ゲスト
(ka0000)
【幻想】DEATH RESPECT
マスター:近藤豊

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2019/05/15 22:00
- 完成日
- 2019/05/22 19:28
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
※要注意
当依頼は猫又SSDの依頼『【幻想】辿り着いた果て』の直前に行われるシナリオになります。
両依頼に参加された場合、当依頼終了後に猫又SSDの依頼へ駆けつける形になる為、猫又SSDの依頼には『途中から参加した』という扱いになります。
その点ご注意下さい。
「厄介事を押しつけおって……西のキツネめ」
マギア砦の二階で三条家軍師の水野 武徳(kz0196)は、一人呟いていた。
周辺では大砲の設置が進み、戦前の緊張感に包まれていた。
東方――エトファリカ連邦国で復興に忙しいはずの武徳が辺境の地へ赴いた理由。それは辺境の危機もあるが、ヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)からの召喚であった。
「何が面白い物を見せてやる、じゃ。まあ、確かに普通は拝めぬ光景よのう」
マギア砦の前に設置される馬防柵。その馬防柵を建設しているのは他ならぬ怠惰眷属の巨人。今回青髯討伐に名乗りを上げたのは人間だけではない。和平交渉中の歪虚側も青髯討伐の為に協力してくれる事になった。
「頭から信用する訳にはいかんが、利用はさせてもらうかの。
よいか、皆の者。この砦の眼前を青髯は通過する。そこを徹底的に叩く。倒せると思うな。後続の負担を減らす為に体力を削り取るのじゃ」
今回の策は特定ポイントで青髯の体力を削っていくものだ。
武徳はマギア砦北に現れた青髯がホープを目指して移動していく事を知るや、マギア砦二階に多数の大砲を設置。さらに地上には馬防柵を築き上げて分体の強襲を防ぐ。
既に二階は旧式の大砲を取り外され、新品のバリスタや大型の魔導砲、小型マテリアル砲など複数の大砲が設置されている。
「敵の攻撃は分からんが、砦そのものを無視するにしても無抵抗とは考えにくい。砲撃する以上、砦の守備も怠ってはならんぞ」
「分かってる。頼んだぜ、ハンター。こっちは辺境ドワーフを引き連れて新型大砲を持ってきたんだからな」
辺境ドワーフの王ヨアキム(kz0011)はハンター達へ呼び掛ける。
今回二階へ持ち込んだ多くの兵器は辺境ドワーフがかき集めた物だ。これで青髯の体力を何処まで削れるかは分からない。だが、可能な限りここで体力を削らなければならない。
砦の外部から砲撃に合わせてハンター側も砲撃に参加可能だが、攻撃すれば青髯も相応の抵抗はあるだろう。
二階で砲撃するヨアキムも青髯の攻撃には注意払わざるを得ない。
「一階の分体は俺っちとピリカ部隊に任せろ。巨人の連中も馬防柵の中から射撃で支援するらしいからな」
階下からはテルル(kz0218)の声が聞こえる。
一階ではテルルがピリカ部隊と共に砦を襲撃する分体を対応する。
馬防柵を建設して武装巨人が射撃により分体を攻撃。その側面からピリカ部隊が前へ出て分体を叩く手筈だ。背後を巨人から狙われるリスクがあるが、テルルは敢えて挙手をした。あの青髯を倒さなければ平和は訪れない。その為には歪虚だって利用する気構えだ。
「危険と判断すれば巨人達も前へ出るように伝えてある。存分に戦うが良い。
さて……わしの準備は完了じゃが、そちらはどうかのう。西のキツネよ」
●
「東のたぬきのおかげで人材不足は補えそうです」
ラズモネ・シャングリラのブリッジでヴェルナーは胸を撫で下ろしていた。
先の怠惰王討伐戦で部族会議大首長のバタルトゥ・オイマト(kz0023)が負傷。意識不明の状態が続いている。部族会議はイェルズ・オイマト(kz0143)がバタルトゥの代行として奮起しているが、若さもあってやや心配な面もある。ヴェルナーとしては最終防衛戦を護るイェルズの為にもここで可能な限り青髯にダメージを与えておきたい。
「ヴェルナーさん。あたくし達はここで良いザマスか?」
ラズモネ・シャングリラ艦長森山恭子(kz0216)は、先程からヴェルナーの傍らに付き添っている。少しでもイケメンの恩恵を受けたいとでも考えているのだろうか。
「はい。マギア砦を通過した青髯はこのナナミ川を渡ります。そこを狙って火力を集中させます」
ヴェルナーは第二の攻撃ポイントをナナミ川と定めていた。
巨体の青髯からみればナナミ川の深さは苦にならない。しかし、川の影響で移動速度は多少なりとも減少する。そこを狙って下流に陣取ったラズモネ・シャングリラが一斉砲撃を浴びせかける手筈だ。
「ドリスキルさんには甲板から砲撃を。八重樫さんはCAM部隊を率いて可能な限り分体の対応をお願いします」
「ああ、任せておけ。今日は乗りに乗ってるんだ。ノミにだって砲弾をぶち込んでやる」
戦車型CAM「ヨルズ」のジェイミー・ドリスキル(kz0231)は、ラズモネ・シャングリラの甲板で青髯を待ち構えていた。相手は巨体だ。何処まで砲弾を叩き込めるかが鍵になる。
「承知した……レオン、シーツ。単独行動は厳禁だ。味方の防衛任務だが、危険を感じたら下がれ」
R7エクスシアでナナミ川沿いを移動する八重樫 敦(kz0056)。
情報では分体は狼の姿であり遠距離攻撃の心配はない。しかし、放置すれば後方の戦線に悪影響を及ぼす恐れもある。可能な限り倒しておきたい存在である。
新兵のレオンとシーツも魔導型デュミナスでハンター達の支援に望む予定だ。
「はい、俺達に任せて下さい」
「今度は失敗しまぜん……絶対に」
(士気は高いか。だが、二人に『あいつ』が来る事は話せないな)
レオンとシーツがやる気十分である点が、八重樫には気がかりだった。
それは青髯ではない。青髯討伐の為に増援として現れる歪虚の方だ。
それはレオンとシーツの同期であるブロックを葬った歪虚――あの機体は二人とも目にしている。あれを目にして果たして平常心でいられるのか。怒りに猛け、攻撃をこちらから仕掛ければ和平交渉に影響もでる。
八重樫は後方の二機に充分な注意を払う他なかった。
●
ナナミ川上流を移動する歪虚CAMの群れ。
ヴェルナーの策に従って上流から青髯を強襲する歪虚CAM部隊。
それを率いるのはマスティマ型歪虚CAM『エンジェルダスト』に乗るブラッドリー(kz0252)であった。
「終末の獣とならず、青髯へ成り下がった愚者。神に刃向かえば、滅びる事になります。神の裁きによって」
ブラッドリー自身は討伐対象を青髯のみに定めている。
青髯を直接攻撃すれば、青髯も相応に抵抗するだろう。
だが、懸念はそれだけではない。
――ハンター達が、戦闘の最中にどう動くのか。
今はハンター達が選び取る時間。こちらから攻撃をするつもりは一切無いが、ハンターが戦いを挑むのであれば対処せざるを得ない。
「天使達が如何様に動くか。それは天使達が決める事。ですが、私は青髯討伐に集中すべきです。
天使達が選択する時間を邪魔する事は、神も望まないでしょう。青髯、この世界にあなたの味方は誰もいません。孤独のまま、忌み嫌われて消滅なさい」
当依頼は猫又SSDの依頼『【幻想】辿り着いた果て』の直前に行われるシナリオになります。
両依頼に参加された場合、当依頼終了後に猫又SSDの依頼へ駆けつける形になる為、猫又SSDの依頼には『途中から参加した』という扱いになります。
その点ご注意下さい。
「厄介事を押しつけおって……西のキツネめ」
マギア砦の二階で三条家軍師の水野 武徳(kz0196)は、一人呟いていた。
周辺では大砲の設置が進み、戦前の緊張感に包まれていた。
東方――エトファリカ連邦国で復興に忙しいはずの武徳が辺境の地へ赴いた理由。それは辺境の危機もあるが、ヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)からの召喚であった。
「何が面白い物を見せてやる、じゃ。まあ、確かに普通は拝めぬ光景よのう」
マギア砦の前に設置される馬防柵。その馬防柵を建設しているのは他ならぬ怠惰眷属の巨人。今回青髯討伐に名乗りを上げたのは人間だけではない。和平交渉中の歪虚側も青髯討伐の為に協力してくれる事になった。
「頭から信用する訳にはいかんが、利用はさせてもらうかの。
よいか、皆の者。この砦の眼前を青髯は通過する。そこを徹底的に叩く。倒せると思うな。後続の負担を減らす為に体力を削り取るのじゃ」
今回の策は特定ポイントで青髯の体力を削っていくものだ。
武徳はマギア砦北に現れた青髯がホープを目指して移動していく事を知るや、マギア砦二階に多数の大砲を設置。さらに地上には馬防柵を築き上げて分体の強襲を防ぐ。
既に二階は旧式の大砲を取り外され、新品のバリスタや大型の魔導砲、小型マテリアル砲など複数の大砲が設置されている。
「敵の攻撃は分からんが、砦そのものを無視するにしても無抵抗とは考えにくい。砲撃する以上、砦の守備も怠ってはならんぞ」
「分かってる。頼んだぜ、ハンター。こっちは辺境ドワーフを引き連れて新型大砲を持ってきたんだからな」
辺境ドワーフの王ヨアキム(kz0011)はハンター達へ呼び掛ける。
今回二階へ持ち込んだ多くの兵器は辺境ドワーフがかき集めた物だ。これで青髯の体力を何処まで削れるかは分からない。だが、可能な限りここで体力を削らなければならない。
砦の外部から砲撃に合わせてハンター側も砲撃に参加可能だが、攻撃すれば青髯も相応の抵抗はあるだろう。
二階で砲撃するヨアキムも青髯の攻撃には注意払わざるを得ない。
「一階の分体は俺っちとピリカ部隊に任せろ。巨人の連中も馬防柵の中から射撃で支援するらしいからな」
階下からはテルル(kz0218)の声が聞こえる。
一階ではテルルがピリカ部隊と共に砦を襲撃する分体を対応する。
馬防柵を建設して武装巨人が射撃により分体を攻撃。その側面からピリカ部隊が前へ出て分体を叩く手筈だ。背後を巨人から狙われるリスクがあるが、テルルは敢えて挙手をした。あの青髯を倒さなければ平和は訪れない。その為には歪虚だって利用する気構えだ。
「危険と判断すれば巨人達も前へ出るように伝えてある。存分に戦うが良い。
さて……わしの準備は完了じゃが、そちらはどうかのう。西のキツネよ」
●
「東のたぬきのおかげで人材不足は補えそうです」
ラズモネ・シャングリラのブリッジでヴェルナーは胸を撫で下ろしていた。
先の怠惰王討伐戦で部族会議大首長のバタルトゥ・オイマト(kz0023)が負傷。意識不明の状態が続いている。部族会議はイェルズ・オイマト(kz0143)がバタルトゥの代行として奮起しているが、若さもあってやや心配な面もある。ヴェルナーとしては最終防衛戦を護るイェルズの為にもここで可能な限り青髯にダメージを与えておきたい。
「ヴェルナーさん。あたくし達はここで良いザマスか?」
ラズモネ・シャングリラ艦長森山恭子(kz0216)は、先程からヴェルナーの傍らに付き添っている。少しでもイケメンの恩恵を受けたいとでも考えているのだろうか。
「はい。マギア砦を通過した青髯はこのナナミ川を渡ります。そこを狙って火力を集中させます」
ヴェルナーは第二の攻撃ポイントをナナミ川と定めていた。
巨体の青髯からみればナナミ川の深さは苦にならない。しかし、川の影響で移動速度は多少なりとも減少する。そこを狙って下流に陣取ったラズモネ・シャングリラが一斉砲撃を浴びせかける手筈だ。
「ドリスキルさんには甲板から砲撃を。八重樫さんはCAM部隊を率いて可能な限り分体の対応をお願いします」
「ああ、任せておけ。今日は乗りに乗ってるんだ。ノミにだって砲弾をぶち込んでやる」
戦車型CAM「ヨルズ」のジェイミー・ドリスキル(kz0231)は、ラズモネ・シャングリラの甲板で青髯を待ち構えていた。相手は巨体だ。何処まで砲弾を叩き込めるかが鍵になる。
「承知した……レオン、シーツ。単独行動は厳禁だ。味方の防衛任務だが、危険を感じたら下がれ」
R7エクスシアでナナミ川沿いを移動する八重樫 敦(kz0056)。
情報では分体は狼の姿であり遠距離攻撃の心配はない。しかし、放置すれば後方の戦線に悪影響を及ぼす恐れもある。可能な限り倒しておきたい存在である。
新兵のレオンとシーツも魔導型デュミナスでハンター達の支援に望む予定だ。
「はい、俺達に任せて下さい」
「今度は失敗しまぜん……絶対に」
(士気は高いか。だが、二人に『あいつ』が来る事は話せないな)
レオンとシーツがやる気十分である点が、八重樫には気がかりだった。
それは青髯ではない。青髯討伐の為に増援として現れる歪虚の方だ。
それはレオンとシーツの同期であるブロックを葬った歪虚――あの機体は二人とも目にしている。あれを目にして果たして平常心でいられるのか。怒りに猛け、攻撃をこちらから仕掛ければ和平交渉に影響もでる。
八重樫は後方の二機に充分な注意を払う他なかった。
●
ナナミ川上流を移動する歪虚CAMの群れ。
ヴェルナーの策に従って上流から青髯を強襲する歪虚CAM部隊。
それを率いるのはマスティマ型歪虚CAM『エンジェルダスト』に乗るブラッドリー(kz0252)であった。
「終末の獣とならず、青髯へ成り下がった愚者。神に刃向かえば、滅びる事になります。神の裁きによって」
ブラッドリー自身は討伐対象を青髯のみに定めている。
青髯を直接攻撃すれば、青髯も相応に抵抗するだろう。
だが、懸念はそれだけではない。
――ハンター達が、戦闘の最中にどう動くのか。
今はハンター達が選び取る時間。こちらから攻撃をするつもりは一切無いが、ハンターが戦いを挑むのであれば対処せざるを得ない。
「天使達が如何様に動くか。それは天使達が決める事。ですが、私は青髯討伐に集中すべきです。
天使達が選択する時間を邪魔する事は、神も望まないでしょう。青髯、この世界にあなたの味方は誰もいません。孤独のまま、忌み嫌われて消滅なさい」
リプレイ本文
「水野様がここまで来るとは思いませんでしたが……水野様がいらっしゃる戦場なら、参加しますよ。私は」
砲撃準備で周囲が慌ただしい中、ハンス・ラインフェルト(ka6750)は三条家軍師の水野 武徳(kz0196)と久しぶりの再会を果たしていた。
青髯と名付けられた異形の怪物と化した青木 燕太郎(kz0166)。
意識を喪失。溜め込んだ膨大な負のマテリアルに翻弄され、人間でも歪虚でも手当たり次第に喰らい続ける存在となっていた。
「部族会議の大首長殿が意識不明らしいからのう。西のキツネめ、まさかわしを頼るとは思わなんだ」
武徳は顎を擦りながら、ヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)からの連絡を思い返す。
事の発端は部族会議大首長のバタルトゥ・オイマト(kz0023)が怠惰王討伐の際に負傷。意識不明の状況が続いている。この事態は部族会議の士気を大きく下げる可能性があった。このままでは青髯討伐どころか、青髯を止める事もままならない。
その状況を重く見たヴェルナーは東方から『東のたぬき』と称して武徳を前線の指揮官を呼び寄せた。
「青髯といったか。そいつはこの南の『ホープ』で暴れる為にこの砦の横を通過する。わしらはこの砦から攻撃を仕掛ける」
「西方での指揮……それも既に計算に入っておられるのでしょう」
ハンスは笑みを浮かべる。
