• 落葉

【落葉】発した願いと繋ぎ行く心

マスター:石田まきば

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/10/11 09:00
完成日
2018/10/15 09:52

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●議論の種

 ユレイテル・エルフハイム(kz0085)が庶民議会の議員席に就く。
 その布告者の名は勿論このゾンネンシュトラール帝国皇帝、ヴィルヘルミナ・ウランゲル(kz0021)である。
 情報は瞬く間に周知され、波及し、気付けば議会席を占める存在の話ばかり。賭け事の種にもなると一部ではよろしくない動きもあるとかないとか。それにつけても老若男女、気になる理由は違えども、新しい議会の存在はその口にのぼる頻度が上がっていく。
 なにせ冠する言葉が物語っている。「庶民」という、常ならば一般人を示すだけの言葉であるのに権力を示す「議会」ときた。国政の指針に触れる権利が国民に近づいたことは、やはり期待の膨らむものだったのだろう……庶民にとっては。

「亜人なんて、国政が乱れるんじゃないか?」
「なぁ~に格好つけて言ってるんだよ、号外に引きずられてんじゃねぇや!」
「そうかもしれないけどさ、森からあまり出てなかった奴らじゃないのか、エルフって奴は」
「その割に見覚えのある名前なんだよなァ」
「エルフっていやぁ、騎士議会に居なかったか?」
「そりゃ別人だ。でもまー……前例ってのは居るんだったな」
「……あー! あれだ! 四年前!」
「なんだようるせぇな」
「酷ぇな!? そうじゃねぇよ。今度のエルフ、確か皇帝選挙の時に聞いた名前と同じじゃないか?」
「「「……」」」
「居た、ような?」
「選挙活動とか言ってたか。奴さんが、何言ってたか覚えてるか?」
「「「んー……?」」」

 記憶というものは儚いものだ。そもそも、当時のユレイテルは知名度の獲得を理由に出馬し、得票の為に演説をしていた。その内容は一般人にとっては直接触れる機会は稀な浄化術の話であったのだから。
 エルフが出馬した。その事実だけでも記憶に残されていたのは、ユレイテルにしてみれば幸いなことなのだろう。

●森都の歩み

 恭順派だけで占められていた長老会にユレイテルが加わったことは記憶に新しい。
 とはいえ、それはあくまでもエルフにとっての時間感覚だ。三年という期間は区切りがよいものだと、特にリアルブルーの記憶を持つ者ならばそう考えるのではないだろうか。

 今の長老会は、およそ二年前の事件から大きく様相を変えている。
 唯一生き残った長老であるユレイテルと、首謀者の近くに居たハジャ。その二人は今、共に長老会の重鎮としてその権力を揮う立場にある。他の長老も居ないわけではないのだが……確かな実務経験を持っているのがその二人だけというのが表向きの大きな理由である。
 実際のところ、事件を繰り返さない戒めとして、二人の存在は意味がある。過去を隠さないことこそが大事であると、ユレイテルは強く主張した。過去を知る古株は恭順の思想こそ捨ててはいないが、引き起こされた事態を重く見るがゆえに反論は出来ない。それを見た若手はまだ柔軟な思考を持っていたので、少しずつとはいえ現長老会に従う姿勢を見せた。子供達は純粋である故に、大人達に従っている。

 かつての長老会の思想を強く残していた存在として、浄化術の巫女達も挙げられる。しかし、事件によりその大半の命が失われてしまっていた。器がヒトとしての変化を、感情の開花を見せた。新たに巫女として育てはじめられたばかりだった少女達は、恭順の思想に染まる前に事態の改善が図られた。
 生き残りの巫女達は、流されてゆく状況に困惑しながらも、上層部に言われるまま浄化術の輸出に協力している。そうすることで、外界への認識やヒトとしての考え方をゆっくりとだが改められるよう、願われている。

