愛おしき人形―dianthus2F―

マスター:佐倉眸

シナリオ形態
シリーズ(続編)
難易度
普通
オプション
参加費
1,300
参加制限
-
参加人数
4~9人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/09/10 09:00
完成日
2018/09/24 23:58

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●或るオフィス職員達の考察
 先日、ハンターに清掃を依頼した旧水道跡の石樋より、白骨化した夫婦と見られる男女の遺体が発見された。
 その後、警察による調査が行われ、遺体の身元が判明した……らしい。
 切欠となったとは、遺留品の結婚指輪。刻まれたイニシャルと日付を街の教会で照会し、該当した一組の周辺に聞き込みを行ったところ、数週間前から見ていないとの証言を得た。
 更に、彼等の自宅を訪ねたところ、丁度、旧水道跡の清掃を依頼した頃から、入り口を埋める様にバリケードが築かれ始めていたらしい。
 不審な点は留まらない。
 いつだったか定かでは無いが、夫は仕事を急に辞めたという。
 仕事仲間が訪ねたところ、夫は重篤だとのことで面会は出来ず、妻が応答して会えず終い。
 しかし、その日の夜には子どもと遊ぶ影が有ったらしい。
 以降、街中でも夫の姿を見かけることは無く、妻も人が変わったように陰気に。
 子どもの姿も、夫が遊んでいる姿を遠目に見た程度。
 料理が得意だった妻が生鮮食品を買わなくなり、また、買い物の量も極端に減った。
 日持ちのする菓子や総菜が殆どだったらしい。

 記録を検めていた職員の手許、鉛筆がぼきと折れた。

 香水を変えたのか、妙な匂いがしていた。
 いつも同じ服を着て、夏になっても薄着で出歩いている姿を見なかった。
 気怠そうに俯いていたが、顔が青白くて不健康そうだった。

「恐らく、亡くなったのは春でしょうね。……死体が操られていたと考えるのが妥当でしょうか。夫に? いいえ、彼も同じ状態の遺体となっていますので、亡くなったのも同じく春のことでしょう……子どもに?……一人息子がいますが幼く、そのような知識が有るとは思えません」

「私の勝手な想像ですけれど……この息子の養育のため、亡くなった夫婦を何者かが操っていた。しかし、何等かの事由によりその必要が無くなった為に遺棄した」

「死因の調査は難航しています。負のマテリアルの影響が強く残っているためです」

「現在、息子の行方は分かっておりませんが、近隣住民より、時折子どもの泣き声が聞こえるとの証言が有ります」

「バリケードの解体は難航しており、数日中に侵入経路を確保することは不可能……これは実際に見て頂きましょう。それから、精霊ラヴェルより、掃除の礼に協力しても良いとの申し出がありました」


 ハンター達は問題の民家の前に集められた。
 堆く積まれたブロックや金属板、その隙間を埋めるようにパイプが刺さり、陶器や硝子の破片が飾りのように覗いている。
 迂闊に手を出せば崩れて下敷きになることは免れない。
 それを承知で崩したとしても、玄関の扉を開けられるかは分からない。内部は、恐らく見えている以上に歪んでいることだろう。

 上から行けばいい。

 屋根を指して、精霊は言った。

 精霊は隣の家の屋根から飛び移る。テラコッタの瓦を数枚剥いで、屋根に穴を空ける。
 天井裏に降りて板の隙間から覗く2階、3部屋並んだ中央の部屋。それは異様な広さを持っていた。
 見える範囲に数百の敵影、その殆どが部屋の暗さに紛れているが影を持たないまやかしのよう。
 しかし、負のマテリアルの気配も点在している。
 アレと、アレ、他は分からんと呟いた。
 天井板を1枚外し、1人が降りられる程度の隙間を作る。溢れてくる負のマテリアルに辟易と、ヴェールの中で顔を顰めた。
 去り際、その部屋の中央に細かな砂粒を一掴み振り撒いた。

 待機させたハンター達の元へ戻り、精霊は彼等に一つずつ包みを渡しながら見てきたものを手短に話した。
 手に乗る大きさで、目の詰まったカンバスで包まれた細かな砂と小石。

