ゲスト
(ka0000)
【港騒】空の彼方のスケルツォ
マスター:樹シロカ

- シナリオ形態
- シリーズ(続編)
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,300
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/08/04 22:00
- 完成日
- 2018/08/21 02:33
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●虜囚の告白
ハンターたちは改めて互いの顔を見合わせる。
ヴァネッサ(kz0030)は『少し考える』と言って、部屋を出て行った。
別室では4人の男達が憔悴しきっているだろう。
事の始まりはおよそ4年前、南方から狂気の眷属が現れたときのこと。
男たちは元同盟陸軍の軍人で、輸送部隊に所属していた。
戦線を支えるため、あらゆる物資を前線に届けていたのだ。
だがある日、運悪く、火事場泥棒を狙った海賊に捕らえられる。
その場で殺されはしなかったが、下働きとして使われることになった。
そんなある日、海賊の陸上アジトを同盟軍が襲撃し、彼らも救い出される……はずだった。
誰が真の黒幕なのか、今でもわからない。
彼らはその日から別の場所に監禁され、今度は薬品の調合を命じられるようになった。
隊長はジェオルジの農村出身で、植物に詳しい。
彼の見立てでは、クリムゾンウェスト産の香りの強い植物に、何かを混ぜているのだろうということだった。
それが『何か』は次第に明らかになった。
彼らを捕らえた誰かは、薬を飲んだ者が『どうなるか』を実験しているようだった。
そして、彼ら全員が一堂に揃うことはなくなった。
逃亡を防ぐため、ひとりずつ隔離しているのだ。
この辺りが海賊との違いを思わせたが、それを認めるのは恐ろしかった。
誰を信じればいいのかすらわからない日々。
ただ、彼らの隊長はいつも言っていたという。
『生き残るんだ。何があっても』
にわかには信じがたい話だった。だが嘘をつく理由もないだろう。
ヴァネッサはそれでも――否、だからこそ、軍との接触は黒幕当人に情報を流す恐れがあると主張した。
だが彼らの証言を裏付けできるのは軍の関係者だけだ。
暫くして戻ってきたヴァネッサは、例の薬をハンターたちに託したのだった。
●二転三転
ハンターたちはメリンダ・ドナーティ(kz0041)のもとを尋ねた。
なるべく内密にと頼んで、捕えた4人と隊長の名前を照会してもらったのだ。
「名前と所属を確認しました。分隊長含め、全員が4年前に戦死扱いとなっています」
息を呑むハンターたちの様子に、メリンダが静かに話しかける。
「4人は、先日の写真の方々ですね?」
軍には記録が残っているだろう。ここは頷くしかない。
「残る分隊長のマネッティ軍曹、ええ、戦死後は曹長ですが。この方が今どこにいらっしゃるか、ご存知ですか?」
問われて、ハンターたちは互いに顔を見合わせる。
「崑崙基地にいらっしゃる可能性が高いのです」
メリンダの表情は、いつになく険しかった。
メリンダはその日の夜遅く、『金色のカモメ亭』へハンターを呼んだ。
「すみません、こんな時間に。なるべく早く行動する必要があるものですから」
黒幕は既に何か行動を起こしているかもしれない。
様々な情報を握るマネッティの命が危ないのだ。
メリンダはある依頼を受けてほしいと、ハンターに切り出した。
それはある同盟商人の護衛として、崑崙基地へ向かうという内容だった。
「商人は我々の関係者です。マネッティ曹長の確保にご協力いたします。それともうひとつ」
メリンダが、覚えのある香りの薬を入れた包みを差し出した。
「崑崙基地でこの薬の分析を依頼していただきたいのです。……あの人がまだあの基地にいればですが……」
メリンダは珍しく、歯切れの悪い口調で語るのだった。
●空の彼方へ
崑崙基地へ降り立ったハンターを出迎えたのは、ネイビーブルーの制服を着こんだ強化人間のアスタリスク(kz0234)だった。
「お待ちしておりました。これは、お久しぶりですフィンツィさん」
人懐こい笑顔に、おかしなところはない。
同行していた商人――正確には会頭秘書であるフィンツィが、アスタリスクの言葉に穏やかに頷く。
「今回は私共の積み荷の件で、ご迷惑をおかけします」
「いえ。こちらこそご足労頂き申し訳ありません。さっそく参りましょう」
ハンターたちは何気ない様子で、彼の後についていった。
ハンターたちは改めて互いの顔を見合わせる。
ヴァネッサ(kz0030)は『少し考える』と言って、部屋を出て行った。
別室では4人の男達が憔悴しきっているだろう。
事の始まりはおよそ4年前、南方から狂気の眷属が現れたときのこと。
