ゲスト
(ka0000)
【陶曲】求めよ、さらば与えられん・3
マスター:樹シロカ

- シナリオ形態
- シリーズ(続編)
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,300
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2019/04/01 22:00
- 完成日
- 2019/04/14 01:17
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
太陽は西に傾きつつあった。
あと2時間もすれば、完全に沈むだろう。
「その前に決着をつける……ですか」
同盟軍中尉メリンダ・ドナーティ(kz0041)は、通信機から伝えられる命令に息を呑みこむ。
ポルトワールからほど近い街道沿いの駐屯地は、今や歪虚の巣と化していた。
中にいるのはかつての同盟軍大佐である契約者ネスタ。そして彼と行動を共にしている、金属製の骸骨という見た目をした歪虚達だ。
駐屯地の兵士を人質に立てこもっていたが、ハンター達の強行作戦により人質は奪還されている。
このまま駐屯地に籠っている理由がほかになければ、夜陰に乗じて脱出する可能性がある。
駐屯地の前では同盟陸軍が展開、監視と攻撃に当たっているが、メリンダ含め一般人ばかりである。
今のところどうにか踏ん張っているが、仮に大佐が歪虚を率いて突進してくれば、押さえることはできないだろう。
逃げてくれれば同盟陸軍に被害は出ないかもしれないが、この先どこでどんな災厄となるかわからない。
投光器もあるが、敵がその気になれば簡単に破壊できるだろう。
闇の中、目前で灯を奪われたときの心理的なショックは計り知れない。
急ぐ必要があるのは確かだった。
これまでは大佐の「良心」や「動機」を前提としていたが、契約者と変じた以上、一般兵であることはウィークポイントでしかないのだ。
「ですが……ですが、人員が充分とは言えません」
メリンダは乾いた喉から声を絞り出す。
今回の作戦に参加したハンターには負傷者が出ている。
引き続き突入を依頼するには、回復のための時間が必要だった。
だが続く言葉に、メリンダはさらに驚くことになる。
『増援は既にポルトワールを出発している。イザイア・バッシ(kz0104)名誉大将が同行されているので、指示を仰ぐように』
メリンダは、雑音で内容を聞き間違えたのかと思った。
だが二度ほど深く呼吸し、勤めて冷静に囁く。
「流石に危険すぎます。すぐに連絡してお止めしてください」
『名誉大将たってのご希望だ。今回の責任は自分にある、と仰っている』
――犠牲者が増えるだけではないですか!
それを言葉にすることはできない。
メリンダがいるのは、同盟軍の陣中なのだ。
通信を終えたメリンダに、アスタリスク(kz0234)が声をかける。
「どうかしましたか」
「いえ、すみません。詳しくは皆様ご一緒に説明しますね」
メリンダはなるべくいつも通りにふるまおうとする。
「そういえば、お怪我されたと聞きましたが」
アスタリスクの服はところどころ傷んでいたが、黒い生地は血の色を紛らわせる。
「問題ありません。覚醒者というのは結構便利なのですよ」
そこでアスタリスクは穏やかな笑みを収める。
「逆に言えば、時間をかければ『敵』も回復している可能性があります」
「そう、ですね……」
「ただネスタ大佐はそうはいかないでしょう」
メリンダも知識としては知っていた。
契約者に関する情報は少ないが、それでも軍隊ではある程度の情報が得られる。
覚醒者ではない一般人が契約者になることはまれだと言われている。それは体が「もたない」からだ。
それなりに高位と思われる歪虚が、弱くすぐに使い物にならなくなる存在を傍に置く理由がない。それが「普通」だった。
だからこそ、彼らの言う「あのお方」が誰なのか、何の目的をもっているのか、見当がつけられないのだ。
――いや、おそらく予測はついている。信じがたい存在の、荒唐無稽すぎる理由が――。
冷たい風が、街道を吹き抜けていく。
それは静まり返った駐屯地の建物から吹き出してくるように思えた。
太陽は西に傾きつつあった。
あと2時間もすれば、完全に沈むだろう。
「その前に決着をつける……ですか」
同盟軍中尉メリンダ・ドナーティ(kz0041)は、通信機から伝えられる命令に息を呑みこむ。
ポルトワールからほど近い街道沿いの駐屯地は、今や歪虚の巣と化していた。
中にいるのはかつての同盟軍大佐である契約者ネスタ。そして彼と行動を共にしている、金属製の骸骨という見た目をした歪虚達だ。
駐屯地の兵士を人質に立てこもっていたが、ハンター達の強行作戦により人質は奪還されている。
このまま駐屯地に籠っている理由がほかになければ、夜陰に乗じて脱出する可能性がある。
駐屯地の前では同盟陸軍が展開、監視と攻撃に当たっているが、メリンダ含め一般人ばかりである。
今のところどうにか踏ん張っているが、仮に大佐が歪虚を率いて突進してくれば、押さえることはできないだろう。
逃げてくれれば同盟陸軍に被害は出ないかもしれないが、この先どこでどんな災厄となるかわからない。
投光器もあるが、敵がその気になれば簡単に破壊できるだろう。
闇の中、目前で灯を奪われたときの心理的なショックは計り知れない。
急ぐ必要があるのは確かだった。
これまでは大佐の「良心」や「動機」を前提としていたが、契約者と変じた以上、一般兵であることはウィークポイントでしかないのだ。
「ですが……ですが、人員が充分とは言えません」
メリンダは乾いた喉から声を絞り出す。
今回の作戦に参加したハンターには負傷者が出ている。
引き続き突入を依頼するには、回復のための時間が必要だった。
だが続く言葉に、メリンダはさらに驚くことになる。
『増援は既にポルトワールを出発している。イザイア・バッシ(kz0104)名誉大将が同行されているので、指示を仰ぐように』
メリンダは、雑音で内容を聞き間違えたのかと思った。
だが二度ほど深く呼吸し、勤めて冷静に囁く。
「流石に危険すぎます。すぐに連絡してお止めしてください」
『名誉大将たってのご希望だ。今回の責任は自分にある、と仰っている』
――犠牲者が増えるだけではないですか!