「是れの寝床から零れた物だ。一晩くらいは保つだろう。……是れを起こしたあの骸と同じ物の気配が有る。念の為、だ」


 状況を把握し、歪虚に侵蝕された家の屋根へ、そして2階へとハンター達が進む。
 中央の部屋、ベッドの足元や柱の陰にブリキや陶器の人形がもたれるように座っている。
 その部屋の中央に砂が撒かれていた。
 様々な玩具、布や木の物が見当たらないのはそれが嫉妬の眷属に在るからだろうと察せられるが、その玩具達が何百という数で、砂の回りを取り囲んでいる。

 2階に降りれば精霊の言っていた気配をハンター達も感じる。しかしそれは更に下階から。
 まるで彼等を呼ぶように漂ってくる。

 玩具が1つハンターに向かってくる。そしてそれは、砂から一歩踏み出した彼の眼前で爆ぜ――
――広すぎる部屋のあちらこちらで、同じように煙が上がった。




●数分、或いは十数分後
 彼等が戦闘を開始して暫くの時間が流れた。
 バリケードの解体は一向に進まない。応援のハンターを招集し、人手は十分だが家を包み込むようなそれは酷く厄介だ。

 片付けば応援に向かうつもりだったが、それは無理だな。
 中の様子を聞いた一人のハンターがそう呟く。
 そろそろ彼等は1階へ辿り着いた頃だろうかと考える。

 その瞬間、けたたましい笑い声が屋敷の中から響き、バリケードを震わせ、一部を崩した。

「危ない!」

 近くで作業を行っていた数人が、その崩落に巻き込まれた。

リプレイ本文


 床に撒かれた砂利の上へ真っ直ぐ降り立つ。傍に落ちた天井板が目に留まり、振り返る様に見上げると、マリィア・バルデス(ka5848)が銃を背負い直して梁に手を掛けていた。
「ありがとう、ラヴェルさん」
 精霊を肩越しに一瞥すると、梁を離して砂利の中央に降りる。
 次だと呼んで、ボルディア・コンフラムス(ka0796)が一歩離れ、マリィアも場所を空ける。
 砂利の外へ踏み出したボルディアの眼前に飛び上がって迫る影、捻子を巻いて足を踏みならす仕掛けを施された子犬の玩具だと認識したその瞬間に、それは爆ぜた。
「うわっぷ、なんだぁ!?」
 目を眩ませる閃光と、束ねた赤髪を煽り乱した爆風。強靱な体躯と防御を持ってしても、踏み止まる為の隙が生じる。咄嗟に目と首を庇った腕が纏った煤を払い、舞い上がった埃を裂く様に長柄を震う。
「ふん、歪虚のくせに味なまねするジャン。俺様ちゃんわくわくしてきたぜ」
 飛び降りてきたゾファル・G・初火(ka4407)はその光景に双眸を輝かせ、拳を掌に打ち付ける。
 攻撃力は乏しそうだが、目を奪い動きを妨げる厄介そうな敵、なかなかじっくり楽しめそうだ。
 肩に得物を据え、取り囲む敵へ銃口が向く。マリィアも構えた様子に、Gacrux(ka2726)が様子を覗いながら降りてくる。
 見覚えのある景色。そう眺める漆黒の瞳を囲む黒と青。一瞬の浮遊感を経て2階の床へ降りると、見回す幾百の敵の中に漂う煙を見詰めた。
「誘爆か……?」
 ガクルックスの呟きに、攻撃を間近に見ていたマリィアとゾファルが、それらの煙は同時に発生したと答える。
「どういう趣味と意図かしらね。この広すぎる場所は」
 マテリアルの光りを纏い、二刀を携えて降りるアリア・セリウス(ka6424)が部屋を見回して言う。
 あの数の爆発にも関わらず、建物が軋んだ様子は無い。全てが幻だろうと足を止めない。ざらりと砂利を踏みしめた透明感のある花模様の靴で一歩進み出た。
「そぉいやハンターのことを魔女魔女いう、幻覚遣いの人形歪虚の報告、読んだことありますぅ」
 空間の異様さを蒼く輝く双眸で眺め、星野 ハナ(ka5852)も飛び降りて同調する。今回の敵もその人形だろうか。
 今のところその姿は見えないが、報告でも前線に出てくるタイプでは無かった筈、潜んでいるのだろうかと、歪んだ子ども部屋を見回した。
 
