ゲスト
(ka0000)
未来の村に麦秋を!
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2019/10/08 19:00
- 完成日
- 2019/10/19 21:25
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●先へ
ラカ・ベルフ(kz0240)捜索後、リシャール・ベリンガーと別れ、ライル・サヴィスとシールはこの町に避難しているはずのルーベン・クーリオの宿を探そうとした。
「そのおじさんなら知っているですよ」
ルゥル(kz0210)が二人を案内してくれた。
「ここなのですー」
と集合住宅の扉の前に立つとぶら下がるようにノッカーをたたいた。
「そこまでしてもらわなくても……」
シールが礼を述べて帰そうとしている間に、扉が開いた。
「二人とも無事だったんだね」
「オーナー」
シールは目を潤ませルーベンにあいさつのハグをする。
「痛いのですー」
ルゥルが挟まれた。
「ご、ごめん」
シールが慌てる。
「ハウエルさんのところのお嬢さん……この二人を案内してくれたんですね」
「あとは、水入らずでお過ごしくださいなのですー」
ルゥルが手を振って去っていくのを、三人はお礼を述べ見送った。
しばらく会っていなかったということで、話すことはたくさんある。ほぼ単身者用の部屋に三人は狭いが、話してご飯を食べて雑魚寝するのは問題なかった。
次のことを早々に考えないとならない。イスルダ島の戻れるようにする計画は進めたいからだ。いろいろ課題は山積みだ。
村自体で、何か収益になるようにする目標はあるとしても、まだ一歩も踏み出せていない。
それに雑魔が出たり、とりあえず埋めたりなど、ライルとシール、加わったリシャールが計画性少なかったのが原因だった。
「あのローズマリー放置するのもったいなかったし……」
「いつ、雑魔が出るかわからないから……」
シールとライルは溜息を吐いた。今考えれば相当無駄なことをしているかもと思える。
「島を離れている間にどうなったか……だな。植物を植えたということで、土だって変化するだろ? 前向きに考えよう。世話をしていない間に枯れたものは仕方がないし、マテリアルの変調で枯れているモノだってあるだろうから」
ルーベンがなだめた。
「今後を考えよう。段取りを考えて進もう。歪虚は生まれなくはなくとも、以前のようなことはないのだから」
汚染が強いイスルダ島は雑魔が湧きやすい。しかし、邪神と戦いのときのような敵の強さや多さはないはずだ。
「でも、どうしたらいんだろう?」
「……知り合いに一人いる……相談するのに適任な人が」
ライルをシールは「誰?」と見た。
「エトファリカ連邦国の陰陽寮の役人の大江 紅葉(kz0163)さん」
「……夏にいたっ! あの人? え、でも、石拾いまくっていただけのような」
「シール……エトファリカは汚染地域を抱えてるし、相手の予定にもよるけれど、俺たちが行けばいいから」
「……なるほど……」
連絡を取ってどうにか会ってくるのだった。そして、紅葉流開拓ポイントとして風雨を避ける場所と自給自足が大切と教わった。麦ならなるはずだと二人は希望を持つ。
ただ、麦の種をただ蒔けばいいわけではないため、段取りは必要だと言われた。
本格的な種まきは来年だろうと言われる。土を作って試してみるのは構わないだろうとのことだった。
●ユグディラ
リシャールが戻ってきたとき、ユグディラのクロはほっとした。
ついていくと決めたけれども、リシャールがあちこちに動き回っていたので、彼の父親について回る方が多かった。
リシャールの成長に付き合うつもりが、猫の手が必要なところに収まってしまっていたのだった。邪神戦争中、町の見回りを積極的に行っていたが、何か物足りなかった。
帰ってきたリシャールと話し合うことにしたのだった。
「クロはあちこち動きまわる方が好きなんですよね」
『うむ』
「私は、この辺りがごたごたしているため、領主の仕事を手伝いたいと思いますし」
『それはそうだろうな。大人の部類に入るのだろう?』
