018/04/10 22:00
オープニング
●
街を見下ろす屋根の上に小さな人形が腰掛けている。
面差しの整った人形は、しかし、その所々がひび割れていて、補修された白い跡が白磁に痛々しく浮かび上がっている。
人形の唇から、嗄れた男の声が零れた。
「……皆と頑張って人形を直しました。
そして、無くしていた腕を見付けた可愛らしい少年は、きっと微笑みかけてくれるでしょう。
ところが、朝になってみると、人形は勝手に動き出して悪戯をするのです。
魔法使いから授かった不思議な力で、少女は人形の悪戯から友達みんなを守ったのです」
人形の手の中に、その小さな手よりも二周りほど大きな手をした別の人形の腕が有る。
腕は灰にくすんで、所々が濁った黒に染まっている。
手首と肘に関節を作って紐で繋いだその人形の腕には、所々不自然に穴が開いており、その幾つかには針金が突き出していたり、歯車が引っ掛かっていたりする。
人形は暫く弄んだ腕に赤いリボンを掛けて、ある家の、倉庫の前に投げ落とした。
芝生のクッションに受け留められた腕。動かぬはずのその指がぱたり、ぱたりと草を撫でた。
メグ、こと、マーガレット・ミケーリは母に頼まれたお使いの帰り、シチューのための玉葱を抱えて夕暮れの道を急いでいた。
いつも賑やかな商店街が、今日はどことなく静かで物寂しくて、余所余所しい。
胸騒ぎに、早く帰ろうと掛け出す足がふと止まる。
そこに人形が佇んでいた。
白磁の人形だった。
華やかなドレスを着て、柔らかな金の髪を肩から垂らして。
メグを見上げた顔が背筋の凍るくらいに美しく、その微笑みに魅入られた足が竦んだ。
何かに動かされる様子も無く、滑らかな動きで人形はドレスを摘まんで腰を屈める辞儀をする。
人形は可憐な少女の声色でメグに話し掛けた。
「こんにちは、あなたに素敵な贈り物を……」
「――ひっ、しゃ、しゃべっ…………」
蹈鞴を踏んで踵を返し、脚を絡ませ、躓いて転びそうになりながら、ばたばたと足音を煩く逃げ出すメグの背中を押すように、ぽん、ぽん、と何かが触れる。
速く走れ、逃げろと急かす様な緑に強く明滅する精霊の動き。
メグと精霊が走り去った商店街、雑踏に紛れた人形は、その姿を消して再び屋根の上へ。
むっつりと顔を顰めて、去っていった少女の背中とその背に貼り付く精霊を睨んだ。
虚ろに透き通る硝子玉の瞳の奥、憎悪が淀み炎の様に揺らめいていた。
●
朝、ジャン・ジェポッテの娘が洗濯物を干そうと籠を抱えて庭に出た。
ジャンが古い友人達と作っている人形。
若い頃に凍結させた、騎士風にお辞儀をする少年の人形作りの再開だといって、仲間で分けて保管していた人形の部品は、右腕と右腕に付属する歯車を残して、全て揃っている。
先日孫達と作った仮の剣と右腕を得て、人形は不安定ながらも自立し、作業場に改装された倉庫のテーブルに佇んでいる。
近く、腕は残っている左を参考に焼き上げた物を作り直し、剣も鋳物をしている方に頼むと聞いてはいるが、暫く、右腕に必要な部品が揃うまでは、あのまま飾られることだろう。
「いい加減、倉庫を元に戻して欲しいのだけどね」
晴れ渡る空にシーツを干して。さあ、今日も一日頑張りましょう。
洗濯物を干し終えた娘が、足元に目を遣ると、そこには黒い腕が落ちていた。
「……あら、これ、お父さん達の?」
汚れているのだろうか黒ずんでいて、忌避感さえ感じるが、それは人形の右腕だった。
今になって出てきたのかしら。
娘は拾い上げたそれを、倉庫の中、人形の隣へ置いておくことにした。
倉庫の戸が閉ざされると、手は動き出し、孫達の作った腕を掴んで引き剥がす。そして、球体関節の肩を人号の胴体の受け部分へ継ぎ合わせた。
老人達とハンター達の声が聞こえる。
鼻の頭と額と頬、手の縁に絆創膏を貼ったメグの声もその中に混ざっていた。
昨日、人形のお化けを見たんですよ、逃げていたら転んじゃって。
おっちょこちょいだと笑う老人達に、メグは頬を膨らませる。
さあ、今日は何から始めようか、右腕の設計図はもう一度、可愛い緑の目も、金色の髪も必要だ。歯車が剥き出しの身体も可哀想だ。
言い合いながら倉庫の扉に手を掛ける。
黒い右腕で2本の剣を掴んだ人形が、赤いマントを翻し、先頭にいたジャンの顔に迫ってきた。
街を見下ろす屋根の上に小さな人形が腰掛けている。
面差しの整った人形は、しかし、その所々がひび割れていて、補修された白い跡が白磁に痛々しく浮かび上がっている。
人形の唇から、嗄れた男の声が零れた。
「……皆と頑張って人形を直しました。
そして、無くしていた腕を見付けた可愛らしい少年は、きっと微笑みかけてくれるでしょう。
ところが、朝になってみると、人形は勝手に動き出して悪戯をするのです。
魔法使いから授かった不思議な力で、少女は人形の悪戯から友達みんなを守ったのです」
