• 陶曲

【陶曲】脚本家と嫉妬軍将の遊戯

マスター:大林さゆる

シナリオ形態
イベント
難易度
難しい
オプション
  • relation
参加費
500
参加制限
-
参加人数
1~25人
サポート
0~0人
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2018/12/26 09:00
完成日
2019/01/04 02:26

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 自由都市同盟。
 魔術師協会広報室から派遣されてきた魔術師たちが、山脈の遺跡を調査していた。
 噂の段階であったが、遺跡には精霊のお宝があるらしいという説もあった。
「トパーズの精霊からは『合言葉』を聞くことができたし、後は遺跡の入口を見つけるだけだな」
 ヴァリオスでの仕事を終えた魔術師スコットが、遺跡へと向かう途中の出来事であった。
 異変に気が付いたのは、麓に辿り着いた時。
 後方から、兵隊らしき集団が近づいてくるのが見えた。
 双眼鏡で確認すると、VOIDオートマトンと硝子細工人形の集団だ。
 他にも、CAMが6体。
 だが、明らかに異常な風貌のCAMであった。
 ハンターたちが知る限りでは、歪虚CAMと呼ばれる個体のようであった。
 スコットは思い出した。高位の嫉妬歪虚が、歪虚CAMを操り、各地で暴れ回っていた忌わしい事件があったことを……。
「まさかとは思うが」
 推測が正しければ、クラーレ・クラーラ (kz0225)が関わっている可能性が高い。
 そして、何よりも、調査中の遺跡には、カッツォ・ヴォイ(kz0224)が居た痕跡もあった。
 スコットは、すぐさま、本部へと報告することにした。



「さて、どちらが先に古代遺跡に辿り着くのか、退屈しのぎにはいいでしょうねぇ」
 クラーレは愛用のパラソルを手に持ち、カッツォを睨み据えた。
「今まで姿を見せず、何をしていた? ラルヴァ様は見て見ぬ振りをしていたのだぞ? そのことを忘れるな」
 白い仮面からは、カッツォの表情は見えなかったが、その口振りは、やや怒りに満ちていた。
「ラルヴァ様がどう思われているのか、私には分かりませんが、あなたの想いが一方通行だというのはこのクラーレにも分かりますよぉ。あなたの脚本には、そのように書かれていたのですかぁ?」
 コロコロと笑うクラーレ。
 カッツォが、ステッキの先を地面に強く叩き付けた。
「……生憎と、貴様の出番は、私の脚本には無いのだよ。出てきたとしても、クラーレ・クラーラなど、その存在すら、ハンターどもに忘れられているだろうな……ククク」
 皮肉に満ちた笑いのカッツォ。
 クラーレは、悔しそうに歯軋りした。
「カッツォ、あなたのそういうところ、大嫌いですよぉ」
 と、すぐに、ニコリと微笑む。
「まあ、それはそれとして、ゲームをするというのでしたら、喜んで受けて立ちますからねぇ」
「望むところだ。どちらが先に、古代遺跡を乗っ取ることができるのか……勝つのは、この私だがね」
 カッツォは、襟元を整え、余裕の笑みを浮かべた。



 ハンターたちが、山脈の麓に集まった頃。
 VOIDオートマトンと硝子細工人形の集団は、競うように進軍していた。
 その集団の中には、歪虚CAM、6体……R7エクスシア型3体、ドミニオン型3体だ。
 R7エクスシアの肩には、カッツォ・ヴォイ。
 ドミニオンの肩には、クラーレ・クラーラがいるではないか。
「おやおや、ハンターたちが集まってきましたかぁ。これは面白いゲームになりそうですねぇ」
 楽しそうに笑うクラーレ。
「フフフ、ゲームは強い者が必ず勝つ訳ではないのだよ。運命の賽が、どう転ぶのか、それこそがゲームの醍醐味というものだ」
 カッツォは、根っからの遊戯好きであった。
 だが、この地に住む人々にとっては、嫉妬の歪虚たちに襲われる危険があった。
 嫉妬たちの遊戯に、罪のない人々を巻き込む訳にはいかない。
 ハンターたちが立ち上がった。
「いっちょ、やったろーじゃねぇか!」
 新しい幕が、ついに開かれた。

