ゲスト
(ka0000)
水ノ檻
マスター:須崎なう

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2018/04/05 12:00
- リプレイ完成予定
- 2018/04/14 12:00
オープニング
●
夜。雲一つない夜空に輝く星々が大地を淡く照らしていた。
小さな池の畔。安物の酒を煽りながら、赤ら顔の旅人二人が焚火を囲んで雑談をしている。
それは噂話だ。水を集めるおかしな歪虚がいるのだとか。
「ばっか、んな歪虚がいるわけねーだろ! だいたい人を襲ってなんぼの歪虚じゃねーのかよ! なんで水を集めるんだあ?」
「俺に聞くんじゃねえ。噂話つっただろうが。大体テメェは飲み過ぎだっての! 水でも飲んどけ、水を」
「水なら飲んでるだろお、美味しい美味しい水をよお……」
「いいから、水を飲め。絡まれる俺の身にもなれってんだ」
手のひらサイズのボトルを取り出す。中身は先程採ったばかりの池の水だ。元々綺麗だった水を沸騰させて消毒し、更にろ過しているため、飲料用としては問題ないだろう。
そのボトルのキャップを取る。
すると、何故か。
ボトルから水が浮き上がった。
「な、なんだこれは……」
その水は星の光を瞬かせながら、ふわふわと宙を漂い悪酔いしている話し相手の方へ……。
そして、
どっぷん、と。底の深い水場に落ちたかのような重い音が空気を揺らした。
ボトルを手にしたまま旅人が顔を上げると、そこには黒い壁があった。
壁を隔てた向こう側では、もう相方の旅人が苦しそうにもがいている。助けを求めるように突き出した右腕が黒い壁から飛沫を上げて突き出た。そこでようやく気付く。それは黒い壁ではなく、壁状に固まった大量の水だったのだ。
その証拠に、突き出た右腕が揺れるたびに小さな波紋を壁に生んでいる。
「――――ッ! ――――――ッ!!」
「ちょ、ちょっと待ってろすぐに助け…………っ」
その背筋に激しい悪寒が走る。しかしそれを気にしているほどの猶予はなかった。空気を求めてもがき苦しむ相方を一刻も早く助けたい。
旅人は水壁から突き出た右腕を掴み、全体重をかけて引っ張る。
その右腕は、不思議なほど呆気なく水壁から救出できた。旅人は大きなしりもちをつく。
しかしその救出した腕からは人間のもつ重みを感じない。まるで水面から生えた片腕だけを引っこ抜いたような感覚だった。
そして、それは比喩ではなかった。
文字通り、助けたはずの相方は目の前におらず、右腕肩関節から先の部位はない。喰い千切られたかのような断面からは血が流れ、腕を滴り、助けようとした旅人の手に絡みつく。
「ひいぃぃぃ!!」
旅人は右腕を払いのけるように捨て、尻もちをついた体勢のまま後ずさる。この水は危険だと、遅すぎる警鐘が旅人のなかで駆け巡る。
その日は雲一つない夜空だった。
星と焚火。二つの光源に照らされた水壁の中では、相方のものと思われる血の塊が揺らめいている。
胴は見当たらない。
その更に先。
絶望が、水中を泳いでいた。
旅人が逃げ出そうと立ち上がる。しかし恐怖に蝕まれた身体は思うように動かない。
しかしどれだけ旅人が機敏に動けたとしても、結果は変わらなかっただろう。彼はあくまで一般人で、ハンターではない。たかが旅人の身体能力でこの状況を脱せるほど世界は甘くなかった。
旅人を浮遊感が包みこむ。
水壁に飲まれたのだと、混乱した彼の脳は察知できなかった。
――がぼっ、ごぼぼぼ!