武徳という男が打算なく善意だけで指揮官を引き受ける訳がない。東方もまだまだ騒乱の火種が燻っている。それを放って部族会議を支援するのだから、『相応の対応』を期待してもおかしくない。
「そうじゃのう。まあ、あのキツネもそこは計算済みじゃろう」
「ヴェルナーさん、ヨアキムさんの砲撃準備が整ったそうです」
穂積 智里(ka6819)と共に辺境ドワーフの王ヨアキム(kz0011)がやってきた。
ヨアキムはマギア砦二階へ持ち込んだ多数の砲台で青髯を側面から攻撃を仕掛ける。青髯にとっては通過点に過ぎないマギア砦だが、部族会議からみれば攻撃ポイントの一つ。通過するだけであろうとも可能な限り火力を集中させる。
「いつでもぶっ放せるぜ。あいつにありったけの砲弾を叩き込んでやる」
力強く答えるヨアキム。
辺境ドワーフ特製の新型大砲で青髯の体力を可能な限り削り取る事が狙いだ。
「期待しておるぞ。一階の馬防柵はどうじゃ?」
「設置は間もなく終わります……」
一階の話になった途端、智里の歯切れが悪くなる。
それを察してハンスは武徳へ問いかける。
「敵の敵が味方なのは、敵がいる間だけ。穂積さんが心配するのも無理はありませんが、水野様も把握されていらっしゃるのでしょう?」
「うむ。わしも歪虚が今回の作戦に参加するとは聞いておらんかったからのう。それなりの準備もせねばなるまい」
今回の青髯討伐には思わぬ援軍があった。
人間同様攻撃対象とされている歪虚も今回の作戦に参加する手筈となっていた。マギア砦には武装巨人が現れ、青髯の分体である黒狼への対応を行う予定だ。
「馬防柵で分体を食い止めている間に武装巨人が銃撃を加える。その側面をテルル(kz0218))のピリカ部隊とハンターが突撃する。万一武装巨人が怪しい動きを見せれば、突撃部隊と砦の防衛部隊で挟撃すれば良い」
武徳は流動する状況を利用して作戦を進めていた。
馬防柵の中から武装巨人に銃撃させながら、後方に部族会議やハンターを配置。万一の場合は、前線の一部と挟撃する手筈を整えていた。
「左様ですか。しかし、水野様が倒れられては詩天も食い荒らされてしまいます……御身大事に」
「うむ」
マギア砦に、緊張が走る。
間もなく目標がこの砦を通過する。
その時こそ、部族会議と青髯の開戦である。
●
同時刻。マギア砦周辺。
「目標視認。各班、交戦に備えて」
魔導パイロットインカムを通して斥候からの情報を展開するエラ・“dJehuty”・ベル(ka3142)。
エラにはこの位置からでも分かる。膨大のマテリアルがこちらへ向かって移動しているのが。あの『怪物』が暴れればどうなるか、それは容易に想像ができる。
「止める。これ以上、悲しい想いを増やさない為にも……七竃」
刻令ゴーレム「Volcanius」『七竃』を所定の位置へ移動させる。
既に仲間はマギア砦及びその周辺地域に展開済みだ。青髯がマギア砦に到達した段階で一斉攻撃が開始される。重要な事は限られた時間で如何に効率良く青髯へ攻撃を加えられるか、だ。
(砲部隊への偏差射撃は指示済み。分体対応への防衛線維持は適宜展開……あとは指揮系統)
仲間と連絡網を構築した上で臨機応変に青髯を迎撃する。
同時に万が一を考えて指揮系統の代行を視野に入れていた。相手はあの青髯。マギア砦に興味を持っている様子はないが、もしマギア砦が狙われれば二階へ陣取る武徳やヨアキムに逃げ場はない。最悪な状況を想定して指揮系統のスムーズな移行を具申していた。
(打てる手は打った。被害を可能な限り少なくしたい所だが……)
エラは青髯が近づくにつれて不安が強くなる。
相手は元怠惰王のマテリアルまで吸収して暴走した存在。
人のとしての声も届かない。可能な限り味方の損耗を減らしたいが、そこまで甘い相手ではないだろう。
「各機、危険を感じたら後退。回復支援を要請してくれ。ここで討ち果たす必要は無い。まだ別ポイントの部隊を信じろ」
エラ自身も七竃と共に防衛線を補完しながら負傷者の治療に当たるつもりだ。
この戦場は先陣。まだ後続の部隊が存在する。今は後続を信じて確実に攻撃を当てていく事。それを意識して立ち回る必要がある。
「武運を」
エラはその呟きを口にして通信を一旦終えた。
青髯の息遣いが、間もなくこの地へ訪れる。
●
「何がどう転んだら人間がこんな化物に変身しちまうのかねぇ」
龍宮 アキノ(ka6831)の目に飛び込んできた青髯。
それは完全に人の姿を失った怪物であった。上半身は人間のようだが、腕は複数本生えている。下半身は狼の姿で四足歩行。全身に絡まる黒い鎖を引き摺り、ホープへ向かって全身する。
何がこの怪物を生み出したのか。
人も歪虚もすべてを飲み込まんとする忌むべき存在。望んでその姿になったのかは分からないが、ハンターとしてこの場を黙って通す訳にはいかない。
「分体接近! 迎撃開始」
後方から戦士の声。見れば、青髯の足元から放たれた黒狼がマギア砦に向けて押し寄せる。
情報によれば青髯から生み出される黒狼で、人や歪虚へ襲い掛かるらしい。こんな存在がマギア砦へ雪崩れ込めば、二階は砲撃どころではない。
「早速の来客かい?」
アキノは馬防柵の内側からアイシクルコフィン。無数の氷柱が軌道上の黒狼を貫いていく。そこへ武装巨人達が一斉にアサルトライフルによる銃撃を加えていく。普段はハンターや部族会議へ向けられる銃弾だが、今日ばかりは共同作戦。歪虚の巨人も青髯相手に抵抗を見せている。
(人からも、歪虚からも疎まれる存在。それが『追い求めた』結果なのか)
イェジド『レグルス』の背に乗って黒狼の群れへ突撃した鞍馬 真(ka5819)は、巨体を揺らす青髯を前にそんな考えが浮かんでいた。
怠惰王オーロラの為に強さを求め、のし上がってきた青木。結果的にオーロラの記憶は薄れ、ついにはその手からもこぼれ落ちた。すべてを犠牲にした上、同じ歪虚からも拒絶された青木には、この世界がどう見えているのだろうか。
「…………」
ふいに鞍馬はレグルスの視線に気が付いた。
如何なる事情があるとも、ここは既に戦場。始まってしまった戦いを前に別な事の意識を向けている暇はないはずだ。
レグルスの金色の瞳が、そう鞍馬に言っているような感覚に襲われる。
「そうだった。この戦いで終わらせてやらないとな」
鞍馬はレグルスの背で大鎌「グリムリーパー」を構えた。グリムリーパーは蒼い炎のようなオーラに包まれ、待機の中で揺れているように見える。
そして、鞍馬はグリムリーパーを横へ大きく薙いだ。
次の瞬間、多数の黒狼が宙を舞いながら吹き飛んでいく。
「いや、こりゃ派手にいっちまったねぇ。なら、あたしも負けてられないよ」
再びアイシクルコフィンで黒狼を巻き込むアキノ。できれば青髯にも氷柱を届かせたいが、黒狼の壁は厚い。
この時点で青髯の危険さが徐々に肌で伝わるようになってきた――。
●
「エラさん。bindでは青髯を止められません」
智里はトランシーバーでエラへ状況を報告する。
刻令ゴーレム「Gnome」『ゴーレムさん』の仕掛けていたCモード「bind」は、黒狼に効果はあっても青髯本体を止める事はできない。正確にはかかっているが、bindはすぐに効果を失っている。おそらく、bindが捕らえてもその効果が瞬時に終了しているようだ。
「やはり青木の時よりも強くなっているか。黒狼対応でそのまま戦線を維持して。……ヨアキム様、準備は?」
「充分だ。号令さえありゃいつでも祝砲をぶっ放せるぜ」
ヨアキムは右手の親指を立てる。
辺境ドワーフが製造した新型砲台はQSエンジンを併用する事で砲身の加熱を最低限に抑えられている。この為、砲弾の連続発射にも耐えられる設計となっていた。
「水野様。目標は射程距離に入りました」
「よし。敵に砲弾を馳走してやれい」
武徳は軍配を前へ差し向けた。
次の瞬間、一斉に放たれる砲弾が青髯の体表に向けて突き刺さる。
「……!」
大した砦ではないと本能で考えていた青髯にとって、この砲撃は想定外の攻撃であった。
まさかの反応で視界に砦を入れる。そして右側にあった三本の上で大きく後方へと逸らす。
(何か来る……まさか、衝撃波?)
瞬間にそれを察知したエラは周辺のドワーフ達に向かって指示を飛ばす。
「敵の衝撃波が来る。退避……」
だが、エラは次の言葉を出せなかった。マギア砦二階を衝撃波が襲う。
襲来する強烈な突風。二階のドワーフ達を屠るかと思われたが――。
「危ないなぁ。挨拶にしてはちょっと派手すぎないかい?」
ジュード・エアハート(ka0410)のR7エクスシア『ディアーナ』がフライトフレーム「アディード」で上空へ飛び上がり、ブラストハイロゥを展開。衝撃波を受け止めていた。地上で仲間の支援に勤しんでいたジュードであったが、青髯の怪しい動きを察知して二階の防衛へ入ったようだ。
「直撃は防げたが、完全に防御はできなかったみたいだ」
エラが振り返れば、ブラストハイロゥで防ぎ切れなかった衝撃波を受けたドワーフが床で呻いている。エラは倒れたドワーフを助け起こす。
「衝撃波だけでこの範囲……作戦を修正する必要があるか」
「怪我人は任せて下さい」
戦況を偵察しながら一階からの敵を警戒していたアリオーシュ・アルセイデス(ka3164)は、ドワーフの負傷者が出たと知って怪我人の治療を開始した。一階で黒狼に対応するハンター達は多い。そう簡単に一階が抜かれないと判断したアリオーシュは、怪我人をそっと抱き起こす。
「大丈夫ですか」
「すまねぇ」
痛みに耐えながら呟くドワーフ。
ヒーリングスフィアの柔らかい光が傷を包み、癒していく。
「青髯……いえ、青木の姿は、力を望む誰かがなっていた末路かもしれません。それでも此処に立つ者は、彼のようにはならない。それが希望を捨てぬ者、俺が守るべき者」
アリオーシュは改めて巨大な敵を見つめた。
絶望的な強さを前にしても、アリオーシュは退く気はない。
希望は決して捨てない。ここに立つ意味も覚悟も、分かっているつもりだから。
「水野様、続けての砲撃を」
「分かった」
「七竃、炸裂弾で黒狼を迎撃。一階の仲間を支援」
エラの指示を受けて七竃は炸裂弾で支援砲撃を開始する。
今は砲撃で青髯に攻撃を続けなければならない。一発の攻撃が後続の戦場を助けると信じて――。
●
二階が砲撃を続けている裏で、一階の分隊対応は順調に進んでいた。
その理由の一つがルカ(ka0962)の分体誘導であった。
「い、行きますよ……」
ルカの後を追いかけて多数の黒狼が追いかけていた。
事前にルカは黒狼が白巫女を執拗に追跡してくると聞いていた。そこで囮役を務める為、敢えて白巫女で戦場に現れた。黒狼達はルカを見つけて集団で追いかけます。だが、黒狼にとって不運なのはルカがペガサス『白縹』に乗って飛行していた事だ。
黒火で攻撃を仕掛けようとするが、飛行し続けるルカに命中しない。それでも白巫女を視認したが故に地上を走って必死に追いかける事しかできないのだ。
「おー、こりゃ団体さんの追っかけだ。人気者だねぇ」
ルカを追いかける集団の後方に陣取ったシガレット=ウナギパイ(ka2884)は、その様子を見守っていた。
ルカが飛行するだけで多数の黒狼が追跡する。数も相当多いが、これだけ固まっていれば的として十分過ぎる。
「そろそろ、お願いします」
時折ブルガトリオで黒オオカミの足止めを狙うルカであったが、集団が異常に膨れ上がった状態では足止めしても後続に埋もれるだけ。そろそろ一気に始末する必要があった。「ああ、任せておけ」
事前にストーンサークルを付与していたシガレット。
目標地点としていた場所に黒狼が追い込まれた瞬間が攻撃開始の合図だ。
そして、その瞬間はすぐに訪れる。
「!」
複数の黒狼が突如動きを止められる。
刻令ゴーレム「Gnome」『鉄心』が仕掛けていたCモード「bind」が発動したのだ。この時を待っていたシガレットは黒狼を後方から襲撃する。
「喉、乾いたろ? 遠慮無く飲んでくれ」
シガレットが顕現させたのは人魚の精霊。人魚は螺旋状に高速回転する水流を生み出し、黒狼に向けて放つ。強烈な水流は黒狼を巻き込みながら周辺へと吹き飛ばしていく。
「な、ならばこっちも」
ルカはこの隙を突いてプルガトリオで黒狼の動きを止める。こうする事でシガレットのネプチューンを命中し易くする為だ。だが、この動きは別の存在へ攻撃チャンスをもたらした。
「あ、巨人……」
銃声。振り返れば、武装巨人がアサルトライフルで一斉に黒狼へ向けて銃撃を加え始めていた。
巨体が握る大型アサルトライフルが放つ銃弾は、容赦なく黒狼の体を貫いていく。
「へぇ、確かに味方みたいだな。……今は」
巨人と戦う様子を見つめながら、シガレットは軽く頷いた。
●
黒狼を吹き飛ばすシガレットのネプチューン。その威力は十分なのだが、そのネプチューンを持ってしてもそう簡単に倒せないのが青髯である。
「もはや道を急ぐ理由も必要もないのではなくて? どうぞゆっくりなさっていってくださいな」
金鹿(ka5959)はオートソルジャー『翠蘭』と共に黒狼の群れを押し退ける。
目指す先は青髯。ネプチューンで青髯を前から押し返す事で少しでもマギア砦からの砲撃を受けさせようという狙いなのだ。
「これは……ほんのお持て成しですわ」
金鹿はネプチューンを発動。顕現する人魚は強烈な水龍を青髯へと叩き込む。
少しばかり後退する青髯。だが、巨体故か大きく後方には飛ばせていない。だが、これでいい。その位置ならば砦からの射程距離に入っている。
金鹿の動きに呼応して砦から放たれる砲弾が青髯の体に命中する。
(私、先の戦いにおいて黒曜封印符のおかげで恨みを買っていると思ってましたが……)
攻撃している最中、金鹿は気付いた。
怠惰王との交戦の際、金鹿は青木を足止めしていた。その際、黒曜封印符で青木の攻撃を封じていた。そのせいで青木から強い恨みを抱かれていると考えいた。
だが、青髯は金鹿を見ても率先して狙ってくる素振りもない。おそらく怒りという感情よりも破壊の本能が優先されているのだろう。
「獣、ですか」
金鹿は翠嵐がマスターガードで黒狼の攻撃を防いでいる横でそう呟いた。
もう青木としての意識は消失しているのか。
だとしたら、あれだけ抱えていた想いは何処へ。
もうすべてが消え失せているのかもしれない。
「あまりにも残酷ですわね」
青木の置かれた運命に、金鹿は言葉を漏らす。
だが、例え残酷であっても攻撃の手を緩める気はない。
「止めさせていただきましょう。悲劇を終わらせる為に」
今の所、計画が成功した金鹿。
だが、青髯も後方に押されているのが理解したのだろう。腹部に現れた巨大な狼の顔が口を開く。
――咆哮。それは前方に目掛けて大きく放たれる。
しかし、それも金鹿には待っていた展開だ。
「そのようなお礼、無用ですわ」
金鹿は待ち構えていたように呪詛返し。咆哮の効果は青髯へと向けられる。
これで行動が阻害されて移動スピードは落ちると思われた。だが、青髯の移動スピードは今までと変わらない。
「あら」
今も金鹿の前をゆっくりと進む。呪詛返しは確実に青髯に向けて効果を発揮しているが、その返された呪詛に対する抵抗で結果は喪失しているのだろう。
「そう。では、もう少しお付き合いいただきましょう」
金鹿は再びネプチューンで青髯を押し返し始める。
この行動だけでも仲間が攻撃するチャンスを大幅に増やしている。後はどこまで足止め出来るかが重要となる。
●
「いかせていただきますか」
マギア砦からの砲撃に紛れ、青髯に対する攻撃を仕掛けるジュード。
ディアーナのVOIDミサイルが一斉に発射され、空中に白い軌道を描きながら青髯の体で爆発を巻き起こす。周辺の黒狼を巻き込みながら直接ダメージを狙いにいく。
