ゲスト
(ka0000)
【東幕】憤怒雑魔調査依頼
マスター:赤山優牙

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~5人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2019/04/26 07:30
- 完成日
- 2019/05/04 20:43
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●再出発
狐卯猾を打ち倒し、東方は復興に向けて歩みだした。
だが、東方各地に出現した憤怒残党が壊滅した訳ではない。
特にゲートが開きそうになった天ノ都南側外縁部は負のマテリアルによる汚染が残ったままだ。
「なんでも、幾ら浄化しても、また汚染されるってな」
恵土城から天ノ都に向かう途中の宿場で商人が、知り合いの男性に告げる。
「噂によると憤怒の呪いだとか……」
「場所が場所なだけに、だな。で、目的の物はちゃんと届けられそうなのか?」
「あぁ。恵土城の城下町で落ち合う予定だから。それより、お前、かなり羽振りがいいな」
男性の言葉に商人は恰幅の良い腹をポンと叩いた。
「復興特需ってやつだ。特に天ノ都は何もかも足りねぇからな。保存食はもちろん、酒、衣料品なんか、飛ぶように売れる」
「一部には遷都すべきだって話も聞くが、どこ行っても似たようなもんだしな」
物資以上に足りないのは人手だ。
職人は引っ張りダコだし、僅かでも戦える者も傭兵や用心棒として重宝されている。
当然の事ながら、武具の売れ行きも好調だ。
「戦いが終わったと思ったら、まだまだ憤怒残党の姿がある。幕府も朝廷も忙しくて、討伐に専念できねぇだろうしな」
「街道の安全は最優先に守って欲しいっつーの。もう間道を行くのは疲れたぜ」
この男性、訳あって天ノ都にずっと残っていたのだ。
ハンター達の避難誘導に幸運にも入れてもらい、無事に恵土城へと到着できた。
それからというもの、間道を使って、ちょくちょく天ノ都と恵土城を往復していたのだ。
「さすがに儂の隊商は通れないからな……迂回するのも一苦労だ」
「そういや、ハンターを雇って直線ルートを通るって?」
「そうよ。儲けた金でハンターを雇って、通商ルートの奪還よ」
商人は胸を張った。
金は天下の回りもの。商人は経済をより活性化する為には、街道の安全の確保が第一と考えていた。
だから、私財を出してでも、ハンター達に依頼を出したのだ。
男性は思い出したように、ポンと手を叩いた。
「あぁ……彼奴はどうたい?」
「腕は立つが、まぁ、そのなんだ……愛想がねえのはいつもの事だな」
「押し付けちゃったようで、悪いな」
気にするなと商人は答えた。
ちょっとした縁で男性の知り合いを護衛の一人として雇っているのだ。
「それじゃ、俺は恵土城に行ってくるわ。天ノ都までの商売の無事を祈ってるぜ」
「ありがとな。向こうで落ち着いたら店の方も直しておく。そろそろ、あの店で食べるうどんが恋しいからよ」
「ちげーね」
後頭部を掻きながら男性は応えると、大事そうに壺を抱えて歩き出した。
それを見届けて商人は一人で頷きながら、天ノ都の方角に視線を向けた。
「さて、それじゃ、行こうかの」
きっと、隊商が運ぶ物資が、復興に役立っていると信じる商人であった。
●涅色獣
数台の馬車から成る隊商は、予定通り、天ノ都へと向かっていた。
街道は負のマテリアルの影響で迂回していたが、それを無視して突っ切る。
「この先は、ゲートが開こうとしたという場所の近くを通る……汚染も激しいが、なんとか通れるだろうよ」
商人が険しい顔をしながら、依頼を受けたハンター達に説明している。
今回は護衛兼調査の依頼だ。
最近、噂になっている天ノ都やその周辺に目撃される憤怒雑魔。
“涅色の狐の雑魔”という話らしく、これらは個体差はあるようだが、ほぼ同様の存在だと考えられる以外、詳しくは分かっていない。
そんな訳で、攻撃方法だったり、属性だったり、亜種が存在するのか、調べる事は多い。
「これだけの規模の隊商が通るんだから、向こうも気が付かない訳がないって事だ」
のこのこと出てきた雑魔をハンター達が調べながら討伐するというのが依頼の流れらしい。
問題があるとすれば、どれだけの雑魔がやって来るか分からないという事だろう。
「万が一、敵が多かった場合は、隊商が安全な場所に到達できるまで、足止めしてくれや。商売にならんと報酬も渡せんし、これからの依頼もできんから」
苦笑しながら商人はハンター達に言うと、遠くに見える天ノ都へと指を差した。
商人なりの出発の合図らしい。
ゆっくりと動き出した馬車にハンター達も合わせて歩き出すのであった。
狐卯猾を打ち倒し、東方は復興に向けて歩みだした。
