ゲスト
(ka0000)
【羽冠】N・D・K ―X氏の退屈―
マスター:ムジカ・トラス

- シナリオ形態
- ショート
関連ユニオン
アム・シェリタ―揺籃館―- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 3~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2018/04/16 19:00
- リプレイ完成予定
- 2018/04/25 19:00
オープニング
●
オーラン・クロスの相貌は、苦い悔恨と陰鬱に満ちていた。さあさあと雨が降り注ぐ中、傘もささずに、とある館を眺めている。
彼が眺めているのは、シャルシェレット別邸。雨の中に佇むその館は、聖ヴェレニウス大聖堂もかくやというばかりの清冽な気配を滲ませていた。
マテリアルに関わるもの――教会関係者、覚醒者、あるいは精霊や、歪虚ですらも――全てにとって、その過剰具合がひと目でわかる清浄さであった。並の歪虚や雑魔であれば、立ち入ろうものなら忽ち消失してしまうほどの。
二度目となる異端審問の超重要参考人ヘクス・シャルシェレットの王都における住まいには教会が抱える高位術師が交代で詰め、負のマテリアルに汚染され、多臓器不全を来たし衰弱・昏睡したヘクスの浄化と治療にあたっている。
集中治療の現場がこの館に移されたのはつい一月前のことである。日増しに高まる不平不満から切り離す意味もあったが、いつ死ぬとも知れず、経緯次第では死後に歪虚に転化する可能性すら言及されるほどの汚染に対する、予防措置でもあった。『聖堂教会を挙げて治療をしているにも関わらず』といった風聞と、この上でもなお歪虚と化した場合の被害を考慮しての。
場所が変わったとはいえ、多額の金と人的資源を要することには代わりはなかった。オーランが行ったのは、その浄化術を――些か及ばぬところはあるものの――"法術陣"として生成することであった。それを果たしたあとは、法術陣の調整・改善を行いながら、マテリアル供給源となる覚醒者と、法術陣を弄る際には別な術者による浄化術維持が必要となるため、それが可能な術師とのスケジュール管理をすることが専らの仕事となっている。
技術屋としては、かつてより高位かつ難解な術式を管理できるようになったことは喜ばしい。しかし、私人としては、現状は痛ましかった。
各所に見られる、物々しい見張り。僧兵、騎兵、騎士に民草――その中には、熟達の密偵も混じっているのだろう。それが、ここ数日で格段に増えている。
――やっぱり、漏れているんだろうな。
人の口に戸は立てられぬ、というべきか。ただでさえ、館内部にも教会関係者や、貴族からの息が掛かった騎士といった第三者が立ち入ることができる環境だ。ゆえに、この状況は必然だった。
ヘクス・シャルシェレットの意識が戻った。
オーランは深く、息をつく。全てを吐き出そうとしても、胸の苦さは晴れはしなかった。
集中治療を継続する必要はあるとはいえ、いずれ、ヘクスの審問が始まるだろう。政情のきな臭さも、オーランの予想を裏付けている。
王女派にとっての急所であるヘクスを、貴族派が逃がすわけもない。
●
意識が戻った3日後には異端審問が再開された。身体的には数ヶ月の臥床と汚染による衰弱でやせ細ったヘクスであったが、思考と記憶には支障が見られなかったためである。
浄化術を維持し続けるという莫大な予算を工面する都合から、ヘクスを大聖堂まで移動させることも出来ず、特例としてシャルシェレット邸で審問が行われることとなった。
今や矮小な蛇と化したベリアル――ベリアルは歪虚ではあるが、この案件については参考人としての扱いとなっている――からの証言が、事態を『複雑化』している。"自身を利用した憎きニンゲン"に対する意趣返しのためか、ベリアルが嬉々として供述した内容は多岐に渡っている。
その中でも重要なものは、いつ、ヘクスが接触してきたのか。いつ、どのような情報をヘクスがもたらしたのか。
命乞いだけはしっかり行いながらも、ヘクスを貶めるためならばと傲慢かつ不遜に舌を回すベリアルは、教会側に重要極まる情報をもたらしていた。これらが真実ならば、ヘクスが目を覚まし次第、有罪をもって審問を終えられる――と、関係者が息巻くほどに。