男たちは元同盟陸軍の軍人で、輸送部隊に所属していた。
戦線を支えるため、あらゆる物資を前線に届けていたのだ。
だがある日、運悪く、火事場泥棒を狙った海賊に捕らえられる。
その場で殺されはしなかったが、下働きとして使われることになった。
そんなある日、海賊の陸上アジトを同盟軍が襲撃し、彼らも救い出される……はずだった。
誰が真の黒幕なのか、今でもわからない。
彼らはその日から別の場所に監禁され、今度は薬品の調合を命じられるようになった。
隊長はジェオルジの農村出身で、植物に詳しい。
彼の見立てでは、クリムゾンウェスト産の香りの強い植物に、何かを混ぜているのだろうということだった。
それが『何か』は次第に明らかになった。
彼らを捕らえた誰かは、薬を飲んだ者が『どうなるか』を実験しているようだった。
そして、彼ら全員が一堂に揃うことはなくなった。
逃亡を防ぐため、ひとりずつ隔離しているのだ。
この辺りが海賊との違いを思わせたが、それを認めるのは恐ろしかった。
誰を信じればいいのかすらわからない日々。
ただ、彼らの隊長はいつも言っていたという。
『生き残るんだ。何があっても』
にわかには信じがたい話だった。だが嘘をつく理由もないだろう。
ヴァネッサはそれでも――否、だからこそ、軍との接触は黒幕当人に情報を流す恐れがあると主張した。
だが彼らの証言を裏付けできるのは軍の関係者だけだ。
暫くして戻ってきたヴァネッサは、例の薬をハンターたちに託したのだった。
●二転三転
ハンターたちはメリンダ・ドナーティ(kz0041)のもとを尋ねた。
なるべく内密にと頼んで、捕えた4人と隊長の名前を照会してもらったのだ。
「名前と所属を確認しました。分隊長含め、全員が4年前に戦死扱いとなっています」
息を呑むハンターたちの様子に、メリンダが静かに話しかける。
「4人は、先日の写真の方々ですね?」
軍には記録が残っているだろう。ここは頷くしかない。
「残る分隊長のマネッティ軍曹、ええ、戦死後は曹長ですが。この方が今どこにいらっしゃるか、ご存知ですか?」
問われて、ハンターたちは互いに顔を見合わせる。
「崑崙基地にいらっしゃる可能性が高いのです」
メリンダの表情は、いつになく険しかった。
メリンダはその日の夜遅く、『金色のカモメ亭』へハンターを呼んだ。
「すみません、こんな時間に。なるべく早く行動する必要があるものですから」
黒幕は既に何か行動を起こしているかもしれない。
様々な情報を握るマネッティの命が危ないのだ。
メリンダはある依頼を受けてほしいと、ハンターに切り出した。
それはある同盟商人の護衛として、崑崙基地へ向かうという内容だった。
「商人は我々の関係者です。マネッティ曹長の確保にご協力いたします。それともうひとつ」
メリンダが、覚えのある香りの薬を入れた包みを差し出した。
「崑崙基地でこの薬の分析を依頼していただきたいのです。……あの人がまだあの基地にいればですが……」
メリンダは珍しく、歯切れの悪い口調で語るのだった。
●空の彼方へ
崑崙基地へ降り立ったハンターを出迎えたのは、ネイビーブルーの制服を着こんだ強化人間のアスタリスク(kz0234)だった。
「お待ちしておりました。これは、お久しぶりですフィンツィさん」
人懐こい笑顔に、おかしなところはない。
同行していた商人――正確には会頭秘書であるフィンツィが、アスタリスクの言葉に穏やかに頷く。
「今回は私共の積み荷の件で、ご迷惑をおかけします」
「いえ。こちらこそご足労頂き申し訳ありません。さっそく参りましょう」
ハンターたちは何気ない様子で、彼の後についていった。
リプレイ本文
●
男の呻きに、パトリシア=K=ポラリス(ka5996)は優しく微笑んだ。
「ありがと♪ お薬飲んダラ、パティが危ないと思って止めてくれたのネ?」
男は目を逸らし、仲間にバツの悪そうな表情を見せた。
ヴァネッサが男に尋ねる。
「興奮剤って何に使う物なんだ?」
「きつい戦闘にもビビらず、テンション上げて突っ込めって、支給されるんだと」
それ以上のことは彼らにも分からなかった。
マチルダ・スカルラッティ(ka4172)がさらに尋ねる。
「隊長さんって今どこにいるの」
「わからない」
男は力なく首を振った。
こうして話をしてしまった以上、彼らには今度こそもう何もできないのだ。
ヴァネッサは少し外の空気を吸ってくる、といって部屋を出て行った。
ヴァージル・チェンバレン(ka1989)がその後を追う。
「ダウンタウンのヌシも、流石にお手上げかな」
ヴァネッサは軽く肩をすくめた。
「だったら使えるものは何でも使うべきだろう。軍でもだ」
「駄目だ。どの辺りまで噛んでるのか、こっちにはわからないからね」
「それは同意だ。更に言えば、ここまでやらかした以上、その黒幕だって動き出すだろう」