だが、東方各地に出現した憤怒残党が壊滅した訳ではない。
特にゲートが開きそうになった天ノ都南側外縁部は負のマテリアルによる汚染が残ったままだ。
「なんでも、幾ら浄化しても、また汚染されるってな」
恵土城から天ノ都に向かう途中の宿場で商人が、知り合いの男性に告げる。
「噂によると憤怒の呪いだとか……」
「場所が場所なだけに、だな。で、目的の物はちゃんと届けられそうなのか?」
「あぁ。恵土城の城下町で落ち合う予定だから。それより、お前、かなり羽振りがいいな」
男性の言葉に商人は恰幅の良い腹をポンと叩いた。
「復興特需ってやつだ。特に天ノ都は何もかも足りねぇからな。保存食はもちろん、酒、衣料品なんか、飛ぶように売れる」
「一部には遷都すべきだって話も聞くが、どこ行っても似たようなもんだしな」
物資以上に足りないのは人手だ。
職人は引っ張りダコだし、僅かでも戦える者も傭兵や用心棒として重宝されている。
当然の事ながら、武具の売れ行きも好調だ。
「戦いが終わったと思ったら、まだまだ憤怒残党の姿がある。幕府も朝廷も忙しくて、討伐に専念できねぇだろうしな」
「街道の安全は最優先に守って欲しいっつーの。もう間道を行くのは疲れたぜ」
この男性、訳あって天ノ都にずっと残っていたのだ。
ハンター達の避難誘導に幸運にも入れてもらい、無事に恵土城へと到着できた。
それからというもの、間道を使って、ちょくちょく天ノ都と恵土城を往復していたのだ。
「さすがに儂の隊商は通れないからな……迂回するのも一苦労だ」
「そういや、ハンターを雇って直線ルートを通るって?」
「そうよ。儲けた金でハンターを雇って、通商ルートの奪還よ」
商人は胸を張った。
金は天下の回りもの。商人は経済をより活性化する為には、街道の安全の確保が第一と考えていた。
だから、私財を出してでも、ハンター達に依頼を出したのだ。
男性は思い出したように、ポンと手を叩いた。
「あぁ……彼奴はどうたい?」
「腕は立つが、まぁ、そのなんだ……愛想がねえのはいつもの事だな」
「押し付けちゃったようで、悪いな」
気にするなと商人は答えた。
ちょっとした縁で男性の知り合いを護衛の一人として雇っているのだ。
「それじゃ、俺は恵土城に行ってくるわ。天ノ都までの商売の無事を祈ってるぜ」
「ありがとな。向こうで落ち着いたら店の方も直しておく。そろそろ、あの店で食べるうどんが恋しいからよ」
「ちげーね」
後頭部を掻きながら男性は応えると、大事そうに壺を抱えて歩き出した。
それを見届けて商人は一人で頷きながら、天ノ都の方角に視線を向けた。
「さて、それじゃ、行こうかの」
きっと、隊商が運ぶ物資が、復興に役立っていると信じる商人であった。
●涅色獣
数台の馬車から成る隊商は、予定通り、天ノ都へと向かっていた。
街道は負のマテリアルの影響で迂回していたが、それを無視して突っ切る。
「この先は、ゲートが開こうとしたという場所の近くを通る……汚染も激しいが、なんとか通れるだろうよ」
商人が険しい顔をしながら、依頼を受けたハンター達に説明している。
今回は護衛兼調査の依頼だ。
最近、噂になっている天ノ都やその周辺に目撃される憤怒雑魔。
“涅色の狐の雑魔”という話らしく、これらは個体差はあるようだが、ほぼ同様の存在だと考えられる以外、詳しくは分かっていない。
そんな訳で、攻撃方法だったり、属性だったり、亜種が存在するのか、調べる事は多い。
「これだけの規模の隊商が通るんだから、向こうも気が付かない訳がないって事だ」
のこのこと出てきた雑魔をハンター達が調べながら討伐するというのが依頼の流れらしい。
問題があるとすれば、どれだけの雑魔がやって来るか分からないという事だろう。
「万が一、敵が多かった場合は、隊商が安全な場所に到達できるまで、足止めしてくれや。商売にならんと報酬も渡せんし、これからの依頼もできんから」
苦笑しながら商人はハンター達に言うと、遠くに見える天ノ都へと指を差した。
商人なりの出発の合図らしい。
ゆっくりと動き出した馬車にハンター達も合わせて歩き出すのであった。
リプレイ本文
●
ゴトゴトと音を響かせ数台の馬車が天ノ都へと向かう。
その行く手に広がる荒野は、ゲートが開きかけた場所……憤怒に対しハンターと幕府軍が死闘を繰り広げた所だ。
「春~、春~、護衛任務は楽しいな~、野草がたくさん摘み放題~」
呑気に唄っているのは星野 ハナ(ka5852)だった。
もっとも、歌通りの環境には無い。戦闘の余波で負のマテリアルによる汚染を受けて、草一つ生えていないのだ。
この状態を目のあたりにすれば、ハナの歌を軽く笑い飛ばせないだろう。
一面荒野の大地を見つめ、時音 ざくろ(ka1250)が馬車の上で堂々と宣言する。
