【操縁】赤い靴

マスター:風亜智疾

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2018/11/30 19:00
完成日
2018/12/05 22:56

このシナリオは5日間納期が延長されています。

オープニング

■赤い靴
 踊っていた。平気なふりをして。
 笑っていた。元気なふりをして。
 描いていた。真実にふたをして。

 だから私は、行かなくちゃ。
 例えそれが痛みを伴うだけでなく。
 私唯一の絵筆すら取り上げることになるのだとしても。
 終わらせるのは、幕を引くのは私でなくても。
 私は舞台に立たなければならないのだから。
 多くを犠牲にした。多くを傷つけた。私のせいで。
 こんなちっぽけな、私のせいで。

■届いた招待状
『キミの住んでいたトコロ、すごーく居心地イイね!
 ボク、気に入っタよ。
 でもネ、足りないモノがアルんだよね。
 キミなら分かるデショ?

 ココに住んでテ、トモダチ一人救わずに逃げた勝手な子狐。
 足が悪いのを見ないフリするのは、楽しかったカナ?

 そろそろ、お墓参りにおいでヨ。
 一人でクルのも怖いデショ? 何人かデおいでよ。
 ダイジョウブ。キミのトモダチには手出ししないってヤクソクしてあげる。
 でも、寝てるヒトが可哀想だからサ、あんまりいっぱいはダメだよ?

 もしもキミが来ないナラ……ココに残ったホネで、遊ぼっカナ!
 キミのお父さんとお母さんはドレかなぁ!

 アァ、そうそう。絵筆と画用紙、持ってキテね!
 きっと素敵な絵が描ケルから!』

■選択肢のない選択
 ヴェロニカ・フェッロには確かに護衛はついていた。
 だが、護衛はあくまでも不審者に対してのものであって、郵便物一通には全く機能していなかったのが事実だ。
 そうして封を切られた手紙に綴られた悪意悪意悪意。
 悪い方の足から力が抜け、勢いよく体が崩れ落ちた。
 ガンっ!と鈍い音を立てて、右の二の腕がガラステーブルに叩きつけられる。
 幸いガラスは分厚く割れてはいないが、その上に乗っていた陶器のマグカップがはずみで落ちてガチャンと割れた。
 音に驚いた窓辺で丸まっていた愛猫のルーチェが、飛び上がってリビングから寝室へと駆けていく。
 それすら、ヴェロニカは構えなかった。
「でぃ、の。でぃーの。でぃーにぃ」
 震える声で呼ぶのは、今は遠くでハンターとしての仕事についているディーノ・オルトリーニ。
 ヴェロニカがディーノをその呼び方で呼ぶのは、本当に幼い時以来。
 怖くて震えが止まらない。寒さで震えが止まらない。
 自分が傷つくことではない。誰かが傷つくことが怖い。
 そして何より……眠りについた人々が悪意をもって使われる事が、怖い。
 自分のせいで、こうなってしまったことが。

 絵を描かなければよかった?
 絵本を描かなければよかった?
 炎に包まれた村から逃げなければよかった?
 雑魔から助けられなければよかった?

 わたしは どうしたら よかったの ?
 わたしは どうすれば ゆるされる ?

 わたしに たすけてなんて いえるしかく ない。

■向かう先
「……今回は、護衛任務だ」
 受付のバルトロがやりきれない表情で依頼内容を告げる。
 その横に立つのは、依頼人のヴェロニカ・フェッロ。
 けれど、その顔には常の明るい表情はない。
 まるで人形。無表情。
「行先は、ヴェロニカ嬢の故郷。あー……その、雑魔によって燃えた方の、村の跡地だ。今は墓地になってる」
 但し、なかなか参りに行く人もいないので、荒れ放題なのだという。
「生憎ディーノは遠方で作業してて連絡がつかん。ので、お前たちに頼むことになった。墓参りだからといって、気を抜くなよ」
 バルトロの説明の間も、ヴェロニカはただ、静かに佇んでいた。

