ゲスト
(ka0000)
超人蹴球・前半戦!(龍騎士側)
マスター:鮎川 渓

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/10/11 07:30
- 完成日
- 2018/10/20 15:44
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●外の世界へ
龍園にて。
龍騎士隊隊長・シャンカラ(kz0226)は、執務机に広げたあるものを見つめ思案していた。
そこへ、
「戻ったぜェ」
新米達と警邏に出ていた年長龍騎士・ダルマ(kz0251)がやって来る。
「おかえり、どうだった?」
尋ねると、ダルマは眉を跳ね上げた。
「大型雑魔7匹、アイツらだけできっちり片付けた。もう新米卒業でいいと思うぜェ?」
ダルマに調練を任せているリブや双子達の顔を思い浮かべ、シャンカラは口許を綻ばす。
「ダルマさんも一安心だね、お疲れ様」
「おう、もうガキんちょどものお守りはうんざりだ」
口ではそう言うものの、ダルマが後輩達の成長を誰よりも喜んでいることをシャンカラは知っている。悪態づくダルマを細めた目で見守った。
「ンで、隊長殿は何見てんだ?」
そうとは知らぬダルマ、執務机を覗き込む。広げられていたのはクリムゾンウェストの地図だった。
ここ北方王国の南は、様々な部族が暮らすという『辺境』の領域。更に南には高い機導技術を誇るという『ゾンネンシュトラール帝国』があり、更に南下していくと若き女王が統べるという『グラズヘイム王国』、特色に富んだ都市を持つという『自由都市同盟』がある。
そう。
何故『~という』などとまどろっこしい言い回しをしているかと言うと、
「龍園が外界と交流するようになって1年以上……でも僕ら、まだ西方へ行ったことがないだろう?」
そうなのだ。
交流は続いているもののあちらから出向いて来てもらうばかりで、龍騎士達が西方を訪ねたことは一度もない。
「ま、しゃーねェだろ。特にお前は隊長だ、そう龍園を離れるわけには」
「そうだけど」
シャンカラは眉根を寄せる。
「……"知ってもらう"ばかりでは、交流とは言えないんじゃないかな。ハンターさん達が初めて龍園に来て、龍園やドラグーンのことを知ろうとしてくれた時、僕は嬉しかったんだ。相手に興味を持つって交流の第一歩だろう? 僕ももっと西方のことが知りたい。行って、その国や地域の文化を感じてみたい」
若い情熱を込めて語る隊長に、ダルマは思案気に顎髭を撫でた。
腐竜率いる強欲竜の大群を退けて以降、龍園近郊に現れる竜の数は減っている。追放龍騎士達は白龍ヘレ殺害失敗後どこに雲隠れしたものか、すっかり鳴りを潜めていた。
シャンカラが龍園を離れられるとすれば、比較的平穏を保っている今なのではないか。
「……で、どこ行きてェのよ?」
却下されなかったことに顔を輝かせたシャンカラだったが、すぐ眉を寄せた。
「どこがいいのやら……何せツテがないからさ」
「ツテも何も、龍騎士隊の隊長として行くンならそりゃァ立派な外交だ。先方に前もって打診して、きっちり筋通して行かなきゃならんぜ」
シャンカラは目を丸くしてダルマを見上げる。
「あンだよ?」
「ダルマさん、たまにしっかりしたこと言うなぁって」
次の瞬間、ダルマの鉄拳がシャンカラの頭に落ちた。
●帝北交流試合
龍騎士達が訪問先として選び、その申し出を快諾してくれたのは帝国だった。龍騎士は龍信仰のうち、特に龍の持つ力を尊び象徴する側面を持っている。国力を軍事に注ぎ歪虚侵攻阻止を命題に掲げる帝国とは、互いに通じるところがあったのかもしれない。
約束の日、龍騎士達を出迎えてくれたのは、透き通るような肌に金髪碧眼の色男だった。
「北方には秋がほぼない? それなら是非帝国の秋を味わってもらわないとね」
帝国軍第一師団の副師団長・シグルド(kz0074)と名乗った彼を、ダルマはしげしげ眺める。
(軍事国家の軍人っつーから、どんなゴツい野郎が出てくるかと思いきや……大丈夫なのかァ、この国は?)
案じかけたものの、そんな彼の横で負けず劣らず優男な我が隊長がにこにこしているのを見、すんっと冷静になった。
と、帝国の色男は何かを取り出すと、龍園の優男に手渡す。
球。
ボールである。
ダルマは目が点になった。けれどシグルドは秋風のようにさわやかに微笑む。
「秋といえばスポーツの秋と言ってね。このボールを蹴って相手陣地の枠に入れたら勝ちというゲームがあるんだ。サッカーって言うんだけどね。ボールを保持する技術、誰がどこにいるのかを把握する視野、仲間との連携性。戦いにも通じるところがあるだろう」
(この軍人さん突然何言いだした!?)
異文化交流でまず球技とは。てかサッカーとは。ぐるぐるするオッサンダルマをよそに、
「確かに仰る通りですね」
シャンカラは若さ故か柔軟に受け入れていく。むしろ楽しげなその顔にダルマはすんっと以下略。
ともかくサッカーなのである。
「ルールは、手を使っちゃいけない、休憩を挟んで前半と後半で戦う。それくらいだね」
シグルドのざっくりした説明を聞き、吹っ切れたダルマはシャンカラから球を奪い取った。
「細かいところはやってみりゃわかるだろ」
異文化交流にはノリと勢いも肝要だとハンター達の姿勢から学んだ。球をゴールとやらに向け力いっぱい蹴っ飛ばす!
「どぉぉぉりゃああああっ!!!!!!」
ちゅどんっ!!!
マテリアル光を纏ったダルマの脚で蹴りつけられた球は、球技にあるまじき効果音を響かせゴールへ――刺さるかに思われた。
「そうそう、それでいいんだ」
だが弾丸めくシュートは、微笑を崩さぬままのシグルドによって止められる。無論サッカーなので脚で、しかも片脚だけでいとも容易く。
「すごい……あの一撃を止めるなんて」
シャンカラは驚愕と称賛を込めて呟いた。隊内でも指折りの実力者であるダルマの一手(蹴)が、こうも簡単に止められた事実。――あれが魂の一撃だったら? あの球が、大切な守るべきものだったら?
シャンカラの胸が高鳴った。ダルマも好戦的に口角を上げる。
「……全力でこのスポーツ交流試合、させていただきます」
「いいね、その顔だ」
シグルドは笑うと、シャンカラに蹴ってよこし、そしてそのまま言葉を続けた。
「ただ人数は僕たちだけでは少ないかな。僕たちをつなげてくれたハンターも呼んで、盛大にやろうと思うんだけど、どうだろう」
「良いですね」
差し出されたシグルドの手を、ふたりはしっかりと握り返す。シグルドは真摯な口調ながらどこか楽しげに告げる。
「要はボールを蹴ってゴールに入れたらいいんだ。スキルも装備もなんでもあり。これは球技とかいう遊びで丁寧に包み隠した……戦いだ!!」
「はいっ! 胸をお借りいたします!」
シャンカラは何の疑いもなく深い礼で応え、ダルマは球技って何だっけと首捻りつつ同様に頭を下げた。
――そしてシグルドが説明を中途半端で終わらせてしまったばかりに(意図的との見方もアリ)、手以外ならあらゆる手段を認める超人サッカーが交流試合として設定されたのであった。
よーし、みんな。死ぬ覚悟はできてるか?
それじゃ、プレーオフ☆
龍園にて。
龍騎士隊隊長・シャンカラ(kz0226)は、執務机に広げたあるものを見つめ思案していた。
そこへ、
「戻ったぜェ」
新米達と警邏に出ていた年長龍騎士・ダルマ(kz0251)がやって来る。
「おかえり、どうだった?」
尋ねると、ダルマは眉を跳ね上げた。
「大型雑魔7匹、アイツらだけできっちり片付けた。もう新米卒業でいいと思うぜェ?」
ダルマに調練を任せているリブや双子達の顔を思い浮かべ、シャンカラは口許を綻ばす。
「ダルマさんも一安心だね、お疲れ様」
「おう、もうガキんちょどものお守りはうんざりだ」
口ではそう言うものの、ダルマが後輩達の成長を誰よりも喜んでいることをシャンカラは知っている。悪態づくダルマを細めた目で見守った。
「ンで、隊長殿は何見てんだ?」
そうとは知らぬダルマ、執務机を覗き込む。広げられていたのはクリムゾンウェストの地図だった。
ここ北方王国の南は、様々な部族が暮らすという『辺境』の領域。更に南には高い機導技術を誇るという『ゾンネンシュトラール帝国』があり、更に南下していくと若き女王が統べるという『グラズヘイム王国』、特色に富んだ都市を持つという『自由都市同盟』がある。
そう。
何故『~という』などとまどろっこしい言い回しをしているかと言うと、
「龍園が外界と交流するようになって1年以上……でも僕ら、まだ西方へ行ったことがないだろう?」
そうなのだ。
交流は続いているもののあちらから出向いて来てもらうばかりで、龍騎士達が西方を訪ねたことは一度もない。
「ま、しゃーねェだろ。特にお前は隊長だ、そう龍園を離れるわけには」
「そうだけど」
シャンカラは眉根を寄せる。
「……"知ってもらう"ばかりでは、交流とは言えないんじゃないかな。ハンターさん達が初めて龍園に来て、龍園やドラグーンのことを知ろうとしてくれた時、僕は嬉しかったんだ。相手に興味を持つって交流の第一歩だろう? 僕ももっと西方のことが知りたい。行って、その国や地域の文化を感じてみたい」
若い情熱を込めて語る隊長に、ダルマは思案気に顎髭を撫でた。
腐竜率いる強欲竜の大群を退けて以降、龍園近郊に現れる竜の数は減っている。追放龍騎士達は白龍ヘレ殺害失敗後どこに雲隠れしたものか、すっかり鳴りを潜めていた。
シャンカラが龍園を離れられるとすれば、比較的平穏を保っている今なのではないか。
「……で、どこ行きてェのよ?」
却下されなかったことに顔を輝かせたシャンカラだったが、すぐ眉を寄せた。
「どこがいいのやら……何せツテがないからさ」
「ツテも何も、龍騎士隊の隊長として行くンならそりゃァ立派な外交だ。先方に前もって打診して、きっちり筋通して行かなきゃならんぜ」
シャンカラは目を丸くしてダルマを見上げる。
「あンだよ?」
「ダルマさん、たまにしっかりしたこと言うなぁって」
次の瞬間、ダルマの鉄拳がシャンカラの頭に落ちた。
●帝北交流試合
龍騎士達が訪問先として選び、その申し出を快諾してくれたのは帝国だった。龍騎士は龍信仰のうち、特に龍の持つ力を尊び象徴する側面を持っている。国力を軍事に注ぎ歪虚侵攻阻止を命題に掲げる帝国とは、互いに通じるところがあったのかもしれない。
約束の日、龍騎士達を出迎えてくれたのは、透き通るような肌に金髪碧眼の色男だった。
「北方には秋がほぼない? それなら是非帝国の秋を味わってもらわないとね」
帝国軍第一師団の副師団長・シグルド(kz0074)と名乗った彼を、ダルマはしげしげ眺める。
(軍事国家の軍人っつーから、どんなゴツい野郎が出てくるかと思いきや……大丈夫なのかァ、この国は?)
