ゲスト
(ka0000)
ハニートーストは命がけ
マスター:サトー

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2014/12/15 15:00
- リプレイ完成予定
- 2014/12/24 15:00
オープニング
ゾンネンシュトラール帝国と辺境との境にある山の麓、針葉樹の生い茂った山肌の近くに、一軒の小ぢんまりとした民家があった。
「イリーナ! ちょっと町まで行ってくるが、何かいるものはあるか?」
中年期も終わりにかかろうかという年頃の、無精髭をまばらに生やした男が野太い声を張る。
台所の方から聞こえてきたのは、イリーナと呼ばれた男の妻のもの。
「丁度良かったわ、アキム」
声に遅れて姿を見せたのは、夫――アキムと同年代と見られる初老の女性。
日に焼け、シミやそばかすだらけの頬に、歳相応の印が幾筋か刻み込まれている。日の下で生きてきたことを端的に教えてくれる顔は、夫の尋ねに純朴そうな笑みを浮かべていた。
「小麦粉とドライフルーツが切れそうだったの」
そう言って、妻――イリーナは笑う。その笑顔はアキムの日々の原動力だ。
朴訥で社交性があるとは決して言えない不器用な男――アキムが惹かれたのは、何よりもこの優しげな笑みだった。
このような辺鄙な所に住んでいるのも、大抵のことは自給自足で済ませているのも、町の人間からすれば慎ましいと言われる生活を送っているのも、イリーナが祖母の遺した家を腐らせるわけにはいかないと、アキムに頭を下げたからだ。とうの昔に廃村となった不便な土地とはいえ、断れるわけがなかった。
「小麦粉とドライフルーツだな。夕方には戻る」
時刻は昼過ぎ。
馬で駆ければ、往復二時間もかからない。
「いってらっしゃい、あなた。気を付けて」
「ああ、行ってくる」
家を出たアキムは、馬に乗る前に裏手の山側にある養蜂場を見に行った。
養蜂場と言えば聞こえはいいが、実際は巣箱はたったの一つしかない。
イリーナが祖母から受け継いだ、長年愛用している巣箱だ。
それにより生計を立てているわけではなく、単なるイリーナの趣味のようなものだったから一つもあれば十分だったが、随分ぼろくなってきてしまっているので、そろそろ新しいものを作らねばならないかもしれない。
民家の裏手は、草木の生い茂る静かな空間だ。
人の気配の無いここら一帯は、常に平穏によって守られている。
イリーナの大好きな蜂蜜を供給してくれる巣箱も、山肌近くの木々の下で、直射日光を避けて涼んでいる。
アキムは鬱陶しい雑草を踏み分け、裏手を突き進む。
町から離れた郊外に居を構える家において、力仕事を一手に引き受けてきたアキムの体つきは見事なものだ。鍛えた格闘家の肉体にいくらか脂肪を上乗せしたようなもので、少しだぶつきつつある腹の下にも、見かけからは想像もできないほどの筋肉が隠されている。
とても初老の男性とは思えない。
力強い足取りで草木をなぎ倒していくと、目当ての巣箱がかすかに見えてくる。
そこで――アキムの足は止まった。
「なんだありゃ……」
巣箱の周りには何千となる通常のミツバチ、その上空、峻厳な崖となっているむき出しの山肌の上に、異様なほど巨大なミツバチが数匹飛んでいた。
「なんてこと……」
アキムからもたらされた報告に、イリーナは口元に手を当てて言葉を失った。
――雑魔。
名前や話だけは聞いたことはあったが、実際に自分の目の前に現れるのは初めての事だった。
「くそっ……」
今にも崩れ落ちそうなイリーナを支え、アキムは悔しそうに唇を噛んだ。
一匹だけなら何とかなったかもしれない。
武器など持ったことないアキムであったが、自慢の肉体を限界まで酷使すればどうにか――。
もっと若ければ、あるいは――。
だが、そんな妄想は何の意味ももたない。現実として、雑魔は一匹では無いのだから。
このまま放置すれば、養蜂の要である花畑は枯れ、蜜を求めるミツバチらも犠牲に。そうなれば、この家も……。
それは、イリーナの頭にも浮かんでいたことだった。
――この家は放棄しなくてはならない。
折角、祖母から譲り受けたこの貧相な家を、夫とともに少しずつ改造してきたというのに。
折角、祖母との想い出が詰まったこの哀れな家を、夫とともに、ゆっくりと快適な空間にしてきたというのに。
それも全て、もう、おしまいだ。
イリーナの顔を絶望が彩る。それを見て、アキムはイリーナの両肩を掴んで揺さぶった。
「諦めるのはまだ早い! ハンターに依頼しよう。ハンターなら、ハンターならきっと――」
「でも、そんなお金、私たちには……」
「探すさ! 今すぐ町に行って探してきてやる。少ない報酬でも引き受けてくれる人を!」
