ゲスト
(ka0000)
【虚動】侵攻雑魔殲滅戦
マスター:桐咲鈴華

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/12/18 07:30
- 完成日
- 2014/12/26 06:30
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
リアルブルー産の対歪虚用戦闘装甲機、通称「CAM」。それがマギア砦の南方に集められ、今まさに稼動実験を始まる。
帝国が辺境に土地を借り、王国と同盟の協力を得て行われる一大プロジェクトだ。ある者はCAMの有効性を願い、ある者は眼前の利益のために動く。多くの人が関われば、思惑が交錯するのは当然だ。
何もなかったこの地も、次第に人で賑わい始める。今ではちょっとした町に見えなくもない。同盟軍によって運ばれたCAMも勢揃いし、静かに実験の時を待った。
そんな最中、見張り役の男が叫ぶ。
「北東から雑魔の群れが出現! その数100を越えます!」
それを聞いた首脳陣の顔色が変わった。
「バタルトゥ殿、この数の襲撃は自然な数と言えますかな?」
「……群れを成して行動するのは見かけるが……、この数は……異様だ」
予想された答えとはいえ、こうもハッキリ言われると辛い。
しかし、二の句は早かった。
「CAMは……投入できないのか……?」
敵の襲来で張り詰めた空気が、期待と不安の入り混じったものに変化した。
「今回の肝は改修したエンジンの稼動実験だ。実戦でのデータを取る予定はない」
「とはいえ、いずれは敵を相手にするのだ。道理を語っている場合ではないぞ」
雑魔退治にCAM投入を希望するのは推進派の面々だが、彼らは慎重派を押し切るだけの決定的な材料を持っていた。
実はCAMのデモンストレーション用として、これまでの作戦に投入された際の挙動を披露するべく、貴重な特殊燃料をサルヴァトーレ・ロッソから少量ながら預かっていた。短時間の運用であれば、雑魔退治に差し向けても問題ないというのが彼らの主張である。
「だが、できればCAMに負担を与えたくないし、雑魔も近づけたくはないというのも本音だ」
「ならば……ハンターの手を借りるしかない、だろうな……」
結局、ハンターとCAMの共同作戦として、雑魔の群れを撃破することになった。
●
「お集まり頂き、感謝致します」
集まったハンター達に対して恭しく頭を下げて礼をするのはヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)。帝国軍の兵長であり、辺境の管理者だ。
「お集まり頂いた貴方達は既に聞き及んでいる事と思われますが、CAM実験地に向かって雑魔の大群が押し寄せてきているらしいのです。貴方方にはこれらの殲滅をお願いしたく存じます」
ヴェルナーはハンター達に向き直ると、状況を解説しはじめる。
「向かってきている雑魔は雑魔化したコボルドやゴブリン。亜人の中でも下等な種族で、雑魔化したところで一体一体には大した戦闘力もなく、ハンターが相手どるには何の問題もありません。
しかし、その数が100ともなれば話は違ってきます。物量というのはシンプルかつ分かり易い脅威であり、これ程の数が押し寄せてくるともなれば、苦戦を強いられるのは必至でしょう」
ハンター達に資料が配られる。そこに書かれているのは向かってくる雑魔の種類だ。中にはゴブリンソルジャーやゴブリンメイジの姿も確認できる。
そしてハンター達の目を引く資料がもうひとつある。それは武装したCAMの見取り図だ。
「優秀な戦闘員であるハンター達が遅れをとるとは思いませんが、やはり数の暴力は侮れぬもの。それにここまで大規模な雑魔の群れです。中には強力な個体が混じっていてもおかしくはありません。
そこで、我々の担当する地域にも一台、CAMの出撃許可を頂いております。明らかな劣勢となれば、CAMを起動することで敵を一網打尽に出来るでしょう」
CAMに搭載されている武装は対ヴォイド用ミサイルと30mmガトリングガン。いずれも見取り図に性能が書かれており、超火力による弾幕は雑魔レベルなら消し飛ばす事が出来るだろう。
「しかし、ご存知の通りCAMの燃料は希少なもので、貴重なものに変わりはありません。CAMを起動するとしても、運用は最低限に納めるべきでしょう。はじめからCAMで駆逐するだけというならば、わざわざハンターに依頼をする意味もありませんからね」
改めてヴェルナーは集まったハンター達を見据える。
「此度の実験は、人間が歪虚に対抗する為に必要な足がかり。故にこの依頼の重要性は皆様も存じていると思われます。くれぐれも、どうかよろしくお願いしますよ」
リアルブルー産の対歪虚用戦闘装甲機、通称「CAM」。それがマギア砦の南方に集められ、今まさに稼動実験を始まる。
帝国が辺境に土地を借り、王国と同盟の協力を得て行われる一大プロジェクトだ。ある者はCAMの有効性を願い、ある者は眼前の利益のために動く。多くの人が関われば、思惑が交錯するのは当然だ。
何もなかったこの地も、次第に人で賑わい始める。今ではちょっとした町に見えなくもない。同盟軍によって運ばれたCAMも勢揃いし、静かに実験の時を待った。
そんな最中、見張り役の男が叫ぶ。
「北東から雑魔の群れが出現! その数100を越えます!」
それを聞いた首脳陣の顔色が変わった。
「バタルトゥ殿、この数の襲撃は自然な数と言えますかな?」
「……群れを成して行動するのは見かけるが……、この数は……異様だ」
予想された答えとはいえ、こうもハッキリ言われると辛い。
しかし、二の句は早かった。
「CAMは……投入できないのか……?」
敵の襲来で張り詰めた空気が、期待と不安の入り混じったものに変化した。
「今回の肝は改修したエンジンの稼動実験だ。実戦でのデータを取る予定はない」
「とはいえ、いずれは敵を相手にするのだ。道理を語っている場合ではないぞ」
雑魔退治にCAM投入を希望するのは推進派の面々だが、彼らは慎重派を押し切るだけの決定的な材料を持っていた。
実はCAMのデモンストレーション用として、これまでの作戦に投入された際の挙動を披露するべく、貴重な特殊燃料をサルヴァトーレ・ロッソから少量ながら預かっていた。短時間の運用であれば、雑魔退治に差し向けても問題ないというのが彼らの主張である。
「だが、できればCAMに負担を与えたくないし、雑魔も近づけたくはないというのも本音だ」
「ならば……ハンターの手を借りるしかない、だろうな……」
結局、ハンターとCAMの共同作戦として、雑魔の群れを撃破することになった。
●
「お集まり頂き、感謝致します」
集まったハンター達に対して恭しく頭を下げて礼をするのはヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)。帝国軍の兵長であり、辺境の管理者だ。
「お集まり頂いた貴方達は既に聞き及んでいる事と思われますが、CAM実験地に向かって雑魔の大群が押し寄せてきているらしいのです。貴方方にはこれらの殲滅をお願いしたく存じます」
ヴェルナーはハンター達に向き直ると、状況を解説しはじめる。
「向かってきている雑魔は雑魔化したコボルドやゴブリン。亜人の中でも下等な種族で、雑魔化したところで一体一体には大した戦闘力もなく、ハンターが相手どるには何の問題もありません。
しかし、その数が100ともなれば話は違ってきます。物量というのはシンプルかつ分かり易い脅威であり、これ程の数が押し寄せてくるともなれば、苦戦を強いられるのは必至でしょう」
ハンター達に資料が配られる。そこに書かれているのは向かってくる雑魔の種類だ。中にはゴブリンソルジャーやゴブリンメイジの姿も確認できる。
そしてハンター達の目を引く資料がもうひとつある。それは武装したCAMの見取り図だ。
「優秀な戦闘員であるハンター達が遅れをとるとは思いませんが、やはり数の暴力は侮れぬもの。それにここまで大規模な雑魔の群れです。中には強力な個体が混じっていてもおかしくはありません。