案じかけたものの、そんな彼の横で負けず劣らず優男な我が隊長がにこにこしているのを見、すんっと冷静になった。
と、帝国の色男は何かを取り出すと、龍園の優男に手渡す。
球。
ボールである。
ダルマは目が点になった。けれどシグルドは秋風のようにさわやかに微笑む。
「秋といえばスポーツの秋と言ってね。このボールを蹴って相手陣地の枠に入れたら勝ちというゲームがあるんだ。サッカーって言うんだけどね。ボールを保持する技術、誰がどこにいるのかを把握する視野、仲間との連携性。戦いにも通じるところがあるだろう」
(この軍人さん突然何言いだした!?)
異文化交流でまず球技とは。てかサッカーとは。ぐるぐるするオッサンダルマをよそに、
「確かに仰る通りですね」
シャンカラは若さ故か柔軟に受け入れていく。むしろ楽しげなその顔にダルマはすんっと以下略。
ともかくサッカーなのである。
「ルールは、手を使っちゃいけない、休憩を挟んで前半と後半で戦う。それくらいだね」
シグルドのざっくりした説明を聞き、吹っ切れたダルマはシャンカラから球を奪い取った。
「細かいところはやってみりゃわかるだろ」
異文化交流にはノリと勢いも肝要だとハンター達の姿勢から学んだ。球をゴールとやらに向け力いっぱい蹴っ飛ばす!
「どぉぉぉりゃああああっ!!!!!!」
ちゅどんっ!!!
マテリアル光を纏ったダルマの脚で蹴りつけられた球は、球技にあるまじき効果音を響かせゴールへ――刺さるかに思われた。
「そうそう、それでいいんだ」
だが弾丸めくシュートは、微笑を崩さぬままのシグルドによって止められる。無論サッカーなので脚で、しかも片脚だけでいとも容易く。
「すごい……あの一撃を止めるなんて」
シャンカラは驚愕と称賛を込めて呟いた。隊内でも指折りの実力者であるダルマの一手(蹴)が、こうも簡単に止められた事実。――あれが魂の一撃だったら? あの球が、大切な守るべきものだったら?
シャンカラの胸が高鳴った。ダルマも好戦的に口角を上げる。
「……全力でこのスポーツ交流試合、させていただきます」
「いいね、その顔だ」
シグルドは笑うと、シャンカラに蹴ってよこし、そしてそのまま言葉を続けた。
「ただ人数は僕たちだけでは少ないかな。僕たちをつなげてくれたハンターも呼んで、盛大にやろうと思うんだけど、どうだろう」
「良いですね」
差し出されたシグルドの手を、ふたりはしっかりと握り返す。シグルドは真摯な口調ながらどこか楽しげに告げる。
「要はボールを蹴ってゴールに入れたらいいんだ。スキルも装備もなんでもあり。これは球技とかいう遊びで丁寧に包み隠した……戦いだ!!」
「はいっ! 胸をお借りいたします!」
シャンカラは何の疑いもなく深い礼で応え、ダルマは球技って何だっけと首捻りつつ同様に頭を下げた。
――そしてシグルドが説明を中途半端で終わらせてしまったばかりに(意図的との見方もアリ)、手以外ならあらゆる手段を認める超人サッカーが交流試合として設定されたのであった。
よーし、みんな。死ぬ覚悟はできてるか?
それじゃ、プレーオフ☆
リプレイ本文
●
蒼界におけるサッカーの歴史は古い。
「――サッカーは、元々敵兵の首を布で包んで蹴って遊んだ? のが発祥だって聞いたの」
ディーナ・フェルミ(ka5843)は深刻な面持ちで告げる。
「毎試合監督予備含めチーム全員首になるかもしれないなんて……何て恐ろしいの、リアルブルー」
「元のルールは知らないが……そんな競技だったのか。今回のルールを見ても、半ば無法地帯じゃないか。随分物騒な競技を……」
唸るクラン・クィールス(ka6605)。トリエステ・ウェスタ(ka6908)は柳眉を寄せる。
(んー、まあなんか色々と間違ってそうな気はするんだけど、元を知らないから何とも言えないのよね)
殆どの紅界出身者は、伝聞や書物から得たサッカーの知識はあっても、経験がない。ディーナが得た知識も大分偏っていたようで。
この交流戦までサッカーのサの字も知らずにいた龍騎士達、涙目。蒼界出身のメアリ・ロイド(ka6633)へ縋るような目を向けたが、彼女はかぶりを振った。
「サッカーのルールは知って……いるはずなのですが、全然思い出せません」
完全に慄いている龍騎士達は、彼女が棒読みだったことにも気付かない。ディーナはどんと胸を叩く。
「みんなが首だけにされる前に蘇生できるよう、サポーターとしておおいに頑張るの安心するの!」
「おぉ!」
龍騎士達は歓声をあげた。
「何か盛り上がってるね」
少し離れた席で思案中だった鞍馬 真(ka5819)とアーク・フォーサイス(ka6568)は、賑やかな様子ににっこり。何を思案していたかと言えば、説明されたルールについて。
「「サッカーってこんなだったっけ……?」」
異口同音に言い顔を見合わす。
「……まあ皆で楽しめたらそれで良いかなって」
「シャンカラ達が楽しそうだからいいかなって」
あらまぁ何だか似た者同士。糸目なエルフのレナード=クーク(ka6613)、同じくエルフで蒼界人の父を持つ氷雨 柊(ka6302)もやって来て、
「せやねー、楽しく試合が出来る様に……の気持ちを大事に、やんね!」
「お父さんから話は聞いてましたがー……遊ぶのは初めてですねぇ。皆で楽しくやりましょうー♪」
と和気藹々。その奥でサフィーア(ka6909)は、
(……これは交流の一環。それに興味があることは悪いことではないわ)
自らにそう言い聞かせつつ、このほっこりな空気にじんわり温かくなった気がする胸へ、不思議そうに手を当てていた。
と、シャンカラは龍騎士達の脇をそぉっと過ぎようとしている男に気付いた。
「あの、」
男は肩を跳ねさせたが、相手が隊長のシャンカラだと分かるやすっ飛んでくる。
「龍騎士隊の皆様と此方でお会い出来るなんてぇ。ドラグーンのエンバディ(ka7328)と申しますぅ、わたくしも先日、龍園から西方へ来たばかりでぇ~」
「そうでしたか! エンバディさんはどうして西方へ?」
「ええ、と」
エンバディ、内心冷や汗たらり。
(神官降格されて飛ばされた事はバレたくないっ)
どう凌ぐか悩んでいると、
「シャンカラ、久し振りだな!」
同じドラグーンだが帝国出身のカイン・シュミート(ka6967)がやって来た。エンバディはこれ幸いと姿を消す。
「西方が故郷の俺からしたら西方にようこそってとこだな」
「えっと、お邪魔します??」
「何だそりゃ。ま、楽しんでこいよ。経験してこそだぜ?」
言って、カインはタオルの山を運んでいく。彼は今回マネージャーなのだ。入れ違いに駆けてきたのはアルカ・ブラックウェル(ka0790)。
「今回は宜しくね!」
アルカはダルマを仰ぎ、
「ホントは伯父さんが来たがってたんだけど、寄る年波に勝てないって。ふふっ、ダルマに宜しくって言ってたよ!」
ダルマはピンと来て膝を打つ。
「結婚した姪ってお前さんかァ、おめでとさん!」
「伯父さんそんなことまで話したのっ? やーだーっ、でもありがと♪」
アルカは頬を赤らめダルマの背をぺちんっ。それから小首を傾げ、
「シャンカラはシグルドに付くつもりだっけ? (色んな意味で)シグルド狙いの人が多そう……」
「人気者なんですねぇ」
(違う、そうじゃない!)