 今のエルフハイムは一枚岩と断言するまではいかないけれど。ひとつに纏まりやすくはなった……そう言えるのではないだろうか。

●改革の種

(願ったりかなったりだと言うのは、間違いではない)
 ハジャの言葉は的を射ている。確かに自分はエルフハイム内での立場に留まらず、ゾンネンシュトラール帝国において「エルフハイムの性を持ったまま」何かしらの力を得ることを求め、歩み始めたのだから。
 そのためにまずは知名度を得ようと、皇帝選挙に出馬した。求めたのは皇帝という結果ではなく。あくまでも、エルフハイムにもヒトが居るのだという事。有用な情報を持っているという事を示すための手段として利用した。
 長老会の出方を伺いながら歩んでいたはずの自分は、気付けば長老になっていた。それも大長老と言える立場で、確かにもう誰の顔色を窺う必要なんてない。気にすべきは鏡を利用しての身嗜みくらいだろうか。
 しかし。
「世間が納得すると、皇帝殿は考えているのだろうか」
 打診という段階を飛び越え持ち込まれた話だ。ユレイテルに断るつもりもないのだが。

(想像だけであれば……)
 エルフハイムという所属が彼女にとって欲した肩書だったのではないだろうか?
 不可侵条約を結んだ相手。ゾンネンシュトラール帝国内に在る森を拠点としていながらも、エルフハイムは帝国に従属を表明しているわけではない。そのトップを、帝国の最高決定機関である騎士議会の対極に据える。上層部と庶民。帝国と森都。わかりやすい構造だ。国民であると認めながらも、対等であるように扱い、庶民議会の存在をより明確に印象付けている。

(どこまでも、役を求められる立場なのだろうか)
 駒のようになるわけにはいかない。以前だって、リスクを分かっていながら役を与えられ、出来ることをやってきたつもりだ。ならばこの先も、与えられたものを自分の力として誇れる形にもっていくしかない。
「準備をしなければ」
 納得するもしないも、納得させるしかないのだろう。その手腕を持ってして認めさせる必要があるのだろう。
 正直、人間相手にどう接すればいいのか。同族はエルフハイムの現状を考えるに問題ないのだが。政治でも商売でもない方法には疎いとも言えるのだが……

「だったら、より彼ら……帝国民に近い子達に聞けばいいんじゃない?」
 パウラの淹れた茶を飲みながらも、シャイネ・エルフハイム(kz0010)の返事は早かった。帝国におけるエルフの、ひいては亜人の印象を少しでも良いものにするために。何か良い方法がないかと尋ねた側であるユレイテルは、目から鱗が落ちる思いだ。
「ハンターに依頼という形なら、応えてくれる子が居るかもしれないよ♪」
 視点が多ければ多いほど、案が増えるかもしれないのだし。
「……それに、今までだってそうしてきたんじゃなかったかい?」
「そうです、ね。確かに私は……では、シャイネ殿」
 居住まいを正すユレイテルの様子にシャイネはくすりと笑う。長老にまでなったというのに、今もまだ自分に対して遠慮がある。年上に対して丁寧にするのは、彼の性分なのかもしれないけれど。
「その時は同行していただけませんか」
「うん、別に構わないよ♪」
 ハンターとして指名してもらえれば、ね?

リプレイ本文



 州と並ぶ大地 歪虚を退ける浄化の祈り
 智は果無し 恵は果無し
 慈しみ深き朋なるユレイテル 罪 咎 憂いをとる

 ユメリア(ka7010)は都市を、町を回っていた。謳うのは依頼人のことだ。時間の限られる中で少しでも多くの土地に立ち寄れるよう日程を組んで。急ぐ中でも、調べ得た情報を受け入れやすくなるよう言葉を選んで。

 一人でも咲ける者たち同士 集まることでより華やかに

 会っていないユメリアでも、学べば謳える。受け入れやすい形であれば、未だ触れる機会のない人にも届く可能性はあると信じて。
 ユメリアの言葉はリュートの調に乗り、人の話題にも乗って確実に、少しずつ。林檎の花の香りが風にふわり、流れていく。



