ゾンビ桜 ~ヘザーのエクストリーム花見~

マスター:坂上テンゼン

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~4人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
寸志
相談期間
6日
締切
2019/04/07 22:00
完成日
2019/04/14 22:21

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●桜の樹の下には
 ……屍体が埋まっている!
 これは信じていいことなんだよ。何故って、桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことじゃないか。俺はあの美しさが信じられないので、この二三日不安だった。しかしいま、やっとわかるときが来た。桜の樹の下には屍体が埋まっている。これは信じていいことだ。

 ──などと。
 どこかの狂人が語ったのである。

 その話はそれで終わらない。こう続く。

 まさにそんな屍体が歪虚になったのを俺は幻視する! 想像してみるがいい、桜の花の、人の心を撲たずにはおかない、不思議な、生き生きとした美しさ。
 そしてその美しさも含め生命というものをことごとく否定する歪虚の邪悪さ。
 その平衡があって、はじめて俺の心象は明確になって来る。俺の心は悪鬼のように憂鬱に渇いている。俺の心に憂鬱が完成するときにばかり、俺の心は和んでくる。……



 その男は、狂人ではあったが、
 予言者であるとも言われていた。



●檸檬
「ヘザー・スクロヴェーニ(kz0061)は見た」

「何だヘッド突然?」
 ギルド愉愚泥羅(ユグディラ)の集まりで突如として発言された言葉にメンバーのフロッグは聞き返した。
「いや、この間人間の街に遊びに来て、しこたま飲んだユグディラがふらりと私のところにあがり込んだのだが」
「フリーダムだな……」
「バイクを盗んだヤツらか」
 メンバーのヤーグがまたいつものアレかといった風に聞く。
「そうだ。あいつらはどこにでも現れる……だが重要なのはそこじゃない。
 あいつら酔った勢いでありったけの幻影を垂れ流していったのだが」
「ユグディラって酔うとそうなるのか、おい」
「個体差はあるだろう。問題なのはその内容だ。
 いたんだよ、そいつらが見せた幻影の中に、桜の樹の下に埋まっていた屍体が歪虚になったような奴が!」

「何だそれは……」
「狂人にして予言者、カジード・モートが口にした言葉だ。彼は以前にも『黄金色に輝く恐ろしい爆弾を城塞に投擲して、ハルトフォートの夜を粉葉みじんにしたのが私だったのならどんなにおもしろいだろう』などといった檸檬発言をしている」
「何だ檸檬発言って」
「それは妄言のようでいて、真実を言い当てているんだ。その発言の後に、ハルトフォートでメフィストの分体が現れている」
「真夜中なのに爆発四散して昼間のように明るくなったっていうアレか?」
「ああ。だから桜の樹の下に埋まっていた屍体が歪虚になったような奴も存在する……ユグディラの幻術で私はそれを確信した」

 ここでその場に集っていたメンバー一堂に嫌な予感が走った。

「というわけで、花見に行くぞ」

 的中しないわけがなかった。



●ヘザーのエクストリームブロッサムウォッチング
 ヘザーがユグディラたち(いつも三匹で行動する)をケージにぶちこんでしこたまササミを与えて詳細を聞き出した情報を調査したところ、それはリンダールの森の奥深く、過酷な自然と多くの猛獣、さらには幻獣のテリトリーとなっている所を通った所で出会ったことがわかった。

 ヘザーは自ギルドにて希望者を募った……
 だが承諾したのは全メンバー中たったの三人だった。

「レーニエの分まで私が映像に収めて参りますわ」
 レーニエ・フォンヴェイユの忠実なメイド、イサ・ミソラは、魔導スマートフォンを構えて言った。
「非覚醒者であるレーニエには厳しいか……」
 ヘザーはレーニエの方を見て言う。
「歪虚の花、見たいとは思うのだがな」
 出奔したマーロウ派貴族で今は非覚醒者ハンターのレーニエは言った。
 天然なのか冗談なのか端から見てもわからない。

「では今回、イサのペット枠は空なんだな」
「私は装備品か」
 天然なのか冗談なのかわからない顔でヘザーは聞いた。絶妙な間で返すレーニエ。
「お花見の準備がありますから、コストはできる限り軽くしないといけませんからね」
「否定しないのか……」
 イサはイサで、主人に容赦がなかった。


「地の果てだろうと俺のマッスルが制覇するぜ!」
 もう一人はフロッグ(サブクラスにしっかりと練筋術師をとっている)だ。
 この男は本当に地の果てだろうと賑やかしに現れる。

