ゲスト
(ka0000)
【虚動】侍CAM魂
マスター:のどか

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/12/18 19:00
- 完成日
- 2014/12/28 06:47
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
リアルブルー産の対歪虚用戦闘装甲機、通称「CAM」。それがマギア砦の南方に集められ、今まさに稼動実験を始まる。
帝国が辺境に土地を借り、王国と同盟の協力を得て行われる一大プロジェクトだ。ある者はCAMの有効性を願い、ある者は眼前の利益のために動く。多くの人が関われば、思惑が交錯するのは当然だ。
何もなかったこの地も、次第に人で賑わい始める。今ではちょっとした町に見えなくもない。同盟軍によって運ばれたCAMも勢揃いし、静かに実験の時を待った。
そんな最中、見張り役の男が叫ぶ。
「北東から雑魔の群れが出現! その数100を越えます!」
それを聞いた首脳陣の顔色が変わった。
「バタルトゥ殿、この数の襲撃は自然な数と言えますかな?」
「……群れを成して行動するのは見かけるが……、この数は……異様だ」
予想された答えとはいえ、こうもハッキリ言われると辛い。
しかし、二の句は早かった。
「CAMは……投入できないのか……?」
敵の襲来で張り詰めた空気が、期待と不安の入り混じったものに変化した。
「今回の肝は改修したエンジンの稼動実験だ。実戦でデータを取る予定はない」
「とはいえ、いずれは敵を相手にするのだ。道理を語っている場合ではないぞ」
雑魔退治にCAM投入を希望するのは推進派の面々だが、彼らは慎重派を押し切るだけの決定的な材料を持っていた。
実はCAMのデモンストレーション用として、これまでの作戦に投入された際の挙動を披露するべく、貴重な特殊燃料をサルヴァトーレ・ロッソから少量ながら預かっていた。短時間の運用であれば、雑魔退治に差し向けても問題ないというのが彼らの主張である。
「だが、できればCAMに負担を与えたくないし、雑魔も近づけたくはないというのも本音だ」
「ならば……ハンターの手を借りるしかない、だろうな……」
結局、ハンターとCAMの共同作戦として、雑魔の群れを撃破することになった。
●
軍に恩を売りに来たら面白い事になったと、エヴァルド・ブラマンデは正直な感想でそう思っていた。それは戦火が好きなわけでも、混乱が好きなわけでも無い。彼自身、どちらかと言えば穏便で、直接的な力の行使よりも交渉で勝負を決める生粋の商人肌だったからだ。
しかし、今回は違う。しいて言うのであれば新たなビジネスチャンスの有用性を試すためのいわば試金石。かのリアルブルー産の機械とやらが歪虚に、人々に、そしてこの世界にどのような影響を齎すのか。ラッツィオ島での活躍は話には聞いている、だがそれも所詮は聞いたきりの話だ。商人として大事なのは、その商品の価値を自らの目で見定める事。
そうであるならば、今回の、この状況は、まさしく彼にとって願ってもない品評の機会であったのだ。戦いにそう詳しいわけじゃない自分が、自らの目で、耳で、感じるがままにあの機械を評価できる。そんな機会は今後、そうそう訪れるものではないだろう……いや、できることならあって欲しくは無いが。
「ブラマンデさん、こちらにいらっしゃいましたか。他の皆さまは、既に一時避難しております。ブラマンデさんもどうぞこちらへ!」
自らの安否を探しに来てくれたのだろう、同盟軍のおそらく下士官と思われる若い兵士がやや息を切らしながら早口でまくし立てた。彼も避難誘導が終われば戦地へと向かうのだろうか。一見、覚醒者のそれらしい風体では無いその兵士。先の戦いの後に人員補填で入った、まだ新人の兵士なのだろう。どこかこの状況に対応し切れていないような、そんないっぱいいっぱいの様子が素人目にも見て取れる。
そんな様子を、どこか冷めた目線で分析しながらエヴァルドは口を開いた。
「いや、私はもう少し事の様子を眺めてゆくよ」
そう告げると、若い兵士は見るからに困ったような様子でどうしたら良いのかと歯切れの悪い言葉を口から漏らす。そんな姿を前にしてエヴァルドは小さく笑って見せると、語り掛けるような口調で言葉を紡いだ。
「この事態には、ここへ来ているハンター達も対応するのだろう? だったら、問題無いさ。それで対応できなければ、そもそも我々に未来は無い」
そう断定的な口調で言い切ると、それ以上兵士の顔を伺うのは止め、視線を騒然とする実験会場の方へと向ける。表情こそ穏やかなものではあったが、その瞳の奥にはかの品の現在と未来を見定める鋭い光が灯っていた。
所は変ってCAM実験の会場では緊迫した空気が流れていた。それは迫り来る雑魔に対してもそうであるが、一番の懸念はCAMを導入させなければならない事態へと持ち込まれる事。まだろくに起動実験すら終わっていないのだ、そんな兵器でぶっつけ本番がどれだけ危険な事であるか。それは比較的CAMには馴染みが薄いクリムゾンウェストの人間達にとっても容易に想像できる事であった。
「それでもやるしかない……てぇ訳だな」
試験CAM2号機のコックピットで同盟軍の兵士が唸った。海の男を目指して同盟軍に入隊したはずの彼は、陸軍名誉大将イザイア・バッシの方針に感銘を受け黒狐塾に編入。そうしてどういう機縁か今こうして異界の兵器の中枢へとその身を預けている。
「あんまり居心地のいいもんじゃねぇ。まるで棺桶みてぇだ」
その人一人が何とか入れる程度の窮屈なコックピットで様々悪態を吐きながらも、操縦桿を前に事前に頭に叩き込んだ操縦マニュアルの中身をぐるぐると思い起こす。そうして一息天井を仰ぐと、腰に携えた日本刀の柄をぐっと握り締めた。
「リアルブルーのサムライが言っていた。『心頭を滅却すれば火もまた涼し』……それがぶっつけ本番の困難だって、身も心も死んだ気になればどうって事は無い」
どこから突っ込めば良いのか。どこかから得た完全に間違った知識を、それでもいたって真面目に自らの心に刻み込むようにして繰り返し口にすると、驚くほどに高鳴っていた心拍数が穏やかになって行くのを彼は感じていた。
「装備は……くそっ、取り回しのいいモンはライフルくらいか」
コンソールに指を走らせ、機体に詰まれた装備を確認する。試験2号機は近接戦闘の動作確認を目的としてチューンされていた機体であった。そのため装備はアサルトライフルに遠距離から出鼻を挫くためのミサイル等、最低限の火気しか詰まれては居なかった。
他に何か無いかと、少々じれったくモニターを突いていた指がピタリと止まった。そこに表示されていたモノをその目で確認すると、男はニヤリと唇の端を吊り上げて笑ってみせた。
「まだ……ここを棺桶にするわけにゃいかねぇな」
言いながら画面を叩いていた指をそっと操縦桿に添え、まるで刀の柄を握り締めるかようにその感触を確かめる。
その動きに呼応するようにして、CAMのマニピュレーターが武器ハンガーへとマウントされていたCAM用カタナの柄を機械的な動きで握り締めた。
リアルブルー産の対歪虚用戦闘装甲機、通称「CAM」。それがマギア砦の南方に集められ、今まさに稼動実験を始まる。
帝国が辺境に土地を借り、王国と同盟の協力を得て行われる一大プロジェクトだ。ある者はCAMの有効性を願い、ある者は眼前の利益のために動く。多くの人が関われば、思惑が交錯するのは当然だ。
何もなかったこの地も、次第に人で賑わい始める。今ではちょっとした町に見えなくもない。同盟軍によって運ばれたCAMも勢揃いし、静かに実験の時を待った。
そんな最中、見張り役の男が叫ぶ。
「北東から雑魔の群れが出現! その数100を越えます!」
それを聞いた首脳陣の顔色が変わった。
「バタルトゥ殿、この数の襲撃は自然な数と言えますかな?」
「……群れを成して行動するのは見かけるが……、この数は……異様だ」
予想された答えとはいえ、こうもハッキリ言われると辛い。
しかし、二の句は早かった。
「CAMは……投入できないのか……?」
敵の襲来で張り詰めた空気が、期待と不安の入り混じったものに変化した。
「今回の肝は改修したエンジンの稼動実験だ。実戦でデータを取る予定はない」
「とはいえ、いずれは敵を相手にするのだ。道理を語っている場合ではないぞ」
雑魔退治にCAM投入を希望するのは推進派の面々だが、彼らは慎重派を押し切るだけの決定的な材料を持っていた。
実はCAMのデモンストレーション用として、これまでの作戦に投入された際の挙動を披露するべく、貴重な特殊燃料をサルヴァトーレ・ロッソから少量ながら預かっていた。短時間の運用であれば、雑魔退治に差し向けても問題ないというのが彼らの主張である。
「だが、できればCAMに負担を与えたくないし、雑魔も近づけたくはないというのも本音だ」
「ならば……ハンターの手を借りるしかない、だろうな……」
結局、ハンターとCAMの共同作戦として、雑魔の群れを撃破することになった。