別方向からはハンスのR7エクスシアの斬艦刀「雲山」を手に間合いを攻める。
「フハハハハ、お待ちなさい。あなたを斬った感触。是非、味合わせてくださいな」
足元に近づいたハンスは、縦横無尽で執拗に雲山の刃を振り下ろす。
何度も振り下ろす刃。しかし、その刃が青髯の体表を斬る事はできない。
「……硬い。ただの狼の足ではなさそうですね」
ハンスの手応えに伝わるのは金属同士が衝突するかのような感覚。
見た目は狼の手足だが、見た目で判断しても良い相手ではなさそうだ。
「……!」
感触を確かめている隙に青髯はハンスへ拳を振り降ろす。
その拳を受け流しで回避するハンス。
「油断も隙もありません」
そういいながら再び斬りつけ始める。幸いにも分体対応は仲間達が進めている。ハンスやジュードはこの機を逃さず青髯へ集中できる。
「気を付けなよ。いつ黒鎖を使ってくるか分からないからな」
ハンスへ警戒を促すジュード。現時点で黒鎖を使ってくる気配はない。
力を温存しているのか。それとも……。
「いいじゃありませんか。使わないならその隙に攻撃させていただきますよ」
薙ぎ払いで広く斬撃を叩き込むハンス。
警戒は重要だが、今は少しでも青髯に攻撃を加えていくべきだ。
「……そうかもな」
ハンスの言葉へ答えるように、ジュードはマテリアルライフルで青髯の体表を狙い撃つ。
今の所反応は青髯の反応は鈍い。深いダメージが与えられているかも分からない。しかし、それでもハンター達は攻撃を続ける。この攻撃が後で意味を持つと信じながら。
●
青髯本体に攻撃が加えられている隙に生じ続ける黒狼達。
それを押さえ込んでいたのは、多くのハンター達であった。ルカが誘導する事で黒狼達は集団化。それは一つの巨大な的となっていた。
「テルル。今回も世話になるぜ……それにしても、まさか巨人とも共闘する事になるとはな……」
テルルとピリカ部隊に同行していた南護 炎(ka6651)は今回の作戦に対する率直な感想を漏らした。
今まで戦ってきた歪虚と轡を並べるとは想像していなかったからだ。それだけ青髯が危険な存在なのかもしれないが、武装巨人が射撃支援してくれる様子は奇妙な感覚だった。
「完全に信用はできねぇかもしれねぇが、それはあっちも同じ事だ。
それより俺っち達の相手はあの狼どもだ」
「ああ。行くぞテルル! ピリカ部隊! 青髯の分体を殲滅するぞ!」
ガルガリン『STAR DUST』を黒狼前方へ移動させた南護は、斬艦刀「雲山」を構える。雲山の刃に纏わり付くマテリアルオーラ。
「『STAR DUST』突貫だ!」
巨大なオーラを黒狼へ振り下ろす南護。地面を砕かん勢いで叩き込まれる一撃は周辺の黒狼を巻き込んで吹き飛ばす。
この攻撃に呼応する形で、テルルは愛機カマキリと共に側面から強襲をかける。
「行くぞ。ピリカ部隊の維持を見せてやれ!」
テルルの号令と共にカブトムシ型ピリカが数体で突撃。
頭部の角を前面に押し立てながら黒狼の集団を蹂躙。更に突撃を逃れた黒狼にカマキリの鎌が襲いかかる。
「やるなテルル」
「武徳の奴が指示しやがったからな。だけど、南護の活躍も期待してるぞ」
「いいだろう。その期待に応えてみせる」
南護はSTAR DUSTを黒狼の前面へ立てる。
ピリカ部隊の壁となる覚悟を持った南護は大壁盾「庇護者の光翼」を装備。さらにマテリアルカーテンで黒狼の襲撃をその機体で受け止める。黒狼は少数であれば危険に晒されるような相手ではない。しかし、大多数となって一斉に襲い掛かられれば決して油断して良い相手ではない。
「南護っ!」
黒い影がSTAR DUSTを覆い尽くすように攻撃を仕掛ける。
南護が前に出て奮戦する事で、ピリカ部隊が突撃後に陣形を立て直すのに大きな被害はない。だが――。
「くっ、構うなテルル。今はこいつらを駆逐する事に専念するんだ」
「南護、無茶しやがって! ピリカ部隊、もう一回突撃だ! 巨人の銃撃の後、一気に敵を蹴散らすぞ!」
テルルの叫びにも似た指示が、各機へ伝達される。
この南護とピリカ部隊の活躍が青髯への攻撃集中に貢献したと言えるだろう。
●
――青髯、マギア砦を通過。
これは予定された展開だ。だが、ハンターの尽力により想定以上の攻撃が仕掛けられた事は間違いない。初戦としては充分な成果である。
「怪我人の移送を開始します」
アリオーシュは武徳へ負傷者の移送開始を報告する。
成果は上々だが、マギア砦も無事ではなかった。時折降り掛かる衝撃波や咆哮を受ける人間やドワーフは存在。ハンターの防衛で被害は最小限に抑えられているが、それでも負傷者は出ているのが実情だ。
「頼むぞ」
「この戦い、まだ始まったばかりだが……あいつは意識を失って本能のまますべてを壊すのか。」
武徳の傍らでエラは南の方角へ視線を送る。
エラの情報統制もあってマギア砦の戦いは優位な展開で終結したが、青髯は南下を続けている。この先にいるナナミ川でも同様の迎撃作戦が開始されるが、青髯にはもう誰が来ても分からない状態で命ある限り戦うのだろうか。
そんなエラの疑問に対して武徳は独り言のように言葉を投げかける。
「おぬしにはそう見えたか」
「どういう事?」
「わしには……死に場所を求めているように見えるがな。ああいう侍を、わしは何人も見て来た」
青髯は自ら死地を求めて南下をしているのだろうか。
だとしたら、青髯は――青木燕太郎は自らを止める存在を待ち望んでいる事になる。
●
「目標、ナナミ川へ到達しました」
青髯がナナミ川へ到着した事実が、第二班の総員に展開される。
その情報が意味するのは、第二班の作戦開始を意味している。
「来たザマスね。ラズモネ・シャングリラの全砲門最終チェック。照準を目標にセットザマス」
ラズモネ・シャングリラ艦長の森山恭子(kz0216)が砲撃手へ指示を出した。
このナナミ川は武装巨人でも腰の位置まで川に浸かる。つまり、青髯であってもナナミ川を渡る際には移動速度は低下する。そこを狙ってラズモネ・シャングリラがハンター勇姿と共に一斉砲撃を開始する手筈だ。
「バアさん、ヨルズの準備も万端だ。パーティの開始には声かけてくれよ」
ラズモネ・シャングリラの甲板ではジェイミー・ドリスキル(kz0231)が戦車型CAM『ヨルズ』で待機している。155mm大口径滑空砲で青髯を砲撃。まさに全砲門を解放してのキャノンパーティと言っても差し支えなかった。
「バアさんじゃないザマス。まだ還暦前ザマス。
目標が見えたら、一斉に砲撃……」
「艦長。こちらから相談がある。獅子身中の虫とまでは言わねぇが……厄介事の芽は潰しておきてぇんだよ」
恭子の声を遮ったのはアニス・テスタロッサ(ka0141)である。
実は、懸念材料がゼロという訳ではない。小さな綻びかもしれないがこの作戦を成功させる為にはどんな綻びも決して無視はできない。
「なんザマしょ?」
「ルーキー達の件だ。上流から『奴』が現れるなら、ルーキー達が暴走しねぇか?」
アニスの言うルーキーとは、山岳猟団の八重樫 敦(kz0056)と行動を共にする新兵レオンとシーツの事である。
レオンとシーツは経験が浅い上、感情を優先させる気配がある。特に上流から現れる『奴』は同僚だった新兵を殺害され、激昂した経験もある。まだ二人には『奴』の存在を話していない。もし、『奴』が現れると知れば――。
「アニスの指摘ももっともだ。黒狼の対応を川沿いで展開する予定だが、あの二人に気を配った方が良いかもしれん」
アニスの意見に八重樫も賛同する。
もし、新兵が暴走して『奴』に手を出せば、戦況は一変する。それは作戦の根底から崩される可能性を孕んでいる。
「艦長、ルーキーについてはこっちに任せてくれ。悪いようにはしねぇ」
アニスからの提案。ハンターに負担を押しつけるようではあるが、この非常時だ。恭子は敢えて言葉に甘える事にした。
「分かったザマス。判断はそちらへお任せするザマス」
「なら、上流からのお客には俺も注意を払っておく。あまり奴を……エンジェルダストを野放しにしない方がいい」
恭子の言葉に続いてキヅカ・リク(ka0038)が通信に割って入る。
エンジェルダスト。先日までサルヴァトーレ・ネロの主砲破壊を巡る戦いに姿を見せた歪虚ブラッドリー(ka0038)の愛機であり、多くのハンターとも少なからず因縁を持つ存在だ。そのブラッドリーが青髯討伐の救援に姿を見せる手筈となっている。口ではハンター側に攻撃を仕掛けないと言っているが、警戒しておく必要がある相手だ。
「私も上流へ移動して警戒しておくわ。あいつがここで決着付けたいというなら話は別だけど」
マリィア・バルデス(ka5848)はマスティマ『morte anjo』で出撃していた。
エンジェルダストもマスティマ系歪虚CAM。万一、牙を剥いたとしても対抗できる術をハンター側が保持する為だ。
「お二人の気遣いには感謝するザマス。怪しい動きがあればすぐに知らせて欲しいザマス」
キヅカとマリィアの申し出に恭子は了承した。
ブラッドリーはこの辺境で終焉を画策したにも関わらず、今回の青髯討伐で部族会議を支援するという。何を考えているか分かったものではない。
様々な想いを抱えながら、戦いに臨むハンター達。
そんな彼らに対して作戦立案者のヴェルナーから一斉に通信が流れる。
「皆さんに命を賭けさせて言うべきではないのかもしれませんが、本命はナナミ川を渡った後に布陣している部族会議の主力です。私達は彼らの負担を軽減する為の布石に過ぎません。
ですが、本陣を仕切るイェルズ・オイマト((kz0143)は未だ若輩者。部族会議大首長補佐として影ながら彼を助けてやりたいのです。皆さんの力を貸して下さい」
いつもと変わらない口調。
だが、先の戦いで受けた屈辱を注がんとする決意が裏にあった。
そして、ヴェルナーは少々悪戯っぽく言葉を付け加えた。
「それに……目を覚ましたバタルトゥさんに『もうすべて終わりました。仕事をサボって眠りから覚めた気分は如何ですか?』と言ってあげましょう」
●
「青髯、とはリアルブルーのお伽噺だったカナ。至るまでの道程に道場の余地はあるかもしれないケレド、物語はいつか終わるモノ。それもまた事実ダカラネ」
エクウスで素早く青髯の近くまで接近したアルヴィン = オールドリッチ(ka2378)は、刻令ゴーレム「Gnome」のCモード「wall」で遮蔽物を作らせる。
既に一部がナナミ川へ沈み始めているが、後方はまだ地上にある。Gnomeに壁を築かせる事で衝撃波や黒鎖を遮断。その隙に青髯本体へ攻撃を仕掛ける算段だ。
「心に響く物語デシタガ、それももう終幕デスヨ」
素早く壁を移動するアルヴィンは、アイデアル・ソングで味方のマテリアルを活性化。周囲のハンター達が動きやすいように意識しつつ、味方に攻撃のチャンスを画策している。
「強すぎるが故に、叶わぬ願いをも掴もうとして、理を捻じ曲げました。
個々は弱くとも、繋がり、託す。その意味を知りなさい」
アルヴィンがGnomeに作らせた別の壁に身を委ねるユメリア(ka7010)。
青髯と化した青木は、力を追い求めた。
それは己の願望を叶える為の所業。
だが、その代償はあまりに大きく――そして、夢は儚くも散った。
その結果残された物は、一体何だったのか。
「敵の配置について情報をお願いします」
トランシーバに話し掛けるユメリア。
だが、その回答があるよりも早くアルヴィンが呼び掛ける。
「前デスヨ!」
ユメリアは前方へ視線を向ける。
そこには青髯の体から零れ落ちる黒狼の群れ。黒狼は青髯の分体だ。つまり、青髯に接近すればそれだけ黒狼の遭遇率は跳ね上がる事になる。
「いけません。数が多すぎます」
ユメリアは一瞬焦った。
周辺にハンターがいるが、想定よりも黒狼の出現スピードが早い。
対処する間に他の黒狼が側面から襲い掛かってくる。黒狼ならば壁を回避して横から攻撃を仕掛けてもおかしくはない。
「!」
魔盾「フォスキーア」を構えるユメリア。
しかし――。
「行くぞ、ルーキー」
アニスがR7エクスシア『オリアス・マーゴ』で滑り込んでくる。
その後方から魔導型デュミナスに騎乗するレオンとシーツ。黒狼を蹴り飛ばしながら迎撃ポジションを確保していく。
「ポイントを確保したら、狼をぶちのめせ。容赦なんかいらねぇぞ」
レールキャノン「アル・マグナ」を媒介にしたマテリアルライフルを発射したオリアス・マーゴ。強烈な一撃が黒狼をまとめて消し飛ばす。その後方を新兵の二機がマテリアルライフルで援護射撃を行っていく。
アニスが陣取った事で黒狼の流れは変わっていく。
「二人とも無事か」
アルヴィンとユメリアに気遣う八重樫。
八重樫自身もR7エクスシアで二人を庇うように迎撃を開始する。流れ込む黒狼達。黒い奔流と化した狼達はCAMに向かって攻撃を開始する。
「始まったネ。物語の最終章ガ」
アルヴィンは後方の壁に寄りかかり、アイデアル・ソングを奏でる。
次へ繋げる為の戦いは、こうして開始された。
●
「予想より多いな」
ナナミ川下流の少し外れた場所に陣取った近衛 惣助(ka0510)は、黒狼の群れを見てそう言葉を漏らした。
大型の歪虚である青髯は黒狼を放出しながら移動している。その数は膨大な負のマテリアルを象徴するかのようであった。
「ラズモネ・シャングリラの砲撃を邪魔させる訳にはいかねぇ」
ダインスレイブ『長光』を前進させながら、試作波動銃「アマテラス」で黒狼を駆逐していく。
可能な限り後方へ逸らせないように心がけているが、惣助の狙いはあくまでも青髯であった。長光の射程距離へ入ったならば容赦なく砲撃を加えるつもりなのだ。
「青木には縁も所縁もない。だが、和平の邪魔をするなら……殲滅するだけだ」
黒狼を的確に迎撃しながら、惣助は青髯の動きに気を配る。
砲撃に最適なポイントは川の中央付近。遮蔽物となる木々がない上、他のハンターが砲撃する際にも狙いやすい場所だ。そこへ到達するにはもう少しかかるか。
惣助は息を殺しながら、チャンスを待ち続ける。
一方、惣助の前方に布陣して八重樫班を後方から支援していたミグ・ロマイヤー(ka0665)はトランシーバーへ一人叫んでいた。
「そっちは無事かえ?」
通信相手はユメリア。前線でハンターを支援するユメリアから青髯の状況を教えて貰おうというのだ。
「まだ完全に川に入っていません。川の中央へ到達するにはもう少しかかりそうです」
川へ入った青髯は明らかに移動速度が落ちている。
おまけに川へ入った部分から黒狼が出現する頻度まで減少。どうやら川に入っている間は絶好の攻撃チャンスのようだ。
「チャンスタイムはもう少し後なのじゃ。
それにしても……味方である歪虚にまで攻撃されるとは、青木も哀れな男よのう」
変わり果てた姿の怪物を見つめながら、ミグは一人呟いた。
愛故の狂気なのかは、もう調べる術もない。だが、今の存在は間違いなく害悪。他者に、社会に合わせて変化していかなければ、末は緩やかな死が待っている。
「歪虚にまで狙われる、か。青木とやらには、もう何も残っていないのか」
ミグの呟きを聞いていた惣助。
周囲はすべて敵だらけ。いや、自分以外の存在はすべて敵。
世界で誰一人味方はいない。それは果たしてどういう状況なのか。
「分からぬ。だが、奴を止めてやるのもハンターとしての仕事じゃろう」
黒狼を踏み潰しながらミグはダインスレイブ『ヤクト・バウ・PC』で目標までの座標チェックを開始する。
的確に砲撃する為――そして、青木の旅をここで終わらせる為に。
●
ナナミ川へ侵入する青髯。移動速度が落ちたその時こそ、ラズモネ・シャングリラの一斉砲撃が開始される。
