ゲスト
(ka0000)
【空蒼】正義の味方になりたい僕ら
マスター:ゆくなが

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/08/28 19:00
- 完成日
- 2018/09/06 10:06
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●疾走
ハンターたちは走っていた。
東京の西側のある街にVOIDが発生し、人を襲っているという通報を受けたからだ。
依頼の内容は「VOIDの退治と、もし民間人が巻き込まれているのならその保護」である。
現場にたどり着くまでのもどかしい時間。
焦燥。まだ見ぬ敵への高揚感。
それらがない交ぜになって心の中に吹き荒れる。
あの角を曲がれば、通報のあった場所だ。
ハンターたちは勢いを殺すことなく、武器を抜き放ち、角を曲がり切った。
●失速
金属の打撃音が響き渡る。
何度も何度も。執拗に、執拗に。
角を曲がり切ったハンターたちが見たものは、金属バットを振り下ろしている中年の男だった。
そして、バットの打撃を受けて、萎れるように地面に倒れているVOIDだった。
中年の男は歯を食いしばり、汗を辺りに撒き散らしながらVOIDを殴打する。
そして、ついにVOIDが力尽きて塵になり、金属バットを向ける対象がいなくなったところで、男は、ようやくハンターたちに気が付いた。
「ああ……あんたたちハンターか……遅かったな」
唇を痙攣させるような笑みを浮かべて、男が言う。
「VOIDは俺が……俺たちが倒したんだ!!」
男は、この様を見よというように、両腕を広げた。
そこには、惨憺たる戦闘の爪痕があった。側面を削り取られたビル。穴の空いた道路。ひび割れた歩道。切断された信号機。折れた街灯。
倒れたVOIDの体は残らない、その代わりに地面に落ちているのは、人間の死体だった。
すぐにハンターたちは奇妙なことに気が付いた。その死体は敵に向かって前のめりに倒れている。つまり逃げていたところを殺されたわけではないようなのだ。
「そりゃそうさ!」
ハンターの疑問に答えるように、ハイなテンションで男が言う。
「俺たちは正義の覚醒者になれるアプリをインストールした! そして、戦って……VOIDどもをぶっ殺してやったんだ! 見てくれよ! このアプリがあれば俺でも戦えるんだ! 暴走する強化人間とやらに頼る必要もない! ……初めての戦闘だったから膨大な犠牲が出ちまったが、これで証明された! 俺たちは戦える! 覚醒者のように正義の味方になれる!!」
男は笑いながら、そしてVOIDを何度も殴りつけたためにひしゃげた金属バットを何度も地面に叩きつけながら宣った。
男が言っているのは最近話題になっている、イクシード・アプリのことだろう。
しかしだからと言って、このような自体になると誰が予想したか。
アプリで力を得られると言っても、所詮は戦闘訓練も受けていない民間人。それがVOIDと戦った結果がこれだった。
苦い思いを抱えつつ、ハンターたちは生存者を探すことにした。
真っ赤な血がアスファルトに流れて行く。
まだ血は固まっていない。もし、もっと早く到着していたら……そんな想像が脳裏をよぎった。
生存者はどこにもいなかった。この戦いで死んだのは18人。生き残ったあの男以外、全員死亡していた。
しかたない、この男を保護してオフィスに戻ろう、とハンターたちが決めた時、視界の隅でむくりと動くものがあった。
ふと、生存者かと希望が心に差し込むが、肌が泡立つような感覚で即座にそれは否定された。
「もしかして、生きている奴がいるのか?」
男が近付こうとするが、すぐにハンターが止めた。
「……な、なんだ、あれは!?」
男は驚愕の声を上げる。
むくりと動いたのは、頭を無くした人体だった。
それに呼応するように、死んだ人間たちの中から次々と死体が立ち上がってくるではないか。
それは生存者では決してない。あの傷を見れば、出血量を見れば、即座に命に関わっているとわかる。
いや、それ以上に、彼らからは負のマテリアルの気配がしていた。
「どういうことだ? あいつらは死んで……でも生き返って……? でも、でも、どうしてあいつらから、VOIDと同じような嫌な感じがするんだ!?」
錯乱する男をかばうようにハンターたちが陣を組む。
「俺たちはあのアプリで正義の味方になったはずだったんだ。それなのに、どうしてあんなゾンビみたいなものにならなくちゃいけないんだよ……どうして、どうして!?」
男は持っていた金属バットを取り落とした。
カラン──という場違いな軽やかな音だけが戦場に鳴った。
ハンターたちは走っていた。