リプレイ本文

 戦闘の口火を切ったのは、クラーレ・クラーラ (kz0225)が率いる硝子細工人形の集団、カッツォ・ヴォイ(kz0224)に操られたVOIDオートマトンの集団であった。
 一気にハンターたち目掛けて攻め寄せてくる玩具の兵隊たちが、銃で攻撃をしかけてきたが、ハンターたちは軽々と回避していく。
 Uisca Amhran(ka0754)が法術縛鎖「アルタ・レグル」を発動体とした【龍獄】黒龍擁く煉獄の檻を解き放った。範囲内にいたVOIDオートマトンたちが無数の刃によって空間に縫い付けられ、闇色の龍牙や龍爪に貫かれ、その衝撃で粉々に砕け散り、消滅していった。
「ハンターを甘く見ていると痛い目に遭うってことを教えてあげないとですね」
 Uiscaの攻撃から始まり、さらにハンターたちの怒涛の猛攻が続いた。
「こんな所で競争とはな。随分舐めた真似をしてくれるものだ」
 駿馬に騎乗したコーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561)が、スナイパーライフル「ルーナマーレ」を構え『コンバージェンス』でマテリアルを収束し『サジタリウス』の銃弾を一気に解き放った。範囲内にいた硝子細工人形たちが銃弾に撃ち抜かれ、ダメージに耐え切れずに消滅していった。
 アルマ・A・エインズワース(ka4901)が『ファイアスローワー』を噴射して硝子細工人形たちを焼き尽くしていく。
「わふわふっ、瑪瑙さん、討ち漏らしお願いです!」
 瑪瑙(ka7298)はアルマの闘い振りに少し戸惑いながらも、試作溶断刀「ブレイジングKAGUTUCHI」による『電光石火』を繰り出し、硝子人形一体を斬り裂いていく。
「あれ、本当にエルフか?」
 アルマの姿は、まるで戦場を駆け抜ける大型犬だ。
「気にするな。いつものことだ」
 キャリコ・ビューイ(ka5044)は『隠の徒』を発動させ、アルマたちを援護するため、身を潜めながら軍用双眼鏡を覗き込み、クラーレがいる場所を確認していた。
「ドミニオン三機とクラーレは、まだ動く様子はないな」
 一方、カーミン・S・フィールズ(ka1559)は『飛燕草』を発動させて空中を走り、観測者の双眼鏡を使って歪虚CAMの動向に注意を払っていた。
「こちらカーミン、ドミニオン3体は初期位置から動いていないけど、エクスシア3体は少しずつ前進。カッツォは、中央にいるエクスシアの肩に乗ってるわ」
 魔導パイロットインカムで状況を伝えるカーミン。
 応答したのは、ジャック・エルギン(ka1522)だ。
『こちらエルギン、俺はアリアと硝子人形を蹴散らしてから歪虚CAMを叩きにいくぜ』
 ジャックはゴースロン・トランプルに騎乗して走り抜け、『高加速射撃』を駆使して蒼機弓「サクラ」で矢を放ち、硝子人形を撃ち抜いていく。
 共に駆けるのは、ゴースロンに騎乗したアリア・セリウス(ka6424)……龍弓「シ・ヴリス」を構え、矢を放つと硝子人形に命中して、粉々に砕け散っていく。
 ジャックとセリウスが弓で攻撃したことにより、法輪「精霊馬」に騎乗した夢路 まよい(ka1328)の『エクステンドキャスト』が完了し『七芒星』が解き放たれた。
「七つの罪の一つ、嫉妬を焼き滅ぼせ、ヘプタグラムよ!」
 範囲内にいた硝子人形の集団は、七芒星のメテオスウォームに巻き込まれ、一瞬にうちに爆炎と共に消滅していった。
「要するに、敵が突破しないよう全滅させるんですぅ? それじゃ吶喊してきますぅ」
 星野 ハナ(ka5852)はエクウスに騎乗し、硝子人形たちが射程に入ると『五色光符陣』の結界を張り巡らせ、結界内部にいる敵を光で焼き尽くした。
「こりゃまた数が多い……もう戦場みたいな有様だな」
 ゴースロンに乗り、カイン・A・A・マッコール(ka5336)が斬魔刀「祢々切丸」を振り翳して『薙ぎ払い』を駆使して、VOIDオートマトンたちを斬り裂き、敵を消滅させていった。
 ハンターたちは、慎重に前進していく。油断は禁物だからだ。
 ヴァルナ=エリゴス(ka2651)の予想は的中していた。遺跡へと続く崖に這う様に登っていくVOIDオートマトンを発見したのだ。
「一体でも抜けられたら、一大事です」
 ヴァルナはロングボウ「センティール」にゼノンの矢を番えて、放った。矢はVOIDオートマトンに命中してダメージを与えると、消滅していく。
 エクウスに騎乗したボルディア・コンフラムス(ka0796)は、遺跡へと向かうVOIDオートマトンを見つけ、蒼機銃「エーデルワイス」を構えて、狙い撃つ。
「人を勝手にゲームの駒にしやがって…」
 怒りを堪えて、ボルディアは仲間と足並みを揃えて少しずつ進んでいた。
「さーて、大掃除でもするかァ」
 駿馬に騎乗したシガレット=ウナギパイ(ka2884)が『ライトニングボルト』を発動させ、直線上にいたVOIDオートマトンたちが雷撃に貫かれて消え去っていった。
「クラーレ・サイドの人形も、減らしていきましょうか」
 エラ・“dJehuty”・ベル(ka3142)は魔導バイク「バンダースナッチ」に騎乗し、硝子人形たちを優先的に狙っていた。蒼機弓「サクラ」を構えて『二矢』を放ち、硝子人形を撃ち抜き、消滅させていく。
「歪虚CAMまで辿り着くには、やはり前衛の兵隊を倒すのが賢明だね」
 エクウスに騎乗した鞍馬 真(ka5819)が聖弓「ルドラ」を構え、硝子細工人形に狙いを定めて矢を放った。命中し、矢が人形の胴部に突き刺さると、多大なダメージにより、破裂するように消滅した。
 だが、残りの兵隊たちは、ハンターたちの攻撃を潜り抜けて、遺跡を目指して移動していた。
「レイアさん、アリアさん、この場は任せてください」
 セレスティア(ka2691)は、レイア・アローネ(ka4082)とアリア(ka2394)を先へと行かせるため、立ち塞がるVOIDオートマトンの集団に『プルガトリオ』を放った。敵は空間に縫い付けられたかのように身動きが取れなくなると、無数の刃によって斬り裂かれ、消滅していった。
「セティ、助かる。行くぞ、アリア」
 魔導バイク「バンダースナッチ」に騎乗したレイアが、魔導剣「カオスウィース」による『薙ぎ払い』で前方のVOIDオートマトンたちを斬り裂いていった。見れば、すでに消滅していた。
「レイアさん、今回はありがとう」
「気にすることはない。お互い様だろう」
 レイアは、アリアがカッツォに対して思うところがあることを知り、彼女のために道を切り開こうと決めていたのだ。
 その想いに応えるように、アリアは『アサルトディスタンス』ですれ違い様にVOIDオートマトンたちを斬り裂き、エクスシアの傍まで接近することができた。
「カッツォ、あたしは……」
 アリアの視界に、カッツォの姿が入った。
「ドミニオンは射程外の位置か。ならば」
 コーネリアがスナイパーライフル「ルーナマーレ」による射程で捉えることができたのは、エクスシア三体だった。『ナイトメアサンダー』の銃弾が、光の雨と化して降り注ぎ、エクスシア三体に命中したが、敵は抵抗に打ち勝ち、ハンターたちの攻撃を警戒したのか、紫色のバリアのような結界を張り巡らせていた。
 その状況に気が付いたカーミンが、魔導パイロットインカムを使い、仲間に報告する。
「ジャック、聞こえる? アリアの予想通り、エクスシアは周囲に結界のようなものを広げているわ。コーネリアが攻撃してくれたおかげで、予想が確信に変わったわ」
『そうか。アリアの予想は当たってたか』
 ジャックの応答を聴いていたセリウスは、星神器を使うことを決意していた。