「そうですね。知り合いの女の子が領主をやっているのを見て、負けていられないと思いました。勝敗がつく話ではないですけど」
クロはうなずいた。
「クロの役に私はたてなかったですね」
『いや……むしろ、我が役に立てなかったのだ』
リシャールもクロもしょげた。
「ここにクロがいてくれるなら嬉しいです。でも、あなたのニャン生なんですから、あなたが決めてください」
『……どこにどう』
「イスルダ島に行く、友人たちについていくのはどうですか?」
クロは目を見開いた。
「あの人達の方が手を借りたがっていると思います」
クロの目は輝いた。
「では、決まりですね。ありがとう、クロ、私と一緒にいてくれるといってくれて」
リシャールはクロの頭を撫でた。
しばらく撫でられていたクロはハッとする。
『我は家猫ではない! そうだ、我の名前……クロではなく、クローディル・ゴーティというのだ!』
初対面の時に言ったかもしれない、聞いたかもしれない。
「略すとクロですね」
『ぬう』
リシャールは笑った。
「明日にでも、二人に会わせますね」
ライルとシールがエトファリカに行ったりしていたので、会えるのはしばらく後だった。
二人は新たな道連れに喜んだ。
●ハンターへの依頼
ハンターオフィスの受付男子ロビン・ドルトスは、依頼にやってきたシールに話を聞きながら情報を書き込んでいく。
「……ユニットあると便利でも範囲的には……? まあ、なくても問題はないみたいですね。それより、非常に人力で、腰痛くなりそうな作業がありますね……」
思わず感想を述べた。
植わっている植物がさほど付いている無いものだとしても、植木鉢にそれを植えていくのは骨が折れるだろう。
「優先順は何か聞いていいですか? 結構、こまごまとしたことが多いですよね? いくらハンターとはいえ、数時間でできることは決まってます」
「麦畑の土起こしかなぁ……次は、教会の雨漏りと壁の修繕……」
シールは考えたが、植木鉢植え替えは後回しでも十分だ。時間を見てやっていけばいいから。
「畑全部をやっても、畑の状況すらわかっていないから……石だらけどころか岩があったりするかもしれないし、雑魔が埋まっているかもしれないですよね」
「うん……雑魔、埋まる? まあ、地面の中に住んでいるのがいてもおかしくないですかねぇ」
ロビンは首を傾げるが、何があるかまだ分からないのも現実だ。
イスルダ島に人が戻れるのはいつかわからない。作業をこうしてコツコツ進めるしかないのだ。
「分かりました。君達が戻る日、手伝いをハンターに、と言うことで」
「はい。当日は午前から午後にかけて作業できれば良いと思います」
「見てみたいですね、麦が実るところ」
「はい。まずは、僕たちが滞在するのに必要な食料を作れるようになることが重要だと分かりましたので」
シールは告げる。
目標が定まったから迷わない。迷っても戻る道があるのだから。
麦秋――来年の夏には小さくても実りは見られるのだろうか? そのための畑の整備だとシールは考えた。
ラカ・ベルフ(kz0240)捜索後、リシャール・ベリンガーと別れ、ライル・サヴィスとシールはこの町に避難しているはずのルーベン・クーリオの宿を探そうとした。
「そのおじさんなら知っているですよ」
ルゥル(kz0210)が二人を案内してくれた。
「ここなのですー」
と集合住宅の扉の前に立つとぶら下がるようにノッカーをたたいた。
「そこまでしてもらわなくても……」
シールが礼を述べて帰そうとしている間に、扉が開いた。
「二人とも無事だったんだね」
「オーナー」
シールは目を潤ませルーベンにあいさつのハグをする。
「痛いのですー」
ルゥルが挟まれた。
「ご、ごめん」
シールが慌てる。
「ハウエルさんのところのお嬢さん……この二人を案内してくれたんですね」
「あとは、水入らずでお過ごしくださいなのですー」
ルゥルが手を振って去っていくのを、三人はお礼を述べ見送った。
しばらく会っていなかったということで、話すことはたくさんある。ほぼ単身者用の部屋に三人は狭いが、話してご飯を食べて雑魚寝するのは問題なかった。