そのまま空気を求めた結果呼吸器官に水が浸入し、旅人は窒息の苦しみにもがいた。
焚火は既に水に飲まれたため、光源は星のものしかない。
明かりの乏しい環境で、水は闇夜を映すのみ。その奥。闇夜の黒よりも深い漆黒の絶望が、旅人を獲物として捕らえた。
事は、一瞬だった。
旅人が認識できたのは、眼前に迫った凶器のような乱杭歯。その開かれた顎は旅人を丸のみしてもまだ余裕があるほどに巨大だった。
旅人を襲ったのは刹那の痛み。そして無。
噛み千切られるようにして下半身と片腕を失い、意識は激痛によって切り裂かれ、その儚い命は闇に散った。
●
カタカタカタと、双眼鏡を持つ両手が震える。
ちょうど今、二人目の旅人がソレに喰われたところだった。
巨大な立方体状の水を悠々と泳ぐソレ。おそらくは、歪虚。夜の闇ではっきりと姿を捉えられたわけではないが、その形状は以前、何かの図鑑で見たことがあった。
シャチ。
オルカとも呼ばれ、黒と白の特徴的な外見を持つ海の捕食者。海の恐怖といえばサメをイメージしがちなのだが、実際に海洋系食物連鎖の頂点に君臨するのはシャチだ。
そのシャチが陸に出現した。
それも、歪虚として。
一介の猟師である彼がこの光景を目撃したのはただの偶然でしかない。狩りの収獲が芳しくなく、今日は日暮れギリギリまで粘った。その帰りに、異常な水の塊を目撃したのが経緯だった。
焚火を囲む旅人二人が喰われる光景を双眼鏡で眺め続け、今に至る。
(どうする?)
やることなら決まっている。ハンターズオフィスに行き、事の詳細を説明し討伐を要請するのだ。
だが……、
(まだ何か、嫌な予感がするな)
すると突如、歪虚の纏う水の塊に変化が起きた。一回り近くその体積が肥大化したのだ。なにが起きたのかと双眼鏡で確かめると、すぐに原因がわかった。
池の水だ。池の水を吸収したのだ。
おそらくあの水の塊は歪虚にとってのテリトリーなのだ。そのテリトリーを増やすためにあの池に近づいたのではないのか?
(だとすると……ちとマズいな)
猟師の男は自身の記憶から地図を思い浮かべる。山を二つ越えた地域には湖があったはずだ。その湖の近くには確か、それなりに栄えている街もあった。
もしも水が目的で、湖に向かうとしたら……。
ゴクリ
猟師は息を呑んだ。
静かに双眼鏡を仕舞うと、男は急いでハンターズオフィスへと向かった。
夜。雲一つない夜空に輝く星々が大地を淡く照らしていた。
小さな池の畔。安物の酒を煽りながら、赤ら顔の旅人二人が焚火を囲んで雑談をしている。
それは噂話だ。水を集めるおかしな歪虚がいるのだとか。
「ばっか、んな歪虚がいるわけねーだろ! だいたい人を襲ってなんぼの歪虚じゃねーのかよ! なんで水を集めるんだあ?」
「俺に聞くんじゃねえ。噂話つっただろうが。大体テメェは飲み過ぎだっての! 水でも飲んどけ、水を」
「水なら飲んでるだろお、美味しい美味しい水をよお……」
「いいから、水を飲め。絡まれる俺の身にもなれってんだ」
手のひらサイズのボトルを取り出す。中身は先程採ったばかりの池の水だ。元々綺麗だった水を沸騰させて消毒し、更にろ過しているため、飲料用としては問題ないだろう。
そのボトルのキャップを取る。
すると、何故か。
ボトルから水が浮き上がった。
「な、なんだこれは……」
その水は星の光を瞬かせながら、ふわふわと宙を漂い悪酔いしている話し相手の方へ……。
そして、
どっぷん、と。底の深い水場に落ちたかのような重い音が空気を揺らした。
ボトルを手にしたまま旅人が顔を上げると、そこには黒い壁があった。
壁を隔てた向こう側では、もう相方の旅人が苦しそうにもがいている。助けを求めるように突き出した右腕が黒い壁から飛沫を上げて突き出た。そこでようやく気付く。それは黒い壁ではなく、壁状に固まった大量の水だったのだ。