 乱戦が続く。
 瑪瑙は『受け流し』を駆使して、硝子人形が放った銃弾を試作溶断刀「ブレイジングKAGUTUCHI」で受け払うが、VOIDオートマトンが撃った弾が瑪瑙の腹部に命中した。
「た、大変です。瑪瑙さん、しっかりしてください」
 慌てて駆け寄るアルマは、すぐさま『アンチボディ』を施し、傷を癒していく。
「……楽しい、遊戯だ…」
 呟く瑪瑙……どうやら戦闘の余韻に呑み込まれてしまったようだ。
「抜けてくる人形がいるわね」
 まよいは『ダブルキャスト』を詠唱……フォースリングを発動体とした『マジックアロー』が2本浮かび上がると、その矢は複数となり、硝子人形たちを撃ち抜いていく。
「まだまだ、やっちゃいますよぉ」
 ハナが間合いを取り、『五色光符陣』を展開させて、虱潰しに硝子人形を消滅させていく。
 エラは『散炎』を噴射させ、扇状に炎が舞い、範囲内にいた硝子人形たちが攻撃を受けて消滅していった。
「兵隊の取り零しだけは、防ぎたいところです」
 一体でも遺跡に敵が辿り着ければ、何をされるか分からないからだ。
「嫉妬の歪虚には、もう一人いたことを忘れてないかな☆」
 Uiscaが『79の残影』による魅了の魔法を発動させ、災厄のアイドルを思わせるような魔眼を使い、VOIDオートマトンを釘付けにしていた。
「あたしの歌を聞いてね☆ 曲は『斬撃の境界少女』だよ☆」
 ノリノリのUisca。
 カッツォには、災厄のアイドルがここにいないことは分かっていたのが、Uiscaが戦場という舞台を盛り上げていたこともあり、満足げに笑っていた。
「どっちにしろ、足止めした敵は纏めて縫い付けてやるからなァ」
 シガレットが法術縛鎖「アルタ・レグル」を媒体とした『プルガトリオ』を解き放ち、VOIDオートマトンの集団が空間に縫い付けられ、さらに無数の刃で斬り裂かれて、消え去っていく。
「一気に汚れが剥がれ落ちたようだぜェ」
 マイペースのシガレットだが、戦いの手を緩めることだけはしなかった。

