ゲスト
(ka0000)
【星籤】木漏れ日の先に石翼は佇む
マスター:植田誠

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/07/12 15:00
- 完成日
- 2018/08/02 14:12
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
『ペガサス』
その能力は攻撃的なグリフォンやワイバーンと違い、補助的な要素が強いという。
「乗り手を回復するような能力とか……この辺りはグリフォンと大きく違う点だね」
第五師団の執務室で、団長であるロルフ・シュトライトは兵長たちに説明した。
「報告書が上がっているから各自確認してみてくれ」
その報告書とは、クロウたちが調査していた未確認飛行物体に関するもの。それによると、とある山の森林地帯にそれらしき幻獣が生息している可能性があるとのことだ。
「しかし、ペガサスですか……帝国ではとんと見ませんでしたが」
「そりゃそうだろ……だってペガサスって言やぁ……」
資料を見ながら、二人の兵長が顔を見合わせる。
「翼のある馬、だからね……」
その様子を見ながら、ロルフも苦笑いする。
ここで、グリフォンの生態について少し触れよう。
グリフォンは雑食である。基本的になんでも食べる。グラウネーベル島のグリフォンは魚などとって暮らしていた記録もある。
ただ、そんなグリフォンにも好物といえるものが存在している。それが『馬肉』だ。
「帝国内だと大体グリフォンに淘汰されて絶滅したものと思っていたよ。まぁその思い込みが、今回の発見を遅らせたわけだけど……」
「それで、どうしますか」
兵長の問いに、ロルフは考え込む。
はっきり言って、ロルフたちは空戦戦力に苦労していない。グリフォンがいれば事足りるのだ。それに生物としての性格が、どちらかといえば好戦的なグリフォンに対し、どちらかといえば温厚……というよりは臆病に近いとも言われている。戦闘行動には向かない可能性もある。
だが、今後の歪虚との戦いを見据えるならば、さらなる戦力拡充は必須だろう。それは帝国だけの話ではない。
「それに、空戦における覚醒者によらない補助能力というのは無視できない。やはり生息地を特定して保護する動きに持っていきたいところだね」
「仰る通りです。ではまたハンターに……」
「そうだね。依頼を出そう。僕たちが動くのはあんまりよくないだろうし……」
グリフォンライダーたちが動けばペガサスたちも警戒して逃げ去ってしまうかもしれない。そう考えたロルフはこの件をハンター達に任せることにした。
●
依頼を受けたハンターたちは、山の中を捜索していた。歪虚の出現報告があったこともあり、そのメンバーは覚醒者のみの小規模なものであったため、捜索は困難が予想されていた。
が、意外にも目的とする場所はすぐに見つかった。前入りしていたハンターたちが山の中をマッピングしており、その情報が生きた形だ。クロウの遭難が予想外のところで功を奏したといったところであろうか。
そこは山の一角にある高原のような場所だった。このように開けた場所であるにも関わらず、いままでグリフォンライダーによる哨戒で発見されたことが無い。そのことが、ここが特別な場所であることを印象付ける。
特に目を引くのは、中央部にある石像のようなもの。ペガサスを模したものだが、不思議と人工物には思えない。周囲には……きっと、ペガサスたちが供えたのであろう。手折られた花が無数にあった。きっと、これはペガサスの守り神のようなものなのだろう。
ふと、ハンターたちは身構えた。静かな草原に、獣の雄叫びが響いてきたからだ。
ハンターたちの見た報告書には、狼型歪虚に関するものも書かれていた。連携の類はとってこない、機動力はやや高いがそれだけの歪虚。だが、報告書にはその歪虚がどういう目的でこの辺りをうろついていたのか記述はなかった。
今にして思うと、この場所……この場所を見つけることが目的だったのかもしれない。そして、ハンターたちの後を追ってここまでやってきた。そう考えれば合点がいく。
すぐさまハンターたちは迎撃の態勢を整えた。広い草原だが、周囲にペガサスの姿は見えない。敵が攻撃してくるとしたらこの石像であろうことは間違いない。
このような静謐な空間で派手な戦いを繰り広げるのは躊躇われなくはない。が、重視すべきはどちらか、言うまでもないだろう。
『ペガサス』
その能力は攻撃的なグリフォンやワイバーンと違い、補助的な要素が強いという。