そこで、我々の担当する地域にも一台、CAMの出撃許可を頂いております。明らかな劣勢となれば、CAMを起動することで敵を一網打尽に出来るでしょう」
CAMに搭載されている武装は対ヴォイド用ミサイルと30mmガトリングガン。いずれも見取り図に性能が書かれており、超火力による弾幕は雑魔レベルなら消し飛ばす事が出来るだろう。
「しかし、ご存知の通りCAMの燃料は希少なもので、貴重なものに変わりはありません。CAMを起動するとしても、運用は最低限に納めるべきでしょう。はじめからCAMで駆逐するだけというならば、わざわざハンターに依頼をする意味もありませんからね」
改めてヴェルナーは集まったハンター達を見据える。
「此度の実験は、人間が歪虚に対抗する為に必要な足がかり。故にこの依頼の重要性は皆様も存じていると思われます。くれぐれも、どうかよろしくお願いしますよ」
リプレイ本文
●開戦前
辺境の東部には荒涼とした大地が広がる。痩せた地面に生える緑は少なく、時折砂埃が肌を撫ぜる。
そんな大地には今、絶えず地響きが続いている。自然のものではない。それは大群が踏み鳴らす足音の集合体。地を唸らせるほどの圧倒的な数がそこを走り抜けてゆく。
雑魔の大軍勢。大部分がゴブリンなどの亜人で構成されたそれは意思を持つひとつの生き物のようで、真っ直ぐCAMの実験場へと突き進んでゆく。
少し離れた場所にはヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)がいた。彼は主戦場となる場所から少し離れた拠点。CAMが此度配置されている近くに急遽設営された物見櫓にて、大群が巻き上げられる砂煙を眺めていた。
「数の暴力とはよく言ったものですねぇ。一つ一つは矮小な存在であっても、ああして郡を成す事で、ひとつの強力な存在となる」
しかしその声色に慌てた様子はない。今から一服でもしようと言わんかりの落ち着き払った態度だった。
「ですが、いかに郡を成そうとも、叡智を駆使する人間には及ばぬものなのです」
ヴェルナーは布陣するハンター達に視線をやりつつ、強かに笑う。その表情には自信が浮かんでいた。
「それを今から、彼らが証明してくれるでしょう」
ヴェルナーは実際にハンター達の作戦会議を拝聴していた。ハンターらの準備や用意からは確かな手応えを感じ、事前に知っていた彼らの戦闘力に裏打ちされる綿密な作戦に、彼にしては珍しく素直な敬意を表していた。
「期待していますよ。ハンターさん達」
●接敵
異変は先頭から起こった。突如として目の前の地面が陥没し、何体かの雑魔が転がり落ちる。その周囲の雑魔が突然の事に驚き、脚を止める。
「足が止まったぞ、今だ!」
その声と同時に、銃声が鳴り響き、戦闘集団にいたコボルドの何体かが吹き飛ぶ。
「落とし穴作戦は成功のようじゃの、敵がまごついておる事じゃ、このまま畳み掛けるぞ!」
号令を発したヴァイス(ka0364)と星輝 Amhra(ka0724)。銃を構え、第二射を掃射する。弾丸が敵の前衛を貫き、撃破してゆく。
ハンター達は川を隔てた此岸側に布陣。川岸に積み上げた土嚢でバリケードを作り、そこから銃を構えている。予め馬によって先行していた為に、こうして接敵するまでに彼岸に落とし穴も用意出来、これによって足止めをすることにも成功していた。
「このまま敵を渡らせずに食い止めるぞ!」
ボルディア・コンフラムス(ka0796)は土嚢の上に銃を乗せて固定し、引き金を引く。
魔導銃サラマンダーから放たれる弾丸は容赦なくゴブリンの身体を吹き飛ばす。
ヴァイス、星輝、ボルディアの掃射が落とし穴から逃れた雑魔達を撃ちぬいてゆく。コボルドやゴブリンといった弱い雑魔達はヴァイス達の射撃に為す術もなく吹き飛ばされてゆくが、それでもやはり圧倒的な数を捌き切る事は出来ない。落とし穴を飛び越え、川へとゴブリン達が差し掛かってゆく。
「おっと、そうはいかねぇ!」
彼岸の岩場に潜んでいたイブリス・アリア(ka3359)が瞬脚で飛び出し、シャドウベインを一番先頭にいたコボルドに叩き込んだ。不意打たれたコボルドの腹に深くナイフが突き刺さり、足が止まる。イブリスはそれを敵の群れの中に蹴り込むと、それに押されて群れの進行が少し止まる。
「まどろっこしいのは苦手でね。さあ、死にたい奴からかかってきな!」
言いつつ群れに向かってイブリスは突っ込む。雑魔化し、凶暴になっている亜人達は突っ込むイブリスに殺到するも、イブリスはそれをマルチステップで回避してゆく。
「援護しますねっ!」
イブリスに対して、Uisca Amhran(ka0754)はプロテクションをかける。光がイブリスを覆い、防御力を強化する。
「イブリスが敵をかき回してくれてるみたいだな。このまま俺たちは譲渡しようとする敵を撃ち抜いていくぞ!」
ボルディアが号令をかけ、イブリスに気を取られずに川を渡ろうとする敵に射撃攻撃を加えてゆく。川で動きが鈍った敵に、ヴァイスの銃弾が突き刺さってゆく。
「威力偵察を兼ねた捨て駒か。派手にやってくれるじゃねぇか」
「それにしても数が多いのう、前衛で敵を引きつけてくれるイブリスも気がかりじゃ。援護するぞ!」
星輝の言葉どおり、イブリスは敵の渦中に飛び込んでいる。お陰で川を渡ろうとする敵は減ったものの、やはり攻撃はイブリスに集中しているようだ。星輝はイブリスに集中する敵を優先して仕留めてゆく。それでも全ての攻撃をかわしきれはせずに、少しずつ傷が増えてゆく。
そこへ、シャドウブリットが飛来する。黒い弾丸に撃ちぬかれたゴブリン達が怯む。
「大丈夫ですか? 今治癒しますっ!」
イブリスの身体が光に包まれ、傷が治癒される。ライエル・ブラック(ka1450)によるヒールだ。
「ははっ、ありがたいねぇ! これでまだ暴れられそうだ!」
傷が癒えたイブリスはライエルに礼の意を込めた頷きで返し、敵の渦中に突っ込む。通り過ぎ様に敵を切り裂き、手裏剣を投げ、ひとつの嵐のように暴れ回る。
「治療は僕に任せて下さい、皆さんは渡河してくる敵を狙って下さい!」
「了解だ。俺は少しでも敵の数を減らす!」
ヴァイスはバトルライフルの弾丸をこめ直し、再び敵を射撃する。川を渡る敵は動きが鈍く、彼の銃弾から逃れる術なく打ち倒される。
「射程に入った。攻撃する」
手に持つワンドに神経を走らせ、川の敵を見据えるのはエアルドフリス(ka1856)だ。その髪や衣服が湿り始める。
「川の敵は動きが鈍い。一体ずつ各個撃破していけば、進行を遅らせられる筈だ。頼むぜ」
「ああ、わかってるさ。だが……全部倒しちまっても構わんのだろう?」
ヴァイスに返す言葉と同時に風の刃を放つエアルドフリス。唸りを上げて吹きすさぶ刃に川に入った敵は為す術もなく切り裂かれ、血と川の水が飛沫をあげる。
「渡らせはしない」
弾幕の如く風の刃が飛来し、雑魔達が次々と切り裂かれてゆく。風を操り飛沫をあげる。その姿は暴風雨を操る者のようだった。
「こちら第一次防衛ライン、戦況は今のところ順調です」
Uiscaが後ろに控えてる仲間たちに、トランシーバーで連絡する。イブリスが敵の隊列をかき乱し、ヴァイスや星輝、ボルディア、エアルドフリスの弾幕は雑魔達を容赦なく消し飛ばしてゆく。主力となる4人の火力の高さで、敵の大群を殲滅し、順調に押し留めている。
だが、そんな拮抗は次の瞬間に綻びを見せた。築いていたバリケードの一部が破壊されたのだ。
「……マジックアロー! ゴブリンメイジです!」
ライエルが叫ぶ。彼岸側にゴブリンメイジが布陣し始め、魔法の矢によってバリケードを攻撃し始める。
「やらせん!」
すぐさまエアルドフリスも風の刃で応戦。ヴァイスやボルディアもそれらに銃の標準をつけて撃破してゆく。しかし、徐々に敵の数が多くなってゆき、ライエルの回復が追いつかずに傷の増えてゆくイブリスも少しずつ後退を余儀なくされる。敵の殲滅が間に合わなくなってくる頃には落とし穴から這い出た雑魔達も合流し、川を渡る敵の波が少しずつ、バリケードに近くなってくる。
「迎撃が間に合わなくなってきました、皆さん、後退の用意を!」
Uiscaの号令によって皆は破壊されつつあるバリケードを放棄し、背後で待機させていた馬に騎乗のちに後退を始める。やがて川を譲渡してきた敵がバリケードに武器を振りかざし、壊してゆく。
