【金糸篇】死出の門出に黄の薔薇を

マスター:三田村 薫

シナリオ形態
シリーズ(続編)
難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,300
参加制限
-
参加人数
3~5人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2019/05/18 22:00
完成日
2019/05/25 02:30

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●And then there were none
 頭が割れるように痛い。
 否、もう割れているのだと言うことを、彼女が気付いていないだけだ。そしてそれは幸いなことであった。単にぶつけたから痛いだけだと思っている彼女は、まだ絶望していないのだから。
 割れた天井から、ぱらぱらと砂埃が落ちてくる。上からは依然、歪虚襲撃の為に人々が逃げ惑う音や悲鳴が聞こえ続けている。
(ママ、どこに行っちゃったのかしら)
 彼女はぼんやりと天井を見つめながら思案する。一緒に逃げようと思って探していたのに、ママはどこにもいない。でも、多分ママは私を探しに来てくれるはずだから、ここでずっと待っていよう。
 もう助からない大怪我だ。意識が残っているのは、神様の残酷な悪戯か。でも、そんなことを彼女は知らない。
(きっと、こんなところにいたのねって、迎えに来てくれるはずなんだから)

 早く迎えにきてね、ママ。

●そして誰も望まなかった
「君たちには、アウグスタが死んだ日に神霊樹ライブラリで飛んでもらう」
 オフィスで、C.J.(kz0273)は集まったハンターたちにそう告げた。
「死んだ日と場所がわかれば、ライブラリで再現できる。何故あんなに迎えにこだわるのか、死亡時の状況からわかるかもしれない。今後の攻略でも役に立つかも」
 そう言って地図を広げた。
「ここからは……生き残りのアルトゥーロが説明する」
「よろしくお願いします」
 亜麻色の髪をした聖導士は地図を見下ろした。
「僕も、二十年前に出たっきりで、当時は七歳でしたから、よくは覚えていません。ただ、アウグスタが石割の家の一人娘だったことは覚えています。あとはほとんど聞いた話になります」
 彼はそう言って、地図の南西を指した。
「過去の資料を調べました。当時、歪虚は南側のここから侵入。道中にいる人間を殺しながら北上。残虐だったのか、嫉妬眷属で執着したのか、狙った人間は追い掛けたようですね。村の中心当りから、東西に広がりました」
 襲われた人間は東西に逃げたのである。
「その内、西の一軒から出火。台所に逃げ込んだ人がその場で殺された……と推測されています。焼死体も残っていたと」
「石割の家はどこに?」
「北ですね。ただ、この家も損壊が激しいので、歪虚たちはここまで達していた筈です。積んであった石が崩れていたのを僕も覚えています」
 地図の一点を指す。
「討伐と救助のハンターが来たのは大分後でしたね。殺されている人を囮にして僕たちは逃げました。司祭様が僕を抱えて連れて行きました。両親はどうなったのかわかりませんでしたが、後で死亡者の欄に名前があって、死んだんだと知りましたね。それから司祭様に引き取られて跡を継ぎました」
「当時の死亡者のリストがこれ」
 C.J.がもう一枚の資料を提示した。死亡者、生存者、行方不明者に分かれている。生存者の欄には「粉挽きのアルトゥーロ」の名前が見える。死亡者欄に「粉挽き」とついた男女の名前が並んでいた。両親らしい。
 そして、行方不明者の中に、見覚えのある名前がある。
「石割のアウグスタ」
 死亡者欄にもやはり石割夫婦の名前があった。
「苗字がなくてね」
 アルトゥーロは首を横に振った。
「家業で呼び分けていましたね。アルトゥーロは何人かいましたが……ええ、当時の概要としてはそんなところです。血の匂いを嗅ぎつけたのか、他の歪虚や野犬なんかも降りてきてね。数少ない生存者を拾って、歪虚は討伐。生き残りの方が少なかったものですから、避難先でそのまま根を下ろして、村は捨てられました。それから二十年間。誰も調査などには入っていないはずです。誰も調査を望みませんでした。アウグスタの生死も」
 アルトゥーロはそれから目を伏せた。
「ええ、死体が見つからなければ、アウグスタはどこかで生きてるかもしれないと思える……当時の大人たちはそう思いたかったようですね。僕もそう思ってましたよ」
 殺されかけるあの日まで。