 

 魔箒「Shooting Star」に乗り、上空を飛行して移動していたのは、蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009)。『エクステンドキャスト』で練り上げた『荘厳』の重力波を発生させ、エクスシア三体を巻き込んでいった。
「彼方目指す蔓……編むは階……頂の光のその先へ…」
 エクスシアはダメージを受けていたが、抵抗に打ち勝ち、上空にいる蜜鈴に狙いを定め、マテリアルライフルを放った。蜜鈴は隠の徒を発動させていたが、広い空間では敵に見つかることもあった。魔箒に乗ったまま、一撃目、二撃目のマテリアルライフルを回避できたが、三撃目のマテリアル砲が蜜鈴に命中し、その衝撃で彼女は地上へと落下していった。
「お? 空から美女が降ってきたぜェ」
 シガレットの頭上には、蜜鈴が……。
 両腕で受け止めたシガレットは、蜜鈴を抱きかかえていた。
「……すまぬな」
 蜜鈴が呟くように言うと、シガレットは気にすることもなく不敵に微笑んでいた。
「意外と無茶するなァ。まあ、そういうのは、嫌いじゃないが」
「妾とて、カッツォたちの遊戯には呆れているからの。戯れに滅ぼされる者の嘆きすら、愉しむのじゃからな」
 忌々しいとばかりに、カッツォとクラーレを睨み据える蜜鈴。
 クラーレの指示で、ようやくドミニオン三体が動き出した。
 エラの射程に入り、『三散』の光が現れ、その頂点一つ一つから伸びた光がドミニオンを貫き、ダメージを与えることができたが、ドミニオンは遺跡を目指して移動していた。
 射撃で人形たちを狙っていた東條 奏多(ka6425)は、魔導ママチャリ「銀嶺」に騎乗し全速力で駆け抜け、ドミニオンへと接近することができた。
「おまえらの正義など、ただの真似事に過ぎん」
 奏多は絶火刀「シャイターン」を掲げ『コール・ジャスティス』を解き放った。マテリアルの光は正義の輝きとなり、仲間の力を大きく底上げしていく。
「カッツォと言い争ってるのは、クラーレだよな。あいつら、仲悪いのか?」
 エクウスに騎乗したレイオス・アクアウォーカー(ka1990)が、闘旋剣「デイブレイカー」と封印されし魔腕の『ソウルエッジ』を纏った『二刀流』を繰り出し、ドミニオンの胴部を斬り裂くと、その攻撃が引き金となり『アスラトゥーリ』の斬撃が迸った。ドミニオン一体が、レイオスの凄まじい攻撃に耐え切れず、爆発して粉々に砕け散り、その場から消滅していった。
 ゴースロン・トランプルに騎乗したジャックが『チャージング』で威力が増した『薙ぎ払い』を駆使して、ドミニオン一体の胴部と腕を斬り裂いていく。
「アリア、頼むぜ! こんだけ敵の数が多いってことは、それだけ古代遺跡が重要なのかもしれねーな」
「ん、その可能性はあるわね」
 ジャックと連携していたアリア・セリウスが、身捧の腕輪を発動体とした『織花・祈奏』のソウルエッジを星神器「ロンギヌス」に纏い、後方に居るエクスシアに狙いを定めて『アンフォルタスの槍』を放つ。光を纏ったその一刺の槍は直線上にいたVOIDオートマトンや歪虚CAM、エクスシアの範囲結界さえも貫き、敵が攻撃を受ける度にセリウスの生命力も少しずつ回復していった。
「結界も無意味だったかしら?」
 カッツォは紙一重で回避し、地面へと着地していた。
「おお、これが大精霊の力か……素晴らしい。さすがは、大精霊の駒だけはあるな」
 だが、セリウスの狙いはカッツォではなかった。歪虚CAMを優先的に攻撃して、できる限り、敵を巻き込み、敵陣への突破口を開くことだった。
 眼前には、エクスシアが立ち塞がっていた。
「この間合い、いけるか」
 真は『ソウルエッジ』を纏った魔導剣「カオスウィース」と響劇剣「オペレッタ」の『二刀流』を振り降ろし、エクスシアの胴部を斬り裂いた。その反動で『アスラトゥーリ』が放たれ、さらに『リバースエッジ』が放たれる。成す術のないエクスシア一体が、疾風怒濤のような真の攻撃によって、細かく砕け散り、消滅していった。
 セリウスたちが歪虚CAMを蹴散らしていく隙に、ボルディアが素早くカッツォに接近……『炎檻』の赤熱した腕から幾条もの炎鎖の幻影が浮かび上がり、カッツォを捕えることができた。
 怒りを顕にするボルディア。
「てめぇだけは絶対に許さねえ! 俺の大切なダチたちを……よくも! 人を小馬鹿にした態度が、一番ムカつくんだよォ!」