「俺は行きたいとは言ってないんだが……」
 最後の一人はヤーグだった。
 くじ引きで負けたからだ。
 あまりの希望者の少なさにヘザーがギルドマスターの権利を行使したのである。
「なんとなく、そんな気はしたけどな」
 この男、愉愚泥羅きっての苦労人である。
 遠くでは、ツッコミ役が足りないからな、などという他メンバーの声が聞こえてくる。
「ツッコミとか常識人なら誰でもいいだろ……」
 本人に聞こえていた。
「ああ……もう選ばれちまったからな」
 この生き方を背負ってしまったのだ。深い理由は無い。
 きっとこの男は、壁に突き当たるたびに悩み、もがき、越える術を探していくのだろう。
「俺のデビュー作を引用するな」
 ヤーグは地の文に突っ込んだ。早くもツッコミ役としての活躍が目覚しい。

「だがまだ少ないな!
 ハンターに依頼を出すぞ」
「そんなことに活動資金を使うことは許さない」
 現在会計の役に着いているアハズヤは殺気の籠もった目でヘザーを睨み、指で拳銃を作って向ける。
 聖導士である。
「仕方ない……自腹を切るか」
「その資金源はどこから来るんだ?」
「仕事で稼いでいるが?」
「使い方はそれでいいのか……」

 とはいえ、ほぼ寸志でギルドに依頼が出された。
 ハンター仲間の付き合いを期待したのである。

「さて、私と一緒に花見に行ってくれる人はいないか?」

リプレイ本文

●at ギルドハウス
「「はーなみ♪ はーなみ♪ さーけ♪ さーけ♪」」
 ボルディア・コンフラムス(ka0796)がフロッグと一緒になって騒いでいる。春である。
「何しに行くのかわかってるのか……?」
「花見だろ?」
 ヤーグが聞いて、ボルディアの返答に盛大にうつむいた。
「…………………………あ、歪虚?
 わ、忘れてねーよ」
 しかし、すごい間だった。
「はーなみ!」「はーなみ!」「さーけ!」「さーけ!」
 そしてまたフロッグと飛び跳ねながら騒ぎ出すのだった。

「ははははは話は聞かせてもらいましたっ!
 ヘザーさんのお呼びとあらばっ!」
 一方で、ミコト=S=レグルス(ka3953)はしっかりと解った上でここにいた。
「ミコト……その格好は……」
 ヘザーが息をのんだ。ミコトの全身にひしめくお札、お守り、数珠、ロザリオ、あと三角形の中央に目玉の模様がついたやつ……etc.etc.。
「備えあればっ!」
 明らかにピンポイントに警戒している。
「大丈夫だミコト。
 私や……皆が居る」
 ヘザーは紳士的に言った。
「昔行った納骨堂は……」
「そんなの知りませんっ!」
 アハズヤが何か言い出すや否や耳を塞ぐミコト。ヘザーのカッコつけは台無しになった。

 星野 ハナ(ka5852)は大荷物を手にしていた。いくつもの袋に収められているのは鍋や包丁、調味料と水入り水袋、器やカトラリー等一式準備などだ。
「何しに行くかわかってるか?!」
 ヤーグがさっきと同じ台詞を言った。ハナは答える。
「今は春野草最盛期ですよぅ。野外花見で天麩羅は基本中の基本ですぅ」
「そうだったのか!」
「んなわけあるか!」
 何故かヘザーが納得したがヤーグは全面的に否定した。
「守護者になって良かったことはぁ、いくらでも大荷物が持てるようになったことですぅ」
「さすが守護者! 頼りになる」
「二人ともとりあえず大精霊に謝れ」

 ヘザーは花見日和の日だというのにマフラーをしていた。
 贈ってくれた人が目の前にいる。
「似合うか?」
「気に入ってくれたみたいでよかったよ」
 聞かれてキヅカ・リク(ka0038)は言った。
「もっと風の強い日だったらカッコよくなびいたんだがな!」
「マフラーってそういうものじゃないからね?」

「キヅカ!」
 キヅカに話しかけるものがあった。
「お、レーニエ! レーニエじゃん、ひっさしぶり!」
 レーニエは顔を輝かせてキヅカに駆け寄ってきた。
「なんか、随分変わったね?」
「こっちでは毎日騒がしいのに囲まれてるからな」
「へえ~元気そうじゃん!」
 そして、聖輝節にメラハト達に会ったと話すと、レーニエは安堵した。
「指揮官の責務を放棄して……彼女達には申し訳なく思っている」
「大丈夫だって。楽しそうにしてたしさ!」
「もしまた何処かで会ったら、よろしく頼むよ」