「商隊を護衛して、襲ってくる雑魔を撃退しつつ、調査する冒険だよ!」
彼が言うように、今回の依頼はそれが目的だ。
“涅色の狐の雑魔”……天ノ都や郊外に姿を現すようになった、この狐雑魔を討伐し、今後の為に調査するのだ。
「東方の復興に少しでも力になれたら、それに狐の雑魔……放っておけない気がするから」
「雑魚はいくら来ても雑魚だって教えてあげますぅ」
ざくろの決心にハナが符の角をなまめかしく噛む。
幾ら沢山出てきても、この面子なら、無限に倒せるのではないかと思う。
「憤怒っていうのはえらく長引くなぁ……ここまで来ると宿怨とかに改名した方が良いんじゃないかね」
聖祈剣の柄の具合を確かめながら、アウレール・V・ブラオラント(ka2531)が呟く。
怨みというものは、いつまで経っても消えにくいもの。
「獄炎も孤卯猾も狩って、なお、狐が湧く。土に狐の匂いが染み付いているのだろうか、それとも……」
“ある可能性”が頭の中に過った。
だが、あくまでもそれは可能性だ。今、分かっている情報の中だけで確定する訳にもいかない。
だからこそ、“ある可能性”を確かめる為に、ここに居る。
商隊の馬車が一度止まる。街道は汚染地域を避けるように遠く迂回するルートとなっているのだ。ここを直線で抜けていく事になる。
「……」
荒野に向かって、銀 真白(ka4128)とミィリア(ka2689)の二人は黙していた。
ここから先、激戦となった地で大切な人を失った。
辛い事だが東方大復興の為には、失われた街道を取り戻す必要がある。
「前に進む為に街道の奪還……よーーっし! ミィリア頑張っちゃうでござる!」
「先の戦いの傷は深く、復興の為の資材を運ぶのは重要な役目だ……心して任にあたろう」
二人は力強く頷くと獲物を掲げるのであった。
●
激しく大地が焼けている場所を商隊は通過する。
雑魔の出現がないかと、ざくろは魔導自転車に乗りながら僅かに先行していた。
「……今の所、敵の姿は見えないかな」
通信機で仲間に告げながら、ざくろは地図に通った道を記入する。
出現場所や襲来場所の詳細が分かれば、それも情報として意味があるからだ。
(何かの企みがあったとしたら……その糸口でも見つけられれば……)
そんな風に思いながら、ざくろは周囲を確りと警戒し続けるのであった。
先行する仲間の背を確認しつつ、アウレールは双眼鏡を覗き込んでいた。
「湧き出てくるなら、荒野の岩陰などからか」
恐らくは死角になる所からだろうと想定する。
そうでなければ、例えば、空を飛んでいればすぐに発見できるだろう。
「あまり離れすぎないように」
思った以上の汚染に真っ青な顔の商人がアウレールの声かけに頷いた。
スキルの効果範囲は限られているのだ。いざ使った時に守れないのでは依頼を受けた意味がない。
馬車列の前をざくろとアウレールの二人が守り、後方ではハナが変わらず唄っている。
「歌を歌ってれば、よっぽどお腹空いた野生動物じゃなきゃ襲ってきませんよぅ」
と言っても、汚染が酷くて野生動物の姿は全く見えないが。
ついでに言うと、盗賊か野盗も、こんな環境には長く居られないだろう。
「これで来るのは歪虚ですからどんと来いですぅ」
むしろ、早く来いと言わんばかりに符の準備は万全だ。
五色光符陣は多くの符を消費するが、携帯品も合わせれば50枚近くにはなる。
一方、馬車列の左側を守っている真白は矢筒の位置を確認していた。
万が一、多方向から攻められても、届かない敵には弓矢で攻撃するつもりなのだ。
「護衛の人には右側に回って貰ったが……」
商人が専属で雇っているという護衛の傭兵の姿を真白は思い出していた。
長さの揃わない灰色髪の痩せた男性だった。
「戦いになれば、どんな人物なのか、分かるかもしれない」
そう独り言を呟いた。
背丈や髪色から行方不明である立花院 紫草(kz0126)ではないかと一瞬思ったからだ。
チラリと車列の向こう側に視線を向けた。今も、ミィリアと“会話”しているはずなのだから。
「得意な戦法とか、あるのでござろう?」
ワクワクしながら尋ねるミィリアに護衛の男は首を横に振った。
素顔は分からない。鼻より上を覆う特殊な紋様が刻まれた仮面の為だ。
「え? だって、その剣、なんか良さげな剣にみえるでござるし」
護衛の男の腰に吊るしてあるのは直剣だった。それも西方世界の様式であり、東方の傭兵が持つには珍しい。
盾も東方では見ないものだ。というか、西方諸国でも見た事のないデザインをしていた。白板のような盾だった。
この謎の剣士に興味津々といった様相のミィリアが次の質問をしようとした時だった。いよいよ、雑魔が出現したとざくろから連絡が入った。
●
正面よりもやや右側から、わらわらと“涅色の狐の雑魔”が向かって来る。
アウレールが一歩進むと商人や使用人達に呼び掛けた。
