ゲスト
(ka0000)
傾星の清算
マスター:鷹羽柊架

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2019/04/27 09:00
- 完成日
- 2019/05/02 00:09
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
フォニケやテト達がウルサマヨル族から戻り、アルフェッカへ報告しようと執務室に入る。
先客がおり、偵察に出ていた部族なき部族のメンバーがいた。
「山羊の兄様、なにかありましたかにゃ?」
テトが尋ねると、山羊は地図を広げる。
「奴らの次の潜伏先を補足した。恐らくここだ」
彼が指し示す場所を見ていたカペラはその周囲の地形を確認して「あっ」と声を上げた。
カペラが山羊にその場所の形状を確認する。
「よく知っているな。そこは次の潜伏先から歩いて二日くらいの所にある」
「ここのあたり、フォニケさんとシェダルさんの部族が暮らしてた場所なのよ」
感嘆の声を上げる山羊にカペラが返す。
「この辺り、住民は全て避難してますにゃ。戦いにはうってつけですにゃ」
テトが言えば、アルフェッカが頷く。
「アクベンスもいるとすればここだろう」
とんとん、とアルフェッカが次の潜伏地を指で叩いた。
「ここで終わらせる。いいね、フォニケちゃん」
アルフェッカが言えば、フォニケは目を丸くする。
「いいの?」
「きっと、ファリフちゃんが守ってくれるよ」
匙を投げたアルフェッカにフォニケとカペラが笑い合う。
当のファリフはアクベンス討伐に向かうのは分かっている。
保護者なアルフェッカとシェダルがフォニケを守るのだろうともカペラは思っている。
「逃げ出した場所で終らせるわ。そして、貴方のお姉様のこともね」
真っすぐ見つめてきたフォニケにアルフェッカは驚いたように目を瞬くと、すぐに笑みを浮かべる。
「確かに、君と姉は似ている。けど、姉に似てるから君に気をかけていたわけじゃない」
「悪かったわね、世話の焼ける部下で」
頬を含まらせるフォニケにアルフェッカは笑った。
●
ハンターオフィスに要請を出した後、バタバタと準備が始まる。
準備中のある夜のこと。
テトはドワーフ工房で剣の手入れを頼んでいた。
彼女の剣はドワーフ工房で作られた特注品。黒い刀身が光に反射して蛇の彫り物が浮かぶ。
先代リーダーのコードネームを表した剣だ。
クレムトに頼んだ後、テトは工房の隅でぼうっとしていた。
「テトちゃん?」
驚いたように声をかけるのはフォニケだ。
「にゃぁ?」
「まるで、猫のようね。驚いたわ」
くすりと笑うフォニケはクレムトのリーダーに持っていた伝票を押し付けに行く。
ひと悶着のあと、フォニケは手ぶらでテトの方へ戻る。
「剣の手入れ、頼んだの?」
「にゃぁ。餅は餅屋ですにゃぁ」
目を細めるテトにフォニケは「おさぼりね」と笑う。
「今回、タットルの捕縛とアクベンスの討伐とタットルに捕まってるエーノス族の救出よね? テトちゃん、タットルの方に行くって聞いたけど」
本気? と問うようにフォニケが言えば、テトは「にゃぁ」と鳴く。
「奴らには仲間を殺されましたにゃ。ルックスに至っては一族、そして生き残りもまた、恥辱を味わっていますにゃ……テトは、リーダーとして奴らを放ってはおけませんにゃ」
あどけない表情から一転し、金の瞳に暗い色が点る瞬間をフォニケは見た。
「テトちゃん……」
そっとフォニケが声をかけると、テトは廊下へと出ていく。彼女を誘うように。
「……テトにとって、部族なき部族は家族ですにゃ……テトは、家族を手にかけましたにゃ。向こうはそう思ってなくても……」
以前、テトは部族なき部族の裏切り者を制裁し、リーダーとなった経緯がある。
部族として何も変わっていないと謗られても彼女はそうした。
正しいことをしたとテトは思っていない。
生かすわけにはいかなかったから。
彼の望みだから。
決断した理由は『家族』の為に。
「テトはどう言われようとも考えを曲げることは出来ませんにゃ」
窓の外を見上げると、薄雲にかかった満月が姿を現し、二人を照らす。
「フォニケはどう思いましたかにゃ? アケルナルとウルサマヨル族、ウルサミノル族の関係を」
先日、アケルナルの故郷を追い、ウルサミノル族の生き残りとの接触を図った。
アケルナルの出身の部族が確定したのと同時に、フォニケの出自も分かってしまった。
ドワーフ工房の技師、フォニケはリアルブルーからの転生者の三世代目。ウルサミノル族の中では地位がある者の娘だった。
「そぉね……記憶がないからピンとこないんだけど。なんで私を攫ったんだろうって思ったわ。私も殺せばよかったのにって思うのよね」
フォニケにとって、アケルナルは恐怖の存在だ。
彼と共にいた間の記憶は真っ暗で怖いという感覚しか覚えてなかった。
記憶があるのはカシオペア族として生きていた頃から。
「そういや、古い記憶はどこからですかにゃ?」
「ん? カシオペア族に保護されて、シェダルが食べさせてくれたお肉が美味しかったって記憶よ」
肉の執着はそこからかと、テトは納得した。
「要塞都市郊外には売春宿などの風俗街があったのは知ってますかにゃ?」
シェダルの名前が出て、テトがさっくりと話を変えた。
「ええ、確か……ヴェルナーさん達が来てから、その辺りは寂れたと聞いたけど」
「前の要塞管理官の側近で、売春婦を身請けしようと横領した輩がいたとか」
すぅ……とテトは目を細める。
見透かすような瞳にフォニケは視線をそらす。
「ええ、今は収監されているけど」
「その売春婦はタットルが関与したところだと聞きますにゃ」
ぴくり、とフォニケが肩を震わせ、前を向けばテトと視線がかち合う。
「その側近、悪い態度とは裏腹に、よく弱者を助けていたという話も聞きますにゃ」
「ムルジムさん、ね。危ないところをよく助けて貰ってたわ……あの頃の帝国の人で嫌いじゃない人だったわ……」
優しく微笑むフォニケは脳裏に浮かぶ記憶を見ている。
「で、やっぱりその側近の事、好きだったのですかにゃ」
じーっ、とテトがフォニケに詰め寄ると、珍しくフォニケが顔を赤くした。
寧ろ、テトは初めて見る。
「え! 昔の話よ! フラれてるし! 今真面目な話よね!?」
「真面目な話ですにゃー! アルフェッカとシェダルとはどーゆー仲ですかにゃー!?」
「はー!? なんでその二人がーー!?」
「部族なき部族の情報網を甘く見ちゃいけませんにゃ。いつもいつもテトをとっかえひっかえ着替えて遊んだりしてるんですからこれくらいの話、聞きたいですにゃーん!」
「ちょっとまってーーーー!?」
二人はクレムトから怒られるまで廊下でぎゃいぎゃい騒いでいた。
月は満ちた。
すべき事を果たす為、皆が動き出す。
先客がおり、偵察に出ていた部族なき部族のメンバーがいた。
「山羊の兄様、なにかありましたかにゃ?」
テトが尋ねると、山羊は地図を広げる。
「奴らの次の潜伏先を補足した。恐らくここだ」
彼が指し示す場所を見ていたカペラはその周囲の地形を確認して「あっ」と声を上げた。
カペラが山羊にその場所の形状を確認する。
「よく知っているな。そこは次の潜伏先から歩いて二日くらいの所にある」
「ここのあたり、フォニケさんとシェダルさんの部族が暮らしてた場所なのよ」
感嘆の声を上げる山羊にカペラが返す。
「この辺り、住民は全て避難してますにゃ。戦いにはうってつけですにゃ」
テトが言えば、アルフェッカが頷く。
「アクベンスもいるとすればここだろう」
とんとん、とアルフェッカが次の潜伏地を指で叩いた。
「ここで終わらせる。いいね、フォニケちゃん」
アルフェッカが言えば、フォニケは目を丸くする。
「いいの?」
「きっと、ファリフちゃんが守ってくれるよ」
匙を投げたアルフェッカにフォニケとカペラが笑い合う。
当のファリフはアクベンス討伐に向かうのは分かっている。
保護者なアルフェッカとシェダルがフォニケを守るのだろうともカペラは思っている。
「逃げ出した場所で終らせるわ。そして、貴方のお姉様のこともね」
真っすぐ見つめてきたフォニケにアルフェッカは驚いたように目を瞬くと、すぐに笑みを浮かべる。
「確かに、君と姉は似ている。けど、姉に似てるから君に気をかけていたわけじゃない」
「悪かったわね、世話の焼ける部下で」
頬を含まらせるフォニケにアルフェッカは笑った。
●
ハンターオフィスに要請を出した後、バタバタと準備が始まる。
準備中のある夜のこと。
テトはドワーフ工房で剣の手入れを頼んでいた。
彼女の剣はドワーフ工房で作られた特注品。黒い刀身が光に反射して蛇の彫り物が浮かぶ。
先代リーダーのコードネームを表した剣だ。
クレムトに頼んだ後、テトは工房の隅でぼうっとしていた。
「テトちゃん?」
驚いたように声をかけるのはフォニケだ。
「にゃぁ?」