「乗り手を回復するような能力とか……この辺りはグリフォンと大きく違う点だね」
第五師団の執務室で、団長であるロルフ・シュトライトは兵長たちに説明した。
「報告書が上がっているから各自確認してみてくれ」
その報告書とは、クロウたちが調査していた未確認飛行物体に関するもの。それによると、とある山の森林地帯にそれらしき幻獣が生息している可能性があるとのことだ。
「しかし、ペガサスですか……帝国ではとんと見ませんでしたが」
「そりゃそうだろ……だってペガサスって言やぁ……」
資料を見ながら、二人の兵長が顔を見合わせる。
「翼のある馬、だからね……」
その様子を見ながら、ロルフも苦笑いする。
ここで、グリフォンの生態について少し触れよう。
グリフォンは雑食である。基本的になんでも食べる。グラウネーベル島のグリフォンは魚などとって暮らしていた記録もある。
ただ、そんなグリフォンにも好物といえるものが存在している。それが『馬肉』だ。
「帝国内だと大体グリフォンに淘汰されて絶滅したものと思っていたよ。まぁその思い込みが、今回の発見を遅らせたわけだけど……」
「それで、どうしますか」
兵長の問いに、ロルフは考え込む。
はっきり言って、ロルフたちは空戦戦力に苦労していない。グリフォンがいれば事足りるのだ。それに生物としての性格が、どちらかといえば好戦的なグリフォンに対し、どちらかといえば温厚……というよりは臆病に近いとも言われている。戦闘行動には向かない可能性もある。
だが、今後の歪虚との戦いを見据えるならば、さらなる戦力拡充は必須だろう。それは帝国だけの話ではない。
「それに、空戦における覚醒者によらない補助能力というのは無視できない。やはり生息地を特定して保護する動きに持っていきたいところだね」
「仰る通りです。ではまたハンターに……」
「そうだね。依頼を出そう。僕たちが動くのはあんまりよくないだろうし……」
グリフォンライダーたちが動けばペガサスたちも警戒して逃げ去ってしまうかもしれない。そう考えたロルフはこの件をハンター達に任せることにした。
●
依頼を受けたハンターたちは、山の中を捜索していた。歪虚の出現報告があったこともあり、そのメンバーは覚醒者のみの小規模なものであったため、捜索は困難が予想されていた。
が、意外にも目的とする場所はすぐに見つかった。前入りしていたハンターたちが山の中をマッピングしており、その情報が生きた形だ。クロウの遭難が予想外のところで功を奏したといったところであろうか。
そこは山の一角にある高原のような場所だった。このように開けた場所であるにも関わらず、いままでグリフォンライダーによる哨戒で発見されたことが無い。そのことが、ここが特別な場所であることを印象付ける。
特に目を引くのは、中央部にある石像のようなもの。ペガサスを模したものだが、不思議と人工物には思えない。周囲には……きっと、ペガサスたちが供えたのであろう。手折られた花が無数にあった。きっと、これはペガサスの守り神のようなものなのだろう。
ふと、ハンターたちは身構えた。静かな草原に、獣の雄叫びが響いてきたからだ。
ハンターたちの見た報告書には、狼型歪虚に関するものも書かれていた。連携の類はとってこない、機動力はやや高いがそれだけの歪虚。だが、報告書にはその歪虚がどういう目的でこの辺りをうろついていたのか記述はなかった。
今にして思うと、この場所……この場所を見つけることが目的だったのかもしれない。そして、ハンターたちの後を追ってここまでやってきた。そう考えれば合点がいく。
すぐさまハンターたちは迎撃の態勢を整えた。広い草原だが、周囲にペガサスの姿は見えない。敵が攻撃してくるとしたらこの石像であろうことは間違いない。
このような静謐な空間で派手な戦いを繰り広げるのは躊躇われなくはない。が、重視すべきはどちらか、言うまでもないだろう。
リプレイ本文
●
突如襲いくる狼型の歪虚。
それに対し、各自が迎撃態勢を取る。敵の目的は何か、それは分からない。
分からないが、おそらくは……
「この像が、狙いだろうな。迷惑な客を連れ込んじまったか?」
「理由はまだわからないけど……見逃す理由はないよね」
銃架を立てるレイオス・アクアウォーカー(ka1990)とともに、十色 エニア(ka0370)が大鎌を構える。
(後をつけてきた? そうなら私たちの不始末ね)
「まぁ、あいつは大した敵じゃねーっすからそんなに苦労は……苦労は……」