密かに拳を握りしめたのはアウレール・V・ブラオラント(ka2531)。選手の彼は、心に『シグルド副長討伐』というおっかない目標を掲げていた。彼の秘めたSATSUIを感じ身震いしたダルマ、見知った少女に気付き逃げるように寄っていく。
「よォ女将」
女将と呼ばれた元龍騎士の木綿花(ka6927)、きょとん。
「女将とは?」
「いやこっちの話」
「? ……帝国は私も初めてで、物見遊山もかねて参りました。皆様の好プレーも珍プレーも、想い出としてカメラに収めようかと」
「珍、」
「ご武運を」
そう言って準備のために立ち去る木綿花。ダルマ、絶対ヘマすまいと決めた。と、今度は桜崎 幸(ka7161)がきょろきょろしているのを発見し声をかけると、
「ええと、龍騎士さんを探してて。この前の会った双子の……ええと、名前わかんないや」
「カマラとカルマか。万一他国で粗相があっちゃなんねェんで、新米どもは置いてきたんだ。悪ィな」
名前が分からない時点でしょんぼりしていた幸、更に肩を落とす。
「そっかぁ。国同士の交流って大変なんだねぇ」
「その、何だ。俺やシャンカラでも良きゃ仲良くしてくれや」
オッサンダルマの弱りきった声に、幸はほわっと笑て見せた。
「ふふ。頑張ってねー、僕も応援頑張ってくよぉ」
龍騎士チームのベンチは、これからワンダーでアバウトな試合に臨むとは思えぬほど概ねほっこりしていた。
そんな空気が突然お出汁の香に染まる。星野 ハナ(ka5852)が大鍋積んだカートを引いて現れたのだ。
「やばいですぅ、素敵な筋肉てんこもりですぅ。全身でぺろぺろはぁはぁくんかくんかした……ハッ」
涎を引っ込めると、何事かと寄ってきた一同の前でオープンTHE鍋蓋。入っていたのは、2時間も前に会場入りして仕込んだという特製のうどんやパスタ。
「麺類は早くエネルギーになりますからぁ。でも満腹は避けて下さいねぇ」
龍騎士チーム、試合開始前からもぐもぐタイム突入!
腹が減っては試合は出来ぬ。しかし開始時刻は刻々と迫ってくる。ふはふもぐもぐしながら最終打合わせに入った。
ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)は口許を拭ってから、
「とりあえず、手を使わずにボールを相手のゴールに入れれば良いわけよね?」
武器の使用と合わせシャンカラに確認する。
「はい、そう伺っています」
「あの、気付いたんですが」
手を挙げたのは、先程まで念入りにウォームアップしていた央崎 遥華(ka5644)。
「うちのチーム、役割を分担していないなと」
蒼界・英国出身、女子サッカーでFW経験者の彼女らしい気付き。『ポジションてなぁに?』なシャンカラに代わり、急ぎ選手達へ希望ボジションや予定行動のヒアリングし纏めた結果、案外攻守バランスよくバラけていることが分かった。
率先して配膳を手伝っていた鋼鉄の侍女・フィロ(ka6966)、
「私はMFですね。精いっぱい努めさせていただきます、宜しくお願いします」
胸を撫で下ろしている遥華へ、労うように微笑んだ。
食べ終えたシャンカラはハナへ丁寧に礼を告げ、尋ねる。
「出場されないんですか?」
「だってぇ、参加したらお触りしまくってレッドカードになる自分が幻視出来ちゃったんですぅ。さすがに軽犯罪者になるのは深紅ちゃんに申し訳なさ過ぎてぇ」
「深紅ちゃん?」
「大精霊ちゃんのあだ名ですぅ」
シャンカラ絶句。流石は守護者と言うべきか。硬直していると、ハナがすすっと身を寄せてきた。
「どうですぅ、そろそろ私を彼女にしませんかぁ? 他の方がセクハラされなくなる特典つきですよぅ♪」
シャンカラの背後にベタフラが奔る。
「か、か彼女なんて僕にはまだ……はっ! でも僕がお付き合いすれば世の男性が救われる……!?」
斜め上の自己犠牲(?)精神を発揮しかけた時、選手招集のアナウンスが。
「よーしがんばろー!」
「行きましょう」
「コートまでお出汁の匂いするね……?」
「頑張ってねー!」
ベンチに残る者達の応援を背に受け、コートへ駆け出していく選手達。顔真っ赤なシャンカラはフラフラと従った。
●観客も選手もふりーだむ
「へっへーっ、やってまいりましたっ! 超人蹴球・前半戦!」
レム・フィバート(ka6552)は、アークとクランを伴い気合満タン。
「じっきょーととっこーはレムさんが行ってゆくますっ。いくぜっ! アーくんとクランらんっ☆」
可愛いあだ名をつけられ、クランは心にダメージを負った。
「クランらん……っふふ、可愛いね」
「……アークは後で覚えていろ」
歯噛みするクランの手には物騒なモンが握られている。釘バット。世紀末ヤンキー御用達なソレどうしたクランらん。
「蒼界にはバットとやらで球を吹っ飛ばす競技があると以前聞いてな。死の球(デッドボール)なんて単語が存在する物騒な競技だとか……今回のルールを聞き、成程これか、と。得物くらいルールに倣うかと思ってな」
クランらんは大真面目。周りの蒼界出身者は必死に笑いを堪えぷるぷる。異文化交流はトライアンドエラーの積み重ねである。
というか選手達は両チームとも概ね釘バット以上に物騒な、というか戦闘依頼に赴く時と同様の装備で来ているので、パッと見バトルロワイヤルでも始まるのかと言った風情。そんなコート内を見渡し、応援に駆けつけたエリス・ヘルツェン(ka6723)は胸の前で手を握りしめる。
「地球の競技を此方の世界で見られるなんて、不思議な気持ちです」
エステル・クレティエ(ka3783)は、以前会った地球人の少年を思い出す。
「余り知らない競技ですけど……玲さんがここに居たら色々教えて貰えたでしょうか」
「選手として一緒に戦えないのは、少し歯痒い気持ちではありますが」
「その分精一杯応援しましょう? 両チーム楽しめると良いですね」
「はい、しっかり応援・サポートをさせて頂きます!」
頷き合うと、エステルは仲良しのアルカへ、
「アルカさーんがんばってーっ」
そして帝国チームの選手である兄にも、
「兄様ーっ、情けなく転んだら許さないからっ」
それぞれエールを送り、首に下げていた「星笛」を溌剌と吹き鳴らし鼓舞した。
「あ、ニーロ様……」
エリスは自陣深くに青髪の青年を見つけ、恥ずかしさを堪え声を張る。
「が、頑張ってください、ニーロ様!」
顔を上げたニーロートパラ(ka6990)ははにかんで手を振り、
「大丈夫、任せてください」
備えてきた得物を掲げた。何と長射程弓・高威力魔導銃・拳銃のフルセット。それらを使い分けることで、コート内全てがニーロの射程となる。おそろしい子!
(尊敬しているシャンカラさん、ダルマさんもいらっしゃっていて、エリスさんもこの場にいるのですから……格好悪いところなんて見せられませんし、気合を入れて行きましょう)
ニーロはぐっと拳を握った。
さて選手以上に必死な形相なのは、救急係の腕章つけたディーナ。
「死ぬのも大怪我するのも10回以下にして下さいなの生きて、生きて下さいなの~!」
「躍動する筋肉……楽しみですぅ♪」
更にその横ではハナがじゅるっ。龍騎士サイド、多様性が爆発し留まることを知らない。木綿花はそんなベンチも含め、高揚する会場内をカメラに収めた。
ついに、試合開始のホイッスルが高らかに鳴る。
キックオフと同時に仕掛けたのは帝国チーム。高いポテンシャルを見せつけるよう、センターから直接
超高威力のロングシュートでゴールを狙う! アウレールは奥歯を噛んだ。
「戦力的に正面から競り合っても厳しい……と思っていたら早速か!」
「まずいっ」
真は力強い歌声と鮮やかな剣舞でDF陣を強化するものの、弾丸と化したボールに誰も追いつけない。高火力長射程の魔法で妨害の要となるはずの夢路 まよい(ka1328)は、まだ自身が隠れるための土壁を拵え中だった。
「いきなり過ぎないっ!?」
一同の度肝を抜き、DF陣をも抜き去って、ボールはゴールへまっしぐら――しかし!
ばったーん。
あわやと思った刹那、龍騎士チームのゴールが盛大に倒れた。ボールは伏せたゴールの上を掠めて落ちる。
「何!?」
驚愕する帝国選手をよそに、ゴールを倒した張本人である柊は、ほぅっと安堵の息をつく。
「よかったぁ、間に合いましたよぅ♪」
霊闘士の柊、何とファントムハンドでゴール枠上部をひっぱり、伏せてしまう奇策に出たのだ! 敵を対象とした術だが、大口開けて相手のシュートを飲み込んでしまうゴールなら、敵と見做して良かろうなのだ理論。開始早々の得点を阻止したばかりか、この先もゴールを狙い辛くなるだろう。
「あれアリ!?」
帝国サイドからは抗議の声が上がったが、結論から言うとありよりのあり。
元よりシグルドから提示されていたルールは、『ボールに手で触れない』『ゴール枠にボールを入れれば得点』くらいなのだから。
先にアウレールが予見した通り、全体的に高い能力を誇る帝国チームの選手達は、いわば正攻法――優れた力をボールへ叩き込み、真っ向から得点を狙うスタイル。
対して龍騎士チームは、上記2つのルールは遵守しつつ、もてる技も物も総動員で、工夫を凝らし対抗しようというスタイル。
出だしからプレイスタイルの違いが明確になった所から、試合は進行していく。
ある意味、異文化交流・相互理解を深める親善試合らしいスタートと言えた。
●奇策につぐ奇策
さてホッとしているGK柊、足許にはまだボールが。敵陣に駆け上がるクラン、
「柊、ボールを上げろ!」
「はにゃ、上げるんですかぁ?」
首をかくりとしながらも、柊は大好きな彼の言葉通り全力でボールを蹴った……真上へ。ボールはものっそい勢いで急上昇。
「すまない、前線へ上げてくれと言いたかった」
額を押さえるクラン。けれど、
「任せて!」
魔箒に跨がり遥華が飛び上がる!