ヴァージルの表情からはいつもの緩さが消えていた。
「赤と青が関わった、中々に大掛かりな組織らしいじゃないか。だとしたら軍をうまく使ったほうが効率もいいと思わないか」
「使えるのかい?」
ヴァネッサが試すようにヴァージルを眺める。
「当てはある」
ハンターたちはメリンダに5人の身元照会を依頼した。
そして呼び出された『黄金のカモメ亭』で、またも話は意外な方向へ転がったのだ。
トルステン=L=ユピテル(ka3946)は思わず天井を仰いだ。
「あー、急展開すぎて正直頭がついてけてねーんだケド」
件の隊長は、なぜか崑崙基地にいるというではないか。
「我が軍のことでご迷惑をおかけして本当に申し訳ありません。ですが……」
メリンダが躊躇ったのちに、低い声で囁く。
「私自身、内部の誰を信用していいのか、確信がありません。ハンターの皆様のほうが信頼できるのです」
それから薬を差し出し、依頼を切り出した。覚えのある薬の匂いに、ハンター達が顔を見合わせる。
「……これが何か、ご存じなのですね」
「その前にメリンダさん、ひとついい?」
マチルダがメリンダを遮る。
「その依頼を成功させて、マネッティ曹長を確保できたら私たちで預かっても良い? 写真の人たちの事でちょっと用があるから」
「ええ。寧ろ曹長には当面の間、軍の手の届かない場所に居てもらうほうが安全でしょう」
メリンダの表情が曇る。内心では忸怩たるものがあるのだろう。
ハンター達は出発前に、ヴァネッサのもとへ立ち寄った。
「メリンダさんが、確実ではないけど分隊長の情報と救出の機会をくれたよ」
マチルダの言葉に、ヴァネッサは渋い顔になる。
トルステンが詰め寄った。
「姐さんさ、もうちっと警戒度下げてほしいんだケド。リアルブルーってなると、姐さんの管轄から出ちまうだろ?」
それにヴァネッサには、ダウンタウンの治安維持以外に手を伸ばす理由も暇もないはずだ。
「メリンダはこうやって協力してくれてっし、本音も結構ボロボロ言ってっし。ひとまずは信用してイイんじゃねーか」
「……わかった。じゃあ薬を間違えないように持っていってくれ。崑崙ならこの二つが本当に同じものかわかるんだろ?」
ヴァネッサの同意を得て、改めて捕らえられた元軍人達に面会する。
「パティたち、隊長さんお助けできる様に精一杯頑張るからネ。お約束。ダカラもうちょっと、ここで隠れんぼダヨ」
パトリシアが最初に口を開いた男を慰めると同時に、マチルダが尋ねた。
「あのね、何か初対面の私達でも曹長にわかる様な、合図なんかがあれば教えて欲しいな」
「……下手な方法だと俺達が拷問されて何か漏らしたとか、却って疑心暗鬼にさせちまいそうだな。お嬢ちゃんたちなら軍関係じゃないとわかるだろうが……」
男達は暫く考え込む。
「そうだ。『4年前、倉庫の鍵をなくしたのはマルコ』で行こう」
リーダー格の男の顔に微笑が閃く。と同時に、3人のうち一番若い男が顔を引きつらせた。どうやら彼がマルコらしい。
「ちょっと……!」
「なあに、時効だ時効。それにこのネタなら俺達以外誰にもわからんだろう」
そこで男は表情を改め、「隊長をよろしく頼む」とハンター達に頭を下げた。
●
商人というには鋭い雰囲気を持つ男、フィンツィとともに崑崙基地に到着すると、アスタリスクが待っていた。
「崑崙基地へようこそ。皆様の案内役を務めますアスタリスク中尉です」
自己紹介もそこそこに、互いに状況を確認する。
パトリシアは人懐こい笑みを浮かべ、フィンツィに話しかけた。
「えっと、フィンツィさんは何を売る商人さんカナ?」
フィンツィは穏やかな微笑で応じ、パトリシアの質問に特に嫌がる様子も見せず答える。
「我がレオーニ商会は主に装飾用の貴金属を扱っております。蒼界の希少金属は貴重な素材ですし、我々の世界の装飾品は、蒼界ではアンティーク風としてお喜びいただいております」
とはいえ、フィンツィは会頭秘書のような役割で、トラブル解決や契約関係の事務を担当しているという。
そういう理由なら、商人らしくないのも一応説明はつく。パトリシアはメリンダの紹介ということで、今回についてはこの男を信用していいと考えた。
一方、マチルダは少し遅れてついて歩き、アスタリスクを密かに観察する。
(崑崙の、強化人間……信用していいのかな)
考え始めればきりがない。
役犬原 昶(ka0268)はこの状況を極めてシンプルにとらえていた。
「難しい事はわかんねぇけど警戒しとけってことだろ? いつもの依頼と同じじゃねぇか」
それよりも、とアスタリスクに話しかける。
「コンテナ付近の監視カメラの位置、それから隊長がどんな奴かわかる映像があったら確認してぇんだが」
「もちろんです。このままオペレーションルームへ立ち寄りましょう」