交戦経験からそう判断する神楽(ka2032)だったが……狼の遠吠えのようなものが聞こえる。それに呼応するように似たような狼の遠吠えが……いくつも、いくつも聞こえてくる。その遠吠えが、敵がいかに多いかを教えていた。
「……前言撤回。結構きついかもしんないっす」
苦笑いを浮かべる神楽の横で、玉兎 小夜(ka6009)が剣を抜く。
「これは食らいつく顎。龍からは首を、勇士へは命を!」
斬撃は空間を超え、狼たちを切り裂く。次元斬だ。
「先に行くね」
初撃で敵の足を鈍らせた小夜は、そのまま敵陣へ突っ込んでいった。
「敵は全方位から迫ってくるか……ともあれ、前衛は分かれた方がいいな」
蒼と紅の瞳で周囲を見渡した南護 炎(ka6651)は剣を抜きながらも敵へ向かう。その身には焔のようなオーラを纏っていた。
「さて、私も……どれほどの敵が斬れるか楽しみですね」
南護に続きハンス・ラインフェルト(ka6750)も動き出す。
「ざくろが……」
「いや、敵の攻撃に専念してもらおう。範囲殲滅は機導師の方が得意なはずだ……安心しろ」
時音 ざくろ(ka1250)にそういって、地面に剣を突き立てるアウレール・V・ブラオラント(ka2531)。同時に、形成される不可視の境界。ディヴァインウィルだ。
「この先には一歩も通さない」
像の前に立ち、静かにそう告げるアウレール。戦闘はすでに開始されていた。
●
「全て弱ぼらしきは奸物ども、かくて郷遠し愚者のうずめきを叫ばん!」
向かってくる狼たちに対し、剣を上段に構える望を使用して接近していた小夜。そのまま秘剣たる無明を放つ。怪しく輝く刃はその切れ味をいかんなく発揮し、周囲の敵を斬り倒す。
「さぁ狼ども、首のプレゼントありがとぉ!」
斬られた仲間をものともせず、新たな狼たちが像へ向かってひた走る。斬った当人を迂回するでもなくまっすぐに。
「よぉし、即捨ててやるから大人しく斬られな!」
そのまま小夜は月桂を使用、周囲を再度まとめて切り払う。
最前線で数を減らすことを意識した小夜は、その殲滅力を以て敵をどんどん撃破していった。
俊敏さと鋭利さを兼ね備え戦う小夜に対し、南護はどこか静かだった。
小夜と同様に敵へ向かっていくと、剣心一如により精神を統一、呼吸を整える。小夜と違ったのは、像に向かうはずだった敵が、南護に向かっていった点だ。南護はソウルトーチを使用しており、これで敵を像に行かせまいと考えていた。
「俺の事に構うな、俺ごと刈れ」と、像を守る味方に告げていた南護。像を守るためなら自身の犠牲も厭わない。
その南護に、多数の狼が牙をむいた。その時、南護は静かに、息を吸った。
「俺の!!」
同時に、周囲を取り巻いていた狼たちが細切れにされる。
「制御不能な覚悟を見せてやる!!」
静から動へ、一瞬の転換。放たれた縦横無尽によって一挙に敵が殲滅される。
無論、これで終わりではない。新たな敵はすぐに迫ってくるが、南護は果敢に立ち向かっていく。
「……やはり優秀ですね。歪虚は……」
別方向ではそんなことを呟きながらハンスが剣を振るう。
「歪虚は血糊で刀の切れ味を損なわない。大変優秀な、様斬の対象ですね」
円舞を利用した縦横無尽によりハンスは周辺の敵を問答無用で斬り捨てる。周囲に動く敵はなくなった。
「この程度……? いや、そんなはずはありませんよね」
ヒーリングポーションを使わなければいけない傷どころか、かすり傷も負わないその状況にどこか落胆の表情を浮かべるハンス。だが……
「……そうですよね。さて、何時間斬りまくれるのか」
すぐに、新たな狼たちの姿が見えた。
「心が躍りますね」
うっすらと笑みを浮かべながら、ハンスは新たな敵に対し次元斬を使用した。
前衛の戦いを見ながら、後衛寄りのエニアも魔法のタイミングをうかがう。
「……そこ!」
不意のマジックアロー。狼の陰にいたスライムを貫く。やはり魔法攻撃の方がスライムには有効とみえる。一撃で敵を仕留めた。
(多少耐性があるみたいだけど、やはり雑魚ね。そこまで苦戦はしなさそう。だけど……)
接近してくる狼に鎌を振るうエニア。魔法で処理することも出来るが、スライム用にと考えると乱発も出来ない。
「終わりが見えないのって、少しずつ不安になってくるわね」
敵はいつになったらいなくなるのか。そもそも、敵がこれだけなのか。予想外の強敵がいたらどうするのか。そんなことを考えながらエニアは戦う。
「こうなってくると、後はどれだけ効率的にいけるかね」
射線を確認しつつ、敵の重なりを待ってエニアはライトニングボルトを使用。一直線に伸びる雷撃が敵をまとめて貫いた。