その証拠に、突き出た右腕が揺れるたびに小さな波紋を壁に生んでいる。
「――――ッ! ――――――ッ!!」
「ちょ、ちょっと待ってろすぐに助け…………っ」
その背筋に激しい悪寒が走る。しかしそれを気にしているほどの猶予はなかった。空気を求めてもがき苦しむ相方を一刻も早く助けたい。
旅人は水壁から突き出た右腕を掴み、全体重をかけて引っ張る。
その右腕は、不思議なほど呆気なく水壁から救出できた。旅人は大きなしりもちをつく。
しかしその救出した腕からは人間のもつ重みを感じない。まるで水面から生えた片腕だけを引っこ抜いたような感覚だった。
そして、それは比喩ではなかった。
文字通り、助けたはずの相方は目の前におらず、右腕肩関節から先の部位はない。喰い千切られたかのような断面からは血が流れ、腕を滴り、助けようとした旅人の手に絡みつく。
「ひいぃぃぃ!!」
旅人は右腕を払いのけるように捨て、尻もちをついた体勢のまま後ずさる。この水は危険だと、遅すぎる警鐘が旅人のなかで駆け巡る。
その日は雲一つない夜空だった。
星と焚火。二つの光源に照らされた水壁の中では、相方のものと思われる血の塊が揺らめいている。
胴は見当たらない。
その更に先。
絶望が、水中を泳いでいた。
旅人が逃げ出そうと立ち上がる。しかし恐怖に蝕まれた身体は思うように動かない。
しかしどれだけ旅人が機敏に動けたとしても、結果は変わらなかっただろう。彼はあくまで一般人で、ハンターではない。たかが旅人の身体能力でこの状況を脱せるほど世界は甘くなかった。
旅人を浮遊感が包みこむ。
水壁に飲まれたのだと、混乱した彼の脳は察知できなかった。
――がぼっ、ごぼぼぼ!
そのまま空気を求めた結果呼吸器官に水が浸入し、旅人は窒息の苦しみにもがいた。
焚火は既に水に飲まれたため、光源は星のものしかない。
明かりの乏しい環境で、水は闇夜を映すのみ。その奥。闇夜の黒よりも深い漆黒の絶望が、旅人を獲物として捕らえた。
事は、一瞬だった。
旅人が認識できたのは、眼前に迫った凶器のような乱杭歯。その開かれた顎は旅人を丸のみしてもまだ余裕があるほどに巨大だった。
旅人を襲ったのは刹那の痛み。そして無。
噛み千切られるようにして下半身と片腕を失い、意識は激痛によって切り裂かれ、その儚い命は闇に散った。
●
カタカタカタと、双眼鏡を持つ両手が震える。
ちょうど今、二人目の旅人がソレに喰われたところだった。
巨大な立方体状の水を悠々と泳ぐソレ。おそらくは、歪虚。夜の闇ではっきりと姿を捉えられたわけではないが、その形状は以前、何かの図鑑で見たことがあった。
シャチ。
オルカとも呼ばれ、黒と白の特徴的な外見を持つ海の捕食者。海の恐怖といえばサメをイメージしがちなのだが、実際に海洋系食物連鎖の頂点に君臨するのはシャチだ。
そのシャチが陸に出現した。
それも、歪虚として。
一介の猟師である彼がこの光景を目撃したのはただの偶然でしかない。狩りの収獲が芳しくなく、今日は日暮れギリギリまで粘った。その帰りに、異常な水の塊を目撃したのが経緯だった。
焚火を囲む旅人二人が喰われる光景を双眼鏡で眺め続け、今に至る。
(どうする?)
やることなら決まっている。ハンターズオフィスに行き、事の詳細を説明し討伐を要請するのだ。
だが……、
(まだ何か、嫌な予感がするな)
すると突如、歪虚の纏う水の塊に変化が起きた。一回り近くその体積が肥大化したのだ。なにが起きたのかと双眼鏡で確かめると、すぐに原因がわかった。
池の水だ。池の水を吸収したのだ。
おそらくあの水の塊は歪虚にとってのテリトリーなのだ。そのテリトリーを増やすためにあの池に近づいたのではないのか?