リプレイ本文

■残酷な歓迎
 過去これ程言葉の少ない道程があっただろうか。
 そんなことを考えながら、クィーロ・ヴェリル(ka4122)は何気ない日々の会話を試みていた。
「この間ヴェロニカさんの庭に植わっていたハーブの中に興味があるのがあってね」
「最近どうも屋根裏が煩いなって思ったら、野良猫が住み着いてたんだ」
 勿論彼だけではない。ヴェロニカを護衛するため囲うようにして歩いていたレイレリア・リナークシス(ka3872)も鳳城 錬介(ka6053)もルスティロ・イストワール(ka0252)も言葉をかけている。
 全くの無言ではない。ただ、言葉少なに同意する言葉や否定の言葉で彼女は意思表示を行っていた。
 周囲を警戒しつつも静かにその様子を見ていた神代 誠一(ka2086)は、ぐ、と唇を噛みしめた。
 泣きながら頬を張られた夜の庭。向かい合ってみると決めた春の森。そして、勇気づけようと皆と騒いだ夏の庭。
 彼の腰元で、約束の標は今も揺れ続けている。
 何故、どうして。あの言葉は。あの約束は。
 人形のように表情を失っている彼女を見る度、胸が痛んで仕様がない。
 そんな誠一の背をそっと叩いて通り過ぎた鞍馬 真(ka5819)は、ふるりと一度だけ首を横に振って皆を追い抜いていく。
 全ては手紙の送り主であるあの嫉妬の歪虚と会えば分かるだろう。

 村に近づき、ルスティロと真が警戒のためにそれぞれスキルを発動させた。
 瞬間ガラにもなく叫んだのは、超聴覚で音を拾い上げた吟遊詩人だ。
「岩の擦れる様な音と、これは……火が爆ぜる音だ!」
 全員で眼前へと集中しつつ、ヴェロニカを馬に乗せ可能な限り村へと急ぐ。
 そこに広がっていたのは――。

 地獄絵図を演出しながら嗤う、金糸のジャルージーだった。

■再現された地獄
 恐らくエミーリオの能力で作られたのだろう簡易的な建物が数個。
 主に石や岩で出来ているそれは、クィーロが想像していたあの晩春の森で見つけたものに酷似していた。
 中には木で簡易的に組み立てられたものもあるが、それは恐らくゴーレムに指示でも出して作らせたのだろう。
 いくら人が離れ、訪れる者のない墓地のような廃村とはいえ、年数が経てば草も木も生える。
 そこに作られた構造物と、動き回るだけで攻撃を仕掛けてくる様子のない人と同じ程度の大きさのゴーレムたち。
 それらを追うように動き回る、こちらもまたハンターたちに攻撃を仕掛ける様子のない狼型のゴーレムたち。
 それらが、燃えていた。
 轟々と。延々と。時を戻すかのように、炎々と。
 ただ足りないのは人々の悲鳴か。
「キャハハハハハハ!! オカエリ! 足りないモノは分かったカイ?」
 呆然と、愕然と大きく目を見開き、空色の瞳から涙を零すヴェロニカへと楽し気に話しかけたエミーリオの頬を、一筋の赤閃が深く裂いた。
「よぉエミーリオ。腕やら左目は癒えねぇのか? だったらそのお喋りな口を封じる方が良かったな」
「ヴェロニカ様、立って。こちらへ」
 立つ事すらままならなくなったのだろう。座り込んでしまった彼女を労わるように引き上げて、レイレリアが彼女を背に庇う。
「墓参りだ? ハッ! 流石根暗野郎がやる事は陰険だな!」
 真っ先に気付いたのは、建物を確認した瞬間に覚醒していたクィーロと、ゴーレムを排除すべく駆け寄っていった真だった。
「まさかとは思っていたし、最悪は想定していたさ。でも、これは……」
 この燃え盛る廃村の何処に墓石がある。いいや、違う。まともな墓石が、何処にあるというのだ。
 だって、墓石全ては――!
「気づいタ? ゴーレムたちにモ名前を上げたンダ!」
 動き回るゴーレムの胸部や頭部に刻まれる名前。享年。哀悼の言葉。
 それは全て。全て!
「この村で亡くなった人の墓石で、ゴーレムを作ったのか!!」
 普段冷静な錬介が叫ぶ。震える拳が、行き場のない怒りをどうすればいいのかと迷っている。
「ボクは言ったヨ。キミのトモダチに怪我はさせナイって」
 だからゴーレムたちにはこう命令を出したのだと、エミーリオは嗤う。
「ただウロウロ動いてロ、ってね。あとはほら、ボクがこう――」
 パチンッ、と指を鳴らせば。
 一体のゴーレムが、まるでもがき苦しむような動きを見せながら崩れ落ちた。
 顔に当たるだろう部分を、ハンターたちに守られている、彼女に向けて。