「手筈通り、集まれ。侵入不能の結界を構築する」
「よ、よろしくお願いしますー」
馬車に損害が出る可能性はあるが人命が最優先だ。
それに、どうも、雑魔は馬車ではなく、明らか、ハンターに向かって来ていた。
「お前達の相手は、ざくろだ!」
魔導自転車の後輪を滑らせ土煙をあげながら、ざくろが機導術を放つ。
扇状に赤白く輝く無数の熱線が、次々と狐雑魔を直撃していくが――。
「あまり効いてないという事は、火属性を持つのかな」
何匹かはざくろに向かい、それ以外の狐雑魔は別のハンターへと突撃してくる。
その様子にアウレールは眉をひそめた。
「攻撃対象を選ぶっていうより、まるで野生の獣だな。組織的な動きも見られない」
狐雑魔の大きさは小さいものから人よりもやや大きいものまでいるようだが、大きさの違いは、力や耐久力の差であるようで、それ以外、特別なものはなさそうだ。
幾体かの群れに向かって符が飛翔して光り輝く攻撃結界を作り出した。
「涅色って僅かに緑がかった黒、川底の泥のような黒土のことですよね」
五色光符陣を放ったのはハナだった。
遠吠えのような叫びをあげる狐雑魔。その1発で既に瀕死のようだ。
「今までの憤怒は赤くて溶岩な感じでしたけどぉ、今度は暗く秘めた憤怒ってことでしょうかぁ?」
狐雑魔の必死さをみるに、暗く秘めたという表現は適切なのかもしれない。
押し込めた何かが狂って、この世界に放たれたように見える。
「ミィリア殿! 打ち合わせ通りに!」
「分かってでござるよ!」
真白がマテリアルを燃やして炎のオーラを噴出させると、ミィリアがマテリアルを光に変えて全身から放出する。
共に“注意”を与えるバッドステータスだ。違いがあるとすれば、ミィリアが使ったものは、ある程度の知能が無いと効果が無い。
「効果の程を見るに、どうやら、知能は無きに等しいか」
矢を放つと素早く弓を背負って、蒼機槍を構える。
引き付けた以上、接近戦になるからだ。
「効果なくても、結局、ミィリアに向かって来るのでござる!」
大太刀を遠慮なく振り回す。
敵の襲撃がこれだけでは終わらない可能性があるからだ。
広範囲を一気に薙ぎ払うにはこの技が――という所でミィリアは気が付いた。真横に剣士が居た事を。
剣士はミィリアの薙ぎ払いを苦も無く避けると、平然と直剣を操っていた。
その後、襲撃は2回、3回と続いた。
それでも、アウレールのディヴァインウィルやガウスジェイルのおかげで、商人達は無事だった。
噛みついてきた狐雑魔を斬霊剣で強化された聖祈剣で打ち払う。
「やはり、か……」
物理攻撃ではなく魔法による攻撃の方が通用するのだ。
それは物理攻撃が敵に通じにくいという事ではない。
幾度も斬りつけていると武器の切れ味が落ちていくのだ。鈍器であれば、打撃面が脆くなっていくかもしれない。
「これだけ戦えば、そういった事象も分かってくるという事だ」
敵の正体については戦闘後に推測する事にし、アウレールは聖祈剣を振り続ける。
ざくろも前線で戦い続けていた。先行している事もあり、向かって来る敵の数も多かった。
「また、噛みつかれた……けど、スキル回数にはまだ余裕があるから!」
別方向から迫って来た狐雑魔を盾で受け止めつつ攻性防壁で弾き飛ばすと、噛みついている狐雑魔を魔導剣の剣先で貫く。
狐雑魔に噛まれるとマテリアルを吸われるのか、スキルを使用するマテリアルが減少するのだ。
「フリージングレイ……からの、真烈風薙ぎ払い!」
剣先から機導術を放つと、一歩踏み込み、近寄る狐雑魔を剣で薙ぎ払った。
ギャンギャン叫びながら狐雑魔共。集まった所で合体して巨大化する事はなさそうだ。
後衛であるハナにも狐雑魔は集まっていた。
「呪詛返し最高ですぅ」
接近戦になっても、彼女は慌てず、符術を行使していた。
狐雑魔の突撃は精神汚染があったが、ハナには影響が無かった。もっとも、敵にも影響のない精神汚染だったが。
「なにか、バッドステータスな攻撃がてんこもりって気がしませんかぁ?」
「明らかに憤怒に属している雑魔という事です」
ハナの疑問に真白が答える。
しかも、これらの能力を、真白は“知っていた”。
真白だけではない。仲間達も気が付いているだろう。この能力は――。
「“獄炎の影”と類似する」
恐らく、ハナが使っていた攻撃魔法も影響があったはずだ。
確かめる前に狐雑魔が消滅してしまうので、分かりにくいが……。
「たぁぁぁぁ! で、ござるぅ!」
その時、ミィリアの反撃の技が狐雑魔の一体を貫いた。
狐雑魔のもふもふとした突撃を甘んじて受けながら繰り出す反撃は強烈だった。
「それにしても、謎の剣士さん……強いでござる」
チラっと剣士を盗み見る。
敵の攻撃を盾で受け流し、剣先を生物だったら急所の所へと的確に突いていた。
その捌きは並みの剣士でない事は確かだと思うミィリアであった。
