ゲスト
(ka0000)
とりあえず、穴を埋めないとね
マスター:狐野径
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
- 1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2019/04/09 19:00
- 完成日
- 2019/04/15 19:15
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●三人寄れば?
グラズヘイム王国、各地で色々あり、大変だし、どうにかしないといけないといっても日常生活は続く。
イスルダ島の港にある拠点で三人の若者が首をかしげる。
「これをどこに刺すかですね……」
リシャール・べリンガーは先日受け取った荷物にあったローズマリーの枝を見てそわそわする。水につかっているところは根が生えている。早く植えないとこのまま枯れてしまうのではないかと不安だ。
「とりあえず、植木鉢にでも埋めます?」
「これを植えるだけの植木鉢があるならば……」
「あー」
シールとライル・サヴィスが溜息を洩らした。ざっと五十本はある。移動中に傷むことや埋めてもうまく根付かないことを想定した数だろう。
説明書には「一旦植木鉢で土にならしてから植える方がいい」とあった。植木鉢の用意、植木鉢に入れる石や土などの用意といった手間や場所のことを考えるとそのまま植えるというもう一つの案がよさそうだった。
「私たちが行けそうで、迷惑が掛かりにくい場所と言うと……」
「あの村の跡地ですよねぇ」
リシャールにライルは答える。
「そうだ、僕の家があったあたりは?」
「村自体が奥だけどその奥だな……まず復興なら手前からだろうし」
シールの言葉にライルが手をポンとたたいた。もし、住めるようになって人が戻ってきても、埋めた物をどうするか考える時間ができる。
「私たちの居場所も港から離れてもよいのではないでしょうか?」
「でも……ハルトフォートのこと考えると、人がいる所にいたほうが……」
「そうですね。私たちが迷惑をかけるようなことはできません。それに、乗り物で行けば速いですね」
リシャールはシールの不安を読み取りすぐに提案を取り下げる。
「魔導バイクを導入をしたい」
「ライル、道中で枝が出てるかもしれないから危ないよ」
「……馬もだよな……」
「だね」
ライルは溜息を洩らした。シールの指摘は正しい。
「魔導トラックを運べればいいですね……」
「あ、リシャールさん、レンタルしているんだっけ……持ってきていないけど」
「はい」
三人はどういう手順で何が必要かあれこれ考える。
一度、現地を見に行くことにしたのだった、一番無難な馬車で。
●まずすべきこと
「穴、埋めないとな」
「木はどうする? あれは、ちょっと、変な木だよね」
「……動き始めますか……」
「それはないと思う……います、うん」
三人は現場を見て相談する。
牧草地とは名ばかりで、謎の高木が生えている。十中八九べリアル(kz0203)がイスルダ島にいたときの名残。どこからか湧いたかわからない謎の木。
「一度、来たことあるんですが……」
「そのときは生きるか死ぬかだったから……」
ライルの義弟が歪虚となってシールとライルを招いた。その結果、ここで戦った。ハンターたちのおかげで今がある。
その時のままなのであるが高木が変な物だったか否かは記憶に全くなかった。
「穴も結構深いし……埋めないと使えないよね」
「……余計な土が周りにある?」
「ないですよ……周りを崩して埋めるとかですかね……そもそも……」
三人はうめいた。
「井戸が残っていて、使えるとすごくいいですね」
シールが思い出して告げる。
家があった痕に向かうが、それらしいものがみつからない。
「ここ、にあったはず……」
シールは家がここと手で示し、井戸の位置を示した。
「……ないね」
「ないですね」
「歪虚、飲食不要ですねぇ」
ライルが語尾を伸ばし微妙な言い方をした瞬間、リシャールとシールがぎろりとにらみつける。
「二人とも機嫌が悪すぎ……」
ライルは少し嬉しかった。シールが年の近いリシャールと仲良くしていることに。イスルダ島から脱した後、精神的に追い込まれ、元気を取り戻しても、シールはシールではなかった。表向きは雑貨屋雑貨の良き店員だったが、あくまで島の記憶を捻じ曲げライルに感情をぶつけることで保っている元気だった。
リシャールが地面を突いている間、シールがライルの表情に気づいた。
「何笑っているんだよ……」
「リシャールさんと君が仲がいいのが嬉しくて」
「……でもリシャールさんに悪いよ……僕と身分違うし」
シールはしょげた。今は仲良くしてもらえていても、色々なことが済めば身分違うし、忘れられてしまうと考えてしまう。
「……どうかしましたか?」
リシャールが気になってやってくる。
「シールとあなたが仲良くしているのが嬉しいと言ったんです」
「え?」
リシャールはシールの様子を見る。何か落ち込んでいるし不安そうだ。
「それでしおれたんですか? 私とでは仲良くできないと……」
リシャールがしょげる。
「……え? あれ?」
シールが慌てる。
ライルは様子を見て笑う。
「シー坊!」
「え? え? だって、僕、親もいないし、身分もないし」
シールはおろおろする。
「それが何だというのです? 前も言いました。私は貴族かもしれません。でも、領主なのは父で、私は私です。シール君やライルさんが私と仲良くしてくれる、認めてくれるのは嬉しいのです」
シールは言われて顔を真っ赤にする。
「……だって、だって」
「私では駄目ですか? だいたい、私がエトファリカに行ったとき面倒見てくれといわれていたのも……貴族の子ではないですよ?」
エルフの女の子だ、商人の父親を持つ。
シールは気を使いすぎて、ひどいことをしてしまったと気づいた。
「ご、ごめんなさい、リシャールさん。僕! えっと、よろしくお願いします」
「……え? あ、はい、今後ともよろしくお願いします」
ライルはその様子を見つめ、大笑いを始めた。