●
一方後衛、像の付近でも戦いが繰り広げられている。
「……敵の数が多いな」
石像の直掩として動く……いや、動かないアウレール。ディヴァインウィルによる防御を担当している。ディヴァインウィルを使用し続けるため能動的には動くことができないのだ。
(ディヴァインウィルも無限ではない。敵はどれぐらいいる? ……いや、考えるな)
頭によぎる不安をかき消すように、アウレールは剣を握る。境界に接する敵も今のところ2、3匹。前衛がうまく敵の数を減らしているのだ。
それに、石像の直掩がうまく前衛を抜けた敵を処理していた。
「くらえ必殺……デルタエンド!」
メイスで空中に光の三角を描くざくろ。そこから発せられたデルタレイで敵を撃破する。
「よし次……いかせないよ! 超機導パワーオン、弾け飛べっ!」
続いて、突進してくる狼と像の間に入ったざくろが攻勢防壁を使用。敵を弾き飛ばす。
「射線開けて!」
レイオスの頭上を飛んで行った狼を見ながら声を上げるざくろ。
「おっと、了解だ」
「ありがとう……拡散ヒートレイ!」
味方がどいた段階でまとめて焼き払う。
「おー、よく飛び良く焼ける、と……物量で押しつぶすにしても、もう少し質を良くしないとな」
手早くリロードしつつ呟くレイオス。
確かに敵の質は高くない。逸れたマシンガンの弾に当たっただけでも転倒しているような敵だ。弾幕を張れる武器は効果が高い。
たまに混じってくるスライムに関しては、物理的な攻撃よりもやはり魔法を使った方が効率的ではありそうだが……
(ソウルエッジを使って叩き斬ってもいいが、狼型と比べて遅く、数も比較すれば少ない、か……)
リロードを終えたマシンガンを再度構えるレイオス。そのまま銃撃を開始。
(エニアに任せて、狼型の数を減らす方に専念したほうがよさそうだな)
石像を挟んで逆側では神楽が迎撃。
「石像を攻撃に巻き込むことは無さそうっすけど……行かせないって考えると結構大変っすね……」
敵の数を見て辟易しながらも、神楽は矢を放つ。
「それに……射撃は苦手なんっすよ!」
そんなことを言いながらも、神楽の矢は的確に敵を射貫く。
ただ、レイオスと比べると敵の足が止められない。瞬間的な弾数の差が響いているか。
「っ! いかせねーっす!」
横を走り抜けていこうとする狼に対し、神楽はすぐさま武器を聖盾剣に持ち替え、切り裂く。
「どんだけ来るかわかんねーっすからスキルは温存したいんっすけどね!」
さらに走りこむ狼に対し射雷撃を使用。魔法の雷撃が敵をまとめて消し飛ばした。
●
「……ちっ、ここまでか」
舌打ちをするアウレール。作り上げられた境界が崩れ去る時がきた。
この時、運悪く狼が抜けてきた。だが、アウレールはこうなった時の対策も無論講じていた。
像に攻撃しようとした狼。だが、その攻撃がなぜかアウレールの方に向かう。ガウスジェイルだ。攻撃のベクトルを捻じ曲げ、強制的に自身へ引き寄せる。
さらに、アウレールは万夫不当の孤城を使用して反撃。そのまま狼を撃破する。
「大丈夫!?」
「あぁ、問題ない。それよりも……」
「うん、ここからはざくろに任せて! 超機導バリアー発動!」
様子を見て駆け付けたざくろはすぐさまアウレールと交代し、ディヴァインウィルを使用した。これでかなりの時間を持たせられるはずだ。
「よっし、交代したら手を貸してくれ!」
「了解した」
衝撃波で敵を切り払うレイオスは、アウレールがフォローに入るとすぐさま弾丸のリロードを行う。
「ディヴァインウィルも再展開完了……とはいえ敵多すぎっす!」
像の無事を確認した神楽は再度弓を構え、敵を狙い撃つ。
「足元! 気を付けて!」
声と同時に、神楽の足元に撃ち込まれるマジックアロー。そこには小型のスライムがいた。像から狼へと注意が向いていたため気づかなかったようだ。
「危ねぇ……助かったっす!」
「どういたしまして。気を抜かないでいきましょう!」
前衛でも戦いは続いている。
「そんな攻撃が通じるか!」
一瞬展開されたマテリアルの障壁で狼の攻撃を受け止めた南護。そのまま障壁が消えるとともに狼の首を掴み、地面にたたきつけ、止めとばかりに剣を突き立てる。
「次! 来なければこちらから行くぞ!」
ソウルトーチにより向かってきた敵が怯むほどの威圧感を見せる南護。そのままもう何度目かの縦横無尽を使用して敵を斬る。
「ねばねばは! 斬りづらい!」
小夜はスライムに刃を向けていた。斬りづらいのは確かだが、小夜の能力であれば大した障害にはならない。一瞬の間をおいて、刃はスライムを両断していた。