それを言葉にすることはできない。
メリンダがいるのは、同盟軍の陣中なのだ。
通信を終えたメリンダに、アスタリスク(kz0234)が声をかける。
「どうかしましたか」
「いえ、すみません。詳しくは皆様ご一緒に説明しますね」
メリンダはなるべくいつも通りにふるまおうとする。
「そういえば、お怪我されたと聞きましたが」
アスタリスクの服はところどころ傷んでいたが、黒い生地は血の色を紛らわせる。
「問題ありません。覚醒者というのは結構便利なのですよ」
そこでアスタリスクは穏やかな笑みを収める。
「逆に言えば、時間をかければ『敵』も回復している可能性があります」
「そう、ですね……」
「ただネスタ大佐はそうはいかないでしょう」
メリンダも知識としては知っていた。
契約者に関する情報は少ないが、それでも軍隊ではある程度の情報が得られる。
覚醒者ではない一般人が契約者になることはまれだと言われている。それは体が「もたない」からだ。
それなりに高位と思われる歪虚が、弱くすぐに使い物にならなくなる存在を傍に置く理由がない。それが「普通」だった。
だからこそ、彼らの言う「あのお方」が誰なのか、何の目的をもっているのか、見当がつけられないのだ。
――いや、おそらく予測はついている。信じがたい存在の、荒唐無稽すぎる理由が――。
冷たい風が、街道を吹き抜けていく。
それは静まり返った駐屯地の建物から吹き出してくるように思えた。
リプレイ本文
●
埃を立てて街道をひた走る魔導トラック。
その中で、ボルディア・コンフラムス(ka0796)は同盟軍の重鎮バッシ名誉大将と並んで座っていた。
(あぁ、よくある話だよ。本当にみんなの事を考えていたヤツが、自分の身を滅ぼすことになって、本来守るべきヤツを手にかける、なんてのはな)
今回のあらましは、依頼を受ける際に聞いていた。
(だから……俺はその大佐ってぇヤツを、絶対ェに許さねぇ)
断罪は、そいつにとって贖罪でもある。
同情ではない。罪は購われなければならないのだ。その罪の動機が、純粋であるほど。
「爺さん」
前を向いたまま、ボルディアが声を発する。
「何かな」
「悪ぃが、アンタの願いが叶うかは分からねぇ。せめて祈っといてくれ」
「ワシの願い、か」
老将はくぐもった笑いをもらす。
「では勝負だ。ワシの願いとやらと、嬢ちゃんの意思、どちらか強いほうが勝つ」
ボルディアは答えなかった。いざとなればこの老将を気絶させてでも、止めねばならないだろう。
●
ハンター達に傭兵部隊、そしてメリンダを交えた相談の結果、まずは釣り出しを試すことになった。
「ボルディアが来るのね」
カーミン・S・フィールズ(ka1559)は、通信機から入る情報に微笑む。
信頼して役割を分担できる相手がいるのは心強い。
「なら私はこちらね」
得物の剣を銃に替えた。
一見理知的に見えて、その実最も話が通じない、面倒な敵はこれまで良く見知っている。
(卑怯で姑息で陰湿……何かしら、同族嫌悪かしら、コレ。会話できるのか自信ないわ?)