「さて、ハンターさんに手伝ってもらえるか依頼を出しておこう」
ライルは年長者らしく、二人を促した。
グラズヘイム王国、各地で色々あり、大変だし、どうにかしないといけないといっても日常生活は続く。
イスルダ島の港にある拠点で三人の若者が首をかしげる。
「これをどこに刺すかですね……」
リシャール・べリンガーは先日受け取った荷物にあったローズマリーの枝を見てそわそわする。水につかっているところは根が生えている。早く植えないとこのまま枯れてしまうのではないかと不安だ。
「とりあえず、植木鉢にでも埋めます?」
「これを植えるだけの植木鉢があるならば……」
「あー」
シールとライル・サヴィスが溜息を洩らした。ざっと五十本はある。移動中に傷むことや埋めてもうまく根付かないことを想定した数だろう。
説明書には「一旦植木鉢で土にならしてから植える方がいい」とあった。植木鉢の用意、植木鉢に入れる石や土などの用意といった手間や場所のことを考えるとそのまま植えるというもう一つの案がよさそうだった。
「私たちが行けそうで、迷惑が掛かりにくい場所と言うと……」
「あの村の跡地ですよねぇ」
リシャールにライルは答える。
「そうだ、僕の家があったあたりは?」
「村自体が奥だけどその奥だな……まず復興なら手前からだろうし」
シールの言葉にライルが手をポンとたたいた。もし、住めるようになって人が戻ってきても、埋めた物をどうするか考える時間ができる。
「私たちの居場所も港から離れてもよいのではないでしょうか?」
「でも……ハルトフォートのこと考えると、人がいる所にいたほうが……」
「そうですね。私たちが迷惑をかけるようなことはできません。それに、乗り物で行けば速いですね」
リシャールはシールの不安を読み取りすぐに提案を取り下げる。
「魔導バイクを導入をしたい」
「ライル、道中で枝が出てるかもしれないから危ないよ」
「……馬もだよな……」
「だね」
ライルは溜息を洩らした。シールの指摘は正しい。
「魔導トラックを運べればいいですね……」
「あ、リシャールさん、レンタルしているんだっけ……持ってきていないけど」
「はい」
三人はどういう手順で何が必要かあれこれ考える。
一度、現地を見に行くことにしたのだった、一番無難な馬車で。
●まずすべきこと
「穴、埋めないとな」
「木はどうする? あれは、ちょっと、変な木だよね」
「……動き始めますか……」
「それはないと思う……います、うん」
三人は現場を見て相談する。
牧草地とは名ばかりで、謎の高木が生えている。十中八九べリアル(kz0203)がイスルダ島にいたときの名残。どこからか湧いたかわからない謎の木。
「一度、来たことあるんですが……」
「そのときは生きるか死ぬかだったから……」
ライルの義弟が歪虚となってシールとライルを招いた。その結果、ここで戦った。ハンターたちのおかげで今がある。
その時のままなのであるが高木が変な物だったか否かは記憶に全くなかった。
「穴も結構深いし……埋めないと使えないよね」
「……余計な土が周りにある?」
「ないですよ……周りを崩して埋めるとかですかね……そもそも……」
三人はうめいた。
「井戸が残っていて、使えるとすごくいいですね」
シールが思い出して告げる。
家があった痕に向かうが、それらしいものがみつからない。
「ここ、にあったはず……」
シールは家がここと手で示し、井戸の位置を示した。
「……ないね」
「ないですね」
「歪虚、飲食不要ですねぇ」
ライルが語尾を伸ばし微妙な言い方をした瞬間、リシャールとシールがぎろりとにらみつける。
「二人とも機嫌が悪すぎ……」
ライルは少し嬉しかった。シールが年の近いリシャールと仲良くしていることに。イスルダ島から脱した後、精神的に追い込まれ、元気を取り戻しても、シールはシールではなかった。表向きは雑貨屋雑貨の良き店員だったが、あくまで島の記憶を捻じ曲げライルに感情をぶつけることで保っている元気だった。
リシャールが地面を突いている間、シールがライルの表情に気づいた。
「何笑っているんだよ……」
「リシャールさんと君が仲がいいのが嬉しくて」
「……でもリシャールさんに悪いよ……僕と身分違うし」
シールはしょげた。今は仲良くしてもらえていても、色々なことが済めば身分違うし、忘れられてしまうと考えてしまう。
「……どうかしましたか?」
リシャールが気になってやってくる。
「シールとあなたが仲良くしているのが嬉しいと言ったんです」
「え?」
リシャールはシールの様子を見る。何か落ち込んでいるし不安そうだ。
「それでしおれたんですか? 私とでは仲良くできないと……」
リシャールがしょげる。
「……え? あれ?」
シールが慌てる。
ライルは様子を見て笑う。
「シー坊!」
「え? え? だって、僕、親もいないし、身分もないし」
シールはおろおろする。
「それが何だというのです? 前も言いました。私は貴族かもしれません。でも、領主なのは父で、私は私です。シール君やライルさんが私と仲良くしてくれる、認めてくれるのは嬉しいのです」
シールは言われて顔を真っ赤にする。
「……だって、だって」
「私では駄目ですか? だいたい、私がエトファリカに行ったとき面倒見てくれといわれていたのも……貴族の子ではないですよ?」
エルフの女の子だ、商人の父親を持つ。
シールは気を使いすぎて、ひどいことをしてしまったと気づいた。
「ご、ごめんなさい、リシャールさん。僕! えっと、よろしくお願いします」
「……え? あ、はい、今後ともよろしくお願いします」
ライルはその様子を見つめ、大笑いを始めた。
「さて、ハンターさんに手伝ってもらえるか依頼を出しておこう」
ライルは年長者らしく、二人を促した。
リプレイ本文
●道、整う
トリプルJ(ka6653)は港でリシャール・ベリンガー、シールとライル・サヴィスを見つけたとき、それぞれの方をバンバンたたき挨拶をする。
「いよう、ライルにシール、リシャールも。元気にしてたか」
ちょっとシールが吹っ飛びかかる。