「首もないから! 楽しくない! やっぱり狼の方がいい!」
納得の理由を言いながら、次元斬で新たな敵を……敵の首を狩りに行く。首狩り兎とはよく言ったものだ。
「たまにはこういう持久戦があってもいい……現在の自分の実力を正しく判断できるようになりますからね」
そう呟くのはハンス。まだまだ余裕がある。そもそもハンスは自身の覚醒が切れるほどの戦闘になるのではと予想している。
いや、敵を斬りたいハンスにとって、それは予想というより願望だったかもしれない。ただ、彼にとって幸か不幸か、戦いはそこまで長くはならなそうだった。
●
「もう持たない……!」
ざくろが維持していたディヴァインウィルの効果も途切れる。
タイミングがいいのか悪いのか、魔力の壁に取り付いていた敵はいない。
「大丈夫、まだスリープクラウドが何度か使えるわ。それで対処する」
エニアがそう言って周囲を鼓舞する。ただし、この魔法は味方を巻き込むし、味方がいない状態で使用して魔法に対し抵抗されたら像を無防備な状態にさらすことになる。
(できる限り前で止めてもらいたいけど……)
「大丈夫だ。ここからは私も直掩につく。ガウスジェイルで何度か持たせられるはずだ」
そういってアウレールも手近な狼を倒して像の近くに立つ。
「とはいえ、もう一息っす!」
神楽の言う通りだった。周囲を見ると狼型が明らかにまばらとなっている。その代り、スライムの姿が目立つか。
「鈍足なスライムが残ってる感じだから、冷静に対処してけばもう像は問題ないっす」
最後の射雷撃でスライムを攻撃しながら神楽が言う。
「そういうことなら俺も出るか。守りは頼むぜ!」
ソウルエッジを使用しながらレイオスがそういって切り込みに行った。
「もう終わりか」
近くにいたスライムを斬った南護。周囲に敵影はなし。
「この程度ですか。物足りないと言えば、物足りませんね」
見ると、剣を納めるハンスの姿が。彼の周囲にも敵はいないようだ。
「後はスライムぐらいか。呆気ないものだな」
「逃げ出した敵もいないみたい。残念」
気付くと、別方向にいたはずの小夜が横にいた。逃げた敵を探しに周囲を回ってきたが、もう敵はいなかったそうだ。
「おーい、その辺敵がいないか見てみてくれ!」
「こっちはもう片付いたから大丈夫だよ!」
レイオスとざくろが2人に向かって、そう言いながら手を振っていた。
こうして、数分後、敵のすべてが殲滅されたことが確認された。
●
8人は、像の前に集まっていた。
「さて、この像は何なのか……」
「周囲の花を見ましたが、手折られた……というにはいささか切り口が粗い。恐らくはペガサスが口でちぎって持ってきているのでは?」
「となると、これはペガサスの神か、それとも墓標か何かといったところか?」
南護の疑問に対し、ハンスとレイオスがそれぞれ意見を述べる。
「では人工物……にしては生々しいと感じるが……」
「実は、生きてるのかも……と思ってシンクロしてみようとしたんっすけどね。ダメだったっす」
続いて、アウレールと神楽が話す。尤も、明確な答えを出せるものはいないのだが。
「……あ、あれ見て!」
ざくろがそういって頭上を指さす。そこには翼を大きく広げた馬……
「本当にいたのね。これが……ペガサス」
写真を取ったり触れたりしたい気持ちを抑えながら、エニアが呟く。今までどこにいたのだろうか。その口には一輪の花が咥えられていた。
降りてきたペガサスは、そのまま咥えた花を像の前に、捧げるかのように置いた。
「まだ、降りてくるよ」
小夜の言った通り、その1頭に続き、ペガサスがどんどん降りてきた。
間違いない。ここはペガサスにとって重要な場所なのだ。降り、花を供えていくペガサスを見ながら、ハンターたちは確信した。
そして……
飛び上がる前に、ハンター達に深く頭を下げていくペガサスたちから。
ハンターたちは強い感謝の気持ちを感じ取ったのだった。
突如襲いくる狼型の歪虚。
それに対し、各自が迎撃態勢を取る。敵の目的は何か、それは分からない。
分からないが、おそらくは……
「この像が、狙いだろうな。迷惑な客を連れ込んじまったか?」
「理由はまだわからないけど……見逃す理由はないよね」
銃架を立てるレイオス・アクアウォーカー(ka1990)とともに、十色 エニア(ka0370)が大鎌を構える。
(後をつけてきた? そうなら私たちの不始末ね)
「まぁ、あいつは大した敵じゃねーっすからそんなに苦労は……苦労は……」