「まるで、猫のようね。驚いたわ」
くすりと笑うフォニケはクレムトのリーダーに持っていた伝票を押し付けに行く。
ひと悶着のあと、フォニケは手ぶらでテトの方へ戻る。
「剣の手入れ、頼んだの?」
「にゃぁ。餅は餅屋ですにゃぁ」
目を細めるテトにフォニケは「おさぼりね」と笑う。
「今回、タットルの捕縛とアクベンスの討伐とタットルに捕まってるエーノス族の救出よね? テトちゃん、タットルの方に行くって聞いたけど」
本気? と問うようにフォニケが言えば、テトは「にゃぁ」と鳴く。
「奴らには仲間を殺されましたにゃ。ルックスに至っては一族、そして生き残りもまた、恥辱を味わっていますにゃ……テトは、リーダーとして奴らを放ってはおけませんにゃ」
あどけない表情から一転し、金の瞳に暗い色が点る瞬間をフォニケは見た。
「テトちゃん……」
そっとフォニケが声をかけると、テトは廊下へと出ていく。彼女を誘うように。
「……テトにとって、部族なき部族は家族ですにゃ……テトは、家族を手にかけましたにゃ。向こうはそう思ってなくても……」
以前、テトは部族なき部族の裏切り者を制裁し、リーダーとなった経緯がある。
部族として何も変わっていないと謗られても彼女はそうした。
正しいことをしたとテトは思っていない。
生かすわけにはいかなかったから。
彼の望みだから。
決断した理由は『家族』の為に。
「テトはどう言われようとも考えを曲げることは出来ませんにゃ」
窓の外を見上げると、薄雲にかかった満月が姿を現し、二人を照らす。
「フォニケはどう思いましたかにゃ? アケルナルとウルサマヨル族、ウルサミノル族の関係を」
先日、アケルナルの故郷を追い、ウルサミノル族の生き残りとの接触を図った。
アケルナルの出身の部族が確定したのと同時に、フォニケの出自も分かってしまった。
ドワーフ工房の技師、フォニケはリアルブルーからの転生者の三世代目。ウルサミノル族の中では地位がある者の娘だった。
「そぉね……記憶がないからピンとこないんだけど。なんで私を攫ったんだろうって思ったわ。私も殺せばよかったのにって思うのよね」
フォニケにとって、アケルナルは恐怖の存在だ。
彼と共にいた間の記憶は真っ暗で怖いという感覚しか覚えてなかった。
記憶があるのはカシオペア族として生きていた頃から。
「そういや、古い記憶はどこからですかにゃ?」
「ん? カシオペア族に保護されて、シェダルが食べさせてくれたお肉が美味しかったって記憶よ」
肉の執着はそこからかと、テトは納得した。
「要塞都市郊外には売春宿などの風俗街があったのは知ってますかにゃ?」
シェダルの名前が出て、テトがさっくりと話を変えた。
「ええ、確か……ヴェルナーさん達が来てから、その辺りは寂れたと聞いたけど」
「前の要塞管理官の側近で、売春婦を身請けしようと横領した輩がいたとか」
すぅ……とテトは目を細める。
見透かすような瞳にフォニケは視線をそらす。
「ええ、今は収監されているけど」
「その売春婦はタットルが関与したところだと聞きますにゃ」
ぴくり、とフォニケが肩を震わせ、前を向けばテトと視線がかち合う。
「その側近、悪い態度とは裏腹に、よく弱者を助けていたという話も聞きますにゃ」
「ムルジムさん、ね。危ないところをよく助けて貰ってたわ……あの頃の帝国の人で嫌いじゃない人だったわ……」
優しく微笑むフォニケは脳裏に浮かぶ記憶を見ている。
「で、やっぱりその側近の事、好きだったのですかにゃ」
じーっ、とテトがフォニケに詰め寄ると、珍しくフォニケが顔を赤くした。
寧ろ、テトは初めて見る。
「え! 昔の話よ! フラれてるし! 今真面目な話よね!?」
「真面目な話ですにゃー! アルフェッカとシェダルとはどーゆー仲ですかにゃー!?」
「はー!? なんでその二人がーー!?」
「部族なき部族の情報網を甘く見ちゃいけませんにゃ。いつもいつもテトをとっかえひっかえ着替えて遊んだりしてるんですからこれくらいの話、聞きたいですにゃーん!」
「ちょっとまってーーーー!?」
二人はクレムトから怒られるまで廊下でぎゃいぎゃい騒いでいた。
月は満ちた。
すべき事を果たす為、皆が動き出す。
リプレイ本文
●
辺境を中心に部族を強襲、盗品売買を行っている盗賊団『タットル』は他国にも手を伸ばし、犯罪を助長させ、人類へ害を為していたことが判明した。
更に歪虚アクベンスが盗賊団、タットルとの繋がりがあると判断した。
先日の要塞都市侵攻ではタットル次点アケルナルとその手下達が歪虚側に加勢をしていた。
経緯は現状でも不明のままだが、アクベンスは倒すべき歪虚。
大幻獣トリシュヴァーナを殺し、そのマテリアルを吸収した。
灰色の髪は蒼白銀となり、今までとは比べ物にならない強さを手にする。
しかし、怠惰の王の都合よりも自身の都合を優先した。
要塞都市管理官補佐役アルフェッカ・ユヴェーレンはスコール族長であるファリフ・スコールと共に、これ以上の被害を防ぐ為、犯罪組織の壊滅と歪虚アクベンスの討伐を宣言。
部族戦士、ハンターを率いて団員捕縛を決行。
逃げられないよう、気づかれないように慎重を重ね、決行日まで盗賊団を監視していた。
●
「ファリフ」
静かに盗賊団の拠点を見つめるファリフに声をかけるのは八島 陽(ka1442)だ。
アクベンス対応するメンバーがそこにいた。
「加勢に来たよ」
そう告げる彼にファリフは笑む。
「今がチャンスだな」
オウガ(ka2124)が言えば、ファリフは頷く。
「奴一人を葬ってもまだ歪虚は存在する。だけど、ボク達は一歩ずつ進まなくちゃならない」
故に、アクベンスを討伐しなければならない。
討伐の為の班分けを行っている時、テトはアケルナルを捕縛する為の陣地にいた。
「にゃんで……」
驚くテトにアイラ(ka3941)は目を細め、笑う。
ファリフの事が気にならないわけではない。
そこは戦友に任せた。
「決着をつけにいこう、テトくん」
テトの方に来た理由はアイラの胸に秘めている。
もう少しで戦いが始まる頃、キヅカ・リク(ka0038)はフォニケの姿を探していたが、すぐに見つかる。
ディーナ・フェルミ(ka5843)と共にいた彼女は落ち着いた様子だ。
前回、リクが見たフォニケはアケルナルの姿を見た途端に表情をなくし、震えていた。身体が、脳が恐怖を刻み込み、縛り付けていた。
「フォニケちゃん、一緒に行くよ」
「ありがとう。嬉しいわ」
笑みを浮かべるリクにフォニケは微笑む。
「フォニケさんがこれからも笑顔でお肉が食べられるように頑張るの!」
ぐっと拳を握るディーナ。彼女の思いはリクも同じだ。
誰もが生きれる明日はとても難しいことだけど、できることを全力でやらなければ迎えることはできない。
今回の司令官であるアルフェッカと打ち合わせしていた南護 炎(ka6651)とユリアン(ka1664)、ルベーノ・バルバライン(ka6752)は難しい顔をしていた。
「捕縛……か」
苦々しく呟く炎にアルフェッカは「気持ちはわからんでもない」と返す。
「辺境部族のやり方は様々だ。死には死をなんていう部族だって存在する。けど、シバ老は辺境国家を望んでいたと聞く。その為の部族会議が今ある」
その名前を出すのは卑怯かもしれないが、秩序は必要なのだ。
行こう、と言ったアルフェッカは雑魔、団員対応のメンバーを集めた。
●
大勢の者達がタットルの拠点へと向かう。
拠点周囲に獣型歪虚が確認された。
大勢の敵に気づいた歪虚は吠え、威嚇と警告を促す。騒音に気づいた団員たちがバタバタと中から出てきた。
囲んでいるのは武装した集団……ハンターと辺境戦士だ。
「敵襲だ!」
「首領とアケルナルさんに知らせろ!」
誰かが叫ぶと、数人が駆け出した。
その様子に気づいたボルディア・コンフラムス(ka0796)が天翔けるもので炎の翼の幻影を纏い、飛翔する。彼女の視線は走っていく団員達。
「矢を放て!」
弓を構える団員達が放とうとした瞬間、エルバッハ・リオン(ka2434)とエンバディ(ka7328)がタイミングを揃えてスリープクラウドを発動。青白いガスが発生し、半数の団員と歪虚が倒れてしまう。
その代わり、ハンター側から十体の小鳥が歪虚の方へ向かっていく。
そして、ボルディアが敵陣へ飛んでいく。
「皆さん、お願いします!」
エステル・ソル(ka3983)の声に応じて盾を装備した辺境戦士達がボルディアが進んでいく方向へ突き進む。
歪虚がボルディアを追いかけようとすると、エステルが星鳥を飛ばしてその足を止めた。
辺境戦士達が団員達と交戦を始める。戦士達は空間を開けるように団員達を脇へと盾で押す。
時音 ざくろ(ka1250)も盾で応戦し、盾で攻撃を受け止める。
「その攻撃ざくろが貰う……」
ぐっと堪えたざくろはガイウスジェイルを発動する。
「超機導パワーオン、弾け跳べ!」
反動で敵を吹き飛ばし、ざくろが振り向く。