 何かしてくるだろう。それは全員が考えていた。
 エミーリオが嫉妬の歪虚であり、無機物である石、岩を使ってゴーレムを作ることも知っていた。
 簡易的な建物すら、ある程度の時間があれば建てられることも知っていた。
 そして、ヴェロニカ・フェッロという人物に固執していることも知っていた。
 知っていた。知っていた。知っていた!!
 それでも、心の何処かで思っていたのも事実なのかもしれない。
「墓参りにおいで」という言葉が、その通りであるだろうと。

 けたたましく嗤うジャルージーが、ふうわりスカートを翻し一気に加速する。
 警戒するハンターたちの攻撃を回避し、跳ね返し、座り込んだヴェロニカの真正面で最後の砦として立つレイレリアを飛び越え。
 飴色の髪から覗く、特注のイヤーフックのかけられた方の耳元へ、そっと唇を寄せた。
「キミの足が動いてさえいれバ、助けに来たハンターたちは他の人を助けラレタのにね?」
 パチリ。指が鳴る。ゴーレムが崩れ落ちる。木々が燃える。石で出来た建物が崩れ落ちる。
「死んだカレらは、キミをどう思ってるだろうネ?」
 嗤うジャルージーに対して言葉を返したのは、身動き出来ないヴェロニカではなかった。
「エミーリオ。『深淵の声』と言う力を……知っているかい?」
 それは霊闘士であるルスティロが使えるスキルのひとつ。
 死者の骨や遺体を通じて、亡くなった者が何を想っていたのかを知ることが出来るものだ。
「だから、キミの都合の良いセリフばかり並べるのは止した方が良いよ?」
「フゥン?」
 つまらなそうに鼻を鳴らしたエミーリオの目論見をひとつ潰すことは出来た。
 ルスティロとの会話にエミーリオが気を取られている隙に、レイレリアは渾身の力でヴェロニカを立ち上がらせ、そこに錬介が駆け寄り力を合わせ更に距離を取った。
 その二人を確認してまた気が逸れたエミーリオが彼らを追わぬようにと、今度はルスティロが霊尾でその動きを封じる。

 そんな中、一人違う行動に出る者がいた。
 剣を翻し燃え盛るその舞台に上がったゴーレムを斬り伏せる。
 真には確固たる信念があった。
 たとえ、それが何であろうとも。
 墓石で出来たゴーレムであろうとも。斬り伏せるのだ、という信念が。
 その姿を捕えたエミーリオが苛立ちつつ、また指を鳴らす。
 が、その直前に真がゴーレムを斬り伏せる。
 その様子を見て、クィーロも真と同じくゴーレムへと向かっていく。
 鳴らされる指によって、振り上げられる剣によって。
 崩れる墓石で出来たゴーレム。焼けて崩れ落ちていく建物たち。
「……て」
 か細い音を拾ったのは、誰だったか。
「いやだいやだいやだいやだ!!!」
 続いたのは、喉よ裂けよとばかりの絶叫。
「やめて! ころさないで! おねがい、みんなをたすけて!!!!」
 全員分かっていた。
 彼女が。ヴェロニカ・フェッロが囚われているのは、不自由な己のせいで人々が助からなかったのだという思い込みと。
 助けることが出来る力を持った一人のハンターが、眼前で逃げ惑う人ではなく、己を抱えて逃げたことと。
 何より。助けようという強い意志を持ちながら動けぬ自分と違い、助けられる力を持ちながら彼女を選択したハンターを妬んだのだという事に。

■イフ
「あの時私に駆ける足があれば? ――私は一人で逃げられただろう(分からない)」
「あの時私に力があれば? ――私は誰かを助けられただろう(本当に?)」
「どうして私の足は動かないの? ――雑魔に怪我させられたから(仕方ないことだった)」
「どうして雑魔に怪我させられたの? ――ハンターが助けに来るのが遅かったから(違う)」

「どうして力がある彼らを、私は妬んではいけないの?(ダメよ)」

 ――ネェ。どうして妬んじゃダメなのサ?