交戦経験からそう判断する神楽(ka2032)だったが……狼の遠吠えのようなものが聞こえる。それに呼応するように似たような狼の遠吠えが……いくつも、いくつも聞こえてくる。その遠吠えが、敵がいかに多いかを教えていた。
「……前言撤回。結構きついかもしんないっす」
苦笑いを浮かべる神楽の横で、玉兎 小夜(ka6009)が剣を抜く。
「これは食らいつく顎。龍からは首を、勇士へは命を!」
斬撃は空間を超え、狼たちを切り裂く。次元斬だ。
「先に行くね」
初撃で敵の足を鈍らせた小夜は、そのまま敵陣へ突っ込んでいった。
「敵は全方位から迫ってくるか……ともあれ、前衛は分かれた方がいいな」
蒼と紅の瞳で周囲を見渡した南護 炎(ka6651)は剣を抜きながらも敵へ向かう。その身には焔のようなオーラを纏っていた。
「さて、私も……どれほどの敵が斬れるか楽しみですね」
南護に続きハンス・ラインフェルト(ka6750)も動き出す。
「ざくろが……」
「いや、敵の攻撃に専念してもらおう。範囲殲滅は機導師の方が得意なはずだ……安心しろ」
時音 ざくろ(ka1250)にそういって、地面に剣を突き立てるアウレール・V・ブラオラント(ka2531)。同時に、形成される不可視の境界。ディヴァインウィルだ。
「この先には一歩も通さない」
像の前に立ち、静かにそう告げるアウレール。戦闘はすでに開始されていた。
●
「全て弱ぼらしきは奸物ども、かくて郷遠し愚者のうずめきを叫ばん!」
向かってくる狼たちに対し、剣を上段に構える望を使用して接近していた小夜。そのまま秘剣たる無明を放つ。怪しく輝く刃はその切れ味をいかんなく発揮し、周囲の敵を斬り倒す。
「さぁ狼ども、首のプレゼントありがとぉ!」
斬られた仲間をものともせず、新たな狼たちが像へ向かってひた走る。斬った当人を迂回するでもなくまっすぐに。
「よぉし、即捨ててやるから大人しく斬られな!」
そのまま小夜は月桂を使用、周囲を再度まとめて切り払う。
最前線で数を減らすことを意識した小夜は、その殲滅力を以て敵をどんどん撃破していった。
俊敏さと鋭利さを兼ね備え戦う小夜に対し、南護はどこか静かだった。
小夜と同様に敵へ向かっていくと、剣心一如により精神を統一、呼吸を整える。小夜と違ったのは、像に向かうはずだった敵が、南護に向かっていった点だ。南護はソウルトーチを使用しており、これで敵を像に行かせまいと考えていた。
「俺の事に構うな、俺ごと刈れ」と、像を守る味方に告げていた南護。像を守るためなら自身の犠牲も厭わない。
その南護に、多数の狼が牙をむいた。その時、南護は静かに、息を吸った。
「俺の!!」
同時に、周囲を取り巻いていた狼たちが細切れにされる。
「制御不能な覚悟を見せてやる!!」
静から動へ、一瞬の転換。放たれた縦横無尽によって一挙に敵が殲滅される。
無論、これで終わりではない。新たな敵はすぐに迫ってくるが、南護は果敢に立ち向かっていく。
「……やはり優秀ですね。歪虚は……」
別方向ではそんなことを呟きながらハンスが剣を振るう。
「歪虚は血糊で刀の切れ味を損なわない。大変優秀な、様斬の対象ですね」
円舞を利用した縦横無尽によりハンスは周辺の敵を問答無用で斬り捨てる。周囲に動く敵はなくなった。
「この程度……? いや、そんなはずはありませんよね」
ヒーリングポーションを使わなければいけない傷どころか、かすり傷も負わないその状況にどこか落胆の表情を浮かべるハンス。だが……
「……そうですよね。さて、何時間斬りまくれるのか」
すぐに、新たな狼たちの姿が見えた。
「心が躍りますね」
うっすらと笑みを浮かべながら、ハンスは新たな敵に対し次元斬を使用した。
前衛の戦いを見ながら、後衛寄りのエニアも魔法のタイミングをうかがう。
「……そこ!」
不意のマジックアロー。狼の陰にいたスライムを貫く。やはり魔法攻撃の方がスライムには有効とみえる。一撃で敵を仕留めた。
(多少耐性があるみたいだけど、やはり雑魚ね。そこまで苦戦はしなさそう。だけど……)
接近してくる狼に鎌を振るうエニア。魔法で処理することも出来るが、スライム用にと考えると乱発も出来ない。
「終わりが見えないのって、少しずつ不安になってくるわね」
敵はいつになったらいなくなるのか。そもそも、敵がこれだけなのか。予想外の強敵がいたらどうするのか。そんなことを考えながらエニアは戦う。
「こうなってくると、後はどれだけ効率的にいけるかね」
射線を確認しつつ、敵の重なりを待ってエニアはライトニングボルトを使用。一直線に伸びる雷撃が敵をまとめて貫いた。