自嘲気味に肩をすくめる。
「解放」の糸口が見つかれば、大佐も救われるかもしれない。
だが今手元に無い物は「ない」と考えたほうがいい。
大佐には、敵対者としてあたる。それは今、全員に共通の認識だった。
傭兵隊長のアスタリスクが「ただ」と口を挟む。
「敵……は、余程の理由がない限り出てこないでしょう」
「金骨の能力だな」
応じたヴァージル・チェンバレン(ka1989)に、アスタリスクが頷いた。
「敵は固まって潜んでいるほうが有利です。籠られて困るのは此方の都合ですからね」
「それでも一応は試してみるぜ。上手く誘いに乗らないなら、次の手を打てばいいんだからな」
リュー・グランフェスト(ka2419)が駐屯地の建物を透視するかのように目を細める。
マチルダ・スカルラッティ(ka4172)は、どのような形にせよここで大佐には引導を渡すと決意していた。
(もう情けは無用ね)
大佐の「正義」は歪んでいる。
(もともと『兵士は犠牲にしたくないけど、一般市民ならいい』みたいなこと考えるのは気に喰わなかったし)
それでもここまで足を運ぶ、バッシ名誉大将の気持ちは汲んであげたい気もあった。
大佐はおそらく、もう人間には戻れない。老将もわかっているはずだ。
だから釣り出しという手を、試すだけは試そうと思う。
「メリンダさん」
「はい、なんでしょうか」
「名誉大将さんは、頑固?」
メリンダが笑いだす。
「ええ、それはもう」
そこでマチルダが向き直る。
「じゃあ呼びかけぐらいは時間を稼ぐわね。拡声器を使えば、声は聞こえるんじゃないかなって思うし。でも危ないからいつでも逃げられるように、トラックに乗っててね」
「……ご配慮有難うございます」
「あ、そうだ。あとお願いがあるんですけど!」
ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)が滑るようにメリンダの傍に近づく。
「万が一ですけど、変身しちゃう敵みたいなので。私達の誰かが1人で戻ってきたら、絶対素通りさせないでくださいね!」
「そうですね、皆にも徹底しておきます」
「お願いしますねっ。『ばかも~ん! そいつが金骨だ!』とかになっちゃったら、とんでもないものがなくなっちゃいますから!」
大佐の志は、素晴らしかったのかもしれない。
でも今となっては本末転倒、彼の志はとっくに盗まれ、歪んでしまったとしか思えない。
(……その歪んだ心や姿、ニンジャが断ちます!!)
そこに魔導トラックが2台、猛スピードで到着した。
中から降りてきた老人を、同盟軍の兵士が最敬礼で迎える。
「ハンターの諸君、この度は我儘を言ってすまない。だが部下の不始末を見届けねばならぬのでな」
「適当なところで引き返さなけりゃ、殴り飛ばしてでも連れて帰るからな」
後に続くボルディアが、念を押した。
●
魔導トラックの運転席には、メリンダが乗り込んだ。
ヴァージルが窓から顔を突っ込む。
「何もメリンダが行くことはないんじゃないのか」
「名誉大将に誰も付き添わないわけにはいきませんから」
メリンダは何でもない、というようにいつもの笑みを浮かべた。
――名誉大将に何かがあった場合、軍の誰かが責任を負わねばならない。
今回なら防衛部隊隊長の責になるだろうが、同盟全体が危険な今、貴重な人材でもある。
だから、メリンダがそれを引き受けた。
「まあ爺さんを守るのはあまり楽しいもんじゃないが。仕事はきっちりこなすさ、安心しろ」
「はい、頼らせていただきます」
ヴァージルに続いて名誉大将が乗り込む。
大佐がまだ人間の記憶を持っているなら、この老将の登場は「余程のこと」だろう。
リューは先に立ち、拡声器を借りて呼びかけた。
『聞こえるか! ネスタ大佐!! 堕ちた軍人さんよ!』
中からも、こちらからも見えるよう、じりじりと近づいていく。
『あんたの敵は俺達だけだ。邪魔をするのもな。だから、降りてこいよ。俺達だけで決着をつけようぜ。それのが、これ以上無駄な犠牲を出さずにすむんじゃねえか?』
無駄な犠牲。大佐は元々、それを嫌ったのではなかったか。
『それとも、主と同じで口だけか? やれるもんならやってみろよ! そうでなきゃ、俺達はお前の主を害する刃になるぞ!』
主が誰なのかはわからない。だが敵にとって重要で、あの場にはいない存在だ。
この2つの言葉が届くよう、力を籠める。
果たして、駐屯地の司令部の窓ぎわに、見覚えのある人影が現れた。
ボルディアが声を上げる。
「あぁテメェか! 歪虚の操り人形になったっつー情けねえ大佐殿は!」
作戦の為だけではない。ボルディアの意思が声となって、辺りを震わせる。
ボルディアの背後から、カーミンは窓を見据えた。
(人としての『解放』には遅いのかしらね。なら介錯による解放しか……)
愛銃を握る手に、祈りのような力が籠もる。
「やっぱり無理みたいね」