(ん、背中に視線を感じる?)
 キヅカは振り向いた。

 イサが 見ていた。

(めっちゃ見てる……!)
 視線が刺さってくる。キヅカには理由がわからなかった。



●出立
「出発しようぜー!」
「始めようぜ、俺達の冒険を!」
 ボルディアとフロッグが高まる気持ちを示そうとポージングしながら呼びかけた。
 見事な筋肉だった。
「よし、準備はいいな! 出発だ!」
「腕が鳴りますぅ!」
「何をやっつける気だ?!」
 ヘザーの宣言に応じるハナ(符術師レベル90でしかも守護者)のやる気にヤーグは戦慄を感じた。
「た……祟られたりしないんでしょうかっ?」
「大丈夫さ……」
 ミコトの問いに答えるヘザー。しかし、その問いの答えは誰も知らない……。
「帰ったら二次会するから!」
 そう言って残るメンバーに手を振るキヅカ。そして、そんな彼をイサがじっと見ていた。



●ウィルダネスの始まり
 がちゃりと音を立てて扉が開く。一行がリンダールの森に着いて初めて、ケージに入れられていたユグディラ達が解放された。
「そこにいたのか……」
「道中バイクを盗まれては適わんからな」
 と、ヘザーはヤーグに答える。
「こっからは見張っとくからね!」
 笑顔で言うキヅカだったが、一瞬見せた気迫にユグディラ達は圧され、揃って腹を見せる。降伏のポーズ。
 強者を見分けるのに長けていた。
 ボルディアが先頭に立ち、ユグディラ達に案内を促す。堂々としたボルディアの姿は森林にとても映えた。
 一方でハナは周囲にくまなく目を光らせていた。
「ユキノシタGetですぅ!」
 そして度々茂みの中に突っ込んで野草を採集していた。
「うふふふここなら狩りの獲物もたくさんいるはず。私の光符が火を吹きますよぉ!」
「灰も残らねぇよ!」
 ヤーグが忙しい。
 基本威力706の五色光符陣で形の残る野生動物が居ようか。
「ハナ! 皆も少しいいか?」
 ヘザーが皆に呼びかけ、円の形に集める。
「精鋭揃いであることはわかっているが、ここが危険な土地には違いない。不要な行動は控えて、できるだけ早く進もう」

 そう言うと、皆がぽかーんとした顔になった。
「ど、どうした!?」
「いや……(こんな事思い付く割に)まともなことも言うんだなあって……」
 キヅカが戸惑いがちに言った。
「どういう意味だ。ま、そういうことだから、不用意にスキルとかキャノンとか撃ったりするなよ!」
「今何でキャノンって言ったの!」

 先に進んで行くにつれて、地形の起伏が激しくなってきた。切り立った崖を登る必要が出てくる。
 ボルディアが正当派の手段でもって先陣を切ろうとする一方、ミコトがファミリアズアイで行き先を確かめ、キヅカがアルケミックフライトで、ハナが魔法の箒で飛行して先行する。
「ヒュゥ! 俺達に行けない所などないぜ!」
 フロッグが喝采を送った。
「先に行ってフォローするから!」
 キヅカとハナは仲間が通りやすいよう、進路を開き仲間を補助する。
「……」
 そしてイサは相変わらずキヅカを見ていた。
(なんなの?)

●クロコダイルダンディ
 そんな風に順調に進んでいくと、やがて水の音と湿気の匂いが感じられた。
 やがて雄大な河が眼前に現れる。
 しばしその流れに見とれ、渡る方法を考える一行。
 木を伐って筏を作り、ロープをくくりつけ飛行できる者がそれを引っ張るという方法をとった。
 そうやって進んでいると、突然、水の跳ねる音がして、何かが飛び出した。
「ワゥ! ジ・アリゲータ イズ ゼア!」
 叫んだのはフロッグ。
 ワニだ。歪虚ではないが獰猛に一行に襲いかかろうとしてくる。
 水面から飛び上がり、筏を引っ張るキヅカに噛みつこうとする。
 キヅカは両手が塞がって無防備、しかも大きく動いては筏が転覆してしまう。蹴って防ぐが、ワニは執拗に狙う。
「よし、俺が行く!」
 ボルディアが河に飛び込んだ。
「危険だ! 河は! ………………いや何でもない」
 ヘザーは思わず言って、無意味を悟った。