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軍に恩を売りに来たら面白い事になったと、エヴァルド・ブラマンデは正直な感想でそう思っていた。それは戦火が好きなわけでも、混乱が好きなわけでも無い。彼自身、どちらかと言えば穏便で、直接的な力の行使よりも交渉で勝負を決める生粋の商人肌だったからだ。
しかし、今回は違う。しいて言うのであれば新たなビジネスチャンスの有用性を試すためのいわば試金石。かのリアルブルー産の機械とやらが歪虚に、人々に、そしてこの世界にどのような影響を齎すのか。ラッツィオ島での活躍は話には聞いている、だがそれも所詮は聞いたきりの話だ。商人として大事なのは、その商品の価値を自らの目で見定める事。
そうであるならば、今回の、この状況は、まさしく彼にとって願ってもない品評の機会であったのだ。戦いにそう詳しいわけじゃない自分が、自らの目で、耳で、感じるがままにあの機械を評価できる。そんな機会は今後、そうそう訪れるものではないだろう……いや、できることならあって欲しくは無いが。
「ブラマンデさん、こちらにいらっしゃいましたか。他の皆さまは、既に一時避難しております。ブラマンデさんもどうぞこちらへ!」
自らの安否を探しに来てくれたのだろう、同盟軍のおそらく下士官と思われる若い兵士がやや息を切らしながら早口でまくし立てた。彼も避難誘導が終われば戦地へと向かうのだろうか。一見、覚醒者のそれらしい風体では無いその兵士。先の戦いの後に人員補填で入った、まだ新人の兵士なのだろう。どこかこの状況に対応し切れていないような、そんないっぱいいっぱいの様子が素人目にも見て取れる。
そんな様子を、どこか冷めた目線で分析しながらエヴァルドは口を開いた。
「いや、私はもう少し事の様子を眺めてゆくよ」
そう告げると、若い兵士は見るからに困ったような様子でどうしたら良いのかと歯切れの悪い言葉を口から漏らす。そんな姿を前にしてエヴァルドは小さく笑って見せると、語り掛けるような口調で言葉を紡いだ。
「この事態には、ここへ来ているハンター達も対応するのだろう? だったら、問題無いさ。それで対応できなければ、そもそも我々に未来は無い」
そう断定的な口調で言い切ると、それ以上兵士の顔を伺うのは止め、視線を騒然とする実験会場の方へと向ける。表情こそ穏やかなものではあったが、その瞳の奥にはかの品の現在と未来を見定める鋭い光が灯っていた。
所は変ってCAM実験の会場では緊迫した空気が流れていた。それは迫り来る雑魔に対してもそうであるが、一番の懸念はCAMを導入させなければならない事態へと持ち込まれる事。まだろくに起動実験すら終わっていないのだ、そんな兵器でぶっつけ本番がどれだけ危険な事であるか。それは比較的CAMには馴染みが薄いクリムゾンウェストの人間達にとっても容易に想像できる事であった。
「それでもやるしかない……てぇ訳だな」
試験CAM2号機のコックピットで同盟軍の兵士が唸った。海の男を目指して同盟軍に入隊したはずの彼は、陸軍名誉大将イザイア・バッシの方針に感銘を受け黒狐塾に編入。そうしてどういう機縁か今こうして異界の兵器の中枢へとその身を預けている。
「あんまり居心地のいいもんじゃねぇ。まるで棺桶みてぇだ」
その人一人が何とか入れる程度の窮屈なコックピットで様々悪態を吐きながらも、操縦桿を前に事前に頭に叩き込んだ操縦マニュアルの中身をぐるぐると思い起こす。そうして一息天井を仰ぐと、腰に携えた日本刀の柄をぐっと握り締めた。
「リアルブルーのサムライが言っていた。『心頭を滅却すれば火もまた涼し』……それがぶっつけ本番の困難だって、身も心も死んだ気になればどうって事は無い」
どこから突っ込めば良いのか。どこかから得た完全に間違った知識を、それでもいたって真面目に自らの心に刻み込むようにして繰り返し口にすると、驚くほどに高鳴っていた心拍数が穏やかになって行くのを彼は感じていた。
「装備は……くそっ、取り回しのいいモンはライフルくらいか」
コンソールに指を走らせ、機体に詰まれた装備を確認する。試験2号機は近接戦闘の動作確認を目的としてチューンされていた機体であった。そのため装備はアサルトライフルに遠距離から出鼻を挫くためのミサイル等、最低限の火気しか詰まれては居なかった。
他に何か無いかと、少々じれったくモニターを突いていた指がピタリと止まった。そこに表示されていたモノをその目で確認すると、男はニヤリと唇の端を吊り上げて笑ってみせた。
「まだ……ここを棺桶にするわけにゃいかねぇな」
言いながら画面を叩いていた指をそっと操縦桿に添え、まるで刀の柄を握り締めるかようにその感触を確かめる。
その動きに呼応するようにして、CAMのマニピュレーターが武器ハンガーへとマウントされていたCAM用カタナの柄を機械的な動きで握り締めた。
リプレイ本文
●虚ろなる軍勢
辺境の荒野に吹き荒れる砂埃。同時に鳴り響く地鳴りのような地響きに、ハンター達は思わず息を呑んだ。
それは決して気おされた訳では無いが、一種の武者震いにも似た震えが彼らの背筋を伝い、一筋の汗となって頬を流れ落ちた。
総勢100余匹の虚ろなる軍勢。
その文字通りの侵攻は、先の王国での戦いにも似ていた。
「こちらの方面には30余匹――ゴブリンやコボルドと言った亜人の集団に見えるけど、あれは間違いなく歪虚ね」
CAM試験2号機の肩に腰を据えながら、エルティア・ホープナー(ka0727)は迫り来る軍勢をその眼下に納めていた。
『雑魔化してるってわけだな……厄介だ。軍勢に何か目立った特長は無いか?』
手に持つトランシーバーから、鳴神 真吾(ka2626)の声が届く。
その質を受けてエルティアは再び土埃を見渡し、目を細める。
「そうね……大勢は普通のゴブリンやコボルドに見えるけど、皆何かしら武器を持っているわね。棍棒なり、長物なり。後は小型の生物に跨ったゴブリンが少数かしら」
『分かった。回りの者にも伝えておこう』
そう真吾が返事を返し、通信を終える。
彼女は研ぎ澄ましていた感覚を一端緩めると、大きく一つ息をつく。
数回の深呼吸の後に再びキリリと凛々しい視線をなお立ち込める土埃へと向けると、誰に言うでもなく呟いた。
「未だ序章の物語……こんな所で邪魔はさせないわ」
そうしてCAMの腕、足を伝い、一気に地面へと駆け下りる。
それと同時に暗く沈んでいたCAMのバイザーにぼうっと翠色の明かりが灯った。
まるで生命の灯火にも似たその輝きの下、鋼鉄の装甲機は機械的な駆動音と共にその巨体をもたげる。
数ヶ月の時を経て、CAMは再び戦場へと立ち上がった。
『計器、バランサー、共に問題無いかい?』
ディスプレイの明かりに照らされた薄暗いCAMのコックピットの中にアルファス(ka3312)の声が木霊する。
「ああ、マニュアル通りなら問題ねぇ。問題あるとすれば、少々狭い事くらいか」
パイロットが自身の頭に迫る天板を鬱陶しそうに指で叩きながらそう言い溢す。
『それはガマンしてくれないかな。まあ、慣れればそれでも快適なものだよ』
『な、CAM動かすのってどんな感じなんだ!? 機械の手足動かすんだろ!?』
アルファスの苦笑交じりの通信に割って入るように、ダイン(ka2873)の声が割れんばかりにスピーカーから響く。通話口の奥で『おい、通信機を私用で使うな……』とトランシーバーの持ち主である対崎 紋次郎(ka1892)の声がため息混じりに漏れた。
「そうだな、子供のときに買ってもらった糸釣りのデク人形を動かすような気分だ」
パイロットはそのぶっきらぼうな言動とは裏腹に律儀にダインの質問に答えながら、CAMの手足を動かし何らかの武術のものらしきモーションを披露する。
「ただまぁデク人形と違うのは、視点が俯瞰じゃねぇって事か。まったく、奇妙な感覚だぜ」
そう、低いトーンで言った彼の視線の先。コックピットのディスプレイ越しにもまた、迫り来る雑魔達が映し出されていた。
『はじめまして、小鳥遊 蘇芳です。主立って、ハンターの皆さんとの通信の仲介をさせて頂きます。よろしくお願いします』
『同じくフレデリク・リンドバーグです。CAMをこんな間近で見る日が来るなんて思っても見ませんでした……すごいです! いいなぁ』
続けて響く小鳥遊 蘇芳(ka2743)の抑揚の薄い声と、対照的に明るいフレデリク・リンドバーグ(ka2490)の声。
『まずは打ち合わせ通りに』
『思いっきりぶっ放しちゃってください!』
「おうよ、任しとけ」
ギシリと、音がするほどに握り締める操縦桿。彼もまた、こんな風にCAMの兵器をぶっ放す機会が来るとは思ってもいなかった。
彼自身もまた、このCAMと言うものの有用性を確かめたい人間のひとりである。
雑魔には悪いが、願っても無い試験材であった。
迫り来る軍勢にレーダーが反応する。
コンソールを叩いて装備をシフト。選択するのは腕にマウントされた『対ヴォイド用ミサイル』。
2発っきりの虎の子であるが、現状に於いては対歪虚の決戦兵器の一種でもあるこの兵装。