「飛んだーッ!?」
遥華はリフティングの要領で宙でボールを捉えると、そのまま足で挟んで前線へ! 唖然とする帝国選手の頭上を飛び越えて行く!
我がチームながら次々繰り出される奇想天外なプレイに、ベンチのカインはぼそり。
「俺実際のルール知らねぇけど、多分本物絶対違ぇだろうな……」
本物を知る蒼界人の幸はにっこりと、
「ルールが違うのは気づいてるけど、これはこれでいいと思うよぉ」
「やっぱりか」
「ほら、応援応援ー。皆がんばってぇ♪」
遥華を止めようと帝国DFが構えを取ったが、遥華は即座に眠りの霧を降らせダウンさせる。
「Good Night☆」
しかし直後に彼女もまた相手側が放った霧に包まれ眠ってしまった! 意識のない遥華は地面へまっさかさま。しかしウィンドガストで敵の間をすり抜けてきたレナードが、間一髪スライディングで受け止める!
「ま、間に合ったでー」
ベンチから飛び出してきたカインと幸に遥華を託し、
「ほな、僕もゴール前に壁作ってくるでー!」
たったか持ち場に戻っていく。そしてゴール前にはどーんと土壁がせり上がり、遥華もほどなく目を覚ました。
ボールをキープしたのは、チーム随一の俊足を誇るユウ(ka6891)。
(龍園と帝国の交流試合、龍園の出身としても龍騎士を目指す者としても、シャンカラ様や龍騎士の皆様の足を引っ張らないよう頑張らないと)
指輪とブーツが持つSA効果で更に機動力を高め、一気にサイドを駆け上がる! しかし速すぎて援護の味方も追いつけない!
待ち構えていたDFがユウへ迫るが、遥か後方から飛来した矢が足止めした。ニーロだ。移動を捨て正確無比な固定砲台と化したニーロのサポートが光った。エリスは頬を綻ばせて手を叩く。
そして龍騎士チームにはもう1つの『砲台』が。土壁に身を寄せたまよいだ。
『こちら木綿花。逆サイドからノーマークの選手達が上がってきておりますよ』
「ありがとっ。爆撃開始するよ、皆注意してね!」
壁裏の彼女は表の様子を窺えない。けれど龍騎士チームは選手間だけでなく、ベンチ客席巻き込んでの巨大情報網を構築していた! 情報がまよいの目となり、相手方の射線視線から逃れたまま術を繰ることを可能にする。もっとも、彼女自身の高い魔法制御能力があってこそ成立し得る手法だ。
まよいの上空に膨大なマテリアルが収束し、星型の魔法陣が展開。
「天空に輝ける星々よ、七つの罪を焼き尽くす業火となれ……ヘプタグラム!」
生み出された火球が帝国選手へ降り注ぐ! いくら強固な選手言えど、これを食らったらひとたまりもない。おそろしい子!
おそろしい子達による2つの砲台が、仲間を敵陣へ押し上げていく!
勢いに乗り駆け回っていたアルカは、帝国選手の中に親しい友人を発見。わるいかおをしてランアウトで一気に距離を詰めると、
「いざ、勝負!」
バッと手を突き出した――彼の尻へと! 人妻アルカ、逆セクハラ★ケツタッチで動揺させる大胆な行動に! エステル、思わず赤面。
「アルカさん……大胆」
そしてこちらは単身敵陣深くへボールを運び込んだユウ、とうとう囲まれた。すると立ちはだかる相手選手を足がかりにし、高々とジャンプ! ライン際にシャンカラを見つけ、
「シャンカラ様!」
宙返りしながらパスをした。
だがしかし。シャンカラ、まだ赤い顔をしてぽけっと突っ立っている。動揺から立ち直れていない!
「ああっ」
エリスがハラハラと息を詰めた時、
「しっかりなさいませ!」
木綿花は魔導マイクを使い、龍園の伝統曲を朗々と歌い上げる。耳慣れた旋律にハッと顔を上げたシャンカラ、無事ユウからのパスを胸で受けた。
エステルは初めて聞く曲に興味津々。
「今のは龍園の曲ですか?」
「ええ。慣れぬ土地で、龍騎士の皆様は特に気後れすると思い、少しホームな感じが出せればと」
「素敵です!」
「先程のエステル様の演奏もとても勇壮で」
音楽好きなふたり、思わぬ所で意気投合。エステルもシャンカラへ強力な風の加護を飛ばす。
「さぁ風に乗って♪ ファイトですよ!」
しかしそんなシャンカラに、帝国DFが2名がかりで迫ってきた。この窮地にピン! ときたのがエンバディ。
(シャンカラ様に良い所を見せれば、龍園での僕の評価が上がるかなぁ……)
そして何かを取り出し封切ると、迫るDFの足許へスロー!
めちゃぁ。
それをDFが踏んづけた途端、茶色い飛沫が辺りに飛び散る。
エンバディが投げたのは、開封したレトルトカレーだった。
相手は転びはしなかったものの、カレーまみれの我が靴を見て呆然。
「もういっちょ」
エンバディは別のDFの進路にもカレーをスロー。
めちゃぁ。
相手DFは転びはしな以下同文。
心に深手を負ったふたりは、鬼の形相でエンバディを追い回す!
「ふたりがかり!? これって新人イビリじゃん!」
カレー犯は箒に跨り、華麗に空へふらいあうぇい。そして出汁の匂いとCURRY臭が混じり完全にカレーうどんの香りになったコートを見下ろす。
あっちでは炎がどかん、こっちでは氷がぱきぱき、そこここで剣や拳が火花を散らしている。
「何この泥沼……。僕、こんな所で死にたくないんだけど」
絵的には君が撒いたカレーの跡が一番泥っぽいんだけどね?
一方、シグルド討伐を掲げるアウレールは舌打ちしていた。肝心のシグルドが自陣最奥から動かない。これでは事故を装いしばけないではないか!
「ユーリ!」
パスが回ってくると、やり場のない感情をボールにぶつけるべく、近くのユーリに合図する。ユーリは頷き、超々重鞘に手をかけた。
「仕掛けるみたいね」
気付いたトリエステ、風の加護を纏い帝国ゴールへ接近。
「あら、女の子。……まあいいわ。オトナの魅力、見せてあげようじゃない」
豊かな胸をさり気なく寄せ、テンプテーションでGKの視線と注意を惹きつけにかかる! しかしGKの隠し玉も何とテンプテーション! 女同士の誘惑対決が勃発! 諸々怖いので勝敗は伏せたい。ともあれその隙にユーリが動く。
「敵本陣(ゴール)まで最速かつ最短、全力で斬り拓かせてもらうわよ」
蒼姫刀「魂奏竜胆」が青白い光を帯び、超々重鞘の力を揺り起こす。
「一振りの刃たる蒼姫の剣、迅雷が型の一つ――雷切・穿ッ!」
鞘の力で超長射程となった強烈な刺突が、帝国選手を押し分けゴールまでの道を拓いた! アウレールはシグルドにぶつけるはずだった恨み、もとい無拍一調子の三閃をボールへ叩きつける。ボールは空気との摩擦熱で紅く輝き、帝国ゴールへ刺さった!
「ゴール! ゴールゴールごおぉーるっ! やりましたっ、龍騎士チーム先制ゴールっ★」
実況のレムさんは大興奮でゴールを連呼。その横で解説のメアリさんは眼鏡クイッ。
「これは素晴らしい『M.N.Y.シュート』。リアルブルーでも滅多にお目にかかれない迫力満点のシュートですね」
「おぉっ、これがかの『M.N.Y.シュート』! ……って何ですかなっ?」
「『マジでネット破れそうなシュート』です。たった今私が名付けました。……てか私今すごく眼鏡キャラっぽくない??」
「すっごく『っぽい』ですぞっ★」
ともあれ、龍騎士チーム先制ですぞっ☆
●まだ出るぞ奇策
「ファイト龍園!」
「ファイト帝国!」
得点が入った所で、両チーム観客同士でエール交換が行われた。相手のチアチームと打ち合わせていたエステル、揃いの花吹雪を撒きそれはもう華やかに。
ボールはセンターに戻され試合がリスタート……するや否や、取り返そうと帝国チームががんがん攻めてきた!
「果てなき夢路に迷え……ドリームメイズ!」
ファンシーな杖に持ち替えたまよい、高強度の眠りの霧で押し入ってきた帝国選手を纏めて眠らせる。しかし追いついてきた別の選手に起こされ、まよいが隠れている壁を破壊せんとする。が、相手の刃は光の障壁に弾かれた。
「ルール違反じゃねぇみてぇだし、良いかなって」
マネージャーのカインがラインぎりぎりまで出てきて、防御障壁を使ったのだ。
「これ以上は行かせませんっ」
フィロは帝国チームが高速で回す弾丸パスの間へ果敢に踏み込み、金剛不壊で耐えパスカットに成功!
「おっしゃあ、押し返そうぜェ!」
弾かれたボールを拾ったダルマを、すぐに阻害術が襲う。けれどメアリのアイデアル・ソングが防いだ。
「相変わらず意外と歌上手ェな!」
「意外は余計です」
しかしダルマがメアリの歌ウマっぷりに気を取られているうちに、相手選手がボールを掻っ攫っていく。
「あ」
「……、」
メアリはオーバーに肩を竦めてみせると、ジェットブーツで飛んでった。
真はドリブルで攻め上がってきたのが親友だと気付き、目を輝かせた。思わず手を振りたくなるが我慢我慢。今はお互い敵同士、情けは無用!