マリィア・バルデス(ka5848)は依頼内容と自身が貸与されているユニットを思い浮かべ、同行している仲間のユニットを見上げる。
「穴を埋めるのが得意なユニットは……ねぇ……私は持っていないから、自力で頑張ることにするわ」
「いえ、助力いただけて嬉しいです」
リシャールが礼を述べた。
ルカ(ka0962)は昼食用の材料や道具を持参していた。
「一応、カレーやバーベキューみたいな感じです……事前に仕込みたいですね」
「わあ、昼の心配してくださってありがとうございます」
シールが笑顔で告げた。
そして、ライルが状況の確認などをして、出発した。
森の中をカーミン・S・フィールズ(ka1559)の刻令ゴーレムGnome・ゲー太、ユリアン(ka1664)のオファニム・エトワールブランシェが進む。
カーミンは進みながら、ゴーレムのスキルを見て眉をしかめていた。
「……ひょっとしたら……」
少し青くなるが、頼まれた荷物は運べているのでまず、良しとしておき、進む。
コクピットのユリアンは目の前の枝を落としつつ進む。
「戦う以外にブランを使えるのが何だか嬉しいよ。小さくても大事な一歩だと思う」
オファニムは戦闘のための機械であるが、戦い以外で使えることは違う未来を見られるようで嬉しいものだった。
レイア・アローネ(ka4082)はワイバーンのアウローラで空を舞う。
「……とはいえ、森だと見えないがな」
周囲を見れば、集落らしい空間や目的地と思われるところも見えた。空から襲撃してきそうな特に雑魔の姿も見られないことは確認していた。
ユニットの後を追うように進むリシャールたちは一つ気づいたことがあった。
「道が広くなりました」
「そこまで考えなかったな……」
リシャールにライルが同意する。馬車などよりも高さがあるため、踏み固めらていくし、高所の危険物も取り除かれていた。
「それに空飛ぶ雑魔がいたこともあるから、ワイバーンがいるのはすごく安心感がある」
シールが空を見上げ、木々の隙間からワイバーンを見ようとした。
●下準備
目的地の手前の集落に到着したとき、マリィアが問う。
「そういえば、変な木があるといっていたわよね? 前、確か、分割する変な木の雑魔がいたし、あれの仲間じゃないか、先に見てきた方が良いかしら? 植えたり、埋めたりしている最中に、突然襲われるのは嫌だもの」
リシャールたちは見に行ったとき、特に何もなかった。しかし、それが現在も何も起こらない保証とならないのが、歪虚支配地域が長く、負のマテリアルが多いところの問題だろう。
「気になるなら、先に撃っとく?」
カーミンが告げる。
「むやみに撃たなくても。変と言っても何か妙に羊の後ろ足みたいとか、モコモコしているとかだけだし」
「いきなり雑魔化して襲ってくるということはないとは思うが……警戒は必要だし、用心しておくのは良いと思うが?」
レイアが助言を出すとシールは「先を見る必要があるということですね」と考え方を改める。
「ほれほれ、悩むには時間は有限だぜ? まずはローズマリーの枝の移動先を作るんだろう?」
トリプルJが立ち止まる三人に声をかけた。
「実際見てみないと分かりません」
「それに油断はしないということは基本だよね?」
ルカとユリアンが声を掛け、促した。
マリィアは先行して現場に到着する。木どこにでもありそうに見えるが、きちんと見ると変な種類だった。その高木を一本ずつ、銃を構え慎重に確認する。
一通り見終わって、入り口に来たリシャールたちに報告する。
「とりあえずは問題ないみたい。まあ、土地柄注意は必要ね?」
他の者たちもその点は同意している。木自体に問題がなくとも、どこから雑魔が来るかはわからない。
「で、一つ……か、二つかな……問題があるので申告しておくわね」
カーミンは襟を正し口を開いた。
「……スキルにhole、Kモード、レヴュリングモードを忘れたの、ごめんね!」
スキルがピンとこなかった依頼人三人はともかく、ハンターたちははっとして慰める。
「な、何とかなります」
ルカ、道具は持ってきている。カレーなら、煮込めばどうにかなる、肉は注意して焼けば食べられる。
「まあ、それはそれだな。力仕事は任せろ。必要に応じてスキルも使うから」
トリプルJは力こぶを作るようなしぐさをした。
「こちらも……なるとは思う……」
ユリアンは昼食作り手伝おうとしていたが、台所があっても不安が少々あったため、どうしようと悩む。
「荷物運ぶのだって必要だし、スキルがなくとも私より力作業はできているわけよ? それより、この槍って危険よね……放置するのは」
マリィアは話題を変えた。
「何等かで放棄されているわけですし、まずは一か所に集めたほうがいいですよね……危険ですし。必要なら【ピュリフィケーション】を行います」
ルカは穴にある槍をどう取るか、穴の深さを覗き込んで考える。
「槍がどんな出自か、鑑定するわ。荒れに荒れた地の落とし穴に槍……死体とか出てこない?」
カーミンが明るい声で物騒なことを言うが、ありえないとは言えない。
「ふむ、それは注意だな。それより、落とし穴ならほかにないか気を付けたほうがいいな?」
レイアはアウローラが地面に下りて休憩しているのを眺める。時々歩き回っているが、穴に落ちることはないと考える為、好きにさせる。
「……見えるだけが落とし穴ではない? 確かに……そうかもしれないね」
ユリアンはエトワールブランシェでどう行動するか考える為、指定の場所の地形を見ていく。落とし穴だったような穴がそれなりにあるため、これ以上あると穴同士がつながる気もした。
「木や槍は浄化後、焼けるものは焼いて、炭や灰を土に混ぜてみるのはどうだろう?」
ユリアンは処分の方法を述べる。切り倒したものを置いたままにする広さもないし、崩れて来たら危険極まりない。
「手順はどうする、三人とも」
トリプルJが問う。
「はい、分担して作業しましょう。ルカさん、マリィアさんとシールくんは槍などを集めてください。それ以外の人は木をどうにかすることを先にしましょう」
木担当はどうにかするほうはそちらで分担が必要だ。木を切り倒す、切り刻む、隅に一旦置くと言った。