アスタリスクは全員をモニターの並んだ会議室のような場所へ案内した。
各自のモニターに映し出された男の姿は、おそらく初見でも見間違うことはないだろう。
昶やヴァージルと張るぐらいに大柄で筋肉質で、肩を少し超える長さの赤い髪を無造作に束ねている。前後を用心棒風の男達に挟まれながら、コンテナに消えていった。
「けっこう元気そう、よかった!」
ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)がにっこり笑った。
「このまま無事に助け出して、この陰謀の手がかりをしっかりゲットしちゃうんだからっ。ニンジャの力を惜しみなく使うのです!」
実際のところ、正面から突っ込むのはあまり良い方法とは思えなかった。
コンテナの内部は確認できないため、こちらの動き次第で曹長の身に危険が及ぶ可能性がある。
この間モニターを睨んでいたトルステンが、顔を上げる。
「あー、ところでこのコンテナなんだケド。倉庫の持主が気になってしょーがねーんだが?」
メリンダが調べた限りでは、倉庫を使っている商人の身元はしっかりしていた。
「こちらの調査でも、持主に問題は見当たりませんでした。何か不具合が見つかれば、私どもで強制捜査も可能だったのですが」
アスタリスクが申し訳なさそうな表情になる。
「あーすまん、そーいうコトじゃなくて。ってことは、商人の使ってるヤツに問題があるってことか?」
パトリシアが首を傾げた。
「用心棒さん達ハ覚醒者? ブルーに長く居られないハズの覚醒者さんが護衛……軍のヒトか、ハンター?」
「軍が絡んでるならスパイみたいのもいるんじゃねぇか?」
昶は『協力者』のフィンツィが部屋にいないことを確認して、軽く付け加えた。
「内通者がいたらしいからな」
ヴァージルも頷く。
それなりの実績がない商人では、軍艦であるサルヴァトーレ・ロッソに乗ることすらできない。
そして転移装置を使えるハンター以外は、ロッソでしか崑崙とクリムゾンウェストを行き来できないのだ。
パトリシアはふと浮かんだ『誰も知らない別の手段』の可能性を、頭から振り払う。
その疑念は、アスタリスクの言葉で否定された。
「都度ハンターを雇用しているのでしょう。適当な理由をつけてマネッティ曹長を監視するよう依頼されているのかもしれません」
それらの可能性を加え、突入計画をまとめ上げる。
最後にマチルダが薬の包みをアスタリスクに示す。
「これが何なのか、この二つが同じものなのか。メリンダさんから中尉に渡して分析してもらうようお願いされたの」
「わかりました。責任を持ってお預かりします」
アスタリスクは大事そうに包みを受け取った。
●
広い部屋に整然と巨大なコンテナが並んでいる。
ロッソに積み込む荷物は、この集積場に集められているらしい。
そのひとつに、アスタリスクが2人の揃いのコートを着た男達を連れて近づいていった。
目的のコンテナの前にいた男が、何やらトランシーバーに囁くと、すぐにコンテナから女が1人、顔を出した。
「失礼いたします。定期チェックにご協力をお願いできますか」
「ええ、勿論ですわ。少々お待ちください」
愛想笑いを浮かべた女が引っ込み、書類を持ってまた現れる。
「ルンルン忍法ニンジャセンサー!」
その様子を物陰から確認し、ルンルンは生命感知でコンテナを探った。
ロッソに積み込む荷物のチェックは厳しい。つまりネズミなどの余計な反応はない物と思っていいだろう。
「反応は3つです! 一か所に固まってるから、このひとつが曹長さんかな」
別の方向から探っていたパトリシアが、やはり3つの反応を確認した。
用意してもらった見取り図に確認できた内容を書き込む。1、5、7、11時の方向にそれぞれ一つずつある扉のうち、反応があったのは6時の辺り。
ハンター達は移動を開始する。
アスタリスクがいる1時の方向と、同じ辺にある5時の扉から見えないよう、ヴァージルが11時の扉にとりついた。
トルステンはフィンツィと共に、その5時の扉が見える場所に身を潜める。
(この男、しょーじきヤな匂いすんだケド、今は言ってらんねーしな)
実際、フィンツィは『商人』だけあってこの集積場のことをよく知っていた。この待機ポイントも教えてくれた。
(だから余計に怪しいっつーの)
トルステンは自分の魔法が届く範囲であることを改めて確認し、合図を待ちつつコンテナを睨んだ。
ヴァージルが片手を上げて、前後に振った。ピッキングで11時の扉を解錠できた合図だ。
マチルダは扉を守るように背中を向け、周囲を警戒する。まだアスタリスクの『調査』は続いていた。
ヴァージルはルンルンとともに一気に踏み込む。パトリシアは7時の扉に『地縛符』を仕掛け、後に続いた。
内部は薄暗く、奥の明かりは荷物にさえぎられている。これは好都合だった。