マチルダが小さく息を吐くと、ルンルンは拳をぐっと握ってみせる。
「じゃあ次の作戦、行っちゃいましょう!」
ふたりは持ち込んだ自転車を引っ張り出す。
「なるべく静かに、でも急いできてね」
アスタリスクとサリムに振り向くと、マチルダとルンルンはすぐに走り出した。
「了解です」
「嬢ちゃんたち、転ぶんじゃねえぞ!」
「ニンジャは転んだりしません!」
2台の自転車は、迂回しながら駐屯地を目指す。
●
ボルディアとリューが身を晒して呼びかける間に、ルンルンとマチルダ、そして傭兵が裏から潜入。
表の人数が少なすぎると怪しまれるだろうから、ヴァージルが大佐の護衛、カーミンが呼びかけの2人を背後から守る。
敵も読んでくる策だろうが、こちらが仕掛ければ向こうは受けるしかない。
ただ、カーミンは脱出路の存在を警戒していた。
マチルダは駐屯地が見える場所で自転車を降り、魔箒に乗り換えると建物の周囲を2回巡り、敵の姿を探す。
どうやら司令室か、先日の会議室に籠っているらしく、窓ぎわの大佐のほかには敵の姿は見えない。
「じゃあ出てきてもらうしかないわね」
司令室と会議室の間の廊下と思われる2階の窓を、通りすがりに蹴り飛ばす。
ガラスが派手な音を立てて割れたのを見て、すぐに離れた。
間を置かず、白いスケルトン――黒い衣服は先日の戦闘でボロボロに破れ、かろうじて引っかかっているような状態だった――が1体、銃を構えて窓際に身を寄せるのが見えた。
マチルダは試しに『Pupa nivis Irata』で作り出した雪だるまを、スケルトンの頭上にぶつける。
雪だるまの破片が消えると、白い骸骨はひとつ首を振り、すぐさま宙を舞うマチルダ目掛けて銃撃。ただ窓枠に邪魔され、ふわりと飛び去るマチルダに当たることはなかった。
「やっぱり魔法攻撃は効きにくいみたいね」
それも重要な情報だ。通信機を通じて経過を皆に報告する。
ルンルンは『灯火の水晶球』で建物の内部を淡く照らす。
「じゃあ行きますよ!」
内部の構造は既に分かっている。階段を音もなく駆けあがり、会議室と司令室の間の廊下に出る。
するとそこに、驚くべき人物が立っていたのだ。
「え? あれ? ヴァージルさん……?」
さっきまで外にいたはずのヴァージルだ。
だがルンルンはキッと眉を寄せ、手にした瓶を叩きつける。きついアルコール臭が辺りに立ち込めた。
――前回の遭遇で、ヴァージルは金色の骸骨を押さえ込む役割を担った。つまり「触れられた」のである。
そこで先刻、ヴァージルはブランデーをルンルンに手渡した。
『俺は外だ。偽物が現れたら1本奢ってやれ』――。
「魔法が効きにくいなら……ルンルン忍法モード・ヤイバ!」
御霊符「影装」により刀の威力を上げ、一気に踏み込んだ。
「ルンルン忍法クビハネルヒット☆」
迷うことなく『ヴァージル』に刃を叩きこむ。
それを阻止するべく駆け寄る白いスケルトンを、サリムがタックルで床に引き倒す。
と思う瞬間、金属質な骨の腕が伸び、ルンルンの腕にぶつかって来た。
だが敵はその場に縫い留められたように身動きしない。
「かかったね。いまのうちに止めをさすわよ」
マチルダが『集束魔』で対象を絞った『グラビティフォール』で動きを封じた。傷んだ床がミシミシと音を立てる。
「大佐に、ターなんとかだかクリスタルなんとかだか知らないけど、ここで決着付けるんだから!」
切り込むルンルンの耳に、銃声が響く。
一瞬足を止めたルンルンに、影が寄り添った。
「アスタリスクさん!?」
「大丈夫です、どうぞそちらのとどめを」
司令室から現れたネスタ大佐がショットガンを構えており、その銃弾をアスタリスクの盾が受け止めていたのだ。
「どうした、司祭よ。苦戦しているではないか」
ネスタ大佐が嘲るように言うと、次弾を装填する。司祭と呼ばれた金骸骨が、不愉快な笑い声を立てた。
「貴様が遊んでおるからだ。ほだされたか」
「まさか」
大佐の銃弾は、アスタリスクではなく、その背後にある階段付近に向けて放たれる。
●
攻撃を受け止めたのは、ボルディアだった。
血しぶきを撒き散らしながらも倒れることなく、獲物の斧の柄を床についた。
「結局テメェは! 何を守りたかったのかも忘れて、そこで歪虚とお仲間ごっこしてるだけだろうが! テメェの意思もねぇなら、そこで人形やってるのがお似合いだよ!」
紅蓮のオーラが幻影の腕となって金骸骨につかみかかり、引き寄せる。動けない金骸骨に、容赦ない斧の斬撃が打ち下ろされる。
ボルディアの背後から、舞い遊ぶ白い蝶のように躍り出たのはカーミンだ。
「悪いわね、盾にするわよ」
大佐と残る一体の白骨の動きを『胡蝶蘭』の弾幕で封じる。
「小癪な手を……!」
大佐は銃を構えながら1歩下がった。
そこに、リューが切り込んでくる。
「なんでそんな力に頼った!」
星神器「エクスカリバー」に篝火の紋章を刻みながら、まるで言葉の力を籠めるように叫ぶ。