東京の西側のある街にVOIDが発生し、人を襲っているという通報を受けたからだ。
依頼の内容は「VOIDの退治と、もし民間人が巻き込まれているのならその保護」である。
現場にたどり着くまでのもどかしい時間。
焦燥。まだ見ぬ敵への高揚感。
それらがない交ぜになって心の中に吹き荒れる。
あの角を曲がれば、通報のあった場所だ。
ハンターたちは勢いを殺すことなく、武器を抜き放ち、角を曲がり切った。
●失速
金属の打撃音が響き渡る。
何度も何度も。執拗に、執拗に。
角を曲がり切ったハンターたちが見たものは、金属バットを振り下ろしている中年の男だった。
そして、バットの打撃を受けて、萎れるように地面に倒れているVOIDだった。
中年の男は歯を食いしばり、汗を辺りに撒き散らしながらVOIDを殴打する。
そして、ついにVOIDが力尽きて塵になり、金属バットを向ける対象がいなくなったところで、男は、ようやくハンターたちに気が付いた。
「ああ……あんたたちハンターか……遅かったな」
唇を痙攣させるような笑みを浮かべて、男が言う。
「VOIDは俺が……俺たちが倒したんだ!!」
男は、この様を見よというように、両腕を広げた。
そこには、惨憺たる戦闘の爪痕があった。側面を削り取られたビル。穴の空いた道路。ひび割れた歩道。切断された信号機。折れた街灯。
倒れたVOIDの体は残らない、その代わりに地面に落ちているのは、人間の死体だった。
すぐにハンターたちは奇妙なことに気が付いた。その死体は敵に向かって前のめりに倒れている。つまり逃げていたところを殺されたわけではないようなのだ。
「そりゃそうさ!」
ハンターの疑問に答えるように、ハイなテンションで男が言う。
「俺たちは正義の覚醒者になれるアプリをインストールした! そして、戦って……VOIDどもをぶっ殺してやったんだ! 見てくれよ! このアプリがあれば俺でも戦えるんだ! 暴走する強化人間とやらに頼る必要もない! ……初めての戦闘だったから膨大な犠牲が出ちまったが、これで証明された! 俺たちは戦える! 覚醒者のように正義の味方になれる!!」
男は笑いながら、そしてVOIDを何度も殴りつけたためにひしゃげた金属バットを何度も地面に叩きつけながら宣った。
男が言っているのは最近話題になっている、イクシード・アプリのことだろう。
しかしだからと言って、このような自体になると誰が予想したか。
アプリで力を得られると言っても、所詮は戦闘訓練も受けていない民間人。それがVOIDと戦った結果がこれだった。
苦い思いを抱えつつ、ハンターたちは生存者を探すことにした。
真っ赤な血がアスファルトに流れて行く。
まだ血は固まっていない。もし、もっと早く到着していたら……そんな想像が脳裏をよぎった。
生存者はどこにもいなかった。この戦いで死んだのは18人。生き残ったあの男以外、全員死亡していた。
しかたない、この男を保護してオフィスに戻ろう、とハンターたちが決めた時、視界の隅でむくりと動くものがあった。
ふと、生存者かと希望が心に差し込むが、肌が泡立つような感覚で即座にそれは否定された。
「もしかして、生きている奴がいるのか?」
男が近付こうとするが、すぐにハンターが止めた。
「……な、なんだ、あれは!?」
男は驚愕の声を上げる。
むくりと動いたのは、頭を無くした人体だった。
それに呼応するように、死んだ人間たちの中から次々と死体が立ち上がってくるではないか。
それは生存者では決してない。あの傷を見れば、出血量を見れば、即座に命に関わっているとわかる。
いや、それ以上に、彼らからは負のマテリアルの気配がしていた。
「どういうことだ? あいつらは死んで……でも生き返って……? でも、でも、どうしてあいつらから、VOIDと同じような嫌な感じがするんだ!?」
錯乱する男をかばうようにハンターたちが陣を組む。
「俺たちはあのアプリで正義の味方になったはずだったんだ。それなのに、どうしてあんなゾンビみたいなものにならなくちゃいけないんだよ……どうして、どうして!?」
男は持っていた金属バットを取り落とした。
カラン──という場違いな軽やかな音だけが戦場に鳴った。
リプレイ本文
●
荒い呼吸。乱打する心臓。吹き出る汗。
男の精神は混沌の中へ突き落とされる。
ケイ(ka4032)はそんな男の混乱を見て取り、穏やかな笑顔と、優しい口調で男に声をかける。
「おーけー、大丈夫、落ち着けとは言わないけど深呼吸して」
男は視線を歪虚からケイへと移す。
「先ずはバットを拾いましょう」
ケイが言葉を続ける。
男は言われた通り、数回深呼吸して、バットを拾った。
確信はない。けれど、こんな状況にあっても穏やかな態度を崩さないケイの振る舞いには、従うべきだ、と男は思ったのだ。