●過去へ
 阿鼻叫喚の中にハンターたちはいた。そこに男性が逃げてくる。服装からして聖職者だろう。亜麻色の髪をした少年を連れている。彼は、見覚えのない聖職者が喧噪の中でたたずんでいるのを見て声を掛けた。
「あなたは……? いえ、もういくら祈ってもどうにもなりません! 一緒に逃げ……! ああ! いけないアルトゥーロ! 私と一緒にいるんだ……!」
 司祭の手から離れた少年は走って行った。しかし、小柄な獲物を雑魔が放って置くわけもない。すぐに一匹が彼に追いすがって……その胴体を噛みつぶした。司祭は悲鳴を上げて頭を抱える。
「申し訳ありません」
 アルトゥーロはまつげを伏せて囁く。脊髄反射でぴくぴくと動く、幼い自分の指先。命の失われる白い手。
「僕たちは助けに来たわけではないのです」

リプレイ本文

●移動
「まあ、アウグスタの死を調べるにあたって、襲撃があっただろう生家の確認は外せないよネ!」
 見るからに武装しているのに気付かれて、助けを求められても厄介だ。フワ ハヤテ(ka0004)は物陰に移動しながら他のハンターたちにそう提案する。周囲は既に阿鼻叫喚。幼いアルトゥーロの死体はもう原型を留めていないし、そのために逃げ遅れた司祭も既に息はない。
「助けを求められると間に合わない可能性があります。こちらから行きましょう」
 そう言って、アルトゥーロは人目に付かない、住宅裏の細い道を通った。
「案外覚えてるものだね」
 ハヤテは感心したように言う。
「過去、といっても作り物なのだよな……」
 レイア・アローネ(ka4082)はきょろきょろと周囲を見回した。
「ここにこうしてくると俄かには信じ辛い所もあるが。ここまでリアルではな」
 それから、聞いたことのある音に眉を寄せる。肉が裂ける音だ。そして悲鳴。恐怖ではなくて痛みの。
「……助けたい気持ちもあるけど、ここで何をしても現実は変わらない。今は依頼目的に集中しよう」
 鞍馬 真(ka5819)は、ちらりと悲鳴のした方に目をやってから、また前を向く。
「なるべく倒しちゃいけないのよね」
 イリアス(ka0789)も銃を構えながら、一行について前進した。
「アウグスタの最期、か……」
 レオン(ka5108)は周囲を警戒しながら、先日のからくり屋敷で聞いた、アウグスタの絶叫を思い出した。
「この前の彼女の悲鳴は本物だった…あれが手掛りになるのかな」
「お迎えをあんなに待っているのって、それは自分ではどこにも行けなかったから、だったんじゃないかしらね」
 その呟きに、イリアスが応じた。
「もし、彼女の力ではどうしようもないところに、ずっと閉じ込められていたのだとしたら」
 それこそ、落とし穴のような所だ。
「だとしたら……酷い事を言ってしまったかもしれない」
 レオンは呟いた。落とし穴は楽しかったかい? 前回、上がってきたアウグスタを出迎えて、レオンはそう言い放ったからだ。
「ここまでリアルな再現だと、ここで助ける事はできないか、ってつい思ってしまうよね。けれど、ここでの彼女を助けてもそれは現実にはならない」
 現実の彼女は亡くなり、歪虚と化して今も脅威となっている。それが現実。
「目を逸らす事はできない。決して」