「歪虚の力で、誰かの、組織の信用なんか得られる訳がないっ! 無駄な犠牲を出さない様にしたいんじゃないのかよっ!」
どんな高潔な人間でも弱くなる時はある。
絶対に強い人間なんていない。
それは分かっていても、その弱さが誰かを傷つけるのは間違っている。
「犠牲を、より小さくするためだ。貴様らが邪魔しなければ、それは叶っていた」
「お前だって人間だろうが! 犠牲を小さいとか大きいとか決められるほど、おまえはえらいのかよ!」
「だがその責任を負うのが司令官というものだ」
至近距離の銃弾が、リューの足元ではぜた。
そのとき、拡声器の声が響き渡った。
『ネスタ大佐、聞こえるか。バッシだ』
一瞬、大佐の身体がこわばる。
『貴官の望みは、ワシの望みでもあった。それが貴官を追い詰めたのなら、詫びたいと思う。すまなかった。……だが我々の念願は、実現したのだ。そこに居る2人の兵がそうだ』
大佐の視線の先で、血に濡れた顔を上げたのはアスタリスクとサリムだ。
「仮運用中ですが、傭兵部隊の『菫狐隊(ヴォルペ・ヴィオラ)』です。リアルブルー転移者の覚醒者のみで構成されています」
「何……」
大佐は明らかに動揺していた。
それを察知してか、背後にいた白骸骨が1体、窓に身を寄せると老将を狙う。
だが弾道は逸れ、トラックの前で護衛していたヴァージルに当たる。
「チェンバレンさん!!」
思わず飛び出そうとするメリンダに出て来るなと合図を送る。
「大したことはない。それより効いているようだ。爺さんの演説を続けさせるんだ」
通信機を通じて互いの状況は伝わっていた。
大佐はアスタリスクとサリムだけでなく、ボルディアを、リューを、そして振り向いてヴァージルを見る。
「何故負傷するのだ。覚醒者は強力な身体能力を持っているのではないのか」
「大佐。貴方の脱出の際、フィンツィ少佐も負傷しました。おそらく腕はもう、使い物にならないでしょう」
アスタリスクに続き、カーミンが静かな声で事実を述べる。
「覚醒者だって不死身じゃないわ。当り前よ」
大佐は動揺している。これこそが彼を突き動かす「繋がり」だ。大佐を解放することができるかもしれない。
「名誉大将はそれもわかった上で行動したのだと思うわよ」
奇しくも先刻大佐の述べた通り、司令官なのだから。
突然、大佐が吠えた。
「私は騙されんぞ。貴様らは偽物だ。より強い、本物の兵が……!!」
言葉はそこで途切れる。
大佐は不意にその場に崩れ落ちた。
静まり返る部屋に、床に打倒された金骸骨の笑い声が響く。
「存外、良くもったな」
「どういうことなの」
マチルダが尋ねた。
「この地の真の支配者たる我らが王。数百年ぶりの遊戯のために、おまえたち人間をかき回す役割の駒がこの男だ」
くぐもった笑い声。
「盤上での駒の生き死になど些細なこと。このわし自身もな」
「言いたいことはそれだけか」
リューの声が凄みを帯びて響く。
「それだけの為に、お前たちは命を奪うのか!」
剣が唸る。
既に戦いの「意義」を失った金骸骨も、為すべきことを失った白骸骨も、ハンター達の「敵」ではなくなっていた。
●
長い1日がこうして終わった。
駐屯地に夜が訪れる。
ハンター達の心に、勝利の喜びよりも真の敵への闘志が、篝火のように強く宿る夜だった。
<了>
埃を立てて街道をひた走る魔導トラック。
その中で、ボルディア・コンフラムス(ka0796)は同盟軍の重鎮バッシ名誉大将と並んで座っていた。
(あぁ、よくある話だよ。本当にみんなの事を考えていたヤツが、自分の身を滅ぼすことになって、本来守るべきヤツを手にかける、なんてのはな)
今回のあらましは、依頼を受ける際に聞いていた。
(だから……俺はその大佐ってぇヤツを、絶対ェに許さねぇ)
断罪は、そいつにとって贖罪でもある。
同情ではない。罪は購われなければならないのだ。その罪の動機が、純粋であるほど。
「爺さん」
前を向いたまま、ボルディアが声を発する。
「何かな」
「悪ぃが、アンタの願いが叶うかは分からねぇ。せめて祈っといてくれ」
「ワシの願い、か」
老将はくぐもった笑いをもらす。
「では勝負だ。ワシの願いとやらと、嬢ちゃんの意思、どちらか強いほうが勝つ」
ボルディアは答えなかった。いざとなればこの老将を気絶させてでも、止めねばならないだろう。
●
ハンター達に傭兵部隊、そしてメリンダを交えた相談の結果、まずは釣り出しを試すことになった。
「ボルディアが来るのね」
カーミン・S・フィールズ(ka1559)は、通信機から入る情報に微笑む。
信頼して役割を分担できる相手がいるのは心強い。
「なら私はこちらね」
得物の剣を銃に替えた。
一見理知的に見えて、その実最も話が通じない、面倒な敵はこれまで良く見知っている。
(卑怯で姑息で陰湿……何かしら、同族嫌悪かしら、コレ。会話できるのか自信ないわ?)