「それは、土地をどうしたいかにもよりますが、根は取った方がいいと思います。後々面倒になるからです
ルカがおずおずと挙手して言う。それに対し、土地の活用に意見があるハンターからも同意の声が上がる。
「わかりました。作業のほどよろしくお願いします」
リシャールは頭を下げた。
「木はゲー太でなぎ倒せるわね」
「それをブランで動かして、斬って動かしやすくすればいいかな?」
ユリアンにカーミンがうなずいた。
「はい! 無理せず、よろしくお願いします」
リシャールは頭を下げた。安全第一らしい。
マリィアはリシャールの発言に成長を感じ、カーミンは貴族嫌いの気により複雑な表情になるのだった。
レイアは斧を手に作業に移ろうとする。その前にリシャールたちに声をかけた。
「今さら私たちが気にすることではないかもしれないが、おせっかいをさせてもらおうかな。リシャール、あなたは身分を気にしないというのは親しい人はわかっていと思うが、逆にシールのような者にとってはそこはぬぐいがたい重要なことも理解してやってくれ」
シールは「あちゃー」と言う感じでリシャールやレイアを見る。
「シール、お前の気持ちはわからないでもない。私も山奥の田舎の生まれだからな」
「うーん……僕の場合は……そこもあるけど……」
「考えすぎ、ということか?」
レイアの問いかけにシールはうめく。
「今後もハンターオフィスとかでハンターと交流してみるのはどうだ? この仕事をしていると身分の高いものから低いものまで色々関わらなければいけないから、仕事にかかわる部分言う以外で気にしている余裕がなくなる」
レイアはからっと笑う。
「まあ、後はお前たち次第だ」
レイアは木の方に向かって行った。
ルカとマリィア、シールは落ちている武器を集めていく。穴の中にある物は、ロープを張って下りることをシールが提案し、その通りに行う。
「結構、ありましたね」
「さびている物もあるし、無理に再利用もないかしらね」
ルカは集まった武器に念のため【ピュリフィケーション】をかける。マリィアはカーミンを呼んで武器の出所を確認する。
「このあたりは手作り感満載よね?」
「そうよね。このあたり、戦いのとき拾ったとかで再利用されたとか」
カーミンが作りが立派な槍の模様を指さす。
「この島がたどった道、ということでしょうか」
ルカの言葉に、マリィアとカーミンは異口同音に肯定をした。
この後、カーミンと共にマリィアも木を倒す作業に向かい、ルカとシールは昼食準備に向かった。
●穴埋め、木倒す
「ローズマリー、若返りや記憶のハーブで売れるけど、今回はコンパニオンプランツとして害虫対策、この辺りを耕地として使えるようにするんでしょ?」
カーミンが作業中にリシャールに問う。妙に反応が薄いため、嫌味の一つくらい言ったりや悪態をつきたくなるが、ひとまず我慢した。
「……花言葉を考えても『追憶』や『思い出』の村と言うところかしら……でも、『あなたは私を蘇らせる』、この土地を蘇らせるのでしょ?」
そのことに関してはうなずいた。
「……まさかと思うけど、若サマ、ノープラン」
リシャールはにらみつけられ「協議します」と告げる。
「待って、貴族ってことは次期領主なのよね? この辺り、村があったんでしょ? 灌漑はそこから引いてくるとして、予算の試算はどうなっているの?」
リシャールは二秒ほど考えて、ポンと手を打った。
「私の父は王都の北東、中央地域と北東地域の間くらいに領地を持ってます。ここにいるのは、私は父たちの代理だったり、イスルダ島の状況がどうなっているかの情報収集のためです。つまり、ライルさんがたちが戻るために手助けしているだけなので……ノープランなのは事実で、今後どうしたいか決めないとなりません」
リシャールはライルたちが早々に雑魔が多すぎて復興を断念していることを示した。月日が経ち、だいぶ安定はしているため、次を考えていくべきなのは認めた。
「……つまり、これから? 若サマ」
皮肉を込めて「若サマ」と言っているが、リシャールは照れ臭そうだ。
「そうですね。あ、あとのその呼び方……初めてです」
「は?」
「私の周りだと、基本、名前で呼ばれます。でも、なんか、そう呼ばれると、頑張らないといけないと思えました」
「あ、いや……うん、それならいいけどね」
カーミンはなんとなく疲労した気分になりつつ、作業に戻っていった。
野菜を切っていたルカはシールに話しかける。今回のローズマリー植えについての質問と今後のあり方について助言があったのだ。
「ローズマリーの効果の説明はあったと思いますが、害虫避けのハーブとしていいとしても、益虫も来なくなる可能性があることも考えた方がいいです」
シールは一応手紙にあったローズマリーについての説明は理解していたが、キョトンとする。
ルカは植物の持つ忌避作用について説明をした。虫を避ける作用があるとはいえ、特定の生き物以外も来なくなる可能性があるということだった。
「無駄にしたくなかったというのはわかります。ただ、その先を考えないとならないのです」
「そうだよね……」
シールは溜息を吐いた。
「ここをどうするかです……居住地、牧草地、果樹園、もしくは畑……。整備する際も、前の三つなら石などはあってもいいですが、畑だと退けていく必要があります」
シールはうなずいた。根を取るべきという提案はここから出ているのはわかるし、そこまで考えていなくても根があると邪魔という程度はわかった。
「とりあえず、畑はないかな。僕が住んでいたときも牧草地だったし」
シールの答えにルカはうなずいた。
「ひとまずローズマリーを育てつつ、先を考えてくださいね」
「ありがとう、ルカさん」
「植えてみるなら……フレンチマリーゴールドや唐辛子、ネギなどもいいかもしれませんね」
二人は昼食準備に集中した。
木を倒すことは周囲の安全を気にしない場合は早かった。その上で、エトワールブランシェの剣で木を切る。のこぎりで切るより早いようだった。
根をどう掘り出すのが一番かが問題だ。
「力仕事は……ユニットの前では『任せろ』と言えないのは……」
「しかたがないわよ」