 まさかこんな状況になるとは。ヴェールを握り締めた精霊を見てブリジット(ka4843)は思う。
 しかし、見過ごしてはおけない。歪虚が子どもを育てるなど、考えてもみなかった。今は無事を信じるしか無い。
 玲瓏(ka7114)も状況について思考を続ける。
 子を思ってのことでは無いだろう。歪虚の玩具になどさせて置けない。閉じ込められて怖い思いをしているだろう。
「早く助けてあげないと……」
 大丈夫だと撫でてあげないと。
「よろしくお願いしますね」
 先に降ります、そう言って、刀の柄に手を置くと、ブリジットが梁から床へ飛び降りる。
 清廉なマテリアルがその背に柔らかそうな白い翼の幻を羽撃かせた。
 カンバスに包まれたお守りを懐へ、玲瓏もブリジットに続いて2階へ降りた。
 全員が降りるのを見届けて、カリアナ・ノート(ka3733)は屋根裏とその周囲の警戒から2階へと視線を移した。
 輪を描くような残像を伴って、腰の傍らを回る灰の球体。得物の柄を力を込めて握り、竦みそうな足を叱咤して、仲間の待つ部屋へ飛び降りた。

 ボルディアが得物を翻す。
 不規則に折れる赤い軌跡が眼前に漂う煙の残滓を揺らす。
 どうだと見るが、他の煙の揺れ方は異なっている。その煙の配置も区々で、規則性は覗えない。
「単純なコピーって訳じゃ無さそうだぜ……」
 そうですねぇ、とガクルックスも得物を手に煙を見る。幾百の敵を並べた部屋、子ども部屋らしい内装のファンシーな家具さえ、距離感を量り兼ねるほど、遠く、或いは近く見える。
 頭の痛くなりそうな光景の中、ふと、その瞬間。ガクルックスの眼が数個の煙が同時に絶える様を捕らえた。
 単純なコピーでは無い、しかし、完全に独立しているわけでは無い。
 そこまでの情報を得て全員が揃うと、状況確認の為部屋の外を目指す。
 名乗りを上げたゾファルを殿に、長柄をもつハンターが薙ぎ払う様に道を切り開く。

「空間魔法なんて実在しませんしぃ……これこそ幻覚ですよねぇ」
 廊下に異様なところは無い。部屋の広さに合わないその様子に、星野が建物内へ響く様な声で煽る。
 しかし。玩具は全ブッコロですぅ。一際張り上げたその声にも、返ってくる声は無い。
 幻と共に玩具の歪虚が密集していた室内に反して敵の姿の無い廊下に違和感を憶えながら、出てきた部屋の左右、暗い色に塗られた重厚そうな扉と、ベッドルームのプレートを吊したシンプルな扉。
 振り返れば出てきた部屋にも丸みのある書体でよくある男性名を綴ったプレートが下がっていた。
「アリア、ブリジット。行くぜ」
 ボルディアが二人を連れて重そうな扉へ。
「私たちはこっちよ」
 マリィアがゾファルとカリアナを呼び、寝室のプレートのドアノブに手を掛けた。
 ガクルックス、星野、玲瓏の3人は、他2組の移動を確認し、子ども部屋へ戻った。


 扉に手を掛ける瞬間から研ぎ澄ます感覚。歪虚の放つ微細な音、匂い、その気配を探る。
 幻に紛れたそれを、ボルディアのマテリアルは確かに捕らえた。しかし、部屋のどこかに潜むそれの正確な場所、形までを見つけ出すには至らない。
 だが。
「近くに3体いやがるぜ」
 そのくらいの感覚は十分に得られる。悪魔の名を頂く長柄の斧。丈を超えて余るその柄を取り回し、部屋中の敵を威圧するように振るう。
「任せましょう」
 アリアは下がり、ブリジットも刀を収める構えで、室内には踏み込まない。
 踏み込んだボルディアが、その得物の届く限りに振るい、引き出す炎のマテリアルで取り囲む様に押し寄せる敵全てを炎の牙が屠る。
 喰い尽くしたと、思ったそこへ、飛び掛かってきた万年筆。かたかたと震えるトレイ、艶やかなペーパーナイフが翻る。
 万年筆を弾き、ブリジットが残りの敵へ斬撃を放つ。
 届いているはずの攻撃が擦り抜けるように、敵は藻掻くばかりで壊れることが無い。
 それらは他の幾つもの筆記具と異なり、アリアが纏ったマテリアルの光りに向かっていくようにさえ見える。
「……これは本物のようね」
 アリアの刀が敵を断つ。砕けたそれは黒い靄を残して消えた。