「その上で一緒に数歩下がって……そう、その位置よ」
ケイは男を導くように一緒に数歩下がる。
その付近には莉(ka7291)がいて、銃を構え、敵を見据えていた。
「ここで私たちを守ってほしいのよ。これだけの惨状だもの、敵が目の前からしか来ないとは限らないわ。側面や背後から来たら、私や彼女はひとたまりもない……とはいえ、私たちも目の前の敵で手一杯」
そこで、一旦を区切り、ケイは続く言葉を力強く言った。
「だから貴方が頼りなの。私の命、預けておくから。お願いねニューヒーロー」
「……俺が、ヒーロー?」
「……あなたがあれになったら、撃つしかない。……死なないで」
莉が静かに、男に告げた。
「私たちも少しくらい出番が欲しい。今後の為に手本を見せよう」
すでに、敵から男を守るようにしているアウレール・V・ブラオラント(ka2531)も言葉を継ぐ。
同時にアウレールは考えた。
──好戦的になっているのは見れば明らか、強引に止めても聞くまい。
──なら、形だけでも参戦させるようにして、暴走を止めなくてはならない。
そう、男の精神状態は尋常のものではない。
ケイと莉、そして男を敵から遮るようにして、深守・H・大樹(ka7084)がアースウォールを設置する。
「最終防衛ラインの目安」
大樹が今作った土壁を指して言う。
「僕が突破されたら彼女たちを護って。彼女たちも接近されると弱くてね」
「わ、わかった。正義の味方の覚醒者が言うことなら、必要なことなんだよな?」
男はバットを強く握って、構えた。
──正義の味方、か。
その言葉を背中に受けて、アウレールは思った。
──世界にはいつだって救いを求める人がいて。
──そんな人たちを助けたいと願う人がいて。
──英雄とか救世主とか、そんな風に呼ばれる。
けれど彼らは知っているはずだ。
全て守ろうとする程に、皆を救おうとする度に、零れる幸せがあることを。掬えぬ命があることを。時には選んで殺しさえする因果な存在だということを。
覚醒により、左頬に赤い幾何学模様が浮かび、アウレールの周囲の空間が陽炎のように揺らめいていた。
──そんなモノに、
──本当になりたいと言うのか。
そんな問いを、背後の、力を手にしたばかりの男は知らない。
一層、アウレールのマテリアルが揺らめく。
ソウルトーチによる注視の篝火だ。
歪虚6体の視線がアウレールに集束される。
VOIDを失った戦場は、かくしてやってきたハンターと、歪虚を迎え入れたのだった。
●
「もう少し早く到着出来てさえいれば……!」
レオライザー(ka6937)が言う。彼はそれが悔しくてならないのだ。
アウレールに惹きつけられた敵の背後に回り込むようにジェットブーツで加速するレオライザー。
狙うのはパイプ椅子を盾のように扱う歪虚だ。
「行くぞ! ライザァァ、スラッシュ!」
勢いのあるかけ声とともに、レオライザーが敵を斬りつける。
「本当に悔しい……! でも何より赦せないのは、人々の気持ちに付け込み、あんな力を配る歪虚のやり方だ……!」
レオライザーと同じ敵に狙いを定めたクラン・クィールス(ka6605)も、ソウルエッジで魔法威力を上乗せした剣で斬りかかる。
──生き残る為に、戦える力というのは必要だ。
──今のリアルブルーの環境でそれを否定は出来ない。
──だが……。
しかし、そこから先の思考を、クランは切り替えた。
──いや、今は敵を倒そう。
──あの男が変な気を起こさないうちにな。
パイプ椅子の歪虚は積極的に前へ出て仲間を守っているようにも見えた。
──まずは、パイプ椅子、続いて、投擲武器持ちが厄介といったところか。
クランは巧みに戦場を駆け、パイプ椅子と包丁を持った歪虚が一直線になるような位置へ来た。
「なら、一気に貫く……!」
刺突一閃、直線上の敵を串刺しにした。
近接武器を持っている敵はアウレールに接近し、投擲攻撃が可能なものは凶器を投げつけている。
アースウォールに遮られ、戦場が見渡せない位置にいる男には、ただ音だけが、戦闘の凄まじさを伝えていた。
そして、後方にいる莉は敵の側面に回り込む。狙うのは投擲武器を持っているモノだ。
前衛集団から外れたところに、カラトリーを大量に持っている歪虚がいた。
「……敵は、撃つ」
莉はマテリアルの込められた弾丸を使用し、一気に体力を削っていく。
アースウォールは視界を遮るのに十分な幅と高さを持っている。
射撃をする上では、視線の確保が欠かせない。
ケイが使用する攻撃スキル、ハウンドバレットも変則的な弾道を描くとはいえ、壁の向こうにいる敵を狙撃することはできなかった。
だからケイは、見える位置にいる、カラトリーを持つ歪虚を狙撃することにした。
撃ち出された弾丸は、通常では考えられない動きで、敵を2回貫く。