腹を括った真は、親友である彼の前に立ちはだかる。交錯する視線。親友だからこそ手加減などできない。
真は結っていた髪をはらりと解き、さら……と掻き上げた。
「私を置いてどこへ行くのかな? ほら……こっち見て?」
ジェンダーレス美人な真(27・男性)による渾身のテンプテーション! 美よ、性別の壁を超えてゆけッ!!
ゴール前に並べた土壁の間から飛び出したのはレナードだ。真に見惚れている隙にボールを奪取!
「とったでー!」
レナードはすぐに遥華へパス。経験者の遥華は純粋なドリブル技術で1人抜き去り、
「お願いっ」
サフィーアへボールを回す。高く上がったそのボールを、サフィーアは……
「──手さえ使わなければ良いのでしょう?」
魔導機械・ヒドゥンハンドのアームでがしっと挟み、猛然と走り出す!
「私の手が使われないのなら、そう……機械のアームだっていいはず。龍騎士の方々は足を使用していたようだけれど、わざわざ蹴ってボールを進める必要はないものと考察するわ」
ハンドはハンドでもヒドゥンハンドのハンドならハンドじゃないじゃない理論! ルール上はアリである。
ボールを蹴る必要がないサフィーアは軽快に駆け上がる。けれど敵陣へ踏み込もうとした途端、相手の術で足を凍らされてしまい、
「ここまでね」
諦めかけたその時。
ズズ、ズズズ……
重い物を引き摺る音が、会場内を揺るがした。
一斉に音の方を振り返る。
何と今度は帝国ゴールが動ているうぅ!
帝国ゴールはサフィーアへじりじり寄ってくる――GKをぶらさげたまま。アウレールが帝国ゴールをかっぱらってきたのだ。
前線にボールが上げられないなら、ゴールが来ればいいじゃない理論!
「だからあれアリなの!?」
半ば悲鳴じみた声を上げる帝国選手に、仲間のはずのシグルドはにっこり頷く。やっぱりこれもアリだった。
「キーパーまで運ばれてくるのは想定外……けれど、」
帝国ゴールが自陣までおいでなすった今が好機。サフィーアはアームを振り、ボールをゴールへ放り込む! だがぶら下がっていたGKは身を挺して防いだ!
零れたボールをうまくキープし、アルカとフィロが立て続けにシュートするも、GKは身を盾にしてゴールを守る。けれど遥華が放った4発目を弾くと、とうとう力尽き落ちた。
が、ここで事件が。弾かれたボールが龍騎士ベンチに飛び込んだ!
「きゃあぁっ」
「あっぶね!」
咄嗟にカインが攻性防壁で防いだが、ボールは床や壁にばいんばいん跳ね返りまくり、さながら跳弾。
「もー、コートへ帰ってよぅ!」
何とか幸が防御障壁で追い出すと、ボールは弧を描いて空高く上がり、龍騎士陣地へ落下していった。
――その十数秒前。
前線にいたレム・アーク・クランの3名が、帝国ゴールを追い自陣へ戻ってきた。レムとクランはやたらボロボロ。
これまで彼らは帝国陣地に居続け、仲間を阻害しようとする帝国選手を妨害して回っていたのだ。
遠距離から仲間を狙う者あらば、アークが部位狙いで脚を中心に仕掛けて邪魔し。そんなアークを狙う者あらば、レムとクランがガードし――敵陣から自陣へ遠距離の妨害があまり飛んでこなかったのは、3人やトリエステのカウンターマジックによる功績だった。
「とっこーといったな……あれはちょっと嘘だ……我らアーくんお守り隊! ぼろぼろなのは守った証っ★」
"おまもり隊"なのか"おもり隊"なのかで大分意味が変わりそうだが、さてはて。
「守られるほど軟じゃない……って言いたいところだけど、とても心強かったよ」
レムとクランが競うように展開したWガウスジェイルに守られ、アークは傷ひとつ負っていない。クランはふんっとそっぽを向く。
「俺の方が防いだと思うがな」
「聞き捨てなりませんなークランらん!」
「おい呼び方、」
「ええと……どっちがとかじゃなくて、俺はふたりに感謝してるよ?」
ふたりを執り成そうと、アークおろおろ。……アーくん(が)"おもり(をする)隊"だったのだろうか。
そこへ、
「もー、コートへ帰ってよぅ!」
幸の声がしてボールが天高く昇っていったかと思うと、クランの脳天直撃コースで落ちて来る!
「クィールスさんっ、上ですよぅー!」
「これが死の球という奴か……! 当たれば死ぬ? とすれば、ボールは友達ではなく敵だな。……良いだろう、カウンターアタックだッ!」
クラン、大上段に釘バットを振りかぶり、落ちてきたボールを大根斬り!
「あーっ、レムさんもー!」
瞬迅の構えで合わせたレムの蹴りの勢いも乗せ、シュート!
何とまさかの2-0ですぞ☆
●さいごの「まさか」
直後事態は急変した。
怒れる帝国チア軍団が、コートへ乱入してきたのだ!
「ちゃんとサッカーしなさーいっ!」
泡食ったのは龍騎士達。
「あ、あれ? ルールは破っていなかったかと、」
「お、おう。誰も手で球触ってなかったよなァ?」
混乱しつつ、龍騎士達は身を挺してハンター達を庇うが、チア軍団の勢いは止まらない。土壁は粉砕され、カレーうどんの匂いはキツい香り玉によって浄化され、帝国選手達は猛反撃を開始した。何が何だか分からぬ内に、龍騎士ゴールが2度揺らされてしまう。
更にはバフごり盛りのシグルドが満を持して登場。あわや3点目が入れられそうになったがホイッスルに救われ、2-2のドローで前半戦は幕を下ろした。
「はー……」
ハーフタイム。
「チア……こわ」
龍騎士ベンチは開始前とうって変わって、ぐったり、しんなり。
「首だけになったひとはいなかったの安心したの」
「怪我をされた方はいらっしゃいますか?」
ディーナとエリスは回復術をかけて回る。ダメージは全員もれなく回復した。
幸はぽんっと手を叩き、
「そうだ、僕いいもの持ってきたんだよぉ。地球にいた頃はちょくちょく作ってたんだぁ」
いそいそとレモンの蜂蜜漬けを取り出した。
「水で割ってもおいしいよねぇ」
「あっ、それなら私が」
王国育ちのエステル、まさにその蜂蜜レモン水を用意してきていた。
「ほんのりミント風味です」
「それはいいねぇ♪」
すると何と龍園出身の木綿花も。
「実は私も蜂蜜水を。あとはナッツなどを少々」
「蜂蜜祭りですぅ?」
そしてハナも、タッパー一杯の蜂蜜レモンをどどんっ。
世界や国が違えど差入れの定番は同じらしい。思いがけぬお揃いに、ちょっとほっこり。
「だ、大丈夫か?」
カインは隅で燃え尽きているシャンカラとダルマにタオルを渡した。
「……相手方の皆さんを怒らせてしまったようです……何がいけなかったんでしょう」
サッカーのサの字も知らずにいた龍騎士達には、悩めど悩めど分からない。異文化交流って難しい。
優しい蜂蜜檸檬の香りの中、ふたりは揃って息を吐く。
「「サッカーって何だろう……?」」
蒼界におけるサッカーの歴史は古い。
「――サッカーは、元々敵兵の首を布で包んで蹴って遊んだ? のが発祥だって聞いたの」
ディーナ・フェルミ(ka5843)は深刻な面持ちで告げる。
「毎試合監督予備含めチーム全員首になるかもしれないなんて……何て恐ろしいの、リアルブルー」
「元のルールは知らないが……そんな競技だったのか。今回のルールを見ても、半ば無法地帯じゃないか。随分物騒な競技を……」
唸るクラン・クィールス(ka6605)。トリエステ・ウェスタ(ka6908)は柳眉を寄せる。
(んー、まあなんか色々と間違ってそうな気はするんだけど、元を知らないから何とも言えないのよね)
殆どの紅界出身者は、伝聞や書物から得たサッカーの知識はあっても、経験がない。ディーナが得た知識も大分偏っていたようで。
この交流戦までサッカーのサの字も知らずにいた龍騎士達、涙目。蒼界出身のメアリ・ロイド(ka6633)へ縋るような目を向けたが、彼女はかぶりを振った。
「サッカーのルールは知って……いるはずなのですが、全然思い出せません」
完全に慄いている龍騎士達は、彼女が棒読みだったことにも気付かない。ディーナはどんと胸を叩く。
「みんなが首だけにされる前に蘇生できるよう、サポーターとしておおいに頑張るの安心するの!」
「おぉ!」
龍騎士達は歓声をあげた。
「何か盛り上がってるね」
少し離れた席で思案中だった鞍馬 真(ka5819)とアーク・フォーサイス(ka6568)は、賑やかな様子ににっこり。何を思案していたかと言えば、説明されたルールについて。
「「サッカーってこんなだったっけ……?」」
異口同音に言い顔を見合わす。
「……まあ皆で楽しめたらそれで良いかなって」
「シャンカラ達が楽しそうだからいいかなって」
あらまぁ何だか似た者同士。糸目なエルフのレナード=クーク(ka6613)、同じくエルフで蒼界人の父を持つ氷雨 柊(ka6302)もやって来て、
「せやねー、楽しく試合が出来る様に……の気持ちを大事に、やんね!」
「お父さんから話は聞いてましたがー……遊ぶのは初めてですねぇ。皆で楽しくやりましょうー♪」
と和気藹々。その奥でサフィーア(ka6909)は、
(……これは交流の一環。それに興味があることは悪いことではないわ)
自らにそう言い聞かせつつ、このほっこりな空気にじんわり温かくなった気がする胸へ、不思議そうに手を当てていた。
と、シャンカラは龍騎士達の脇をそぉっと過ぎようとしている男に気付いた。
「あの、」
男は肩を跳ねさせたが、相手が隊長のシャンカラだと分かるやすっ飛んでくる。
「龍騎士隊の皆様と此方でお会い出来るなんてぇ。ドラグーンのエンバディ(ka7328)と申しますぅ、わたくしも先日、龍園から西方へ来たばかりでぇ~」
「そうでしたか! エンバディさんはどうして西方へ?」
「ええ、と」
エンバディ、内心冷や汗たらり。
(神官降格されて飛ばされた事はバレたくないっ)
どう凌ぐか悩んでいると、
「シャンカラ、久し振りだな!」
同じドラグーンだが帝国出身のカイン・シュミート(ka6967)がやって来た。エンバディはこれ幸いと姿を消す。
「西方が故郷の俺からしたら西方にようこそってとこだな」
「えっと、お邪魔します??」
「何だそりゃ。ま、楽しんでこいよ。経験してこそだぜ?」
言って、カインはタオルの山を運んでいく。彼は今回マネージャーなのだ。入れ違いに駆けてきたのはアルカ・ブラックウェル(ka0790)。
「今回は宜しくね!」
アルカはダルマを仰ぎ、
「ホントは伯父さんが来たがってたんだけど、寄る年波に勝てないって。ふふっ、ダルマに宜しくって言ってたよ!」
ダルマはピンと来て膝を打つ。
「結婚した姪ってお前さんかァ、おめでとさん!」
「伯父さんそんなことまで話したのっ? やーだーっ、でもありがと♪」
アルカは頬を赤らめダルマの背をぺちんっ。それから小首を傾げ、
「シャンカラはシグルドに付くつもりだっけ? (色んな意味で)シグルド狙いの人が多そう……」
「人気者なんですねぇ」
(違う、そうじゃない!)