人形の手の中に、その小さな手よりも二周りほど大きな手をした別の人形の腕が有る。
腕は灰にくすんで、所々が濁った黒に染まっている。
手首と肘に関節を作って紐で繋いだその人形の腕には、所々不自然に穴が開いており、その幾つかには針金が突き出していたり、歯車が引っ掛かっていたりする。
人形は暫く弄んだ腕に赤いリボンを掛けて、ある家の、倉庫の前に投げ落とした。
芝生のクッションに受け留められた腕。動かぬはずのその指がぱたり、ぱたりと草を撫でた。
メグ、こと、マーガレット・ミケーリは母に頼まれたお使いの帰り、シチューのための玉葱を抱えて夕暮れの道を急いでいた。
いつも賑やかな商店街が、今日はどことなく静かで物寂しくて、余所余所しい。
胸騒ぎに、早く帰ろうと掛け出す足がふと止まる。
そこに人形が佇んでいた。
白磁の人形だった。
華やかなドレスを着て、柔らかな金の髪を肩から垂らして。
メグを見上げた顔が背筋の凍るくらいに美しく、その微笑みに魅入られた足が竦んだ。
何かに動かされる様子も無く、滑らかな動きで人形はドレスを摘まんで腰を屈める辞儀をする。
人形は可憐な少女の声色でメグに話し掛けた。
「こんにちは、あなたに素敵な贈り物を……」
「――ひっ、しゃ、しゃべっ…………」
蹈鞴を踏んで踵を返し、脚を絡ませ、躓いて転びそうになりながら、ばたばたと足音を煩く逃げ出すメグの背中を押すように、ぽん、ぽん、と何かが触れる。
速く走れ、逃げろと急かす様な緑に強く明滅する精霊の動き。
メグと精霊が走り去った商店街、雑踏に紛れた人形は、その姿を消して再び屋根の上へ。
むっつりと顔を顰めて、去っていった少女の背中とその背に貼り付く精霊を睨んだ。
虚ろに透き通る硝子玉の瞳の奥、憎悪が淀み炎の様に揺らめいていた。
●
朝、ジャン・ジェポッテの娘が洗濯物を干そうと籠を抱えて庭に出た。
ジャンが古い友人達と作っている人形。
若い頃に凍結させた、騎士風にお辞儀をする少年の人形作りの再開だといって、仲間で分けて保管していた人形の部品は、右腕と右腕に付属する歯車を残して、全て揃っている。
先日孫達と作った仮の剣と右腕を得て、人形は不安定ながらも自立し、作業場に改装された倉庫のテーブルに佇んでいる。
近く、腕は残っている左を参考に焼き上げた物を作り直し、剣も鋳物をしている方に頼むと聞いてはいるが、暫く、右腕に必要な部品が揃うまでは、あのまま飾られることだろう。
「いい加減、倉庫を元に戻して欲しいのだけどね」
晴れ渡る空にシーツを干して。さあ、今日も一日頑張りましょう。
洗濯物を干し終えた娘が、足元に目を遣ると、そこには黒い腕が落ちていた。
「……あら、これ、お父さん達の?」
汚れているのだろうか黒ずんでいて、忌避感さえ感じるが、それは人形の右腕だった。
今になって出てきたのかしら。
娘は拾い上げたそれを、倉庫の中、人形の隣へ置いておくことにした。
倉庫の戸が閉ざされると、手は動き出し、孫達の作った腕を掴んで引き剥がす。そして、球体関節の肩を人号の胴体の受け部分へ継ぎ合わせた。
老人達とハンター達の声が聞こえる。
鼻の頭と額と頬、手の縁に絆創膏を貼ったメグの声もその中に混ざっていた。
昨日、人形のお化けを見たんですよ、逃げていたら転んじゃって。
おっちょこちょいだと笑う老人達に、メグは頬を膨らませる。
さあ、今日は何から始めようか、右腕の設計図はもう一度、可愛い緑の目も、金色の髪も必要だ。歯車が剥き出しの身体も可哀想だ。
言い合いながら倉庫の扉に手を掛ける。
黒い右腕で2本の剣を掴んだ人形が、赤いマントを翻し、先頭にいたジャンの顔に迫ってきた。
解説
目的 人形の回収
●人形
ジャン・ジェポッテが若い頃に友人達と制作を開始するも、
それぞれの都合により凍結させていた磁器製の絡繰り人形。
街を出ていた友人との再会を機に、集まれるメンバーで制作を再開させ、
―組立―において、当時の状態まで復元したが、右腕のみ持ち主死亡のため欠けている。
現在、歪虚化した右腕が取り付けられており、右腕に操られる様なかたちで他の部位も動いている。
右腕以外の部位には剣礼ギミックのための歯車が幾つも取り付けられている。
歯車は真鍮等の金属製だが、本体は磁器製のため衝撃で割れることがある。
右手が掴んでいる2本の剣は、ジャンや友人の孫達が作った木製の簡単な物、攻撃力は殆ど無い。
●場所
ジェポッテ家の庭
低い庭木や芝生で整えられた庭、倉庫、物干し場があり、
子どもが遊べる程度の広さ
倉庫
作業場代わりに使っている倉庫。
嘗ては仕事でも使用していたため、天井が高く、作業テーブル2つが入る程の広さ
手前のテーブルに、人形が置かれていた台や端材などが残っている。
●NPC
ジャン・ジェポッテ
老齢の男性
食器工場で働き、若い内に絵付けの部門を独立させた工場の経営を担う