しかしながら、事態が"複雑化"したのは、ベリアルの証言に対して綿密な検証を行ったためであった。なにせ、ベリアルは歪虚である。歪虚の言を真に受けるほど、教会も短絡的ではない。
その結果、明らかになったのは――ヘクス・シャルシェレットが流していた情報の多くが、"虚報"であったこと。
少なくとも、ベリアルが知っている"事実"は、実態とは大小様々な差異があった。さらには、その虚実を検証すれば、ヘクスがベリアル傘下の軍――クラベルを含む――や、ベリアル自身の動勢に深く介入していたことは、明らかで(かくして、ドヤ顔をさらしていたベリアルは用済みとなり、ヴィオラ共々イスルダ島の調査につれていかれることとなった)。ベリアルの言によればヘクスがメフィストとも通じていたことは明らかであったが、メフィスト自身が結果としては戦局としての勝利を得ながらも、"無知"や"誤認"によって幾度となく窮地に陥り、最終的に消滅したこともまた、事実であった。
歪虚に通じていた、という点は異端極まる事実であるが、人類の裏切り者という指摘については、議論が分かれるところ。
その点についての審問は、今もなお続けられている最中である。
●
――ということをオーランが知ったのは、これらの内容が新聞の記事に載ったからである。機関によって、論調や内容に少しばかりの偏向はあるものの、その骨子は概ね一致している。それを誰が漏らしたかは不明、だが……少なくとも、"この男"ということはないだろう。
「死にたい……」
「この館から出たら一晩を待たずに死ねるんじゃないかな?」
「歩けるようになったら、前向きに考えたいね。けど、その前にあの蛇だけは始末しなくちゃ」
別邸の執務室に据え置かれた机に俯せに伏したヘクスの嘆きに、オーランは苦笑した。軽口が聞けて嬉しかったこともあるが、眼前のヘクスが心底苦しんでいるように見えて、胸がすく思いもあった。
「そういえば、礼を言ってなかったね。ありがとう、オーラン。いやあ、君の研究を支援しててよかった! お陰で破産しないで済んだよ」
「……あんまり大きな声で言わないで欲しいな。僕まで異端を疑われる」
「そうだねえ。昔みたいにいきなり火炙りはないだろうけど、ベリアルやメフィストと懇ろなのはバレちゃったみたいだし、ね」
「…………」
無言で肩をすくめるオーランに、ヘクスは口の端を吊り上げた。
「ま、これからもよろしく。僕は"一生、この館から出られないかもしれない"し、ね」
「暫くの間、休養することをお勧めする。さて。それじゃあ、僕はこれで」
オーランはゆっくりと立ち上がり、いう。
「僕はいつでも貴方と会話ができるからね。……あまり、客人を待たせるのも良くない」
「お気遣い、どうも」
オーラン・クロスの相貌は、苦い悔恨と陰鬱に満ちていた。さあさあと雨が降り注ぐ中、傘もささずに、とある館を眺めている。
彼が眺めているのは、シャルシェレット別邸。雨の中に佇むその館は、聖ヴェレニウス大聖堂もかくやというばかりの清冽な気配を滲ませていた。
マテリアルに関わるもの――教会関係者、覚醒者、あるいは精霊や、歪虚ですらも――全てにとって、その過剰具合がひと目でわかる清浄さであった。並の歪虚や雑魔であれば、立ち入ろうものなら忽ち消失してしまうほどの。
二度目となる異端審問の超重要参考人ヘクス・シャルシェレットの王都における住まいには教会が抱える高位術師が交代で詰め、負のマテリアルに汚染され、多臓器不全を来たし衰弱・昏睡したヘクスの浄化と治療にあたっている。
集中治療の現場がこの館に移されたのはつい一月前のことである。日増しに高まる不平不満から切り離す意味もあったが、いつ死ぬとも知れず、経緯次第では死後に歪虚に転化する可能性すら言及されるほどの汚染に対する、予防措置でもあった。『聖堂教会を挙げて治療をしているにも関わらず』といった風聞と、この上でもなお歪虚と化した場合の被害を考慮しての。
場所が変わったとはいえ、多額の金と人的資源を要することには代わりはなかった。オーランが行ったのは、その浄化術を――些か及ばぬところはあるものの――"法術陣"として生成することであった。それを果たしたあとは、法術陣の調整・改善を行いながら、マテリアル供給源となる覚醒者と、法術陣を弄る際には別な術者による浄化術維持が必要となるため、それが可能な術師とのスケジュール管理をすることが専らの仕事となっている。