「主砲発射ザマス!」
ラズモネ・シャングリラのマテリアル砲が溜め込んだエネルギーを発射。
さらにヨルズの155mm大口径滑空砲が轟音を響かせる。
「焦るなよ。パーティは始まったばかりなんだからよ」
次弾が装填され、再び響く砲撃音。
空気が震え、青髯の体表に着弾。青木の体に弾丸が突き刺さる。
吠える青髯。
一斉砲撃の間を縫って、ハンター達が青髯のとの間合いを詰める。
「愛する者の為に戦い抜いたあんたは……立派ですよ、青木」
ペガサスで接近するGacrux(ka2726)は、蒼機槍「ラナンキュラス」を手に青髯へと向かって行く。
留まれば衝撃波か複数ある腕の攻撃を受けてしまう。ここは空を駆け抜け、機動力で青髯を翻弄する。
(青木は歪虚だったが、愛する人の為に生き抜いた。それを愚かだなんて、俺には言えませんよ)
青木との縁は実に奇妙だ。
戦場として敵として現れ、ハンターの前へ立ちはだかった。
だが、その青木には願望があった。想いがあった。
その願望が砕けてしまった今、怪物となった青木を前に――Gacruxは突き進む。
「もう終わりにしましょうよ、青木」
Gacruxの接近に気づいた青髭は、腕を振りぬいて衝撃波。
その一撃を予期していたGacrux。衝撃波を受け流しながらカウンターによる一撃を叩き込む。ラナンキュラスによるマテリアルの刃が青髭の体に叩き込まれる。
「ここでできる限り削りにいく。せめて道をつけてやらねぇとな」
リュー・グランフェスト(ka2419)はフライトフレーム「ヴォラーレ」を装備さえた刻騎ゴーレム「ルクシュヴァリエ」に乗って青髭へ接近する。
リューもヴェルナーが言っていたようにここで青髭を倒せるとは思っていない。実際にマギア砦で相当の攻撃を受けているはずだが、青髯を傍目から見る分には大きなダメージは見受けられない。
それでもリューは攻撃を続ける。本陣で待機する部族会議や仲間達の負担を少しでも軽くする為、リューは斬艦刀「雲山」で攻撃を仕掛ける。
「傷一つ付いていないように見えるけどよぉ。同じ所を何度も叩かれりゃ、多少なりとも痛ぇよなぁ!」
リューは背後から雲山で一刀。
青髯は反射的に後方へ腕を伸ばす。リューは腕から逃れるように一旦退避。そして間髪入れず、光あれを発動。膨大なマテリアルは光の刃となって同じ場所へ叩き込まれた。
青髯の背面へ打ち込まれた斬撃は、青髯の体を激しく揺らす。
強烈な一撃が青髯の注意をリューへ向けさせる。そして複数の腕から繰り出される衝撃波の乱れ打ち。
「うおっ!?」
「これ以上、悲しみを増やさないでくれるかい?」
発射前に展開したGacruxのガウスジェイル。衝撃波はGacruxに向かって連続発射される。ペガサスを巻き込みながらGacruxは必死で衝撃波に抵抗する。
「……どうやら、本当に声は届かないみたいだね」
「ああ。早く終わらせてやらないとな」
ハンターからの攻撃を受けながら、青髯は再び歩み出す。
この川で大規模な攻撃が待っているとも知らずに。
●
「怠惰王を倒したというのに……」
エアルドフリス(ka1856)はイェジド『ゲアラハ』と共にナナミ川付近に展開した黒狼の対応に集中していた。
故郷を追われ、部族の皆を殺されて十八年。
歪虚への怒りを忘れた日はなかった。
仲間と協力して怠惰王を撃破すれば辺境にも平和が訪れると考えていた。だが、現実は青髯による脅威が今も猛威を振るっている。
「怠惰王の撃破が引き金、だったかな?」
「かもしれん」
エアルドフリスの周辺に集まってきた黒狼を、八重樫はアサルトライフルで迎撃していた。本来であれば黒狼の群れを抜けて青髯に向けて天蛇罰を叩き込んでやる予定だった。だが、エアルドフリスが白巫女であったが故に黒狼の群れは大挙を為してエアルドフリスに向かっていた。このおかげで新兵達が受けていた負荷は軽減されていたのだが、エアルドフリスは黒狼の対処に苦慮する事となった。
「本能のままに動く獣か」
エアルドフリスを追いかけてくる黒狼から逃れるようにゲアラハは素早い動きで回避。そのまま黒狼を八重樫の射線上へと誘導する。
黒狼達はエアルドフリスに意識を向けているが故に、まったく気付かない。
「叩き込む」
八重樫はアサルトライフルで連射した後、脚部に装着した試験用ミサイルポッドを数発打ち込んだ。銃弾の後に炸裂するミサイルは黒狼を地面と共に吹き飛ばす。
「さすがは山岳猟団の団長さんだ」
「よく言う。誘導が無ければここまでの戦果は無理だ」
「褒めるのは後にしよう。それより……」
エアルドフリスは別の話題へ切り替えた。
アニスと共に戦っている新兵についてだ。
「俺は歪虚への憎悪を忘れていない。終末を望むブラッドリーとも決して相容れない。だが、使える者は使う。目的の為にだ」
「新兵達にそれができるかどうか、か」
エアルドフリスもアニス同様新兵の暴走を危惧していた。
彼らもまた歪虚へ強い憎しみを持っている。大局を考えれば優先すべきは青髯だが、新兵が感情に任せればブラッドリーと青髯の両方を相手取る必要が出てくる。
「口で言っても分からん連中だ。気持ちは分かるが、いざとなれば……」
「命令違反で鎮圧か。あいつらは更に不満を抱くだろうが仕方ない」
エアルドフリスは合流する際に新兵へ釘を刺した。
物事には順序がある。それを忘れるな、と。
彼らはまだ歪虚との共闘を知らない。万一があればアニス同様新兵を止めるつもりだが――。
「新たな客だ」
八重樫の視界に再び黒狼の群れが飛び込んでくる。
数を揃えてきても二人を止められないと未だ理解できないようだ。
「血に依らず運命に依らず、俺は俺の意志によって……赤き大地の巫女たらん」
ゲアラハの背から降りたエアルドフリス。
共に戦う仲間を信じ、赤き大地を守る為に強い決意で黒狼と対峙する。
●
「砲撃をできるだけ当て続ける。それが本陣の皆を助ける事になる」
ナナミ川の渡河を試みる青髯に加えられる砲撃を前に、八島 陽(ka1442)は思い切った行動に出る。
ラズモネ・シャングリラの砲撃やハンターの攻撃を長時間命中させる為にはこのナナミ川の渡河に時間を費やさせればいい。そう考えた八島は福音の風で浮遊させた刻騎ゴーレム「ルクシュヴァリエ」を、不退の駆で突撃させたのだ。
「やれるか? ……いや、やってみせる」
振り下ろされる腕を掻い潜り、接近するルクシュヴァリエ。マテリアルバーストで青髯の体を強引に押し返す。
青髯の体に衝突する機体。その時間が長ければ、少しでも渡河を長引かせる事ができる。
そして、この間にもハンター達が青髯へ攻撃を仕掛ける。
「光よ集まれ、横一文字斬り! 薙ぎ払いはお前だけの専売特許じゃないよ」
刻騎ゴーレム「ルクシュヴァリエ」『魔動冒険王『グランソード』』をフライトシールド「プリドゥエン」で飛行させ、青髯に接近。時音 ざくろ(ka1250)は光あれで生じさせた膨大なマテリアルを機剣「イフテラーム」に集めさせる。
光の刃は青髯の胸部に向けて一撃を放たれる。
横に振り抜かれた一撃は、青髯を数歩後退させる事に成功。
効いている。ざくろの手に感触が伝わってくる。
「このまま押し切る……」
さらに畳み掛けようとするざくろだったが、一瞬躊躇する。
青髯は本当にダメージで体を仰け反らせたのか?
何かの予備動作だったのではないか。
その不安がグランソードの前面に光の障壁を生じさせる。
「――!」
青髯の腹部にある巨大な狼の頭が口を開き、周辺に響かんばかりの雄叫びを上げる。
咆哮。その影響を受けたグランソードの反応が鈍くなる。
「……動きを止めてからって訳ね」
ざくろの目の前で大きく腕を振り上げる青髯。
黒鎖……ではない。おそらく衝撃波だろうか。
攻性防御で防ぎ切れるか――。
「くっ、もう一度の突撃で攻撃を止められるか?」
八島は再び不退の駆による突撃を試みる。
だが、距離から考えて突撃しても攻撃には間に合わない。
ざくろは衝撃に耐えるべく意識を前方へ集中させる。
発射される衝撃波。
「……これは?」
ざくろは間違いなく衝撃波を受けたはずだ。腕が振り下ろされるのを確認している。だが、衝撃波を受けた形跡がまったくなかった。
その原因は上流から飛来した『奴』だとすぐに気付く。
「オルレアンの乙女を失い、禁忌に手を出す行為。神は決して許しません。お帰りなさい、ジュデッカへ」
そこに姿を見せたのは白いマスティマ――エンジェルダストであった。
●
「アニスさん、あれ!」
エンジェルダストの存在に気付いたシーツは、共に戦っていたアニスへ呼び掛ける。
(……ついに来やがったか)
アニスは心の中で呟いた。
奇妙な共闘関係が成立した本作戦で、ある意味厄介な援軍の登場である。問題はこの事実を新兵達にどう伝えるかだ。
「奴は本作戦の援軍だ。艦長も承知の上だ」
「で、でも……」
言い淀むレオン。
無理もない。彼らからすれば同僚をエンジェルダストに殺されているのだ。いや、ここにいるハンターも今回の共闘に考える所はある。
だが――。
「テメェ等も軍人なら仕事の順番間違えるんじゃねぇぞ、ルーキー共」
「!」
「言ったよなぁ。艦長も承知しているって。こいつは作戦の決定事項だ。お前達、命令違反をまた犯す気か?」
「…………」
アニスは強めに釘を刺した。
彼らは以前も暴走して命令違反を犯している。もし、ここでまた暴走すれば作戦全体に支障が出る。
「あいつと協力しないといけないのですか?」
「それだけ青髯が厄介な敵って事だ」
「だけど……」
「それ以上!」
アニスはレオンの言葉を遮った。
その言葉に怒気が孕んでいる事を二人はすぐに感じ取った。
「口を開くな。命令に従えないならその機体を今すぐ降りろ」
下手な動きをみせれば容赦なく力で止める。
それは脅しでもあった。だが、そうしてでも彼らを止める必要があると判断したのだ。 憎みたいなら好きにすればいい。だが、命令を無視すればそいつはもう軍人ではない。「……分かりました」
新兵達は押し黙った。
そして、黒狼の退治を続ける事を優先し始めた。
●
「青髯。お前の処刑を始めましょう。神もそれをお望みです」
ブラッドリーの号令を受け、堕天使型が一気に襲い掛かる。
掌から発射する遠距離ビームを打ち込みながら、数機が青髯に向かって突撃。ビームソードで何度も斬りつける。青髯の体表に傷が出来ているようには見えない。やはりかなりの火力が必要なのか。
「神の火が足りませんか」
ブラッドリーはエンジェルダストの高出力スナイパーライフルで狙いを定める。
そこへマリィアのmorte anjoが居並ぶ。
「支援のつもりですか?」
「貴方を倒すのは別の戦場。ここで信義に悖る行動はしたくないだけよ」
バズーカ「ロウシュヴァウスト」で狙いを定めるマリィア。
「狙う場所は狼の顔面。目を狙えば一瞬でも足を止められるかもしれない」
「暗闇に惑うは、罪深き亡者。それは悠久の刻の中、虚空を彷徨う魂」
呼吸を合わせて狙い撃つ二体のマスティマ。
打ち込んだ攻撃は青髯の顔面へ命中。青髯の体を再び大きく震わせる。
「効いたか。ならこちらも攻撃を仕掛ける」
二機の攻撃を確認したキヅカは、刻令ゴーレム「Gnome」の向きを変える。
ナナミ川へ青髯が侵入するまでは青髯に機導砲で畳み掛けながらCモード「wall」で衝撃波を回避する為の壁を作り続けていた。
川を渡り始めた段階で機導砲が射程距離に収まる距離へ移動。ラストテリトリーを展開しながら攻撃のチャンスを窺っていたのだ。
「キヅカくん、無理しすぎてません? あまり無茶をしないで」
ペガサスの背に乗ったアティ(ka2729)が問いかける。
実はキヅカも無理をしていた。仲間の支援に気遣いながら、隙を見て青髯を狙える場所へ移動し続けていた。時には接近してからのファイアスロワーで青髯の体力を削る行動を見せていた。
だがそれは緊張状態を長期に維持する事にも繋がっていた。
「無理もするさ。ここで可能な限り青木にダメージを与えておかないと……。
それよりアティだって無理をしているだろう?」
アティも傷付いた仲間を治療する為にナナミ川周辺地域を飛び回っていた。
エナジーレインを施して周り、咆哮を受けた者にはゴッドブレスで回復。それは戦線を維持する為に必要だが、機動力を生かした治療はアティにも少なからず負担になっていた。
「そうだけど……」
キヅカの身を案じるアティは、そう言いながら時折キヅカの様子を確認していた。
自制を促しても、きっとキヅカは無茶をする。
誰かが止めなければ、キヅカは自分が壊れても戦い続けてしまう気がするのだ。
そんな二人のやり取りを耳にしたのは、ブラッドリーだった。
「愛故の絆ですか。その絆が強さを生み出すのでしょう」
「ブラッドリー」
キヅカは青髯に打ち込む機導砲を準備しながら、強い口調で言い放つ。
「お前が言っていた楽園には誰も行かない。子供達もあの巫女も」
「…………」
「お前の好きにはさせない。僕はお前にとっての堕天使『ルシファー』だ」
今が共闘作戦中なのは分かってる。
だが、目標が同じなだけでブラッドリーを許す気はない。
それはブラッドリーも分かっているのだろう。
「それはどうでしょう? あなたもまた、罪深き天使」
「なに?」
「あなたの手の届く範囲の人達を守る。では、あなたの手の届かない方々は守れず死んでいくのですか? 手が届かないのだから、仕方ない。それで手を差し伸べられなかった者達は許してくれるのでしょうか」
「それは、すべてを救うのは……俺だけでは難しいからだ」
「そうです。あなたは無意識のうちに救うべき人々を選別している。その有り余る力は、あなたの意識を他者よりも上にある上位の存在として認識させる。それは有り余る力を根源とした傲慢。その傲慢はあなたを増長させ、神を脅かす存在になる」
邪神の強さはキヅカも理解している。
仮に邪神の殲滅を選択したとしよう。その場合、邪神を倒すべく動いた者達だけじゃない――各地で多くの犠牲も発生するだろう。歪虚も邪神を守るべく侵攻を再開するからだ。
そうなれば、犠牲は軍人や戦士だけではない。一般人や幻獣にも被害が及ぶかもしれない。
そしてそれは、すべてあの『選択』が切っ掛けだ。
その時、キヅカは戦いで散った者を『手が届かなかった人達』として自分を納得させられるのだろうか。ブラッドリーはそれを指摘しているのだ。
――理想に潰されるな。
一瞬、キヅカの脳裏にドリスキルの言葉が蘇る。
「すべての子を救う術を払い除け、己の誤った正義と膨れあがったプライドに従う天使。
青髯の次に生まれる怪物は――本当の明けの明星は、あなたかもしれませんよ」
「…………」
ブラッドリーの言葉を掻き消すようにキヅカは青髯に向けて機導砲を打ち込んだ。
そんなキヅカを見て不安になったアティは、キヅカの手に自らの手をそっと乗せた。
●
「ジェイミー、やるわよ。キヅカ、みんなに伝えて」
マリィアはジェイミーとキヅカに号令を掛ける。
青髯がナナミ川のポジションに到達した段階で、最大級の攻撃を叩き込む作戦となっていた。マリィアの攻撃を起点としてハンター側の総火力攻撃を仕掛ける。
「各機、総攻撃の準備をお願いします。目標、青髯。マリィアさんのハルマゲドンを発射してから10秒後に攻撃を開始して下さい」
ヴェルナーが各機へ通信を入れる。恭子もこれに合わせてラズモネ・シャングリラの砲撃準備を指示する。
マリィアはmorte anjoのブレイズウィングを介して星のマテリアルを収束させていく。
「神霊樹ネットワークで青木が転移した時の状況を見たわ。誰にでも起こりえる不幸だと思った。死んでからいくら頑張っても報われないのよ。