「――こちらの状況を伝えますね。攻撃により本物の敵はあぶり出されたようですが、倒すにはそれのみ攻撃する必要がありました。また、倒せた場合……」

 ブリジットはトランシーバーを手に状況を伝える。
 部屋の様子は入った時よりも幾分か狭くなったように見える。本当に幻覚を見せられていたのだろうか。
 分かった限りのことを伝えて通信を終えた。

「さあ、刃奏の舞踏会を始めましょう。人形操りさん?」
 アリアの声が凜と響く。
 炎にあぶり出されたのか、マテリアルに誘われたのか。飛び出してくる敵を的確に狙い斬り倒す。
 その傍らで部屋の変化や様子にも目を配ることを忘れずに。


「砂は1度に使用しないよう気を付けましょう、安全地帯が必要な時は声を掛け合って」
 行くわよ、と、マリィアが2人へ声を掛ける。拳を振りファイティングポーズで跳ねるゾファルと、ライトを手にカンバスを仕舞い直しているカリアナは対照的だが、2人とも準備は整っている。
 扉を開け、その銃の用途に違わずに撃ち尽くす。
「こいつら全部が本物じゃないとか――っ」
 傍で爆ぜた香水瓶。閃光と爆風は、こと狙いを定める上では傷以上にその手を妨げる。
 翻り迫る手鏡を殴りつけ、次の敵を待つゾファルはやや不満げだ。
「さあ、俺様ちゃんにかかってきな」
 煽ってチェストやドレッサーを蹴り倒すが、敵の動きはまだ静かだ。
 カリアナに向かう敵をマテリアルで引き付けても、1体だけでは満足行くまで殴れない。

 カリアナも氷の矢を落としたり、マテリアルを込めて数本の矢を同時に落としてはいるが、本物の敵にはまだ当たらない。
 装填し直したマリィアが、再度掃射を試み、その中で唯一離れようと動いた眼鏡を指す。
「カリアナ!」
 呼ばれると同時に青銀の穂先を翻す。
「そこね、分かったわ」
 振り下ろし放たれた氷の矢がブリッジを貫いて黒い靄と共にそれが砕けた。片手ほどの歪虚を倒したところで、部屋の変化に、敵の仕掛けに気付き始めた。

「――こっちもそう。倒したら幻も幾つか消えて、部屋が狭くなっていく気がするわ。どんな仕掛けか装置かはまだ分からないけれど……」
 部屋には仕掛けは無さそうだ。ならば敵が持っているのだろうか。
 通信中のマリィアの傍、飛び出してきた敵へゾファルが嬉々として殴り掛かる。

「どんだけ幻影に隠れようとも攻撃してくる行為まではごまかしようがあんめぇ」
 漲るマテリアルを纏って敵を誘い、マテリアル鉱石に彩られた拳を大きな鏡に叩き付けた。
 マリィアが数度目の装填を終え、カリアナも長柄を握り締めて敵の動きを伺っている。


 2人からの通信を終え、ガクルックスが星野と玲瓏にそれを伝える。
「随分偽物が多いじゃないですかぁ」
 符を5枚引き抜いては投じながら、光り輝いたその範囲の反応を見て星野は辟易と呟く。
 部屋の広さに歪虚の群、演出ばかり気取るくせに情けないと嘲笑を浮かべながら。
 ガクルックスもマテリアルのオーラを纏いながら、特殊装置をあしらう長柄を振るう。
 眼前とその周囲の敵を探りながら進み、寄ってきた敵や、反応した敵を的確に貫いていく。
 入り口近くに残っていたらしく、不意に飛び出してきた敵の爆発に玲瓏は盾を構えた。
 その煙に身を隠して飛び出したブリキの電車に剣を立て、剣としては扱い馴れないそれで2度斬り付けられて折れた電車は砕けて黒い靄を残して消えた。
「大丈夫でした? 歪虚と神経衰弱とかギャグですよぅ」
 咄嗟に銃を構えた星野が尋ねてまだ100近く残っている敵に溜息を。
「ありがとうございます。……もう少しです、頑張りましょう」
 玲瓏が2人の周囲を含むように光りを広げる。その中に反応を見せる敵は無い。少しの安堵を置くと攻撃を緩め、部屋の様子を観察する。
 更に下階へ。この部屋から降りるとなると、床を剥がすしか無いが、敵のいるところに。或いは他の部屋に何か手掛かりはあるのだろうか。