「それをあの歪虚どもにぶっ放すって言うんだから、そりゃぁでかい花火になるだろうよ」
言いながら照準を絞る。少しでも敵の密集した所を、効果的な場所を探し、カーソルが右往左往する。
『攻性強化でサポートします! どでかい一発、お願いしますよ!』
足元でクレール(ka0586)が放つマテリアルがCAMへと流れ込む。CAMはその身体に確かなマテリアルの輝きを纏わせながら、そのバイザーがより強い輝きを放った。
『下半身の駆動には注意して欲しい。オートバランサーがあると言っても、想定外の振動には耐えられないからね。それに戦闘中のモニターの死角にも』
最後の確認、と再びアルファスの通信が介入する。
『そしてコレが最後……お互いに生きて帰ろう。そうだね、コールは侍の魂。シコン1でどうかな?』
「コール? なんだそりゃ」
『機体ごとの認識番号のようなものさ。試験2号機、じゃ味気ないだろう?』
そうアルファスに諭され、繰り返すようにその名を口にするパイロット。
同時にコックピットに小刻みなアラートが鳴り響く。
ディスプレイの表示が『LOCK ON』へと切り替わり、ミサイルのハッチが解錠された。
「上等じゃねぇか。シコン1、ぶちかますぜ……ッ!!」
握り締める操縦桿の引き金と共にバック・ブラストを吹き上げ、ミサイルはコンテナから射出された。
一目散に、加速しながら真っ直ぐに飛翔するその爆弾は吸い込まれるようにして軍勢の左舷と突き刺る。
同時に轟く爆音、そして閃光。
ビリビリと機体へも伝う振動。
思わず目を覆ってしまうその輝きと爆風に、ハンター達は身を翻してその衝撃を緩和する。
『もう一発、お願いしますっ!』
フレデリクの通信を受け、立て続けにもう一方のトリガーも引き絞る。
再びのバック・ブラスト。
ミサイルは鋭く風を切るような音を立て先ほどと対岸の右舷へと突き刺さった。
再びの爆炎。
2発目は流石になれたのか、目を覆う腕の隙間から多くのハンターがその情景を目の当たりにした。
立ち上る炎に、吹き飛ばされる歪虚。直撃を受けていない個体もその爆風に吹き飛ばされ、身を大地に投げ打つ。
下級も下級の雑魔であるとはいえ、敵は歪虚。
元来、人類を悩ませ続けた虚ろなる軍勢。
その軍勢がいとも簡単に……ボタン1つで吹き飛ぶのだ。
「蒼の世界の機械人形は……これほどの力を持っているのか」
どこか神々しさすら感じる様子でルスティロ・イストワール(ka0252)はその閃きを、そして閃きに照らされて輝くCAMを見上げると、なんとも表現しがたい表情でその勇姿を見つめていた。
そこには大きな希望と共に、一抹の哀愁が込められていたのは彼しか知る者は居ないだろう。
「すげぇもんだな。こりゃあ変わるぜ……戦場がよ」
どこか皮肉掛かったようにジャック・J・グリーヴ(ka1305)は呟いた。
それは思わず漏れてしまった、感嘆にも似た言葉である。
やがて炎は、そして煙は晴れ、耳を劈いた爆音もどこか遠くへと消え去った。
初撃で吹き飛んだ歪虚はおよそ3割。
比較的纏まりのある部分を狙ったものの散開している敵を相手にミサイルの最大の効果を得る事はできなかったが、それでも敵の出鼻を挫くには、そして勢いをこちらに引き込むには十分であった。
「それじゃ、ま、狩りを始めるとしますか」
彼にとっては見慣れた光。
ハンター達の中では平静を保っている方のティーア・ズィルバーン(ka0122)は、その戦斧を両手でクルリと弄ぶとゆらりと身体を沈め、一気にトップスピードで駆け出した。
それを先陣に、確かな喚声と共に敵陣へと突撃を掛けるハンター達。
雑魔というモンスターと化した亜人に感性は無い。
あの爆炎を見てなお怯む事無く突っ込んでくるかの軍勢にはわずかながら敬意をも覚えるが、人類にとっては比類無き敵。
「ギガントマキアー……何とも面白い事態になったじゃないか」
久延毘 大二郎(ka1771)は中指でクイと爆風でずれた眼鏡を正すとクククと乾いた笑いを浮かべ、傍に居るアルファスと共に自らの馬へと鞭を打つ。
「だが、再現とはせんよ。勝つのは巨神を擁する――我々だ」
果てしない荒野の中で、ハンターと歪虚は真正面から正面でぶつかった。
●ハンター達の戦い
「数の上ではほぼ互角か……なら優劣を決めるのは個の実力か、それとも集団としての力か」
荒野を駆け抜ける蘇芳 和馬(ka0462)の2刀の小太刀が剣を掲げて突進するゴブリンの足を払うように切り崩す。そうしてガクリと勢いを失ったゴブリンの体を機導砲のマテリアルの輝きが包み込んだ。
「俺は後者だと思うがな」
少なくとも統率力も無く、ただ勢いに任せてやってくるだけの相手に負ける気はしない。そんな確信にも似た感覚を和馬は確かに感じていた。
機導砲を放った紋次郎はすぐさまタクトを別の標的へと向けると、再びの輝きが戦場を横切る。
「流石はCAMの火力だな……おかげで雑魔を滅ぼす効率がいい」
迫り来る雑魔は先ほどの爆撃で生き残った個体ではあるのだが、中には爆発の周囲に居たために命からがら生き残っている――と言った個体も少なく無かった。
まずは数の利を取るためにそう言った満身創痍の個体から敵戦力を削り取って行く。文字通り、千里の道も一歩から。
「オラァ! 掛かって来いやクソ歪虚共!」
迫り来る軍勢に大手を開いて挑発をかますジャック。その雄叫びに乗ってか否か、その周囲にはぞろぞろと雑魔達が駆け込んでくる。
振り下ろされる刃をバックラーでかわし、そのまま抑え込むようにしてゴブリンの脳天にリボルバーの銃口を当てがう。慈悲なく引き絞られたトリガーに、ゴブリンは仰け反るようにして後続のコボルドを巻き込むように吹き飛ぶ。
「どうした、傷一つついちゃいねぇぞ。その程度で俺様に膝を突かせられると思うなよ……?」
言いながらにやりと犬歯を見せて笑うと霧になり始めたゴブリンの亡骸を踏みつけて再び見栄を張って歪虚達の注意を引きつける。
「こいつで……どうだッ!」
ジャックの挑発を無視して抜けた敵を一歩引いた位置でダインの長槍の柄が捉えた。そのまま大きくスイングするように槍を振りぬく。
前傾に全力疾走していたゴブリンはその腹にモロに一撃を受け、体を「く」の字の折り曲げながら転がるように後退させられた。
「少しでも壁を厚く、戦場を横に広げるんだ!」
真正面から来たゴブリンの頭蓋を、その間合いの一歩先から叩き割る。
ただただ自分の目の前の敵を攻撃するだけではあるが、代わりに正面だけは抜かせない。
その一心で休む事無く身の丈よりも長い槍を振り回し続ける。
が、不意に遠方から光り輝く玉のようなものが出現したかと思うと、一瞬で目の前がその輝きに包まれた。
「うわっ!?」
突き飛ばされるような衝撃と共に盛大に尻餅を突くダイン。同時に、パリンとガラスの砕けるような音と共に光の塵が周囲を舞った。
「大事無いか、ダイン」
ダイン本人は気づいて居なかったが、この時彼は遠方から何者かによる攻撃を受けていた。しかし咄嗟に放った紋次郎の障壁で、なんとか事無きを得る。
「あ、危なかった……助かった」
石突を地面に突き刺し、槍を杖替わりにしてひょいと体を起こす。
「今のは魔力による攻撃か……?」
紋次郎がその目を凝らすと、離れた場所でロッドをくるくると回すゴブリンが、その杖の先に光を集めているのが目に入った。
『あれはゴブリンの魔術師……?』
衝撃で受けたダインの傷を治癒術で癒しながら、メイ=ロザリンド(ka3394)は歌い上げるように口にする。
「各班に告ぐ。敵に魔術を行使する者が居る。アレで遠間からCAMを狙われると少々厄介だ……見つけたら注意してくれ」
同時に紋次郎の声が魔導短伝話とトランシーバーを通じて戦域へと響き渡った。
「1班了解よ、こちらでも確認しているわ」
応答するマリーシュカ(ka2336)の視線の先には、同じように杖を構えたゴブリンの姿。
そんな彼女へ飛びかかるゴブリンの刃を間に割って入った米本 剛(ka0320)の巨体と大太刀が阻む。
「久々にCAMに逢えると来ましたが……何と言うか、平和には過ごせませんね」
それがハンターの性なのか、と。やや諦めたように苦笑しながら、両手で押さえる大太刀に力を込めゴブリンを押し返す。
そうしてよろめいたゴブリンを新城 楽羅(ka3389)の太刀が袈裟に切り伏せた。
「邪魔は、させない……!」
その大きな胸を張って素早い血振りの後、再び切っ先を歪虚達の方へと向ける。
「あの魔術師を、何とかしなきゃ……」
楽羅の視線の先には、虚ろな表情でロッドの先に光を集めるゴブリンの魔術師。放たれた光玉をその刃で弾くと、1足の下にその距離を詰める――が、その魔術師の背後から別の影が現れその進路を遮った。
「……っ!?」
思わず横っ飛びに回避する楽羅。その物体は彼女が今居たはずの大地を踏みしだくようにその強靭な後ろ足を振り下ろすと、そこに狙った獲物が居ない事を確認し、辺りを探すように長い首を捻る。
そうしてその鋭い瞳と目が合い、先ほどとはまた違う、ゾクリとした悪寒が彼女の背中を伝った。