 ユリアン(ka1664)の先導で場所が整う。
「折角事務所があるんだから、定期的に懇談会をセッティングしてみたらどうかな」
 今みたいに、ハンターだけに限らない、外部の人とゆっくり話す機会を。椅子だけでも揃えた方がいいよと、間に合わせの不揃いな椅子に小さく笑いながら。

 美味しいお茶に食べ物、お喋り。夢路 まよい(ka1328)の脳裏に閃いた。
「つまり、合コン!」
 この前巫女さん達と会食したのと同じだねと言えば、ユレイテルがやや肩を落とす。
「名目は別にする予定だ」
 細かい事情は気付かなくてもいいもので。
「それはそうとして。美味しい物を食べながらだと、仲良くなれる気がするよね」
 まよいは困っていないから、気にせず突き進む。
「私はいいと思うよ!」
 この前も楽しかったしね!

「少しずつ浸透する様に、が理想かな」
 エルフハイムの人達が続けていけることであるのは勿論だ。時間の感覚が違うからこそ、手はいくつもあった方がいい。
「五感に印象に残るものとユレイテルさんを紐づけられたらと思ってさ」
 耳に残るテーマ曲を作るって話をしてみたんだ。ユリアンの視線が示す先にはルナ・レンフィールド(ka1565)とユメリア。

 活動の根幹にあるのは。
「誰もが歪虚病に怯えない世界……だな」
 今は同朋が一番切迫しているから。同族重視に見えるのは仕方ないがと自嘲が混じる。
「その為に外で振舞いやすい力と立場が必要だ。帝国を対象にすべきなのは土地もあるが、過去を思えばこそ。……森に籠もらず、柵を支えにせずとも世界を楽しむべきだ」
 熱くなりすぎたと一度息をつくユレイテル。
「足掻く中で、隣人の助力にもなれるなら、それは善いことだろう」

 促したルナに向き合って、紡がれた言葉。
 言葉も音のひとつで、つられ浮かぶものがある。即興のフレーズを口ずさむ。
 全て主題になるよう、惹きつけるような曲を意識して。どれも短めに纏めるのは、覚えやすさを意識したから。繰り返しても違和感がないように、つい口ずさんでしまうようなものがいい。それはテンポの変更でフォローできるかな?
「ひとつ、惹かれるものを選んでもらえますか」
 自身でも書き留めながらもう一巡。ユレイテルの選んだひとつが全ての基点になる予定だ。



「知名度を上げるなら、直接挨拶回りが定番じゃないかな」
 浄化部隊に便乗すれば各地を回れるのではとキヅカ・リク(ka0038)。
「浄化術で貢献していることと一緒に、良い噂と顔が売れると思う。一般向けの特産品をつくって、ついでに運んで売ってみるとかも」
 ハンター向けの品は出回ってきているが、もっと対象を広くしたい。
「候補は林檎なんだけど」
 そのままだと数が確保できないだろうし、加工品にして消費を抑えてさ。
「ユレイテル印のエルフハイム林檎パイとか」
 商品に名前を入れるのも忘れずに。収入にもなって、名前も売れる。

「参考になるかと思って持ってきたわ」
 私の好みもあるけどねと、リアリュール(ka2003)が見せるのはハーブティーやシードル。エルフハイム産の品は持ち出し、それ以外は街で差し入れにと買い求めたものだ。
「美味しいだとか、耳に残るだとか……良いものは、どんな相手であっても人の気を惹くものよ」
 己の手に咲く六花を見せるように揚げた。工芸品の例で持ってきたの、と添えて。
「街歩きの間にね、女性や子供にずいぶんと声を掛けられたわ」
 指輪の花が本物かどうか。自分達でも手に入るのかどうか……
「こういった既に知られているものなら、ハイム産だと付け加えるだけでも効果はあるわね」
 人の目につくように携帯して印象に残すとか、と提案を続けるリアリュール。