「みんな! 道が出来たよ! さぁ行って!」
ざくろが叫ぶと、切り拓かれたその道を十数人のハンター達が駆けて行った。
「じゃぁ、こっち側に行くね」
そう言ったのは鞍馬 真(ka5819)だ。
剣に蒼炎華発動し、味方から少し離れるように歪虚の方へと歩いていく。
青いオーラを纏う剣を構え、ソウルトーチの炎で相手を引き寄せる。
相手は団員も入っていることを考慮し、複数の敵の中へ飛び込む。素早く踏み込んで縦横無尽に敵を斬りつけていく。
活人剣を使用し、人は殺さない。
真の攻撃を受けてまだ動く歪虚にマテリアルの弾丸を撃ち込んでいくのはツィスカ・V・アルトホーフェン(ka5835)。
別の方向からツィスカへ狼型歪虚が駆けてくる。
ギリギリまで引き付けた彼女は狼の背後にも歪虚がいる事を確認し、発砲した。弾丸は大きく口の開いた狼へ撃ち込まれた。
周囲に味方がいないか確認したサクラ・エルフリード(ka2598)はセイクリッドフラッシュを発動させる。
彼女から広がる光の波動を受けた歪虚や団員達は目を眩ませてしまう。
身体の大きい同胞の背に隠れていた狒々型歪虚に効果が薄かったようで、サクラへと跳躍するが、光に貫かれてすぐに地面と激突する。
振り向いて光が放たれた方向を向くと、ざくろがいた。
「大丈夫?」
笑顔で問うざくろにサクラは頷いた。
ハンターと部族戦士が切り開いてくれた道を真っ先に駆けていくのはトリシュヴァーナに乗ったファリフだ。
部族戦士や雑魔を受け持ってくれるハンターを掻い潜って襲ってくる雑魔や盗賊団が襲ってくる。
「仕方ねぇな」
飛び出したトリプルJ(ka6653)は自分の方へと襲う狒々型歪虚に向かって鉄爪の先を引っかけるように差し込む。
一気に自分の間合いに引き込んだタイミングで殴り、鉤爪を滑らせて頭を斬り裂く。
別の方向から賊が向かってきた事に気づいたセツナ・ウリヤノヴァ(ka5645)は瞬脚で距離を詰め、団員の足を払って転ばせ、もう一人の団員の懐に飛び込み、刀の柄をみぞおちに入れて動けなくしてしまう。
「雑魚はまとめて行きますよぉー!」
星野 ハナ(ka5852)が五色光符陣を展開し、向かう先で道を塞いでいる歪虚を目がける。
光で目が眩み、動けなくなった歪虚へコーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561)が魔導拳銃の引き金を引き、黒い弾丸が止めを刺していく。
更に先を進むオウガの側面にあった天幕の中より縄ひょうが飛んできた。
「うおっ!」
反射的に躱したオウガは斧を構え、二撃目を斧の刃を盾のように使って跳ね返したが、三撃目がオウガの太ももを貫く。
向こうから縄を引っ張られ、足を持っていかれそうになるオウガを見たトリシュヴァーナが彼を追い越し、天幕ごと破壊する。
「奴だ!」
太ももから刃を抜き取ったオウガが叫ぶ。
天幕の布の合間から抜き出る影を見たフィロ(ka6966)が大地を強く踏みしめ、高速移動を始めた。そのまま全身に氣を張り巡らせて噴射するように飛翔し、その影の間合いに飛び込んだ。
「貴方にはここでご退場願います」
氣を高めたフィロが放つ白虎神拳の一撃が影へ落とされる。
「アクベンス様!」
気合と共に影の名を叫ぶフィロの拳をアクベンスは膝で受け止め、彼女の拳からすり抜けようとしたが、彼女の手が奥……アクベンスの胸倉を掴み、投げ飛ばした。
身を捩ろうとするアクベンスはハナと目が合う。
得物を見つけたといわんばかりにハナはアクベンスを見据え、陰陽符「天光」を広げ、五色光符陣を発動させた。
光が引くとトリプルJが間合いに飛び込む。
アクベンスが光りに眩んでいる内にワイルドラッシュの連撃で殴っていく。為すが儘に殴られていたアクベンスから甘い香りが発せられ、トリプルJの意識がぼうっとし、動きが止まってしまう。
アクベンスが距離を取ると同時にユメリアがピュリフィケーションを発動し、トリプルJの意識を戻す。
跳躍のあと、着地しようとしたアクベンスの足元向かって銃弾が撃ち込まれる。
「手負いだろうと手加減はせん」
コーネリアが言えば、アクベンスは「おや」と笑みを浮かべた。
「あの時の生き残りの少年。私の方へ来たのですか? 貴方の仇はアケルナルでしょう?」
興味はルックスの方だ。彼は怒りの表情を浮かべて剣を構えている。
「エーノス族の恨みと思えばそうだろうな。けど、俺は……ストルを奪ったお前を許せない!」
「言ってましたよ。死の間際に一族の無念より、彼女の仇をとると」
満足そうに嗤うアクベンスに向かって斧を振り上げたのはオウガだ。
「てめぇ!!」
軽やかに回避するアクベンスの動きはオウガも見切っている。すぐさまファントムハンドでアクベンスを捕える。
「ファリフ!」
オウガの呼びかけと同時にファリフも前に出て、アクベンスに大斧を振り下ろす。
歪虚の多い中、いつ邪魔されるかわからない。
少しでも多くのダメージを負わせる。
「囲んで下さい! 逃すな!」
セツナが叫んで、ハンター達は一気に攻勢へはいる。
道となった道を走るハンター達はアケルナルの方へと向かう。
ジェットブーツで跳躍したリクは天幕の屋根をトランポリン替わりに使ってこちらへ跳躍する狼型歪虚に気づいた。
リクは聖機剣を構えて機導砲を放つ。
頭を吹き飛ばされた狼は天幕に身を落とした。
天幕の横を走る炎を目がけて賊が天幕の中から飛び出してくる。
「……っ!」
声を出すのも間に合わないほどの不意を突かれ、頬に赤い線が滲む。
すぐさま体勢を立て直した炎は一之太刀で構え、終之太刀で懐に飛び込み、活人剣で鎖骨に当てた。
盗賊団員は衝撃と痛みに意識を保つことが出来ず、気絶してしまった。
今回は捕縛という事なので峰打ちであるが、手加減は難しいと炎は思いながら奥へ走っていく。
シンクロナイズの共鳴がアイラから受けていることに気づいたテトは向かってくる狒々の攻撃を避ける。
その横からアイラが槍で狒々の脇腹を刺して動きを封じ、間合いを詰めたテトが止めを刺す。
「天幕が密集してるわね……」
顔を顰めるアイラは後ろから襲ってくる盗賊団員に槍を回して脇に通して柄を腹に突き、吹き飛ばした。
息を吐く間もなく、別の団員が襲い掛かり、足払いをして転ばす。
「歪虚も多くいますにゃ。気をつけてにゃ!」
転んだ賊の足をテトが斬りつけ、味方に警戒の声を上げる。
敵襲と聞いた団員達が威勢よく飛び出してきた。
背後の服が引っかかるような感覚を覚えたが、今は向かってくるハンター達を叩きのめす事が優先。
「女は出来るだけ動かせる程度にしろ! 売り物にするぞ!」
指示を出していると、背が引っ張られてしまう。
他の団員達も服が引っ張られて、足元がおぼつかない。
「誰かが服に仕掛けをやりやがった!」
団員の一人が叫ぶと集団で倒れてしまう。
「今だ!」
叫んだユリアンの声に部族なき部族のメンバーが団員達を捕縛していく。
「お見事、後はいいよ。先を」
部族なき部族のメンバーの花豹が姿を現したユリアンに声をかける。
ユリアンは事前準備として、ロープにフックを結わせていた。舞羽風とナイトカーテンの力で姿を認識させず、素早く団員達の服にフックを引っかけていって纏まったところでロープで転ばせた。
「ありがとう」
気遣いを素直に受けたユリアンはユメリア(ka7010)の方へと向かう。
「首領はあちらです」
そう告げるユメリアはその方向へと進んでいく。
●
エーノス族の生残りを保護と首領捕縛に走っていくのは木綿花(ka6927)だ。
「こっちでよかった?」
問うのはカペラだ。
「迷いました。ですが、長く広く渡っていた咎を止めなければなりません」
最初は入れ違い。
人に化けた歪虚ですら危険と言ったほどの強さを持つ覚醒者はその通りであり、彼女は他のメンバーに託した。
タットルは彼だけではない。
これ以上の被害を防ぐことを木綿花は選んだ。
「そうね。行きましょ」
頷くカペラ達は先を急ぐ。
首領とその愛人の方へ向かうハンター達を塞ぐように団員達が立ちふさがる。
得物を持つ手を狙ってトリガーを引くのはマリィア・バルデス(ka5848)。
その表情はどこか呆れたような様子。
「やりたい放題し尽くした連中を生かしておくなんて」
「殺しちゃってもいいと思うのはわかる」
頷いたのは部族なき部族のメンバーである飯綱。
エーノス族の生き残りを知っている彼女はこちらの班になっている。
「でも、要塞都市運営や部族会議に名を連ねる長が出張ってきてるんだから、同じ土俵に立つもんじゃないのよね」
飯綱が短刀を投げて団員の膝を貫く。彼女の背後から襲う敵に気づいたマリィアが発砲すると、団員の肩に命中する。
「それもそうね」
「ありがと、行きましょ」
先を急ぐため、二人は奥へと走っていく。
●
天幕の向こうで騒ぎが近づいてくる。
アケルナルを探せ!
首領を探せ!
アクベンスを倒せ!