ルンルンとヴァージルは軽く頷きあうと、二手に分かれて壁歩きで壁際を移動し、一気に近づく。
部屋の奥にいたのは、写真で見た通りの曹長と、2人の男だった。
マチルダが叫ぶ。
「えーと『4年前、倉庫の鍵をなくしたのはマルコ』! マネッティさん、伏せて!」
その瞬間、倉庫内に眩い光が炸裂。男の悲鳴が響き渡った。パトリシアの『五色光符陣』の光が、見張りの目を焼いたのだ。
残る1人が奇声を上げて構えた銃を撃った。
アスタリスク達を少し離れたところから監視するように立っていた用心棒たちが、一斉に動いた。
目の前の扉に1人が飛び込み、残る2人も続く。
だがそのうちの1人は、派手にすっ転んでしまった。
「はっはー! 3人も狭いコンテナに入ってもしょうがねぇだろ? 俺と遊んでもらうぜ!」
昶が『ファントムハンド』で捕らえた用心棒を、一気に引き寄せる。
男は抵抗するが、昶の『震撃』を食らってあっという間に伸びてしまった。
「おいおい、それでもハンターか。もうちょっと鍛錬したほうがいいと思うぜ」
昶は苦笑いを浮かべて、その男を縛り上げた。
外に残っていたもう1人は、異常事態を察して別の扉に向かっていた。
が、トルステンの展開した『ディヴァインウィル』の見えない壁に阻まれてつんのめる。
騒動はもう隠しようがない状態だった。
「いったい何が起きたんですか?」
アスタリスクが険しい目で女を見据える。その瞬間、女はぱっと身を翻し、逃げ出した。
「チッ、逃げられるかよ」
トルステンが身構えたところで、フィンツィが肩を押さえる。
「そこまで。覚醒者でない場合、命の危険があります」
「あ?」
振り向いた時にはフィンツィは飛び出し、怪我をさせることもなく女を組み敷いた。
「だから、どう見ても商人じゃねぇっつーの」
トルステンはぼやきつつ、用心棒を『セイクリッドフラッシュ』で無力化した。元々そのつもりだ。
「しっかり事情を訊くコトも目的だしな」
コンテナの内部は外より一層混沌としていた。
飛び込んできた用心棒の姿に、マチルダがすぐさまマジックアローで足止めを図る。
明るい場所から飛び込んできた敵は、コンテナの内部をよく見分けられず、物音を立ててひっくり返る。
銃を構えた男は、即座に迫ってきたヴァージルの姿にますます興奮したように、幾度も撃ち続ける。
ヴァージルは頬を掠める銃撃をものともせず飛び込み、自らの身体で男の銃口をマネッティから逸らした。
そこに天井に移動していたルンルンが飛び降りる。
「モードSINOBI発動……SAY-BYE!」
男の銃を刀で弾き飛ばし、マネッティを守るように割り込む。
そこでヴァージルと顔を見合わせた。
「えっと……覚醒者じゃないです、ね?」
「ああ。そのようだな」
ヴァージルが苦虫を噛み潰したような表情になる。勝てるはずがないのに銃を乱射する男は、覚えのある匂いを発していたのだ。
●
全員を確保し、コンテナの内部を改める。
「お、いかにもなモノ確保っと!」
昶が木箱の中に収められた、金属製の箱を取り出した。中には布に包まれた瓶が並んでいた。
座り込んでいたマネッティが大きく息を吐く。
「……中身は、リアルブルーの軍で廃棄処分になった興奮剤。副作用が酷いそうです」
ふと気が付くと、フィンツィがマネッティを見下ろしていた。
「それを知ったから、捕えられたという訳ですか」
「はい。このコンテナの持主である商人は何も知りませんが、リアルブルーの闇商人とつるんでいたのが外にいた女です。そして……ネスタ大佐」
フィンツィを見上げるその目は、相手の正体を知っているようだった。
「成程。薬で軍人を強化するとは愚かな発想ですな。一般人の正気を奪っても、覚醒者には太刀打ちできるはずがない」
ヴァージルが縛り上げた男を見つめるフィンツィの目は、憐れみを帯びているようにも見えた。
<了>
男の呻きに、パトリシア=K=ポラリス(ka5996)は優しく微笑んだ。
「ありがと♪ お薬飲んダラ、パティが危ないと思って止めてくれたのネ?」
男は目を逸らし、仲間にバツの悪そうな表情を見せた。
ヴァネッサが男に尋ねる。
「興奮剤って何に使う物なんだ?」
「きつい戦闘にもビビらず、テンション上げて突っ込めって、支給されるんだと」
それ以上のことは彼らにも分からなかった。
マチルダ・スカルラッティ(ka4172)がさらに尋ねる。
「隊長さんって今どこにいるの」
「わからない」
男は力なく首を振った。
こうして話をしてしまった以上、彼らには今度こそもう何もできないのだ。
ヴァネッサは少し外の空気を吸ってくる、といって部屋を出て行った。
ヴァージル・チェンバレン(ka1989)がその後を追う。
「ダウンタウンのヌシも、流石にお手上げかな」
ヴァネッサは軽く肩をすくめた。
「だったら使えるものは何でも使うべきだろう。軍でもだ」