 強い気持ちが、ボルディアを駆り立てた。
 カッツォは抵抗を試みるが、炎鎖の幻影が両脚に絡まり、移動することができなくなった。
「なん…だと? ……この私が?」
 カッツォは、抵抗できなかった。何故、ボルディアにこんな力があるのか、カッツォには不思議で仕方なかった。ボルディアは自分が傷つくことよりも、仲間たちが傷つくことの方が耐えられないのだ。そうした想いは、カッツォの理解を越えていた。
 とそこへ、星神器「角力」を装備したフィロ(ka6966)が『鹿島の剣腕』を起動させ、『鎧徹し』の連撃をカッツォの胴部へと叩き込んだ。一撃目は抵抗できず、多大なダメージを喰らい、二撃目では辛うじて抵抗に打ち勝ち、カッツォのカウンターが繰り出された。
 ステッキがフィロの胴部に突き刺さる……痛恨の一撃かと思いきや、『金剛不壊』で耐え忍んだフィロ。
「私に貴方のカウンターは効きません」
 どこまでも冷静なフィロに、カッツォは苛立ちを隠せなくなった。
「カウンターを封じるのではなく、力押しで、この私を倒すつもりか? 良いだろう。相手になってやろうではないか」
 不遜な態度のカッツォだが、フィロは全く動じることはなかった。
 マリィア・バルデス(ka5848)は、戦況を鑑みて歪虚CAMを狙っていた。
 重魔導バイク「バビエーカ」を銃架代わりにして、マリィアは新式魔導銃「応報せよアルコル」を構えて『リトリビューション』を放った。
「生身で歪虚CAMとやり合うとは思わなかったわね。それとも、これからこういうことが増えるのかしら」
 マリィアの放った銃弾が、光の雨のように降り注ぎ、次の攻撃に備えてリロード。
 エクスシア二体とドミニオン二体が強度の高い懲罰を付与され、行動を阻害されていた。
 地上に降りた蜜鈴が『雷霆』を解き放った。
「女王は動かぬが常……とは言いよるが、此度の駒遊び、女王はどれじゃろうの?」
 一直線に伸びる雷撃は鳴り響く轟音となり、ドミニオン二体を巻き込んでいく。
 クラーレは抵抗に打ち勝ち、後方へと下がっていく。
「おやおや、私の子たちを抑えるとは。エクスシアは、どうでも良いですけど」
 片目を閉じるクラーレ。
 それが合図となり、岩場に隠れていた硝子人形が遺跡の入口付近へと接近していた。
「やはり、来ましたね」
 ヴァルナは、クラーレが勝ちに拘ると予想して、遺跡付近で兵隊たちの動向を双眼鏡で観察していたのだ。ロングボウ「センティール」を構えるヴァルナ。弦が弾ける音がすると、ゼノンの矢が硝子人形に突き刺さり、ダメージを受けた衝撃で一瞬にして消え去った。
 舌打ちするクラーレ。
「ああいう手合は、少し厄介ですねぇ」
 遠くからヴァルナを見据えるクラーレ。片目を閉じている間は、遥遠くの配下でさえも思うように操ることができたのだ。
 その異変に気付いたのは、アウレール・V・ブラオラント(ka2531)だ。
「片目を閉じるとは、随分と余裕だな」
 クラーレが無防備になっている……そこへ、アウレールが斬霊剣「剣豪殺し」の魔法剣を付与した聖祈剣「ノートゥング」と絶火刀「シャイターン」による『二刀流』を繰り出し、クラーレの身体を斬り裂き、至聖三剣『聖子』の斬撃を放つ。さらに『リバースエッジ』の連撃を繰り出した。
 その攻撃は全て命中し、ダメージを与えることができたが、クラーレは微笑んでいた。
「……このクラーレに触れる者がいたのですねぇ。少し驚きましたよぉ」
 愛用のパラソルを杖のように扱い、鋭い一撃をアウレールに叩き込んだ。
「はいはい、おまけの串刺しもありますよぉ」
 パラソルの鋭い先をアウレールの胴部へと突き刺し、貫通していく。激しい痛みが、アウレールの全身に走った。尋常ではない痛みであったが、アウレールは必死に耐えていた。
「……クラーレ……おまえのことは……忘れない……」
 耐えて耐えて、耐えた。アウレールは流れ出る血を抑えながら、痛みに耐えていた。
 さらに戦いは続く。
 キャリコは新式魔導銃「応報せよアルコル」を構え、4ラウンド溜めた『コンバージェンス』による『サジタリウス』を放った。狙いはクラーレだ。
「立ったまま、消えろ!」
 キャリコの放った銃弾が、直線上に迸り、クラーレの胴部に命中した。
「おや、射程の長い銃とは、興味深いですねぇ」
 ダメージは受けていたようだが、クラーレは何事もなかったかのように立ち尽くしていた。