首領だけは捕まっては困る。
自分の居場所だからだ。
男はすぐに武装を纏っていく。
あの聡明な女の娘がここにきていると本能で感じた。
手元にあった頃は扱い方も分からず、殴ってばっかりだったような気がする。
逃げ出し、要塞都市が変わった後にあの娘がいた事を知った。
母親によく似た笑顔、聡明さも同じ。
もう逃がすわけにはいかない。
天幕を出ると、団員達が自分を守ろうと立っていた。
「どけ。首領を守れ」
そう言った男……アケルナルはハンター達と相対する。
「要塞管理官補佐役アルフェッカ・ユヴェーレンだ。盗賊団タットルの長年に渡る悪行を部族会議の名の下に止める」
アルフェッカが宣言すると、アイラと炎が二人同時に飛び出した。
一之太刀を構え、終之太刀で精神を研ぎ澄まし、肉体を加速させた炎はアケルナルの懐に入る。
それでもアケルナルは動くことはなかった。
罠だと、前情報で奴が機導師であることを悟る。
炎の剣を真っ向から受けたアケルナルだが、彼の周囲がガラスの様に砕け散った。
表情を変えず、アケルナルが剣を振りおろすと、横からアイラが槍で剣を受け止めると、アケルナルは嘲笑う。
扇状の炎が放たれ、アイラと炎がまともにくらってしまう。
「自分たちの拠点でしょ!」
服を燃やされ、手で払いながら文句を言うアイラにアケルナルは「ははっ」と声を上げて笑った。
「アクベンス気に入りの気性だな。俺の好みじゃないが」
視線はフォニケの方を見ると、フォニケは射すくめられるように固まってしまう。
リクとシェダルがフォニケを隠すように立ちはだかる。
「彼女は二度もお前に渡さん!」
そう言ったのはアルフェッカだ。剣を構え、アケルナルと対峙する。
素早い剣技で攻め入るアルフェッカはアケルナルの脇腹に浅く一撃を入れた。
「加勢する!」
叫んだ炎と一緒にアイラも戦いの中に入っていく。
●
歪虚の殲滅を行っているエステルは確実に敵を仕留めていた。ダブルキャストを行っている時は部族戦士達が守っていた。
戦士達をすり抜け、集中しているエステルに向かって狼が駆けていくと、頭上から落雷が落ちる。
「まだ来ますわ。お守りを!」
風雷陣を行使し、エステルを守ったエルバッハが戦士に声をかける。
「小鳥さん、お願いします!」
再び十体の小鳥がエステルの下から離れ、敵を貫いていく。
星鳥を掻い潜った歪虚が向かってくる。
遠射を使ったツィスカの弾丸から逃れることはなかった。
退却を始めようとする歪虚を真は逃さず、倒していく。
「もう少しです!」
エステルが言えば、皆が頷く。
団員の強さは奥に入ると、更に増していくようだ。
天翔けるもので先に飛んでいったボルディアが奥に隠れていた団員が放った矢が当たり、一度着地してしまう。
「クソッ」
苦々しく呟くボルディアに団員達が剣や棍棒を振り下ろす。シールドで庇い、衝撃を緩和させた。
間合いを取ったボルディアの背後から現れたエンバディに「あいつからやれ!」とわめき出す。
「わぁあああ……!」
驚いたエンバディが団員に向かってスリープクラウドを発動させた。
内二人が昏睡し、もう一人はもう少しで抵抗に成功しそうだ。
「ね、眠っててよ!」
ゴツっとストーンブックで殴打された賊はそのまま昏倒してしまう。
「おう。さっさと行くぞ!」
「あ、はい」
二人が駆けだそうとすると、向こうから影がぬっと出る。
「お前ら、ハンター相手に情けねぇな!」
下っ端に激を入れて叫ぶのは武装をした大男だ。
後から駆け付けたエンバディも何故か下っ端と同じく怒声に驚いて肩を竦めてしまう。
「兄貴、こいつら強いんだ!」
「下がってろ!」
味方の眠っている下っ端を蹴り飛ばして大男がハンターの方へ歩いていく。
「あぁ!? やるってか!」
叫んだボルディアが武器を振り回し、大男の方へと向かう。
二人が交戦をしている中、エンバディがとりあえず前に進もうとすると、下っ端達が取り囲む。
「人質に取れ!」
叫ぶ下っ端達にエンバディへ手が伸びると、その男の肩が撃ち抜かれ、絶叫が響く。
「そっちだと、人質の価値もなさそうね」
呆れるようにマリィアが呟く。
すかさず、エンバディがストーンブックで殴り倒す。
「どけろ!」
ボルディアか、大男かわからない叫び声が飛んできて、二人が雪崩れ込んでくる。
一瞬、ボルディアから炎のオーラが強く輝くと、斧を振り降ろし、大男の矛打ち落した。すぐさま大男の腹を下から武器を振って叩きつけた。
炎の獣が大男を噛んでいく様を見た下っ端は戦意をなくして加勢することなく、立ち止まる。
「後はやっておくわ」
飯綱とエンバディが下っ端達を縛り上げている中、ボルディアとマリィアが先を進む。
交戦に手間取ってしまった木綿花とカペラはエンバディ達を追い抜き、奥へと向かっていく。
先でボルディアとマリィアが立ち止まっている所に出くわし、二人は顔を見合わせて最悪の事態を思い浮かべてしまう。
「く、来るなぁああああああ!」
絶叫する五十代だろう壮年の男は女を盾にするように首を腕で拘束し、短刀を女の頬に当てているが、力の加減を間違えて傷つけてしまっている。
その女は疲れ果てたような顔をしていた。
フォニケに面影が似ており、両腕に刺青があったので、彼女がエーノス族の生き残りなのだろう。
「武器を捨てろぉおおおお!」
「まるで、三流映画のお約束ね」
呆れたマリィアの言葉の意味を首領は分からないだろう。
「やってみろ。殺してやっからよ」
大斧を構えるボルディアは殺気を込める。
首領はじりじりと女ごと後退していく。
「その汚い手、離しなさい」
マリィアが投降するよう声をかけると、首領は女を突き飛ばして天幕から外へ逃げようとする。
天幕の向こうは崖であるが、捕まるよりマシ。
だが、逃亡は適わなかった。
炎に口や武器を持つ手を拘束されてしまっている。ボルディアが発動した炎檻にあっけなく捕らえられてしまう。
女が崩れ落ちると、マリィアが支える。
「エーノス族の生き残りは貴女?」
問いかけに女は頷く。
「大丈夫ですか?」
反対側から木綿花が女を支えた。
「ルックス様も来ております」
木綿花の言葉に女ははっと、彼女の方を向く。
「もう、大丈夫です」
そっとエナジーショットを女に発動させると、女は一粒の涙を零す。
「もう……ダメかと思った……」
泣き出した女を木綿花が宥める。
●
歪虚アクベンスはハンター達からの攻撃を避けていたが、まだ動けているように見えた。
陽がジャッジメントを発動させ、アクベンスの胸に杭を穿つ。
「たぁあああ!」
ルックスが突きの構えで駆けだしていく。上半身は動かないが、足は辛うじて動かせたアクベンスは膝を犠牲にして剣に刺された。
足を振り上げたアクベンスはルックスを蹴り上げる。
「おのれ、アクベンス!」
入れ替わるように半身の姿勢で武器を水平に構えたセツナが一気に間合いを詰めて斬りかかった。
香りを発したアクベンスだが、セツナは意識を手放すこともなく、アクベンスの胴を斬り裂く。
「くっ……」
苦悶の表情を浮かべるアクベンスに笑みを浮かべたのはハナだ。
「アケルナル……って人はぁ、他の国にも行ってたんですよねぇ? 聞かなかったんですかぁ?」
にっこりと可憐な笑顔を見せるハナにアクベンスは彼女の術という事に気づく。
「貴女が……ここにいるのは、ビスの為……でしょうか?」
「当たり前ですよぉ……ビス様のお嫁さんになりたかったのにぃ……!」
五色光符陣を発動させ、再びアクベンスの視界を奪った。
縫いつけるようにコーネリアが拳銃を撃ってアクベンスの足を撃ち抜いていく。
「もう動かせねぇぜ!」
飛び込んだトリプルJがアクベンスを再びワイルドラッシュで殴る。
「それだけじゃねぇよ……」
口の中に溜まった血を吐いたのはオウガだ。
彼は見てきたのだ。
テトがビスを殺す瞬間。
ストルが死んだという事実を目の当たりにした瞬間。
大幻獣フェンリルの心臓が抜き取られた瞬間。
ただ、命を奪われただけではない。
それらで仲間の心が打ちのめされたのだ。
「もう二度と、誰も奪われたりしねぇ!」
オウガの絶叫がシンクロナイズで仲間へ共鳴していく。
先に駆けだしたのはフィロだ。
縮地移動で距離を詰め、トリプルJから離れた片腕のアクベンスの腕を取って捩じり上げて背に回る。
アクベンスの上体を曲げ、白虎神拳を発動させたフィロは金剛不壊を背中目がけて叩きつけた。
吹き飛ばさないように衝撃だけ与えると、オウガとファリフが前に立ち、ハンター達も囲んでいる。
「お前は、フェンリルの仇だ……」
「我々が消えた後……戦いなき世界を……貴女が生きていけるのか見れないことが、悲しいです」
「ファリフ! 世迷言に耳を貸すな!」
トリシュヴァーナの声にファリフは青の瞳を見開く。
「ボクは部族を守る長だ! 辺境に仇なすお前を辺境部族の名のもと討ち取る!!」
彼女の宣言と共にいくつもの武器が振り下ろされ、上体が分からなくなるほどの醜さで歪虚アクベンスは滅んだ。
アクベンスの討伐に成功したと確信したファリフは呆然としてるハナの方へ歩く。
「行こう……まだ、団員や雑魔がいる……」
「……テトちゃんにはいえないんですけどぉ……一目惚れだったんですよぉ……」
初めて聞くハナの弱い声。
本当なら、恨んでも仕方ない事なのに……と、ファリフは鼻の奥がツンとなる。
「テトを気遣ってくれてありがとう……。テトは貴女に幸せになってほしいと思ってるよ」
今のファリフにはそれしか言えない。
テトを知っているファリフだからこそ、そう言うのだ。
「ハナさんは笑顔と美味しい料理を作ってるところが素敵なんだからさ」
「勿論ですよぉ」
そう言って二人は雑魔の方へと向かった。