「駄目だ。どの辺りまで噛んでるのか、こっちにはわからないからね」
「それは同意だ。更に言えば、ここまでやらかした以上、その黒幕だって動き出すだろう」
ヴァージルの表情からはいつもの緩さが消えていた。
「赤と青が関わった、中々に大掛かりな組織らしいじゃないか。だとしたら軍をうまく使ったほうが効率もいいと思わないか」
「使えるのかい?」
ヴァネッサが試すようにヴァージルを眺める。
「当てはある」
ハンターたちはメリンダに5人の身元照会を依頼した。
そして呼び出された『黄金のカモメ亭』で、またも話は意外な方向へ転がったのだ。
トルステン=L=ユピテル(ka3946)は思わず天井を仰いだ。
「あー、急展開すぎて正直頭がついてけてねーんだケド」
件の隊長は、なぜか崑崙基地にいるというではないか。
「我が軍のことでご迷惑をおかけして本当に申し訳ありません。ですが……」
メリンダが躊躇ったのちに、低い声で囁く。
「私自身、内部の誰を信用していいのか、確信がありません。ハンターの皆様のほうが信頼できるのです」
それから薬を差し出し、依頼を切り出した。覚えのある薬の匂いに、ハンター達が顔を見合わせる。
「……これが何か、ご存じなのですね」
「その前にメリンダさん、ひとついい?」
マチルダがメリンダを遮る。
「その依頼を成功させて、マネッティ曹長を確保できたら私たちで預かっても良い? 写真の人たちの事でちょっと用があるから」
「ええ。寧ろ曹長には当面の間、軍の手の届かない場所に居てもらうほうが安全でしょう」
メリンダの表情が曇る。内心では忸怩たるものがあるのだろう。
ハンター達は出発前に、ヴァネッサのもとへ立ち寄った。
「メリンダさんが、確実ではないけど分隊長の情報と救出の機会をくれたよ」
マチルダの言葉に、ヴァネッサは渋い顔になる。
トルステンが詰め寄った。
「姐さんさ、もうちっと警戒度下げてほしいんだケド。リアルブルーってなると、姐さんの管轄から出ちまうだろ?」
それにヴァネッサには、ダウンタウンの治安維持以外に手を伸ばす理由も暇もないはずだ。
「メリンダはこうやって協力してくれてっし、本音も結構ボロボロ言ってっし。ひとまずは信用してイイんじゃねーか」
「……わかった。じゃあ薬を間違えないように持っていってくれ。崑崙ならこの二つが本当に同じものかわかるんだろ?」
ヴァネッサの同意を得て、改めて捕らえられた元軍人達に面会する。
「パティたち、隊長さんお助けできる様に精一杯頑張るからネ。お約束。ダカラもうちょっと、ここで隠れんぼダヨ」
パトリシアが最初に口を開いた男を慰めると同時に、マチルダが尋ねた。
「あのね、何か初対面の私達でも曹長にわかる様な、合図なんかがあれば教えて欲しいな」
「……下手な方法だと俺達が拷問されて何か漏らしたとか、却って疑心暗鬼にさせちまいそうだな。お嬢ちゃんたちなら軍関係じゃないとわかるだろうが……」
男達は暫く考え込む。
「そうだ。『4年前、倉庫の鍵をなくしたのはマルコ』で行こう」
リーダー格の男の顔に微笑が閃く。と同時に、3人のうち一番若い男が顔を引きつらせた。どうやら彼がマルコらしい。
「ちょっと……!」
「なあに、時効だ時効。それにこのネタなら俺達以外誰にもわからんだろう」
そこで男は表情を改め、「隊長をよろしく頼む」とハンター達に頭を下げた。
●
商人というには鋭い雰囲気を持つ男、フィンツィとともに崑崙基地に到着すると、アスタリスクが待っていた。
「崑崙基地へようこそ。皆様の案内役を務めますアスタリスク中尉です」
自己紹介もそこそこに、互いに状況を確認する。
パトリシアは人懐こい笑みを浮かべ、フィンツィに話しかけた。
「えっと、フィンツィさんは何を売る商人さんカナ?」
フィンツィは穏やかな微笑で応じ、パトリシアの質問に特に嫌がる様子も見せず答える。
「我がレオーニ商会は主に装飾用の貴金属を扱っております。蒼界の希少金属は貴重な素材ですし、我々の世界の装飾品は、蒼界ではアンティーク風としてお喜びいただいております」
とはいえ、フィンツィは会頭秘書のような役割で、トラブル解決や契約関係の事務を担当しているという。
そういう理由なら、商人らしくないのも一応説明はつく。パトリシアはメリンダの紹介ということで、今回についてはこの男を信用していいと考えた。
一方、マチルダは少し遅れてついて歩き、アスタリスクを密かに観察する。
(崑崙の、強化人間……信用していいのかな)
考え始めればきりがない。
役犬原 昶(ka0268)はこの状況を極めてシンプルにとらえていた。
「難しい事はわかんねぇけど警戒しとけってことだろ? いつもの依頼と同じじゃねぇか」
それよりも、とアスタリスクに話しかける。
「コンテナ付近の監視カメラの位置、それから隊長がどんな奴かわかる映像があったら確認してぇんだが」