「こちら第一次防衛ライン! 敵の数が予想以上に多くなってきました、迎撃しつつ後退します!」
Uiscaがトランシーバーで次の防衛ラインで待機しているハンター達に連絡をとる。バリケードを乗り越えた雑魔が後退するハンター達に迫ってゆく。
「近づかれたら魔術師は困ると思ったかね?浅い」
襲いかかるゴブリンを馬上からメイル・ブレイカーで迎撃するエアルドフリス。怯んだ隙を逃さずヴァイスが銃弾を叩き込んで沈黙させる。
「イスカ、次の防衛ラインに引き継ぐ連絡をしてくれ。私は殿を務めるのじゃ!」
「了解です、キララ姉様!」
星輝が騎乗しながら振り向き、後方に弾丸を撒きつつUiscaに指示を出す。先頭の敵が若干怯むものの、やはり押し寄せる数全てを押し留める事は出来ない。撃ち漏らした敵をヴァイスやボルディアが近接武器で対処しつつ、横へと逸れるように戦場から退避し、傷を癒やすのに専念することにした。
●人海戦術
「第一次防衛ライン、撤退。相当長く保たせて下さったようですが、やはり敵の数が多いようです。皆さん、迎撃準備を」
トランシーバーによってUiscaから連絡を受けたアリュオーシュ・アルセイデス(ka3164)が第二次防衛ラインを守るハンター達に声をかける。
「了解です。彼らが時間を稼いで下さったお陰で、障害物の設置も万全。いつでも迎撃可能です」
「大丈夫。エアルドさんが守った分は引き継いで、ジュードさんに繋げるからさ」
椿姫・T・ノーチェ(ka1225)とユリアン(ka1664)がそれに応える。彼女らは馬を走らせて第一次防衛ラインのバリケード設営にも助力しつつ、部隊が交戦中の時間を利用して第二次防衛ラインの為の障害物を設置していた。本来何もないはずの荒野にはいくつかのバリケードや塹壕が用意されている。
「目標を目視した。攻撃に入る」
遠くで土煙をあげる敵の軍勢を見据えるのはカルス(ka3647)だ。和弓にマテリアルを込めて、矢を引き絞る。狙いは足の遅い前衛を抜かす為に、横に広がろうとするゴブリン達。
「出る杭は……ってな。異世界のコトワザて奴だ」
放たれた矢が正確に隊列を乱したゴブリンを刺し貫く。超長距離から放たれた狙撃に気づいたゴブリン達は、味方の前衛を押し出すように前に仕向ける。
「嫌ならそうやってお行儀よくしとけよ」
赤く帯電するような幻影を纏いながら、遠射によって次々とゴブリン達を狙撃してゆくカルス。その甲斐あってか敵の広がりが一定に収束され、拙い隊列状態を保ったままこちらに直進してくる。
「CdL。攻撃を開始する。アヴェーヌさん、出番ですよ」
「了解ですわ、隊長」
そうなってしまえば味方の射撃の仕事も楽になる。部隊『CdL』を率いるクラーク・バレンスタイン(ka0111)と、同部隊所属のベアトリス・ド・アヴェーヌ(ka0458)がそれぞれアサルトライフルを構える。
「統率もない雑魔とはいえ、やろうと思えばこの数をけしかけられるのですか。厄介ですわね」
「的には困らなさそうですね」
クラークは威嚇射撃によって弾丸をばらまく。足元に多数の銃槍が出来た先頭集団は若干足踏みをする。そこへベアトリスが銃撃を放ち、ゴブリンの体力を削る。そして銃弾の突き刺さったそこへ、弓矢が突き刺さってゴブリンは倒れる。
「足が止まったなら、私でも当てれるよ」
悠木 優子(ka3614)が弓に次の矢を番えながら言う。当人曰くあまり射撃は得意方ではないらしいが、混戦になる前ならば誤射の心配もない。加えてクラークの威嚇射撃とベアトリスの攻撃によって足止めされた敵だ。正確な仕事が出来るのも、自分の腕前を自覚してるからこそなのだろう。
カルスの射撃で列となった敵を、CdLの2人と優子が撃破してゆく。敵の動きをコントロールしつつの殲滅に加え、そこかしこに設置された障害物の甲斐あって、敵の侵攻は遅れていく。
しかしそれも長くは続かない。先頭集団のゴブリンが射撃によって駆逐されていくと、やがて後ろの方から盾を持ったまま突撃してくるゴブリンが多数現れてきた。
「あれは……ゴブリンソルジャー!」
アリオーシュが叫ぶ。盾によるガードで攻撃を軽減しつつ向かってくるゴブリンソルジャーが、少しずつこちらへ距離を詰めてくる。クラークとベアトリスの弾幕によって数こそ減らされてゆくが、殲滅速度は目に見えて落ちていく。
「さ、行こうか。椿姫さん」
「承知しました」
ユリアンと椿姫が前に打って出る。椿姫はナイフを構えると、フェイントを織り交ぜた不規則な攻撃でゴブリンソルジャーを翻弄する。そこへユリアンがサーベルによる一閃。ゴブリンソルジャーはそのまま倒れて動かなくなる。
「援護しますわ! 次の敵に備えてくださいまし!」
「無理はなさらずに! 傷を負ったら回復致します!」
ベアトリスとアリオーシュがそれぞれ前衛の二人にマテリアルエネルギーを流し込み、運動性能と防御力を強化する。二人はそのまま互いに死角をカバーするように立ち回り、敵の意識を集中させる。
敵の種類も多様になってきて、ゴブリンソルジャーには剣や斧を使う個体の他に、弓を携える個体も増えてゆく。ゴブリンメイジも少しずつ数が増えてゆき、塹壕やバリケードから射撃するハンター達に狙いをつけてゆく。
「上等だ、この距離で俺と闘ろうってのか?」
「援護するよ、射撃をお願い!」
それを許すまいとカルスが矢にマテリアルを込めて引き絞り、優子がそれに対して更にマテリアルエネルギーを流し込む。二人の力が合わさって射られた矢は正確にゴブリンソルジャーの頭部に突き刺さり、まともに受けたゴブリンソルジャーは倒れる。
「敵の遠距離攻撃が多くなってきましたわ!」
「やはり、一筋縄ではいきそうもないか……!」
CdLの2人が戦況が少しずつ傾いてきていることに気付く。バリケードが魔法の矢や弓矢で少しずつ瓦解してゆく。第二次防衛ラインのハンター達は各個撃破で確実に数を減らしてゆくものの、圧倒的に数で勝る敵に対して殲滅力がやや不足している。敵を直線上にて迎撃することに成功はしているものの、徐々にその物量に押し込まれてゆく。
「……っ!」
「椿姫さん!」
そんな中、敵の渦中に居る椿姫がまともにゴブリンソルジャーの剣を受けてしまう。マルチステップで巧みに敵の攻撃を回避し続けてきた彼女だったが、流石に多方向から来る敵の攻撃は捌き切れない。ユリアンもランアウトで敵を切りつけてゆくが、決定打に欠ける一撃では敵を倒しきれない場合が多くなってゆく。
「まずいな……。CdL1より、CAMへ。そちらから俯瞰で現在の戦況を教えて頂けませんか」
クラークがトランシーバーでCAMのパイロットに連絡をとる。CAMのカメラやレーダーならば戦場を俯瞰して捉える事ができると睨んでいたからだ。
『敵の数は大分部分は消失しています。しかし、敵は後列に主力部隊を残していた模様。小さな恐竜に騎乗して武装したゴブリンが確認できます』
その報告を聞いたクラークは歯噛みする。
「小さな恐竜に騎乗したゴブリン……リトルラプターとゴブリンナイトか? 厄介な」
「クラークさん、危ないですわ!」
通信していたクラークへ弓矢が飛来する。ベアトリスの声に気づいて何とか回避できたが……。
「きゃあっ!」
「アヴェーヌさん!」
その瞬間、ベアトリスも魔法の矢を受けてしまう。ハンター達と敵の集団との距離が縮まってゆく。
「ちっ、そろそろきついな……」
「痛っ! もう、こっちこないでよー!」
遠距離狙撃に徹していたカルス、優子の所にもソルジャーが接敵する。バリケードの箇所にも敵が接近しつつある。
「これ以上は保たないか……!」
やむおえず、第二次防衛ラインを放棄し、撤退の号令を飛ばそうとするクラーク。そこへ
「ここを破られちゃ、困るんでな!」
「ボクも混ぜてくれよ!」
背後に控えていた仲間が、駆けつけたのだった。
●反撃
言葉と同時に飛び出したのはナハティガル・ハーレイ(ka0023)とヒース・R・ウォーカー(ka0145)だ。ナハティガルが渾身撃を叩き込み、ヒースが刀による鋭い斬撃でゴブリンソルジャーを切り伏せる。