だから……私は、同じ軍の仲間として、青木を止めたいと思った」
マリィアの呟きが終わる頃、morte anjoの足元へ浮かび上がる巨大な魔方陣。
次の瞬間、虹色の煌めきを放つ光弾が青髯に向かって打ち込まれる。
強烈な一撃が青髯に向かって叩き込まれ、青髯は川の中央でその足を止めた。
――絶好のチャンスが、ついに訪れる。
「砲門一斉発射ザマス!」
恭子の命でラズモネ・シャングリラの砲門が一斉に開く。
さらに甲板にいたドリスキルもこの機会を逃さない。
「とっておきをお見舞いするぜ。マリィアが世話になったみたいだからな。遠慮するな、俺の奢りだ」
ヨルズの滑空砲から撃ち出されたのは貫通力を魔導の技術で引き上げられた試験弾。空気抵抗を低減させた上、風のマテリアルを付与された特製の砲弾だ。
そしてラズモネ・シャングリラの砲撃に呼応してハンター達も攻撃を開始する。
「一気に畳み掛けるぞ! あるだけ全部打ち込んでやれ!」
惣助の長光は、このチャンスの為に温存していたグランドスラムを打ち込んだ。
ブースターで加速された徹甲榴弾が硬い青髯の体で炸裂。大爆発が青髯を揺らす。
「これで看板じゃ、撃って撃って撃ちまくれ」
ミグのヤクト・バウ・PCも呼応してグランドスラムによる砲撃。
出し惜しみ無く次々と連続で打ち込まれる砲撃は、青髯にかつてないダメージを浴びせかける。容赦なく降り注ぐ砲撃だが、その雨が止んでもハンターの攻撃は収まらない。
「託す先へ繋げる道を拓け、一刀両断スーパーリヒトカイザー!」
万物の器に光あれを付与したイフテラームを握ったグランソードは空中へ飛び上がったまま、一刀両断。その刃を正面から青髯へと振り下ろした。
側面からはリューのルクシュヴァリエが光の刃となった雲山で強襲する。
「このチャンス、絶対に逃さねぇ!」
複数の方向から攻撃を受け続ける青髯だが、こうしている最中にも体を起こそうと青髯は藻掻いている。
ここで討ち取れる程甘くはない。だが、ここで全力をぶつける事で本陣の負担は軽減する。ならば、ここで全力を出し切るのが必定。
「あなたが地上に出る事を、誰も決して許しません。神への冒涜を悔い改めなさい」
再び発射されるエンジェルダストのスナイパーライフル。
強烈な一撃が青髯へと続けられていた。
●
総攻撃の後でも、青髯はナナミ川を渡りきった。
これもすべては作戦の内。決着は本陣へと持ち越される。
予定通りではあるが、その状況に待ったを掛ける者がいた。
「同じ軍人って奴だからなぁ……救えりゃ救ってやりたいと、ずっと思ってたぜ」
トリプルJ(ka6653)はR7エクスシアで立ち塞がった。
黒狼を撃退しながら、トリプルJは先回りしていたのだ。
作戦と違う事も理解している。だが、死んでまで励んだ結果がこの状況。せめて少しでも早く眠らせてやりたいと考えるのは人情だろうか。
「休めよ、青木。ボタンは掛け違え地待ったけど、お前は頑張ってたぜ。その結果がこれじゃ、苦しいばっかじゃねぇか」
トリプルJは青髯との間合いを詰めていく。
無謀な事は百も承知。だが、青木の想いに答える方法をトリプルJはこれ以外思い付かなかった。
「もう終わらせようぜ!」
超々重斧「グランド・クラッシャー・マキシマム」を振り上げ、青髯の体表へと突き立てる。
一斉攻撃でダメージを負っているとはいえ、元怠惰王を始め多くの負のマテリアルで膨張した体はあまりに強固であった。手応えが無い。
だが、それでもトリプルJは構わずラウンドスイングで攻撃範囲を押し広げる。
「うぉぉぉ!」
声と同時に重斧を振り下ろすトリプルJ。
だが、片腕で防いだ青髯は残った腕をR7エクスシアへ叩き込んだ。
上から加えられる衝撃。トリプルJの体にも大きな衝撃が加わる。
「ぐっ!」
漏れる声。
だが、トリプルJもここで立ち止まる訳にはいかない。
「生真面目だった青木を、ここで終わらせるんだ。重体程度、クソでもねぇ。青木を受け止めて、刻んで……こんなんで終わりにできるかよ!」
リジェネレーションで機体損傷を修繕しながら、トリプルJは再び青髯へ向かって行く。
青髯の攻撃をどんなに受けたとしても、トリプルJは諦めない。
それが自分にできる青木 燕太郎という存在に対して出来る行動だからだ。
――終わらせる。
この悪夢も。この絶望も。
「こんなんじゃ死なねぇ、死ねねぇ……目ぇ覚ませや、青木ーっ!」
トリプルJの叫び。
次の瞬間、R7エクスシアを衝撃波が捉えた。
「……あっ」
負傷者を捜索していたアティがトリプルJを発見した頃、青髯は既にその場から姿を消していた。
●
青髯はホープへと向かっていく。
次の戦いが青髯討伐の最後となる。ハンター達は勝利を願う他なかった。
「お前、その体で……」
ドリスキルはふらつくマリィアを支えるべく肩を貸した。
今からマリィアはホープへ向かうというのだ。
「その体じゃ無理だ」
「ジェイミー……貴方が迷子になったら、私は何度でも迎えに行くわ。だから私が迷子になったら……貴方が迎えに来てね」
「……分かった」
マリィアの言葉にドリスキルは、そう答える他なかった。
止めたとしても行ってしまう。それが軍人の矜持だとドリスキルは知っていた。
一方、ナナミ川を離れるブラッドリーに一つの通信が舞い込む。
「あー、一言だけ言っておきたくて」
Gacruxが繋いだ回線にブラッドリーは黙って耳を傾ける。
「青木にとって、あんたの神や信仰はどうでも良かったのですよ。あの男の心は、一人の女のものだった」
青木は歪虚になってでも一人の女を追いかけた。
それは美しくもあり、崇高な姿だ。
道は誤ったのかもしれないが、その想いまでを貶す気にはなれなかった。
「あんた、誰かを愛した事はないでしょう?」
「どうでしょう。この身もこの命も神のものですから」
はぐらかすような言葉を返すブラッドリー。
さらにブラッドリーはGacruxへこんな言葉を返した。
「楽園にはそのような想いを抱く者達が数多くいます。神はそれらも保存して楽園を存続させているからです。楽園を終わらせる事は、彼らの想いを終わらせる事。つまり、その者達の記録も想いも葬る事になります。あなたに……彼らの想いを穢せますか?」
砲撃準備で周囲が慌ただしい中、ハンス・ラインフェルト(ka6750)は三条家軍師の水野 武徳(kz0196)と久しぶりの再会を果たしていた。
青髯と名付けられた異形の怪物と化した青木 燕太郎(kz0166)。
意識を喪失。溜め込んだ膨大な負のマテリアルに翻弄され、人間でも歪虚でも手当たり次第に喰らい続ける存在となっていた。
「部族会議の大首長殿が意識不明らしいからのう。西のキツネめ、まさかわしを頼るとは思わなんだ」
武徳は顎を擦りながら、ヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)からの連絡を思い返す。
事の発端は部族会議大首長のバタルトゥ・オイマト(kz0023)が怠惰王討伐の際に負傷。意識不明の状況が続いている。この事態は部族会議の士気を大きく下げる可能性があった。このままでは青髯討伐どころか、青髯を止める事もままならない。
その状況を重く見たヴェルナーは東方から『東のたぬき』と称して武徳を前線の指揮官を呼び寄せた。
「青髯といったか。そいつはこの南の『ホープ』で暴れる為にこの砦の横を通過する。わしらはこの砦から攻撃を仕掛ける」
「西方での指揮……それも既に計算に入っておられるのでしょう」
ハンスは笑みを浮かべる。
武徳という男が打算なく善意だけで指揮官を引き受ける訳がない。東方もまだまだ騒乱の火種が燻っている。それを放って部族会議を支援するのだから、『相応の対応』を期待してもおかしくない。
「そうじゃのう。まあ、あのキツネもそこは計算済みじゃろう」
「ヴェルナーさん、ヨアキムさんの砲撃準備が整ったそうです」
穂積 智里(ka6819)と共に辺境ドワーフの王ヨアキム(kz0011)がやってきた。
ヨアキムはマギア砦二階へ持ち込んだ多数の砲台で青髯を側面から攻撃を仕掛ける。青髯にとっては通過点に過ぎないマギア砦だが、部族会議からみれば攻撃ポイントの一つ。通過するだけであろうとも可能な限り火力を集中させる。
「いつでもぶっ放せるぜ。あいつにありったけの砲弾を叩き込んでやる」
力強く答えるヨアキム。
辺境ドワーフ特製の新型大砲で青髯の体力を可能な限り削り取る事が狙いだ。
「期待しておるぞ。一階の馬防柵はどうじゃ?」
「設置は間もなく終わります……」
一階の話になった途端、智里の歯切れが悪くなる。
それを察してハンスは武徳へ問いかける。
「敵の敵が味方なのは、敵がいる間だけ。穂積さんが心配するのも無理はありませんが、水野様も把握されていらっしゃるのでしょう?」
「うむ。わしも歪虚が今回の作戦に参加するとは聞いておらんかったからのう。それなりの準備もせねばなるまい」
今回の青髯討伐には思わぬ援軍があった。
人間同様攻撃対象とされている歪虚も今回の作戦に参加する手筈となっていた。マギア砦には武装巨人が現れ、青髯の分体である黒狼への対応を行う予定だ。
「馬防柵で分体を食い止めている間に武装巨人が銃撃を加える。その側面をテルル(kz0218))のピリカ部隊とハンターが突撃する。万一武装巨人が怪しい動きを見せれば、突撃部隊と砦の防衛部隊で挟撃すれば良い」
武徳は流動する状況を利用して作戦を進めていた。
馬防柵の中から武装巨人に銃撃させながら、後方に部族会議やハンターを配置。万一の場合は、前線の一部と挟撃する手筈を整えていた。
「左様ですか。しかし、水野様が倒れられては詩天も食い荒らされてしまいます……御身大事に」
「うむ」
マギア砦に、緊張が走る。
間もなく目標がこの砦を通過する。
その時こそ、部族会議と青髯の開戦である。
●
同時刻。マギア砦周辺。
「目標視認。各班、交戦に備えて」
魔導パイロットインカムを通して斥候からの情報を展開するエラ・“dJehuty”・ベル(ka3142)。
エラにはこの位置からでも分かる。膨大のマテリアルがこちらへ向かって移動しているのが。あの『怪物』が暴れればどうなるか、それは容易に想像ができる。
「止める。これ以上、悲しい想いを増やさない為にも……七竃」
刻令ゴーレム「Volcanius」『七竃』を所定の位置へ移動させる。
既に仲間はマギア砦及びその周辺地域に展開済みだ。青髯がマギア砦に到達した段階で一斉攻撃が開始される。重要な事は限られた時間で如何に効率良く青髯へ攻撃を加えられるか、だ。
(砲部隊への偏差射撃は指示済み。分体対応への防衛線維持は適宜展開……あとは指揮系統)
仲間と連絡網を構築した上で臨機応変に青髯を迎撃する。
同時に万が一を考えて指揮系統の代行を視野に入れていた。相手はあの青髯。マギア砦に興味を持っている様子はないが、もしマギア砦が狙われれば二階へ陣取る武徳やヨアキムに逃げ場はない。最悪な状況を想定して指揮系統のスムーズな移行を具申していた。
(打てる手は打った。被害を可能な限り少なくしたい所だが……)
エラは青髯が近づくにつれて不安が強くなる。
相手は元怠惰王のマテリアルまで吸収して暴走した存在。
人のとしての声も届かない。可能な限り味方の損耗を減らしたいが、そこまで甘い相手ではないだろう。
「各機、危険を感じたら後退。回復支援を要請してくれ。ここで討ち果たす必要は無い。まだ別ポイントの部隊を信じろ」
エラ自身も七竃と共に防衛線を補完しながら負傷者の治療に当たるつもりだ。
この戦場は先陣。まだ後続の部隊が存在する。今は後続を信じて確実に攻撃を当てていく事。それを意識して立ち回る必要がある。
「武運を」
エラはその呟きを口にして通信を一旦終えた。
青髯の息遣いが、間もなくこの地へ訪れる。
●
「何がどう転んだら人間がこんな化物に変身しちまうのかねぇ」
龍宮 アキノ(ka6831)の目に飛び込んできた青髯。
それは完全に人の姿を失った怪物であった。上半身は人間のようだが、腕は複数本生えている。下半身は狼の姿で四足歩行。全身に絡まる黒い鎖を引き摺り、ホープへ向かって全身する。
何がこの怪物を生み出したのか。
人も歪虚もすべてを飲み込まんとする忌むべき存在。望んでその姿になったのかは分からないが、ハンターとしてこの場を黙って通す訳にはいかない。
「分体接近! 迎撃開始」
後方から戦士の声。見れば、青髯の足元から放たれた黒狼がマギア砦に向けて押し寄せる。
情報によれば青髯から生み出される黒狼で、人や歪虚へ襲い掛かるらしい。こんな存在がマギア砦へ雪崩れ込めば、二階は砲撃どころではない。
「早速の来客かい?」
アキノは馬防柵の内側からアイシクルコフィン。無数の氷柱が軌道上の黒狼を貫いていく。そこへ武装巨人達が一斉にアサルトライフルによる銃撃を加えていく。普段はハンターや部族会議へ向けられる銃弾だが、今日ばかりは共同作戦。歪虚の巨人も青髯相手に抵抗を見せている。
(人からも、歪虚からも疎まれる存在。それが『追い求めた』結果なのか)
イェジド『レグルス』の背に乗って黒狼の群れへ突撃した鞍馬 真(ka5819)は、巨体を揺らす青髯を前にそんな考えが浮かんでいた。
怠惰王オーロラの為に強さを求め、のし上がってきた青木。結果的にオーロラの記憶は薄れ、ついにはその手からもこぼれ落ちた。すべてを犠牲にした上、同じ歪虚からも拒絶された青木には、この世界がどう見えているのだろうか。
「…………」
ふいに鞍馬はレグルスの視線に気が付いた。
如何なる事情があるとも、ここは既に戦場。始まってしまった戦いを前に別な事の意識を向けている暇はないはずだ。
レグルスの金色の瞳が、そう鞍馬に言っているような感覚に襲われる。
「そうだった。この戦いで終わらせてやらないとな」
鞍馬はレグルスの背で大鎌「グリムリーパー」を構えた。グリムリーパーは蒼い炎のようなオーラに包まれ、待機の中で揺れているように見える。
そして、鞍馬はグリムリーパーを横へ大きく薙いだ。
次の瞬間、多数の黒狼が宙を舞いながら吹き飛んでいく。
「いや、こりゃ派手にいっちまったねぇ。なら、あたしも負けてられないよ」
再びアイシクルコフィンで黒狼を巻き込むアキノ。できれば青髯にも氷柱を届かせたいが、黒狼の壁は厚い。
この時点で青髯の危険さが徐々に肌で伝わるようになってきた――。
●
「エラさん。bindでは青髯を止められません」
智里はトランシーバーでエラへ状況を報告する。
刻令ゴーレム「Gnome」『ゴーレムさん』の仕掛けていたCモード「bind」は、黒狼に効果はあっても青髯本体を止める事はできない。正確にはかかっているが、bindはすぐに効果を失っている。おそらく、bindが捕らえてもその効果が瞬時に終了しているようだ。
「やはり青木の時よりも強くなっているか。黒狼対応でそのまま戦線を維持して。……ヨアキム様、準備は?」
「充分だ。号令さえありゃいつでも祝砲をぶっ放せるぜ」
ヨアキムは右手の親指を立てる。
辺境ドワーフが製造した新型砲台はQSエンジンを併用する事で砲身の加熱を最低限に抑えられている。この為、砲弾の連続発射にも耐えられる設計となっていた。
「水野様。目標は射程距離に入りました」
「よし。敵に砲弾を馳走してやれい」
武徳は軍配を前へ差し向けた。
次の瞬間、一斉に放たれる砲弾が青髯の体表に向けて突き刺さる。
「……!」
大した砦ではないと本能で考えていた青髯にとって、この砲撃は想定外の攻撃であった。
まさかの反応で視界に砦を入れる。そして右側にあった三本の上で大きく後方へと逸らす。
(何か来る……まさか、衝撃波?)