●石割の家へ
 裏道を通ったおかげで、群の狼には出会わなかった。しかし、狼に追われた住人がこちらに逃げてきたのはさすがに困った。助けを求められた上に、狼がハンターたちにも狙いを付けたからである。三頭。
「あまり減らしてしまい、あった出来事を変えてしまう訳にもいかないな……」
「ああ、だったら見せしめにすれば良いのさ」
 ハヤテは軽い調子で言うと、集中してからアブソリュートゼロを放った。真も、攻めの構えを取り、マテリアルを纏わせた剣による斬撃を放つ。全力の集中砲火を受けて、歪虚の狼はすぐに塵に返った。
 圧倒的な力の差に、残った方はたじろいだ。レイアが前に出る。
「どうする? まだやるか?」
 人語を解したわけではないだろうが、敵わないと悟ったのか、狼はそのまま踵を返して逃げていく。
「うんうん。力の差をわきまえてくれていると楽だね!」
「あの、あなたたちは……」
「石割の家はどちらですか? 北の方にあると聞きましたが」
 レオンが尋ねると、その住人はすぐに一方を指差した。
「あちらです。アウグスタは遊びに出ているからわかりませんが、まだご主人がいるはずです」
「わかりました。そちらは僕たちが助けに行きます。任せてください」
 レオンは微笑んで、そう告げた。
「あなたはあちらへ。さあ、逃げて」
「お、お願いします……アウグスタを見たら保護してください」
 この人が、本当は死ぬはずだったのか、それともここで逃がしても死ぬ定めなのか、あるいはこの回では助かるのか。それはわからない。それでもできることなら無事でいて欲しい、と見送った。

●落下
 やがて、アルトゥーロが裏道から表にハンターたちを誘導した。一軒の家を指差す。
「あれが石割の家です」
 なるほど、彼の記憶にあるように、積まれてあったらしい石が崩れていた。ドアは開けっ放しだ。
「アウグスタ」
 レイアが呟く。ハンターたちは、慌てて来た道を引き返して物陰に隠れた。
 小柄な少女が息を切らせて走って来る。茶髪の八歳程度の少女……アウグスタだ。
「ママ! パパ! どこ行っちゃったの?」

 真はモフロウを手に乗せると、ファミリアズアイで視覚を共有した。そのまま飛ばし、アウグスタの後を追わせる。アウグスタは何のためらいもなく家に飛び込んだ。

 モフロウが見た光景は次のようなものだ。アウグスタは玄関からまっすぐに居間らしき部屋に向かおうとして、立ち止まった。居間の入り口には、おびただしい血と格闘の跡があるからだ。
 居間を覗き込むと、倒れた誰かの脚が見える。動かない。それから、毛深い獣の脚。アウグスタはそろそろと近寄ろうとして……そしてがくっとその体が下がった。

 悲鳴は真たちのところまで届かなかった。上げる間もなかったのかもしれない。一瞬の出来事。アウグスタは滑り落ちた。アウグスタがそこにいたこと自体がなかったかのように、彼女の姿は消えた。よく見ると、子ども一人なら落ちてしまうような割れ目がある。

「……居間の入り口が割れてる。そこから落ちたよ」
「なるほどなるほど。地下に落ちたと言うわけだ。それならあの悲鳴も納得だね」
 ハヤテはうんうんと頷いている。真はモフロウを呼び戻した。
「フワさん、蓄音石は……」
「蓄音石はすまない! 探したんだがなんか駄目だったね! 駄目だった!!」
「えっ……」
 真はモフロウを手に乗せたまま、目を瞬かせる。しかし何度瞬かせたところで、見えるのはモフロウが見ている自分の顔だった。
「そ、そうなんだ……それなら仕方ないね……とりあえず見届けるだけでも……」
「待って」
 それを制したのはイリアスだった。彼女は荷物を開けると、紋様の刻まれた石を取り出す。
「私が持ってるわ」
「いやー! 準備が良いね、イリアス! ありがたく借りようじゃないか!」
「うん。そうしよう」
 レオンがガウスジェイルを張りながら頷いた。
「時間がない」