鋭い歯、大きな顎。未熟な前脚に対し発達した後ろ脚。その捕食者としての風格を堂々と放つ小型の恐竜、ラプターであった。
その背には武装を施したゴブリンが、咥えさせた手綱を片手にその舵を取る。
「楽羅さん、大丈夫ですか!」
米本の怒声と共に、暖かい輝きが彼女の足を包む。先ほどの回避の時に避けきる事ができなかったのだろう。足を斜めに裂かれた引っかき傷が、その輝きの下少しずつ治癒されてゆく。
「魔術師の前に、もっと厄介なモノが居たようね」
マリーシュカはそう、どこか満足げにニヤリと笑みを浮かべると、持ち合わせたトランシーバーへ語りかける。
「各班、小型の竜に乗ったゴブリンにも気をつけて。どうやら、一筋縄では行かないみたいよ」
それだけ告げると返答の通信も聞かずに通信機を仕舞いこみ、細長いワイヤーウィップをその手へと携えた。
「抜かれると厄介そうだし、ここで仕留めましょう」
「了解だ、まずは引きつける」
マリーシュカが言うな否や、その横を風のようにティーアが突き抜ける。
そのままラプターの横までも駆け抜けると急旋回。振り向き様に背後から遠心力を乗せた一撃がその強靭な後ろ脚を襲う。
鼓膜を貫くような叫び声と共に、ゆらりと身を翻すラプター。自らへ危害を加えたニンゲンをその瞳に捉えると、その怪我をした方の脚で蹴りかかる。
「おっと……そうは行くかよ」
ティーアはその一撃をひらりとかわすと、再びラプターの背後を取るように身を滑らせる。
後を追うように再びクルリと踵を返すラプターであったが、そこには既にティーアの姿は無く――代わりにあったのは小さな少女。マリーシュカの赤い瞳であった。
「私の正面に立つなんて身の程知らず。図が高いわ……ひれ伏しなさい」
そう艶やかな声で言い上げると、肉食竜にも負けぬ鋭い眼光でギロリと睨みつける。
その眼力に、一瞬ラプターはその身を戦慄かせ、声にならぬ雄叫びを上げた。
「その隙、いざ参るでござるッ!!」
マリーシュカの隣に控えていたミィリア(ka2689)がその隙を逃さず、一気にラプターの懐へと飛び込む。
「いつか、生身でCAMとやりあうんだ……! そして、勝つ!! それまでは――」
自らを奮い立たせるように叫びながら、一見その身に合わぬ巨大な太刀を高々と振り上げるミィリア。
そうしてどっしりと大地を踏みしめると、一刀の下に振り下ろした。
「――私も、CAMも、負けやしないんだからっ!」
憧れの侍口調も忘れて、彼女の意思のままに振り下ろされた大太刀は一瞬の閃きを以てラプターとの間に弧を描く。
それから一瞬の間を於いて、ずるりとその首が大地を転がった。
崩れるラプターの身体から転がり落ちるゴブリン。慌ててその身を起こそうとするも、その頬先をひやりとした太刀の切っ先が掠める。
「さっきの……ちょっと痛かった……」
太刀を突きつけ自らを見下ろす楽羅に、ゴブリンはその切っ先を払うように手に持った剣を横なぎに振るって立ち上がる。その一撃も太刀に払われ、乾いた金属音を立てて荒野を転がった。
「一撃で、切り捨ててやる……」
楽羅は先ほど別の個体をそうしたように、袈裟に一刀を見舞う。が、若干当たり所を損じたかゴブリンの腕を切り飛ばすに留まった。
歪虚と化しているゴブリンは切り飛ばされた腕の痛みに臆すること無く、転がった剣を拾い上げると一気に距離を詰めて楽羅の喉元を切り裂こうとその剣を翻す。
が……寸での所で、その刃が届くことは無かった。
「よく気張ったじゃねぇか。ナイスファイト」
ゴブリンの背後でくるくると戦斧を弄び肩に担いだティーアの姿を前に、その凶刃の切っ先もとろもゴブリンは霧散して行った。
「前は私が支えてみせる。護るものがあって倒さなくてはならない奴らが居るならば、世界はまだヒーローを必要としているのだから!」
まるで悪と戦う変身ヒーローのように歪虚達に向かって人差し指を指して見栄を張る真吾は、颯爽とサーベルを抜き放ちその集団へと面した。
「ぬおぉぉぉぉぉぉ!!」
大勢の圧力を気合1つでその小型のシールドを使い押し止めながら、反撃にチクチクと盾の裏から剣を振るう。
「だ、ダメだッ! やはり1人では押し切られるッ!」
「まあ、そうだろうねぇ」
すっと、真吾の隣からくたびれたオッサン――鵤(ka3319)がひょっこりと顔を出し、真吾の盾を押す先頭の歪虚の脚を一瞬の機導剣で払う。
「実験が見れると思って来たのにこの騒ぎでツイてないと思ったけど、まあツイて無いついでに汗水垂らして働いて行くよ。報酬の分くらいはねぇ」
降りかかる刃をシールドで受けながら、その外見からは一見として想像できない精錬された動きで銃口から放たれる光の刃を振るう。
振り切る瞬間だけ具現化されるその刃は、歪虚達から見れば鵤がまるで魔法のように何も無い空を切っているようにも見えただろう。
「一応ね、間合いは悟らせないよ。もっとも、ソレを考える頭があるんならだけど」
「鵤、有難い! 共に前線を支えるぞぉぉぉぉ!!」
「そう言う暑苦しいのはちょっと苦手なんだけどねぇ……でも、どれぐらい持てるものかな」
それでも勝つまで持たせるだけだけど――とは口には出さなかったが、代わりに自らの目の前のゴブリンの足も同じようにマテリアルの刃で切り裂き、大地へと崩れさせていた。
「しかし、沢山いると撃ち甲斐があっていいね……目を瞑っても当たるとはこの事だよ」
そんな彼らからやや後退した位置で、ネイハム・乾風(ka2961)はライフルの銃口を歪虚達へ狙いを定めながら気だるげに言い放った。
「本当に目を瞑るのは勘弁してくださいね。私達はこうして距離を置いて撃っていられる内が華ですから」
そんなネイハムに対し、音桐 奏(ka2951)は苦笑しながら答える。
前衛の二人が時間を稼いでくれている間に後衛の3人が足止めを食らって齷齪している歪虚達を仕留める。それが彼らのフォーメーションだ。
「む……1時の方向、魔術師です」
そう言うが否や引き金を絞る指に力を込める。放たれた銃弾はロッドを握るゴブリンの腕を貫き、その長い杖を落とさせた。
「いい腕だね……俺も頑張らないと」
そう言いながら、ネイハムはその引き金にマテリアルを流し込む。一時的に威力を高められた弾丸が、1発の銃声と共に魔術師の脳天に綺麗な風穴を空けた。
「本当に、前の方々は頼りになります。その分、私達も役目を果たさなければなりませんね」
メトロノーム・ソングライト(ka1267)の歌に乗せるように現れた水の玉が真吾と鵤の盾を抜けて突っ込んで来たゴブリンを押し返す。
「そろそろ限界でしょうか……」
ゴブリンの戦士へ追撃の風刃を浴びせながら、メトロノームは戦況を一瞥する。
二人は本当に良くやってくれている……が、いかんせん数が多いのだ。
二人で責を負うにも限界がある。
再び、2・3体のゴブリン達が壁を抜けてくる。
「抜けられるとマズイからね……」
ネイハムが駆け抜ける歪虚の足元を狙い撃ち、その行動を阻害する。
それでかなりの時間、足止めに成功はしていたのだが、そうして1体1体を相手取っている間に次々と、別の個体がその脇を抜けて行ってしまう。
「流石に全てを前線で押さえるのは厳しいか……」
馬を右往左往に走らせながら、人手の足りない部分を補うように戦場を駆け回っていた久延毘は苦い顔をしながら、アルファスと共に眼下のコボルドを馬で蹴り上げる。
「こう、圧力が増してくるとね。でもその為に後ろに控えてくれているんだ。信じて、僕らはやれる事をやろう。シコン1に手を掛けさせないためにもね」
そう言ってアルファスはまた自らの馬を翻す。
前線の判断と連携のおかげで魔術師とラプター乗りのゴブリンはその力をCAMへ発揮させる前に抑える事ができていた。
が、代わりにその他大勢の雑魔達が前線の壁を数でこじ開け、CAMの下へとなだれ込む。
●CAMの戦い
「いやぁ、オイシイとこ全部前の人達に持っていかれるんじゃないかって心配だったんだよ」
土埃を上げながら前線を抜けてきた雑魔達をKurt 月見里(ka0737)が狙い打つ。
前線とCAMの中腹辺りに位置していた彼は、真っ先に雑魔が抜けてくるその状況を察知していた。
前線の乱戦具合とは違い、その数も勢いも比較的収まっているせいか狙いは正確に付けやすい。が、それでも自分1人で押さえられるようなものでないことは重々招致している。
「蘇芳、おそらくもう連絡は行ってると思うけど他の直衛の人達にも伝達を頼めるかな。あと、CAMの傍まで下がってくれて大丈夫だよ」
「分かりました。それまでお願いします」
とことことCAMの方へ駆け出す蘇芳の背中を満足げに見守ると、クルトは自らにマテリアルの輝きを纏わせる。
「今まで休んでた分、少し本気を出させて貰うよ」
言いながらその感覚を研ぎ澄まして行くのだ。
彼女に被害が及ぶ前に、雑魔を殲滅しきるのだと。
「雑魔、抜けて来るみたいです! 皆さん気をつけてください!」
CAMの左舷ではフレデリクが通信機器を握り締め、周囲のハンター達に警戒を促していた。
「丁度退屈していた所です。CAMは動けるのですか?」
『ああ、稼動はいつでも可能だ。必要があればコイツをぶっ放せる』