●
結局、三度あった襲撃は特に大きな損害なく対処できた。
討伐した数は軽く100体を越え、商人は手を叩いて喜んでいた。
「どこから湧いて出てくるのかなと思っていましたけど」
「……穴が開いてるなんて……とりあえず、塞いでしまおうかな」
ハナとざくろの前には、大きめの穴がぽっかりと開いており、暗闇へと誘っていた。
付近の岩や石をせっせと集めたり、馬車から提供を受けた建材などを集めて、二人は穴を塞ぐ。
「この下ってどうなってるんだろう?」
「噂によると、枯れた龍脈かもしれないとか」
ざくろの疑問にハナは首を傾げた。
天ノ都の地下龍脈は負のマテリアルによって汚染されているという。
都でも“涅色の狐の雑魔”の姿が見られる時があるというので、今回の事と無関係ではないだろう。
何か嫌な予感がする中、二人は穴を封じる作業を続けるのであった。
馬車から崩れ降りた荷物を戻しながら、アウレールは謎の剣士を観察していた。
只者でない事は戦闘中の動きから見て分かった。そんな人物が隊商護衛とは、違和感ありまくりだ。
「貴公は言えない身元の者か?」
その問いに剣士は首を振る。
先ほどから自ら声を発しない所も気になる。
「疑うわけではないが、少し素性を聞いてみたい……のは、私だけではないようだが」
アウレールは真白とミィリアの二人に視線を向ける。
二人共、うんうんと頷いた。
「どこかで会った事はないだろうか?」
真白の問いに、やはり、謎の剣士は声を出さずに首を振って答えた。
これまでのやりとりから、ミィリアがポンと手を叩く。
「もしかして、声が出ないのでござるか?」
――コクリ。
謎の剣士は頷いた。どうやら、言葉を発する事は出来ないようだ。
これでは人物の正体を確かめようにも、分からない。
(マテリアルの奔流に巻き込まれた影響で記憶がない等あるやも知れぬと思ったが……)
もしかして、紫草かもしれない……が、これでは判断できない。
間違った情報を朝廷や幕府に伝えても落胆させるだけだし、無関係だったら剣士に迷惑をかけてしまう。
悩む真白とは対照的にミィリアは明るく剣士に接していた。
「こういう時は筆談でござるよ!」
そんな台詞に剣士は持っていた白板盾に書き始めた。
『ネムレス』
「名前かな? よろしくでござる、ネムレスさん!」
笑顔で差し出したミィリアの手を剣士は握る。
無意識なものかもしれないが、その口元が僅かに緩んだのを、アウレールは見逃さなかった。
(それにしても『名無し』とはね)
気になるのが剣士の顔半分を覆う仮面だ。
だが“仮名”を名乗った上で素顔を明らかにする者はいないだろう。
(あの紋様……どこかで見たような……)
真白が仮面に描かれている紋様を思い出そうとしていた。
魔法的な力を持つ仮面かもしれないが、それ以上にそれが何かを思い出す事は出来なかった。
ざくろとハナが穴を塞いで戻って来た。
これだけ広い荒野だ。他にも穴があるかもしれないが……。
「とりあえず埋めてきたけど、中は負のマテリアルで汚染されているから、あそこから入るのは危ないかも」
少し疲れたようでざくろがそう告げる。
中に入れれば、浄化作業もできそうだが……。
「地下龍脈と関係があるのか調べる必要性が今後、あるかもですぅ」
「それは幕府に儂から報告しておきますわ」
ハナの言葉に商人が答えた。
穴を封じれば、狐雑魔も用意に出て来ないだろう。そうなれば、街道を再び使えるようになるはずだ。
隊商を護衛し“涅色の狐の雑魔”を討伐調査する依頼を、ハンター達は無事に達成した。
この結果、狐雑魔が“獄炎の影”と似たような能力を持つ事、地下から出現している事が分かったのであった。
おしまい。
●
天ノ都に到着した隊商の馬車から荷物を降ろす剣士。
「どうだ、なんか思い出したか?」
商人の台詞に剣士は首を横に振った。
以前、この都に居たらしいが、全く何も思い出せなかった。
「まぁ、慌てる事はねぇか。美味しいうどんでも食えば、なにか思い出すかもしれねぇしな。その為には復興を頑張らないと」
トントンと背を叩かれ、剣士は頷く。
自分の記憶が戻らなくても、この地の人々が笑顔になるのであれば、それで良い――剣士はそう思うのであった。
ゴトゴトと音を響かせ数台の馬車が天ノ都へと向かう。
その行く手に広がる荒野は、ゲートが開きかけた場所……憤怒に対しハンターと幕府軍が死闘を繰り広げた所だ。
「春~、春~、護衛任務は楽しいな~、野草がたくさん摘み放題~」
呑気に唄っているのは星野 ハナ(ka5852)だった。
もっとも、歌通りの環境には無い。戦闘の余波で負のマテリアルによる汚染を受けて、草一つ生えていないのだ。
この状態を目のあたりにすれば、ハナの歌を軽く笑い飛ばせないだろう。
一面荒野の大地を見つめ、時音 ざくろ(ka1250)が馬車の上で堂々と宣言する。