次のことを早々に考えないとならない。イスルダ島の戻れるようにする計画は進めたいからだ。いろいろ課題は山積みだ。
村自体で、何か収益になるようにする目標はあるとしても、まだ一歩も踏み出せていない。
それに雑魔が出たり、とりあえず埋めたりなど、ライルとシール、加わったリシャールが計画性少なかったのが原因だった。
「あのローズマリー放置するのもったいなかったし……」
「いつ、雑魔が出るかわからないから……」
シールとライルは溜息を吐いた。今考えれば相当無駄なことをしているかもと思える。
「島を離れている間にどうなったか……だな。植物を植えたということで、土だって変化するだろ? 前向きに考えよう。世話をしていない間に枯れたものは仕方がないし、マテリアルの変調で枯れているモノだってあるだろうから」
ルーベンがなだめた。
「今後を考えよう。段取りを考えて進もう。歪虚は生まれなくはなくとも、以前のようなことはないのだから」
汚染が強いイスルダ島は雑魔が湧きやすい。しかし、邪神と戦いのときのような敵の強さや多さはないはずだ。
「でも、どうしたらいんだろう?」
「……知り合いに一人いる……相談するのに適任な人が」
ライルをシールは「誰?」と見た。
「エトファリカ連邦国の陰陽寮の役人の大江 紅葉(kz0163)さん」
「……夏にいたっ! あの人? え、でも、石拾いまくっていただけのような」
「シール……エトファリカは汚染地域を抱えてるし、相手の予定にもよるけれど、俺たちが行けばいいから」
「……なるほど……」
連絡を取ってどうにか会ってくるのだった。そして、紅葉流開拓ポイントとして風雨を避ける場所と自給自足が大切と教わった。麦ならなるはずだと二人は希望を持つ。
ただ、麦の種をただ蒔けばいいわけではないため、段取りは必要だと言われた。
本格的な種まきは来年だろうと言われる。土を作って試してみるのは構わないだろうとのことだった。
●ユグディラ
リシャールが戻ってきたとき、ユグディラのクロはほっとした。
ついていくと決めたけれども、リシャールがあちこちに動き回っていたので、彼の父親について回る方が多かった。
リシャールの成長に付き合うつもりが、猫の手が必要なところに収まってしまっていたのだった。邪神戦争中、町の見回りを積極的に行っていたが、何か物足りなかった。
帰ってきたリシャールと話し合うことにしたのだった。
「クロはあちこち動きまわる方が好きなんですよね」
『うむ』
「私は、この辺りがごたごたしているため、領主の仕事を手伝いたいと思いますし」
『それはそうだろうな。大人の部類に入るのだろう?』
「そうですね。知り合いの女の子が領主をやっているのを見て、負けていられないと思いました。勝敗がつく話ではないですけど」
クロはうなずいた。
「クロの役に私はたてなかったですね」
『いや……むしろ、我が役に立てなかったのだ』
リシャールもクロもしょげた。
「ここにクロがいてくれるなら嬉しいです。でも、あなたのニャン生なんですから、あなたが決めてください」
『……どこにどう』
「イスルダ島に行く、友人たちについていくのはどうですか?」
クロは目を見開いた。
「あの人達の方が手を借りたがっていると思います」
クロの目は輝いた。
「では、決まりですね。ありがとう、クロ、私と一緒にいてくれるといってくれて」
リシャールはクロの頭を撫でた。
しばらく撫でられていたクロはハッとする。
『我は家猫ではない! そうだ、我の名前……クロではなく、クローディル・ゴーティというのだ!』
初対面の時に言ったかもしれない、聞いたかもしれない。
「略すとクロですね」
『ぬう』
リシャールは笑った。
「明日にでも、二人に会わせますね」
ライルとシールがエトファリカに行ったりしていたので、会えるのはしばらく後だった。
二人は新たな道連れに喜んだ。
●ハンターへの依頼
ハンターオフィスの受付男子ロビン・ドルトスは、依頼にやってきたシールに話を聞きながら情報を書き込んでいく。
「……ユニットあると便利でも範囲的には……? まあ、なくても問題はないみたいですね。それより、非常に人力で、腰痛くなりそうな作業がありますね……」