──ケイさんたちがうまくやってくれたから、生き残った男の人は大丈夫そうだね。
大樹がアースウォールの向こうが騒がしくないことを確認して、安堵して思った。
「それじゃあ、僕も攻撃に移るとしますか」
大樹は集中する。
「敵は多いことだし、まとめて攻撃することにしよう」
マテリアルで編み上げられるのは、魔法の矢。
それは、殲滅の矢として輝く軌跡を残すのだった。
●
アウレールにはあらゆる攻撃が殺到している。
それらを躱し、あるいは巧みに武器で捌きながら、アウレールも攻撃に転ずる。
狙うのはやはり、パイプ椅子を持っている歪虚。
一太刀、胴を斬りつけ、もう一閃はパイプ椅子にいなされながらも、敵の頭を斬りとった。
パイプ椅子が、アウレールの攻撃が終わったとみて、武器を振り上げた。
「まだ、終わってはいない──!」
それは、相互に極限まで同化した無拍一調子の三閃。アルファにしてオメガ、即ち二刀より後に出でて共に至る理外の神剣。
──至聖三剣『聖霊』。
それはオーラをまとった攻撃となり、視認できる直線上にいる全てを対象とする。
その苛烈な攻撃はパイプ椅子と、その背後にいた包丁の歪虚に命中した。
だが、武器を振り抜いたアウレールへ、1本の包丁が飛来したのだった。
「させない!」
レオライザーは、即座に防御障壁を展開する。
それにより、いくらか勢いが減衰したものの、投げられた包丁は深々と、アウレールの肩に突き刺さった。
「邪魔だな……!」
クランが、パイプ椅子ごと、包丁の歪虚を刺突一閃で貫いた。
パイプ椅子を盾にして歪虚はクランの攻撃を防ごうとするも、その直前に大樹のマジックアローが飛んできてその対応をしたために防御が遅れた。
クランの一撃で、ついパイプ椅子の歪虚が塵になって消える。
レオライザーが足からマテリアルのジェットを噴出させ、包丁を持っている歪虚へ迫って行く。
しかしこの時、歪虚はソウルトーチの効果を振り払いつつあった。
包丁を持っているモノもそのひとりだった。
敵はレオライザーの攻撃を、体を回転させて躱して、その勢いを乗せた鋭い投擲を彼に放つ。
包丁がレオライザーの太ももに突き立った。
「オレが傷つくことは構わない……!」
レオライザーは刺さった包丁を抜いて、それでも凛々しく背筋を伸ばす。
罪のない人間だったモノたちへの攻撃は、レオライザーには辛いものだった。
彼らだって、歪虚になりたくてなったわけではない。
「せめて、何かを傷つける前に、終わらせる……!」
再び歪虚がレオライザーに包丁を投げつける。
レオライザーはグローブでその攻撃をはじき返した。
「これ以上、傷つけさせはしない……!」
レオライザーは涙を隠して戦い抜かねばならない。傷ついても倒れることは許されない。
「とどめの──ライザァァ、スラッシュ!!」
高速の斬撃は、歪虚の体を両断した。
それきり、包丁の歪虚は動かなくなり、ずるりと両断された体を地面に落下させて、消滅したのだった。
「後は──、」
クランが次の標的に目を向ける。
残る投擲攻撃持ちはカラトリーを装備した歪虚のみだ。
「おまえだ──!」
しかし、駆け出すクランに鋭い突きが放たれた。
折れた街灯を槍のように扱う歪虚の一撃だった。
すかさず、レオライザーが防御障壁を展開するも、鋭い街灯の先は障壁を粉々に砕いて、クランの脇腹に直撃した。
「今は、構っている余裕はない」
覚醒により、前髪の1房が黒く染まった向こうから見えるクランの青色の瞳が、鋭く敵を射抜いた。
再び突き出される街灯を、今度こそ剣で打ち払い、クランとレオライザーはカラトリーを武器とする歪虚へ駆けて行く。
街灯を振るう歪虚はなおもクランを追いかけようとしたが、それは再度発動されたアウレールのソウルトーチが許さなかった。
「相手は私だ。邪魔はさせぬ」
繰り出される二刀流と至聖三剣『聖霊』は、群がる敵を引き裂いた。
●
莉の強弾と、ケイのハウンドバレット、そして大樹のマジックアローがすでにカラトリーを持った歪虚を疲弊させていた。
そこに、クランとレオライザーの攻撃が合わされば、敵はひとたまりもない。
また、ケイは妨害射撃で攻撃を阻害し、敵は狙いが定まらない。
殺到するハンターたちの攻撃。
それに翻弄される敵にとどめを刺したのは、ケイの弾丸だった。
「この弾丸、そう簡単には避けられないわよ?」
ケイは戦場の中にあっても、笑みを絶やさない。
「さあ、眠りなさいな。あなたたちの時間は、もう終わっているのよ」
弾丸は通常では考えられない変則的な軌道を描いて、2回敵を貫いた。
胸と腕に穴を開けられ、歪虚は持っていたカラトリーを落として、力なく地面に倒れこむ。
そして、吹き抜けた風にのって体は塵となって消えていった。
「残るは3体だね」