「商隊を護衛して、襲ってくる雑魔を撃退しつつ、調査する冒険だよ!」
彼が言うように、今回の依頼はそれが目的だ。
“涅色の狐の雑魔”……天ノ都や郊外に姿を現すようになった、この狐雑魔を討伐し、今後の為に調査するのだ。
「東方の復興に少しでも力になれたら、それに狐の雑魔……放っておけない気がするから」
「雑魚はいくら来ても雑魚だって教えてあげますぅ」
ざくろの決心にハナが符の角をなまめかしく噛む。
幾ら沢山出てきても、この面子なら、無限に倒せるのではないかと思う。
「憤怒っていうのはえらく長引くなぁ……ここまで来ると宿怨とかに改名した方が良いんじゃないかね」
聖祈剣の柄の具合を確かめながら、アウレール・V・ブラオラント(ka2531)が呟く。
怨みというものは、いつまで経っても消えにくいもの。
「獄炎も孤卯猾も狩って、なお、狐が湧く。土に狐の匂いが染み付いているのだろうか、それとも……」
“ある可能性”が頭の中に過った。
だが、あくまでもそれは可能性だ。今、分かっている情報の中だけで確定する訳にもいかない。
だからこそ、“ある可能性”を確かめる為に、ここに居る。
商隊の馬車が一度止まる。街道は汚染地域を避けるように遠く迂回するルートとなっているのだ。ここを直線で抜けていく事になる。
「……」
荒野に向かって、銀 真白(ka4128)とミィリア(ka2689)の二人は黙していた。
ここから先、激戦となった地で大切な人を失った。
辛い事だが東方大復興の為には、失われた街道を取り戻す必要がある。
「前に進む為に街道の奪還……よーーっし! ミィリア頑張っちゃうでござる!」
「先の戦いの傷は深く、復興の為の資材を運ぶのは重要な役目だ……心して任にあたろう」
二人は力強く頷くと獲物を掲げるのであった。
●
激しく大地が焼けている場所を商隊は通過する。
雑魔の出現がないかと、ざくろは魔導自転車に乗りながら僅かに先行していた。
「……今の所、敵の姿は見えないかな」
通信機で仲間に告げながら、ざくろは地図に通った道を記入する。
出現場所や襲来場所の詳細が分かれば、それも情報として意味があるからだ。
(何かの企みがあったとしたら……その糸口でも見つけられれば……)
そんな風に思いながら、ざくろは周囲を確りと警戒し続けるのであった。
先行する仲間の背を確認しつつ、アウレールは双眼鏡を覗き込んでいた。
「湧き出てくるなら、荒野の岩陰などからか」
恐らくは死角になる所からだろうと想定する。
そうでなければ、例えば、空を飛んでいればすぐに発見できるだろう。
「あまり離れすぎないように」
思った以上の汚染に真っ青な顔の商人がアウレールの声かけに頷いた。
スキルの効果範囲は限られているのだ。いざ使った時に守れないのでは依頼を受けた意味がない。
馬車列の前をざくろとアウレールの二人が守り、後方ではハナが変わらず唄っている。
「歌を歌ってれば、よっぽどお腹空いた野生動物じゃなきゃ襲ってきませんよぅ」
と言っても、汚染が酷くて野生動物の姿は全く見えないが。
ついでに言うと、盗賊か野盗も、こんな環境には長く居られないだろう。
「これで来るのは歪虚ですからどんと来いですぅ」
むしろ、早く来いと言わんばかりに符の準備は万全だ。
五色光符陣は多くの符を消費するが、携帯品も合わせれば50枚近くにはなる。
一方、馬車列の左側を守っている真白は矢筒の位置を確認していた。
万が一、多方向から攻められても、届かない敵には弓矢で攻撃するつもりなのだ。
「護衛の人には右側に回って貰ったが……」
商人が専属で雇っているという護衛の傭兵の姿を真白は思い出していた。
長さの揃わない灰色髪の痩せた男性だった。
「戦いになれば、どんな人物なのか、分かるかもしれない」
そう独り言を呟いた。
背丈や髪色から行方不明である立花院 紫草(kz0126)ではないかと一瞬思ったからだ。
チラリと車列の向こう側に視線を向けた。今も、ミィリアと“会話”しているはずなのだから。
「得意な戦法とか、あるのでござろう?」
ワクワクしながら尋ねるミィリアに護衛の男は首を横に振った。
素顔は分からない。鼻より上を覆う特殊な紋様が刻まれた仮面の為だ。
「え? だって、その剣、なんか良さげな剣にみえるでござるし」
護衛の男の腰に吊るしてあるのは直剣だった。それも西方世界の様式であり、東方の傭兵が持つには珍しい。
盾も東方では見ないものだ。というか、西方諸国でも見た事のないデザインをしていた。白板のような盾だった。
この謎の剣士に興味津々といった様相のミィリアが次の質問をしようとした時だった。いよいよ、雑魔が出現したとざくろから連絡が入った。
●
正面よりもやや右側から、わらわらと“涅色の狐の雑魔”が向かって来る。