(だとすると……ちとマズいな)
猟師の男は自身の記憶から地図を思い浮かべる。山を二つ越えた地域には湖があったはずだ。その湖の近くには確か、それなりに栄えている街もあった。
もしも水が目的で、湖に向かうとしたら……。
ゴクリ
猟師は息を呑んだ。
静かに双眼鏡を仕舞うと、男は急いでハンターズオフィスへと向かった。
解説
【解説】
目標:シャチ歪虚の討伐し、湖近くの街を守る。
シャチ歪虚の情報
・基本的な攻撃方法は噛みつき(噛み千切る)と体当たり。
・テリトリー内の水の流れを操作できる。
・サイズは8m弱。
・テリトリーを増やすために水場へと向かっている。
・空中でも行動可能。
・水中では敏捷性が上がるため、基本的にテリトリーから出ることはない。
フィールド(テリトリー)情報
・サイズは一辺200mほどの立方体。
・テリトリーの水中には、移動中に倒した木々の残骸がランダムに沈んでいる。
・シャチ歪虚が討伐されたとき、水は立方体の形状を維持できなくなる。
・テリトリーの移動機能は低く、陸地の移動は大人が歩くくらいのスピード。シャチ歪虚もそれに合わせて陸地を移動している。
・シャチ歪虚が戦闘しているときは、テリトリーの移動も止まる。
その他
ハンターの皆さんが湖の街に到着するのは、日の出から少し経ったくらいの時間帯です。
シャチ歪虚のテリトリーが湖の街に接触するのはそれから3時間後となります。
ハンター到着時点で、シャチ歪虚接近を知っている街の住人は、総人口の7割程度です。ハンターが到着する1時間前に「シャチ歪虚接近」の知らせが届きましたが、日の出前の眠い時間帯だったため十分な避難勧告ができていないそうです。
目標:シャチ歪虚の討伐し、湖近くの街を守る。
シャチ歪虚の情報
・基本的な攻撃方法は噛みつき(噛み千切る)と体当たり。
・テリトリー内の水の流れを操作できる。
・サイズは8m弱。
・テリトリーを増やすために水場へと向かっている。
・空中でも行動可能。
・水中では敏捷性が上がるため、基本的にテリトリーから出ることはない。
フィールド(テリトリー)情報
・サイズは一辺200mほどの立方体。
・テリトリーの水中には、移動中に倒した木々の残骸がランダムに沈んでいる。
・シャチ歪虚が討伐されたとき、水は立方体の形状を維持できなくなる。
・テリトリーの移動機能は低く、陸地の移動は大人が歩くくらいのスピード。シャチ歪虚もそれに合わせて陸地を移動している。
・シャチ歪虚が戦闘しているときは、テリトリーの移動も止まる。
その他
ハンターの皆さんが湖の街に到着するのは、日の出から少し経ったくらいの時間帯です。
シャチ歪虚のテリトリーが湖の街に接触するのはそれから3時間後となります。
ハンター到着時点で、シャチ歪虚接近を知っている街の住人は、総人口の7割程度です。ハンターが到着する1時間前に「シャチ歪虚接近」の知らせが届きましたが、日の出前の眠い時間帯だったため十分な避難勧告ができていないそうです。
マスターより
こんにちは、須崎なうです。
今回は鍵となるような登場人物いない、普通の戦闘系シナリオです。
今回の依頼でポイントなのは、シャチ歪虚討伐だけでなく、街を被害から守るというところでしょうか。
シャチ歪虚を討伐しても街に大きな被害が出たら失敗となるので、安全策を練ってみるといいかもです。
今回は鍵となるような登場人物いない、普通の戦闘系シナリオです。
今回の依頼でポイントなのは、シャチ歪虚討伐だけでなく、街を被害から守るというところでしょうか。
シャチ歪虚を討伐しても街に大きな被害が出たら失敗となるので、安全策を練ってみるといいかもです。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2018/04/14 06:30
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
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相談卓 八原 篝(ka3104) 人間(リアルブルー)|19才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2018/04/05 09:20:43 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/04/04 21:32:41 |