ゲスト
(ka0000)
【金糸篇】死出の門出に黄の薔薇を
マスター:三田村 薫

- シナリオ形態
- シリーズ(続編)
関連ユニオン
魔術師協会広報室- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,300
- 参加人数
- 現在5人 / 3~5人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2019/05/18 22:00
- リプレイ完成予定
- 2019/05/27 22:00
オープニング
●And then there were none
頭が割れるように痛い。
否、もう割れているのだと言うことを、彼女が気付いていないだけだ。そしてそれは幸いなことであった。単にぶつけたから痛いだけだと思っている彼女は、まだ絶望していないのだから。
割れた天井から、ぱらぱらと砂埃が落ちてくる。上からは依然、歪虚襲撃の為に人々が逃げ惑う音や悲鳴が聞こえ続けている。
(ママ、どこに行っちゃったのかしら)
彼女はぼんやりと天井を見つめながら思案する。一緒に逃げようと思って探していたのに、ママはどこにもいない。でも、多分ママは私を探しに来てくれるはずだから、ここでずっと待っていよう。
もう助からない大怪我だ。意識が残っているのは、神様の残酷な悪戯か。でも、そんなことを彼女は知らない。
(きっと、こんなところにいたのねって、迎えに来てくれるはずなんだから)
早く迎えにきてね、ママ。
●そして誰も望まなかった
「君たちには、アウグスタが死んだ日に神霊樹ライブラリで飛んでもらう」
オフィスで、C.J.(kz0273)は集まったハンターたちにそう告げた。
「死んだ日と場所がわかれば、ライブラリで再現できる。何故あんなに迎えにこだわるのか、死亡時の状況からわかるかもしれない。今後の攻略でも役に立つかも」
そう言って地図を広げた。
「ここからは……生き残りのアルトゥーロが説明する」
「よろしくお願いします」
亜麻色の髪をした聖導士は地図を見下ろした。
「僕も、二十年前に出たっきりで、当時は七歳でしたから、よくは覚えていません。ただ、アウグスタが石割の家の一人娘だったことは覚えています。あとはほとんど聞いた話になります」
彼はそう言って、地図の南西を指した。
「過去の資料を調べました。当時、歪虚は南側のここから侵入。道中にいる人間を殺しながら北上。残虐だったのか、嫉妬眷属で執着したのか、狙った人間は追い掛けたようですね。村の中心当りから、東西に広がりました」
襲われた人間は東西に逃げたのである。
「その内、西の一軒から出火。台所に逃げ込んだ人がその場で殺された……と推測されています。焼死体も残っていたと」
「石割の家はどこに?」
「北ですね。ただ、この家も損壊が激しいので、歪虚たちはここまで達していた筈です。積んであった石が崩れていたのを僕も覚えています」
地図の一点を指す。
「討伐と救助のハンターが来たのは大分後でしたね。殺されている人を囮にして僕たちは逃げました。司祭様が僕を抱えて連れて行きました。両親はどうなったのかわかりませんでしたが、後で死亡者の欄に名前があって、死んだんだと知りましたね。それから司祭様に引き取られて跡を継ぎました」
「当時の死亡者のリストがこれ」
C.J.がもう一枚の資料を提示した。死亡者、生存者、行方不明者に分かれている。生存者の欄には「粉挽きのアルトゥーロ」の名前が見える。死亡者欄に「粉挽き」とついた男女の名前が並んでいた。両親らしい。
そして、行方不明者の中に、見覚えのある名前がある。
「石割のアウグスタ」
死亡者欄にもやはり石割夫婦の名前があった。
「苗字がなくてね」
アルトゥーロは首を横に振った。
「家業で呼び分けていましたね。アルトゥーロは何人かいましたが……ええ、当時の概要としてはそんなところです。血の匂いを嗅ぎつけたのか、他の歪虚や野犬なんかも降りてきてね。数少ない生存者を拾って、歪虚は討伐。生き残りの方が少なかったものですから、避難先でそのまま根を下ろして、村は捨てられました。それから二十年間。誰も調査などには入っていないはずです。誰も調査を望みませんでした。アウグスタの生死も」
アルトゥーロはそれから目を伏せた。
「ええ、死体が見つからなければ、アウグスタはどこかで生きてるかもしれないと思える……当時の大人たちはそう思いたかったようですね。僕もそう思ってましたよ」
殺されかけるあの日まで。
●過去へ
阿鼻叫喚の中にハンターたちはいた。そこに男性が逃げてくる。服装からして聖職者だろう。亜麻色の髪をした少年を連れている。彼は、見覚えのない聖職者が喧噪の中でたたずんでいるのを見て声を掛けた。
「あなたは……? いえ、もういくら祈ってもどうにもなりません! 一緒に逃げ……! ああ! いけないアルトゥーロ! 私と一緒にいるんだ……!」
司祭の手から離れた少年は走って行った。しかし、小柄な獲物を雑魔が放って置くわけもない。すぐに一匹が彼に追いすがって……その胴体を噛みつぶした。司祭は悲鳴を上げて頭を抱える。