その他にも後方で控えていた仲間が次々と、第二次防衛ラインに合流する。どうやら第一次、第二次防衛ラインで敵の侵攻がかなり遅れていた為に、敵部隊が後方にまで到達しなかったのだ。そこでアリオーシュが後方に待機する仲間に第二次防衛ラインに加わって欲しいという連絡を伝達したのだった。
「け、怪我をしてる人、こっちに来てくださーい……!」
ルカ(ka0962)が負傷者の治療をしてゆく。
「あとは俺たちに任せて、負傷者を連れて下がっていてくれ!」
「助かります……! あとは、頼みました」
ナハティガルとアリオーシュが短くやりとりする。ルカやアリオーシュが負傷したメンバーの治療をしつつ、後方へと下がってゆく。
「戦いに来たんだろ、壊しに来たんだろぉ。なら最後まで付き合ってもらおうかぁ」
ヒースは高揚する気持ちを抑えきれないといった風に刀を構える。戦いこそが生きる場所だと考える彼にの目には、この戦場はとても甘美なものに映るのだろう。真正面から敵へと突撃し、携えた刀を振りかざし、ソルジャーを切り捨ててゆく。
増援にまごつくゴブリン達。そこへ次々と魔法の矢や炎の矢が飛来する。強力な魔法攻撃に撃ちぬかれ、ゴブリン達は昏倒してゆく。
「さぁ、次に吹っ飛ばされたいのはどいつかしら!」
魔法を放ったのはエルム(ka0121)だ。ワンドを振り、弾丸の如く魔法の矢を放つ。その姿はまさしく魔弾の射手だった。
ゴブリン達もその魔法を危険視したか、ソルジャー達が弓矢をエルムに対して引き絞る。そんなゴブリンソルジャーの背後に、人影が舞い降りる。
「やらせると思うの?」
エルムを注視していたソルジャー達の急所に弾丸を叩き込んで沈黙させる。赤いコートを翻し、拳銃を片手に風のように戦場を舞うのはナル(ka3448)。脚にマテリアルを集中させ、高速で走り抜ける。
「遠距離持ちは厄介ね……駆逐するわよ」
後衛の前に立ち塞がろうとするソルジャーをマルチステップで回避し、振り翳される剣を舞うように躱す。軽やかな足捌きで後方に控えていたゴブリンメイジの懐に入り、ゼロ距離で銃弾を叩き込む。これによって敵の後方支援が激減してゆく。
そしてついに敵の主力が到達する。リトルラプターに騎乗した鎧に身を包んだ亜人、ゴブリンナイトが後方から突撃してくる。敵を打ち倒した瞬間のナルに対して、強力な剣を振りかざす。
「お前の相手はざくろだ!」
それをさせまいとギアブレイドを携えてゴブリンナイトに切り込むのは時音 ざくろ(ka1250)。ギアブレイドの一撃を受けたナイトはよたつくも、すぐさま標的をざくろに切り替える。
「受け止めろ隠し腕!」
その攻撃をムーバブルシールドによって動かした盾で防ぎ、受け止める。騎乗からの高所攻撃による一撃は重く、衝撃が食い込む。が、ざくろはそれを脚を踏みしめて耐える。
「……っ、効きは、しないよ……! 輝け、ギアブレイド!」
ざくろはそのまま機導剣を生成。ギアブレイドと一体となった光の剣がリトルラプターの腹部を深く斬りつける。リトルラプターが苦しみ暴れ、尻尾を大きく振り回す。
「危ないっ!」
その攻撃に割り込み、盾で受け止めたのはエイル・メヌエット(ka2807)。後方で第二次メンバーの治療を終え、戦線に繰り出したのだ。そのままシールドバッシュによって敵の体勢を崩す。そこへ強力な弓矢が放たれ、リトルラプターは声をあげて絶命した。
「大丈夫? 今傷を治すから」
エイルはざくろに微笑みかけ、ながら、ヒールによって彼の傷を癒やす。
「あ、ありがとう……!」
「気にしないで。仲間を守るのが聖導師の仕事よ。それよりまだ、本番はこれからね」
ざくろとエイルが、残るゴブリンナイトと対峙する。その様子を遥か遠くからジュード・エアハート(ka0410)が見据える。先ほどリトルラプターを仕留めたのも彼の狙撃によるものだった。
「エアさんとユリアンさんに狩り尽くされてたと思ってたけど、敵さんもやるねぇ。というか数が多すぎ。やれやれだね」
再び矢を番え、弦を引き絞る。飄々とした言動とは裏腹にマテリアルで強化した感覚によって研ぎ澄まされた神経は正確に獲物を捉える。
「……ふっ!」
矢が空を裂いて飛ぶ。風切り音を響かせる鋭い一射は対峙するゴブリンナイトの肩を装甲の上から穿ち、敵の体勢を大きく崩す。
「そこよ! いっけーっ!」
その隙を逃さずにエルムが炎の矢を放ち、ゴブリンナイトは炎に包まれる。突然の魔法に為す術もなくゴブリンナイトは苦しみ暴れる。
「これで、トドメだ!」
再び機導剣を発動したざくろが、光り輝く剣で炎ごとゴブリンナイトを切り裂く。狙撃に火炎、そして強烈な斬撃の猛攻撃に耐え切れずにゴブリンナイトはその場に倒れこんだ。
「よし、撃破……それにしても、敵の隊列が乱れてる気がする」
沈静化したナイトから視線を外したざくろが周囲を見回す。ゴブリンソルジャーやゴブリンメイジが依然大量に居るが、明らかに数が少ない。その言葉に対して味方の治療をしつつ、エイルが答えた。
「きっと、彼女がうまくやってくれたのね」
「ああ、なるほど。うまくいったんだ」
合点がいったという風にざくろが頷く。遠くで大きな土埃があがり、それに向かって敵が流れていったのに気づいたのだった。
遡ること数分前。突如として横側から巻き上がる土埃に敵が気づいたのはその頃だ。
ゴブリン達はそれを、ハンター達の増援だと思ったのだろう。気付いたゴブリンは隊列を外れ、その土埃の方へと向かおうとする。
「ほら、隊列が乱れてるわよ」
向かおうとするゴブリンがその声に振り向く前に、放たれた太刀による一閃がゴブリンの首を飛ばした。突然の襲撃にゴブリンの隊列は混乱に陥る。
「奇襲は成功ね。さあ、暴れさせてもらうわよ」
脚に込めたマテリアルによって敵陣に突撃をかけるのはエリシャ・カンナヴィ(ka0140)。彼女は馬に括りつけた木材で砂埃を巻き上げる事で敵の指揮系統を混乱させ、そこへ奇襲をかけるという戦法をとった。前線での交戦に集中していたゴブリン達は突然の襲撃に為す術もなく斬り倒されてゆく。
「雑魔化してるとはいえ、やっぱり亜人ね。人間の作戦の真似事はできても、対策までは思い当たらないってことね」
ランアウトによってすれ違い様にゴブリンを斬りつけてゆくエリシャ。振り下ろされる攻撃も彼女は華麗に躱し、攻撃を続ける。これによって敵後方の隊列は滅茶苦茶にかき回されたのだった。
時は戻り現在。エリシャの奇襲によって乱れた隊列、後方に注意を引かれてしまうゴブリン達。それが決定的な隙となる。
タンタン、と銃声が鳴り、ゴブリンの脚が撃ち抜かれる。拳銃による攻撃、それを行ったのはシェリル・マイヤーズ(ka0509)。だが拳銃による攻撃は長くは続かず、飽きたといった風に拳銃を投げ捨て、刀を抜き放つ。
「……やっぱり、こっち……行こう、ウスサマ……」
脚を撃ちぬかれて動けないゴブリンソルジャーを容赦なく切り捨てるシェリル。刀ごしに伝わる肉の感触に気分が高揚する。頬についた返り血を舐めつつ、微笑みを浮かべる。
「……ヒース……」
そんな彼女の目に写ったのは、同じく愉しむように戦場を走り回るヒースの姿。彼もまた刀を振りかざし敵を切り裂き、ノーモーションで手裏剣を投げて縦横無尽に暴れまわる。
「おおっと!」
ヒースは地面を蹴って横っ飛びし、突如として突撃してきたリトルラプターの体当たりを回避する。その上にはゴブリンナイトが騎乗している。
「ははっ、いいねぇ、強いやつが出てきた! さぁ、もっと愉しませてくれよ。戦場を、ボクが生きている場所を実感させてくれ!」
再び地面を蹴ったヒース。リトルラプターが叩きつけるように尻尾を振るのを躱し、その上に乗るゴブリンが斧を振り下ろすのをステップで回避、すれ違い様にナイトの腕をめがけて刀を振り上げ、ダメージを与える。ゴブリンが向きを変えた頃には、ヒースは既に遠くに。一撃離脱の戦法だ。
そして、ゴブリンナイトとリトルラプターは完全にそちらに気を取られていた。その近くで、深く腰を落として剣を構えたナハティガルに、気付けなかった。
「……はぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
攻めの構えから渾身の力を込めてユナイテッド・ドライブ・ソードを放つナハティガルの一閃。強力無比な一撃はリトルラプターの胴体を一刀のもとに真っ二つにする!