「今も余剰分を利用し交易品にしているが……」
 数が圧倒的に不足するらしいと気づくリク。
「今在るものが難しいなら、新しいものを作るしかないけど」
 売るまでに時間がかかるから、繋ぎも必要だ。
「珈琲豆か、帝国に浸透している芋が候補だね。芋だと、質を重視しないと厳しいかな」

 空気と共に話題を切り替えるリアリュール。
「特産品を集めてエルフハイム・フェスを開く手段もあるわね」
 売るだけじゃなくて、体験できるようなものも併せたい。
「文化に直接触れてもらい、楽しい記憶とセットに出来れば無関心への対策になるんじゃないかしら」
 エルフに親近感を見出してもらう……場所が違うだけで、ヒトはそう変わらないことを伝える手段だ。



「新聞を使ってはどうかと思う」
 地道な取り組みは勿論だけれど、広く知れ渡る便利な手段もと深守・H・大樹(ka7084)は考える。何よりも、定国民に周知されないと意味合いが薄れてしまうから。
「懇親会やテーマ曲を取材してもらうとか」
 号外で名前だけみたいな扱いよりずっと違うだろう。
「イメージアップの一歩はお互い知りあうことだと僕は思う」
 切欠さえも知らなければ、知りたいと思うこともない。
「知られてないのにイメージアップとか無理だよ。だからまず、知りたいって思ってもらうことが大事」
 知らないと得体が知れないは等しい。そんな状態で人を招くなんて怖がられることもあるだろう。
(僕は、それを日々実感する種族だからね)

「知ってもらいたかったら、こちらも知ろうという姿勢も大事だね」
 自分のことを知る気がない相手を知りたいと思う人はいないし。そんな相手に自分達の生活に関わること……政治も任せたくないでしょ?
 相槌を打ちながら続くのは、エルバッハ・リオン(ka2434)。
「貴方自身のことを帝国民に周知することも大切と思いますが、ユレイテルさんが帝国のことを良く知っていると帝国民にアピールすることも必要と思います」
 知りたい、という意思表示だけでは足りないのだ。
「勿論、帝国に暮らす人達から直接聞きたい、その姿勢は悪いことじゃありません。……受け売りになってしまいますが、多くの民は自分達のことを知らない者よりも、良く知っている者に好感を持ちやすい傾向にあります」
 自分に置き換えて考えてみてくださいと続ける。エル自身も自分が民の立場だったらと、考えながら伝えるように意識して。
「帝国の風習や歴史だけでなく……例えばですが、遊説先の地域の特産などを事前に調べておいて、演説などの際にさり気なく話題に出せば、地元の人たちに好感を持ってもらえると思います」
 自分の暮らしに当たり前のことを当たり前だと受け入れてもらえる。それだけで認められた気分になる……そう思う。

 手記の寄稿も提案する大樹。
「子供でも興味を持つレベルの話からだね。急に小難しい話なんて誰もきかないから。ユレイテルさんの目線で、日常だったり、帝国との違いに驚いたことだったり。単純なものなら誰でも興味を持ちやすいと思うし、入り口は大事だよ」
 メモをとるユレイテルのためゆっくりと話す。相手を知る姿勢を見せることの大切さは特に。



 音に載せた言葉は意味を強くする。音を変えるだけで空気が変わる。
 籠めたいものが多すぎて、けれど短く、勢いのある惹きつける力、強さが必要。どれも切り捨てちゃいけない気がして、幾度も順に音に載せて、ルナの頭の中でくるくる回る。

 邪魔にならないように、ハーブティーを淹れるユリアン。レモングラスと、朝摘みのフレッシュミント。これは最初にパウラに預けたものとは別のブレンドだ。ソーサーには小さな容器で蜂蜜を添えて、小さくカチャリと音を立てて置く。気付かないようなら集中力が続いている証拠。気付くなら……