瞬間にそれを察知したエラは周辺のドワーフ達に向かって指示を飛ばす。
「敵の衝撃波が来る。退避……」
だが、エラは次の言葉を出せなかった。マギア砦二階を衝撃波が襲う。
襲来する強烈な突風。二階のドワーフ達を屠るかと思われたが――。
「危ないなぁ。挨拶にしてはちょっと派手すぎないかい?」
ジュード・エアハート(ka0410)のR7エクスシア『ディアーナ』がフライトフレーム「アディード」で上空へ飛び上がり、ブラストハイロゥを展開。衝撃波を受け止めていた。地上で仲間の支援に勤しんでいたジュードであったが、青髯の怪しい動きを察知して二階の防衛へ入ったようだ。
「直撃は防げたが、完全に防御はできなかったみたいだ」
エラが振り返れば、ブラストハイロゥで防ぎ切れなかった衝撃波を受けたドワーフが床で呻いている。エラは倒れたドワーフを助け起こす。
「衝撃波だけでこの範囲……作戦を修正する必要があるか」
「怪我人は任せて下さい」
戦況を偵察しながら一階からの敵を警戒していたアリオーシュ・アルセイデス(ka3164)は、ドワーフの負傷者が出たと知って怪我人の治療を開始した。一階で黒狼に対応するハンター達は多い。そう簡単に一階が抜かれないと判断したアリオーシュは、怪我人をそっと抱き起こす。
「大丈夫ですか」
「すまねぇ」
痛みに耐えながら呟くドワーフ。
ヒーリングスフィアの柔らかい光が傷を包み、癒していく。
「青髯……いえ、青木の姿は、力を望む誰かがなっていた末路かもしれません。それでも此処に立つ者は、彼のようにはならない。それが希望を捨てぬ者、俺が守るべき者」
アリオーシュは改めて巨大な敵を見つめた。
絶望的な強さを前にしても、アリオーシュは退く気はない。
希望は決して捨てない。ここに立つ意味も覚悟も、分かっているつもりだから。
「水野様、続けての砲撃を」
「分かった」
「七竃、炸裂弾で黒狼を迎撃。一階の仲間を支援」
エラの指示を受けて七竃は炸裂弾で支援砲撃を開始する。
今は砲撃で青髯に攻撃を続けなければならない。一発の攻撃が後続の戦場を助けると信じて――。
●
二階が砲撃を続けている裏で、一階の分隊対応は順調に進んでいた。
その理由の一つがルカ(ka0962)の分体誘導であった。
「い、行きますよ……」
ルカの後を追いかけて多数の黒狼が追いかけていた。
事前にルカは黒狼が白巫女を執拗に追跡してくると聞いていた。そこで囮役を務める為、敢えて白巫女で戦場に現れた。黒狼達はルカを見つけて集団で追いかけます。だが、黒狼にとって不運なのはルカがペガサス『白縹』に乗って飛行していた事だ。
黒火で攻撃を仕掛けようとするが、飛行し続けるルカに命中しない。それでも白巫女を視認したが故に地上を走って必死に追いかける事しかできないのだ。
「おー、こりゃ団体さんの追っかけだ。人気者だねぇ」
ルカを追いかける集団の後方に陣取ったシガレット=ウナギパイ(ka2884)は、その様子を見守っていた。
ルカが飛行するだけで多数の黒狼が追跡する。数も相当多いが、これだけ固まっていれば的として十分過ぎる。
「そろそろ、お願いします」
時折ブルガトリオで黒オオカミの足止めを狙うルカであったが、集団が異常に膨れ上がった状態では足止めしても後続に埋もれるだけ。そろそろ一気に始末する必要があった。「ああ、任せておけ」
事前にストーンサークルを付与していたシガレット。
目標地点としていた場所に黒狼が追い込まれた瞬間が攻撃開始の合図だ。
そして、その瞬間はすぐに訪れる。
「!」
複数の黒狼が突如動きを止められる。
刻令ゴーレム「Gnome」『鉄心』が仕掛けていたCモード「bind」が発動したのだ。この時を待っていたシガレットは黒狼を後方から襲撃する。
「喉、乾いたろ? 遠慮無く飲んでくれ」
シガレットが顕現させたのは人魚の精霊。人魚は螺旋状に高速回転する水流を生み出し、黒狼に向けて放つ。強烈な水流は黒狼を巻き込みながら周辺へと吹き飛ばしていく。
「な、ならばこっちも」
ルカはこの隙を突いてプルガトリオで黒狼の動きを止める。こうする事でシガレットのネプチューンを命中し易くする為だ。だが、この動きは別の存在へ攻撃チャンスをもたらした。
「あ、巨人……」
銃声。振り返れば、武装巨人がアサルトライフルで一斉に黒狼へ向けて銃撃を加え始めていた。
巨体が握る大型アサルトライフルが放つ銃弾は、容赦なく黒狼の体を貫いていく。
「へぇ、確かに味方みたいだな。……今は」
巨人と戦う様子を見つめながら、シガレットは軽く頷いた。
●
黒狼を吹き飛ばすシガレットのネプチューン。その威力は十分なのだが、そのネプチューンを持ってしてもそう簡単に倒せないのが青髯である。
「もはや道を急ぐ理由も必要もないのではなくて? どうぞゆっくりなさっていってくださいな」
金鹿(ka5959)はオートソルジャー『翠蘭』と共に黒狼の群れを押し退ける。
目指す先は青髯。ネプチューンで青髯を前から押し返す事で少しでもマギア砦からの砲撃を受けさせようという狙いなのだ。
「これは……ほんのお持て成しですわ」
金鹿はネプチューンを発動。顕現する人魚は強烈な水龍を青髯へと叩き込む。
少しばかり後退する青髯。だが、巨体故か大きく後方には飛ばせていない。だが、これでいい。その位置ならば砦からの射程距離に入っている。
金鹿の動きに呼応して砦から放たれる砲弾が青髯の体に命中する。
(私、先の戦いにおいて黒曜封印符のおかげで恨みを買っていると思ってましたが……)
攻撃している最中、金鹿は気付いた。
怠惰王との交戦の際、金鹿は青木を足止めしていた。その際、黒曜封印符で青木の攻撃を封じていた。そのせいで青木から強い恨みを抱かれていると考えいた。
だが、青髯は金鹿を見ても率先して狙ってくる素振りもない。おそらく怒りという感情よりも破壊の本能が優先されているのだろう。
「獣、ですか」
金鹿は翠嵐がマスターガードで黒狼の攻撃を防いでいる横でそう呟いた。
もう青木としての意識は消失しているのか。
だとしたら、あれだけ抱えていた想いは何処へ。
もうすべてが消え失せているのかもしれない。
「あまりにも残酷ですわね」
青木の置かれた運命に、金鹿は言葉を漏らす。
だが、例え残酷であっても攻撃の手を緩める気はない。
「止めさせていただきましょう。悲劇を終わらせる為に」
今の所、計画が成功した金鹿。
だが、青髯も後方に押されているのが理解したのだろう。腹部に現れた巨大な狼の顔が口を開く。
――咆哮。それは前方に目掛けて大きく放たれる。
しかし、それも金鹿には待っていた展開だ。
「そのようなお礼、無用ですわ」
金鹿は待ち構えていたように呪詛返し。咆哮の効果は青髯へと向けられる。
これで行動が阻害されて移動スピードは落ちると思われた。だが、青髯の移動スピードは今までと変わらない。
「あら」
今も金鹿の前をゆっくりと進む。呪詛返しは確実に青髯に向けて効果を発揮しているが、その返された呪詛に対する抵抗で結果は喪失しているのだろう。
「そう。では、もう少しお付き合いいただきましょう」
金鹿は再びネプチューンで青髯を押し返し始める。
この行動だけでも仲間が攻撃するチャンスを大幅に増やしている。後はどこまで足止め出来るかが重要となる。
●
「いかせていただきますか」
マギア砦からの砲撃に紛れ、青髯に対する攻撃を仕掛けるジュード。
ディアーナのVOIDミサイルが一斉に発射され、空中に白い軌道を描きながら青髯の体で爆発を巻き起こす。周辺の黒狼を巻き込みながら直接ダメージを狙いにいく。
別方向からはハンスのR7エクスシアの斬艦刀「雲山」を手に間合いを攻める。
「フハハハハ、お待ちなさい。あなたを斬った感触。是非、味合わせてくださいな」
足元に近づいたハンスは、縦横無尽で執拗に雲山の刃を振り下ろす。
何度も振り下ろす刃。しかし、その刃が青髯の体表を斬る事はできない。
「……硬い。ただの狼の足ではなさそうですね」
ハンスの手応えに伝わるのは金属同士が衝突するかのような感覚。
見た目は狼の手足だが、見た目で判断しても良い相手ではなさそうだ。
「……!」
感触を確かめている隙に青髯はハンスへ拳を振り降ろす。
その拳を受け流しで回避するハンス。
「油断も隙もありません」
そういいながら再び斬りつけ始める。幸いにも分体対応は仲間達が進めている。ハンスやジュードはこの機を逃さず青髯へ集中できる。
「気を付けなよ。いつ黒鎖を使ってくるか分からないからな」
ハンスへ警戒を促すジュード。現時点で黒鎖を使ってくる気配はない。
力を温存しているのか。それとも……。
「いいじゃありませんか。使わないならその隙に攻撃させていただきますよ」
薙ぎ払いで広く斬撃を叩き込むハンス。
警戒は重要だが、今は少しでも青髯に攻撃を加えていくべきだ。
「……そうかもな」
ハンスの言葉へ答えるように、ジュードはマテリアルライフルで青髯の体表を狙い撃つ。
今の所反応は青髯の反応は鈍い。深いダメージが与えられているかも分からない。しかし、それでもハンター達は攻撃を続ける。この攻撃が後で意味を持つと信じながら。
●
青髯本体に攻撃が加えられている隙に生じ続ける黒狼達。
それを押さえ込んでいたのは、多くのハンター達であった。ルカが誘導する事で黒狼達は集団化。それは一つの巨大な的となっていた。
「テルル。今回も世話になるぜ……それにしても、まさか巨人とも共闘する事になるとはな……」
テルルとピリカ部隊に同行していた南護 炎(ka6651)は今回の作戦に対する率直な感想を漏らした。
今まで戦ってきた歪虚と轡を並べるとは想像していなかったからだ。それだけ青髯が危険な存在なのかもしれないが、武装巨人が射撃支援してくれる様子は奇妙な感覚だった。
「完全に信用はできねぇかもしれねぇが、それはあっちも同じ事だ。
それより俺っち達の相手はあの狼どもだ」
「ああ。行くぞテルル! ピリカ部隊! 青髯の分体を殲滅するぞ!」
ガルガリン『STAR DUST』を黒狼前方へ移動させた南護は、斬艦刀「雲山」を構える。雲山の刃に纏わり付くマテリアルオーラ。
「『STAR DUST』突貫だ!」
巨大なオーラを黒狼へ振り下ろす南護。地面を砕かん勢いで叩き込まれる一撃は周辺の黒狼を巻き込んで吹き飛ばす。
この攻撃に呼応する形で、テルルは愛機カマキリと共に側面から強襲をかける。
「行くぞ。ピリカ部隊の維持を見せてやれ!」
テルルの号令と共にカブトムシ型ピリカが数体で突撃。
頭部の角を前面に押し立てながら黒狼の集団を蹂躙。更に突撃を逃れた黒狼にカマキリの鎌が襲いかかる。
「やるなテルル」
「武徳の奴が指示しやがったからな。だけど、南護の活躍も期待してるぞ」
「いいだろう。その期待に応えてみせる」
南護はSTAR DUSTを黒狼の前面へ立てる。
ピリカ部隊の壁となる覚悟を持った南護は大壁盾「庇護者の光翼」を装備。さらにマテリアルカーテンで黒狼の襲撃をその機体で受け止める。黒狼は少数であれば危険に晒されるような相手ではない。しかし、大多数となって一斉に襲い掛かられれば決して油断して良い相手ではない。
「南護っ!」
黒い影がSTAR DUSTを覆い尽くすように攻撃を仕掛ける。
南護が前に出て奮戦する事で、ピリカ部隊が突撃後に陣形を立て直すのに大きな被害はない。だが――。
「くっ、構うなテルル。今はこいつらを駆逐する事に専念するんだ」
「南護、無茶しやがって! ピリカ部隊、もう一回突撃だ! 巨人の銃撃の後、一気に敵を蹴散らすぞ!」
テルルの叫びにも似た指示が、各機へ伝達される。
この南護とピリカ部隊の活躍が青髯への攻撃集中に貢献したと言えるだろう。
●
――青髯、マギア砦を通過。
これは予定された展開だ。だが、ハンターの尽力により想定以上の攻撃が仕掛けられた事は間違いない。初戦としては充分な成果である。
「怪我人の移送を開始します」
アリオーシュは武徳へ負傷者の移送開始を報告する。
成果は上々だが、マギア砦も無事ではなかった。時折降り掛かる衝撃波や咆哮を受ける人間やドワーフは存在。ハンターの防衛で被害は最小限に抑えられているが、それでも負傷者は出ているのが実情だ。
「頼むぞ」
「この戦い、まだ始まったばかりだが……あいつは意識を失って本能のまますべてを壊すのか。」
武徳の傍らでエラは南の方角へ視線を送る。
エラの情報統制もあってマギア砦の戦いは優位な展開で終結したが、青髯は南下を続けている。この先にいるナナミ川でも同様の迎撃作戦が開始されるが、青髯にはもう誰が来ても分からない状態で命ある限り戦うのだろうか。
そんなエラの疑問に対して武徳は独り言のように言葉を投げかける。
「おぬしにはそう見えたか」
「どういう事?」
「わしには……死に場所を求めているように見えるがな。ああいう侍を、わしは何人も見て来た」
青髯は自ら死地を求めて南下をしているのだろうか。
だとしたら、青髯は――青木燕太郎は自らを止める存在を待ち望んでいる事になる。
●
「目標、ナナミ川へ到達しました」
青髯がナナミ川へ到着した事実が、第二班の総員に展開される。
その情報が意味するのは、第二班の作戦開始を意味している。
「来たザマスね。ラズモネ・シャングリラの全砲門最終チェック。照準を目標にセットザマス」
ラズモネ・シャングリラ艦長の森山恭子(kz0216)が砲撃手へ指示を出した。
このナナミ川は武装巨人でも腰の位置まで川に浸かる。つまり、青髯であってもナナミ川を渡る際には移動速度は低下する。そこを狙ってラズモネ・シャングリラがハンター勇姿と共に一斉砲撃を開始する手筈だ。
「バアさん、ヨルズの準備も万端だ。パーティの開始には声かけてくれよ」
ラズモネ・シャングリラの甲板ではジェイミー・ドリスキル(kz0231)が戦車型CAM『ヨルズ』で待機している。155mm大口径滑空砲で青髯を砲撃。まさに全砲門を解放してのキャノンパーティと言っても差し支えなかった。
「バアさんじゃないザマス。まだ還暦前ザマス。
目標が見えたら、一斉に砲撃……」
「艦長。こちらから相談がある。獅子身中の虫とまでは言わねぇが……厄介事の芽は潰しておきてぇんだよ」
恭子の声を遮ったのはアニス・テスタロッサ(ka0141)である。
実は、懸念材料がゼロという訳ではない。小さな綻びかもしれないがこの作戦を成功させる為にはどんな綻びも決して無視はできない。
「なんザマしょ?」
「ルーキー達の件だ。上流から『奴』が現れるなら、ルーキー達が暴走しねぇか?」
アニスの言うルーキーとは、山岳猟団の八重樫 敦(kz0056)と行動を共にする新兵レオンとシーツの事である。
レオンとシーツは経験が浅い上、感情を優先させる気配がある。特に上流から現れる『奴』は同僚だった新兵を殺害され、激昂した経験もある。まだ二人には『奴』の存在を話していない。もし、『奴』が現れると知れば――。
「アニスの指摘ももっともだ。黒狼の対応を川沿いで展開する予定だが、あの二人に気を配った方が良いかもしれん」
アニスの意見に八重樫も賛同する。
もし、新兵が暴走して『奴』に手を出せば、戦況は一変する。それは作戦の根底から崩される可能性を孕んでいる。