言って、アキムはイリーナにしっかりと戸締りをするように言いつけて、今度こそ家を出た。
今までの人生で最も早く馬をかけ、アキムは町を目指す。
あの家を手放さずに済むように――。
妻の笑顔を絶やすまいと――。
●ハンターオフィスにて
「――というわけです」
職員が依頼主の男性から聞いた話を要約して説明する。
「対象となる雑魔は外部からやってきたようですね。付近に雑魔の発生源らしきものは見当たらないとのことです」
職員は、書類をめくりながら淡々と説明を続ける。
「雑魔が位置するのは、巣箱の上空辺り、崖の上にある花畑が住処となっています。この花畑の蜜が養蜂にとっても要となっているようですので、退治が遅れれば、花畑は枯れてしまい、養蜂は絶望的となるでしょう。また、花畑に近づいたミツバチが雑魔に殺されていることも、今後の養蜂に影響が出るかもしれませんね。それともう一つ――」
職員は眼鏡を外し、ふぅと小さく息を吐いて、首を左右に振った。
「依頼主が雑魔退治に何としても参加したいと言い出しています。足手まといになるのは必定ですが、自分の手で解決したいということなんですかね……」
よく分かりませんが、と職員は眼鏡をかけ直し、ハンターたちを見つめた。
「大変だとは思いますが、一度引き受けた以上、最後までよろしくお願いしますよ?」
「イリーナ! ちょっと町まで行ってくるが、何かいるものはあるか?」
中年期も終わりにかかろうかという年頃の、無精髭をまばらに生やした男が野太い声を張る。
台所の方から聞こえてきたのは、イリーナと呼ばれた男の妻のもの。
「丁度良かったわ、アキム」
声に遅れて姿を見せたのは、夫――アキムと同年代と見られる初老の女性。
日に焼け、シミやそばかすだらけの頬に、歳相応の印が幾筋か刻み込まれている。日の下で生きてきたことを端的に教えてくれる顔は、夫の尋ねに純朴そうな笑みを浮かべていた。
「小麦粉とドライフルーツが切れそうだったの」
そう言って、妻――イリーナは笑う。その笑顔はアキムの日々の原動力だ。
朴訥で社交性があるとは決して言えない不器用な男――アキムが惹かれたのは、何よりもこの優しげな笑みだった。
このような辺鄙な所に住んでいるのも、大抵のことは自給自足で済ませているのも、町の人間からすれば慎ましいと言われる生活を送っているのも、イリーナが祖母の遺した家を腐らせるわけにはいかないと、アキムに頭を下げたからだ。とうの昔に廃村となった不便な土地とはいえ、断れるわけがなかった。
「小麦粉とドライフルーツだな。夕方には戻る」
時刻は昼過ぎ。
馬で駆ければ、往復二時間もかからない。
「いってらっしゃい、あなた。気を付けて」
「ああ、行ってくる」
家を出たアキムは、馬に乗る前に裏手の山側にある養蜂場を見に行った。
養蜂場と言えば聞こえはいいが、実際は巣箱はたったの一つしかない。
イリーナが祖母から受け継いだ、長年愛用している巣箱だ。
それにより生計を立てているわけではなく、単なるイリーナの趣味のようなものだったから一つもあれば十分だったが、随分ぼろくなってきてしまっているので、そろそろ新しいものを作らねばならないかもしれない。
民家の裏手は、草木の生い茂る静かな空間だ。
人の気配の無いここら一帯は、常に平穏によって守られている。
イリーナの大好きな蜂蜜を供給してくれる巣箱も、山肌近くの木々の下で、直射日光を避けて涼んでいる。
アキムは鬱陶しい雑草を踏み分け、裏手を突き進む。
町から離れた郊外に居を構える家において、力仕事を一手に引き受けてきたアキムの体つきは見事なものだ。鍛えた格闘家の肉体にいくらか脂肪を上乗せしたようなもので、少しだぶつきつつある腹の下にも、見かけからは想像もできないほどの筋肉が隠されている。
とても初老の男性とは思えない。
力強い足取りで草木をなぎ倒していくと、目当ての巣箱がかすかに見えてくる。
そこで――アキムの足は止まった。
「なんだありゃ……」
巣箱の周りには何千となる通常のミツバチ、その上空、峻厳な崖となっているむき出しの山肌の上に、異様なほど巨大なミツバチが数匹飛んでいた。
「なんてこと……」
アキムからもたらされた報告に、イリーナは口元に手を当てて言葉を失った。
――雑魔。
名前や話だけは聞いたことはあったが、実際に自分の目の前に現れるのは初めての事だった。
「くそっ……」
今にも崩れ落ちそうなイリーナを支え、アキムは悔しそうに唇を噛んだ。
一匹だけなら何とかなったかもしれない。
武器など持ったことないアキムであったが、自慢の肉体を限界まで酷使すればどうにか――。
もっと若ければ、あるいは――。
だが、そんな妄想は何の意味ももたない。現実として、雑魔は一匹では無いのだから。