自嘲気味に肩をすくめる。
「解放」の糸口が見つかれば、大佐も救われるかもしれない。
だが今手元に無い物は「ない」と考えたほうがいい。
大佐には、敵対者としてあたる。それは今、全員に共通の認識だった。
傭兵隊長のアスタリスクが「ただ」と口を挟む。
「敵……は、余程の理由がない限り出てこないでしょう」
「金骨の能力だな」
応じたヴァージル・チェンバレン(ka1989)に、アスタリスクが頷いた。
「敵は固まって潜んでいるほうが有利です。籠られて困るのは此方の都合ですからね」
「それでも一応は試してみるぜ。上手く誘いに乗らないなら、次の手を打てばいいんだからな」
リュー・グランフェスト(ka2419)が駐屯地の建物を透視するかのように目を細める。
マチルダ・スカルラッティ(ka4172)は、どのような形にせよここで大佐には引導を渡すと決意していた。
(もう情けは無用ね)
大佐の「正義」は歪んでいる。
(もともと『兵士は犠牲にしたくないけど、一般市民ならいい』みたいなこと考えるのは気に喰わなかったし)
それでもここまで足を運ぶ、バッシ名誉大将の気持ちは汲んであげたい気もあった。
大佐はおそらく、もう人間には戻れない。老将もわかっているはずだ。
だから釣り出しという手を、試すだけは試そうと思う。
「メリンダさん」
「はい、なんでしょうか」
「名誉大将さんは、頑固?」
メリンダが笑いだす。
「ええ、それはもう」
そこでマチルダが向き直る。
「じゃあ呼びかけぐらいは時間を稼ぐわね。拡声器を使えば、声は聞こえるんじゃないかなって思うし。でも危ないからいつでも逃げられるように、トラックに乗っててね」
「……ご配慮有難うございます」
「あ、そうだ。あとお願いがあるんですけど!」
ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)が滑るようにメリンダの傍に近づく。
「万が一ですけど、変身しちゃう敵みたいなので。私達の誰かが1人で戻ってきたら、絶対素通りさせないでくださいね!」
「そうですね、皆にも徹底しておきます」
「お願いしますねっ。『ばかも~ん! そいつが金骨だ!』とかになっちゃったら、とんでもないものがなくなっちゃいますから!」
大佐の志は、素晴らしかったのかもしれない。
でも今となっては本末転倒、彼の志はとっくに盗まれ、歪んでしまったとしか思えない。
(……その歪んだ心や姿、ニンジャが断ちます!!)
そこに魔導トラックが2台、猛スピードで到着した。
中から降りてきた老人を、同盟軍の兵士が最敬礼で迎える。
「ハンターの諸君、この度は我儘を言ってすまない。だが部下の不始末を見届けねばならぬのでな」
「適当なところで引き返さなけりゃ、殴り飛ばしてでも連れて帰るからな」
後に続くボルディアが、念を押した。
●
魔導トラックの運転席には、メリンダが乗り込んだ。
ヴァージルが窓から顔を突っ込む。
「何もメリンダが行くことはないんじゃないのか」
「名誉大将に誰も付き添わないわけにはいきませんから」
メリンダは何でもない、というようにいつもの笑みを浮かべた。
――名誉大将に何かがあった場合、軍の誰かが責任を負わねばならない。
今回なら防衛部隊隊長の責になるだろうが、同盟全体が危険な今、貴重な人材でもある。
だから、メリンダがそれを引き受けた。
「まあ爺さんを守るのはあまり楽しいもんじゃないが。仕事はきっちりこなすさ、安心しろ」
「はい、頼らせていただきます」
ヴァージルに続いて名誉大将が乗り込む。
大佐がまだ人間の記憶を持っているなら、この老将の登場は「余程のこと」だろう。
リューは先に立ち、拡声器を借りて呼びかけた。
『聞こえるか! ネスタ大佐!! 堕ちた軍人さんよ!』
中からも、こちらからも見えるよう、じりじりと近づいていく。
『あんたの敵は俺達だけだ。邪魔をするのもな。だから、降りてこいよ。俺達だけで決着をつけようぜ。それのが、これ以上無駄な犠牲を出さずにすむんじゃねえか?』
無駄な犠牲。大佐は元々、それを嫌ったのではなかったか。
『それとも、主と同じで口だけか? やれるもんならやってみろよ! そうでなきゃ、俺達はお前の主を害する刃になるぞ!』
主が誰なのかはわからない。だが敵にとって重要で、あの場にはいない存在だ。
この2つの言葉が届くよう、力を籠める。
果たして、駐屯地の司令部の窓ぎわに、見覚えのある人影が現れた。
ボルディアが声を上げる。
「あぁテメェか! 歪虚の操り人形になったっつー情けねえ大佐殿は!」
作戦の為だけではない。ボルディアの意思が声となって、辺りを震わせる。