「艦長、ルーキーについてはこっちに任せてくれ。悪いようにはしねぇ」
アニスからの提案。ハンターに負担を押しつけるようではあるが、この非常時だ。恭子は敢えて言葉に甘える事にした。
「分かったザマス。判断はそちらへお任せするザマス」
「なら、上流からのお客には俺も注意を払っておく。あまり奴を……エンジェルダストを野放しにしない方がいい」
恭子の言葉に続いてキヅカ・リク(ka0038)が通信に割って入る。
エンジェルダスト。先日までサルヴァトーレ・ネロの主砲破壊を巡る戦いに姿を見せた歪虚ブラッドリー(ka0038)の愛機であり、多くのハンターとも少なからず因縁を持つ存在だ。そのブラッドリーが青髯討伐の救援に姿を見せる手筈となっている。口ではハンター側に攻撃を仕掛けないと言っているが、警戒しておく必要がある相手だ。
「私も上流へ移動して警戒しておくわ。あいつがここで決着付けたいというなら話は別だけど」
マリィア・バルデス(ka5848)はマスティマ『morte anjo』で出撃していた。
エンジェルダストもマスティマ系歪虚CAM。万一、牙を剥いたとしても対抗できる術をハンター側が保持する為だ。
「お二人の気遣いには感謝するザマス。怪しい動きがあればすぐに知らせて欲しいザマス」
キヅカとマリィアの申し出に恭子は了承した。
ブラッドリーはこの辺境で終焉を画策したにも関わらず、今回の青髯討伐で部族会議を支援するという。何を考えているか分かったものではない。
様々な想いを抱えながら、戦いに臨むハンター達。
そんな彼らに対して作戦立案者のヴェルナーから一斉に通信が流れる。
「皆さんに命を賭けさせて言うべきではないのかもしれませんが、本命はナナミ川を渡った後に布陣している部族会議の主力です。私達は彼らの負担を軽減する為の布石に過ぎません。
ですが、本陣を仕切るイェルズ・オイマト((kz0143)は未だ若輩者。部族会議大首長補佐として影ながら彼を助けてやりたいのです。皆さんの力を貸して下さい」
いつもと変わらない口調。
だが、先の戦いで受けた屈辱を注がんとする決意が裏にあった。
そして、ヴェルナーは少々悪戯っぽく言葉を付け加えた。
「それに……目を覚ましたバタルトゥさんに『もうすべて終わりました。仕事をサボって眠りから覚めた気分は如何ですか?』と言ってあげましょう」
●
「青髯、とはリアルブルーのお伽噺だったカナ。至るまでの道程に道場の余地はあるかもしれないケレド、物語はいつか終わるモノ。それもまた事実ダカラネ」
エクウスで素早く青髯の近くまで接近したアルヴィン = オールドリッチ(ka2378)は、刻令ゴーレム「Gnome」のCモード「wall」で遮蔽物を作らせる。
既に一部がナナミ川へ沈み始めているが、後方はまだ地上にある。Gnomeに壁を築かせる事で衝撃波や黒鎖を遮断。その隙に青髯本体へ攻撃を仕掛ける算段だ。
「心に響く物語デシタガ、それももう終幕デスヨ」
素早く壁を移動するアルヴィンは、アイデアル・ソングで味方のマテリアルを活性化。周囲のハンター達が動きやすいように意識しつつ、味方に攻撃のチャンスを画策している。
「強すぎるが故に、叶わぬ願いをも掴もうとして、理を捻じ曲げました。
個々は弱くとも、繋がり、託す。その意味を知りなさい」
アルヴィンがGnomeに作らせた別の壁に身を委ねるユメリア(ka7010)。
青髯と化した青木は、力を追い求めた。
それは己の願望を叶える為の所業。
だが、その代償はあまりに大きく――そして、夢は儚くも散った。
その結果残された物は、一体何だったのか。
「敵の配置について情報をお願いします」
トランシーバに話し掛けるユメリア。
だが、その回答があるよりも早くアルヴィンが呼び掛ける。
「前デスヨ!」
ユメリアは前方へ視線を向ける。
そこには青髯の体から零れ落ちる黒狼の群れ。黒狼は青髯の分体だ。つまり、青髯に接近すればそれだけ黒狼の遭遇率は跳ね上がる事になる。
「いけません。数が多すぎます」
ユメリアは一瞬焦った。
周辺にハンターがいるが、想定よりも黒狼の出現スピードが早い。
対処する間に他の黒狼が側面から襲い掛かってくる。黒狼ならば壁を回避して横から攻撃を仕掛けてもおかしくはない。
「!」
魔盾「フォスキーア」を構えるユメリア。
しかし――。
「行くぞ、ルーキー」
アニスがR7エクスシア『オリアス・マーゴ』で滑り込んでくる。
その後方から魔導型デュミナスに騎乗するレオンとシーツ。黒狼を蹴り飛ばしながら迎撃ポジションを確保していく。
「ポイントを確保したら、狼をぶちのめせ。容赦なんかいらねぇぞ」
レールキャノン「アル・マグナ」を媒介にしたマテリアルライフルを発射したオリアス・マーゴ。強烈な一撃が黒狼をまとめて消し飛ばす。その後方を新兵の二機がマテリアルライフルで援護射撃を行っていく。
アニスが陣取った事で黒狼の流れは変わっていく。
「二人とも無事か」
アルヴィンとユメリアに気遣う八重樫。
八重樫自身もR7エクスシアで二人を庇うように迎撃を開始する。流れ込む黒狼達。黒い奔流と化した狼達はCAMに向かって攻撃を開始する。
「始まったネ。物語の最終章ガ」
アルヴィンは後方の壁に寄りかかり、アイデアル・ソングを奏でる。
次へ繋げる為の戦いは、こうして開始された。
●
「予想より多いな」
ナナミ川下流の少し外れた場所に陣取った近衛 惣助(ka0510)は、黒狼の群れを見てそう言葉を漏らした。
大型の歪虚である青髯は黒狼を放出しながら移動している。その数は膨大な負のマテリアルを象徴するかのようであった。
「ラズモネ・シャングリラの砲撃を邪魔させる訳にはいかねぇ」
ダインスレイブ『長光』を前進させながら、試作波動銃「アマテラス」で黒狼を駆逐していく。
可能な限り後方へ逸らせないように心がけているが、惣助の狙いはあくまでも青髯であった。長光の射程距離へ入ったならば容赦なく砲撃を加えるつもりなのだ。
「青木には縁も所縁もない。だが、和平の邪魔をするなら……殲滅するだけだ」
黒狼を的確に迎撃しながら、惣助は青髯の動きに気を配る。
砲撃に最適なポイントは川の中央付近。遮蔽物となる木々がない上、他のハンターが砲撃する際にも狙いやすい場所だ。そこへ到達するにはもう少しかかるか。
惣助は息を殺しながら、チャンスを待ち続ける。
一方、惣助の前方に布陣して八重樫班を後方から支援していたミグ・ロマイヤー(ka0665)はトランシーバーへ一人叫んでいた。
「そっちは無事かえ?」
通信相手はユメリア。前線でハンターを支援するユメリアから青髯の状況を教えて貰おうというのだ。
「まだ完全に川に入っていません。川の中央へ到達するにはもう少しかかりそうです」
川へ入った青髯は明らかに移動速度が落ちている。
おまけに川へ入った部分から黒狼が出現する頻度まで減少。どうやら川に入っている間は絶好の攻撃チャンスのようだ。
「チャンスタイムはもう少し後なのじゃ。
それにしても……味方である歪虚にまで攻撃されるとは、青木も哀れな男よのう」
変わり果てた姿の怪物を見つめながら、ミグは一人呟いた。
愛故の狂気なのかは、もう調べる術もない。だが、今の存在は間違いなく害悪。他者に、社会に合わせて変化していかなければ、末は緩やかな死が待っている。
「歪虚にまで狙われる、か。青木とやらには、もう何も残っていないのか」
ミグの呟きを聞いていた惣助。
周囲はすべて敵だらけ。いや、自分以外の存在はすべて敵。
世界で誰一人味方はいない。それは果たしてどういう状況なのか。
「分からぬ。だが、奴を止めてやるのもハンターとしての仕事じゃろう」
黒狼を踏み潰しながらミグはダインスレイブ『ヤクト・バウ・PC』で目標までの座標チェックを開始する。
的確に砲撃する為――そして、青木の旅をここで終わらせる為に。
●
ナナミ川へ侵入する青髯。移動速度が落ちたその時こそ、ラズモネ・シャングリラの一斉砲撃が開始される。
「主砲発射ザマス!」
ラズモネ・シャングリラのマテリアル砲が溜め込んだエネルギーを発射。
さらにヨルズの155mm大口径滑空砲が轟音を響かせる。
「焦るなよ。パーティは始まったばかりなんだからよ」
次弾が装填され、再び響く砲撃音。
空気が震え、青髯の体表に着弾。青木の体に弾丸が突き刺さる。
吠える青髯。
一斉砲撃の間を縫って、ハンター達が青髯のとの間合いを詰める。
「愛する者の為に戦い抜いたあんたは……立派ですよ、青木」
ペガサスで接近するGacrux(ka2726)は、蒼機槍「ラナンキュラス」を手に青髯へと向かって行く。
留まれば衝撃波か複数ある腕の攻撃を受けてしまう。ここは空を駆け抜け、機動力で青髯を翻弄する。
(青木は歪虚だったが、愛する人の為に生き抜いた。それを愚かだなんて、俺には言えませんよ)
青木との縁は実に奇妙だ。
戦場として敵として現れ、ハンターの前へ立ちはだかった。
だが、その青木には願望があった。想いがあった。
その願望が砕けてしまった今、怪物となった青木を前に――Gacruxは突き進む。
「もう終わりにしましょうよ、青木」
Gacruxの接近に気づいた青髭は、腕を振りぬいて衝撃波。
その一撃を予期していたGacrux。衝撃波を受け流しながらカウンターによる一撃を叩き込む。ラナンキュラスによるマテリアルの刃が青髭の体に叩き込まれる。
「ここでできる限り削りにいく。せめて道をつけてやらねぇとな」
リュー・グランフェスト(ka2419)はフライトフレーム「ヴォラーレ」を装備さえた刻騎ゴーレム「ルクシュヴァリエ」に乗って青髭へ接近する。
リューもヴェルナーが言っていたようにここで青髭を倒せるとは思っていない。実際にマギア砦で相当の攻撃を受けているはずだが、青髯を傍目から見る分には大きなダメージは見受けられない。
それでもリューは攻撃を続ける。本陣で待機する部族会議や仲間達の負担を少しでも軽くする為、リューは斬艦刀「雲山」で攻撃を仕掛ける。
「傷一つ付いていないように見えるけどよぉ。同じ所を何度も叩かれりゃ、多少なりとも痛ぇよなぁ!」
リューは背後から雲山で一刀。
青髯は反射的に後方へ腕を伸ばす。リューは腕から逃れるように一旦退避。そして間髪入れず、光あれを発動。膨大なマテリアルは光の刃となって同じ場所へ叩き込まれた。
青髯の背面へ打ち込まれた斬撃は、青髯の体を激しく揺らす。
強烈な一撃が青髯の注意をリューへ向けさせる。そして複数の腕から繰り出される衝撃波の乱れ打ち。
「うおっ!?」
「これ以上、悲しみを増やさないでくれるかい?」
発射前に展開したGacruxのガウスジェイル。衝撃波はGacruxに向かって連続発射される。ペガサスを巻き込みながらGacruxは必死で衝撃波に抵抗する。
「……どうやら、本当に声は届かないみたいだね」
「ああ。早く終わらせてやらないとな」
ハンターからの攻撃を受けながら、青髯は再び歩み出す。
この川で大規模な攻撃が待っているとも知らずに。
●
「怠惰王を倒したというのに……」
エアルドフリス(ka1856)はイェジド『ゲアラハ』と共にナナミ川付近に展開した黒狼の対応に集中していた。
故郷を追われ、部族の皆を殺されて十八年。
歪虚への怒りを忘れた日はなかった。
仲間と協力して怠惰王を撃破すれば辺境にも平和が訪れると考えていた。だが、現実は青髯による脅威が今も猛威を振るっている。
「怠惰王の撃破が引き金、だったかな?」
「かもしれん」
エアルドフリスの周辺に集まってきた黒狼を、八重樫はアサルトライフルで迎撃していた。本来であれば黒狼の群れを抜けて青髯に向けて天蛇罰を叩き込んでやる予定だった。だが、エアルドフリスが白巫女であったが故に黒狼の群れは大挙を為してエアルドフリスに向かっていた。このおかげで新兵達が受けていた負荷は軽減されていたのだが、エアルドフリスは黒狼の対処に苦慮する事となった。
「本能のままに動く獣か」
エアルドフリスを追いかけてくる黒狼から逃れるようにゲアラハは素早い動きで回避。そのまま黒狼を八重樫の射線上へと誘導する。
黒狼達はエアルドフリスに意識を向けているが故に、まったく気付かない。
「叩き込む」
八重樫はアサルトライフルで連射した後、脚部に装着した試験用ミサイルポッドを数発打ち込んだ。銃弾の後に炸裂するミサイルは黒狼を地面と共に吹き飛ばす。
「さすがは山岳猟団の団長さんだ」
「よく言う。誘導が無ければここまでの戦果は無理だ」
「褒めるのは後にしよう。それより……」
エアルドフリスは別の話題へ切り替えた。
アニスと共に戦っている新兵についてだ。
「俺は歪虚への憎悪を忘れていない。終末を望むブラッドリーとも決して相容れない。だが、使える者は使う。目的の為にだ」
「新兵達にそれができるかどうか、か」
エアルドフリスもアニス同様新兵の暴走を危惧していた。
彼らもまた歪虚へ強い憎しみを持っている。大局を考えれば優先すべきは青髯だが、新兵が感情に任せればブラッドリーと青髯の両方を相手取る必要が出てくる。
「口で言っても分からん連中だ。気持ちは分かるが、いざとなれば……」
「命令違反で鎮圧か。あいつらは更に不満を抱くだろうが仕方ない」
エアルドフリスは合流する際に新兵へ釘を刺した。
物事には順序がある。それを忘れるな、と。
彼らはまだ歪虚との共闘を知らない。万一があればアニス同様新兵を止めるつもりだが――。
「新たな客だ」
八重樫の視界に再び黒狼の群れが飛び込んでくる。
数を揃えてきても二人を止められないと未だ理解できないようだ。
「血に依らず運命に依らず、俺は俺の意志によって……赤き大地の巫女たらん」
ゲアラハの背から降りたエアルドフリス。
共に戦う仲間を信じ、赤き大地を守る為に強い決意で黒狼と対峙する。
●
「砲撃をできるだけ当て続ける。それが本陣の皆を助ける事になる」
ナナミ川の渡河を試みる青髯に加えられる砲撃を前に、八島 陽(ka1442)は思い切った行動に出る。
ラズモネ・シャングリラの砲撃やハンターの攻撃を長時間命中させる為にはこのナナミ川の渡河に時間を費やさせればいい。そう考えた八島は福音の風で浮遊させた刻騎ゴーレム「ルクシュヴァリエ」を、不退の駆で突撃させたのだ。
「やれるか? ……いや、やってみせる」
振り下ろされる腕を掻い潜り、接近するルクシュヴァリエ。マテリアルバーストで青髯の体を強引に押し返す。
青髯の体に衝突する機体。その時間が長ければ、少しでも渡河を長引かせる事ができる。
そして、この間にもハンター達が青髯へ攻撃を仕掛ける。
「光よ集まれ、横一文字斬り! 薙ぎ払いはお前だけの専売特許じゃないよ」
刻騎ゴーレム「ルクシュヴァリエ」『魔動冒険王『グランソード』』をフライトシールド「プリドゥエン」で飛行させ、青髯に接近。時音 ざくろ(ka1250)は光あれで生じさせた膨大なマテリアルを機剣「イフテラーム」に集めさせる。
光の刃は青髯の胸部に向けて一撃を放たれる。
横に振り抜かれた一撃は、青髯を数歩後退させる事に成功。
効いている。ざくろの手に感触が伝わってくる。
「このまま押し切る……」
さらに畳み掛けようとするざくろだったが、一瞬躊躇する。
青髯は本当にダメージで体を仰け反らせたのか?