トリプルJのつぶやきにマリィアが苦笑する。
「さてと、根だけど人の手である程度ほぐして、ユニットに引っ張ってもらうのがいいかな?」
「ユニットでもある程度、土をほぐすことはできるけれど、両方必要よね」
トリプルJとマリィアはスコップを手にする。
「下手に引っ張って、中途半端に幹が抜けると厄介だし……」
「引っ張る側に負担もかかるしね」
「そうだよな……オファニムだってワイバーンだって得手不得手、無理もあるわけだしな」
「そうそう。それに、二度手間三度手間を考えると、一度の手間で済むほうがいいわよ」
ライルは二人の話を聞き、作業の提案をする。
「一本ずつ全員で作業するより、一人一本ずつ作業をして、ほぐせたというところで次に移るという感じでいいでしょうか?」
異論は出ない。
「なら、アウローラはしばらく休みだな」
レイラは根を掘り出すためにスコップやツルハシを持ち、アウローラに言う。ワイバーンは物を運べても穴を掘るには向かないだろう。
アウローラは指定されたところに幹を運んだ後、隅っこで翼を伸ばし、休憩態勢に入る。それでも周囲への注意は怠らないはずだ。
「俺が掘るか、昼食準備をするか……だけど」
「コクピット内で作業は気の張り方が違うし休憩は必要だろう?」
トリプルJが言うことは一理あるし、食事も重要。
「じゃあ、料理作るのは緊張するけど……ローズマリー、少しもらっていいかな?」
「根っ子ついてるけど……食べるのに使うなら文句は出ないと思うから」
ライルは荷物置き場から水に下の方が漬かっているローズマリーを三本ほど渡した。ユリアンはルカとシールがいる所に向かった。
「さてと、昼食休憩まで進めるか」
トリプルJはスコップで土を掘ろうとしたが、ツルハシの方がよさそうだった。
それから一時間ほどして、昼食休憩となる。
肉ゴロゴロなカレーとローズマリーをアクセントに使ったジャガイモと玉ねぎとベーコンの炒め物だった。
「ローズマリーは強いし色々用途があるからいいと思う」
ユリアンが作ったのも実際にそうだ。ユリアンが言うことがあるからこそ、植物を育てる初心者の三人に薬草園が送ったのだ。
「例えばミントもいいと思う、ただ、繁殖力が強いから、鉢植えをお薦めするよ」
植木鉢の数を想像する依頼人三人。
「結局、ライル……どうしたいかだよね」
「そうだな……」
シールとライルは首をひねった。リシャールはあくまで父たちへの橋渡しだと思っている。最終的に決めるのは、この地に住む人たちだと認識はしていた。
午後の作業が開始される。燃やせそうなものを焼きつつ、その火の番はシールに任せる。ユニットで根を引っこ抜いた後、穴埋めが始まる。ルカが食後の後片付けをした後、穴を埋める作業に加わる。
穴を埋める際、一定の深さのところで腐葉土も混ぜていくことにしたのだ。多少でも、今後の作業が減るように、進むようにと言う配慮だ。
●井戸できる?
日が陰ってくる。
「おおむね更地にはなりましたよね」
ルカは木と穴がない分、何かに活用しやすい土地にはなったとは見た。
「あと、一息なのよ。ローズマリーを植えるなら、あのへんがいいと思うの」
カーミンは水はけのよい場所を指す。
「あとは井戸があるといいのですが」
「……あー、そうよね……結局、植えたとしても水をまけない」
腐葉土もあったので、今回持ってこられた水は足りない気もする。
「ありがとうございました。土も柔らかくなってますし、穴をあけて根っ子付き枝を刺すだけなので後日、私たちでできます」
リシャールはシールとライルに確認しながら言う。撤収準備が必要だ。
「とはいえ……少しだけ試していこう?」
ユリアンはエトワールブランシェの装備を魔導ドリルに変えていた。
「水が出るところまでできるかわからないけれど、試しに掘ってみるくらいならできるよね?」
コクピットに戻ると操作を始めた。垂直の穴を掘るとなると、深さがいる。オファニムの腕の長さ、ドリルの長さでどの程度行けるかはわからない。
「……上がってくる土は湿り気が増えたわね。このままいけば水は出るんじゃないかしら?」
マリィアが告げる。染み出てたまることもありうる。
「ああ、水脈はありそうだな。どうする? 井戸、掘っていくか?」
レイアが問う。
「いえ、暗くなると見えなくなり、安全が担保できません」
リシャールはあくまで安全をとった。
「帰り支度ね」
マリィアは成長したリシャールの頭を思わず撫でる。
「シールも頑張ってるわね」
シールの頭も撫でる。その様子を見て、ライルは肩を震わせる。リシャールとシールが困惑しているからだ、子ども扱いされているのは心外だと。
「帰るなら、私は空から行こう」
レイアはアウローラで空を舞う。
「ローズマリーは連れて帰るの?」
「はい、お願いします」
カーミンはゲー太に水に浸ったローズマリーたちを積む。
「忘れ物はないな?」
トリプルJは片付けが終わった時、声を掛けた。その後、シールの肩に腕を回し、ある助言をした。
「リシャールに対して距離があるよな? ハンターになった時点で、王国の厳格な身分制度から多少は外れる存在になっているんだ。相手が気にしないなら、普通に友誼を結んでやれ、な?」
シールは驚いた顔をして、離れていくトリプルJを見つめた。
「気にはしていないんだけどなぁ……」
どこかよそよそしくなるのは否めない。
「店員としては駄目だ! 頑張らないと」
シールは決意を新たにライルたちを追いかけた。
後日、井戸を作り水の確保でき、ローズマリーを土に挿したと連絡が届く。その上で、今後の方針等を考えるきっかけ、助言をくれたことへの感謝が記されていた。
トリプルJ(ka6653)は港でリシャール・ベリンガー、シールとライル・サヴィスを見つけたとき、それぞれの方をバンバンたたき挨拶をする。
「いよう、ライルにシール、リシャールも。元気にしてたか」
ちょっとシールが吹っ飛びかかる。
マリィア・バルデス(ka5848)は依頼内容と自身が貸与されているユニットを思い浮かべ、同行している仲間のユニットを見上げる。
「穴を埋めるのが得意なユニットは……ねぇ……私は持っていないから、自力で頑張ることにするわ」