大樹が言う。
後は、アウレールに群がっている鉄パイプ、折れた街灯、折れた信号機を持った歪虚3体だった。
「援護は任せて」
莉が素早くリロードし、より良い射撃スポットへ移動する。暗灰色のワインピースがひらひら揺れる。手にした拳銃は漆黒で、暗く冷たい艶を放っている。
銃声。
飛び出した弾丸は街灯を操る敵に命中する。
「終わりになるまで、撃ち続けるだけ」
続けざまの銃声。音の波が戦場を震わせる。
大樹は戦闘の序盤、パイプ椅子と投擲攻撃をしてくる敵を集中的に狙っていたが、それ以外の敵を注意していないわけではなかった。
常に最適な優先順位を決めて、マジックアローを放つ。
これによって、近接攻撃をする敵と対峙していたアウレールを見事に補佐していた。
「でも、もう敵の数が少ないから、あんまり深いことは考えなくてもいいのかな? まあ、敵が倒れるまでが戦闘だし、油断するつもりなんてさらさらないけどね」
容赦のない魔法が降り注ぐ。
アウレールもまた、2振りの武器で、敵を斬りつけていく。
3撃目の至聖三剣『聖霊』で、ついに2体の敵が消滅した。
「それじゃ、最後は僕がもらうよ」
集中し、紡がれる魔法の矢。
残った信号機を振り回す歪虚はその輝く矢に貫かれ、ついに消滅した。
「よし。これで戦闘終了、だね」
大樹の言う通り、敵の影はもうどこにもなかった。
●
「勝った……俺たちは勝ったんだ! 正義の味方の勝利だ!!」
男は、ハンターたちが勝利したこと、そして自分もそれに関われたらしいことを喜んだ。
「そうね、ありがと」
ケイは手短に礼を言った。
「……少し私の話を聴くがいい。いや、聴け」
喜ぶ男に、アウレールが声をかける。
男は、アウレールの声音が真剣だったから、姿勢を正した。
「今のお前は力に酔っているに過ぎない」
アウレールは語る。
「抑々正義の味方など、なろうとしてなるものではない。何故戦うのか、何の為に力が必要なのか答えられるか」
力について。正義について。その味方のあり方について。
「目的無き力など爆弾と変わらぬ。その上で尚、こんな役割を担う覚悟があるというなら、止めはしない……茨の道だとは言っておくぞ」
「俺たちは……ハンターは、正義の味方なんかじゃない」
クランも男に向けて言葉を紡ぐ。
「各々が、戦いたい理由を胸に力を振るっているだけ。それはきっと自分勝手で……正義の味方なんて呼称とは程遠い。履き違えるな。戦える力を持ち、敵を討てれば、正義の味方になれる訳じゃない」
「……」
男は黙って聴いていた。
それは正義の味方だと思っていた存在から吐き出される、心。
「……自分がもう少し強ければ。早く来れていれば、って思うんだ」
レオライザーは惨憺たる戦場を見渡して言う。
そこには、ハンターが来る前にVOIDに殺された戦った者たちの死体が転がっている。
「ひとりの犠牲も出したくない。誰の涙も流させたくない。オレ自身が、赦せないんだ。自分の非力さも、零れていく命も。力があるなら、助けられたんじゃないか、って思ってしまう。だから命を懸けて戦うし、決して逃げるつもりはない」
そして、視線を男に戻す。
「あなたもそうなら。ここにいた人たちの死を背負って、それでも誰かを護るというのなら。オレはあなたを止める事は出来ない。でも、戦うことや、覚醒者である事が正義の味方の条件だと、オレは思わない」
男の中にあった勝利への喜びはすっかり消えていた。戦闘の高揚も混乱も、同様に。
代わって湧き出てきたのは、死んだ者に対する悲しみだった。
「あいつら……死んじゃったんだよな」
男がぽつりと呟く。
「皆、悪いやつらじゃなかったんだ。ただ、俺は、俺たちは……正義の味方になりたくて……でも、何か、間違えていたのかもしれない」
「亡くなった人たちの話をしてくれないか」
レオライザーが男に言う。
男は地面にへたり込んでいるが、声はしっかりと、死んでしまった人の名前と思い出をぽつぽつと語りはじめた。
「……忘れるわけにはいかないんだ。オレは……」
自分に言い聞かせるようにするレオライザー。
救えなかった人間もいた。けれど、生き残った男にはハンターたちの言葉が響いている。
彼は、もう無謀な戦闘に臨むことはないだろう。
荒い呼吸。乱打する心臓。吹き出る汗。
男の精神は混沌の中へ突き落とされる。
ケイ(ka4032)はそんな男の混乱を見て取り、穏やかな笑顔と、優しい口調で男に声をかける。
「おーけー、大丈夫、落ち着けとは言わないけど深呼吸して」
男は視線を歪虚からケイへと移す。
「先ずはバットを拾いましょう」
ケイが言葉を続ける。
男は言われた通り、数回深呼吸して、バットを拾った。
確信はない。けれど、こんな状況にあっても穏やかな態度を崩さないケイの振る舞いには、従うべきだ、と男は思ったのだ。