●
複数のハンターをものとしてないアケルナルの狙いはフォニケにある。
彼女は奴が探していたもの。
シェダルとアケルナルの剣が交わり、アイラが槍で突くと、固い手応えが彼女に伝わる。いつの間にかにアケルナルの片手が空いており、短剣が握られていた。
短剣と穂先が攻め合い、アケルナルが腕を振るって一度距離を置くように離れた。
しかし、逃さなかったのは一之太刀を構えた炎だ。
「おおお!」
気合と共に終之太刀を放つ炎の一太刀を剣で受けたアケルナルだが、炎は剣を下に引き下ろす様に大きく振り抜くと、アケルナルの足を斬りつけた。
「ぐっ」
ファイアスローワーを発動させたアケルナルの瞬間を狙ってディーナが叫ぶ。
「退いてほしいのー!」
彼女の号令と共にハンター達が一旦引く。
セイクリッドフラッシュの波動を受けたアケルナルにダメージが入る。
足元がふらつき、攻撃のチャンスかと思ったが、アケルナルはジェットブーツで跳躍し、フォニケの方へ向かう。
「そうはさせない!」
同じくジェットブーツで跳んだのはリクだ。
「前に会った時、同じ力を使うと思ったからな」
アケルナルはそれを狙ったかのようにリクへ剣を叩きつける。
しかし、リクは両手首をクロスさせると、彼の腕からマテリアルで形成された盾が剣を防ぎ、アケルナルが雷撃でその身を弾かれた。
そして、デルタレイの三角形からなる三つの光で彼の両肩、腹を貫き、地に落とす。
危険な行為と分かっているが、今はそうしなければこちらがやられるのだが、奴はまだ闘争心を失っていないし、動いている。
「ねぇ、聞いたけどさ、なんでフォニケちゃん似た人を攫ったの? 皆、結構気にしてるよ」
リクがアケルナルに声をかけて引き付けている間にディーナがリザレクションを発動させる。
術の行使には高い集中が必要な為、リクが情報を引き出そうとしていた。
ゆっくりと立ち上がるアケルナルは蹲って立ち上がろうとしているアルフェッカの方を見やる。
「……メリディアナの時が初めてだったな……」
「気安く呼ぶな……」
血を吐き、アルフェッカが立ち上がる。
「あいつは決められた結婚が嫌なお嬢様と思ったが……あんな家の者になるくらいなら構わないと辱めを受けた。お前の家じゃねぇよ」
それは結婚する向こうの家の事だろうと察してしまう。
「病になって、殺してくれと言ったから殺した。せめての褒美だ」
くくっと笑うアケルナルは再びジェットブーツを発動させた。
「フォニケちゃんには指一本触れさせない!」
真っ向からリクが立ち向かうと、アイラも加勢する。
二対一でせめぎ合う中、もう一人加勢をした者がいた。
「貴様……ビスの……!」
小さな体躯のテトが持つ黒い剣がアケルナルの横腹を刺す。
「うぉおおおおお!」
絶叫と共にアケルナルは短剣をテトの身体に差し込み、蹴り上げた。ボールのように跳ねるテト。
「テトちゃん!」
咄嗟にフォニケが駆け出し、テトを庇う。
アイラはファントムハンドでアケルナルを捕まえ、ディーナがリザレクションを発動させた。
傷が塞がっていったハンター達はアケルナルの両腕を取り、両膝をつかせる。
「どうして、自分のものにしなかったの?」
「俺みたいなモノにしたら……穢れるだろ……あの時は、迎えに来たんだ……あんな部族にいちゃいけねぇって……」
吐き捨てるように言った言葉を最後に彼は口を閉じた。
●
部族戦士達と雑魔退治をしていたエステルは周辺の歪虚がいなくなっていたので、移動しつつ、歪虚が残っていないか確認していく。
「エステルさん」
別の方向で歪虚を倒していた真がエステルの方へと向かう。
「こちらは殆ど討伐できたのです。さきほど、サクラさんが中の団員捕縛を確認するため、天幕の中を確認しに向かいま……小鳥さん、お願いします!」
真の後ろから駆けてくる熊型歪虚目がけて星鳥が飛んでいく。
五体の小鳥が歪虚を貫くと、真が間合いに入り、胴を斬り裂いた。
戦いの中、隠れていただろう団員達が逃亡を図ろうとし、崖へと走っていく姿を見たのはツィスカだ。
「そこまでです。崖下には部族戦士がいます。落ちたとしても逃亡はできません」
銃を構える女ハンターに団員達は顔を見合わせる。
「女一人だ。やっちまえ!」
ツィスカを倒す事を決め、武器を構えた瞬間、団員達の周囲に青白いガスが広がり、倒れ込んだ。
「大人しく投降していればよかったのですが」
肩を竦めるエルバッハが現れる。ツィスカの動きを見かけ、天幕の影に隠れてスリープクラウドを発動させていた。
逃げる団員の中では金目の物を持って逃げる者もいた。
他のメンバーから首領捕縛に関する報告を聞いたサクラは首領が捉えられた旨を賊達に告げる。
「無駄な抵抗を止め、投降を」
ルーンソードを構えるサクラが言えば、男達は「首領を取り戻せ!」と交戦の構えを見せた。
「残念です」
呟くサクラはセイクリッドフラッシュを発動させ、盗賊達の視界を奪う。
その隙にプルガトリオを発動させ、動きを抑えた。
逃げる団員がいれば、首領奪還に走ろうとする団員もいた。
アクベンスが連れてきた歪虚も殆ど倒されていたが、奪還を考えていた団員は狼型歪虚と一緒に天幕内に隠れている。
捕縛された首領を天幕の隙間から出てくると、団員が狼型歪虚と飛び出させた。
ハンター達が驚いている内に逃がそうと思ったが、ざくろのデルタレイに狼が貫かれ、木綿花が止めを刺す。
それでも食らいつこうとする団員の前に数多の羽根が舞っていると視覚することも出来なく、ユリアンの刀の鞘に腹を打たれて倒れる。
隙を見た首領が逃げ出そうとしたが、ユメリアの瞳から逃れることは出来なかった。
盗賊団『タットル』の首領と次点、及び団員の捕縛に成功する。
帰り際、無茶をしたテトへの説教をBGMにハンター達は帰っていった。
辺境を中心に部族を強襲、盗品売買を行っている盗賊団『タットル』は他国にも手を伸ばし、犯罪を助長させ、人類へ害を為していたことが判明した。
更に歪虚アクベンスが盗賊団、タットルとの繋がりがあると判断した。
先日の要塞都市侵攻ではタットル次点アケルナルとその手下達が歪虚側に加勢をしていた。
経緯は現状でも不明のままだが、アクベンスは倒すべき歪虚。
大幻獣トリシュヴァーナを殺し、そのマテリアルを吸収した。
灰色の髪は蒼白銀となり、今までとは比べ物にならない強さを手にする。
しかし、怠惰の王の都合よりも自身の都合を優先した。
要塞都市管理官補佐役アルフェッカ・ユヴェーレンはスコール族長であるファリフ・スコールと共に、これ以上の被害を防ぐ為、犯罪組織の壊滅と歪虚アクベンスの討伐を宣言。
部族戦士、ハンターを率いて団員捕縛を決行。
逃げられないよう、気づかれないように慎重を重ね、決行日まで盗賊団を監視していた。
●
「ファリフ」
静かに盗賊団の拠点を見つめるファリフに声をかけるのは八島 陽(ka1442)だ。
アクベンス対応するメンバーがそこにいた。
「加勢に来たよ」
そう告げる彼にファリフは笑む。
「今がチャンスだな」
オウガ(ka2124)が言えば、ファリフは頷く。
「奴一人を葬ってもまだ歪虚は存在する。だけど、ボク達は一歩ずつ進まなくちゃならない」
故に、アクベンスを討伐しなければならない。
討伐の為の班分けを行っている時、テトはアケルナルを捕縛する為の陣地にいた。
「にゃんで……」
驚くテトにアイラ(ka3941)は目を細め、笑う。
ファリフの事が気にならないわけではない。
そこは戦友に任せた。
「決着をつけにいこう、テトくん」
テトの方に来た理由はアイラの胸に秘めている。
もう少しで戦いが始まる頃、キヅカ・リク(ka0038)はフォニケの姿を探していたが、すぐに見つかる。
ディーナ・フェルミ(ka5843)と共にいた彼女は落ち着いた様子だ。
前回、リクが見たフォニケはアケルナルの姿を見た途端に表情をなくし、震えていた。身体が、脳が恐怖を刻み込み、縛り付けていた。
「フォニケちゃん、一緒に行くよ」
「ありがとう。嬉しいわ」
笑みを浮かべるリクにフォニケは微笑む。
「フォニケさんがこれからも笑顔でお肉が食べられるように頑張るの!」
ぐっと拳を握るディーナ。彼女の思いはリクも同じだ。
誰もが生きれる明日はとても難しいことだけど、できることを全力でやらなければ迎えることはできない。
今回の司令官であるアルフェッカと打ち合わせしていた南護 炎(ka6651)とユリアン(ka1664)、ルベーノ・バルバライン(ka6752)は難しい顔をしていた。
「捕縛……か」
苦々しく呟く炎にアルフェッカは「気持ちはわからんでもない」と返す。
「辺境部族のやり方は様々だ。死には死をなんていう部族だって存在する。けど、シバ老は辺境国家を望んでいたと聞く。その為の部族会議が今ある」
その名前を出すのは卑怯かもしれないが、秩序は必要なのだ。
行こう、と言ったアルフェッカは雑魔、団員対応のメンバーを集めた。
●
大勢の者達がタットルの拠点へと向かう。
拠点周囲に獣型歪虚が確認された。
大勢の敵に気づいた歪虚は吠え、威嚇と警告を促す。騒音に気づいた団員たちがバタバタと中から出てきた。
囲んでいるのは武装した集団……ハンターと辺境戦士だ。
「敵襲だ!」
「首領とアケルナルさんに知らせろ!」
誰かが叫ぶと、数人が駆け出した。
その様子に気づいたボルディア・コンフラムス(ka0796)が天翔けるもので炎の翼の幻影を纏い、飛翔する。彼女の視線は走っていく団員達。
「矢を放て!」
弓を構える団員達が放とうとした瞬間、エルバッハ・リオン(ka2434)とエンバディ(ka7328)がタイミングを揃えてスリープクラウドを発動。青白いガスが発生し、半数の団員と歪虚が倒れてしまう。