●
一方後衛、像の付近でも戦いが繰り広げられている。
「……敵の数が多いな」
石像の直掩として動く……いや、動かないアウレール。ディヴァインウィルによる防御を担当している。ディヴァインウィルを使用し続けるため能動的には動くことができないのだ。
(ディヴァインウィルも無限ではない。敵はどれぐらいいる? ……いや、考えるな)
頭によぎる不安をかき消すように、アウレールは剣を握る。境界に接する敵も今のところ2、3匹。前衛がうまく敵の数を減らしているのだ。
それに、石像の直掩がうまく前衛を抜けた敵を処理していた。
「くらえ必殺……デルタエンド!」
メイスで空中に光の三角を描くざくろ。そこから発せられたデルタレイで敵を撃破する。
「よし次……いかせないよ! 超機導パワーオン、弾け飛べっ!」
続いて、突進してくる狼と像の間に入ったざくろが攻勢防壁を使用。敵を弾き飛ばす。
「射線開けて!」
レイオスの頭上を飛んで行った狼を見ながら声を上げるざくろ。
「おっと、了解だ」
「ありがとう……拡散ヒートレイ!」
味方がどいた段階でまとめて焼き払う。
「おー、よく飛び良く焼ける、と……物量で押しつぶすにしても、もう少し質を良くしないとな」
手早くリロードしつつ呟くレイオス。
確かに敵の質は高くない。逸れたマシンガンの弾に当たっただけでも転倒しているような敵だ。弾幕を張れる武器は効果が高い。
たまに混じってくるスライムに関しては、物理的な攻撃よりもやはり魔法を使った方が効率的ではありそうだが……
(ソウルエッジを使って叩き斬ってもいいが、狼型と比べて遅く、数も比較すれば少ない、か……)
リロードを終えたマシンガンを再度構えるレイオス。そのまま銃撃を開始。
(エニアに任せて、狼型の数を減らす方に専念したほうがよさそうだな)
石像を挟んで逆側では神楽が迎撃。
「石像を攻撃に巻き込むことは無さそうっすけど……行かせないって考えると結構大変っすね……」
敵の数を見て辟易しながらも、神楽は矢を放つ。
「それに……射撃は苦手なんっすよ!」
そんなことを言いながらも、神楽の矢は的確に敵を射貫く。
ただ、レイオスと比べると敵の足が止められない。瞬間的な弾数の差が響いているか。
「っ! いかせねーっす!」
横を走り抜けていこうとする狼に対し、神楽はすぐさま武器を聖盾剣に持ち替え、切り裂く。
「どんだけ来るかわかんねーっすからスキルは温存したいんっすけどね!」
さらに走りこむ狼に対し射雷撃を使用。魔法の雷撃が敵をまとめて消し飛ばした。
●
「……ちっ、ここまでか」
舌打ちをするアウレール。作り上げられた境界が崩れ去る時がきた。
この時、運悪く狼が抜けてきた。だが、アウレールはこうなった時の対策も無論講じていた。
像に攻撃しようとした狼。だが、その攻撃がなぜかアウレールの方に向かう。ガウスジェイルだ。攻撃のベクトルを捻じ曲げ、強制的に自身へ引き寄せる。
さらに、アウレールは万夫不当の孤城を使用して反撃。そのまま狼を撃破する。
「大丈夫!?」
「あぁ、問題ない。それよりも……」
「うん、ここからはざくろに任せて! 超機導バリアー発動!」
様子を見て駆け付けたざくろはすぐさまアウレールと交代し、ディヴァインウィルを使用した。これでかなりの時間を持たせられるはずだ。
「よっし、交代したら手を貸してくれ!」
「了解した」
衝撃波で敵を切り払うレイオスは、アウレールがフォローに入るとすぐさま弾丸のリロードを行う。
「ディヴァインウィルも再展開完了……とはいえ敵多すぎっす!」
像の無事を確認した神楽は再度弓を構え、敵を狙い撃つ。
「足元! 気を付けて!」
声と同時に、神楽の足元に撃ち込まれるマジックアロー。そこには小型のスライムがいた。像から狼へと注意が向いていたため気づかなかったようだ。
「危ねぇ……助かったっす!」
「どういたしまして。気を抜かないでいきましょう!」
前衛でも戦いは続いている。
「そんな攻撃が通じるか!」
一瞬展開されたマテリアルの障壁で狼の攻撃を受け止めた南護。そのまま障壁が消えるとともに狼の首を掴み、地面にたたきつけ、止めとばかりに剣を突き立てる。
「次! 来なければこちらから行くぞ!」
ソウルトーチにより向かってきた敵が怯むほどの威圧感を見せる南護。そのままもう何度目かの縦横無尽を使用して敵を斬る。
「ねばねばは! 斬りづらい!」
小夜はスライムに刃を向けていた。斬りづらいのは確かだが、小夜の能力であれば大した障害にはならない。一瞬の間をおいて、刃はスライムを両断していた。