 もう少しだと、それぞれに得物を構え直す。最後に残った20体の敵を囲むように星野が符を、あぶれるところへ玲瓏が光りを放つ。
 その中心からガクルックスの方へ逃げ出してきた陶器のウサギを弾丸が撃ち抜いた。
 黒く縁取った目を瞬いて瞼を擦る。数度それを繰り返してガクルックスは部屋を見回した。
 そこはただの子ども部屋に見えた。
 今までの部屋の印象が重なるように視界が落ち付かないが、次第に馴れてくるとそこは、何の変哲も無い、ファンシーな色合いで小さな家具の並べられた部屋だった。

 終わりましたと星野が通信を全員へ。
 玲瓏は部屋を再度見回してから、下階への道を探し廊下へ、開けられた扉にガクルックスが最初の違和感を思い出した。
 敵がいないだけではない。2階の部屋に降りて出たはずの廊下に階段が無かった。
「見てきます。他の部屋の様子も気になりますから」


 書斎での戦闘を終え、元に戻った部屋を見回したアリアがブリキの電車を見付けた。
 その纏う妙な気配に手を伸ばすのを躊躇っていると、ブリジットもそれを伺う。手掛かりになりそうな遺品ならばと見るが、何処ででも見かけるようなその玩具では、捕らわれているらしい子どもの大凡の年の頃が察せられる程度だろうか。
 ボルディアの感覚で触れない方が良いと判じられたその玩具の他、見回せば他の玩具や化粧水の硝子瓶、書斎では使わないような物が複数見られたが、先に情報を共有しようと、一先ずはそれを残して部屋を出ることにした。
 寝室の敵を掃討し終えた3人が先に廊下で待機し、ドアを開けたままの子ども部屋ではガクルックスが部屋中を見回していた。
 綱にする物が必要になるかも知れないと剥がしたシーツの下、隠すように万年筆と、陶器の手鏡が置かれていた。

 廊下の柱ごとに凭れ掛かった人形は、いずれも布で出来ているようだが、陶器の箱を抱えている。可愛らしい色に塗られたそれはプレゼントボックスだろうか、しかし、醸す気配はひどく禍々しく悍ましい。
「これも敵でしょうか……いえ、今は……」
 下階への道を先に。玲瓏は床に壁にと見回しながら進む。
 廊下の端を見れば、そこだけ板の色と向きが異なっている。床板にしては粗雑なそれは隙間も有り、手を掛ければ外せそうだ。
「――階段、ありました」

 それぞれの部屋に残された不審な気配を話し合い、恐らく寝室にもと話す中、ハンター達は玲瓏の声を聞いた。
 次の瞬間、耳を劈く笑い声に膝を突いた。
 得物を軸に身体を支え、或いは壁に手を突いて襲撃に備えるが、間を置かずにその声は止む。
 何だったのかと気配を探る中、子どもの泣き声が微かに聞こえ。
 重い扉の閉まる様な音と共にその声が遮られた。

依頼結果

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重体一覧

参加者一覧

  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • 見極めし黒曜の瞳
    Gacrux(ka2726
    人間(紅)|25才|男性|闘狩人
  • 真白き抱擁
    カリアナ・ノート(ka3733
    人間(紅)|10才|女性|魔術師
  • ゾファル怠極拳
    ゾファル・G・初火(ka4407
    人間(蒼)|16才|女性|闘狩人
  • 咲き初めし白花
    ブリジット(ka4843
    人間(紅)|16才|女性|舞刀士
  • ベゴニアを君に
    マリィア・バルデス(ka5848
    人間(蒼)|24才|女性|猟撃士
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
  • 紅の月を慈しむ乙女
    アリア・セリウス(ka6424
    人間(紅)|18才|女性|闘狩人
  • 風雅なる謡楽士
    玲瓏(ka7114
    人間(蒼)|18才|女性|聖導士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/09/08 08:31:11
アイコン 崩落の館の探索
星野 ハナ(ka5852
人間(リアルブルー)|24才|女性|符術師(カードマスター)
最終発言
2018/09/09 22:01:48