その代わり、ハンター側から十体の小鳥が歪虚の方へ向かっていく。
そして、ボルディアが敵陣へ飛んでいく。
「皆さん、お願いします!」
エステル・ソル(ka3983)の声に応じて盾を装備した辺境戦士達がボルディアが進んでいく方向へ突き進む。
歪虚がボルディアを追いかけようとすると、エステルが星鳥を飛ばしてその足を止めた。
辺境戦士達が団員達と交戦を始める。戦士達は空間を開けるように団員達を脇へと盾で押す。
時音 ざくろ(ka1250)も盾で応戦し、盾で攻撃を受け止める。
「その攻撃ざくろが貰う……」
ぐっと堪えたざくろはガイウスジェイルを発動する。
「超機導パワーオン、弾け跳べ!」
反動で敵を吹き飛ばし、ざくろが振り向く。
「みんな! 道が出来たよ! さぁ行って!」
ざくろが叫ぶと、切り拓かれたその道を十数人のハンター達が駆けて行った。
「じゃぁ、こっち側に行くね」
そう言ったのは鞍馬 真(ka5819)だ。
剣に蒼炎華発動し、味方から少し離れるように歪虚の方へと歩いていく。
青いオーラを纏う剣を構え、ソウルトーチの炎で相手を引き寄せる。
相手は団員も入っていることを考慮し、複数の敵の中へ飛び込む。素早く踏み込んで縦横無尽に敵を斬りつけていく。
活人剣を使用し、人は殺さない。
真の攻撃を受けてまだ動く歪虚にマテリアルの弾丸を撃ち込んでいくのはツィスカ・V・アルトホーフェン(ka5835)。
別の方向からツィスカへ狼型歪虚が駆けてくる。
ギリギリまで引き付けた彼女は狼の背後にも歪虚がいる事を確認し、発砲した。弾丸は大きく口の開いた狼へ撃ち込まれた。
周囲に味方がいないか確認したサクラ・エルフリード(ka2598)はセイクリッドフラッシュを発動させる。
彼女から広がる光の波動を受けた歪虚や団員達は目を眩ませてしまう。
身体の大きい同胞の背に隠れていた狒々型歪虚に効果が薄かったようで、サクラへと跳躍するが、光に貫かれてすぐに地面と激突する。
振り向いて光が放たれた方向を向くと、ざくろがいた。
「大丈夫?」
笑顔で問うざくろにサクラは頷いた。
ハンターと部族戦士が切り開いてくれた道を真っ先に駆けていくのはトリシュヴァーナに乗ったファリフだ。
部族戦士や雑魔を受け持ってくれるハンターを掻い潜って襲ってくる雑魔や盗賊団が襲ってくる。
「仕方ねぇな」
飛び出したトリプルJ(ka6653)は自分の方へと襲う狒々型歪虚に向かって鉄爪の先を引っかけるように差し込む。
一気に自分の間合いに引き込んだタイミングで殴り、鉤爪を滑らせて頭を斬り裂く。
別の方向から賊が向かってきた事に気づいたセツナ・ウリヤノヴァ(ka5645)は瞬脚で距離を詰め、団員の足を払って転ばせ、もう一人の団員の懐に飛び込み、刀の柄をみぞおちに入れて動けなくしてしまう。
「雑魚はまとめて行きますよぉー!」
星野 ハナ(ka5852)が五色光符陣を展開し、向かう先で道を塞いでいる歪虚を目がける。
光で目が眩み、動けなくなった歪虚へコーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561)が魔導拳銃の引き金を引き、黒い弾丸が止めを刺していく。
更に先を進むオウガの側面にあった天幕の中より縄ひょうが飛んできた。
「うおっ!」
反射的に躱したオウガは斧を構え、二撃目を斧の刃を盾のように使って跳ね返したが、三撃目がオウガの太ももを貫く。
向こうから縄を引っ張られ、足を持っていかれそうになるオウガを見たトリシュヴァーナが彼を追い越し、天幕ごと破壊する。
「奴だ!」
太ももから刃を抜き取ったオウガが叫ぶ。
天幕の布の合間から抜き出る影を見たフィロ(ka6966)が大地を強く踏みしめ、高速移動を始めた。そのまま全身に氣を張り巡らせて噴射するように飛翔し、その影の間合いに飛び込んだ。
「貴方にはここでご退場願います」
氣を高めたフィロが放つ白虎神拳の一撃が影へ落とされる。
「アクベンス様!」
気合と共に影の名を叫ぶフィロの拳をアクベンスは膝で受け止め、彼女の拳からすり抜けようとしたが、彼女の手が奥……アクベンスの胸倉を掴み、投げ飛ばした。
身を捩ろうとするアクベンスはハナと目が合う。
得物を見つけたといわんばかりにハナはアクベンスを見据え、陰陽符「天光」を広げ、五色光符陣を発動させた。
光が引くとトリプルJが間合いに飛び込む。
アクベンスが光りに眩んでいる内にワイルドラッシュの連撃で殴っていく。為すが儘に殴られていたアクベンスから甘い香りが発せられ、トリプルJの意識がぼうっとし、動きが止まってしまう。
アクベンスが距離を取ると同時にユメリアがピュリフィケーションを発動し、トリプルJの意識を戻す。
跳躍のあと、着地しようとしたアクベンスの足元向かって銃弾が撃ち込まれる。
「手負いだろうと手加減はせん」
コーネリアが言えば、アクベンスは「おや」と笑みを浮かべた。
「あの時の生き残りの少年。私の方へ来たのですか? 貴方の仇はアケルナルでしょう?」
興味はルックスの方だ。彼は怒りの表情を浮かべて剣を構えている。
「エーノス族の恨みと思えばそうだろうな。けど、俺は……ストルを奪ったお前を許せない!」
「言ってましたよ。死の間際に一族の無念より、彼女の仇をとると」
満足そうに嗤うアクベンスに向かって斧を振り上げたのはオウガだ。
「てめぇ!!」
軽やかに回避するアクベンスの動きはオウガも見切っている。すぐさまファントムハンドでアクベンスを捕える。
「ファリフ!」
オウガの呼びかけと同時にファリフも前に出て、アクベンスに大斧を振り下ろす。
歪虚の多い中、いつ邪魔されるかわからない。
少しでも多くのダメージを負わせる。
「囲んで下さい! 逃すな!」
セツナが叫んで、ハンター達は一気に攻勢へはいる。
道となった道を走るハンター達はアケルナルの方へと向かう。
ジェットブーツで跳躍したリクは天幕の屋根をトランポリン替わりに使ってこちらへ跳躍する狼型歪虚に気づいた。
リクは聖機剣を構えて機導砲を放つ。
頭を吹き飛ばされた狼は天幕に身を落とした。
天幕の横を走る炎を目がけて賊が天幕の中から飛び出してくる。
「……っ!」
声を出すのも間に合わないほどの不意を突かれ、頬に赤い線が滲む。
すぐさま体勢を立て直した炎は一之太刀で構え、終之太刀で懐に飛び込み、活人剣で鎖骨に当てた。
盗賊団員は衝撃と痛みに意識を保つことが出来ず、気絶してしまった。
今回は捕縛という事なので峰打ちであるが、手加減は難しいと炎は思いながら奥へ走っていく。
シンクロナイズの共鳴がアイラから受けていることに気づいたテトは向かってくる狒々の攻撃を避ける。
その横からアイラが槍で狒々の脇腹を刺して動きを封じ、間合いを詰めたテトが止めを刺す。
「天幕が密集してるわね……」
顔を顰めるアイラは後ろから襲ってくる盗賊団員に槍を回して脇に通して柄を腹に突き、吹き飛ばした。
息を吐く間もなく、別の団員が襲い掛かり、足払いをして転ばす。
「歪虚も多くいますにゃ。気をつけてにゃ!」
転んだ賊の足をテトが斬りつけ、味方に警戒の声を上げる。
敵襲と聞いた団員達が威勢よく飛び出してきた。
背後の服が引っかかるような感覚を覚えたが、今は向かってくるハンター達を叩きのめす事が優先。
「女は出来るだけ動かせる程度にしろ! 売り物にするぞ!」
指示を出していると、背が引っ張られてしまう。
他の団員達も服が引っ張られて、足元がおぼつかない。
「誰かが服に仕掛けをやりやがった!」
団員の一人が叫ぶと集団で倒れてしまう。
「今だ!」
叫んだユリアンの声に部族なき部族のメンバーが団員達を捕縛していく。
「お見事、後はいいよ。先を」
部族なき部族のメンバーの花豹が姿を現したユリアンに声をかける。
ユリアンは事前準備として、ロープにフックを結わせていた。舞羽風とナイトカーテンの力で姿を認識させず、素早く団員達の服にフックを引っかけていって纏まったところでロープで転ばせた。
「ありがとう」
気遣いを素直に受けたユリアンはユメリア(ka7010)の方へと向かう。
「首領はあちらです」
そう告げるユメリアはその方向へと進んでいく。
●
エーノス族の生残りを保護と首領捕縛に走っていくのは木綿花(ka6927)だ。
「こっちでよかった?」
問うのはカペラだ。
「迷いました。ですが、長く広く渡っていた咎を止めなければなりません」
最初は入れ違い。
人に化けた歪虚ですら危険と言ったほどの強さを持つ覚醒者はその通りであり、彼女は他のメンバーに託した。
タットルは彼だけではない。
これ以上の被害を防ぐことを木綿花は選んだ。
「そうね。行きましょ」
頷くカペラ達は先を急ぐ。
首領とその愛人の方へ向かうハンター達を塞ぐように団員達が立ちふさがる。
得物を持つ手を狙ってトリガーを引くのはマリィア・バルデス(ka5848)。
その表情はどこか呆れたような様子。
「やりたい放題し尽くした連中を生かしておくなんて」
「殺しちゃってもいいと思うのはわかる」
頷いたのは部族なき部族のメンバーである飯綱。
エーノス族の生き残りを知っている彼女はこちらの班になっている。
「でも、要塞都市運営や部族会議に名を連ねる長が出張ってきてるんだから、同じ土俵に立つもんじゃないのよね」
飯綱が短刀を投げて団員の膝を貫く。彼女の背後から襲う敵に気づいたマリィアが発砲すると、団員の肩に命中する。
「それもそうね」
「ありがと、行きましょ」
先を急ぐため、二人は奥へと走っていく。
●
天幕の向こうで騒ぎが近づいてくる。
アケルナルを探せ!