一瞬で騎獣を失ったゴブリンナイトはバランスを崩して地面に落下する。だがやはり、戦闘訓練を積んだ歴戦のゴブリンらしく、すぐさま体勢を立て直した。
「立ち上がらせると思う?」
だがそれをさせまいと動いたのはナルだ。走りつつ拳銃を掃射し、ゴブリンナイトの脚を撃ち抜く。体勢を立て直した所に打ち込まれた銃弾に対処できず、今度こそ膝を折る。
そこへ強烈な弓矢が頭部に直撃する。パカァン! と派手な音を立てて着用していた兜が粉々になった。遠距離から見据えていた、ジュードの狙撃だ。
「……さよなら」
体勢を崩し、露わになった頭部に容赦のない一太刀を、シェリルが浴びせる。
急所に直撃した刀が決定打となり、ゴブリンナイトは倒れた。
2体目のゴブリンナイトの撃破。そして周囲のソルジャーやメイジもあらかた殲滅が終わった。
だが戦いは終わりではなかった。更に後方から、更に3体のゴブリンナイトがリトルラプターに騎乗して突撃してきたのだった。
「……これ以上の、強敵との交戦は、危険ですっ!」
治療をしつつ戦況全体を見ていたルカが、トランシーバーによってCAMの方に待機している仲間、那月 蛍人(ka1083)連絡をとった。
●CAM
「OK、待ってました!」
蛍人はトランシーバーから受け取った情報を整理し、戦況全体の管理に努めていた。
そしてルカからの報告。これ以上の連戦は味方の体力が保たない。
「第二次防衛ラインに敵主力到着! これが最後のようだ! CAM、起動してくれ!」
『了解しました』
蛍人の起動指示によりCAMが起動する。低い駆動音が地面を振動させ、巨躯にエネルギーが充填される。
「こちら蛍人! CAMを起動した、すぐに後退してくれ! 弾幕が来るぞ!」
蛍人の後ろで、CAMが両手に携えたガトリングガンを構える。射程圏内に捉えたゴブリンナイト達をカメラによって解析し、照準を合わせる。
『発射準備完了、指示を』
「砲撃来るよ! 総員退却! 巻き込まれるよ!」
連絡を受けたジュードが声を張り上げ、前線に居るメンバーに伝える。
事前に打ち合わせたハンター達はすぐに意図を察知し、踵を返して戦場から去る。今まで交戦の意思を見せていたハンター達が急に散開したゴブリンナイト達は突然の事に状況判断に足を止めてしまう。
程なくして、爆音と共にガトリングが駆動する。それは射撃と呼ぶにはあまりにも強大無比な弾幕。二門の銃口から発せられる弾丸の雨霰はリトルラプターを、ゴブリンナイトを、先ほどまでハンター達が交戦していた大地ごと蜂の巣にしてゆく。
一発一発がハンターの放つ銃弾に匹敵する威力。それが無数に、絶え間なくゴブリンナイト達に浴びせられる。最早勝敗など、火を見るより明らかであった。
四十を超える雑魔の群れは、こうして掃討された。
CAMの起動を最低限に抑えたハンター達の奮闘に、物見櫓から戦況を眺めていたヴェルナーは満足そうに笑みを零すのだった。
「お見事。やはりやってくれましたねぇ、皆さん。本当にご苦労様でした」
遠くでハンター達が勝利に歓声をあげているのが見える。
今回の敵は数で圧倒的に勝る軍勢。それを知略と戦略によって、ハンター達は見事切り抜けたのだった。
辺境の東部には荒涼とした大地が広がる。痩せた地面に生える緑は少なく、時折砂埃が肌を撫ぜる。
そんな大地には今、絶えず地響きが続いている。自然のものではない。それは大群が踏み鳴らす足音の集合体。地を唸らせるほどの圧倒的な数がそこを走り抜けてゆく。
雑魔の大軍勢。大部分がゴブリンなどの亜人で構成されたそれは意思を持つひとつの生き物のようで、真っ直ぐCAMの実験場へと突き進んでゆく。
少し離れた場所にはヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)がいた。彼は主戦場となる場所から少し離れた拠点。CAMが此度配置されている近くに急遽設営された物見櫓にて、大群が巻き上げられる砂煙を眺めていた。
「数の暴力とはよく言ったものですねぇ。一つ一つは矮小な存在であっても、ああして郡を成す事で、ひとつの強力な存在となる」
しかしその声色に慌てた様子はない。今から一服でもしようと言わんかりの落ち着き払った態度だった。
「ですが、いかに郡を成そうとも、叡智を駆使する人間には及ばぬものなのです」
ヴェルナーは布陣するハンター達に視線をやりつつ、強かに笑う。その表情には自信が浮かんでいた。
「それを今から、彼らが証明してくれるでしょう」
ヴェルナーは実際にハンター達の作戦会議を拝聴していた。ハンターらの準備や用意からは確かな手応えを感じ、事前に知っていた彼らの戦闘力に裏打ちされる綿密な作戦に、彼にしては珍しく素直な敬意を表していた。
「期待していますよ。ハンターさん達」
●接敵
異変は先頭から起こった。突如として目の前の地面が陥没し、何体かの雑魔が転がり落ちる。その周囲の雑魔が突然の事に驚き、脚を止める。
「足が止まったぞ、今だ!」
その声と同時に、銃声が鳴り響き、戦闘集団にいたコボルドの何体かが吹き飛ぶ。
「落とし穴作戦は成功のようじゃの、敵がまごついておる事じゃ、このまま畳み掛けるぞ!」
号令を発したヴァイス(ka0364)と星輝 Amhra(ka0724)。銃を構え、第二射を掃射する。弾丸が敵の前衛を貫き、撃破してゆく。
ハンター達は川を隔てた此岸側に布陣。川岸に積み上げた土嚢でバリケードを作り、そこから銃を構えている。予め馬によって先行していた為に、こうして接敵するまでに彼岸に落とし穴も用意出来、これによって足止めをすることにも成功していた。
「このまま敵を渡らせずに食い止めるぞ!」
ボルディア・コンフラムス(ka0796)は土嚢の上に銃を乗せて固定し、引き金を引く。
魔導銃サラマンダーから放たれる弾丸は容赦なくゴブリンの身体を吹き飛ばす。
ヴァイス、星輝、ボルディアの掃射が落とし穴から逃れた雑魔達を撃ちぬいてゆく。コボルドやゴブリンといった弱い雑魔達はヴァイス達の射撃に為す術もなく吹き飛ばされてゆくが、それでもやはり圧倒的な数を捌き切る事は出来ない。落とし穴を飛び越え、川へとゴブリン達が差し掛かってゆく。
「おっと、そうはいかねぇ!」
彼岸の岩場に潜んでいたイブリス・アリア(ka3359)が瞬脚で飛び出し、シャドウベインを一番先頭にいたコボルドに叩き込んだ。不意打たれたコボルドの腹に深くナイフが突き刺さり、足が止まる。イブリスはそれを敵の群れの中に蹴り込むと、それに押されて群れの進行が少し止まる。
「まどろっこしいのは苦手でね。さあ、死にたい奴からかかってきな!」
言いつつ群れに向かってイブリスは突っ込む。雑魔化し、凶暴になっている亜人達は突っ込むイブリスに殺到するも、イブリスはそれをマルチステップで回避してゆく。
「援護しますねっ!」
イブリスに対して、Uisca Amhran(ka0754)はプロテクションをかける。光がイブリスを覆い、防御力を強化する。
「イブリスが敵をかき回してくれてるみたいだな。このまま俺たちは譲渡しようとする敵を撃ち抜いていくぞ!」
ボルディアが号令をかけ、イブリスに気を取られずに川を渡ろうとする敵に射撃攻撃を加えてゆく。川で動きが鈍った敵に、ヴァイスの銃弾が突き刺さってゆく。
「威力偵察を兼ねた捨て駒か。派手にやってくれるじゃねぇか」
「それにしても数が多いのう、前衛で敵を引きつけてくれるイブリスも気がかりじゃ。援護するぞ!」
星輝の言葉どおり、イブリスは敵の渦中に飛び込んでいる。お陰で川を渡ろうとする敵は減ったものの、やはり攻撃はイブリスに集中しているようだ。星輝はイブリスに集中する敵を優先して仕留めてゆく。それでも全ての攻撃をかわしきれはせずに、少しずつ傷が増えてゆく。
そこへ、シャドウブリットが飛来する。黒い弾丸に撃ちぬかれたゴブリン達が怯む。