技術屋としては、かつてより高位かつ難解な術式を管理できるようになったことは喜ばしい。しかし、私人としては、現状は痛ましかった。
各所に見られる、物々しい見張り。僧兵、騎兵、騎士に民草――その中には、熟達の密偵も混じっているのだろう。それが、ここ数日で格段に増えている。
――やっぱり、漏れているんだろうな。
人の口に戸は立てられぬ、というべきか。ただでさえ、館内部にも教会関係者や、貴族からの息が掛かった騎士といった第三者が立ち入ることができる環境だ。ゆえに、この状況は必然だった。
ヘクス・シャルシェレットの意識が戻った。
オーランは深く、息をつく。全てを吐き出そうとしても、胸の苦さは晴れはしなかった。
集中治療を継続する必要はあるとはいえ、いずれ、ヘクスの審問が始まるだろう。政情のきな臭さも、オーランの予想を裏付けている。
王女派にとっての急所であるヘクスを、貴族派が逃がすわけもない。
●
意識が戻った3日後には異端審問が再開された。身体的には数ヶ月の臥床と汚染による衰弱でやせ細ったヘクスであったが、思考と記憶には支障が見られなかったためである。
浄化術を維持し続けるという莫大な予算を工面する都合から、ヘクスを大聖堂まで移動させることも出来ず、特例としてシャルシェレット邸で審問が行われることとなった。
今や矮小な蛇と化したベリアル――ベリアルは歪虚ではあるが、この案件については参考人としての扱いとなっている――からの証言が、事態を『複雑化』している。"自身を利用した憎きニンゲン"に対する意趣返しのためか、ベリアルが嬉々として供述した内容は多岐に渡っている。
その中でも重要なものは、いつ、ヘクスが接触してきたのか。いつ、どのような情報をヘクスがもたらしたのか。
命乞いだけはしっかり行いながらも、ヘクスを貶めるためならばと傲慢かつ不遜に舌を回すベリアルは、教会側に重要極まる情報をもたらしていた。これらが真実ならば、ヘクスが目を覚まし次第、有罪をもって審問を終えられる――と、関係者が息巻くほどに。
しかしながら、事態が"複雑化"したのは、ベリアルの証言に対して綿密な検証を行ったためであった。なにせ、ベリアルは歪虚である。歪虚の言を真に受けるほど、教会も短絡的ではない。
その結果、明らかになったのは――ヘクス・シャルシェレットが流していた情報の多くが、"虚報"であったこと。
少なくとも、ベリアルが知っている"事実"は、実態とは大小様々な差異があった。さらには、その虚実を検証すれば、ヘクスがベリアル傘下の軍――クラベルを含む――や、ベリアル自身の動勢に深く介入していたことは、明らかで(かくして、ドヤ顔をさらしていたベリアルは用済みとなり、ヴィオラ共々イスルダ島の調査につれていかれることとなった)。ベリアルの言によればヘクスがメフィストとも通じていたことは明らかであったが、メフィスト自身が結果としては戦局としての勝利を得ながらも、"無知"や"誤認"によって幾度となく窮地に陥り、最終的に消滅したこともまた、事実であった。
歪虚に通じていた、という点は異端極まる事実であるが、人類の裏切り者という指摘については、議論が分かれるところ。
その点についての審問は、今もなお続けられている最中である。
●
――ということをオーランが知ったのは、これらの内容が新聞の記事に載ったからである。機関によって、論調や内容に少しばかりの偏向はあるものの、その骨子は概ね一致している。それを誰が漏らしたかは不明、だが……少なくとも、"この男"ということはないだろう。
「死にたい……」
「この館から出たら一晩を待たずに死ねるんじゃないかな?」
「歩けるようになったら、前向きに考えたいね。けど、その前にあの蛇だけは始末しなくちゃ」
別邸の執務室に据え置かれた机に俯せに伏したヘクスの嘆きに、オーランは苦笑した。軽口が聞けて嬉しかったこともあるが、眼前のヘクスが心底苦しんでいるように見えて、胸がすく思いもあった。
「そういえば、礼を言ってなかったね。ありがとう、オーラン。いやあ、君の研究を支援しててよかった! お陰で破産しないで済んだよ」
「……あんまり大きな声で言わないで欲しいな。僕まで異端を疑われる」
「そうだねえ。昔みたいにいきなり火炙りはないだろうけど、ベリアルやメフィストと懇ろなのはバレちゃったみたいだし、ね」