このまま放置すれば、養蜂の要である花畑は枯れ、蜜を求めるミツバチらも犠牲に。そうなれば、この家も……。
それは、イリーナの頭にも浮かんでいたことだった。
――この家は放棄しなくてはならない。
折角、祖母から譲り受けたこの貧相な家を、夫とともに少しずつ改造してきたというのに。
折角、祖母との想い出が詰まったこの哀れな家を、夫とともに、ゆっくりと快適な空間にしてきたというのに。
それも全て、もう、おしまいだ。
イリーナの顔を絶望が彩る。それを見て、アキムはイリーナの両肩を掴んで揺さぶった。
「諦めるのはまだ早い! ハンターに依頼しよう。ハンターなら、ハンターならきっと――」
「でも、そんなお金、私たちには……」
「探すさ! 今すぐ町に行って探してきてやる。少ない報酬でも引き受けてくれる人を!」
言って、アキムはイリーナにしっかりと戸締りをするように言いつけて、今度こそ家を出た。
今までの人生で最も早く馬をかけ、アキムは町を目指す。
あの家を手放さずに済むように――。
妻の笑顔を絶やすまいと――。
●ハンターオフィスにて
「――というわけです」
職員が依頼主の男性から聞いた話を要約して説明する。
「対象となる雑魔は外部からやってきたようですね。付近に雑魔の発生源らしきものは見当たらないとのことです」
職員は、書類をめくりながら淡々と説明を続ける。
「雑魔が位置するのは、巣箱の上空辺り、崖の上にある花畑が住処となっています。この花畑の蜜が養蜂にとっても要となっているようですので、退治が遅れれば、花畑は枯れてしまい、養蜂は絶望的となるでしょう。また、花畑に近づいたミツバチが雑魔に殺されていることも、今後の養蜂に影響が出るかもしれませんね。それともう一つ――」
職員は眼鏡を外し、ふぅと小さく息を吐いて、首を左右に振った。
「依頼主が雑魔退治に何としても参加したいと言い出しています。足手まといになるのは必定ですが、自分の手で解決したいということなんですかね……」
よく分かりませんが、と職員は眼鏡をかけ直し、ハンターたちを見つめた。
「大変だとは思いますが、一度引き受けた以上、最後までよろしくお願いしますよ?」
解説
◎依頼者の養蜂場近くに棲みついたミツバチ(雑魔)を殲滅せよ!
目的:
雑魔の全滅。
敵:
ミツバチ型の雑魔。
体長は三十センチ程度。
一匹当たりの強さはかなり弱い。
早さは通常のミツバチと同程度。
近寄るか、こちらから攻撃するかまでは、おとなしいようだ。
雑魔の攻撃手段は、毒針か蜂球のみ。
毒針は使用すると雑魔は死ぬ。毒自体は軽微。
蜂球は対象に群がり、熱によって焼き殺すもの。
状況:
数は当初数匹と見られていたが、調査の結果百匹近く確認されている。
崖の高さは五メートル以上。角度は急。花畑には、迂回路を回って登っていく必要がある。
崖の下、巣箱のある民家の裏手の広場からも雑魔の一部は視認できる。
備考:
アキムは基本的にハンターの指示に従う。
アキムは非覚醒者。先端が四つに分かれた鋤を使う。
戦力として期待できるほどの腕はない。
目的:
雑魔の全滅。
敵:
ミツバチ型の雑魔。
体長は三十センチ程度。
一匹当たりの強さはかなり弱い。
早さは通常のミツバチと同程度。
近寄るか、こちらから攻撃するかまでは、おとなしいようだ。
雑魔の攻撃手段は、毒針か蜂球のみ。
毒針は使用すると雑魔は死ぬ。毒自体は軽微。
蜂球は対象に群がり、熱によって焼き殺すもの。
状況:
数は当初数匹と見られていたが、調査の結果百匹近く確認されている。
崖の高さは五メートル以上。角度は急。花畑には、迂回路を回って登っていく必要がある。
崖の下、巣箱のある民家の裏手の広場からも雑魔の一部は視認できる。
備考:
アキムは基本的にハンターの指示に従う。
アキムは非覚醒者。先端が四つに分かれた鋤を使う。
戦力として期待できるほどの腕はない。
マスターより
無事依頼が完遂された暁には、依頼者の夫婦から心ばかりのもてなしがあるようです。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2014/12/18 20:29
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 コリーヌ・エヴァンズ(ka0828) エルフ|17才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2014/12/15 00:29:43 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/12/10 00:34:49 |