 嗚呼。嗚呼。嗚呼。妬 ま し ――

■それは誰しもが
「誰かを妬ましいと、羨ましいと思うことは当たり前で、悪いことではありません」
 そっとヴェロニカの左肩に手を置いて、そう言ったのはレイレリアだった。
 ふとした瞬間に、羨ましい相手に負の感情を抱くこともあるのだと。ただ、その先の行動が大切なのだと。
「間違えてしまいそうなら。或いは間違えてしまったとしても、私達を頼って下さい。私達は、それを許しますから」
 微笑みつつ告げられるその言葉にはきっと、己の経験が生きているのだろう。
 同じように膝を付きつつ、反対側、右側の肩にそっと手を添えて錬介が言葉を重ねる。
「俺は、貴方が羨ましい」
 ヴェロニカのせいではないのだと、その心を引き戻すために語るのは、ほんの少しの己の心の闇。
「貴女だけでなく、全ての人が羨ましい。自分が何か分かっているなんて羨ましい」
 嫉妬なんて、誰にでもあるのだと。持っていて悪いものではないのだと笑ってみせる。
「皆、誰かが羨ましくて妬ましくても、もっと良い自分になりたくて頑張るのですから」
 指を弾く音。墓石であったものを叩き斬る音。
 燃え盛る音。崩れ去る音。沢山の、音。
 ない音は、己以外の悲鳴。
 なかったのにある音は、己を引き戻そうとしてくれる、声。
「もうやめて、エミーリオ!」
 泣き叫び、彼女は持参していたスケッチブックを叩きつけた。
 エミーリオが足りないものと言ったもの。それはヴェロニカの嫉妬。
 エミーリオが書かせたかったもの。それは、眼前広がる、彼女にとっての地獄絵図。
 このままでは駄目だ。今無理やりにヴェロニカに絵を描かせてしまえば、彼女は完全に――!!
 最後のゴーレムが真によって斬り伏せられるのと、エミーリオが力づくでルスティロの拘束から脱したのは、ほぼ同時だった。
 気配を消し、一気に加速した誠一がエミーリオへと攻撃を繰り出すも、間一髪でそれを避けたジャルージーは忌々し気に彼の腰元で揺れるリボンを睨む。
「ほんっとう……ジャマばっかダヨ、お前!」
「邪魔はお前だエミーリオ」
 射光を突きつける誠一以外にも、剣を構える真、太刀に手をかけるクィーロ。
 全てのゴーレムは崩れ落ち動かない。
 燃えているものも、いずれ鎮火していくだろう。
 大きく舌打ち一つ零し、もう絵を描く様子もないヴェロニカを一瞥した後。
 エミーリオはもうその場に興味を無くしたのだろう。一気にその場を離脱していった。

■選択
 もう、この場所で戦闘するような事態は起こらないだろう。
 警戒を続けるために見回りに出る真以外が、ヴェロニカを見つめている。
 未だ煙燻る故郷を前に涙を零し、呆然と座り込む彼女の両肩にそれぞれ手を添えていたレイレリアと錬介が手を放す。
 せめて墓石の欠片を集めて、綺麗にしようと燻る火を消しつつ廃村を回っていく。
「僕はね、ヴェロニカさんはしたい事をすれば良いと思うんだ」
 しゃがみ込み、眼前でルスティロは笑う。
 もっと我儘に、我慢せず、自由になればいいと。色々な事に負い目を感じてしまうのは仕方ない。
 だとしても、ヴェロニカは今、生きているのだから。
「口にするのに気が引けるなら、文字でも絵でも何でもいいさ。それがなんだって、別にいいとも思う」
 心で解決出来ない感情は、吐き出さなければ辛くなる一方なのだから。
「受け取るかどうかも、誰かの勝手だろうけど。僕はそう思っていて……だから、ここにいる」
 後片付けを手伝ってくるよ、と服の埃を掃って立ち上がり、先行くレイレリア達を追いかけていく。
 零れる涙はそのままに、ヴェロニカは彼の後姿を見送った。
 そして。
 ヴェロニカの前に、双翼が並び立つ。