密かに拳を握りしめたのはアウレール・V・ブラオラント(ka2531)。選手の彼は、心に『シグルド副長討伐』というおっかない目標を掲げていた。彼の秘めたSATSUIを感じ身震いしたダルマ、見知った少女に気付き逃げるように寄っていく。
「よォ女将」
女将と呼ばれた元龍騎士の木綿花(ka6927)、きょとん。
「女将とは?」
「いやこっちの話」
「? ……帝国は私も初めてで、物見遊山もかねて参りました。皆様の好プレーも珍プレーも、想い出としてカメラに収めようかと」
「珍、」
「ご武運を」
そう言って準備のために立ち去る木綿花。ダルマ、絶対ヘマすまいと決めた。と、今度は桜崎 幸(ka7161)がきょろきょろしているのを発見し声をかけると、
「ええと、龍騎士さんを探してて。この前の会った双子の……ええと、名前わかんないや」
「カマラとカルマか。万一他国で粗相があっちゃなんねェんで、新米どもは置いてきたんだ。悪ィな」
名前が分からない時点でしょんぼりしていた幸、更に肩を落とす。
「そっかぁ。国同士の交流って大変なんだねぇ」
「その、何だ。俺やシャンカラでも良きゃ仲良くしてくれや」
オッサンダルマの弱りきった声に、幸はほわっと笑て見せた。
「ふふ。頑張ってねー、僕も応援頑張ってくよぉ」
龍騎士チームのベンチは、これからワンダーでアバウトな試合に臨むとは思えぬほど概ねほっこりしていた。
そんな空気が突然お出汁の香に染まる。星野 ハナ(ka5852)が大鍋積んだカートを引いて現れたのだ。
「やばいですぅ、素敵な筋肉てんこもりですぅ。全身でぺろぺろはぁはぁくんかくんかした……ハッ」
涎を引っ込めると、何事かと寄ってきた一同の前でオープンTHE鍋蓋。入っていたのは、2時間も前に会場入りして仕込んだという特製のうどんやパスタ。
「麺類は早くエネルギーになりますからぁ。でも満腹は避けて下さいねぇ」
龍騎士チーム、試合開始前からもぐもぐタイム突入!
腹が減っては試合は出来ぬ。しかし開始時刻は刻々と迫ってくる。ふはふもぐもぐしながら最終打合わせに入った。
ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)は口許を拭ってから、
「とりあえず、手を使わずにボールを相手のゴールに入れれば良いわけよね?」
武器の使用と合わせシャンカラに確認する。
「はい、そう伺っています」
「あの、気付いたんですが」
手を挙げたのは、先程まで念入りにウォームアップしていた央崎 遥華(ka5644)。
「うちのチーム、役割を分担していないなと」
蒼界・英国出身、女子サッカーでFW経験者の彼女らしい気付き。『ポジションてなぁに?』なシャンカラに代わり、急ぎ選手達へ希望ボジションや予定行動のヒアリングし纏めた結果、案外攻守バランスよくバラけていることが分かった。
率先して配膳を手伝っていた鋼鉄の侍女・フィロ(ka6966)、
「私はMFですね。精いっぱい努めさせていただきます、宜しくお願いします」
胸を撫で下ろしている遥華へ、労うように微笑んだ。
食べ終えたシャンカラはハナへ丁寧に礼を告げ、尋ねる。
「出場されないんですか?」
「だってぇ、参加したらお触りしまくってレッドカードになる自分が幻視出来ちゃったんですぅ。さすがに軽犯罪者になるのは深紅ちゃんに申し訳なさ過ぎてぇ」
「深紅ちゃん?」
「大精霊ちゃんのあだ名ですぅ」
シャンカラ絶句。流石は守護者と言うべきか。硬直していると、ハナがすすっと身を寄せてきた。
「どうですぅ、そろそろ私を彼女にしませんかぁ? 他の方がセクハラされなくなる特典つきですよぅ♪」
シャンカラの背後にベタフラが奔る。
「か、か彼女なんて僕にはまだ……はっ! でも僕がお付き合いすれば世の男性が救われる……!?」
斜め上の自己犠牲(?)精神を発揮しかけた時、選手招集のアナウンスが。
「よーしがんばろー!」
「行きましょう」
「コートまでお出汁の匂いするね……?」
「頑張ってねー!」
ベンチに残る者達の応援を背に受け、コートへ駆け出していく選手達。顔真っ赤なシャンカラはフラフラと従った。
●観客も選手もふりーだむ
「へっへーっ、やってまいりましたっ! 超人蹴球・前半戦!」
レム・フィバート(ka6552)は、アークとクランを伴い気合満タン。
「じっきょーととっこーはレムさんが行ってゆくますっ。いくぜっ! アーくんとクランらんっ☆」
可愛いあだ名をつけられ、クランは心にダメージを負った。
「クランらん……っふふ、可愛いね」
「……アークは後で覚えていろ」
歯噛みするクランの手には物騒なモンが握られている。釘バット。世紀末ヤンキー御用達なソレどうしたクランらん。
「蒼界にはバットとやらで球を吹っ飛ばす競技があると以前聞いてな。死の球(デッドボール)なんて単語が存在する物騒な競技だとか……今回のルールを聞き、成程これか、と。得物くらいルールに倣うかと思ってな」
クランらんは大真面目。周りの蒼界出身者は必死に笑いを堪えぷるぷる。異文化交流はトライアンドエラーの積み重ねである。
というか選手達は両チームとも概ね釘バット以上に物騒な、というか戦闘依頼に赴く時と同様の装備で来ているので、パッと見バトルロワイヤルでも始まるのかと言った風情。そんなコート内を見渡し、応援に駆けつけたエリス・ヘルツェン(ka6723)は胸の前で手を握りしめる。
「地球の競技を此方の世界で見られるなんて、不思議な気持ちです」
エステル・クレティエ(ka3783)は、以前会った地球人の少年を思い出す。
「余り知らない競技ですけど……玲さんがここに居たら色々教えて貰えたでしょうか」
「選手として一緒に戦えないのは、少し歯痒い気持ちではありますが」
「その分精一杯応援しましょう? 両チーム楽しめると良いですね」
「はい、しっかり応援・サポートをさせて頂きます!」
頷き合うと、エステルは仲良しのアルカへ、
「アルカさーんがんばってーっ」
そして帝国チームの選手である兄にも、
「兄様ーっ、情けなく転んだら許さないからっ」
それぞれエールを送り、首に下げていた「星笛」を溌剌と吹き鳴らし鼓舞した。
「あ、ニーロ様……」
エリスは自陣深くに青髪の青年を見つけ、恥ずかしさを堪え声を張る。
「が、頑張ってください、ニーロ様!」
顔を上げたニーロートパラ(ka6990)ははにかんで手を振り、
「大丈夫、任せてください」
備えてきた得物を掲げた。何と長射程弓・高威力魔導銃・拳銃のフルセット。それらを使い分けることで、コート内全てがニーロの射程となる。おそろしい子!
(尊敬しているシャンカラさん、ダルマさんもいらっしゃっていて、エリスさんもこの場にいるのですから……格好悪いところなんて見せられませんし、気合を入れて行きましょう)
ニーロはぐっと拳を握った。
さて選手以上に必死な形相なのは、救急係の腕章つけたディーナ。
「死ぬのも大怪我するのも10回以下にして下さいなの生きて、生きて下さいなの~!」
「躍動する筋肉……楽しみですぅ♪」
更にその横ではハナがじゅるっ。龍騎士サイド、多様性が爆発し留まることを知らない。木綿花はそんなベンチも含め、高揚する会場内をカメラに収めた。
ついに、試合開始のホイッスルが高らかに鳴る。
キックオフと同時に仕掛けたのは帝国チーム。高いポテンシャルを見せつけるよう、センターから直接
超高威力のロングシュートでゴールを狙う! アウレールは奥歯を噛んだ。
「戦力的に正面から競り合っても厳しい……と思っていたら早速か!」
「まずいっ」
真は力強い歌声と鮮やかな剣舞でDF陣を強化するものの、弾丸と化したボールに誰も追いつけない。高火力長射程の魔法で妨害の要となるはずの夢路 まよい(ka1328)は、まだ自身が隠れるための土壁を拵え中だった。
「いきなり過ぎないっ!?」
一同の度肝を抜き、DF陣をも抜き去って、ボールはゴールへまっしぐら――しかし!