「首もないから! 楽しくない! やっぱり狼の方がいい!」
納得の理由を言いながら、次元斬で新たな敵を……敵の首を狩りに行く。首狩り兎とはよく言ったものだ。
「たまにはこういう持久戦があってもいい……現在の自分の実力を正しく判断できるようになりますからね」
そう呟くのはハンス。まだまだ余裕がある。そもそもハンスは自身の覚醒が切れるほどの戦闘になるのではと予想している。
いや、敵を斬りたいハンスにとって、それは予想というより願望だったかもしれない。ただ、彼にとって幸か不幸か、戦いはそこまで長くはならなそうだった。
●
「もう持たない……!」
ざくろが維持していたディヴァインウィルの効果も途切れる。
タイミングがいいのか悪いのか、魔力の壁に取り付いていた敵はいない。
「大丈夫、まだスリープクラウドが何度か使えるわ。それで対処する」
エニアがそう言って周囲を鼓舞する。ただし、この魔法は味方を巻き込むし、味方がいない状態で使用して魔法に対し抵抗されたら像を無防備な状態にさらすことになる。
(できる限り前で止めてもらいたいけど……)
「大丈夫だ。ここからは私も直掩につく。ガウスジェイルで何度か持たせられるはずだ」
そういってアウレールも手近な狼を倒して像の近くに立つ。
「とはいえ、もう一息っす!」
神楽の言う通りだった。周囲を見ると狼型が明らかにまばらとなっている。その代り、スライムの姿が目立つか。
「鈍足なスライムが残ってる感じだから、冷静に対処してけばもう像は問題ないっす」
最後の射雷撃でスライムを攻撃しながら神楽が言う。
「そういうことなら俺も出るか。守りは頼むぜ!」
ソウルエッジを使用しながらレイオスがそういって切り込みに行った。
「もう終わりか」
近くにいたスライムを斬った南護。周囲に敵影はなし。
「この程度ですか。物足りないと言えば、物足りませんね」
見ると、剣を納めるハンスの姿が。彼の周囲にも敵はいないようだ。
「後はスライムぐらいか。呆気ないものだな」
「逃げ出した敵もいないみたい。残念」
気付くと、別方向にいたはずの小夜が横にいた。逃げた敵を探しに周囲を回ってきたが、もう敵はいなかったそうだ。
「おーい、その辺敵がいないか見てみてくれ!」
「こっちはもう片付いたから大丈夫だよ!」
レイオスとざくろが2人に向かって、そう言いながら手を振っていた。
こうして、数分後、敵のすべてが殲滅されたことが確認された。
●
8人は、像の前に集まっていた。
「さて、この像は何なのか……」
「周囲の花を見ましたが、手折られた……というにはいささか切り口が粗い。恐らくはペガサスが口でちぎって持ってきているのでは?」
「となると、これはペガサスの神か、それとも墓標か何かといったところか?」
南護の疑問に対し、ハンスとレイオスがそれぞれ意見を述べる。
「では人工物……にしては生々しいと感じるが……」
「実は、生きてるのかも……と思ってシンクロしてみようとしたんっすけどね。ダメだったっす」
続いて、アウレールと神楽が話す。尤も、明確な答えを出せるものはいないのだが。
「……あ、あれ見て!」
ざくろがそういって頭上を指さす。そこには翼を大きく広げた馬……
「本当にいたのね。これが……ペガサス」
写真を取ったり触れたりしたい気持ちを抑えながら、エニアが呟く。今までどこにいたのだろうか。その口には一輪の花が咥えられていた。
降りてきたペガサスは、そのまま咥えた花を像の前に、捧げるかのように置いた。
「まだ、降りてくるよ」
小夜の言った通り、その1頭に続き、ペガサスがどんどん降りてきた。
間違いない。ここはペガサスにとって重要な場所なのだ。降り、花を供えていくペガサスを見ながら、ハンターたちは確信した。
そして……
飛び上がる前に、ハンター達に深く頭を下げていくペガサスたちから。
ハンターたちは強い感謝の気持ちを感じ取ったのだった。
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【相談卓】巻き込み注意? 十色・T・ エニア(ka0370) 人間(リアルブルー)|15才|男性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2018/07/12 00:13:25 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/07/09 20:47:17 |