十 音子(ka0537)の問いにパイロットはそう返しながら、CAMに人の目で見れば『砲』と言っても差し支えの無い経口火器のマガジンを装填してみせる。
「頼もしいですけど、基本は私達で頑張りますからねっ! 最初のミサイルでも十分役目は果たしてくれて居るんだもの!」
ぱん、と気合を入れるように両の頬を叩いてクレールもCAMがそうしたように魔導銃をリロードする。
「雑魔、来ますッ!」
再びのフレデリクの発声と共に、一斉に銃の引き金は引き絞られた。
「強力な個体は前衛が押さえてくれています。他の個体だけなら、私が抑えましょう」
ショートソードを握り締め、見た目の知的な風体とは裏腹に戦士然とした凛々しい姿で敵群へと踏み込むエルティア。
数匹の雑魔を一挙に相手取りながら、その攻撃の1つ1つを的確にいなし歩みを止めさせててゆく。
「ブリキの玩具は護らないとね~? だって壊れたら替えがあるかわかんないもん♪」
エルティアが押さえる雑魔へと風の刃を吹雪かせながら、夢路 まよい(ka1328)は楽しそうにライフルを構えるシコン1を振り返り、ニコニコと笑顔を浮かべる。
「私達だけでは少々、悪戦苦闘ですの……シコン1、撃てますか?」
蘇芳はそう一言トランシーバーへ言付けると、
『任せろ』
そう、短い返事が返ってきた。
同時にハンマーで大地を穿つかのような激しいノイズが辺りに響き渡る。
「砲撃、来ます! 注意してください!」
そう叫ぶフレデリクの声もかき消されるかのように等間隔で爆ぜる弾薬の音を響かせ、ライフルの銃弾が列を成して横なぎに、迫り来る雑魔の群れに降り注いだ。
排出された大量の薬莢が、シコン1の周囲に飛び散る。
「うわわ、近くはちょっと危ないですね……」
言いながら少し距離を取るフレデリク。
『流石に目標が小さいと的中率は下がるか……ミサイルのようにゃいかねえな』
舌打ち交じりに呟きながら、カートリッジをリロードする。
ほぼ乱射のような形ではあったが、それでも何匹かの雑魔を的確にその鉛玉で塵へと帰していた。
「やはり凄まじいね……CAMの力」
巨大なクレイモアを担ぎながらルスティロはシコン1の攻撃に混乱する雑魔へ対峙する。
「重たい武器はちょっと苦手だけど……僕達もがんばろう、カーバンクル」
そう自らの精霊に語りかけ、大振りに大剣を振りかざす。
「はぁぁぁぁぁ!!」
渾身のその振り抜きは砲撃で弱った雑魔を一振りで両断し、遠心力を利用してまたすぐさま次の標的へとその刃を翻す。
「CAMが悲劇をなくしてくれるのならば、僕は全力で護る。そして少なくとも今は、その通りだ」
そう自分に言い聞かせるように繰り返し口にしてルスティロの大剣は戦場を舞った。
『取り回しが良いっつっても、流石に張り付かれると厳しいな』
勢いに任せて攻勢の強い歪虚にシコン1は少々の引き撃ちを余儀無くされていた。
実際、捕りつかれてしまうのは防がなければならない。
もちろん装甲も十二分にあるが、それでも集中攻撃を受ければどうなるか分からないのだ。
四つんばいで加速を付けたコボルドが飛び掛り、その爪がCAMを襲う。
「シコン1に触れさせるかぁっ!!」
咄嗟に張られたクレールの防御障壁がその攻撃を受け止め事なきを得るものの、一度防勢に入ったシコン1は中々敵の追撃から逃れられない。
戦場を離れすぎればそれはそれでハンターのサポートを受けられなくなる。
それはこの状況に於いてもっとも懸念すべき点であり、行ってはならない事だ。
「離れなさい……!」
群がる雑魔にエルティアが弓を引き絞る。飛びかかろうとしたゴブリンを打ち落としたが、入れ違いに飛び掛る別のゴブリンの棍棒がCAMの脚部装甲を強打する。
ガクリと揺れるシコン1。
が、流石にその程度で倒れるほどヤワではない。
オートバランサーですぐに体制を立て直すと、ライフルのストックで振り払うように雑魔を押しのける。
「ええい、一か八かっ!」
そう言いながらCAMへ群がる雑魔達をまよいの放つ青白い雲が包み込む。
スリープクラウド。生物を眠らせ、その動きを無効化するマギステルの術であるが……雲が晴れた後、活動を停止している個体は居なかった。
「やっぱり、この雑魔にも利かないみたい~!」
口惜しそうに地団駄を踏みながらも、それなら魔法で倒すもん、と風の刃を撃ち続ける。
「シコン1、ジャンプしてっ!」
不意にクレールの声がトランシーバーから響き渡った。
その声に導かれるようにして、シコン1の脚が屈伸したかと思うとその脚力で高く跳ね上がった。もちろん全力を出した訳ではないが、それでも十分に高い距離を飛び上がり――そのまま着地した。
「そこからなら――斬れるッ!」
クレールはフレデリクの持つトランシーバーに向かって叫ぶと、シコン1の腕が滑らかな動きで腰のカタナを抜き放つ。
5000mmCAM用カタナ。CAMのために作られた人間が扱うには長大で、巨大すぎるそのカタナ。
しかしそれも、巨人であるCAMが扱えば途方も無い重量と破壊力を持った武器と化す。
『くらいやがれぇぇぇぇ!!』
誰の入れたモーションなのだろう。無駄の無い軌跡で何度か振るわれるそのカタナは着地の衝撃で吹き飛ばされた雑魔達の1個1個を的確に捉えていた。
そうしてシコン1は残心まできっちりと決めると、その腰のマウントへと静かにカタナを納める。
それと、雑魔が細切れとなるのとはほぼ同時であったという。
●暁に臨む暗雲
シコン1の危機も去り、次第に数も圧倒し始めた人類が雑魔を殲滅するのは時間の問題であった。
CAMもその脚に多少の傷を負ったものの、すぐに修復可能なレベルである。
霧と散ってゆく歪虚の死骸の山を前に、ハンター達は妙な緊張感に包まれていた。
『それにしても、この攻勢はなんだったのでしょうね』
スケッチブックにさらさらとそう記しながら、メイが誰にともなく尋ねる。
「いえ……何者が、と言った方が正しいのではないでしょうか」
答えたのはメトロノームだった。
が、彼女自身その答えには至っていない。
むしろこれから何が起こるのか……人類はおそらく、知る由は無かったのだ。
「今回はCAMの力が歪虚に向くから問題ねぇ……けどよ、この力がいつ同じ人間に向くか分からねぇ。もしも、もしもそんな未来が来たらよ……そこんとこ、上の連中はどう考えてんのかね」
夕日を浴びるCAMを見上げながらジャックはそんな事を呟いた。
しかしその言葉が案じる『未来』の形もまた、誰にも答える事はできなかった。
辺境の荒野に吹き荒れる砂埃。同時に鳴り響く地鳴りのような地響きに、ハンター達は思わず息を呑んだ。
それは決して気おされた訳では無いが、一種の武者震いにも似た震えが彼らの背筋を伝い、一筋の汗となって頬を流れ落ちた。
総勢100余匹の虚ろなる軍勢。
その文字通りの侵攻は、先の王国での戦いにも似ていた。
「こちらの方面には30余匹――ゴブリンやコボルドと言った亜人の集団に見えるけど、あれは間違いなく歪虚ね」
CAM試験2号機の肩に腰を据えながら、エルティア・ホープナー(ka0727)は迫り来る軍勢をその眼下に納めていた。
『雑魔化してるってわけだな……厄介だ。軍勢に何か目立った特長は無いか?』
手に持つトランシーバーから、鳴神 真吾(ka2626)の声が届く。
その質を受けてエルティアは再び土埃を見渡し、目を細める。
「そうね……大勢は普通のゴブリンやコボルドに見えるけど、皆何かしら武器を持っているわね。棍棒なり、長物なり。後は小型の生物に跨ったゴブリンが少数かしら」
『分かった。回りの者にも伝えておこう』
そう真吾が返事を返し、通信を終える。
彼女は研ぎ澄ましていた感覚を一端緩めると、大きく一つ息をつく。
数回の深呼吸の後に再びキリリと凛々しい視線をなお立ち込める土埃へと向けると、誰に言うでもなく呟いた。
「未だ序章の物語……こんな所で邪魔はさせないわ」
そうしてCAMの腕、足を伝い、一気に地面へと駆け下りる。
それと同時に暗く沈んでいたCAMのバイザーにぼうっと翠色の明かりが灯った。
まるで生命の灯火にも似たその輝きの下、鋼鉄の装甲機は機械的な駆動音と共にその巨体をもたげる。
数ヶ月の時を経て、CAMは再び戦場へと立ち上がった。
『計器、バランサー、共に問題無いかい?』
ディスプレイの明かりに照らされた薄暗いCAMのコックピットの中にアルファス(ka3312)の声が木霊する。
「ああ、マニュアル通りなら問題ねぇ。問題あるとすれば、少々狭い事くらいか」
パイロットが自身の頭に迫る天板を鬱陶しそうに指で叩きながらそう言い溢す。
『それはガマンしてくれないかな。まあ、慣れればそれでも快適なものだよ』
『な、CAM動かすのってどんな感じなんだ!? 機械の手足動かすんだろ!?』
アルファスの苦笑交じりの通信に割って入るように、ダイン(ka2873)の声が割れんばかりにスピーカーから響く。通話口の奥で『おい、通信機を私用で使うな……』とトランシーバーの持ち主である対崎 紋次郎(ka1892)の声がため息混じりに漏れた。