「その上で一緒に数歩下がって……そう、その位置よ」
ケイは男を導くように一緒に数歩下がる。
その付近には莉(ka7291)がいて、銃を構え、敵を見据えていた。
「ここで私たちを守ってほしいのよ。これだけの惨状だもの、敵が目の前からしか来ないとは限らないわ。側面や背後から来たら、私や彼女はひとたまりもない……とはいえ、私たちも目の前の敵で手一杯」
そこで、一旦を区切り、ケイは続く言葉を力強く言った。
「だから貴方が頼りなの。私の命、預けておくから。お願いねニューヒーロー」
「……俺が、ヒーロー?」
「……あなたがあれになったら、撃つしかない。……死なないで」
莉が静かに、男に告げた。
「私たちも少しくらい出番が欲しい。今後の為に手本を見せよう」
すでに、敵から男を守るようにしているアウレール・V・ブラオラント(ka2531)も言葉を継ぐ。
同時にアウレールは考えた。
──好戦的になっているのは見れば明らか、強引に止めても聞くまい。
──なら、形だけでも参戦させるようにして、暴走を止めなくてはならない。
そう、男の精神状態は尋常のものではない。
ケイと莉、そして男を敵から遮るようにして、深守・H・大樹(ka7084)がアースウォールを設置する。
「最終防衛ラインの目安」
大樹が今作った土壁を指して言う。
「僕が突破されたら彼女たちを護って。彼女たちも接近されると弱くてね」
「わ、わかった。正義の味方の覚醒者が言うことなら、必要なことなんだよな?」
男はバットを強く握って、構えた。
──正義の味方、か。
その言葉を背中に受けて、アウレールは思った。
──世界にはいつだって救いを求める人がいて。
──そんな人たちを助けたいと願う人がいて。
──英雄とか救世主とか、そんな風に呼ばれる。
けれど彼らは知っているはずだ。
全て守ろうとする程に、皆を救おうとする度に、零れる幸せがあることを。掬えぬ命があることを。時には選んで殺しさえする因果な存在だということを。
覚醒により、左頬に赤い幾何学模様が浮かび、アウレールの周囲の空間が陽炎のように揺らめいていた。
──そんなモノに、
──本当になりたいと言うのか。
そんな問いを、背後の、力を手にしたばかりの男は知らない。
一層、アウレールのマテリアルが揺らめく。
ソウルトーチによる注視の篝火だ。
歪虚6体の視線がアウレールに集束される。
VOIDを失った戦場は、かくしてやってきたハンターと、歪虚を迎え入れたのだった。
●
「もう少し早く到着出来てさえいれば……!」
レオライザー(ka6937)が言う。彼はそれが悔しくてならないのだ。
アウレールに惹きつけられた敵の背後に回り込むようにジェットブーツで加速するレオライザー。
狙うのはパイプ椅子を盾のように扱う歪虚だ。
「行くぞ! ライザァァ、スラッシュ!」
勢いのあるかけ声とともに、レオライザーが敵を斬りつける。
「本当に悔しい……! でも何より赦せないのは、人々の気持ちに付け込み、あんな力を配る歪虚のやり方だ……!」
レオライザーと同じ敵に狙いを定めたクラン・クィールス(ka6605)も、ソウルエッジで魔法威力を上乗せした剣で斬りかかる。
──生き残る為に、戦える力というのは必要だ。
──今のリアルブルーの環境でそれを否定は出来ない。
──だが……。
しかし、そこから先の思考を、クランは切り替えた。
──いや、今は敵を倒そう。
──あの男が変な気を起こさないうちにな。
パイプ椅子の歪虚は積極的に前へ出て仲間を守っているようにも見えた。
──まずは、パイプ椅子、続いて、投擲武器持ちが厄介といったところか。
クランは巧みに戦場を駆け、パイプ椅子と包丁を持った歪虚が一直線になるような位置へ来た。
「なら、一気に貫く……!」
刺突一閃、直線上の敵を串刺しにした。
近接武器を持っている敵はアウレールに接近し、投擲攻撃が可能なものは凶器を投げつけている。
アースウォールに遮られ、戦場が見渡せない位置にいる男には、ただ音だけが、戦闘の凄まじさを伝えていた。
そして、後方にいる莉は敵の側面に回り込む。狙うのは投擲武器を持っているモノだ。
前衛集団から外れたところに、カラトリーを大量に持っている歪虚がいた。
「……敵は、撃つ」
莉はマテリアルの込められた弾丸を使用し、一気に体力を削っていく。
アースウォールは視界を遮るのに十分な幅と高さを持っている。
射撃をする上では、視線の確保が欠かせない。
ケイが使用する攻撃スキル、ハウンドバレットも変則的な弾道を描くとはいえ、壁の向こうにいる敵を狙撃することはできなかった。
だからケイは、見える位置にいる、カラトリーを持つ歪虚を狙撃することにした。