「もちろんです。このままオペレーションルームへ立ち寄りましょう」
アスタリスクは全員をモニターの並んだ会議室のような場所へ案内した。
各自のモニターに映し出された男の姿は、おそらく初見でも見間違うことはないだろう。
昶やヴァージルと張るぐらいに大柄で筋肉質で、肩を少し超える長さの赤い髪を無造作に束ねている。前後を用心棒風の男達に挟まれながら、コンテナに消えていった。
「けっこう元気そう、よかった!」
ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)がにっこり笑った。
「このまま無事に助け出して、この陰謀の手がかりをしっかりゲットしちゃうんだからっ。ニンジャの力を惜しみなく使うのです!」
実際のところ、正面から突っ込むのはあまり良い方法とは思えなかった。
コンテナの内部は確認できないため、こちらの動き次第で曹長の身に危険が及ぶ可能性がある。
この間モニターを睨んでいたトルステンが、顔を上げる。
「あー、ところでこのコンテナなんだケド。倉庫の持主が気になってしょーがねーんだが?」
メリンダが調べた限りでは、倉庫を使っている商人の身元はしっかりしていた。
「こちらの調査でも、持主に問題は見当たりませんでした。何か不具合が見つかれば、私どもで強制捜査も可能だったのですが」
アスタリスクが申し訳なさそうな表情になる。
「あーすまん、そーいうコトじゃなくて。ってことは、商人の使ってるヤツに問題があるってことか?」
パトリシアが首を傾げた。
「用心棒さん達ハ覚醒者? ブルーに長く居られないハズの覚醒者さんが護衛……軍のヒトか、ハンター?」
「軍が絡んでるならスパイみたいのもいるんじゃねぇか?」
昶は『協力者』のフィンツィが部屋にいないことを確認して、軽く付け加えた。
「内通者がいたらしいからな」
ヴァージルも頷く。
それなりの実績がない商人では、軍艦であるサルヴァトーレ・ロッソに乗ることすらできない。
そして転移装置を使えるハンター以外は、ロッソでしか崑崙とクリムゾンウェストを行き来できないのだ。
パトリシアはふと浮かんだ『誰も知らない別の手段』の可能性を、頭から振り払う。
その疑念は、アスタリスクの言葉で否定された。
「都度ハンターを雇用しているのでしょう。適当な理由をつけてマネッティ曹長を監視するよう依頼されているのかもしれません」
それらの可能性を加え、突入計画をまとめ上げる。
最後にマチルダが薬の包みをアスタリスクに示す。
「これが何なのか、この二つが同じものなのか。メリンダさんから中尉に渡して分析してもらうようお願いされたの」
「わかりました。責任を持ってお預かりします」
アスタリスクは大事そうに包みを受け取った。
●
広い部屋に整然と巨大なコンテナが並んでいる。
ロッソに積み込む荷物は、この集積場に集められているらしい。
そのひとつに、アスタリスクが2人の揃いのコートを着た男達を連れて近づいていった。
目的のコンテナの前にいた男が、何やらトランシーバーに囁くと、すぐにコンテナから女が1人、顔を出した。
「失礼いたします。定期チェックにご協力をお願いできますか」
「ええ、勿論ですわ。少々お待ちください」
愛想笑いを浮かべた女が引っ込み、書類を持ってまた現れる。
「ルンルン忍法ニンジャセンサー!」
その様子を物陰から確認し、ルンルンは生命感知でコンテナを探った。
ロッソに積み込む荷物のチェックは厳しい。つまりネズミなどの余計な反応はない物と思っていいだろう。
「反応は3つです! 一か所に固まってるから、このひとつが曹長さんかな」
別の方向から探っていたパトリシアが、やはり3つの反応を確認した。
用意してもらった見取り図に確認できた内容を書き込む。1、5、7、11時の方向にそれぞれ一つずつある扉のうち、反応があったのは6時の辺り。
ハンター達は移動を開始する。
アスタリスクがいる1時の方向と、同じ辺にある5時の扉から見えないよう、ヴァージルが11時の扉にとりついた。
トルステンはフィンツィと共に、その5時の扉が見える場所に身を潜める。
(この男、しょーじきヤな匂いすんだケド、今は言ってらんねーしな)
実際、フィンツィは『商人』だけあってこの集積場のことをよく知っていた。この待機ポイントも教えてくれた。
(だから余計に怪しいっつーの)
トルステンは自分の魔法が届く範囲であることを改めて確認し、合図を待ちつつコンテナを睨んだ。
ヴァージルが片手を上げて、前後に振った。ピッキングで11時の扉を解錠できた合図だ。
マチルダは扉を守るように背中を向け、周囲を警戒する。まだアスタリスクの『調査』は続いていた。
ヴァージルはルンルンとともに一気に踏み込む。パトリシアは7時の扉に『地縛符』を仕掛け、後に続いた。