「いえ、助力いただけて嬉しいです」
リシャールが礼を述べた。
ルカ(ka0962)は昼食用の材料や道具を持参していた。
「一応、カレーやバーベキューみたいな感じです……事前に仕込みたいですね」
「わあ、昼の心配してくださってありがとうございます」
シールが笑顔で告げた。
そして、ライルが状況の確認などをして、出発した。
森の中をカーミン・S・フィールズ(ka1559)の刻令ゴーレムGnome・ゲー太、ユリアン(ka1664)のオファニム・エトワールブランシェが進む。
カーミンは進みながら、ゴーレムのスキルを見て眉をしかめていた。
「……ひょっとしたら……」
少し青くなるが、頼まれた荷物は運べているのでまず、良しとしておき、進む。
コクピットのユリアンは目の前の枝を落としつつ進む。
「戦う以外にブランを使えるのが何だか嬉しいよ。小さくても大事な一歩だと思う」
オファニムは戦闘のための機械であるが、戦い以外で使えることは違う未来を見られるようで嬉しいものだった。
レイア・アローネ(ka4082)はワイバーンのアウローラで空を舞う。
「……とはいえ、森だと見えないがな」
周囲を見れば、集落らしい空間や目的地と思われるところも見えた。空から襲撃してきそうな特に雑魔の姿も見られないことは確認していた。
ユニットの後を追うように進むリシャールたちは一つ気づいたことがあった。
「道が広くなりました」
「そこまで考えなかったな……」
リシャールにライルが同意する。馬車などよりも高さがあるため、踏み固めらていくし、高所の危険物も取り除かれていた。
「それに空飛ぶ雑魔がいたこともあるから、ワイバーンがいるのはすごく安心感がある」
シールが空を見上げ、木々の隙間からワイバーンを見ようとした。
●下準備
目的地の手前の集落に到着したとき、マリィアが問う。
「そういえば、変な木があるといっていたわよね? 前、確か、分割する変な木の雑魔がいたし、あれの仲間じゃないか、先に見てきた方が良いかしら? 植えたり、埋めたりしている最中に、突然襲われるのは嫌だもの」
リシャールたちは見に行ったとき、特に何もなかった。しかし、それが現在も何も起こらない保証とならないのが、歪虚支配地域が長く、負のマテリアルが多いところの問題だろう。
「気になるなら、先に撃っとく?」
カーミンが告げる。
「むやみに撃たなくても。変と言っても何か妙に羊の後ろ足みたいとか、モコモコしているとかだけだし」
「いきなり雑魔化して襲ってくるということはないとは思うが……警戒は必要だし、用心しておくのは良いと思うが?」
レイアが助言を出すとシールは「先を見る必要があるということですね」と考え方を改める。
「ほれほれ、悩むには時間は有限だぜ? まずはローズマリーの枝の移動先を作るんだろう?」
トリプルJが立ち止まる三人に声をかけた。
「実際見てみないと分かりません」
「それに油断はしないということは基本だよね?」
ルカとユリアンが声を掛け、促した。
マリィアは先行して現場に到着する。木どこにでもありそうに見えるが、きちんと見ると変な種類だった。その高木を一本ずつ、銃を構え慎重に確認する。
一通り見終わって、入り口に来たリシャールたちに報告する。
「とりあえずは問題ないみたい。まあ、土地柄注意は必要ね?」
他の者たちもその点は同意している。木自体に問題がなくとも、どこから雑魔が来るかはわからない。
「で、一つ……か、二つかな……問題があるので申告しておくわね」
カーミンは襟を正し口を開いた。
「……スキルにhole、Kモード、レヴュリングモードを忘れたの、ごめんね!」
スキルがピンとこなかった依頼人三人はともかく、ハンターたちははっとして慰める。
「な、何とかなります」
ルカ、道具は持ってきている。カレーなら、煮込めばどうにかなる、肉は注意して焼けば食べられる。
「まあ、それはそれだな。力仕事は任せろ。必要に応じてスキルも使うから」
トリプルJは力こぶを作るようなしぐさをした。
「こちらも……なるとは思う……」
ユリアンは昼食作り手伝おうとしていたが、台所があっても不安が少々あったため、どうしようと悩む。
「荷物運ぶのだって必要だし、スキルがなくとも私より力作業はできているわけよ? それより、この槍って危険よね……放置するのは」
マリィアは話題を変えた。
「何等かで放棄されているわけですし、まずは一か所に集めたほうがいいですよね……危険ですし。必要なら【ピュリフィケーション】を行います」
ルカは穴にある槍をどう取るか、穴の深さを覗き込んで考える。
「槍がどんな出自か、鑑定するわ。荒れに荒れた地の落とし穴に槍……死体とか出てこない?」
カーミンが明るい声で物騒なことを言うが、ありえないとは言えない。
「ふむ、それは注意だな。それより、落とし穴ならほかにないか気を付けたほうがいいな?」
レイアはアウローラが地面に下りて休憩しているのを眺める。時々歩き回っているが、穴に落ちることはないと考える為、好きにさせる。
「……見えるだけが落とし穴ではない? 確かに……そうかもしれないね」
ユリアンはエトワールブランシェでどう行動するか考える為、指定の場所の地形を見ていく。落とし穴だったような穴がそれなりにあるため、これ以上あると穴同士がつながる気もした。
「木や槍は浄化後、焼けるものは焼いて、炭や灰を土に混ぜてみるのはどうだろう?」
ユリアンは処分の方法を述べる。切り倒したものを置いたままにする広さもないし、崩れて来たら危険極まりない。
「手順はどうする、三人とも」
トリプルJが問う。
「はい、分担して作業しましょう。ルカさん、マリィアさんとシールくんは槍などを集めてください。それ以外の人は木をどうにかすることを先にしましょう」
木担当はどうにかするほうはそちらで分担が必要だ。木を切り倒す、切り刻む、隅に一旦置くと言った。
「それは、土地をどうしたいかにもよりますが、根は取った方がいいと思います。後々面倒になるからです
ルカがおずおずと挙手して言う。それに対し、土地の活用に意見があるハンターからも同意の声が上がる。