「大丈夫ですか? 今治癒しますっ!」
イブリスの身体が光に包まれ、傷が治癒される。ライエル・ブラック(ka1450)によるヒールだ。
「ははっ、ありがたいねぇ! これでまだ暴れられそうだ!」
傷が癒えたイブリスはライエルに礼の意を込めた頷きで返し、敵の渦中に突っ込む。通り過ぎ様に敵を切り裂き、手裏剣を投げ、ひとつの嵐のように暴れ回る。
「治療は僕に任せて下さい、皆さんは渡河してくる敵を狙って下さい!」
「了解だ。俺は少しでも敵の数を減らす!」
ヴァイスはバトルライフルの弾丸をこめ直し、再び敵を射撃する。川を渡る敵は動きが鈍く、彼の銃弾から逃れる術なく打ち倒される。
「射程に入った。攻撃する」
手に持つワンドに神経を走らせ、川の敵を見据えるのはエアルドフリス(ka1856)だ。その髪や衣服が湿り始める。
「川の敵は動きが鈍い。一体ずつ各個撃破していけば、進行を遅らせられる筈だ。頼むぜ」
「ああ、わかってるさ。だが……全部倒しちまっても構わんのだろう?」
ヴァイスに返す言葉と同時に風の刃を放つエアルドフリス。唸りを上げて吹きすさぶ刃に川に入った敵は為す術もなく切り裂かれ、血と川の水が飛沫をあげる。
「渡らせはしない」
弾幕の如く風の刃が飛来し、雑魔達が次々と切り裂かれてゆく。風を操り飛沫をあげる。その姿は暴風雨を操る者のようだった。
「こちら第一次防衛ライン、戦況は今のところ順調です」
Uiscaが後ろに控えてる仲間たちに、トランシーバーで連絡する。イブリスが敵の隊列をかき乱し、ヴァイスや星輝、ボルディア、エアルドフリスの弾幕は雑魔達を容赦なく消し飛ばしてゆく。主力となる4人の火力の高さで、敵の大群を殲滅し、順調に押し留めている。
だが、そんな拮抗は次の瞬間に綻びを見せた。築いていたバリケードの一部が破壊されたのだ。
「……マジックアロー! ゴブリンメイジです!」
ライエルが叫ぶ。彼岸側にゴブリンメイジが布陣し始め、魔法の矢によってバリケードを攻撃し始める。
「やらせん!」
すぐさまエアルドフリスも風の刃で応戦。ヴァイスやボルディアもそれらに銃の標準をつけて撃破してゆく。しかし、徐々に敵の数が多くなってゆき、ライエルの回復が追いつかずに傷の増えてゆくイブリスも少しずつ後退を余儀なくされる。敵の殲滅が間に合わなくなってくる頃には落とし穴から這い出た雑魔達も合流し、川を渡る敵の波が少しずつ、バリケードに近くなってくる。
「迎撃が間に合わなくなってきました、皆さん、後退の用意を!」
Uiscaの号令によって皆は破壊されつつあるバリケードを放棄し、背後で待機させていた馬に騎乗のちに後退を始める。やがて川を譲渡してきた敵がバリケードに武器を振りかざし、壊してゆく。
「こちら第一次防衛ライン! 敵の数が予想以上に多くなってきました、迎撃しつつ後退します!」
Uiscaがトランシーバーで次の防衛ラインで待機しているハンター達に連絡をとる。バリケードを乗り越えた雑魔が後退するハンター達に迫ってゆく。
「近づかれたら魔術師は困ると思ったかね?浅い」
襲いかかるゴブリンを馬上からメイル・ブレイカーで迎撃するエアルドフリス。怯んだ隙を逃さずヴァイスが銃弾を叩き込んで沈黙させる。
「イスカ、次の防衛ラインに引き継ぐ連絡をしてくれ。私は殿を務めるのじゃ!」
「了解です、キララ姉様!」
星輝が騎乗しながら振り向き、後方に弾丸を撒きつつUiscaに指示を出す。先頭の敵が若干怯むものの、やはり押し寄せる数全てを押し留める事は出来ない。撃ち漏らした敵をヴァイスやボルディアが近接武器で対処しつつ、横へと逸れるように戦場から退避し、傷を癒やすのに専念することにした。
●人海戦術
「第一次防衛ライン、撤退。相当長く保たせて下さったようですが、やはり敵の数が多いようです。皆さん、迎撃準備を」
トランシーバーによってUiscaから連絡を受けたアリュオーシュ・アルセイデス(ka3164)が第二次防衛ラインを守るハンター達に声をかける。
「了解です。彼らが時間を稼いで下さったお陰で、障害物の設置も万全。いつでも迎撃可能です」
「大丈夫。エアルドさんが守った分は引き継いで、ジュードさんに繋げるからさ」
椿姫・T・ノーチェ(ka1225)とユリアン(ka1664)がそれに応える。彼女らは馬を走らせて第一次防衛ラインのバリケード設営にも助力しつつ、部隊が交戦中の時間を利用して第二次防衛ラインの為の障害物を設置していた。本来何もないはずの荒野にはいくつかのバリケードや塹壕が用意されている。
「目標を目視した。攻撃に入る」
遠くで土煙をあげる敵の軍勢を見据えるのはカルス(ka3647)だ。和弓にマテリアルを込めて、矢を引き絞る。狙いは足の遅い前衛を抜かす為に、横に広がろうとするゴブリン達。
「出る杭は……ってな。異世界のコトワザて奴だ」
放たれた矢が正確に隊列を乱したゴブリンを刺し貫く。超長距離から放たれた狙撃に気づいたゴブリン達は、味方の前衛を押し出すように前に仕向ける。
「嫌ならそうやってお行儀よくしとけよ」
赤く帯電するような幻影を纏いながら、遠射によって次々とゴブリン達を狙撃してゆくカルス。その甲斐あってか敵の広がりが一定に収束され、拙い隊列状態を保ったままこちらに直進してくる。
「CdL。攻撃を開始する。アヴェーヌさん、出番ですよ」
「了解ですわ、隊長」
そうなってしまえば味方の射撃の仕事も楽になる。部隊『CdL』を率いるクラーク・バレンスタイン(ka0111)と、同部隊所属のベアトリス・ド・アヴェーヌ(ka0458)がそれぞれアサルトライフルを構える。
「統率もない雑魔とはいえ、やろうと思えばこの数をけしかけられるのですか。厄介ですわね」
「的には困らなさそうですね」
クラークは威嚇射撃によって弾丸をばらまく。足元に多数の銃槍が出来た先頭集団は若干足踏みをする。そこへベアトリスが銃撃を放ち、ゴブリンの体力を削る。そして銃弾の突き刺さったそこへ、弓矢が突き刺さってゴブリンは倒れる。
「足が止まったなら、私でも当てれるよ」
悠木 優子(ka3614)が弓に次の矢を番えながら言う。当人曰くあまり射撃は得意方ではないらしいが、混戦になる前ならば誤射の心配もない。加えてクラークの威嚇射撃とベアトリスの攻撃によって足止めされた敵だ。正確な仕事が出来るのも、自分の腕前を自覚してるからこそなのだろう。
カルスの射撃で列となった敵を、CdLの2人と優子が撃破してゆく。敵の動きをコントロールしつつの殲滅に加え、そこかしこに設置された障害物の甲斐あって、敵の侵攻は遅れていく。
しかしそれも長くは続かない。先頭集団のゴブリンが射撃によって駆逐されていくと、やがて後ろの方から盾を持ったまま突撃してくるゴブリンが多数現れてきた。
「あれは……ゴブリンソルジャー!」
アリオーシュが叫ぶ。盾によるガードで攻撃を軽減しつつ向かってくるゴブリンソルジャーが、少しずつこちらへ距離を詰めてくる。クラークとベアトリスの弾幕によって数こそ減らされてゆくが、殲滅速度は目に見えて落ちていく。
「さ、行こうか。椿姫さん」
「承知しました」
ユリアンと椿姫が前に打って出る。椿姫はナイフを構えると、フェイントを織り交ぜた不規則な攻撃でゴブリンソルジャーを翻弄する。そこへユリアンがサーベルによる一閃。ゴブリンソルジャーはそのまま倒れて動かなくなる。
「援護しますわ! 次の敵に備えてくださいまし!」
「無理はなさらずに! 傷を負ったら回復致します!」
ベアトリスとアリオーシュがそれぞれ前衛の二人にマテリアルエネルギーを流し込み、運動性能と防御力を強化する。二人はそのまま互いに死角をカバーするように立ち回り、敵の意識を集中させる。