「…………」
無言で肩をすくめるオーランに、ヘクスは口の端を吊り上げた。
「ま、これからもよろしく。僕は"一生、この館から出られないかもしれない"し、ね」
「暫くの間、休養することをお勧めする。さて。それじゃあ、僕はこれで」
オーランはゆっくりと立ち上がり、いう。
「僕はいつでも貴方と会話ができるからね。……あまり、客人を待たせるのも良くない」
「お気遣い、どうも」
解説
●目的
ヘクスをお見舞いしてください。
(オーラン・クロスとの会話も可能ではあります)
●解説
第六商会経由での依頼です。シャルシェレット別邸に『生活物資など』を届けがてら、そこに住まう誰かの退屈しのぎにお付き合いください。
とはいえ、歩くこともままならないため、大げさなことは出来ませんが……。
なお、回復傾向にあるとはいえ、"多臓器不全"の経過もあったため、身体に害のあることも"積極的には"できません。
実際には描写しませんが、流れとしては、
・各自ひとりずつ、王都内のシャルシェレット別邸に赴く
・入り口で衛兵からボディチェック。武器/防具/暗器の類は全て回収。(装備して参加すること事態は自然なことのため、無問題です)
・その後、第六商会つきの聖導士から浄化術を施されたうえで入館
→ヘクスの執務室へ
という流れになります。ヘクスの傍らには侍女が付き添っていますが、簡単な接待以外は特別関与しません。
ヘクスをお見舞いしてください。
(オーラン・クロスとの会話も可能ではあります)
●解説
第六商会経由での依頼です。シャルシェレット別邸に『生活物資など』を届けがてら、そこに住まう誰かの退屈しのぎにお付き合いください。
とはいえ、歩くこともままならないため、大げさなことは出来ませんが……。
なお、回復傾向にあるとはいえ、"多臓器不全"の経過もあったため、身体に害のあることも"積極的には"できません。
実際には描写しませんが、流れとしては、
・各自ひとりずつ、王都内のシャルシェレット別邸に赴く
・入り口で衛兵からボディチェック。武器/防具/暗器の類は全て回収。(装備して参加すること事態は自然なことのため、無問題です)
・その後、第六商会つきの聖導士から浄化術を施されたうえで入館
→ヘクスの執務室へ
という流れになります。ヘクスの傍らには侍女が付き添っていますが、簡単な接待以外は特別関与しません。
マスターより
ご無沙汰しております、ムジカ・トラスです。
SSD退任後、本業多忙につきなかなか息もできず、挨拶もできませんでしたが、新連動開始に伴い、地獄のそこから駆けつけました。
これから(シリーズ依頼も含めて)少しずつリリースできたらいいな、と思っています。よろしくおねがいしますね。
タイトルは「ねえどんな」でも、「ねっとりどきどき」でも「なぐる・だきつく」でもなんでも良いんですが、言いたいこと、聞きたいこと、やりたいことをやったもん勝ち、というシナリオです。
まさに青春!
よろしくおねがいしますね!
SSD退任後、本業多忙につきなかなか息もできず、挨拶もできませんでしたが、新連動開始に伴い、地獄のそこから駆けつけました。
これから(シリーズ依頼も含めて)少しずつリリースできたらいいな、と思っています。よろしくおねがいしますね。
タイトルは「ねえどんな」でも、「ねっとりどきどき」でも「なぐる・だきつく」でもなんでも良いんですが、言いたいこと、聞きたいこと、やりたいことをやったもん勝ち、というシナリオです。
まさに青春!
よろしくおねがいしますね!
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2018/04/24 09:37
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓だぜ! ジャック・J・グリーヴ(ka1305) 人間(クリムゾンウェスト)|24才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2018/04/16 18:51:02 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/04/16 11:15:33 |