「わかりました。作業のほどよろしくお願いします」
リシャールは頭を下げた。
「木はゲー太でなぎ倒せるわね」
「それをブランで動かして、斬って動かしやすくすればいいかな?」
ユリアンにカーミンがうなずいた。
「はい! 無理せず、よろしくお願いします」
リシャールは頭を下げた。安全第一らしい。
マリィアはリシャールの発言に成長を感じ、カーミンは貴族嫌いの気により複雑な表情になるのだった。
レイアは斧を手に作業に移ろうとする。その前にリシャールたちに声をかけた。
「今さら私たちが気にすることではないかもしれないが、おせっかいをさせてもらおうかな。リシャール、あなたは身分を気にしないというのは親しい人はわかっていと思うが、逆にシールのような者にとってはそこはぬぐいがたい重要なことも理解してやってくれ」
シールは「あちゃー」と言う感じでリシャールやレイアを見る。
「シール、お前の気持ちはわからないでもない。私も山奥の田舎の生まれだからな」
「うーん……僕の場合は……そこもあるけど……」
「考えすぎ、ということか?」
レイアの問いかけにシールはうめく。
「今後もハンターオフィスとかでハンターと交流してみるのはどうだ? この仕事をしていると身分の高いものから低いものまで色々関わらなければいけないから、仕事にかかわる部分言う以外で気にしている余裕がなくなる」
レイアはからっと笑う。
「まあ、後はお前たち次第だ」
レイアは木の方に向かって行った。
ルカとマリィア、シールは落ちている武器を集めていく。穴の中にある物は、ロープを張って下りることをシールが提案し、その通りに行う。
「結構、ありましたね」
「さびている物もあるし、無理に再利用もないかしらね」
ルカは集まった武器に念のため【ピュリフィケーション】をかける。マリィアはカーミンを呼んで武器の出所を確認する。
「このあたりは手作り感満載よね?」
「そうよね。このあたり、戦いのとき拾ったとかで再利用されたとか」
カーミンが作りが立派な槍の模様を指さす。
「この島がたどった道、ということでしょうか」
ルカの言葉に、マリィアとカーミンは異口同音に肯定をした。
この後、カーミンと共にマリィアも木を倒す作業に向かい、ルカとシールは昼食準備に向かった。
●穴埋め、木倒す
「ローズマリー、若返りや記憶のハーブで売れるけど、今回はコンパニオンプランツとして害虫対策、この辺りを耕地として使えるようにするんでしょ?」
カーミンが作業中にリシャールに問う。妙に反応が薄いため、嫌味の一つくらい言ったりや悪態をつきたくなるが、ひとまず我慢した。
「……花言葉を考えても『追憶』や『思い出』の村と言うところかしら……でも、『あなたは私を蘇らせる』、この土地を蘇らせるのでしょ?」
そのことに関してはうなずいた。
「……まさかと思うけど、若サマ、ノープラン」
リシャールはにらみつけられ「協議します」と告げる。
「待って、貴族ってことは次期領主なのよね? この辺り、村があったんでしょ? 灌漑はそこから引いてくるとして、予算の試算はどうなっているの?」
リシャールは二秒ほど考えて、ポンと手を打った。
「私の父は王都の北東、中央地域と北東地域の間くらいに領地を持ってます。ここにいるのは、私は父たちの代理だったり、イスルダ島の状況がどうなっているかの情報収集のためです。つまり、ライルさんがたちが戻るために手助けしているだけなので……ノープランなのは事実で、今後どうしたいか決めないとなりません」
リシャールはライルたちが早々に雑魔が多すぎて復興を断念していることを示した。月日が経ち、だいぶ安定はしているため、次を考えていくべきなのは認めた。
「……つまり、これから? 若サマ」
皮肉を込めて「若サマ」と言っているが、リシャールは照れ臭そうだ。
「そうですね。あ、あとのその呼び方……初めてです」
「は?」
「私の周りだと、基本、名前で呼ばれます。でも、なんか、そう呼ばれると、頑張らないといけないと思えました」
「あ、いや……うん、それならいいけどね」
カーミンはなんとなく疲労した気分になりつつ、作業に戻っていった。
野菜を切っていたルカはシールに話しかける。今回のローズマリー植えについての質問と今後のあり方について助言があったのだ。
「ローズマリーの効果の説明はあったと思いますが、害虫避けのハーブとしていいとしても、益虫も来なくなる可能性があることも考えた方がいいです」
シールは一応手紙にあったローズマリーについての説明は理解していたが、キョトンとする。
ルカは植物の持つ忌避作用について説明をした。虫を避ける作用があるとはいえ、特定の生き物以外も来なくなる可能性があるということだった。
「無駄にしたくなかったというのはわかります。ただ、その先を考えないとならないのです」
「そうだよね……」
シールは溜息を吐いた。
「ここをどうするかです……居住地、牧草地、果樹園、もしくは畑……。整備する際も、前の三つなら石などはあってもいいですが、畑だと退けていく必要があります」
シールはうなずいた。根を取るべきという提案はここから出ているのはわかるし、そこまで考えていなくても根があると邪魔という程度はわかった。
「とりあえず、畑はないかな。僕が住んでいたときも牧草地だったし」
シールの答えにルカはうなずいた。
「ひとまずローズマリーを育てつつ、先を考えてくださいね」
「ありがとう、ルカさん」
「植えてみるなら……フレンチマリーゴールドや唐辛子、ネギなどもいいかもしれませんね」
二人は昼食準備に集中した。
木を倒すことは周囲の安全を気にしない場合は早かった。その上で、エトワールブランシェの剣で木を切る。のこぎりで切るより早いようだった。
根をどう掘り出すのが一番かが問題だ。
「力仕事は……ユニットの前では『任せろ』と言えないのは……」
「しかたがないわよ」
トリプルJのつぶやきにマリィアが苦笑する。
「さてと、根だけど人の手である程度ほぐして、ユニットに引っ張ってもらうのがいいかな?」