撃ち出された弾丸は、通常では考えられない動きで、敵を2回貫く。
──ケイさんたちがうまくやってくれたから、生き残った男の人は大丈夫そうだね。
大樹がアースウォールの向こうが騒がしくないことを確認して、安堵して思った。
「それじゃあ、僕も攻撃に移るとしますか」
大樹は集中する。
「敵は多いことだし、まとめて攻撃することにしよう」
マテリアルで編み上げられるのは、魔法の矢。
それは、殲滅の矢として輝く軌跡を残すのだった。
●
アウレールにはあらゆる攻撃が殺到している。
それらを躱し、あるいは巧みに武器で捌きながら、アウレールも攻撃に転ずる。
狙うのはやはり、パイプ椅子を持っている歪虚。
一太刀、胴を斬りつけ、もう一閃はパイプ椅子にいなされながらも、敵の頭を斬りとった。
パイプ椅子が、アウレールの攻撃が終わったとみて、武器を振り上げた。
「まだ、終わってはいない──!」
それは、相互に極限まで同化した無拍一調子の三閃。アルファにしてオメガ、即ち二刀より後に出でて共に至る理外の神剣。
──至聖三剣『聖霊』。
それはオーラをまとった攻撃となり、視認できる直線上にいる全てを対象とする。
その苛烈な攻撃はパイプ椅子と、その背後にいた包丁の歪虚に命中した。
だが、武器を振り抜いたアウレールへ、1本の包丁が飛来したのだった。
「させない!」
レオライザーは、即座に防御障壁を展開する。
それにより、いくらか勢いが減衰したものの、投げられた包丁は深々と、アウレールの肩に突き刺さった。
「邪魔だな……!」
クランが、パイプ椅子ごと、包丁の歪虚を刺突一閃で貫いた。
パイプ椅子を盾にして歪虚はクランの攻撃を防ごうとするも、その直前に大樹のマジックアローが飛んできてその対応をしたために防御が遅れた。
クランの一撃で、ついパイプ椅子の歪虚が塵になって消える。
レオライザーが足からマテリアルのジェットを噴出させ、包丁を持っている歪虚へ迫って行く。
しかしこの時、歪虚はソウルトーチの効果を振り払いつつあった。
包丁を持っているモノもそのひとりだった。
敵はレオライザーの攻撃を、体を回転させて躱して、その勢いを乗せた鋭い投擲を彼に放つ。
包丁がレオライザーの太ももに突き立った。
「オレが傷つくことは構わない……!」
レオライザーは刺さった包丁を抜いて、それでも凛々しく背筋を伸ばす。
罪のない人間だったモノたちへの攻撃は、レオライザーには辛いものだった。
彼らだって、歪虚になりたくてなったわけではない。
「せめて、何かを傷つける前に、終わらせる……!」
再び歪虚がレオライザーに包丁を投げつける。
レオライザーはグローブでその攻撃をはじき返した。
「これ以上、傷つけさせはしない……!」
レオライザーは涙を隠して戦い抜かねばならない。傷ついても倒れることは許されない。
「とどめの──ライザァァ、スラッシュ!!」
高速の斬撃は、歪虚の体を両断した。
それきり、包丁の歪虚は動かなくなり、ずるりと両断された体を地面に落下させて、消滅したのだった。
「後は──、」
クランが次の標的に目を向ける。
残る投擲攻撃持ちはカラトリーを装備した歪虚のみだ。
「おまえだ──!」
しかし、駆け出すクランに鋭い突きが放たれた。
折れた街灯を槍のように扱う歪虚の一撃だった。
すかさず、レオライザーが防御障壁を展開するも、鋭い街灯の先は障壁を粉々に砕いて、クランの脇腹に直撃した。
「今は、構っている余裕はない」
覚醒により、前髪の1房が黒く染まった向こうから見えるクランの青色の瞳が、鋭く敵を射抜いた。
再び突き出される街灯を、今度こそ剣で打ち払い、クランとレオライザーはカラトリーを武器とする歪虚へ駆けて行く。
街灯を振るう歪虚はなおもクランを追いかけようとしたが、それは再度発動されたアウレールのソウルトーチが許さなかった。
「相手は私だ。邪魔はさせぬ」
繰り出される二刀流と至聖三剣『聖霊』は、群がる敵を引き裂いた。
●
莉の強弾と、ケイのハウンドバレット、そして大樹のマジックアローがすでにカラトリーを持った歪虚を疲弊させていた。
そこに、クランとレオライザーの攻撃が合わされば、敵はひとたまりもない。
また、ケイは妨害射撃で攻撃を阻害し、敵は狙いが定まらない。
殺到するハンターたちの攻撃。
それに翻弄される敵にとどめを刺したのは、ケイの弾丸だった。
「この弾丸、そう簡単には避けられないわよ?」
ケイは戦場の中にあっても、笑みを絶やさない。
「さあ、眠りなさいな。あなたたちの時間は、もう終わっているのよ」
弾丸は通常では考えられない変則的な軌道を描いて、2回敵を貫いた。
胸と腕に穴を開けられ、歪虚は持っていたカラトリーを落として、力なく地面に倒れこむ。
そして、吹き抜けた風にのって体は塵となって消えていった。