「申し訳ありません」
アルトゥーロはまつげを伏せて囁く。脊髄反射でぴくぴくと動く、幼い自分の指先。命の失われる白い手。
「僕たちは助けに来たわけではないのです」
頭が割れるように痛い。
否、もう割れているのだと言うことを、彼女が気付いていないだけだ。そしてそれは幸いなことであった。単にぶつけたから痛いだけだと思っている彼女は、まだ絶望していないのだから。
割れた天井から、ぱらぱらと砂埃が落ちてくる。上からは依然、歪虚襲撃の為に人々が逃げ惑う音や悲鳴が聞こえ続けている。
(ママ、どこに行っちゃったのかしら)
彼女はぼんやりと天井を見つめながら思案する。一緒に逃げようと思って探していたのに、ママはどこにもいない。でも、多分ママは私を探しに来てくれるはずだから、ここでずっと待っていよう。
もう助からない大怪我だ。意識が残っているのは、神様の残酷な悪戯か。でも、そんなことを彼女は知らない。
(きっと、こんなところにいたのねって、迎えに来てくれるはずなんだから)
早く迎えにきてね、ママ。
●そして誰も望まなかった
「君たちには、アウグスタが死んだ日に神霊樹ライブラリで飛んでもらう」
オフィスで、C.J.(kz0273)は集まったハンターたちにそう告げた。
「死んだ日と場所がわかれば、ライブラリで再現できる。何故あんなに迎えにこだわるのか、死亡時の状況からわかるかもしれない。今後の攻略でも役に立つかも」
そう言って地図を広げた。
「ここからは……生き残りのアルトゥーロが説明する」
「よろしくお願いします」
亜麻色の髪をした聖導士は地図を見下ろした。
「僕も、二十年前に出たっきりで、当時は七歳でしたから、よくは覚えていません。ただ、アウグスタが石割の家の一人娘だったことは覚えています。あとはほとんど聞いた話になります」
彼はそう言って、地図の南西を指した。
「過去の資料を調べました。当時、歪虚は南側のここから侵入。道中にいる人間を殺しながら北上。残虐だったのか、嫉妬眷属で執着したのか、狙った人間は追い掛けたようですね。村の中心当りから、東西に広がりました」
襲われた人間は東西に逃げたのである。
「その内、西の一軒から出火。台所に逃げ込んだ人がその場で殺された……と推測されています。焼死体も残っていたと」
「石割の家はどこに?」
「北ですね。ただ、この家も損壊が激しいので、歪虚たちはここまで達していた筈です。積んであった石が崩れていたのを僕も覚えています」
地図の一点を指す。
「討伐と救助のハンターが来たのは大分後でしたね。殺されている人を囮にして僕たちは逃げました。司祭様が僕を抱えて連れて行きました。両親はどうなったのかわかりませんでしたが、後で死亡者の欄に名前があって、死んだんだと知りましたね。それから司祭様に引き取られて跡を継ぎました」
「当時の死亡者のリストがこれ」
C.J.がもう一枚の資料を提示した。死亡者、生存者、行方不明者に分かれている。生存者の欄には「粉挽きのアルトゥーロ」の名前が見える。死亡者欄に「粉挽き」とついた男女の名前が並んでいた。両親らしい。
そして、行方不明者の中に、見覚えのある名前がある。
「石割のアウグスタ」
死亡者欄にもやはり石割夫婦の名前があった。
「苗字がなくてね」
アルトゥーロは首を横に振った。
「家業で呼び分けていましたね。アルトゥーロは何人かいましたが……ええ、当時の概要としてはそんなところです。血の匂いを嗅ぎつけたのか、他の歪虚や野犬なんかも降りてきてね。数少ない生存者を拾って、歪虚は討伐。生き残りの方が少なかったものですから、避難先でそのまま根を下ろして、村は捨てられました。それから二十年間。誰も調査などには入っていないはずです。誰も調査を望みませんでした。アウグスタの生死も」
アルトゥーロはそれから目を伏せた。
「ええ、死体が見つからなければ、アウグスタはどこかで生きてるかもしれないと思える……当時の大人たちはそう思いたかったようですね。僕もそう思ってましたよ」
殺されかけるあの日まで。
●過去へ
阿鼻叫喚の中にハンターたちはいた。そこに男性が逃げてくる。服装からして聖職者だろう。亜麻色の髪をした少年を連れている。彼は、見覚えのない聖職者が喧噪の中でたたずんでいるのを見て声を掛けた。
「あなたは……? いえ、もういくら祈ってもどうにもなりません! 一緒に逃げ……! ああ! いけないアルトゥーロ! 私と一緒にいるんだ……!」
司祭の手から離れた少年は走って行った。しかし、小柄な獲物を雑魔が放って置くわけもない。すぐに一匹が彼に追いすがって……その胴体を噛みつぶした。司祭は悲鳴を上げて頭を抱える。
「申し訳ありません」
アルトゥーロはまつげを伏せて囁く。脊髄反射でぴくぴくと動く、幼い自分の指先。命の失われる白い手。
「僕たちは助けに来たわけではないのです」
解説
●目的
石割の娘アウグスタの死亡を見届ける
●概要
神霊樹ライブラリを利用して「20年前の歪虚事件」のまっただ中に飛んでいる。