「ユニットでもある程度、土をほぐすことはできるけれど、両方必要よね」
トリプルJとマリィアはスコップを手にする。
「下手に引っ張って、中途半端に幹が抜けると厄介だし……」
「引っ張る側に負担もかかるしね」
「そうだよな……オファニムだってワイバーンだって得手不得手、無理もあるわけだしな」
「そうそう。それに、二度手間三度手間を考えると、一度の手間で済むほうがいいわよ」
ライルは二人の話を聞き、作業の提案をする。
「一本ずつ全員で作業するより、一人一本ずつ作業をして、ほぐせたというところで次に移るという感じでいいでしょうか?」
異論は出ない。
「なら、アウローラはしばらく休みだな」
レイラは根を掘り出すためにスコップやツルハシを持ち、アウローラに言う。ワイバーンは物を運べても穴を掘るには向かないだろう。
アウローラは指定されたところに幹を運んだ後、隅っこで翼を伸ばし、休憩態勢に入る。それでも周囲への注意は怠らないはずだ。
「俺が掘るか、昼食準備をするか……だけど」
「コクピット内で作業は気の張り方が違うし休憩は必要だろう?」
トリプルJが言うことは一理あるし、食事も重要。
「じゃあ、料理作るのは緊張するけど……ローズマリー、少しもらっていいかな?」
「根っ子ついてるけど……食べるのに使うなら文句は出ないと思うから」
ライルは荷物置き場から水に下の方が漬かっているローズマリーを三本ほど渡した。ユリアンはルカとシールがいる所に向かった。
「さてと、昼食休憩まで進めるか」
トリプルJはスコップで土を掘ろうとしたが、ツルハシの方がよさそうだった。
それから一時間ほどして、昼食休憩となる。
肉ゴロゴロなカレーとローズマリーをアクセントに使ったジャガイモと玉ねぎとベーコンの炒め物だった。
「ローズマリーは強いし色々用途があるからいいと思う」
ユリアンが作ったのも実際にそうだ。ユリアンが言うことがあるからこそ、植物を育てる初心者の三人に薬草園が送ったのだ。
「例えばミントもいいと思う、ただ、繁殖力が強いから、鉢植えをお薦めするよ」
植木鉢の数を想像する依頼人三人。
「結局、ライル……どうしたいかだよね」
「そうだな……」
シールとライルは首をひねった。リシャールはあくまで父たちへの橋渡しだと思っている。最終的に決めるのは、この地に住む人たちだと認識はしていた。
午後の作業が開始される。燃やせそうなものを焼きつつ、その火の番はシールに任せる。ユニットで根を引っこ抜いた後、穴埋めが始まる。ルカが食後の後片付けをした後、穴を埋める作業に加わる。
穴を埋める際、一定の深さのところで腐葉土も混ぜていくことにしたのだ。多少でも、今後の作業が減るように、進むようにと言う配慮だ。
●井戸できる?
日が陰ってくる。
「おおむね更地にはなりましたよね」
ルカは木と穴がない分、何かに活用しやすい土地にはなったとは見た。
「あと、一息なのよ。ローズマリーを植えるなら、あのへんがいいと思うの」
カーミンは水はけのよい場所を指す。
「あとは井戸があるといいのですが」
「……あー、そうよね……結局、植えたとしても水をまけない」
腐葉土もあったので、今回持ってこられた水は足りない気もする。
「ありがとうございました。土も柔らかくなってますし、穴をあけて根っ子付き枝を刺すだけなので後日、私たちでできます」
リシャールはシールとライルに確認しながら言う。撤収準備が必要だ。
「とはいえ……少しだけ試していこう?」
ユリアンはエトワールブランシェの装備を魔導ドリルに変えていた。
「水が出るところまでできるかわからないけれど、試しに掘ってみるくらいならできるよね?」
コクピットに戻ると操作を始めた。垂直の穴を掘るとなると、深さがいる。オファニムの腕の長さ、ドリルの長さでどの程度行けるかはわからない。
「……上がってくる土は湿り気が増えたわね。このままいけば水は出るんじゃないかしら?」
マリィアが告げる。染み出てたまることもありうる。
「ああ、水脈はありそうだな。どうする? 井戸、掘っていくか?」
レイアが問う。
「いえ、暗くなると見えなくなり、安全が担保できません」
リシャールはあくまで安全をとった。
「帰り支度ね」
マリィアは成長したリシャールの頭を思わず撫でる。
「シールも頑張ってるわね」
シールの頭も撫でる。その様子を見て、ライルは肩を震わせる。リシャールとシールが困惑しているからだ、子ども扱いされているのは心外だと。
「帰るなら、私は空から行こう」
レイアはアウローラで空を舞う。
「ローズマリーは連れて帰るの?」
「はい、お願いします」
カーミンはゲー太に水に浸ったローズマリーたちを積む。
「忘れ物はないな?」
トリプルJは片付けが終わった時、声を掛けた。その後、シールの肩に腕を回し、ある助言をした。
「リシャールに対して距離があるよな? ハンターになった時点で、王国の厳格な身分制度から多少は外れる存在になっているんだ。相手が気にしないなら、普通に友誼を結んでやれ、な?」
シールは驚いた顔をして、離れていくトリプルJを見つめた。
「気にはしていないんだけどなぁ……」
どこかよそよそしくなるのは否めない。
「店員としては駄目だ! 頑張らないと」
シールは決意を新たにライルたちを追いかけた。
後日、井戸を作り水の確保でき、ローズマリーを土に挿したと連絡が届く。その上で、今後の方針等を考えるきっかけ、助言をくれたことへの感謝が記されていた。
依頼結果
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サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/04/08 19:29:31 |
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更地にしよう! カーミン・S・フィールズ(ka1559) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2019/04/09 18:01:46 |