内部は薄暗く、奥の明かりは荷物にさえぎられている。これは好都合だった。
ルンルンとヴァージルは軽く頷きあうと、二手に分かれて壁歩きで壁際を移動し、一気に近づく。
部屋の奥にいたのは、写真で見た通りの曹長と、2人の男だった。
マチルダが叫ぶ。
「えーと『4年前、倉庫の鍵をなくしたのはマルコ』! マネッティさん、伏せて!」
その瞬間、倉庫内に眩い光が炸裂。男の悲鳴が響き渡った。パトリシアの『五色光符陣』の光が、見張りの目を焼いたのだ。
残る1人が奇声を上げて構えた銃を撃った。
アスタリスク達を少し離れたところから監視するように立っていた用心棒たちが、一斉に動いた。
目の前の扉に1人が飛び込み、残る2人も続く。
だがそのうちの1人は、派手にすっ転んでしまった。
「はっはー! 3人も狭いコンテナに入ってもしょうがねぇだろ? 俺と遊んでもらうぜ!」
昶が『ファントムハンド』で捕らえた用心棒を、一気に引き寄せる。
男は抵抗するが、昶の『震撃』を食らってあっという間に伸びてしまった。
「おいおい、それでもハンターか。もうちょっと鍛錬したほうがいいと思うぜ」
昶は苦笑いを浮かべて、その男を縛り上げた。
外に残っていたもう1人は、異常事態を察して別の扉に向かっていた。
が、トルステンの展開した『ディヴァインウィル』の見えない壁に阻まれてつんのめる。
騒動はもう隠しようがない状態だった。
「いったい何が起きたんですか?」
アスタリスクが険しい目で女を見据える。その瞬間、女はぱっと身を翻し、逃げ出した。
「チッ、逃げられるかよ」
トルステンが身構えたところで、フィンツィが肩を押さえる。
「そこまで。覚醒者でない場合、命の危険があります」
「あ?」
振り向いた時にはフィンツィは飛び出し、怪我をさせることもなく女を組み敷いた。
「だから、どう見ても商人じゃねぇっつーの」
トルステンはぼやきつつ、用心棒を『セイクリッドフラッシュ』で無力化した。元々そのつもりだ。
「しっかり事情を訊くコトも目的だしな」
コンテナの内部は外より一層混沌としていた。
飛び込んできた用心棒の姿に、マチルダがすぐさまマジックアローで足止めを図る。
明るい場所から飛び込んできた敵は、コンテナの内部をよく見分けられず、物音を立ててひっくり返る。
銃を構えた男は、即座に迫ってきたヴァージルの姿にますます興奮したように、幾度も撃ち続ける。
ヴァージルは頬を掠める銃撃をものともせず飛び込み、自らの身体で男の銃口をマネッティから逸らした。
そこに天井に移動していたルンルンが飛び降りる。
「モードSINOBI発動……SAY-BYE!」
男の銃を刀で弾き飛ばし、マネッティを守るように割り込む。
そこでヴァージルと顔を見合わせた。
「えっと……覚醒者じゃないです、ね?」
「ああ。そのようだな」
ヴァージルが苦虫を噛み潰したような表情になる。勝てるはずがないのに銃を乱射する男は、覚えのある匂いを発していたのだ。
●
全員を確保し、コンテナの内部を改める。
「お、いかにもなモノ確保っと!」
昶が木箱の中に収められた、金属製の箱を取り出した。中には布に包まれた瓶が並んでいた。
座り込んでいたマネッティが大きく息を吐く。
「……中身は、リアルブルーの軍で廃棄処分になった興奮剤。副作用が酷いそうです」
ふと気が付くと、フィンツィがマネッティを見下ろしていた。
「それを知ったから、捕えられたという訳ですか」
「はい。このコンテナの持主である商人は何も知りませんが、リアルブルーの闇商人とつるんでいたのが外にいた女です。そして……ネスタ大佐」
フィンツィを見上げるその目は、相手の正体を知っているようだった。
「成程。薬で軍人を強化するとは愚かな発想ですな。一般人の正気を奪っても、覚醒者には太刀打ちできるはずがない」
ヴァージルが縛り上げた男を見つめるフィンツィの目は、憐れみを帯びているようにも見えた。
<了>
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/08/02 22:56:33 |
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曹長奪還作戦(相談卓) トルステン=L=ユピテル(ka3946) 人間(リアルブルー)|18才|男性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2018/08/04 18:10:35 |
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質問ダヨー パトリシア=K=ポラリス(ka5996) 人間(リアルブルー)|19才|女性|符術師(カードマスター) |
最終発言 2018/08/04 15:01:10 |