●アウグスタ死亡時の様子(最初の一分間は蓄音石に録音された音声資料による)
「なぁに?」
 アウグスタはか細い声で、下りてきた鳥に話しかけた。
「助けに来てくれたの?」
 既に、彼女の頭の下に液体が広がっていた。暗くてはっきりとは見えないが、状況からして血液だろう。
(これは……助からない)
 真はその様子を見ながら唇を引き結んだ。もちろん、今歪虚になっているのだから、ここで生き延びる筈はない。彼女は気付いているのだろうか。
「あなたも逃げる途中なの? 私ね、ママが見当たらなくてね」
 仰向けに倒れたまま、起き上がる様子はない。指先も、脚も、ぴくりとも動かない。
「もうちょっとこっち来て。起きれないの」
 この時、真に音は聞こえていないので、ただ見つめているだけだった。アウグスタは、鳥に言葉が通じる筈ないと思い直したのか、ふうと息を吐いた。視線だけ天井に向ける。
「ママ、早く迎えに来てくれないかなぁ」
 それは嫉妬も恨みもない、ただ無邪気に親の迎えを待つ少女の声。母親が来ることを信じて疑っていない。
「ママが来てくれれば大丈夫なんだから」
 そんなわけはない。体も動かせないような大怪我。手当でどうにかなるレベルを超えている。

 少しずつ、呼吸の回数が減っていった。蓄音石の時間はその間に切れたようで、それ以上録音されていなかった。何かを呟いているアウグスタの姿だけが見える。彼女はじっとモフロウの目を見ている。真はそれを通してその視線を受けている。

 ゆっくりとまぶたが落ちて行った。不完全に閉じられた、虚ろな視線がずっとこちらを捉えている。真は息を詰めた。わずかに上下する胸が完全に止まるのを待っている。

 どれくらい時間が経っただろうか。気が付くと、アウグスタは完全に動かなくなっていた。全ての生きる力を失って、指先もだらりと垂れ下がり、口が半開きになっている。顔色は、薄暗い中でも血の気が失せているのがはっきりとわかった。

 そこで真はモフロウを呼び戻した。仲間達に告げる。
「終わったよ」

●死出の門出に黄の薔薇を
 アウグスタが事切れたのを確認し、真のモフロウが戻って来ると、レオンを始めとしたハンターたちは、寄ってきていた雑魔を排除するように動き出した。アウグスタが死んだ以上、もう雑魔を減らしても問題ないだろう。
 ガウスジェイルと盾のイージスで守っていたレオンは攻勢に転じた。刺突一閃に全ての力を込める。レイアの衝撃波が、カバーするように飛んだ。回避しようとする敵にはイリアスの牽制射撃が飛ぶ。
 家の中から狼が飛び出した。口元が血まみれだ。唸りながら寄ってくるのを見て、
「いやいや、ボクたちなんか食べたって美味しくないと思うんだよね。悪食だね」
 ハヤテがマジックアローを放つ。
「言ってる場合じゃないわよ、ハヤテさん」
 リロードしながらイリアスが言った。

 周辺の敵を殲滅すると、一行は家に入った。奥では、かなり損壊した遺体があった。
「アウグスタの父親ですね」
 アルトゥーロが言う。これが石割の主らしい。
 レオンは地下への階段をこじ開けた。灯火の水晶球を持ったハヤテが先頭になって下りていく。割れ目から飛び降りようとしたが……長身なりに体格の良い彼では無理だったのだ。
「やあやあ、すまないね」
 朗らかに礼を述べながら、とんとんと階段を降りていく。
「こりゃすごい。蜘蛛の巣だらけだ。こんなところで死んでからもお迎えを待っていれば、そりゃ蜘蛛も可愛くなるってもんだね」
 彼の言うとおり、地下室はあまり手入れがされておらず、蜘蛛の巣が張られている。
 割れた天井の下にアウグスタはいた。最後に見えた時のままだ。ハヤテはすたすたと近寄ると、水晶球で照らしながら、血が流れ出しているであろう後頭部を検めた。
「ああ、割れているね」
 さらりと告げる。
「うんうん、どう見てもこれが致命傷だね。いやー、これはひどい。石割の家で頭を割るなんて。這い上がるための蜘蛛の糸は垂らされなかったというわけだ。いや、垂らされても登れなかっただろうけどね! しかしよく見つからなかったな。よっぽど見付けたくなかったんだろう」
 血が付くのもお構いなしに調べ続ける。
 イリアスは、蓄音石の紋様をなぞった。アウグスタの最後の声を再現する。弱々しい少女の声は、彼女も聞いたことがないようなもの。
「ここでお迎えを待っていたのね」
「そうだな……」
 レイアはそれを聞きながら眉を寄せてアウグスタに近寄った。ハヤテの言うように、後頭部に大きな裂傷がある。
「許せ……私達は君を救えない」
 少し開いていたまぶたを閉じてやる。
「出来るのは眠らせてやる事だけだ……」
 蜘蛛が、ブーツの甲を上っていく。
 這い上がるように。