「そうだな、子供のときに買ってもらった糸釣りのデク人形を動かすような気分だ」
パイロットはそのぶっきらぼうな言動とは裏腹に律儀にダインの質問に答えながら、CAMの手足を動かし何らかの武術のものらしきモーションを披露する。
「ただまぁデク人形と違うのは、視点が俯瞰じゃねぇって事か。まったく、奇妙な感覚だぜ」
そう、低いトーンで言った彼の視線の先。コックピットのディスプレイ越しにもまた、迫り来る雑魔達が映し出されていた。
『はじめまして、小鳥遊 蘇芳です。主立って、ハンターの皆さんとの通信の仲介をさせて頂きます。よろしくお願いします』
『同じくフレデリク・リンドバーグです。CAMをこんな間近で見る日が来るなんて思っても見ませんでした……すごいです! いいなぁ』
続けて響く小鳥遊 蘇芳(ka2743)の抑揚の薄い声と、対照的に明るいフレデリク・リンドバーグ(ka2490)の声。
『まずは打ち合わせ通りに』
『思いっきりぶっ放しちゃってください!』
「おうよ、任しとけ」
ギシリと、音がするほどに握り締める操縦桿。彼もまた、こんな風にCAMの兵器をぶっ放す機会が来るとは思ってもいなかった。
彼自身もまた、このCAMと言うものの有用性を確かめたい人間のひとりである。
雑魔には悪いが、願っても無い試験材であった。
迫り来る軍勢にレーダーが反応する。
コンソールを叩いて装備をシフト。選択するのは腕にマウントされた『対ヴォイド用ミサイル』。
2発っきりの虎の子であるが、現状に於いては対歪虚の決戦兵器の一種でもあるこの兵装。
「それをあの歪虚どもにぶっ放すって言うんだから、そりゃぁでかい花火になるだろうよ」
言いながら照準を絞る。少しでも敵の密集した所を、効果的な場所を探し、カーソルが右往左往する。
『攻性強化でサポートします! どでかい一発、お願いしますよ!』
足元でクレール(ka0586)が放つマテリアルがCAMへと流れ込む。CAMはその身体に確かなマテリアルの輝きを纏わせながら、そのバイザーがより強い輝きを放った。
『下半身の駆動には注意して欲しい。オートバランサーがあると言っても、想定外の振動には耐えられないからね。それに戦闘中のモニターの死角にも』
最後の確認、と再びアルファスの通信が介入する。
『そしてコレが最後……お互いに生きて帰ろう。そうだね、コールは侍の魂。シコン1でどうかな?』
「コール? なんだそりゃ」
『機体ごとの認識番号のようなものさ。試験2号機、じゃ味気ないだろう?』
そうアルファスに諭され、繰り返すようにその名を口にするパイロット。
同時にコックピットに小刻みなアラートが鳴り響く。
ディスプレイの表示が『LOCK ON』へと切り替わり、ミサイルのハッチが解錠された。
「上等じゃねぇか。シコン1、ぶちかますぜ……ッ!!」
握り締める操縦桿の引き金と共にバック・ブラストを吹き上げ、ミサイルはコンテナから射出された。
一目散に、加速しながら真っ直ぐに飛翔するその爆弾は吸い込まれるようにして軍勢の左舷と突き刺る。
同時に轟く爆音、そして閃光。
ビリビリと機体へも伝う振動。
思わず目を覆ってしまうその輝きと爆風に、ハンター達は身を翻してその衝撃を緩和する。
『もう一発、お願いしますっ!』
フレデリクの通信を受け、立て続けにもう一方のトリガーも引き絞る。
再びのバック・ブラスト。
ミサイルは鋭く風を切るような音を立て先ほどと対岸の右舷へと突き刺さった。
再びの爆炎。
2発目は流石になれたのか、目を覆う腕の隙間から多くのハンターがその情景を目の当たりにした。
立ち上る炎に、吹き飛ばされる歪虚。直撃を受けていない個体もその爆風に吹き飛ばされ、身を大地に投げ打つ。
下級も下級の雑魔であるとはいえ、敵は歪虚。
元来、人類を悩ませ続けた虚ろなる軍勢。
その軍勢がいとも簡単に……ボタン1つで吹き飛ぶのだ。
「蒼の世界の機械人形は……これほどの力を持っているのか」
どこか神々しさすら感じる様子でルスティロ・イストワール(ka0252)はその閃きを、そして閃きに照らされて輝くCAMを見上げると、なんとも表現しがたい表情でその勇姿を見つめていた。
そこには大きな希望と共に、一抹の哀愁が込められていたのは彼しか知る者は居ないだろう。
「すげぇもんだな。こりゃあ変わるぜ……戦場がよ」
どこか皮肉掛かったようにジャック・J・グリーヴ(ka1305)は呟いた。
それは思わず漏れてしまった、感嘆にも似た言葉である。
やがて炎は、そして煙は晴れ、耳を劈いた爆音もどこか遠くへと消え去った。
初撃で吹き飛んだ歪虚はおよそ3割。
比較的纏まりのある部分を狙ったものの散開している敵を相手にミサイルの最大の効果を得る事はできなかったが、それでも敵の出鼻を挫くには、そして勢いをこちらに引き込むには十分であった。
「それじゃ、ま、狩りを始めるとしますか」
彼にとっては見慣れた光。
ハンター達の中では平静を保っている方のティーア・ズィルバーン(ka0122)は、その戦斧を両手でクルリと弄ぶとゆらりと身体を沈め、一気にトップスピードで駆け出した。
それを先陣に、確かな喚声と共に敵陣へと突撃を掛けるハンター達。
雑魔というモンスターと化した亜人に感性は無い。
あの爆炎を見てなお怯む事無く突っ込んでくるかの軍勢にはわずかながら敬意をも覚えるが、人類にとっては比類無き敵。
「ギガントマキアー……何とも面白い事態になったじゃないか」
久延毘 大二郎(ka1771)は中指でクイと爆風でずれた眼鏡を正すとクククと乾いた笑いを浮かべ、傍に居るアルファスと共に自らの馬へと鞭を打つ。
「だが、再現とはせんよ。勝つのは巨神を擁する――我々だ」
果てしない荒野の中で、ハンターと歪虚は真正面から正面でぶつかった。
●ハンター達の戦い
「数の上ではほぼ互角か……なら優劣を決めるのは個の実力か、それとも集団としての力か」
荒野を駆け抜ける蘇芳 和馬(ka0462)の2刀の小太刀が剣を掲げて突進するゴブリンの足を払うように切り崩す。そうしてガクリと勢いを失ったゴブリンの体を機導砲のマテリアルの輝きが包み込んだ。
「俺は後者だと思うがな」
少なくとも統率力も無く、ただ勢いに任せてやってくるだけの相手に負ける気はしない。そんな確信にも似た感覚を和馬は確かに感じていた。
機導砲を放った紋次郎はすぐさまタクトを別の標的へと向けると、再びの輝きが戦場を横切る。
「流石はCAMの火力だな……おかげで雑魔を滅ぼす効率がいい」
迫り来る雑魔は先ほどの爆撃で生き残った個体ではあるのだが、中には爆発の周囲に居たために命からがら生き残っている――と言った個体も少なく無かった。
まずは数の利を取るためにそう言った満身創痍の個体から敵戦力を削り取って行く。文字通り、千里の道も一歩から。
「オラァ! 掛かって来いやクソ歪虚共!」
迫り来る軍勢に大手を開いて挑発をかますジャック。その雄叫びに乗ってか否か、その周囲にはぞろぞろと雑魔達が駆け込んでくる。
振り下ろされる刃をバックラーでかわし、そのまま抑え込むようにしてゴブリンの脳天にリボルバーの銃口を当てがう。慈悲なく引き絞られたトリガーに、ゴブリンは仰け反るようにして後続のコボルドを巻き込むように吹き飛ぶ。
「どうした、傷一つついちゃいねぇぞ。その程度で俺様に膝を突かせられると思うなよ……?」
言いながらにやりと犬歯を見せて笑うと霧になり始めたゴブリンの亡骸を踏みつけて再び見栄を張って歪虚達の注意を引きつける。
「こいつで……どうだッ!」
ジャックの挑発を無視して抜けた敵を一歩引いた位置でダインの長槍の柄が捉えた。そのまま大きくスイングするように槍を振りぬく。
前傾に全力疾走していたゴブリンはその腹にモロに一撃を受け、体を「く」の字の折り曲げながら転がるように後退させられた。
「少しでも壁を厚く、戦場を横に広げるんだ!」
真正面から来たゴブリンの頭蓋を、その間合いの一歩先から叩き割る。
ただただ自分の目の前の敵を攻撃するだけではあるが、代わりに正面だけは抜かせない。
その一心で休む事無く身の丈よりも長い槍を振り回し続ける。
が、不意に遠方から光り輝く玉のようなものが出現したかと思うと、一瞬で目の前がその輝きに包まれた。
「うわっ!?」
突き飛ばされるような衝撃と共に盛大に尻餅を突くダイン。同時に、パリンとガラスの砕けるような音と共に光の塵が周囲を舞った。
「大事無いか、ダイン」
ダイン本人は気づいて居なかったが、この時彼は遠方から何者かによる攻撃を受けていた。しかし咄嗟に放った紋次郎の障壁で、なんとか事無きを得る。
「あ、危なかった……助かった」
石突を地面に突き刺し、槍を杖替わりにしてひょいと体を起こす。
「今のは魔力による攻撃か……?」
紋次郎がその目を凝らすと、離れた場所でロッドをくるくると回すゴブリンが、その杖の先に光を集めているのが目に入った。
『あれはゴブリンの魔術師……?』
衝撃で受けたダインの傷を治癒術で癒しながら、メイ=ロザリンド(ka3394)は歌い上げるように口にする。