アウレールが一歩進むと商人や使用人達に呼び掛けた。
「手筈通り、集まれ。侵入不能の結界を構築する」
「よ、よろしくお願いしますー」
馬車に損害が出る可能性はあるが人命が最優先だ。
それに、どうも、雑魔は馬車ではなく、明らか、ハンターに向かって来ていた。
「お前達の相手は、ざくろだ!」
魔導自転車の後輪を滑らせ土煙をあげながら、ざくろが機導術を放つ。
扇状に赤白く輝く無数の熱線が、次々と狐雑魔を直撃していくが――。
「あまり効いてないという事は、火属性を持つのかな」
何匹かはざくろに向かい、それ以外の狐雑魔は別のハンターへと突撃してくる。
その様子にアウレールは眉をひそめた。
「攻撃対象を選ぶっていうより、まるで野生の獣だな。組織的な動きも見られない」
狐雑魔の大きさは小さいものから人よりもやや大きいものまでいるようだが、大きさの違いは、力や耐久力の差であるようで、それ以外、特別なものはなさそうだ。
幾体かの群れに向かって符が飛翔して光り輝く攻撃結界を作り出した。
「涅色って僅かに緑がかった黒、川底の泥のような黒土のことですよね」
五色光符陣を放ったのはハナだった。
遠吠えのような叫びをあげる狐雑魔。その1発で既に瀕死のようだ。
「今までの憤怒は赤くて溶岩な感じでしたけどぉ、今度は暗く秘めた憤怒ってことでしょうかぁ?」
狐雑魔の必死さをみるに、暗く秘めたという表現は適切なのかもしれない。
押し込めた何かが狂って、この世界に放たれたように見える。
「ミィリア殿! 打ち合わせ通りに!」
「分かってでござるよ!」
真白がマテリアルを燃やして炎のオーラを噴出させると、ミィリアがマテリアルを光に変えて全身から放出する。
共に“注意”を与えるバッドステータスだ。違いがあるとすれば、ミィリアが使ったものは、ある程度の知能が無いと効果が無い。
「効果の程を見るに、どうやら、知能は無きに等しいか」
矢を放つと素早く弓を背負って、蒼機槍を構える。
引き付けた以上、接近戦になるからだ。
「効果なくても、結局、ミィリアに向かって来るのでござる!」
大太刀を遠慮なく振り回す。
敵の襲撃がこれだけでは終わらない可能性があるからだ。
広範囲を一気に薙ぎ払うにはこの技が――という所でミィリアは気が付いた。真横に剣士が居た事を。
剣士はミィリアの薙ぎ払いを苦も無く避けると、平然と直剣を操っていた。
その後、襲撃は2回、3回と続いた。
それでも、アウレールのディヴァインウィルやガウスジェイルのおかげで、商人達は無事だった。
噛みついてきた狐雑魔を斬霊剣で強化された聖祈剣で打ち払う。
「やはり、か……」
物理攻撃ではなく魔法による攻撃の方が通用するのだ。
それは物理攻撃が敵に通じにくいという事ではない。
幾度も斬りつけていると武器の切れ味が落ちていくのだ。鈍器であれば、打撃面が脆くなっていくかもしれない。
「これだけ戦えば、そういった事象も分かってくるという事だ」
敵の正体については戦闘後に推測する事にし、アウレールは聖祈剣を振り続ける。
ざくろも前線で戦い続けていた。先行している事もあり、向かって来る敵の数も多かった。
「また、噛みつかれた……けど、スキル回数にはまだ余裕があるから!」
別方向から迫って来た狐雑魔を盾で受け止めつつ攻性防壁で弾き飛ばすと、噛みついている狐雑魔を魔導剣の剣先で貫く。
狐雑魔に噛まれるとマテリアルを吸われるのか、スキルを使用するマテリアルが減少するのだ。
「フリージングレイ……からの、真烈風薙ぎ払い!」
剣先から機導術を放つと、一歩踏み込み、近寄る狐雑魔を剣で薙ぎ払った。
ギャンギャン叫びながら狐雑魔共。集まった所で合体して巨大化する事はなさそうだ。
後衛であるハナにも狐雑魔は集まっていた。
「呪詛返し最高ですぅ」
接近戦になっても、彼女は慌てず、符術を行使していた。
狐雑魔の突撃は精神汚染があったが、ハナには影響が無かった。もっとも、敵にも影響のない精神汚染だったが。
「なにか、バッドステータスな攻撃がてんこもりって気がしませんかぁ?」
「明らかに憤怒に属している雑魔という事です」
ハナの疑問に真白が答える。
しかも、これらの能力を、真白は“知っていた”。
真白だけではない。仲間達も気が付いているだろう。この能力は――。
「“獄炎の影”と類似する」
恐らく、ハナが使っていた攻撃魔法も影響があったはずだ。
確かめる前に狐雑魔が消滅してしまうので、分かりにくいが……。
「たぁぁぁぁ! で、ござるぅ!」
その時、ミィリアの反撃の技が狐雑魔の一体を貫いた。
狐雑魔のもふもふとした突撃を甘んじて受けながら繰り出す反撃は強烈だった。
「それにしても、謎の剣士さん……強いでござる」
チラっと剣士を盗み見る。
敵の攻撃を盾で受け流し、剣先を生物だったら急所の所へと的確に突いていた。