 数秒後、凄まじい水しぶきが何度かあがり、ボルディアはワニを引きずって筏に上がった。ワニは絞められて気を失っていた。
「ナイスですぅ! 解体はお任せ下さいぃ」
 筏の先でハナが言った。

 一行は無事河を渡り終えた。
 ここで一時休憩ということになった。一番喜んだのはハナだった。彼女は嬉々としてワニの首に大包丁を叩きつけた。
 虚ろな目をしたワニの生首は捨て置かれ、内臓もかき出されて打ち捨てられた。
「あわわわごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
 ミコトは数珠を手にワニの生首に拝む。ハナの様子に何か感じる所があったのだろう。
 休憩を終えた後、首と内蔵を失ったワニはハナに担がれて一行の旅に加えられた。
「お花見は楽しいなー♪」
「楽しいなぁー!」
「微塵もお花見してねえー!」
 上機嫌なハナとボルディアの後ろからのヤーグである。

 河を越えると日が暮れてきたので、一行は夜を明かす準備に入った。
 キヅカが獣除けに松明を点けたが……
「ハナは向こうの離れた所で休んでくれ」
「なんでですかぁ?!」
「ワニの血に獣が群がるからだ!」
 ヘザーは言うまでもないことを言った。ずっと血抜きしながら歩いてきたから当たり前だ。

 ……そして夜が明けた。

「おはようございますぅ」
 群がった獣全てを処理した、血塗れのハナと一行は再会した。

 荷物が増えた。一行は出発した。

 そんな風に、過酷なはずの自然に一行は不自然なくらい馴染み、愉快で時々血を見る日々を過ごした。

●深き森で出逢った
 やがて一行は深い森へと進んだ。日の光も遮られ、空気が違うことを肌で感じる。
 一行は警戒心を強め、先に進んだ。
 突然、先頭を行くユグディラ達が止まった。ボルディアも超聴覚で何かを捉えていた。一行を制する。
「止まれ。静かに」
 一行が言われた通りにして待っていると、木々が揺れた。
 やがて、巨大なものが姿を現した。
 身の丈10~20mはあろうかという蛇だった。

 蛇は首を持ち上げ静かに一行を見下ろした。心なしか知性を感じさせる。
『人の子がこの地に何用か?』と問いかけているようだった。
「幻獣か……」
 ヘザーが言った。
「なるべく争いたくはないんだけど」
 キヅカは警戒しつつも、宥めるように接しようとした。ハナもさすがにこれを狩ろうとは考えなかった。
 ボルディアはゆっくり近づき、荷物から何か取り出す。
 武器ではない。

 酒だ。

「さっすがウワバミ、いい飲みっぷりじゃねーの!」
 フロッグがはやす。蛇は酒をラッパ飲みして頬を赤くしていた。
「幻獣王と同じノリ」
 ボルディアは仲間にサムズアップする。
「何か与えれば大人しくなるってか……」
 ヤーグが言った。実際その通りで、蛇は酔っ払って寝てしまった。
「腹を割いたら中から剣とか出てきませんかねぇ~?」
「お願いだから試さないでくださいねっ?」
 何かを思い出したように言うハナと、心配そうなミコトだった。



●生と死の世界
 ……さらに探索を続けること数日。
 ユグディラ達は「ここだ」と言う。
 何も居なかった。しかし、僅かではあるが、負のマテリアルも感じ取れた。
 さらに何日か探索を続ける一行。

 ……そして。

 遂に一行は目的のものを見つけた。



 満開に咲き誇る桜の木があり、その根が触手のように巻きついた屍体が立って動いていた。
 屍体というものは見るものにある種の畏怖を抱かせる。リアルブルーで“ゾンビ”に関する映像作品を探せば説明は不要だろう。
 雑魚歪虚だが見応えがある。
 そして、満開の花と同じ場所にあった場合、どうなるか。
 闇が光を引き立たせるように、互いの印象を引き立て合うのだ。
 桜の爛漫さと屍体の凄絶さ。
 生命と退廃の極致。
 それらが絡み合って、妖艶な雰囲気を醸し出していた。

 かの狂人風に言うなら、心を撲つ、というのだろうか。
 一行が見ていると、屍体も虚ろな眼窩を一行に向けた。

 幻術の類か。辺りの景色が変わった。
 周囲が闇に閉ざされ、その中で桜と屍体の姿だけが、燐光を帯びて闇の中に浮かび上がった。
 桜と、屍体。
 まるで、それだけで完結したひとつの世界のように。
 それらは存在を誇示した。