ボルディアの背後から、カーミンは窓を見据えた。
(人としての『解放』には遅いのかしらね。なら介錯による解放しか……)
愛銃を握る手に、祈りのような力が籠もる。
「やっぱり無理みたいね」
マチルダが小さく息を吐くと、ルンルンは拳をぐっと握ってみせる。
「じゃあ次の作戦、行っちゃいましょう!」
ふたりは持ち込んだ自転車を引っ張り出す。
「なるべく静かに、でも急いできてね」
アスタリスクとサリムに振り向くと、マチルダとルンルンはすぐに走り出した。
「了解です」
「嬢ちゃんたち、転ぶんじゃねえぞ!」
「ニンジャは転んだりしません!」
2台の自転車は、迂回しながら駐屯地を目指す。
●
ボルディアとリューが身を晒して呼びかける間に、ルンルンとマチルダ、そして傭兵が裏から潜入。
表の人数が少なすぎると怪しまれるだろうから、ヴァージルが大佐の護衛、カーミンが呼びかけの2人を背後から守る。
敵も読んでくる策だろうが、こちらが仕掛ければ向こうは受けるしかない。
ただ、カーミンは脱出路の存在を警戒していた。
マチルダは駐屯地が見える場所で自転車を降り、魔箒に乗り換えると建物の周囲を2回巡り、敵の姿を探す。
どうやら司令室か、先日の会議室に籠っているらしく、窓ぎわの大佐のほかには敵の姿は見えない。
「じゃあ出てきてもらうしかないわね」
司令室と会議室の間の廊下と思われる2階の窓を、通りすがりに蹴り飛ばす。
ガラスが派手な音を立てて割れたのを見て、すぐに離れた。
間を置かず、白いスケルトン――黒い衣服は先日の戦闘でボロボロに破れ、かろうじて引っかかっているような状態だった――が1体、銃を構えて窓際に身を寄せるのが見えた。
マチルダは試しに『Pupa nivis Irata』で作り出した雪だるまを、スケルトンの頭上にぶつける。
雪だるまの破片が消えると、白い骸骨はひとつ首を振り、すぐさま宙を舞うマチルダ目掛けて銃撃。ただ窓枠に邪魔され、ふわりと飛び去るマチルダに当たることはなかった。
「やっぱり魔法攻撃は効きにくいみたいね」
それも重要な情報だ。通信機を通じて経過を皆に報告する。
ルンルンは『灯火の水晶球』で建物の内部を淡く照らす。
「じゃあ行きますよ!」
内部の構造は既に分かっている。階段を音もなく駆けあがり、会議室と司令室の間の廊下に出る。
するとそこに、驚くべき人物が立っていたのだ。
「え? あれ? ヴァージルさん……?」
さっきまで外にいたはずのヴァージルだ。
だがルンルンはキッと眉を寄せ、手にした瓶を叩きつける。きついアルコール臭が辺りに立ち込めた。
――前回の遭遇で、ヴァージルは金色の骸骨を押さえ込む役割を担った。つまり「触れられた」のである。
そこで先刻、ヴァージルはブランデーをルンルンに手渡した。
『俺は外だ。偽物が現れたら1本奢ってやれ』――。
「魔法が効きにくいなら……ルンルン忍法モード・ヤイバ!」
御霊符「影装」により刀の威力を上げ、一気に踏み込んだ。
「ルンルン忍法クビハネルヒット☆」
迷うことなく『ヴァージル』に刃を叩きこむ。
それを阻止するべく駆け寄る白いスケルトンを、サリムがタックルで床に引き倒す。
と思う瞬間、金属質な骨の腕が伸び、ルンルンの腕にぶつかって来た。
だが敵はその場に縫い留められたように身動きしない。
「かかったね。いまのうちに止めをさすわよ」
マチルダが『集束魔』で対象を絞った『グラビティフォール』で動きを封じた。傷んだ床がミシミシと音を立てる。
「大佐に、ターなんとかだかクリスタルなんとかだか知らないけど、ここで決着付けるんだから!」
切り込むルンルンの耳に、銃声が響く。
一瞬足を止めたルンルンに、影が寄り添った。
「アスタリスクさん!?」
「大丈夫です、どうぞそちらのとどめを」
司令室から現れたネスタ大佐がショットガンを構えており、その銃弾をアスタリスクの盾が受け止めていたのだ。
「どうした、司祭よ。苦戦しているではないか」
ネスタ大佐が嘲るように言うと、次弾を装填する。司祭と呼ばれた金骸骨が、不愉快な笑い声を立てた。
「貴様が遊んでおるからだ。ほだされたか」
「まさか」
大佐の銃弾は、アスタリスクではなく、その背後にある階段付近に向けて放たれる。
●
攻撃を受け止めたのは、ボルディアだった。
血しぶきを撒き散らしながらも倒れることなく、獲物の斧の柄を床についた。
「結局テメェは! 何を守りたかったのかも忘れて、そこで歪虚とお仲間ごっこしてるだけだろうが! テメェの意思もねぇなら、そこで人形やってるのがお似合いだよ!」