「残るは3体だね」
大樹が言う。
後は、アウレールに群がっている鉄パイプ、折れた街灯、折れた信号機を持った歪虚3体だった。
「援護は任せて」
莉が素早くリロードし、より良い射撃スポットへ移動する。暗灰色のワインピースがひらひら揺れる。手にした拳銃は漆黒で、暗く冷たい艶を放っている。
銃声。
飛び出した弾丸は街灯を操る敵に命中する。
「終わりになるまで、撃ち続けるだけ」
続けざまの銃声。音の波が戦場を震わせる。
大樹は戦闘の序盤、パイプ椅子と投擲攻撃をしてくる敵を集中的に狙っていたが、それ以外の敵を注意していないわけではなかった。
常に最適な優先順位を決めて、マジックアローを放つ。
これによって、近接攻撃をする敵と対峙していたアウレールを見事に補佐していた。
「でも、もう敵の数が少ないから、あんまり深いことは考えなくてもいいのかな? まあ、敵が倒れるまでが戦闘だし、油断するつもりなんてさらさらないけどね」
容赦のない魔法が降り注ぐ。
アウレールもまた、2振りの武器で、敵を斬りつけていく。
3撃目の至聖三剣『聖霊』で、ついに2体の敵が消滅した。
「それじゃ、最後は僕がもらうよ」
集中し、紡がれる魔法の矢。
残った信号機を振り回す歪虚はその輝く矢に貫かれ、ついに消滅した。
「よし。これで戦闘終了、だね」
大樹の言う通り、敵の影はもうどこにもなかった。
●
「勝った……俺たちは勝ったんだ! 正義の味方の勝利だ!!」
男は、ハンターたちが勝利したこと、そして自分もそれに関われたらしいことを喜んだ。
「そうね、ありがと」
ケイは手短に礼を言った。
「……少し私の話を聴くがいい。いや、聴け」
喜ぶ男に、アウレールが声をかける。
男は、アウレールの声音が真剣だったから、姿勢を正した。
「今のお前は力に酔っているに過ぎない」
アウレールは語る。
「抑々正義の味方など、なろうとしてなるものではない。何故戦うのか、何の為に力が必要なのか答えられるか」
力について。正義について。その味方のあり方について。
「目的無き力など爆弾と変わらぬ。その上で尚、こんな役割を担う覚悟があるというなら、止めはしない……茨の道だとは言っておくぞ」
「俺たちは……ハンターは、正義の味方なんかじゃない」
クランも男に向けて言葉を紡ぐ。
「各々が、戦いたい理由を胸に力を振るっているだけ。それはきっと自分勝手で……正義の味方なんて呼称とは程遠い。履き違えるな。戦える力を持ち、敵を討てれば、正義の味方になれる訳じゃない」
「……」
男は黙って聴いていた。
それは正義の味方だと思っていた存在から吐き出される、心。
「……自分がもう少し強ければ。早く来れていれば、って思うんだ」
レオライザーは惨憺たる戦場を見渡して言う。
そこには、ハンターが来る前にVOIDに殺された戦った者たちの死体が転がっている。
「ひとりの犠牲も出したくない。誰の涙も流させたくない。オレ自身が、赦せないんだ。自分の非力さも、零れていく命も。力があるなら、助けられたんじゃないか、って思ってしまう。だから命を懸けて戦うし、決して逃げるつもりはない」
そして、視線を男に戻す。
「あなたもそうなら。ここにいた人たちの死を背負って、それでも誰かを護るというのなら。オレはあなたを止める事は出来ない。でも、戦うことや、覚醒者である事が正義の味方の条件だと、オレは思わない」
男の中にあった勝利への喜びはすっかり消えていた。戦闘の高揚も混乱も、同様に。
代わって湧き出てきたのは、死んだ者に対する悲しみだった。
「あいつら……死んじゃったんだよな」
男がぽつりと呟く。
「皆、悪いやつらじゃなかったんだ。ただ、俺は、俺たちは……正義の味方になりたくて……でも、何か、間違えていたのかもしれない」
「亡くなった人たちの話をしてくれないか」
レオライザーが男に言う。
男は地面にへたり込んでいるが、声はしっかりと、死んでしまった人の名前と思い出をぽつぽつと語りはじめた。
「……忘れるわけにはいかないんだ。オレは……」
自分に言い聞かせるようにするレオライザー。
救えなかった人間もいた。けれど、生き残った男にはハンターたちの言葉が響いている。
彼は、もう無謀な戦闘に臨むことはないだろう。
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相談卓 クラン・クィールス(ka6605) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2018/08/26 23:48:34 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/08/24 22:17:21 |