ばったーん。
あわやと思った刹那、龍騎士チームのゴールが盛大に倒れた。ボールは伏せたゴールの上を掠めて落ちる。
「何!?」
驚愕する帝国選手をよそに、ゴールを倒した張本人である柊は、ほぅっと安堵の息をつく。
「よかったぁ、間に合いましたよぅ♪」
霊闘士の柊、何とファントムハンドでゴール枠上部をひっぱり、伏せてしまう奇策に出たのだ! 敵を対象とした術だが、大口開けて相手のシュートを飲み込んでしまうゴールなら、敵と見做して良かろうなのだ理論。開始早々の得点を阻止したばかりか、この先もゴールを狙い辛くなるだろう。
「あれアリ!?」
帝国サイドからは抗議の声が上がったが、結論から言うとありよりのあり。
元よりシグルドから提示されていたルールは、『ボールに手で触れない』『ゴール枠にボールを入れれば得点』くらいなのだから。
先にアウレールが予見した通り、全体的に高い能力を誇る帝国チームの選手達は、いわば正攻法――優れた力をボールへ叩き込み、真っ向から得点を狙うスタイル。
対して龍騎士チームは、上記2つのルールは遵守しつつ、もてる技も物も総動員で、工夫を凝らし対抗しようというスタイル。
出だしからプレイスタイルの違いが明確になった所から、試合は進行していく。
ある意味、異文化交流・相互理解を深める親善試合らしいスタートと言えた。
●奇策につぐ奇策
さてホッとしているGK柊、足許にはまだボールが。敵陣に駆け上がるクラン、
「柊、ボールを上げろ!」
「はにゃ、上げるんですかぁ?」
首をかくりとしながらも、柊は大好きな彼の言葉通り全力でボールを蹴った……真上へ。ボールはものっそい勢いで急上昇。
「すまない、前線へ上げてくれと言いたかった」
額を押さえるクラン。けれど、
「任せて!」
魔箒に跨がり遥華が飛び上がる!
「飛んだーッ!?」
遥華はリフティングの要領で宙でボールを捉えると、そのまま足で挟んで前線へ! 唖然とする帝国選手の頭上を飛び越えて行く!
我がチームながら次々繰り出される奇想天外なプレイに、ベンチのカインはぼそり。
「俺実際のルール知らねぇけど、多分本物絶対違ぇだろうな……」
本物を知る蒼界人の幸はにっこりと、
「ルールが違うのは気づいてるけど、これはこれでいいと思うよぉ」
「やっぱりか」
「ほら、応援応援ー。皆がんばってぇ♪」
遥華を止めようと帝国DFが構えを取ったが、遥華は即座に眠りの霧を降らせダウンさせる。
「Good Night☆」
しかし直後に彼女もまた相手側が放った霧に包まれ眠ってしまった! 意識のない遥華は地面へまっさかさま。しかしウィンドガストで敵の間をすり抜けてきたレナードが、間一髪スライディングで受け止める!
「ま、間に合ったでー」
ベンチから飛び出してきたカインと幸に遥華を託し、
「ほな、僕もゴール前に壁作ってくるでー!」
たったか持ち場に戻っていく。そしてゴール前にはどーんと土壁がせり上がり、遥華もほどなく目を覚ました。
ボールをキープしたのは、チーム随一の俊足を誇るユウ(ka6891)。
(龍園と帝国の交流試合、龍園の出身としても龍騎士を目指す者としても、シャンカラ様や龍騎士の皆様の足を引っ張らないよう頑張らないと)
指輪とブーツが持つSA効果で更に機動力を高め、一気にサイドを駆け上がる! しかし速すぎて援護の味方も追いつけない!
待ち構えていたDFがユウへ迫るが、遥か後方から飛来した矢が足止めした。ニーロだ。移動を捨て正確無比な固定砲台と化したニーロのサポートが光った。エリスは頬を綻ばせて手を叩く。
そして龍騎士チームにはもう1つの『砲台』が。土壁に身を寄せたまよいだ。
『こちら木綿花。逆サイドからノーマークの選手達が上がってきておりますよ』
「ありがとっ。爆撃開始するよ、皆注意してね!」
壁裏の彼女は表の様子を窺えない。けれど龍騎士チームは選手間だけでなく、ベンチ客席巻き込んでの巨大情報網を構築していた! 情報がまよいの目となり、相手方の射線視線から逃れたまま術を繰ることを可能にする。もっとも、彼女自身の高い魔法制御能力があってこそ成立し得る手法だ。
まよいの上空に膨大なマテリアルが収束し、星型の魔法陣が展開。
「天空に輝ける星々よ、七つの罪を焼き尽くす業火となれ……ヘプタグラム!」
生み出された火球が帝国選手へ降り注ぐ! いくら強固な選手言えど、これを食らったらひとたまりもない。おそろしい子!
おそろしい子達による2つの砲台が、仲間を敵陣へ押し上げていく!
勢いに乗り駆け回っていたアルカは、帝国選手の中に親しい友人を発見。わるいかおをしてランアウトで一気に距離を詰めると、
「いざ、勝負!」
バッと手を突き出した――彼の尻へと! 人妻アルカ、逆セクハラ★ケツタッチで動揺させる大胆な行動に! エステル、思わず赤面。
「アルカさん……大胆」
そしてこちらは単身敵陣深くへボールを運び込んだユウ、とうとう囲まれた。すると立ちはだかる相手選手を足がかりにし、高々とジャンプ! ライン際にシャンカラを見つけ、
「シャンカラ様!」
宙返りしながらパスをした。
だがしかし。シャンカラ、まだ赤い顔をしてぽけっと突っ立っている。動揺から立ち直れていない!
「ああっ」
エリスがハラハラと息を詰めた時、
「しっかりなさいませ!」
木綿花は魔導マイクを使い、龍園の伝統曲を朗々と歌い上げる。耳慣れた旋律にハッと顔を上げたシャンカラ、無事ユウからのパスを胸で受けた。
エステルは初めて聞く曲に興味津々。
「今のは龍園の曲ですか?」
「ええ。慣れぬ土地で、龍騎士の皆様は特に気後れすると思い、少しホームな感じが出せればと」
「素敵です!」
「先程のエステル様の演奏もとても勇壮で」
音楽好きなふたり、思わぬ所で意気投合。エステルもシャンカラへ強力な風の加護を飛ばす。
「さぁ風に乗って♪ ファイトですよ!」
しかしそんなシャンカラに、帝国DFが2名がかりで迫ってきた。この窮地にピン! ときたのがエンバディ。
(シャンカラ様に良い所を見せれば、龍園での僕の評価が上がるかなぁ……)
そして何かを取り出し封切ると、迫るDFの足許へスロー!
めちゃぁ。
それをDFが踏んづけた途端、茶色い飛沫が辺りに飛び散る。
エンバディが投げたのは、開封したレトルトカレーだった。
相手は転びはしなかったものの、カレーまみれの我が靴を見て呆然。
「もういっちょ」
エンバディは別のDFの進路にもカレーをスロー。
めちゃぁ。
相手DFは転びはしな以下同文。
心に深手を負ったふたりは、鬼の形相でエンバディを追い回す!
「ふたりがかり!? これって新人イビリじゃん!」
カレー犯は箒に跨り、華麗に空へふらいあうぇい。そして出汁の匂いとCURRY臭が混じり完全にカレーうどんの香りになったコートを見下ろす。
あっちでは炎がどかん、こっちでは氷がぱきぱき、そこここで剣や拳が火花を散らしている。
「何この泥沼……。僕、こんな所で死にたくないんだけど」
絵的には君が撒いたカレーの跡が一番泥っぽいんだけどね?
一方、シグルド討伐を掲げるアウレールは舌打ちしていた。肝心のシグルドが自陣最奥から動かない。これでは事故を装いしばけないではないか!
「ユーリ!」
パスが回ってくると、やり場のない感情をボールにぶつけるべく、近くのユーリに合図する。ユーリは頷き、超々重鞘に手をかけた。
「仕掛けるみたいね」
気付いたトリエステ、風の加護を纏い帝国ゴールへ接近。
「あら、女の子。……まあいいわ。オトナの魅力、見せてあげようじゃない」
豊かな胸をさり気なく寄せ、テンプテーションでGKの視線と注意を惹きつけにかかる! しかしGKの隠し玉も何とテンプテーション! 女同士の誘惑対決が勃発! 諸々怖いので勝敗は伏せたい。ともあれその隙にユーリが動く。
「敵本陣(ゴール)まで最速かつ最短、全力で斬り拓かせてもらうわよ」
蒼姫刀「魂奏竜胆」が青白い光を帯び、超々重鞘の力を揺り起こす。
「一振りの刃たる蒼姫の剣、迅雷が型の一つ――雷切・穿ッ!」
鞘の力で超長射程となった強烈な刺突が、帝国選手を押し分けゴールまでの道を拓いた! アウレールはシグルドにぶつけるはずだった恨み、もとい無拍一調子の三閃をボールへ叩きつける。ボールは空気との摩擦熱で紅く輝き、帝国ゴールへ刺さった!