 双翼――誠一とクィーロは共に、ヴェロニカの過去はどうだって構わないと思っている。
「俺はお前が何を考えなにをかくそうとしているかなんざ興味はない」
「ヴェラ。君は今どうしたいんだ。君の瞳の見つめる先は何処だ」
 クィーロと誠一の言葉に、ヴェロニカの瞳が揺れる。
「『生かされた』とか『生きていてはいけないのだろうか』とか、そんな他人視点の考え方なんてどうでもいい」
 大事なのは、ヴェロニカ・フェッロ自身の意志なのだから。
「ヴェラ、君の望みはなんだ。君の心は今、何処にあるんだ」
 焼け朽ちていくばかりの過去なのか、それとも光射す今、そして未来なのか。
 腰元の標を解き左手で握りしめる。
(そうか……俺は悲しかったんだ。心塞ぎ人形のような君を見る度、俺達が紡いだ言葉と想いが空を切るようで)
「今だというのなら。どうして。ヴェラの想いは、あの日託してくれたんじゃなかったのか」
 自分も簡単には変われない。今だって血を吐きつつ歩いている。
 双翼各々と約束した言葉を忘れたなんて、絶対に言わせない。言わせて、たまるものか。
「助けてと手を伸ばすなら全力で掴み取る。そう約束しただろうが! お前はどうしたい!」
「選べ! 過去か未来か。君が選ばなければ、君が動かなければ、何も変わらない!」
 力強く差し出されるクィーロの左手と誠一の右手。
「他人を嫉妬して何が悪い。妬む事の何処がいけない。そんなん誰だって、俺だって持ってる感情だ」
「俺は言ったね。君の気持ちを持って行くと。ヴェラ、君の心はどこにある」
 あってはならないと思っていた。人を妬む事も、誰かと比べて羨むことも。
 そんなヴェロニカの考えを吹き飛ばすように、ハンターたちは言葉を紡いでくれていた。
 そして今、眼前の二人もまた。同じように。
 引き上げようとしてくれている。彼女を、同じ人間として。
 同じ痛みを知り、それでもまた一歩踏み出す仲間として。
「責めるような奴がいるなら笑い飛ばせ。お門違いだってな!」
「ヴェラ。君が願うなら、俺達は力になる。君の幸せも未来も、君が決めるんだ」
 からりと笑うクィーロと、柔らかくレンズの向こうの瞳を細める誠一。
 二人が差し出す手を、ゆっくりと、それでも確かに取って。
 ヴェロニカは、泣きながら、それでも確かに今に向かって立ち上がった。

■墓参り
 真と合流した錬介、クィーロが墓石を丁寧により分け、誠一が鎮魂の花代わりの銀製の花を、ルスティロとレイレリアが歌を手向け。
 其々が黙祷を捧げる。
 ふと、自分の袖を引く力に、誠一は無言のままそっと相手に向き直った。
 こつんと、自分より低い位置にある頭が預けられる。
 静かに濡れていく自分の胸元を、誠一は無言で受けとめた。
「全く……頭で考える奴はすぐに囚われて動けなくなる……誰かさんとそっくりだな」
 ポツリ、呟かれたクィーロの言葉が、風に乗って攫われていった。


 END

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参加者一覧

  • 英雄を語り継ぐもの
    ルスティロ・イストワール(ka0252
    エルフ|20才|男性|霊闘士
  • その力は未来ある誰かの為
    神代 誠一(ka2086
    人間(蒼)|32才|男性|疾影士
  • 六水晶の魔術師
    レイレリア・リナークシス(ka3872
    人間(紅)|20才|女性|魔術師
  • 差し出されし手を掴む風翼
    クィーロ・ヴェリル(ka4122
    人間(蒼)|25才|男性|闘狩人

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人
  • 流浪の聖人
    鳳城 錬介(ka6053
    鬼|19才|男性|聖導士

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依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/11/26 16:59:35
アイコン 相談卓
神代 誠一(ka2086
人間(リアルブルー)|32才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2018/11/30 18:53:57