 カッツォが指を鳴らすと、エクスシア二体がボルディアに襲い掛かる。
「上等じゃねぇか!」
 機体の大剣を魔斧「モレク」で受け流すボルディア。
 辺境のアリアは『マーキス・ソング』を詠唱して、レイアたちを鼓舞し、戦況を窺っていた。カッツォに隣接するため、慎重に様子を窺うアリアだが、ボルディアはすぐさま攻撃体勢に入った。
「これでも喰らいやがれ!」
 ボルディアは『烽火連天』を繰り出し、魔斧「モレク」を振り回しながら大回転したかと思うとエクスシア二体を軽々と薙ぎ払っていく。
「まだ倒れないか。手加減無用だな」
 前もって魔導ママチャリ「銀嶺」から降りた奏多は『アクセルオーバー』の残像を纏いながら加速移動し、『アサルトディスタンス』で駆け抜けながら、エクスシア二体とカッツォをすれ違いざまに絶火刀「シャイターン」で斬り裂いていく。
 Uiscaは『ファーストエイド』のタイミングで【龍魂】白龍纏歌を詠唱して、自分と奏多の怪我を治癒していく。
 セレスティアが『アンチボディ』をレイアに施していた。
「大切な人たちを守るのが、私の務め……レイアさん、ご武運を」
「ああ、任せておけ」
 レイアが星神器「天羽羽斬」による『守りの構え』からの『オロチアラマサ』を繰り出した。狙いはエクスシアだ。レイアの神刃による高速連撃は、時間さえも超えて、エクスシア一体の全身を斬り裂き、木端微塵に砕け散った。もう一体のエクスシアは、レイアの守りの構えを受け流し、前進していく。
 それを見逃すコーネリアではない。スナイパーライフル「ルーナマーレ」を構え『キラースティンガー』の銃弾がエクスシアの胴部を貫き、動力部を撃ち抜かれ、爆発して消滅していった。
「これで、エクスシアは全て消えたな。この競争の勝者となるのはカッツォ、貴様らではない。貴様らは両者揃って負け犬となる」
 どこまでも冷静なコーネリア。
 対して、静かなる闘志を燃やす者もいた。
「カッツォ、きみの噂は以前から聴いていた。だから私は……決めたよ」
 真は覚悟を決めて星神器「カ・ディンギル」を装備……『ヤルダバオート』の強烈な結界が展開して、範囲内にいる仲間たちに強固な守りを与える。
 ヤルダバオートの結界内に居たフィロが、星神器「角力」による『鎧徹し』をカッツォの胴部に叩き込んだ。強烈な連撃を受けたカッツォは、カウンターを発動させようとしたが、思う様にいかず、体勢を崩していた。
 カッツォにも意地があったのか、両脚を地面に押し付けるように体勢を整えていた。
「おのれ……貴様ら……」
「カッツォ様、そろそろ退場のお時間では?」
 フィロの問いかけに、カッツォは憎しみを顕にした。
「許さん……許さんぞ!」
 自分から攻撃を仕掛けるカッツォ……手に持つステッキでフィロを狙うが、ヤルダバオートの結界によって認識を阻害されていたのか、あっけなく回避されていた。
 シガレットもヤルダバオートの結界に入っていたこともあり、カッツォの仮面にデコピンすることさえできた。
「劣勢から大逆転してこそが、ゲームの醍醐味じゃねェの?」
 カッツォは、奏多とフィロの攻撃で深手を負い、シガレットを睨むことしかできなかった。
「……」
 珍しく、カッツォは沈黙していた。
「いつもなら、キレるのに……どうしたんだろう?」
 アリアが呟く。
 次の攻撃にも備えてドールリング「アンジュ・デシュ」を装備した『アクセルオーバー』を発動させるアリアだが、カッツォは蹲り、その場から動かないため、相手のカウンターが発動することもなかった。
「なんだろう……この感じ……嫌な予感がする」
 警戒するアリアに、他のハンターたちも身構えていた。