 ……だが咲き誇れば咲き誇るほどに、
 美しければ美しいほどに、

 歪虚である事もまた、引き立った。

 ボルディアが飛び出す。手には魔斧「モレク」。
 横殴りの一撃。
 屍体の胴を真ん中から斬り飛ばした。
 その、一瞬。
 最後の輝きとばかりに花弁が一斉に飛ぶ。
 極大の花吹雪が周囲を埋め尽くす。
 それが通り過ぎると、何も残らなかった。



●宴の時
「さーて花見花見! あれ花は?」
「さっき自分で散らしただろうが」
「あ、そっか……まあいいか」
 ボルディアはヤーグとやり取りしながら宴の席に着く。
「ハナ様。味付けは私にお任せくださいませ」
「じゃあ私は食材を捌きますねぇ。それと野草の天麩羅を!」
 宴の食卓をイサが仕切る。ハナは大包丁でワニなど道中狩った獣を捌きつつ天麩羅を揚げだした。
 技術は凄いが、それに反比例して女子力が感じられなくなるのは何故だろう。
(まだ見てる……)
 キヅカは相変わらずイサに見られていた。気になりつつも持ってきた食材を見つめる。
(まさかシエラリオの牛さんも密林のワニとかと一緒に煮られるとは思わなかっただろうな……)
 しかし、食べてみるとどちらも遜色がないほどに美味だった。
 ワニは、脚がそのまま入っていたりしたが……
「遊び心ですぅ」
「ワイルドにも程がある!」
 食事の時も休む暇がないヤーグだった。
 そして花見には欠かせないのが酒だ。
「やっぱ花より酒だよな~」
 ボルディアは速攻で出来上がっていた。
「フロッグお疲れー!」
「お疲れちゃーん! 飲もうぜ飲もうぜ!」
 フロッグと杯を合わせる。
 それから二人して周りに盛大に絡み酒した。
「未成年もいるんだから程々にな!」
「うるせえヘザーも飲めー!」
「ウボァー」
 もう誰にも止められない。

 ミコトは、掌にひとひらの花弁が残っているのに気がついた。
 それを見るや、半ば衝動的に、深淵からの声を発動していた。

 声は聞こえた。

 私が死んだらあの木の下に埋めて欲しい──
 いつまでも美しいものと関わり続けたいから──
 春が来たら──
 私も一緒に咲き誇っていると思って欲しい──



●二次会
「──ってな感じで」
「おお……面白かったぞ!」
 レーニエはキヅカの土産話に顔を輝かせた。
 帰ってきた一行はギルドハウスで、一行が倒す前に撮っていたゾンビ桜の画像を見ながら二次会を開いていた。
 キヅカは気になっていたことを聞いてみることにした。
「なあレーニエ。イサってヤンデレ系なの?」
「どこも病んでないぞ?」
「……」
 これが素なのかなあ、とキヅカは出会ったばかりのレーニエを思い出す。
「いや、最初っからずっと僕のことを見てるからさ」
「……? 恋かな」
 レーニエは大真面目に言った。
「いやいや、おかしいよね?!」

 そして今この瞬間もイサはキヅカをこっそり見ていた。

(レーニエ様のご友人として……今に至るまでの観察の結果、問題なし。合格点でしょうか)
「イサ。過保護も程々にな」
 ヘザーが声をかける。付き合いだして数ヶ月経ち、少しはイサがわかっていた。
「友達を作ることにレーニエ様は不慣れですので」
「キヅカなら大丈夫だ」
 多くの人の影響でレーニエは変わった。キヅカはその影響を与えた最初の一人だ。
 レーニエは「また、こんなことがあったら駆けつけてくれる、今のままの君で居てほしい」という、あの時の願いを、今も叶えようとし続けている。


「……」
 同じ頃、ミコトは一人思いを馳せていた。
 あの時聞いた声……。
 恨みでも嘆きでもなく、ただ願いだった。

 後の調査で、あの辺りにはかつて、古代の国家コヴ・リンダールの村落があったことを知る。



(楽しんでもらえただろうか?)
 そしてヘザーは数日間にも渡るお花見を思い返していた。
(私は……楽しかった)
 それが傍から見てどんなに奇異に映ろうとも、
 仲間と過ごした美しい思い出だ。

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参加者一覧

  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • コル・レオニス
    ミコト=S=レグルス(ka3953
    人間(蒼)|16才|女性|霊闘士
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師

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依頼相談掲示板
アイコン エクストリームお花見
鬼塚 陸(ka0038
人間(リアルブルー)|22才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2019/04/03 22:57:44
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言