必要なことは、
1.石割の娘アウグスタを見付けること
2.彼女の死亡を当時のまま見届けること
●村について
南北に楕円の地図を描ける村。
雑魔は南から侵入し、逃げ惑う村民を追って北上。そのまま各々が目を付けた犠牲者を死ぬまで追い掛け続けた。
また西の一軒から出火しており、数棟に延焼している。
アウグスタの住んでいた家は北側にある。
●石割の家について
アウグスタの生家。地下室があり、階段に繋がる扉は壊れて開かない(筋力を用いた一般行為判定難易度3で開けることができる)。
また、居間を入ったところで激しい格闘の跡とおびただしい血の跡があり、床板が割れている。子どもなら入ってしまいそうな亀裂だ。
石割の主は居間の奥で失血死しており、雑魔もまだ死体の傍にいる。
●敵情報
狼型雑魔×30
噛み付く、ひっかく等をして攻撃を行なう。
足が速く、狙われた人間はほぼ逃げ切れない。一度定めた獲物を追い掛ける傾向にあるが、敵わないと思えば退却する。
●注意
アウグスタの死亡は「歪虚事件」の結果です。
ある程度歪虚を減らす分には問題ありませんが、最終的にライブラリの中のアウグスタが「当時の通り死亡」するように仕向ける必要があります。
歪虚を減らしすぎると、そもそも「アウグスタが生き残る」結果に終わる可能性もあり、その場合シナリオの成否としては「失敗」となります。
またアウグスタの行動に介入して生存させても、違う死に方をさせても「失敗」となります。
一人でもプレイングで「助ける」「手を出す」とした場合は介入が成立しますので、事前にお話し合いをお勧めします。
目的はあくまでも「アウグスタの死亡の状況を突き止めること」であることをお忘れなく。
石割の娘アウグスタの死亡を見届ける
●概要
神霊樹ライブラリを利用して「20年前の歪虚事件」のまっただ中に飛んでいる。
必要なことは、
1.石割の娘アウグスタを見付けること
2.彼女の死亡を当時のまま見届けること
●村について
南北に楕円の地図を描ける村。
雑魔は南から侵入し、逃げ惑う村民を追って北上。そのまま各々が目を付けた犠牲者を死ぬまで追い掛け続けた。
また西の一軒から出火しており、数棟に延焼している。
アウグスタの住んでいた家は北側にある。
●石割の家について
アウグスタの生家。地下室があり、階段に繋がる扉は壊れて開かない(筋力を用いた一般行為判定難易度3で開けることができる)。
また、居間を入ったところで激しい格闘の跡とおびただしい血の跡があり、床板が割れている。子どもなら入ってしまいそうな亀裂だ。
石割の主は居間の奥で失血死しており、雑魔もまだ死体の傍にいる。
●敵情報
狼型雑魔×30
噛み付く、ひっかく等をして攻撃を行なう。
足が速く、狙われた人間はほぼ逃げ切れない。一度定めた獲物を追い掛ける傾向にあるが、敵わないと思えば退却する。
●注意
アウグスタの死亡は「歪虚事件」の結果です。
ある程度歪虚を減らす分には問題ありませんが、最終的にライブラリの中のアウグスタが「当時の通り死亡」するように仕向ける必要があります。
歪虚を減らしすぎると、そもそも「アウグスタが生き残る」結果に終わる可能性もあり、その場合シナリオの成否としては「失敗」となります。
またアウグスタの行動に介入して生存させても、違う死に方をさせても「失敗」となります。
一人でもプレイングで「助ける」「手を出す」とした場合は介入が成立しますので、事前にお話し合いをお勧めします。
目的はあくまでも「アウグスタの死亡の状況を突き止めること」であることをお忘れなく。
マスターより
こんにちは三田村です。
【金糸篇】第二話をお届けします。
ちょっと面倒な内容なんですけど雑魔に襲われても防戦すれば数を減らさずに追い払えます。
暴れ倒して殲滅してくださいと言えないのが非常に心苦しいです。
余談ですが、アウグスタを黄色でまとめているのは、黄色い薔薇の花言葉に「嫉妬」があることから来ていたりします。
今回もよろしくお願いします。
【金糸篇】第二話をお届けします。
ちょっと面倒な内容なんですけど雑魔に襲われても防戦すれば数を減らさずに追い払えます。
暴れ倒して殲滅してくださいと言えないのが非常に心苦しいです。
余談ですが、アウグスタを黄色でまとめているのは、黄色い薔薇の花言葉に「嫉妬」があることから来ていたりします。
今回もよろしくお願いします。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2019/05/25 02:30
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 鞍馬 真(ka5819) 人間(リアルブルー)|22才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2019/05/18 21:18:54 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/05/13 23:46:27 |