 小さな音がノックをするように響く。続いて鼻腔を擽るレモンの香り。ルナの意識が外に向いた。
 今までに挙がった香りと違う事に気付いて、綻ぶように笑顔が浮かぶ。
「スッキリするかと思って。休憩は必要だよ」
 ルナさんらしいけどと小さく笑みがもたらされる。
「ありがとうございます」

 シンプルに、必要なものを思い出そう。
(全ての根底に必ずあるのは『調和』)
 ひとつの声が音となって、もう一方からも別の声が音を紡いで。けれど声をぶつけあって消すのではなくて。同じ方を向くように、隣り合って重ねたら。
 重なることができたら、新しい和音になる。それが音楽だけでなく、意識の上でも叶うように。
(似たフレーズを重ねちゃ意味がないから)
 選んだひとつと全く違うもう一つを選び出して重ねる。所々が和音として響くように整えて。

 香草の混じる空気の他に、ユメリアの纏う香気が、ふわり。
「懐かしい香り、か? 街で聞いたようにも思うが」
 誰からだったかと首を傾げるユレイテル。
「お手伝いに来てくれた子です、ユレイテル様」
 パウラの言葉に思い出したのか、ユレイテルが頷く。
「なら、貴女が詩人殿か」
 甲斐があったと小さく微笑むユメリアに視線が向く。
「林檎の香りがする度に、人々はエルフハイムと大長老様の偉大さを思い返すでしょう」
「私は己を長老だと名乗っている……いや、今は無粋か、感謝する」
「消えた記憶すら呼び返しますし、まだ出会わぬ存在をむすびつけてくれるのです」
 その反面、一度でも醜聞の元を放てば、消すことは非常に難しい。
「利己的な態度を示せば、森の香りもそうとられてしまうでしょう……どうか、間所は誰にでも傾けてくださいますよう」
「……確かに、記憶に留まりやすいようだ」
 身に刻んでおこう。

 音は生まれる 還るは音の海
 森は育む 変えるは風の行方

 一人でも咲ける者たち同士 集まることでより華やかに
 我はひと片の雫を垂らさん

 ユメリアとルナの作り上げた曲が繰り返し紡がれる中、書き留めるエルフ達。
(後は……笑顔でいればそれだけでもいいと思うんだけどな)
 今少しでも気を緩めて休んで貰えたらいいと、ユリアンは願う。



「リーダーのイメージは、集団のイメージで決まるってところもあるんじゃない?」
 まよいにとって、実際に会った回数が多いのは巫女達だ。やはり印象が強い。
「前線で頑張ってる人達の頑張りをもっとアピールしたり、直接交流して親しんだりしてもらうのも大事なんじゃないかなあ。だって接してみたら、とっても親しみやすい人達だったよ」
 合コンでの会食を思い出す。特にまよいは年も近く、感覚も近い様に思ったのだった。近年外に出るようになったばかりの、それまで森の中に閉じこもっていた巫女達。まよい自身にに似ている自覚はないけれど、経緯が近い故に。
 用意していた魔導カメラも見せた。
「今はこういうものもあるし、前線で活躍するエルフの人達の写真をとって、それの展示をするとか……」
 実際に帝国の力になっている様子を目で見て貰う機会はあっていいと思うんだ。
「なにより、ラズビルナムっていう前線でせっかく頑張ってるんだし、そういうとこアピールしてあげないと勿体ないと思うよ!」
 友達の活躍を誇るような笑顔で。

「懇談会そのものも宣伝が必要だし、香りをつけた栞とかどうかな」
 これも嗅覚に繋げるためなんだけど、とユリアン。
 ただ案内のチラシを配るよりも受け取ってもらいやすい。お茶や菓子が理由であっても立ち寄ってもらえる、顔を見に来てもらえる。まずは面識ありきだ。
「香りもユレイテルさんの好きなものにするのは?」
 さっきの林檎の香りみたいに、普段から纏うようにしたら、より印象が強まるだろうから。
「その栞も、配るのを森の子達にするとか……外に出るの、大丈夫かな?」
 浄化術の仕事以外で、森の外に出る切欠にならないかな。展示だけじゃ、仕事だけじゃない外への機会を。