その捌きは並みの剣士でない事は確かだと思うミィリアであった。
●
結局、三度あった襲撃は特に大きな損害なく対処できた。
討伐した数は軽く100体を越え、商人は手を叩いて喜んでいた。
「どこから湧いて出てくるのかなと思っていましたけど」
「……穴が開いてるなんて……とりあえず、塞いでしまおうかな」
ハナとざくろの前には、大きめの穴がぽっかりと開いており、暗闇へと誘っていた。
付近の岩や石をせっせと集めたり、馬車から提供を受けた建材などを集めて、二人は穴を塞ぐ。
「この下ってどうなってるんだろう?」
「噂によると、枯れた龍脈かもしれないとか」
ざくろの疑問にハナは首を傾げた。
天ノ都の地下龍脈は負のマテリアルによって汚染されているという。
都でも“涅色の狐の雑魔”の姿が見られる時があるというので、今回の事と無関係ではないだろう。
何か嫌な予感がする中、二人は穴を封じる作業を続けるのであった。
馬車から崩れ降りた荷物を戻しながら、アウレールは謎の剣士を観察していた。
只者でない事は戦闘中の動きから見て分かった。そんな人物が隊商護衛とは、違和感ありまくりだ。
「貴公は言えない身元の者か?」
その問いに剣士は首を振る。
先ほどから自ら声を発しない所も気になる。
「疑うわけではないが、少し素性を聞いてみたい……のは、私だけではないようだが」
アウレールは真白とミィリアの二人に視線を向ける。
二人共、うんうんと頷いた。
「どこかで会った事はないだろうか?」
真白の問いに、やはり、謎の剣士は声を出さずに首を振って答えた。
これまでのやりとりから、ミィリアがポンと手を叩く。
「もしかして、声が出ないのでござるか?」
――コクリ。
謎の剣士は頷いた。どうやら、言葉を発する事は出来ないようだ。
これでは人物の正体を確かめようにも、分からない。
(マテリアルの奔流に巻き込まれた影響で記憶がない等あるやも知れぬと思ったが……)
もしかして、紫草かもしれない……が、これでは判断できない。
間違った情報を朝廷や幕府に伝えても落胆させるだけだし、無関係だったら剣士に迷惑をかけてしまう。
悩む真白とは対照的にミィリアは明るく剣士に接していた。
「こういう時は筆談でござるよ!」
そんな台詞に剣士は持っていた白板盾に書き始めた。
『ネムレス』
「名前かな? よろしくでござる、ネムレスさん!」
笑顔で差し出したミィリアの手を剣士は握る。
無意識なものかもしれないが、その口元が僅かに緩んだのを、アウレールは見逃さなかった。
(それにしても『名無し』とはね)
気になるのが剣士の顔半分を覆う仮面だ。
だが“仮名”を名乗った上で素顔を明らかにする者はいないだろう。
(あの紋様……どこかで見たような……)
真白が仮面に描かれている紋様を思い出そうとしていた。
魔法的な力を持つ仮面かもしれないが、それ以上にそれが何かを思い出す事は出来なかった。
ざくろとハナが穴を塞いで戻って来た。
これだけ広い荒野だ。他にも穴があるかもしれないが……。
「とりあえず埋めてきたけど、中は負のマテリアルで汚染されているから、あそこから入るのは危ないかも」
少し疲れたようでざくろがそう告げる。
中に入れれば、浄化作業もできそうだが……。
「地下龍脈と関係があるのか調べる必要性が今後、あるかもですぅ」
「それは幕府に儂から報告しておきますわ」
ハナの言葉に商人が答えた。
穴を封じれば、狐雑魔も用意に出て来ないだろう。そうなれば、街道を再び使えるようになるはずだ。
隊商を護衛し“涅色の狐の雑魔”を討伐調査する依頼を、ハンター達は無事に達成した。
この結果、狐雑魔が“獄炎の影”と似たような能力を持つ事、地下から出現している事が分かったのであった。
おしまい。
●
天ノ都に到着した隊商の馬車から荷物を降ろす剣士。
「どうだ、なんか思い出したか?」
商人の台詞に剣士は首を横に振った。
以前、この都に居たらしいが、全く何も思い出せなかった。
「まぁ、慌てる事はねぇか。美味しいうどんでも食えば、なにか思い出すかもしれねぇしな。その為には復興を頑張らないと」
トントンと背を叩かれ、剣士は頷く。
自分の記憶が戻らなくても、この地の人々が笑顔になるのであれば、それで良い――剣士はそう思うのであった。
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護衛相談 銀 真白(ka4128) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2019/04/25 12:29:48 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/04/22 13:01:57 |