首領を探せ!
アクベンスを倒せ!
首領だけは捕まっては困る。
自分の居場所だからだ。
男はすぐに武装を纏っていく。
あの聡明な女の娘がここにきていると本能で感じた。
手元にあった頃は扱い方も分からず、殴ってばっかりだったような気がする。
逃げ出し、要塞都市が変わった後にあの娘がいた事を知った。
母親によく似た笑顔、聡明さも同じ。
もう逃がすわけにはいかない。
天幕を出ると、団員達が自分を守ろうと立っていた。
「どけ。首領を守れ」
そう言った男……アケルナルはハンター達と相対する。
「要塞管理官補佐役アルフェッカ・ユヴェーレンだ。盗賊団タットルの長年に渡る悪行を部族会議の名の下に止める」
アルフェッカが宣言すると、アイラと炎が二人同時に飛び出した。
一之太刀を構え、終之太刀で精神を研ぎ澄まし、肉体を加速させた炎はアケルナルの懐に入る。
それでもアケルナルは動くことはなかった。
罠だと、前情報で奴が機導師であることを悟る。
炎の剣を真っ向から受けたアケルナルだが、彼の周囲がガラスの様に砕け散った。
表情を変えず、アケルナルが剣を振りおろすと、横からアイラが槍で剣を受け止めると、アケルナルは嘲笑う。
扇状の炎が放たれ、アイラと炎がまともにくらってしまう。
「自分たちの拠点でしょ!」
服を燃やされ、手で払いながら文句を言うアイラにアケルナルは「ははっ」と声を上げて笑った。
「アクベンス気に入りの気性だな。俺の好みじゃないが」
視線はフォニケの方を見ると、フォニケは射すくめられるように固まってしまう。
リクとシェダルがフォニケを隠すように立ちはだかる。
「彼女は二度もお前に渡さん!」
そう言ったのはアルフェッカだ。剣を構え、アケルナルと対峙する。
素早い剣技で攻め入るアルフェッカはアケルナルの脇腹に浅く一撃を入れた。
「加勢する!」
叫んだ炎と一緒にアイラも戦いの中に入っていく。
●
歪虚の殲滅を行っているエステルは確実に敵を仕留めていた。ダブルキャストを行っている時は部族戦士達が守っていた。
戦士達をすり抜け、集中しているエステルに向かって狼が駆けていくと、頭上から落雷が落ちる。
「まだ来ますわ。お守りを!」
風雷陣を行使し、エステルを守ったエルバッハが戦士に声をかける。
「小鳥さん、お願いします!」
再び十体の小鳥がエステルの下から離れ、敵を貫いていく。
星鳥を掻い潜った歪虚が向かってくる。
遠射を使ったツィスカの弾丸から逃れることはなかった。
退却を始めようとする歪虚を真は逃さず、倒していく。
「もう少しです!」
エステルが言えば、皆が頷く。
団員の強さは奥に入ると、更に増していくようだ。
天翔けるもので先に飛んでいったボルディアが奥に隠れていた団員が放った矢が当たり、一度着地してしまう。
「クソッ」
苦々しく呟くボルディアに団員達が剣や棍棒を振り下ろす。シールドで庇い、衝撃を緩和させた。
間合いを取ったボルディアの背後から現れたエンバディに「あいつからやれ!」とわめき出す。
「わぁあああ……!」
驚いたエンバディが団員に向かってスリープクラウドを発動させた。
内二人が昏睡し、もう一人はもう少しで抵抗に成功しそうだ。
「ね、眠っててよ!」
ゴツっとストーンブックで殴打された賊はそのまま昏倒してしまう。
「おう。さっさと行くぞ!」
「あ、はい」
二人が駆けだそうとすると、向こうから影がぬっと出る。
「お前ら、ハンター相手に情けねぇな!」
下っ端に激を入れて叫ぶのは武装をした大男だ。
後から駆け付けたエンバディも何故か下っ端と同じく怒声に驚いて肩を竦めてしまう。
「兄貴、こいつら強いんだ!」
「下がってろ!」
味方の眠っている下っ端を蹴り飛ばして大男がハンターの方へ歩いていく。
「あぁ!? やるってか!」
叫んだボルディアが武器を振り回し、大男の方へと向かう。
二人が交戦をしている中、エンバディがとりあえず前に進もうとすると、下っ端達が取り囲む。
「人質に取れ!」
叫ぶ下っ端達にエンバディへ手が伸びると、その男の肩が撃ち抜かれ、絶叫が響く。
「そっちだと、人質の価値もなさそうね」
呆れるようにマリィアが呟く。
すかさず、エンバディがストーンブックで殴り倒す。
「どけろ!」
ボルディアか、大男かわからない叫び声が飛んできて、二人が雪崩れ込んでくる。
一瞬、ボルディアから炎のオーラが強く輝くと、斧を振り降ろし、大男の矛打ち落した。すぐさま大男の腹を下から武器を振って叩きつけた。
炎の獣が大男を噛んでいく様を見た下っ端は戦意をなくして加勢することなく、立ち止まる。
「後はやっておくわ」
飯綱とエンバディが下っ端達を縛り上げている中、ボルディアとマリィアが先を進む。
交戦に手間取ってしまった木綿花とカペラはエンバディ達を追い抜き、奥へと向かっていく。
先でボルディアとマリィアが立ち止まっている所に出くわし、二人は顔を見合わせて最悪の事態を思い浮かべてしまう。
「く、来るなぁああああああ!」
絶叫する五十代だろう壮年の男は女を盾にするように首を腕で拘束し、短刀を女の頬に当てているが、力の加減を間違えて傷つけてしまっている。
その女は疲れ果てたような顔をしていた。
フォニケに面影が似ており、両腕に刺青があったので、彼女がエーノス族の生き残りなのだろう。
「武器を捨てろぉおおおお!」
「まるで、三流映画のお約束ね」
呆れたマリィアの言葉の意味を首領は分からないだろう。
「やってみろ。殺してやっからよ」
大斧を構えるボルディアは殺気を込める。
首領はじりじりと女ごと後退していく。
「その汚い手、離しなさい」
マリィアが投降するよう声をかけると、首領は女を突き飛ばして天幕から外へ逃げようとする。
天幕の向こうは崖であるが、捕まるよりマシ。
だが、逃亡は適わなかった。
炎に口や武器を持つ手を拘束されてしまっている。ボルディアが発動した炎檻にあっけなく捕らえられてしまう。
女が崩れ落ちると、マリィアが支える。
「エーノス族の生き残りは貴女?」
問いかけに女は頷く。
「大丈夫ですか?」
反対側から木綿花が女を支えた。
「ルックス様も来ております」
木綿花の言葉に女ははっと、彼女の方を向く。
「もう、大丈夫です」
そっとエナジーショットを女に発動させると、女は一粒の涙を零す。
「もう……ダメかと思った……」
泣き出した女を木綿花が宥める。
●
歪虚アクベンスはハンター達からの攻撃を避けていたが、まだ動けているように見えた。
陽がジャッジメントを発動させ、アクベンスの胸に杭を穿つ。
「たぁあああ!」
ルックスが突きの構えで駆けだしていく。上半身は動かないが、足は辛うじて動かせたアクベンスは膝を犠牲にして剣に刺された。
足を振り上げたアクベンスはルックスを蹴り上げる。
「おのれ、アクベンス!」
入れ替わるように半身の姿勢で武器を水平に構えたセツナが一気に間合いを詰めて斬りかかった。
香りを発したアクベンスだが、セツナは意識を手放すこともなく、アクベンスの胴を斬り裂く。
「くっ……」
苦悶の表情を浮かべるアクベンスに笑みを浮かべたのはハナだ。
「アケルナル……って人はぁ、他の国にも行ってたんですよねぇ? 聞かなかったんですかぁ?」
にっこりと可憐な笑顔を見せるハナにアクベンスは彼女の術という事に気づく。
「貴女が……ここにいるのは、ビスの為……でしょうか?」
「当たり前ですよぉ……ビス様のお嫁さんになりたかったのにぃ……!」
五色光符陣を発動させ、再びアクベンスの視界を奪った。
縫いつけるようにコーネリアが拳銃を撃ってアクベンスの足を撃ち抜いていく。
「もう動かせねぇぜ!」
飛び込んだトリプルJがアクベンスを再びワイルドラッシュで殴る。
「それだけじゃねぇよ……」
口の中に溜まった血を吐いたのはオウガだ。
彼は見てきたのだ。
テトがビスを殺す瞬間。
ストルが死んだという事実を目の当たりにした瞬間。
大幻獣フェンリルの心臓が抜き取られた瞬間。
ただ、命を奪われただけではない。
それらで仲間の心が打ちのめされたのだ。
「もう二度と、誰も奪われたりしねぇ!」
オウガの絶叫がシンクロナイズで仲間へ共鳴していく。