敵の種類も多様になってきて、ゴブリンソルジャーには剣や斧を使う個体の他に、弓を携える個体も増えてゆく。ゴブリンメイジも少しずつ数が増えてゆき、塹壕やバリケードから射撃するハンター達に狙いをつけてゆく。
「上等だ、この距離で俺と闘ろうってのか?」
「援護するよ、射撃をお願い!」
それを許すまいとカルスが矢にマテリアルを込めて引き絞り、優子がそれに対して更にマテリアルエネルギーを流し込む。二人の力が合わさって射られた矢は正確にゴブリンソルジャーの頭部に突き刺さり、まともに受けたゴブリンソルジャーは倒れる。
「敵の遠距離攻撃が多くなってきましたわ!」
「やはり、一筋縄ではいきそうもないか……!」
CdLの2人が戦況が少しずつ傾いてきていることに気付く。バリケードが魔法の矢や弓矢で少しずつ瓦解してゆく。第二次防衛ラインのハンター達は各個撃破で確実に数を減らしてゆくものの、圧倒的に数で勝る敵に対して殲滅力がやや不足している。敵を直線上にて迎撃することに成功はしているものの、徐々にその物量に押し込まれてゆく。
「……っ!」
「椿姫さん!」
そんな中、敵の渦中に居る椿姫がまともにゴブリンソルジャーの剣を受けてしまう。マルチステップで巧みに敵の攻撃を回避し続けてきた彼女だったが、流石に多方向から来る敵の攻撃は捌き切れない。ユリアンもランアウトで敵を切りつけてゆくが、決定打に欠ける一撃では敵を倒しきれない場合が多くなってゆく。
「まずいな……。CdL1より、CAMへ。そちらから俯瞰で現在の戦況を教えて頂けませんか」
クラークがトランシーバーでCAMのパイロットに連絡をとる。CAMのカメラやレーダーならば戦場を俯瞰して捉える事ができると睨んでいたからだ。
『敵の数は大分部分は消失しています。しかし、敵は後列に主力部隊を残していた模様。小さな恐竜に騎乗して武装したゴブリンが確認できます』
その報告を聞いたクラークは歯噛みする。
「小さな恐竜に騎乗したゴブリン……リトルラプターとゴブリンナイトか? 厄介な」
「クラークさん、危ないですわ!」
通信していたクラークへ弓矢が飛来する。ベアトリスの声に気づいて何とか回避できたが……。
「きゃあっ!」
「アヴェーヌさん!」
その瞬間、ベアトリスも魔法の矢を受けてしまう。ハンター達と敵の集団との距離が縮まってゆく。
「ちっ、そろそろきついな……」
「痛っ! もう、こっちこないでよー!」
遠距離狙撃に徹していたカルス、優子の所にもソルジャーが接敵する。バリケードの箇所にも敵が接近しつつある。
「これ以上は保たないか……!」
やむおえず、第二次防衛ラインを放棄し、撤退の号令を飛ばそうとするクラーク。そこへ
「ここを破られちゃ、困るんでな!」
「ボクも混ぜてくれよ!」
背後に控えていた仲間が、駆けつけたのだった。
●反撃
言葉と同時に飛び出したのはナハティガル・ハーレイ(ka0023)とヒース・R・ウォーカー(ka0145)だ。ナハティガルが渾身撃を叩き込み、ヒースが刀による鋭い斬撃でゴブリンソルジャーを切り伏せる。
その他にも後方で控えていた仲間が次々と、第二次防衛ラインに合流する。どうやら第一次、第二次防衛ラインで敵の侵攻がかなり遅れていた為に、敵部隊が後方にまで到達しなかったのだ。そこでアリオーシュが後方に待機する仲間に第二次防衛ラインに加わって欲しいという連絡を伝達したのだった。
「け、怪我をしてる人、こっちに来てくださーい……!」
ルカ(ka0962)が負傷者の治療をしてゆく。
「あとは俺たちに任せて、負傷者を連れて下がっていてくれ!」
「助かります……! あとは、頼みました」
ナハティガルとアリオーシュが短くやりとりする。ルカやアリオーシュが負傷したメンバーの治療をしつつ、後方へと下がってゆく。
「戦いに来たんだろ、壊しに来たんだろぉ。なら最後まで付き合ってもらおうかぁ」
ヒースは高揚する気持ちを抑えきれないといった風に刀を構える。戦いこそが生きる場所だと考える彼にの目には、この戦場はとても甘美なものに映るのだろう。真正面から敵へと突撃し、携えた刀を振りかざし、ソルジャーを切り捨ててゆく。
増援にまごつくゴブリン達。そこへ次々と魔法の矢や炎の矢が飛来する。強力な魔法攻撃に撃ちぬかれ、ゴブリン達は昏倒してゆく。
「さぁ、次に吹っ飛ばされたいのはどいつかしら!」
魔法を放ったのはエルム(ka0121)だ。ワンドを振り、弾丸の如く魔法の矢を放つ。その姿はまさしく魔弾の射手だった。
ゴブリン達もその魔法を危険視したか、ソルジャー達が弓矢をエルムに対して引き絞る。そんなゴブリンソルジャーの背後に、人影が舞い降りる。
「やらせると思うの?」
エルムを注視していたソルジャー達の急所に弾丸を叩き込んで沈黙させる。赤いコートを翻し、拳銃を片手に風のように戦場を舞うのはナル(ka3448)。脚にマテリアルを集中させ、高速で走り抜ける。
「遠距離持ちは厄介ね……駆逐するわよ」
後衛の前に立ち塞がろうとするソルジャーをマルチステップで回避し、振り翳される剣を舞うように躱す。軽やかな足捌きで後方に控えていたゴブリンメイジの懐に入り、ゼロ距離で銃弾を叩き込む。これによって敵の後方支援が激減してゆく。
そしてついに敵の主力が到達する。リトルラプターに騎乗した鎧に身を包んだ亜人、ゴブリンナイトが後方から突撃してくる。敵を打ち倒した瞬間のナルに対して、強力な剣を振りかざす。
「お前の相手はざくろだ!」
それをさせまいとギアブレイドを携えてゴブリンナイトに切り込むのは時音 ざくろ(ka1250)。ギアブレイドの一撃を受けたナイトはよたつくも、すぐさま標的をざくろに切り替える。
「受け止めろ隠し腕!」
その攻撃をムーバブルシールドによって動かした盾で防ぎ、受け止める。騎乗からの高所攻撃による一撃は重く、衝撃が食い込む。が、ざくろはそれを脚を踏みしめて耐える。
「……っ、効きは、しないよ……! 輝け、ギアブレイド!」
ざくろはそのまま機導剣を生成。ギアブレイドと一体となった光の剣がリトルラプターの腹部を深く斬りつける。リトルラプターが苦しみ暴れ、尻尾を大きく振り回す。
「危ないっ!」
その攻撃に割り込み、盾で受け止めたのはエイル・メヌエット(ka2807)。後方で第二次メンバーの治療を終え、戦線に繰り出したのだ。そのままシールドバッシュによって敵の体勢を崩す。そこへ強力な弓矢が放たれ、リトルラプターは声をあげて絶命した。
「大丈夫? 今傷を治すから」
エイルはざくろに微笑みかけ、ながら、ヒールによって彼の傷を癒やす。
「あ、ありがとう……!」
「気にしないで。仲間を守るのが聖導師の仕事よ。それよりまだ、本番はこれからね」
ざくろとエイルが、残るゴブリンナイトと対峙する。その様子を遥か遠くからジュード・エアハート(ka0410)が見据える。先ほどリトルラプターを仕留めたのも彼の狙撃によるものだった。
「エアさんとユリアンさんに狩り尽くされてたと思ってたけど、敵さんもやるねぇ。というか数が多すぎ。やれやれだね」
再び矢を番え、弦を引き絞る。飄々とした言動とは裏腹にマテリアルで強化した感覚によって研ぎ澄まされた神経は正確に獲物を捉える。
「……ふっ!」
矢が空を裂いて飛ぶ。風切り音を響かせる鋭い一射は対峙するゴブリンナイトの肩を装甲の上から穿ち、敵の体勢を大きく崩す。
「そこよ! いっけーっ!」
その隙を逃さずにエルムが炎の矢を放ち、ゴブリンナイトは炎に包まれる。突然の魔法に為す術もなくゴブリンナイトは苦しみ暴れる。
「これで、トドメだ!」
再び機導剣を発動したざくろが、光り輝く剣で炎ごとゴブリンナイトを切り裂く。狙撃に火炎、そして強烈な斬撃の猛攻撃に耐え切れずにゴブリンナイトはその場に倒れこんだ。
「よし、撃破……それにしても、敵の隊列が乱れてる気がする」