 


 一方、クラーレの指示で動いていたドミニオン二体が、マテリアルライフルを放ってきた。
 カインは回避すると、魔導銃「狂乱せしアルコル」のトリガーを引き、銃弾を放った。ドミニオンの左脚に命中するが、敵が倒れる様子はなかった。
「歪嘘CAMとは言っても、人間に近い構造というより、やっぱりロボットか」
「援護するわよ」
 カーミンが蒼機弓「サクラ」による『藤袴』を発動させると、放った矢がドミニオン一体の胴部を撃ち抜き、その衝撃で敵が爆発して消滅していった。
 クラーレは残り一体のドミニオンを指示……レイオスに接近すると、大剣を振り下ろした。敵の攻撃を闘旋剣「デイブレイカー」で受け流すレイオス。
「まさかと思うが、オレの挑発にのってきたのか?」
 レイオスはクラーレに対して、「そこの道化師は見ない顔だな。最近の新人か?」と知らない振りをして挑発していたのだ。どうやら、クラーレは新人扱いされたのが、気に入らなかったようだ。
「キャリコさん、今です!」
 アルマの『解放錬成』によって上乗せされたキャリコの『トリガーエンド』が放たれた。新式魔導銃「応報せよアルコル」を使用したことにより、さらに射撃威力が増した弾がクラーレの胴部に命中し、ダメージを与えることができた。
 だが、クラーレは倒れることもなく、静かに微笑んでいた。
「なんだ、あいつ? ふざけた格好している割には……ああ見えても嫉妬軍将ということか?」
 驚きを隠せないキャリコ。
「んー、仕方がありませんねぇ」
 何やら思案しているクラーレ。
「ま、何を企んでるのか知らないが、後はドミニオンだけだぜ」
 レイオスが、闘旋剣「デイブレイカー」と封印されし魔腕の『二刀流』を繰り出し、ドミニオンの胴部を斬り裂くと、続け様に『アスラトゥーリ』の斬撃を繰り出す。
 見計らっていたマリィアが新式魔導銃「応報せよアルコル」による『支援射撃』を放ち、追い撃ちをかけた。その刹那、ドミニオン一体の全身が粉々に砕け散り、爆発して消滅していった。
「……生身でも、ここまで戦えるとはね。正直、驚きだわ」
 マリィアのリトリビューションは強度が高く、射撃も的確だったこともあり、少なくとも今回の歪虚CAMは、倒すことができた。
「……これからは、さらに強化された歪虚CAMが出てきそうね」
 溜息をつくマリィアであった。



「……ラルヴァ様、申し訳ございません」
 カッツォは地面に膝を付き、頭を下げた。空間に黒い歪のような穴が出現した。
『精霊の駒たちは、相変わらずのようだね』
 低い老人の声が響いた。
 カッツォは一礼した後、黒い穴へと飛び込んでいった。
「もう少し遊びたかったのですけどねぇ」
 クラーレは残念そうに言いながら、黒い穴へと入っていく。
 そして、黒い穴が消え去ると、辺りは静まり返っていた。
 フィロたちの目の前で、カッツォたちは撤退していったのだ。
 力を使い果たして、崩れ落ちるフィロ。
「フィロさん!」
 すぐ傍にいたセレスティアが、フィロに『リザレクション』を施し、戦闘不能を解除することができた。