紅蓮のオーラが幻影の腕となって金骸骨につかみかかり、引き寄せる。動けない金骸骨に、容赦ない斧の斬撃が打ち下ろされる。
ボルディアの背後から、舞い遊ぶ白い蝶のように躍り出たのはカーミンだ。
「悪いわね、盾にするわよ」
大佐と残る一体の白骨の動きを『胡蝶蘭』の弾幕で封じる。
「小癪な手を……!」
大佐は銃を構えながら1歩下がった。
そこに、リューが切り込んでくる。
「なんでそんな力に頼った!」
星神器「エクスカリバー」に篝火の紋章を刻みながら、まるで言葉の力を籠めるように叫ぶ。
「歪虚の力で、誰かの、組織の信用なんか得られる訳がないっ! 無駄な犠牲を出さない様にしたいんじゃないのかよっ!」
どんな高潔な人間でも弱くなる時はある。
絶対に強い人間なんていない。
それは分かっていても、その弱さが誰かを傷つけるのは間違っている。
「犠牲を、より小さくするためだ。貴様らが邪魔しなければ、それは叶っていた」
「お前だって人間だろうが! 犠牲を小さいとか大きいとか決められるほど、おまえはえらいのかよ!」
「だがその責任を負うのが司令官というものだ」
至近距離の銃弾が、リューの足元ではぜた。
そのとき、拡声器の声が響き渡った。
『ネスタ大佐、聞こえるか。バッシだ』
一瞬、大佐の身体がこわばる。
『貴官の望みは、ワシの望みでもあった。それが貴官を追い詰めたのなら、詫びたいと思う。すまなかった。……だが我々の念願は、実現したのだ。そこに居る2人の兵がそうだ』
大佐の視線の先で、血に濡れた顔を上げたのはアスタリスクとサリムだ。
「仮運用中ですが、傭兵部隊の『菫狐隊(ヴォルペ・ヴィオラ)』です。リアルブルー転移者の覚醒者のみで構成されています」
「何……」
大佐は明らかに動揺していた。
それを察知してか、背後にいた白骸骨が1体、窓に身を寄せると老将を狙う。
だが弾道は逸れ、トラックの前で護衛していたヴァージルに当たる。
「チェンバレンさん!!」
思わず飛び出そうとするメリンダに出て来るなと合図を送る。
「大したことはない。それより効いているようだ。爺さんの演説を続けさせるんだ」
通信機を通じて互いの状況は伝わっていた。
大佐はアスタリスクとサリムだけでなく、ボルディアを、リューを、そして振り向いてヴァージルを見る。
「何故負傷するのだ。覚醒者は強力な身体能力を持っているのではないのか」
「大佐。貴方の脱出の際、フィンツィ少佐も負傷しました。おそらく腕はもう、使い物にならないでしょう」
アスタリスクに続き、カーミンが静かな声で事実を述べる。
「覚醒者だって不死身じゃないわ。当り前よ」
大佐は動揺している。これこそが彼を突き動かす「繋がり」だ。大佐を解放することができるかもしれない。
「名誉大将はそれもわかった上で行動したのだと思うわよ」
奇しくも先刻大佐の述べた通り、司令官なのだから。
突然、大佐が吠えた。
「私は騙されんぞ。貴様らは偽物だ。より強い、本物の兵が……!!」
言葉はそこで途切れる。
大佐は不意にその場に崩れ落ちた。
静まり返る部屋に、床に打倒された金骸骨の笑い声が響く。
「存外、良くもったな」
「どういうことなの」
マチルダが尋ねた。
「この地の真の支配者たる我らが王。数百年ぶりの遊戯のために、おまえたち人間をかき回す役割の駒がこの男だ」
くぐもった笑い声。
「盤上での駒の生き死になど些細なこと。このわし自身もな」
「言いたいことはそれだけか」
リューの声が凄みを帯びて響く。
「それだけの為に、お前たちは命を奪うのか!」
剣が唸る。
既に戦いの「意義」を失った金骸骨も、為すべきことを失った白骸骨も、ハンター達の「敵」ではなくなっていた。
●
長い1日がこうして終わった。
駐屯地に夜が訪れる。
ハンター達の心に、勝利の喜びよりも真の敵への闘志が、篝火のように強く宿る夜だった。
<了>
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
質問卓 ボルディア・コンフラムス(ka0796) 人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2019/03/31 22:33:04 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/03/31 20:20:19 |
|
![]() |
相談所 カーミン・S・フィールズ(ka1559) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2019/04/01 21:22:18 |