沈静化したナイトから視線を外したざくろが周囲を見回す。ゴブリンソルジャーやゴブリンメイジが依然大量に居るが、明らかに数が少ない。その言葉に対して味方の治療をしつつ、エイルが答えた。
「きっと、彼女がうまくやってくれたのね」
「ああ、なるほど。うまくいったんだ」
合点がいったという風にざくろが頷く。遠くで大きな土埃があがり、それに向かって敵が流れていったのに気づいたのだった。
遡ること数分前。突如として横側から巻き上がる土埃に敵が気づいたのはその頃だ。
ゴブリン達はそれを、ハンター達の増援だと思ったのだろう。気付いたゴブリンは隊列を外れ、その土埃の方へと向かおうとする。
「ほら、隊列が乱れてるわよ」
向かおうとするゴブリンがその声に振り向く前に、放たれた太刀による一閃がゴブリンの首を飛ばした。突然の襲撃にゴブリンの隊列は混乱に陥る。
「奇襲は成功ね。さあ、暴れさせてもらうわよ」
脚に込めたマテリアルによって敵陣に突撃をかけるのはエリシャ・カンナヴィ(ka0140)。彼女は馬に括りつけた木材で砂埃を巻き上げる事で敵の指揮系統を混乱させ、そこへ奇襲をかけるという戦法をとった。前線での交戦に集中していたゴブリン達は突然の襲撃に為す術もなく斬り倒されてゆく。
「雑魔化してるとはいえ、やっぱり亜人ね。人間の作戦の真似事はできても、対策までは思い当たらないってことね」
ランアウトによってすれ違い様にゴブリンを斬りつけてゆくエリシャ。振り下ろされる攻撃も彼女は華麗に躱し、攻撃を続ける。これによって敵後方の隊列は滅茶苦茶にかき回されたのだった。
時は戻り現在。エリシャの奇襲によって乱れた隊列、後方に注意を引かれてしまうゴブリン達。それが決定的な隙となる。
タンタン、と銃声が鳴り、ゴブリンの脚が撃ち抜かれる。拳銃による攻撃、それを行ったのはシェリル・マイヤーズ(ka0509)。だが拳銃による攻撃は長くは続かず、飽きたといった風に拳銃を投げ捨て、刀を抜き放つ。
「……やっぱり、こっち……行こう、ウスサマ……」
脚を撃ちぬかれて動けないゴブリンソルジャーを容赦なく切り捨てるシェリル。刀ごしに伝わる肉の感触に気分が高揚する。頬についた返り血を舐めつつ、微笑みを浮かべる。
「……ヒース……」
そんな彼女の目に写ったのは、同じく愉しむように戦場を走り回るヒースの姿。彼もまた刀を振りかざし敵を切り裂き、ノーモーションで手裏剣を投げて縦横無尽に暴れまわる。
「おおっと!」
ヒースは地面を蹴って横っ飛びし、突如として突撃してきたリトルラプターの体当たりを回避する。その上にはゴブリンナイトが騎乗している。
「ははっ、いいねぇ、強いやつが出てきた! さぁ、もっと愉しませてくれよ。戦場を、ボクが生きている場所を実感させてくれ!」
再び地面を蹴ったヒース。リトルラプターが叩きつけるように尻尾を振るのを躱し、その上に乗るゴブリンが斧を振り下ろすのをステップで回避、すれ違い様にナイトの腕をめがけて刀を振り上げ、ダメージを与える。ゴブリンが向きを変えた頃には、ヒースは既に遠くに。一撃離脱の戦法だ。
そして、ゴブリンナイトとリトルラプターは完全にそちらに気を取られていた。その近くで、深く腰を落として剣を構えたナハティガルに、気付けなかった。
「……はぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
攻めの構えから渾身の力を込めてユナイテッド・ドライブ・ソードを放つナハティガルの一閃。強力無比な一撃はリトルラプターの胴体を一刀のもとに真っ二つにする!
一瞬で騎獣を失ったゴブリンナイトはバランスを崩して地面に落下する。だがやはり、戦闘訓練を積んだ歴戦のゴブリンらしく、すぐさま体勢を立て直した。
「立ち上がらせると思う?」
だがそれをさせまいと動いたのはナルだ。走りつつ拳銃を掃射し、ゴブリンナイトの脚を撃ち抜く。体勢を立て直した所に打ち込まれた銃弾に対処できず、今度こそ膝を折る。
そこへ強烈な弓矢が頭部に直撃する。パカァン! と派手な音を立てて着用していた兜が粉々になった。遠距離から見据えていた、ジュードの狙撃だ。
「……さよなら」
体勢を崩し、露わになった頭部に容赦のない一太刀を、シェリルが浴びせる。
急所に直撃した刀が決定打となり、ゴブリンナイトは倒れた。
2体目のゴブリンナイトの撃破。そして周囲のソルジャーやメイジもあらかた殲滅が終わった。
だが戦いは終わりではなかった。更に後方から、更に3体のゴブリンナイトがリトルラプターに騎乗して突撃してきたのだった。
「……これ以上の、強敵との交戦は、危険ですっ!」
治療をしつつ戦況全体を見ていたルカが、トランシーバーによってCAMの方に待機している仲間、那月 蛍人(ka1083)連絡をとった。
●CAM
「OK、待ってました!」
蛍人はトランシーバーから受け取った情報を整理し、戦況全体の管理に努めていた。
そしてルカからの報告。これ以上の連戦は味方の体力が保たない。
「第二次防衛ラインに敵主力到着! これが最後のようだ! CAM、起動してくれ!」
『了解しました』
蛍人の起動指示によりCAMが起動する。低い駆動音が地面を振動させ、巨躯にエネルギーが充填される。
「こちら蛍人! CAMを起動した、すぐに後退してくれ! 弾幕が来るぞ!」
蛍人の後ろで、CAMが両手に携えたガトリングガンを構える。射程圏内に捉えたゴブリンナイト達をカメラによって解析し、照準を合わせる。
『発射準備完了、指示を』
「砲撃来るよ! 総員退却! 巻き込まれるよ!」
連絡を受けたジュードが声を張り上げ、前線に居るメンバーに伝える。
事前に打ち合わせたハンター達はすぐに意図を察知し、踵を返して戦場から去る。今まで交戦の意思を見せていたハンター達が急に散開したゴブリンナイト達は突然の事に状況判断に足を止めてしまう。
程なくして、爆音と共にガトリングが駆動する。それは射撃と呼ぶにはあまりにも強大無比な弾幕。二門の銃口から発せられる弾丸の雨霰はリトルラプターを、ゴブリンナイトを、先ほどまでハンター達が交戦していた大地ごと蜂の巣にしてゆく。
一発一発がハンターの放つ銃弾に匹敵する威力。それが無数に、絶え間なくゴブリンナイト達に浴びせられる。最早勝敗など、火を見るより明らかであった。
四十を超える雑魔の群れは、こうして掃討された。
CAMの起動を最低限に抑えたハンター達の奮闘に、物見櫓から戦況を眺めていたヴェルナーは満足そうに笑みを零すのだった。
「お見事。やはりやってくれましたねぇ、皆さん。本当にご苦労様でした」
遠くでハンター達が勝利に歓声をあげているのが見える。
今回の敵は数で圧倒的に勝る軍勢。それを知略と戦略によって、ハンター達は見事切り抜けたのだった。
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/12/17 20:13:04 |
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質疑応答板 ヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032) 人間(クリムゾンウェスト)|25才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2014/12/17 20:38:18 |
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相談卓 エリシャ・カンナヴィ(ka0140) エルフ|13才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2014/12/18 07:40:32 |