「各班に告ぐ。敵に魔術を行使する者が居る。アレで遠間からCAMを狙われると少々厄介だ……見つけたら注意してくれ」
同時に紋次郎の声が魔導短伝話とトランシーバーを通じて戦域へと響き渡った。
「1班了解よ、こちらでも確認しているわ」
応答するマリーシュカ(ka2336)の視線の先には、同じように杖を構えたゴブリンの姿。
そんな彼女へ飛びかかるゴブリンの刃を間に割って入った米本 剛(ka0320)の巨体と大太刀が阻む。
「久々にCAMに逢えると来ましたが……何と言うか、平和には過ごせませんね」
それがハンターの性なのか、と。やや諦めたように苦笑しながら、両手で押さえる大太刀に力を込めゴブリンを押し返す。
そうしてよろめいたゴブリンを新城 楽羅(ka3389)の太刀が袈裟に切り伏せた。
「邪魔は、させない……!」
その大きな胸を張って素早い血振りの後、再び切っ先を歪虚達の方へと向ける。
「あの魔術師を、何とかしなきゃ……」
楽羅の視線の先には、虚ろな表情でロッドの先に光を集めるゴブリンの魔術師。放たれた光玉をその刃で弾くと、1足の下にその距離を詰める――が、その魔術師の背後から別の影が現れその進路を遮った。
「……っ!?」
思わず横っ飛びに回避する楽羅。その物体は彼女が今居たはずの大地を踏みしだくようにその強靭な後ろ足を振り下ろすと、そこに狙った獲物が居ない事を確認し、辺りを探すように長い首を捻る。
そうしてその鋭い瞳と目が合い、先ほどとはまた違う、ゾクリとした悪寒が彼女の背中を伝った。
鋭い歯、大きな顎。未熟な前脚に対し発達した後ろ脚。その捕食者としての風格を堂々と放つ小型の恐竜、ラプターであった。
その背には武装を施したゴブリンが、咥えさせた手綱を片手にその舵を取る。
「楽羅さん、大丈夫ですか!」
米本の怒声と共に、暖かい輝きが彼女の足を包む。先ほどの回避の時に避けきる事ができなかったのだろう。足を斜めに裂かれた引っかき傷が、その輝きの下少しずつ治癒されてゆく。
「魔術師の前に、もっと厄介なモノが居たようね」
マリーシュカはそう、どこか満足げにニヤリと笑みを浮かべると、持ち合わせたトランシーバーへ語りかける。
「各班、小型の竜に乗ったゴブリンにも気をつけて。どうやら、一筋縄では行かないみたいよ」
それだけ告げると返答の通信も聞かずに通信機を仕舞いこみ、細長いワイヤーウィップをその手へと携えた。
「抜かれると厄介そうだし、ここで仕留めましょう」
「了解だ、まずは引きつける」
マリーシュカが言うな否や、その横を風のようにティーアが突き抜ける。
そのままラプターの横までも駆け抜けると急旋回。振り向き様に背後から遠心力を乗せた一撃がその強靭な後ろ脚を襲う。
鼓膜を貫くような叫び声と共に、ゆらりと身を翻すラプター。自らへ危害を加えたニンゲンをその瞳に捉えると、その怪我をした方の脚で蹴りかかる。
「おっと……そうは行くかよ」
ティーアはその一撃をひらりとかわすと、再びラプターの背後を取るように身を滑らせる。
後を追うように再びクルリと踵を返すラプターであったが、そこには既にティーアの姿は無く――代わりにあったのは小さな少女。マリーシュカの赤い瞳であった。
「私の正面に立つなんて身の程知らず。図が高いわ……ひれ伏しなさい」
そう艶やかな声で言い上げると、肉食竜にも負けぬ鋭い眼光でギロリと睨みつける。
その眼力に、一瞬ラプターはその身を戦慄かせ、声にならぬ雄叫びを上げた。
「その隙、いざ参るでござるッ!!」
マリーシュカの隣に控えていたミィリア(ka2689)がその隙を逃さず、一気にラプターの懐へと飛び込む。
「いつか、生身でCAMとやりあうんだ……! そして、勝つ!! それまでは――」
自らを奮い立たせるように叫びながら、一見その身に合わぬ巨大な太刀を高々と振り上げるミィリア。
そうしてどっしりと大地を踏みしめると、一刀の下に振り下ろした。
「――私も、CAMも、負けやしないんだからっ!」
憧れの侍口調も忘れて、彼女の意思のままに振り下ろされた大太刀は一瞬の閃きを以てラプターとの間に弧を描く。
それから一瞬の間を於いて、ずるりとその首が大地を転がった。
崩れるラプターの身体から転がり落ちるゴブリン。慌ててその身を起こそうとするも、その頬先をひやりとした太刀の切っ先が掠める。
「さっきの……ちょっと痛かった……」
太刀を突きつけ自らを見下ろす楽羅に、ゴブリンはその切っ先を払うように手に持った剣を横なぎに振るって立ち上がる。その一撃も太刀に払われ、乾いた金属音を立てて荒野を転がった。
「一撃で、切り捨ててやる……」
楽羅は先ほど別の個体をそうしたように、袈裟に一刀を見舞う。が、若干当たり所を損じたかゴブリンの腕を切り飛ばすに留まった。
歪虚と化しているゴブリンは切り飛ばされた腕の痛みに臆すること無く、転がった剣を拾い上げると一気に距離を詰めて楽羅の喉元を切り裂こうとその剣を翻す。
が……寸での所で、その刃が届くことは無かった。
「よく気張ったじゃねぇか。ナイスファイト」
ゴブリンの背後でくるくると戦斧を弄び肩に担いだティーアの姿を前に、その凶刃の切っ先もとろもゴブリンは霧散して行った。
「前は私が支えてみせる。護るものがあって倒さなくてはならない奴らが居るならば、世界はまだヒーローを必要としているのだから!」
まるで悪と戦う変身ヒーローのように歪虚達に向かって人差し指を指して見栄を張る真吾は、颯爽とサーベルを抜き放ちその集団へと面した。
「ぬおぉぉぉぉぉぉ!!」
大勢の圧力を気合1つでその小型のシールドを使い押し止めながら、反撃にチクチクと盾の裏から剣を振るう。
「だ、ダメだッ! やはり1人では押し切られるッ!」
「まあ、そうだろうねぇ」
すっと、真吾の隣からくたびれたオッサン――鵤(ka3319)がひょっこりと顔を出し、真吾の盾を押す先頭の歪虚の脚を一瞬の機導剣で払う。
「実験が見れると思って来たのにこの騒ぎでツイてないと思ったけど、まあツイて無いついでに汗水垂らして働いて行くよ。報酬の分くらいはねぇ」
降りかかる刃をシールドで受けながら、その外見からは一見として想像できない精錬された動きで銃口から放たれる光の刃を振るう。
振り切る瞬間だけ具現化されるその刃は、歪虚達から見れば鵤がまるで魔法のように何も無い空を切っているようにも見えただろう。
「一応ね、間合いは悟らせないよ。もっとも、ソレを考える頭があるんならだけど」
「鵤、有難い! 共に前線を支えるぞぉぉぉぉ!!」
「そう言う暑苦しいのはちょっと苦手なんだけどねぇ……でも、どれぐらい持てるものかな」
それでも勝つまで持たせるだけだけど――とは口には出さなかったが、代わりに自らの目の前のゴブリンの足も同じようにマテリアルの刃で切り裂き、大地へと崩れさせていた。
「しかし、沢山いると撃ち甲斐があっていいね……目を瞑っても当たるとはこの事だよ」
そんな彼らからやや後退した位置で、ネイハム・乾風(ka2961)はライフルの銃口を歪虚達へ狙いを定めながら気だるげに言い放った。
「本当に目を瞑るのは勘弁してくださいね。私達はこうして距離を置いて撃っていられる内が華ですから」
そんなネイハムに対し、音桐 奏(ka2951)は苦笑しながら答える。
前衛の二人が時間を稼いでくれている間に後衛の3人が足止めを食らって齷齪している歪虚達を仕留める。それが彼らのフォーメーションだ。
「む……1時の方向、魔術師です」
そう言うが否や引き金を絞る指に力を込める。放たれた銃弾はロッドを握るゴブリンの腕を貫き、その長い杖を落とさせた。
「いい腕だね……俺も頑張らないと」
そう言いながら、ネイハムはその引き金にマテリアルを流し込む。一時的に威力を高められた弾丸が、1発の銃声と共に魔術師の脳天に綺麗な風穴を空けた。
「本当に、前の方々は頼りになります。その分、私達も役目を果たさなければなりませんね」
メトロノーム・ソングライト(ka1267)の歌に乗せるように現れた水の玉が真吾と鵤の盾を抜けて突っ込んで来たゴブリンを押し返す。
「そろそろ限界でしょうか……」
ゴブリンの戦士へ追撃の風刃を浴びせながら、メトロノームは戦況を一瞥する。
二人は本当に良くやってくれている……が、いかんせん数が多いのだ。
二人で責を負うにも限界がある。
再び、2・3体のゴブリン達が壁を抜けてくる。
「抜けられるとマズイからね……」
ネイハムが駆け抜ける歪虚の足元を狙い撃ち、その行動を阻害する。
それでかなりの時間、足止めに成功はしていたのだが、そうして1体1体を相手取っている間に次々と、別の個体がその脇を抜けて行ってしまう。
「流石に全てを前線で押さえるのは厳しいか……」
馬を右往左往に走らせながら、人手の足りない部分を補うように戦場を駆け回っていた久延毘は苦い顔をしながら、アルファスと共に眼下のコボルドを馬で蹴り上げる。
「こう、圧力が増してくるとね。でもその為に後ろに控えてくれているんだ。信じて、僕らはやれる事をやろう。シコン1に手を掛けさせないためにもね」
そう言ってアルファスはまた自らの馬を翻す。