何かの予備動作だったのではないか。
その不安がグランソードの前面に光の障壁を生じさせる。
「――!」
青髯の腹部にある巨大な狼の頭が口を開き、周辺に響かんばかりの雄叫びを上げる。
咆哮。その影響を受けたグランソードの反応が鈍くなる。
「……動きを止めてからって訳ね」
ざくろの目の前で大きく腕を振り上げる青髯。
黒鎖……ではない。おそらく衝撃波だろうか。
攻性防御で防ぎ切れるか――。
「くっ、もう一度の突撃で攻撃を止められるか?」
八島は再び不退の駆による突撃を試みる。
だが、距離から考えて突撃しても攻撃には間に合わない。
ざくろは衝撃に耐えるべく意識を前方へ集中させる。
発射される衝撃波。
「……これは?」
ざくろは間違いなく衝撃波を受けたはずだ。腕が振り下ろされるのを確認している。だが、衝撃波を受けた形跡がまったくなかった。
その原因は上流から飛来した『奴』だとすぐに気付く。
「オルレアンの乙女を失い、禁忌に手を出す行為。神は決して許しません。お帰りなさい、ジュデッカへ」
そこに姿を見せたのは白いマスティマ――エンジェルダストであった。
●
「アニスさん、あれ!」
エンジェルダストの存在に気付いたシーツは、共に戦っていたアニスへ呼び掛ける。
(……ついに来やがったか)
アニスは心の中で呟いた。
奇妙な共闘関係が成立した本作戦で、ある意味厄介な援軍の登場である。問題はこの事実を新兵達にどう伝えるかだ。
「奴は本作戦の援軍だ。艦長も承知の上だ」
「で、でも……」
言い淀むレオン。
無理もない。彼らからすれば同僚をエンジェルダストに殺されているのだ。いや、ここにいるハンターも今回の共闘に考える所はある。
だが――。
「テメェ等も軍人なら仕事の順番間違えるんじゃねぇぞ、ルーキー共」
「!」
「言ったよなぁ。艦長も承知しているって。こいつは作戦の決定事項だ。お前達、命令違反をまた犯す気か?」
「…………」
アニスは強めに釘を刺した。
彼らは以前も暴走して命令違反を犯している。もし、ここでまた暴走すれば作戦全体に支障が出る。
「あいつと協力しないといけないのですか?」
「それだけ青髯が厄介な敵って事だ」
「だけど……」
「それ以上!」
アニスはレオンの言葉を遮った。
その言葉に怒気が孕んでいる事を二人はすぐに感じ取った。
「口を開くな。命令に従えないならその機体を今すぐ降りろ」
下手な動きをみせれば容赦なく力で止める。
それは脅しでもあった。だが、そうしてでも彼らを止める必要があると判断したのだ。 憎みたいなら好きにすればいい。だが、命令を無視すればそいつはもう軍人ではない。「……分かりました」
新兵達は押し黙った。
そして、黒狼の退治を続ける事を優先し始めた。
●
「青髯。お前の処刑を始めましょう。神もそれをお望みです」
ブラッドリーの号令を受け、堕天使型が一気に襲い掛かる。
掌から発射する遠距離ビームを打ち込みながら、数機が青髯に向かって突撃。ビームソードで何度も斬りつける。青髯の体表に傷が出来ているようには見えない。やはりかなりの火力が必要なのか。
「神の火が足りませんか」
ブラッドリーはエンジェルダストの高出力スナイパーライフルで狙いを定める。
そこへマリィアのmorte anjoが居並ぶ。
「支援のつもりですか?」
「貴方を倒すのは別の戦場。ここで信義に悖る行動はしたくないだけよ」
バズーカ「ロウシュヴァウスト」で狙いを定めるマリィア。
「狙う場所は狼の顔面。目を狙えば一瞬でも足を止められるかもしれない」
「暗闇に惑うは、罪深き亡者。それは悠久の刻の中、虚空を彷徨う魂」
呼吸を合わせて狙い撃つ二体のマスティマ。
打ち込んだ攻撃は青髯の顔面へ命中。青髯の体を再び大きく震わせる。
「効いたか。ならこちらも攻撃を仕掛ける」
二機の攻撃を確認したキヅカは、刻令ゴーレム「Gnome」の向きを変える。
ナナミ川へ青髯が侵入するまでは青髯に機導砲で畳み掛けながらCモード「wall」で衝撃波を回避する為の壁を作り続けていた。
川を渡り始めた段階で機導砲が射程距離に収まる距離へ移動。ラストテリトリーを展開しながら攻撃のチャンスを窺っていたのだ。
「キヅカくん、無理しすぎてません? あまり無茶をしないで」
ペガサスの背に乗ったアティ(ka2729)が問いかける。
実はキヅカも無理をしていた。仲間の支援に気遣いながら、隙を見て青髯を狙える場所へ移動し続けていた。時には接近してからのファイアスロワーで青髯の体力を削る行動を見せていた。
だがそれは緊張状態を長期に維持する事にも繋がっていた。
「無理もするさ。ここで可能な限り青木にダメージを与えておかないと……。
それよりアティだって無理をしているだろう?」
アティも傷付いた仲間を治療する為にナナミ川周辺地域を飛び回っていた。
エナジーレインを施して周り、咆哮を受けた者にはゴッドブレスで回復。それは戦線を維持する為に必要だが、機動力を生かした治療はアティにも少なからず負担になっていた。
「そうだけど……」
キヅカの身を案じるアティは、そう言いながら時折キヅカの様子を確認していた。
自制を促しても、きっとキヅカは無茶をする。
誰かが止めなければ、キヅカは自分が壊れても戦い続けてしまう気がするのだ。
そんな二人のやり取りを耳にしたのは、ブラッドリーだった。
「愛故の絆ですか。その絆が強さを生み出すのでしょう」
「ブラッドリー」
キヅカは青髯に打ち込む機導砲を準備しながら、強い口調で言い放つ。
「お前が言っていた楽園には誰も行かない。子供達もあの巫女も」
「…………」
「お前の好きにはさせない。僕はお前にとっての堕天使『ルシファー』だ」
今が共闘作戦中なのは分かってる。
だが、目標が同じなだけでブラッドリーを許す気はない。
それはブラッドリーも分かっているのだろう。
「それはどうでしょう? あなたもまた、罪深き天使」
「なに?」
「あなたの手の届く範囲の人達を守る。では、あなたの手の届かない方々は守れず死んでいくのですか? 手が届かないのだから、仕方ない。それで手を差し伸べられなかった者達は許してくれるのでしょうか」
「それは、すべてを救うのは……俺だけでは難しいからだ」
「そうです。あなたは無意識のうちに救うべき人々を選別している。その有り余る力は、あなたの意識を他者よりも上にある上位の存在として認識させる。それは有り余る力を根源とした傲慢。その傲慢はあなたを増長させ、神を脅かす存在になる」
邪神の強さはキヅカも理解している。
仮に邪神の殲滅を選択したとしよう。その場合、邪神を倒すべく動いた者達だけじゃない――各地で多くの犠牲も発生するだろう。歪虚も邪神を守るべく侵攻を再開するからだ。
そうなれば、犠牲は軍人や戦士だけではない。一般人や幻獣にも被害が及ぶかもしれない。
そしてそれは、すべてあの『選択』が切っ掛けだ。
その時、キヅカは戦いで散った者を『手が届かなかった人達』として自分を納得させられるのだろうか。ブラッドリーはそれを指摘しているのだ。
――理想に潰されるな。
一瞬、キヅカの脳裏にドリスキルの言葉が蘇る。
「すべての子を救う術を払い除け、己の誤った正義と膨れあがったプライドに従う天使。
青髯の次に生まれる怪物は――本当の明けの明星は、あなたかもしれませんよ」
「…………」
ブラッドリーの言葉を掻き消すようにキヅカは青髯に向けて機導砲を打ち込んだ。
そんなキヅカを見て不安になったアティは、キヅカの手に自らの手をそっと乗せた。
●
「ジェイミー、やるわよ。キヅカ、みんなに伝えて」
マリィアはジェイミーとキヅカに号令を掛ける。
青髯がナナミ川のポジションに到達した段階で、最大級の攻撃を叩き込む作戦となっていた。マリィアの攻撃を起点としてハンター側の総火力攻撃を仕掛ける。
「各機、総攻撃の準備をお願いします。目標、青髯。マリィアさんのハルマゲドンを発射してから10秒後に攻撃を開始して下さい」
ヴェルナーが各機へ通信を入れる。恭子もこれに合わせてラズモネ・シャングリラの砲撃準備を指示する。
マリィアはmorte anjoのブレイズウィングを介して星のマテリアルを収束させていく。
「神霊樹ネットワークで青木が転移した時の状況を見たわ。誰にでも起こりえる不幸だと思った。死んでからいくら頑張っても報われないのよ。
だから……私は、同じ軍の仲間として、青木を止めたいと思った」
マリィアの呟きが終わる頃、morte anjoの足元へ浮かび上がる巨大な魔方陣。
次の瞬間、虹色の煌めきを放つ光弾が青髯に向かって打ち込まれる。
強烈な一撃が青髯に向かって叩き込まれ、青髯は川の中央でその足を止めた。
――絶好のチャンスが、ついに訪れる。
「砲門一斉発射ザマス!」
恭子の命でラズモネ・シャングリラの砲門が一斉に開く。
さらに甲板にいたドリスキルもこの機会を逃さない。
「とっておきをお見舞いするぜ。マリィアが世話になったみたいだからな。遠慮するな、俺の奢りだ」
ヨルズの滑空砲から撃ち出されたのは貫通力を魔導の技術で引き上げられた試験弾。空気抵抗を低減させた上、風のマテリアルを付与された特製の砲弾だ。
そしてラズモネ・シャングリラの砲撃に呼応してハンター達も攻撃を開始する。
「一気に畳み掛けるぞ! あるだけ全部打ち込んでやれ!」
惣助の長光は、このチャンスの為に温存していたグランドスラムを打ち込んだ。
ブースターで加速された徹甲榴弾が硬い青髯の体で炸裂。大爆発が青髯を揺らす。
「これで看板じゃ、撃って撃って撃ちまくれ」
ミグのヤクト・バウ・PCも呼応してグランドスラムによる砲撃。
出し惜しみ無く次々と連続で打ち込まれる砲撃は、青髯にかつてないダメージを浴びせかける。容赦なく降り注ぐ砲撃だが、その雨が止んでもハンターの攻撃は収まらない。
「託す先へ繋げる道を拓け、一刀両断スーパーリヒトカイザー!」
万物の器に光あれを付与したイフテラームを握ったグランソードは空中へ飛び上がったまま、一刀両断。その刃を正面から青髯へと振り下ろした。
側面からはリューのルクシュヴァリエが光の刃となった雲山で強襲する。
「このチャンス、絶対に逃さねぇ!」
複数の方向から攻撃を受け続ける青髯だが、こうしている最中にも体を起こそうと青髯は藻掻いている。
ここで討ち取れる程甘くはない。だが、ここで全力をぶつける事で本陣の負担は軽減する。ならば、ここで全力を出し切るのが必定。
「あなたが地上に出る事を、誰も決して許しません。神への冒涜を悔い改めなさい」
再び発射されるエンジェルダストのスナイパーライフル。
強烈な一撃が青髯へと続けられていた。
●
総攻撃の後でも、青髯はナナミ川を渡りきった。
これもすべては作戦の内。決着は本陣へと持ち越される。
予定通りではあるが、その状況に待ったを掛ける者がいた。
「同じ軍人って奴だからなぁ……救えりゃ救ってやりたいと、ずっと思ってたぜ」
トリプルJ(ka6653)はR7エクスシアで立ち塞がった。
黒狼を撃退しながら、トリプルJは先回りしていたのだ。
作戦と違う事も理解している。だが、死んでまで励んだ結果がこの状況。せめて少しでも早く眠らせてやりたいと考えるのは人情だろうか。
「休めよ、青木。ボタンは掛け違え地待ったけど、お前は頑張ってたぜ。その結果がこれじゃ、苦しいばっかじゃねぇか」
トリプルJは青髯との間合いを詰めていく。
無謀な事は百も承知。だが、青木の想いに答える方法をトリプルJはこれ以外思い付かなかった。
「もう終わらせようぜ!」
超々重斧「グランド・クラッシャー・マキシマム」を振り上げ、青髯の体表へと突き立てる。
一斉攻撃でダメージを負っているとはいえ、元怠惰王を始め多くの負のマテリアルで膨張した体はあまりに強固であった。手応えが無い。
だが、それでもトリプルJは構わずラウンドスイングで攻撃範囲を押し広げる。
「うぉぉぉ!」
声と同時に重斧を振り下ろすトリプルJ。
だが、片腕で防いだ青髯は残った腕をR7エクスシアへ叩き込んだ。
上から加えられる衝撃。トリプルJの体にも大きな衝撃が加わる。
「ぐっ!」
漏れる声。
だが、トリプルJもここで立ち止まる訳にはいかない。
「生真面目だった青木を、ここで終わらせるんだ。重体程度、クソでもねぇ。青木を受け止めて、刻んで……こんなんで終わりにできるかよ!」
リジェネレーションで機体損傷を修繕しながら、トリプルJは再び青髯へ向かって行く。
青髯の攻撃をどんなに受けたとしても、トリプルJは諦めない。
それが自分にできる青木 燕太郎という存在に対して出来る行動だからだ。
――終わらせる。
この悪夢も。この絶望も。
「こんなんじゃ死なねぇ、死ねねぇ……目ぇ覚ませや、青木ーっ!」
トリプルJの叫び。
次の瞬間、R7エクスシアを衝撃波が捉えた。
「……あっ」
負傷者を捜索していたアティがトリプルJを発見した頃、青髯は既にその場から姿を消していた。
●
青髯はホープへと向かっていく。
次の戦いが青髯討伐の最後となる。ハンター達は勝利を願う他なかった。
「お前、その体で……」
ドリスキルはふらつくマリィアを支えるべく肩を貸した。
今からマリィアはホープへ向かうというのだ。
「その体じゃ無理だ」
「ジェイミー……貴方が迷子になったら、私は何度でも迎えに行くわ。だから私が迷子になったら……貴方が迎えに来てね」
「……分かった」
マリィアの言葉にドリスキルは、そう答える他なかった。
止めたとしても行ってしまう。それが軍人の矜持だとドリスキルは知っていた。
一方、ナナミ川を離れるブラッドリーに一つの通信が舞い込む。
「あー、一言だけ言っておきたくて」
Gacruxが繋いだ回線にブラッドリーは黙って耳を傾ける。
「青木にとって、あんたの神や信仰はどうでも良かったのですよ。あの男の心は、一人の女のものだった」
青木は歪虚になってでも一人の女を追いかけた。
それは美しくもあり、崇高な姿だ。
道は誤ったのかもしれないが、その想いまでを貶す気にはなれなかった。
「あんた、誰かを愛した事はないでしょう?」
「どうでしょう。この身もこの命も神のものですから」
はぐらかすような言葉を返すブラッドリー。
さらにブラッドリーはGacruxへこんな言葉を返した。
「楽園にはそのような想いを抱く者達が数多くいます。神はそれらも保存して楽園を存続させているからです。楽園を終わらせる事は、彼らの想いを終わらせる事。つまり、その者達の記録も想いも葬る事になります。あなたに……彼らの想いを穢せますか?」
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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【質問卓】 アニス・テスタロッサ(ka0141) 人間(リアルブルー)|18才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2019/05/13 22:06:08 |
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配置表明 アニス・テスタロッサ(ka0141) 人間(リアルブルー)|18才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2019/05/13 21:40:35 |
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【相談卓】A:マギア砦 アニス・テスタロッサ(ka0141) 人間(リアルブルー)|18才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2019/05/15 19:22:30 |
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【相談卓】B:ナナミ川 アニス・テスタロッサ(ka0141) 人間(リアルブルー)|18才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2019/05/15 19:24:25 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/05/13 07:58:32 |