「ゴール! ゴールゴールごおぉーるっ! やりましたっ、龍騎士チーム先制ゴールっ★」
実況のレムさんは大興奮でゴールを連呼。その横で解説のメアリさんは眼鏡クイッ。
「これは素晴らしい『M.N.Y.シュート』。リアルブルーでも滅多にお目にかかれない迫力満点のシュートですね」
「おぉっ、これがかの『M.N.Y.シュート』! ……って何ですかなっ?」
「『マジでネット破れそうなシュート』です。たった今私が名付けました。……てか私今すごく眼鏡キャラっぽくない??」
「すっごく『っぽい』ですぞっ★」
ともあれ、龍騎士チーム先制ですぞっ☆
●まだ出るぞ奇策
「ファイト龍園!」
「ファイト帝国!」
得点が入った所で、両チーム観客同士でエール交換が行われた。相手のチアチームと打ち合わせていたエステル、揃いの花吹雪を撒きそれはもう華やかに。
ボールはセンターに戻され試合がリスタート……するや否や、取り返そうと帝国チームががんがん攻めてきた!
「果てなき夢路に迷え……ドリームメイズ!」
ファンシーな杖に持ち替えたまよい、高強度の眠りの霧で押し入ってきた帝国選手を纏めて眠らせる。しかし追いついてきた別の選手に起こされ、まよいが隠れている壁を破壊せんとする。が、相手の刃は光の障壁に弾かれた。
「ルール違反じゃねぇみてぇだし、良いかなって」
マネージャーのカインがラインぎりぎりまで出てきて、防御障壁を使ったのだ。
「これ以上は行かせませんっ」
フィロは帝国チームが高速で回す弾丸パスの間へ果敢に踏み込み、金剛不壊で耐えパスカットに成功!
「おっしゃあ、押し返そうぜェ!」
弾かれたボールを拾ったダルマを、すぐに阻害術が襲う。けれどメアリのアイデアル・ソングが防いだ。
「相変わらず意外と歌上手ェな!」
「意外は余計です」
しかしダルマがメアリの歌ウマっぷりに気を取られているうちに、相手選手がボールを掻っ攫っていく。
「あ」
「……、」
メアリはオーバーに肩を竦めてみせると、ジェットブーツで飛んでった。
真はドリブルで攻め上がってきたのが親友だと気付き、目を輝かせた。思わず手を振りたくなるが我慢我慢。今はお互い敵同士、情けは無用!
腹を括った真は、親友である彼の前に立ちはだかる。交錯する視線。親友だからこそ手加減などできない。
真は結っていた髪をはらりと解き、さら……と掻き上げた。
「私を置いてどこへ行くのかな? ほら……こっち見て?」
ジェンダーレス美人な真(27・男性)による渾身のテンプテーション! 美よ、性別の壁を超えてゆけッ!!
ゴール前に並べた土壁の間から飛び出したのはレナードだ。真に見惚れている隙にボールを奪取!
「とったでー!」
レナードはすぐに遥華へパス。経験者の遥華は純粋なドリブル技術で1人抜き去り、
「お願いっ」
サフィーアへボールを回す。高く上がったそのボールを、サフィーアは……
「──手さえ使わなければ良いのでしょう?」
魔導機械・ヒドゥンハンドのアームでがしっと挟み、猛然と走り出す!
「私の手が使われないのなら、そう……機械のアームだっていいはず。龍騎士の方々は足を使用していたようだけれど、わざわざ蹴ってボールを進める必要はないものと考察するわ」
ハンドはハンドでもヒドゥンハンドのハンドならハンドじゃないじゃない理論! ルール上はアリである。
ボールを蹴る必要がないサフィーアは軽快に駆け上がる。けれど敵陣へ踏み込もうとした途端、相手の術で足を凍らされてしまい、
「ここまでね」
諦めかけたその時。
ズズ、ズズズ……
重い物を引き摺る音が、会場内を揺るがした。
一斉に音の方を振り返る。
何と今度は帝国ゴールが動ているうぅ!
帝国ゴールはサフィーアへじりじり寄ってくる――GKをぶらさげたまま。アウレールが帝国ゴールをかっぱらってきたのだ。
前線にボールが上げられないなら、ゴールが来ればいいじゃない理論!
「だからあれアリなの!?」
半ば悲鳴じみた声を上げる帝国選手に、仲間のはずのシグルドはにっこり頷く。やっぱりこれもアリだった。
「キーパーまで運ばれてくるのは想定外……けれど、」
帝国ゴールが自陣までおいでなすった今が好機。サフィーアはアームを振り、ボールをゴールへ放り込む! だがぶら下がっていたGKは身を挺して防いだ!
零れたボールをうまくキープし、アルカとフィロが立て続けにシュートするも、GKは身を盾にしてゴールを守る。けれど遥華が放った4発目を弾くと、とうとう力尽き落ちた。
が、ここで事件が。弾かれたボールが龍騎士ベンチに飛び込んだ!
「きゃあぁっ」
「あっぶね!」
咄嗟にカインが攻性防壁で防いだが、ボールは床や壁にばいんばいん跳ね返りまくり、さながら跳弾。
「もー、コートへ帰ってよぅ!」
何とか幸が防御障壁で追い出すと、ボールは弧を描いて空高く上がり、龍騎士陣地へ落下していった。
――その十数秒前。
前線にいたレム・アーク・クランの3名が、帝国ゴールを追い自陣へ戻ってきた。レムとクランはやたらボロボロ。
これまで彼らは帝国陣地に居続け、仲間を阻害しようとする帝国選手を妨害して回っていたのだ。
遠距離から仲間を狙う者あらば、アークが部位狙いで脚を中心に仕掛けて邪魔し。そんなアークを狙う者あらば、レムとクランがガードし――敵陣から自陣へ遠距離の妨害があまり飛んでこなかったのは、3人やトリエステのカウンターマジックによる功績だった。
「とっこーといったな……あれはちょっと嘘だ……我らアーくんお守り隊! ぼろぼろなのは守った証っ★」
"おまもり隊"なのか"おもり隊"なのかで大分意味が変わりそうだが、さてはて。
「守られるほど軟じゃない……って言いたいところだけど、とても心強かったよ」
レムとクランが競うように展開したWガウスジェイルに守られ、アークは傷ひとつ負っていない。クランはふんっとそっぽを向く。
「俺の方が防いだと思うがな」
「聞き捨てなりませんなークランらん!」
「おい呼び方、」
「ええと……どっちがとかじゃなくて、俺はふたりに感謝してるよ?」
ふたりを執り成そうと、アークおろおろ。……アーくん(が)"おもり(をする)隊"だったのだろうか。
そこへ、
「もー、コートへ帰ってよぅ!」
幸の声がしてボールが天高く昇っていったかと思うと、クランの脳天直撃コースで落ちて来る!
「クィールスさんっ、上ですよぅー!」
「これが死の球という奴か……! 当たれば死ぬ? とすれば、ボールは友達ではなく敵だな。……良いだろう、カウンターアタックだッ!」
クラン、大上段に釘バットを振りかぶり、落ちてきたボールを大根斬り!
「あーっ、レムさんもー!」
瞬迅の構えで合わせたレムの蹴りの勢いも乗せ、シュート!
何とまさかの2-0ですぞ☆
●さいごの「まさか」
直後事態は急変した。
怒れる帝国チア軍団が、コートへ乱入してきたのだ!
「ちゃんとサッカーしなさーいっ!」
泡食ったのは龍騎士達。
「あ、あれ? ルールは破っていなかったかと、」
「お、おう。誰も手で球触ってなかったよなァ?」
混乱しつつ、龍騎士達は身を挺してハンター達を庇うが、チア軍団の勢いは止まらない。土壁は粉砕され、カレーうどんの匂いはキツい香り玉によって浄化され、帝国選手達は猛反撃を開始した。何が何だか分からぬ内に、龍騎士ゴールが2度揺らされてしまう。
更にはバフごり盛りのシグルドが満を持して登場。あわや3点目が入れられそうになったがホイッスルに救われ、2-2のドローで前半戦は幕を下ろした。
「はー……」
ハーフタイム。
「チア……こわ」
龍騎士ベンチは開始前とうって変わって、ぐったり、しんなり。
「首だけになったひとはいなかったの安心したの」
「怪我をされた方はいらっしゃいますか?」
ディーナとエリスは回復術をかけて回る。ダメージは全員もれなく回復した。
幸はぽんっと手を叩き、
「そうだ、僕いいもの持ってきたんだよぉ。地球にいた頃はちょくちょく作ってたんだぁ」
いそいそとレモンの蜂蜜漬けを取り出した。
「水で割ってもおいしいよねぇ」
「あっ、それなら私が」
王国育ちのエステル、まさにその蜂蜜レモン水を用意してきていた。
「ほんのりミント風味です」
「それはいいねぇ♪」
すると何と龍園出身の木綿花も。
「実は私も蜂蜜水を。あとはナッツなどを少々」
「蜂蜜祭りですぅ?」
そしてハナも、タッパー一杯の蜂蜜レモンをどどんっ。
世界や国が違えど差入れの定番は同じらしい。思いがけぬお揃いに、ちょっとほっこり。
「だ、大丈夫か?」
カインは隅で燃え尽きているシャンカラとダルマにタオルを渡した。
「……相手方の皆さんを怒らせてしまったようです……何がいけなかったんでしょう」
サッカーのサの字も知らずにいた龍騎士達には、悩めど悩めど分からない。異文化交流って難しい。
優しい蜂蜜檸檬の香りの中、ふたりは揃って息を吐く。
「「サッカーって何だろう……?」」
依頼結果
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質問できるかな 夢路 まよい(ka1328) 人間(リアルブルー)|15才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2018/10/10 00:37:39 |
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相談卓 夢路 まよい(ka1328) 人間(リアルブルー)|15才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2018/10/10 22:33:27 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/10/09 23:47:13 |