晩年、工場を移転させて後継に任せ、現在は隠居同然に暮らしている
指示には従うが、家族の安全に次いで、人形の保護を優先して行動。
メグ
ハンター、レベル10程度、PCの指示に従う
右腕を歪虚化させた少女人形の歪虚と対面し、逃走
今回の件に関わっているとは知らず、少女人形の歪虚の関わった事件の何れも無関係
指示が無ければ後衛で回復を行う
所持スキル ヒール・プロテクション・ホーリーセイバー
※PL情報として
●人形の行動
ジャンを攻撃した後、逃走を開始。
庭を逃げ切って、敷地の外を目指す。
右腕を最優先で守り、逃がそうとする行動を取る。
右腕のみ単独で簡単な行動が可能(這う、掴むなど)。
●人形
ジャン・ジェポッテが若い頃に友人達と制作を開始するも、
それぞれの都合により凍結させていた磁器製の絡繰り人形。
街を出ていた友人との再会を機に、集まれるメンバーで制作を再開させ、
―組立―において、当時の状態まで復元したが、右腕のみ持ち主死亡のため欠けている。
現在、歪虚化した右腕が取り付けられており、右腕に操られる様なかたちで他の部位も動いている。
右腕以外の部位には剣礼ギミックのための歯車が幾つも取り付けられている。
歯車は真鍮等の金属製だが、本体は磁器製のため衝撃で割れることがある。
右手が掴んでいる2本の剣は、ジャンや友人の孫達が作った木製の簡単な物、攻撃力は殆ど無い。
●場所
ジェポッテ家の庭
低い庭木や芝生で整えられた庭、倉庫、物干し場があり、
子どもが遊べる程度の広さ
倉庫
作業場代わりに使っている倉庫。
嘗ては仕事でも使用していたため、天井が高く、作業テーブル2つが入る程の広さ
手前のテーブルに、人形が置かれていた台や端材などが残っている。
●NPC
ジャン・ジェポッテ
老齢の男性
食器工場で働き、若い内に絵付けの部門を独立させた工場の経営を担う
晩年、工場を移転させて後継に任せ、現在は隠居同然に暮らしている
指示には従うが、家族の安全に次いで、人形の保護を優先して行動。
メグ
ハンター、レベル10程度、PCの指示に従う
右腕を歪虚化させた少女人形の歪虚と対面し、逃走
今回の件に関わっているとは知らず、少女人形の歪虚の関わった事件の何れも無関係
指示が無ければ後衛で回復を行う
所持スキル ヒール・プロテクション・ホーリーセイバー
※PL情報として
●人形の行動
ジャンを攻撃した後、逃走を開始。
庭を逃げ切って、敷地の外を目指す。
右腕を最優先で守り、逃がそうとする行動を取る。
右腕のみ単独で簡単な行動が可能(這う、掴むなど)。
マスターより
※PL情報として
●判定について
人形をジェポッテ家の庭から出さず、
右腕が取り除かれている状態、或いは破壊されている状態で、
その他の部位の損傷具合により成功~失敗を判定致します。
成功以上に加味する要素があれば大成功となります。
人形が逃走した場合、大失敗となります。
よろしくお願いします。
人形を捕まえて歪虚化した右腕のみ破壊すればクリアです。
老人達の思い入れや経緯の詳細は、―訪問―、―組立―をご参照下さい。
少女人形の歪虚については、担当NPCのユリア、及びモニカのシリーズシナリオをご参照下さい。
●判定について
人形をジェポッテ家の庭から出さず、
右腕が取り除かれている状態、或いは破壊されている状態で、
その他の部位の損傷具合により成功~失敗を判定致します。
成功以上に加味する要素があれば大成功となります。
人形が逃走した場合、大失敗となります。
よろしくお願いします。
人形を捕まえて歪虚化した右腕のみ破壊すればクリアです。
老人達の思い入れや経緯の詳細は、―訪問―、―組立―をご参照下さい。
少女人形の歪虚については、担当NPCのユリア、及びモニカのシリーズシナリオをご参照下さい。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2018/04/09 23:41
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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人形を止めよう レイア・アローネ(ka4082) 人間(クリムゾンウェスト)|24才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2018/04/01 06:30:20 |
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![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/03/30 07:45:31 |