先に駆けだしたのはフィロだ。
縮地移動で距離を詰め、トリプルJから離れた片腕のアクベンスの腕を取って捩じり上げて背に回る。
アクベンスの上体を曲げ、白虎神拳を発動させたフィロは金剛不壊を背中目がけて叩きつけた。
吹き飛ばさないように衝撃だけ与えると、オウガとファリフが前に立ち、ハンター達も囲んでいる。
「お前は、フェンリルの仇だ……」
「我々が消えた後……戦いなき世界を……貴女が生きていけるのか見れないことが、悲しいです」
「ファリフ! 世迷言に耳を貸すな!」
トリシュヴァーナの声にファリフは青の瞳を見開く。
「ボクは部族を守る長だ! 辺境に仇なすお前を辺境部族の名のもと討ち取る!!」
彼女の宣言と共にいくつもの武器が振り下ろされ、上体が分からなくなるほどの醜さで歪虚アクベンスは滅んだ。
アクベンスの討伐に成功したと確信したファリフは呆然としてるハナの方へ歩く。
「行こう……まだ、団員や雑魔がいる……」
「……テトちゃんにはいえないんですけどぉ……一目惚れだったんですよぉ……」
初めて聞くハナの弱い声。
本当なら、恨んでも仕方ない事なのに……と、ファリフは鼻の奥がツンとなる。
「テトを気遣ってくれてありがとう……。テトは貴女に幸せになってほしいと思ってるよ」
今のファリフにはそれしか言えない。
テトを知っているファリフだからこそ、そう言うのだ。
「ハナさんは笑顔と美味しい料理を作ってるところが素敵なんだからさ」
「勿論ですよぉ」
そう言って二人は雑魔の方へと向かった。
●
複数のハンターをものとしてないアケルナルの狙いはフォニケにある。
彼女は奴が探していたもの。
シェダルとアケルナルの剣が交わり、アイラが槍で突くと、固い手応えが彼女に伝わる。いつの間にかにアケルナルの片手が空いており、短剣が握られていた。
短剣と穂先が攻め合い、アケルナルが腕を振るって一度距離を置くように離れた。
しかし、逃さなかったのは一之太刀を構えた炎だ。
「おおお!」
気合と共に終之太刀を放つ炎の一太刀を剣で受けたアケルナルだが、炎は剣を下に引き下ろす様に大きく振り抜くと、アケルナルの足を斬りつけた。
「ぐっ」
ファイアスローワーを発動させたアケルナルの瞬間を狙ってディーナが叫ぶ。
「退いてほしいのー!」
彼女の号令と共にハンター達が一旦引く。
セイクリッドフラッシュの波動を受けたアケルナルにダメージが入る。
足元がふらつき、攻撃のチャンスかと思ったが、アケルナルはジェットブーツで跳躍し、フォニケの方へ向かう。
「そうはさせない!」
同じくジェットブーツで跳んだのはリクだ。
「前に会った時、同じ力を使うと思ったからな」
アケルナルはそれを狙ったかのようにリクへ剣を叩きつける。
しかし、リクは両手首をクロスさせると、彼の腕からマテリアルで形成された盾が剣を防ぎ、アケルナルが雷撃でその身を弾かれた。
そして、デルタレイの三角形からなる三つの光で彼の両肩、腹を貫き、地に落とす。
危険な行為と分かっているが、今はそうしなければこちらがやられるのだが、奴はまだ闘争心を失っていないし、動いている。
「ねぇ、聞いたけどさ、なんでフォニケちゃん似た人を攫ったの? 皆、結構気にしてるよ」
リクがアケルナルに声をかけて引き付けている間にディーナがリザレクションを発動させる。
術の行使には高い集中が必要な為、リクが情報を引き出そうとしていた。
ゆっくりと立ち上がるアケルナルは蹲って立ち上がろうとしているアルフェッカの方を見やる。
「……メリディアナの時が初めてだったな……」
「気安く呼ぶな……」
血を吐き、アルフェッカが立ち上がる。
「あいつは決められた結婚が嫌なお嬢様と思ったが……あんな家の者になるくらいなら構わないと辱めを受けた。お前の家じゃねぇよ」
それは結婚する向こうの家の事だろうと察してしまう。
「病になって、殺してくれと言ったから殺した。せめての褒美だ」
くくっと笑うアケルナルは再びジェットブーツを発動させた。
「フォニケちゃんには指一本触れさせない!」
真っ向からリクが立ち向かうと、アイラも加勢する。
二対一でせめぎ合う中、もう一人加勢をした者がいた。
「貴様……ビスの……!」
小さな体躯のテトが持つ黒い剣がアケルナルの横腹を刺す。
「うぉおおおおお!」
絶叫と共にアケルナルは短剣をテトの身体に差し込み、蹴り上げた。ボールのように跳ねるテト。
「テトちゃん!」
咄嗟にフォニケが駆け出し、テトを庇う。
アイラはファントムハンドでアケルナルを捕まえ、ディーナがリザレクションを発動させた。
傷が塞がっていったハンター達はアケルナルの両腕を取り、両膝をつかせる。
「どうして、自分のものにしなかったの?」
「俺みたいなモノにしたら……穢れるだろ……あの時は、迎えに来たんだ……あんな部族にいちゃいけねぇって……」
吐き捨てるように言った言葉を最後に彼は口を閉じた。
●
部族戦士達と雑魔退治をしていたエステルは周辺の歪虚がいなくなっていたので、移動しつつ、歪虚が残っていないか確認していく。
「エステルさん」
別の方向で歪虚を倒していた真がエステルの方へと向かう。
「こちらは殆ど討伐できたのです。さきほど、サクラさんが中の団員捕縛を確認するため、天幕の中を確認しに向かいま……小鳥さん、お願いします!」
真の後ろから駆けてくる熊型歪虚目がけて星鳥が飛んでいく。
五体の小鳥が歪虚を貫くと、真が間合いに入り、胴を斬り裂いた。
戦いの中、隠れていただろう団員達が逃亡を図ろうとし、崖へと走っていく姿を見たのはツィスカだ。
「そこまでです。崖下には部族戦士がいます。落ちたとしても逃亡はできません」
銃を構える女ハンターに団員達は顔を見合わせる。
「女一人だ。やっちまえ!」
ツィスカを倒す事を決め、武器を構えた瞬間、団員達の周囲に青白いガスが広がり、倒れ込んだ。
「大人しく投降していればよかったのですが」
肩を竦めるエルバッハが現れる。ツィスカの動きを見かけ、天幕の影に隠れてスリープクラウドを発動させていた。
逃げる団員の中では金目の物を持って逃げる者もいた。
他のメンバーから首領捕縛に関する報告を聞いたサクラは首領が捉えられた旨を賊達に告げる。
「無駄な抵抗を止め、投降を」
ルーンソードを構えるサクラが言えば、男達は「首領を取り戻せ!」と交戦の構えを見せた。
「残念です」
呟くサクラはセイクリッドフラッシュを発動させ、盗賊達の視界を奪う。
その隙にプルガトリオを発動させ、動きを抑えた。
逃げる団員がいれば、首領奪還に走ろうとする団員もいた。
アクベンスが連れてきた歪虚も殆ど倒されていたが、奪還を考えていた団員は狼型歪虚と一緒に天幕内に隠れている。
捕縛された首領を天幕の隙間から出てくると、団員が狼型歪虚と飛び出させた。
ハンター達が驚いている内に逃がそうと思ったが、ざくろのデルタレイに狼が貫かれ、木綿花が止めを刺す。
それでも食らいつこうとする団員の前に数多の羽根が舞っていると視覚することも出来なく、ユリアンの刀の鞘に腹を打たれて倒れる。
隙を見た首領が逃げ出そうとしたが、ユメリアの瞳から逃れることは出来なかった。
盗賊団『タットル』の首領と次点、及び団員の捕縛に成功する。
帰り際、無茶をしたテトへの説教をBGMにハンター達は帰っていった。
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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面白かった! | 17人 |
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【相談】討伐作戦相談所 エステル・ソル(ka3983) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2019/04/26 21:09:12 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/04/26 16:22:43 |