「人に交ざって頑張っているエルフもいるはずよね。その活動を盛り上げることで知名度を上げていく方法もあるわ」
 そのエルフが認められれば、そのエルフは立場が良くなり、ユレイテルは協力者としての名前が知れる。互いに協力できるような相手を増やすのも大切だとリアリュール。

「エルフハイムでも、同じように帝国のことを周知していくと良いと思う」
 協力以前に、同朋なのだから。エルフハイムの人達の意識も外に向けないと、変わろうとしている姿勢は一人じゃ示せない。一方方向だけじゃなくて、内外どっちも働きかけなくちゃ架け橋とは言わないと思う大樹の言葉にリアリュールが頷く。
「森に居る私の家族も人の事はよく思っていないわ」
 人と直接交わる機会もほぼないから、それを変えようもないのだが。
(過去のエルフと帝国の関係を知る人には怨念対象なのかもしれないわね?)
 そこに一手あるなら、いつかは。

「……しかし、ユレイテルさんたちだけで必要な知識を調べるのは大変と思いますし、話し方を工夫する必要もあると思います」
 議会における話題、つまり議題についてもエルは見越していた。実際に議員としての業務、議題では世界情勢も関わってくるだろう。
「長い目で見れば、帝国以外の情報も必要になる筈です」
 参加が決まっているのなら、準備を始めていても無駄にはならない筈だ。
「必要経費と割り切って、知識の提供や各種助言をしてくれる相談役を雇われてはいかがでしょうか」
 


「きっと、ルミナちゃんの夢の実現に手を貸してほしいっていう意味なんだと思う……ユレイテルさんがもし皇帝になったら、どうしたい?」
 わざと師は搾取を、そして平和を挙げるリク。
「ルミナちゃんはね……いや。僕はその意思を継ごうと思ったんだ」
 彼女の背中を見ていれば伝わると思ったから明言を避けた。だからその先を話す。
「果ては遠いと知っている」
 だから手も借りるし、必要なら貸そう。今はまだ同朋の手を借りてばかりだが。
「例えば元影武者とかな」
(偉くなったじゃんか、ハジャの癖に)
 リクが思うのは大事な友のこと。長老の座に収まっていると聞いていて、心配と笑いがこみ上げた。
「ユレイテルさん。アイツもっとこき使った方がいいですよ。ほんと」
 ポン。珈琲豆の袋を渡す。
「渡しておいてください。アイツ、好きだったはずだから」
 目の力と声音にしばし黙ってから、一人言だ、とユレイテルの声。
「柵と必要がある上で、贖罪と義務で収まっているようにも。だが私は見えないふりをし続けるのだろうな」

依頼結果

依頼成功度大成功
面白かった! 6
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

  • 光森の奏者
    ルナ・レンフィールドka1565
  • 重なる道に輝きを
    ユメリアka7010

重体一覧

参加者一覧

  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよい(ka1328
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • 光森の奏者
    ルナ・レンフィールド(ka1565
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • 抱き留める腕
    ユリアン・クレティエ(ka1664
    人間(紅)|21才|男性|疾影士
  • よき羊飼い
    リアリュール(ka2003
    エルフ|17才|女性|猟撃士
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • 重なる道に輝きを
    ユメリア(ka7010
    エルフ|20才|女性|聖導士
  • 輝く星の記憶
    深守・H・大樹(ka7084
    オートマトン|30才|男性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/10/09 21:14:53
アイコン ご質問を…
ユメリア(ka7010
エルフ|20才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2018/10/10 23:19:00
アイコン イメージアップ大作戦!?
ユリアン・クレティエ(ka1664
人間(クリムゾンウェスト)|21才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2018/10/11 08:17:36