●帰還
 レオンが目を開けると、そこは過去に飛ぶために寝かされたベッドの上だった。どうやら、無事に戻って来られたらしい。ゆっくりと起き上がる。同行者たちも三々五々起き上がった。ハヤテとアルトゥーロを除く他の三人は、少し考え込むような顔をしている。自分も似たようなものだろう。
 いくら今は歪虚だとしても、見たものが過去の映像であったとしても、あの遺体を見てしまうと、どうしても何かしら感じずにはいられなくなる。もちろん、それで手抜きをするようなハンターたちではない。ただ、彼らにも感情はある。自分と恩人が死んだところを見てしまったアルトゥーロは少なからず堪えたようだ。
 ハヤテだけは普段通りに見えた。ベッドから降りて出て行くと、待機していたC.J.に声を掛ける。
「やあやあ、待たせたね。終わったよ。鞍馬が一から十まで見守っていてくれた。重畳だよ」
「大丈夫か、君たち」
「ボクはね」
 C.J.は部屋を覗き込む。
「……真、レイア、大丈夫?」
「大丈夫だよ……」
「ああ……大丈夫だ」
「イリアスとレオンは?」
「うん、大丈夫よ」
「僕も大丈夫」
「アルトゥーロは?」
「なんとか」
「それじゃ報告会と行こう。鞍馬、しゃべれるかい?」
「真、無理しなくて良い。落ち着いてからで」
「大丈夫」
 真は立ち上がる。
「確かに気分の良いものじゃなかったし、可哀想だとは思う。けれど、今の彼女は歪虚だ。私が見たものが今後、討伐に役立つなら私はちゃんと見届けるし、見届けてきたよ」
「そう……? いや、君のプロ意識を疑ってる訳じゃないけど」
 死に様を見てこいと言った手前後ろめたいのだろう。当事者のアルトゥーロが不気味なほど静かなのも気になるに違いない。

●報告
 アルトゥーロが静かなまま、ハンターたちはアウグスタの死亡時の様子について語った。主に真がアウグスタの様子を、ハヤテが現場や死体の状態を、他の三人は村の様子についてだ。
「そうか」
 C.J.は聞き終えて、頷く。
「当時のまま、みたいだね」
「うん。間違いないと思う。現場には蜘蛛もいたし、アウグスタは母親の迎えを待っていた。現在の彼女に合致する、と思う」
「そうだね。なるほど。それで蜘蛛なのか……いつ歪虚として起き上がったのか知らないけど、きっと死んでからもずっと傍にいたのが蜘蛛だけだったんだね……」
「そうね。それで蜘蛛をあんなに可愛がっているんだわ」
 イリアスが頷く。レイアも腕を組んで、
「恐れている様子はないからな、むしろこき使っている」
「私の傍にいてくれるもの、私の為になってくれるもの、という認識かもしれないね」
 レオンも思案げに呟いた。
「一途なところもあるじゃないか! 嫉妬は飽きっぽいとも言うけどね、蜘蛛に関しては非常に一途だ。いや、執着なのかな?」
 頬杖を突き、片目をつむりながらハヤテが言う。
「そう、執着なのかもしれない。一緒に迎えを待っていてくれた蜘蛛への」
 真は呟くと、出された紅茶を一気に呷った。
 話している間、手を付けていなかったそれは、ぬくもりが消えていた。

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参加者一覧

  • THE "MAGE"
    フワ ハヤテ(ka0004
    エルフ|26才|男性|魔術師
  • 金糸篇読了
    イリアス(ka0789
    エルフ|19才|女性|猟撃士
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人
  • 死者へ捧ぐ楽しき祈り
    レオン(ka5108
    人間(紅)|16才|男性|闘狩人

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
鞍馬 真(ka5819
人間(リアルブルー)|22才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2019/05/18 21:18:54
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/05/13 23:46:27