前線の判断と連携のおかげで魔術師とラプター乗りのゴブリンはその力をCAMへ発揮させる前に抑える事ができていた。
が、代わりにその他大勢の雑魔達が前線の壁を数でこじ開け、CAMの下へとなだれ込む。
●CAMの戦い
「いやぁ、オイシイとこ全部前の人達に持っていかれるんじゃないかって心配だったんだよ」
土埃を上げながら前線を抜けてきた雑魔達をKurt 月見里(ka0737)が狙い打つ。
前線とCAMの中腹辺りに位置していた彼は、真っ先に雑魔が抜けてくるその状況を察知していた。
前線の乱戦具合とは違い、その数も勢いも比較的収まっているせいか狙いは正確に付けやすい。が、それでも自分1人で押さえられるようなものでないことは重々招致している。
「蘇芳、おそらくもう連絡は行ってると思うけど他の直衛の人達にも伝達を頼めるかな。あと、CAMの傍まで下がってくれて大丈夫だよ」
「分かりました。それまでお願いします」
とことことCAMの方へ駆け出す蘇芳の背中を満足げに見守ると、クルトは自らにマテリアルの輝きを纏わせる。
「今まで休んでた分、少し本気を出させて貰うよ」
言いながらその感覚を研ぎ澄まして行くのだ。
彼女に被害が及ぶ前に、雑魔を殲滅しきるのだと。
「雑魔、抜けて来るみたいです! 皆さん気をつけてください!」
CAMの左舷ではフレデリクが通信機器を握り締め、周囲のハンター達に警戒を促していた。
「丁度退屈していた所です。CAMは動けるのですか?」
『ああ、稼動はいつでも可能だ。必要があればコイツをぶっ放せる』
十 音子(ka0537)の問いにパイロットはそう返しながら、CAMに人の目で見れば『砲』と言っても差し支えの無い経口火器のマガジンを装填してみせる。
「頼もしいですけど、基本は私達で頑張りますからねっ! 最初のミサイルでも十分役目は果たしてくれて居るんだもの!」
ぱん、と気合を入れるように両の頬を叩いてクレールもCAMがそうしたように魔導銃をリロードする。
「雑魔、来ますッ!」
再びのフレデリクの発声と共に、一斉に銃の引き金は引き絞られた。
「強力な個体は前衛が押さえてくれています。他の個体だけなら、私が抑えましょう」
ショートソードを握り締め、見た目の知的な風体とは裏腹に戦士然とした凛々しい姿で敵群へと踏み込むエルティア。
数匹の雑魔を一挙に相手取りながら、その攻撃の1つ1つを的確にいなし歩みを止めさせててゆく。
「ブリキの玩具は護らないとね~? だって壊れたら替えがあるかわかんないもん♪」
エルティアが押さえる雑魔へと風の刃を吹雪かせながら、夢路 まよい(ka1328)は楽しそうにライフルを構えるシコン1を振り返り、ニコニコと笑顔を浮かべる。
「私達だけでは少々、悪戦苦闘ですの……シコン1、撃てますか?」
蘇芳はそう一言トランシーバーへ言付けると、
『任せろ』
そう、短い返事が返ってきた。
同時にハンマーで大地を穿つかのような激しいノイズが辺りに響き渡る。
「砲撃、来ます! 注意してください!」
そう叫ぶフレデリクの声もかき消されるかのように等間隔で爆ぜる弾薬の音を響かせ、ライフルの銃弾が列を成して横なぎに、迫り来る雑魔の群れに降り注いだ。
排出された大量の薬莢が、シコン1の周囲に飛び散る。
「うわわ、近くはちょっと危ないですね……」
言いながら少し距離を取るフレデリク。
『流石に目標が小さいと的中率は下がるか……ミサイルのようにゃいかねえな』
舌打ち交じりに呟きながら、カートリッジをリロードする。
ほぼ乱射のような形ではあったが、それでも何匹かの雑魔を的確にその鉛玉で塵へと帰していた。
「やはり凄まじいね……CAMの力」
巨大なクレイモアを担ぎながらルスティロはシコン1の攻撃に混乱する雑魔へ対峙する。
「重たい武器はちょっと苦手だけど……僕達もがんばろう、カーバンクル」
そう自らの精霊に語りかけ、大振りに大剣を振りかざす。
「はぁぁぁぁぁ!!」
渾身のその振り抜きは砲撃で弱った雑魔を一振りで両断し、遠心力を利用してまたすぐさま次の標的へとその刃を翻す。
「CAMが悲劇をなくしてくれるのならば、僕は全力で護る。そして少なくとも今は、その通りだ」
そう自分に言い聞かせるように繰り返し口にしてルスティロの大剣は戦場を舞った。
『取り回しが良いっつっても、流石に張り付かれると厳しいな』
勢いに任せて攻勢の強い歪虚にシコン1は少々の引き撃ちを余儀無くされていた。
実際、捕りつかれてしまうのは防がなければならない。
もちろん装甲も十二分にあるが、それでも集中攻撃を受ければどうなるか分からないのだ。
四つんばいで加速を付けたコボルドが飛び掛り、その爪がCAMを襲う。
「シコン1に触れさせるかぁっ!!」
咄嗟に張られたクレールの防御障壁がその攻撃を受け止め事なきを得るものの、一度防勢に入ったシコン1は中々敵の追撃から逃れられない。
戦場を離れすぎればそれはそれでハンターのサポートを受けられなくなる。
それはこの状況に於いてもっとも懸念すべき点であり、行ってはならない事だ。
「離れなさい……!」
群がる雑魔にエルティアが弓を引き絞る。飛びかかろうとしたゴブリンを打ち落としたが、入れ違いに飛び掛る別のゴブリンの棍棒がCAMの脚部装甲を強打する。
ガクリと揺れるシコン1。
が、流石にその程度で倒れるほどヤワではない。
オートバランサーですぐに体制を立て直すと、ライフルのストックで振り払うように雑魔を押しのける。
「ええい、一か八かっ!」
そう言いながらCAMへ群がる雑魔達をまよいの放つ青白い雲が包み込む。
スリープクラウド。生物を眠らせ、その動きを無効化するマギステルの術であるが……雲が晴れた後、活動を停止している個体は居なかった。
「やっぱり、この雑魔にも利かないみたい~!」
口惜しそうに地団駄を踏みながらも、それなら魔法で倒すもん、と風の刃を撃ち続ける。
「シコン1、ジャンプしてっ!」
不意にクレールの声がトランシーバーから響き渡った。
その声に導かれるようにして、シコン1の脚が屈伸したかと思うとその脚力で高く跳ね上がった。もちろん全力を出した訳ではないが、それでも十分に高い距離を飛び上がり――そのまま着地した。
「そこからなら――斬れるッ!」
クレールはフレデリクの持つトランシーバーに向かって叫ぶと、シコン1の腕が滑らかな動きで腰のカタナを抜き放つ。
5000mmCAM用カタナ。CAMのために作られた人間が扱うには長大で、巨大すぎるそのカタナ。
しかしそれも、巨人であるCAMが扱えば途方も無い重量と破壊力を持った武器と化す。
『くらいやがれぇぇぇぇ!!』
誰の入れたモーションなのだろう。無駄の無い軌跡で何度か振るわれるそのカタナは着地の衝撃で吹き飛ばされた雑魔達の1個1個を的確に捉えていた。
そうしてシコン1は残心まできっちりと決めると、その腰のマウントへと静かにカタナを納める。
それと、雑魔が細切れとなるのとはほぼ同時であったという。
●暁に臨む暗雲
シコン1の危機も去り、次第に数も圧倒し始めた人類が雑魔を殲滅するのは時間の問題であった。
CAMもその脚に多少の傷を負ったものの、すぐに修復可能なレベルである。
霧と散ってゆく歪虚の死骸の山を前に、ハンター達は妙な緊張感に包まれていた。
『それにしても、この攻勢はなんだったのでしょうね』
スケッチブックにさらさらとそう記しながら、メイが誰にともなく尋ねる。
「いえ……何者が、と言った方が正しいのではないでしょうか」
答えたのはメトロノームだった。
が、彼女自身その答えには至っていない。
むしろこれから何が起こるのか……人類はおそらく、知る由は無かったのだ。
「今回はCAMの力が歪虚に向くから問題ねぇ……けどよ、この力がいつ同じ人間に向くか分からねぇ。もしも、もしもそんな未来が来たらよ……そこんとこ、上の連中はどう考えてんのかね」
夕日を浴びるCAMを見上げながらジャックはそんな事を呟いた。
しかしその言葉が案じる『未来』の形もまた、誰にも答える事はできなかった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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質問卓 アルファス(ka3312) 人間(リアルブルー)|20才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2014/12/16 03:24:51 |
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相談卓 フレデリク・リンドバーグ(ka2490) エルフ|16才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2014/12/18 01:52:33 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/12/15 11:11:59 |