「よお、目が覚めたか?」
 シガレットの声に気付き、アウレールが起き上がった。
「気を失っていたのか……私は……」
「一秒、遅かったら、やばかったぜェ」
 シガレットが『リザレクション』を施したことにより、アウレールは一命を取り止めることができたが、完全に回復するには時間がかかるだろう。
「私の勘だが、クラーレが片目を瞑る時、無防備になるようだ。そこが狙い目だろうな」
「ああいう敵が、これからも増えるなら、リザレクションを使う機会も増えそうだ」
 紙巻煙草で一服した後、シガレットは山脈の景色を眺めていた。



「勝った後の飯は美味い」
 レイオスはプレミアムエビフライを食べて、生命力を回復させていた。
「俺は、これだな」
 ジャックはそう告げた後、ヒーリングポーションを飲み干した。
「酒じゃないのが、残念だが」
「ジャック、お酒は、ほどほどにね」
 セリウスが言うと、互いに笑い合う。
「カッツォたちは撤退したようね。黒い穴の向こうに、何かの気配がしたけど」
 カーミンの言葉に、ジャックたちの顔付きが真剣になった。
「ああ、もしかしたら、噂の王が御出座しだったのかもな」
 それが事実なら、今後の同盟は、さらに混乱するかもしれない。
 それでも、進むべき道は、自分たちで切り開く。
 強い眼差しで、ハンターたちは山脈の遺跡を見据えていた。

依頼結果

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  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムスka0796
  • ツィスカの星
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    セレスティアka2691
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  • 非情なる狙撃手
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  • ルル大学防諜部門長
    フィロka6966

重体一覧

  • ツィスカの星
    アウレール・V・ブラオラントka2531
  • ルル大学防諜部門長
    フィロka6966

参加者一覧

  • 緑龍の巫女
    Uisca=S=Amhran(ka0754
    エルフ|17才|女性|聖導士
  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよい(ka1328
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • 未来を示す羅針儀
    ジャック・エルギン(ka1522
    人間(紅)|20才|男性|闘狩人
  • 花言葉の使い手
    カーミン・S・フィールズ(ka1559
    人間(紅)|18才|女性|疾影士
  • 王国騎士団“黒の騎士”
    レイオス・アクアウォーカー(ka1990
    人間(蒼)|20才|男性|闘狩人
  • 愛おしき『母』
    アリア(ka2394
    人間(紅)|14才|女性|疾影士
  • ツィスカの星
    アウレール・V・ブラオラント(ka2531
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • 誓槍の騎士
    ヴァルナ=エリゴス(ka2651
    人間(紅)|18才|女性|闘狩人
  • 淡光の戦乙女
    セレスティア(ka2691
    人間(紅)|19才|女性|聖導士
  • 紫煙の守護翼
    シガレット=ウナギパイ(ka2884
    人間(紅)|32才|男性|聖導士
  • 世界は子供そのもの
    エラ・“dJehuty”・ベル(ka3142
    人間(蒼)|30才|女性|機導師
  • ヒトとして生きるもの
    蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009
    エルフ|22才|女性|魔術師
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人
  • 非情なる狙撃手
    コーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561
    人間(蒼)|25才|女性|猟撃士
  • フリーデリーケの旦那様
    アルマ・A・エインズワース(ka4901
    エルフ|26才|男性|機導師
  • 自在の弾丸
    キャリコ・ビューイ(ka5044
    人間(紅)|18才|男性|猟撃士
  • イコニアの夫
    カイン・A・A・カーナボン(ka5336
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人
  • ベゴニアを君に
    マリィア・バルデス(ka5848
    人間(蒼)|24才|女性|猟撃士
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
  • 紅の月を慈しむ乙女
    アリア・セリウス(ka6424
    人間(紅)|18才|女性|闘狩人
  • 背負う全てを未来へ
    東條 奏多(ka6425
    人間(蒼)|18才|男性|疾影士
  • ルル大学防諜部門長
    フィロ(ka6966
    オートマトン|24才|女性|格闘士

  • 瑪瑙(ka7298
    鬼|31才|男性|舞刀士

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依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
夢路 まよい(ka1328
人間(リアルブルー)|15才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2018/12/26 08:41:28
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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/12/24 21:00:42