思わず感想を述べた。
植わっている植物がさほど付いている無いものだとしても、植木鉢にそれを植えていくのは骨が折れるだろう。
「優先順は何か聞いていいですか? 結構、こまごまとしたことが多いですよね? いくらハンターとはいえ、数時間でできることは決まってます」
「麦畑の土起こしかなぁ……次は、教会の雨漏りと壁の修繕……」
シールは考えたが、植木鉢植え替えは後回しでも十分だ。時間を見てやっていけばいいから。
「畑全部をやっても、畑の状況すらわかっていないから……石だらけどころか岩があったりするかもしれないし、雑魔が埋まっているかもしれないですよね」
「うん……雑魔、埋まる? まあ、地面の中に住んでいるのがいてもおかしくないですかねぇ」
ロビンは首を傾げるが、何があるかまだ分からないのも現実だ。
イスルダ島に人が戻れるのはいつかわからない。作業をこうしてコツコツ進めるしかないのだ。
「分かりました。君達が戻る日、手伝いをハンターに、と言うことで」
「はい。当日は午前から午後にかけて作業できれば良いと思います」
「見てみたいですね、麦が実るところ」
「はい。まずは、僕たちが滞在するのに必要な食料を作れるようになることが重要だと分かりましたので」
シールは告げる。
目標が定まったから迷わない。迷っても戻る道があるのだから。
麦秋――来年の夏には小さくても実りは見られるのだろうか? そのための畑の整備だとシールは考えた。
リプレイ本文
●出発
ソナ(ka1352) は植物の力をもって力になりたいと、『クリムゾンウェスト薬草百科』を片手にやってきた。
「空気も真っ黒だった程のイスルダ島、緑がはぐくまれれば、故郷に帰る希望もたくさん芽吹くでしょう」
イスルダ島は歪虚に支配されていたため、負のマテリアルがまだ強い。
依頼で来ると、見覚えのあるユグディラがいた。
「まあ、クロさん、お元気にしていらっしゃいましたか?」
クローディル・ゴーティ、通称クロは大仰にうなずいた。
星野 ハナ(ka5852) は魔導トラックと共に来た。魔導トラックの側面「東方茶屋」には記載があるのが特徴だ。
「耕耘の方はお手伝いはできませんけどぉ、重い物を運搬したり、下したりぃ、お料理作ったりはできますのでぇ、皆さんもよかったら荷台に乗っちゃってくださいぃ」
その申し出に否応もなかった。
「イスルダ島に来る機会って結構限られる気がするんでぇ、こういう時に頑張りたいですぅ」
シールとライル・サヴィスはうなずいた。
「確かに、船に乗るし、オフィスがあるわけでもないですもんね……」
シールは状況を改めて考えるのだった。
レオナ(ka6158) は「素敵な仕事ですね、頑張りましょう」とほほ笑む。
荷物から刻令耕運機「ガンバルン」を取り出す。
「それから、この耕運機を持て余しておりまして、覚醒者であれば使えるというものです。もしお入り用なら差し上げたいです」
「ほ、本当にいいんですか」
シールがレオナと耕運機を交互に見る。
「はい、持てあましていますし、必要なところにある方がいいでしょう。土を耕すのになかなか便利なのですが、しっかり持たないと人の方が振り回されてしまいます」
レオナが忠告を述べているが、喜ぶシールは聞いているか不明。ライルが理解した旨を告げた。
昼食のための食料も積んだ魔導トラックに耕運機も早速積まれた。
●村の跡、村の予定
港を離れると静かだ。全く無音ではないが、鳥や動物の音は乏しい。
トリプルJ(ka6653) は畑のサイズや状況を考えると人力が一番良いと考えていた。
「CAMで畑に入ると、土を踏み固めそうな気がして怖くてなぁ」
機械や幻獣にも得て不得手はある。
「んじゃま、雑魔が寄ってこないうちにさっさとやるかぁ」
道具を手に取る。
フューリト・クローバー(ka7146) は連れのポロウのシフに声をかける。
「シフさん、リスィと一緒に飛んで、なんか気づいたことがあったら教えてー」
シフは首をクリッと横にした。
「いちおー雑魔の類がいるとも限んないからねー。見つけるホーで探したり、伝えるホーで情報教えたりしてねー」
フューリトの説明にシフは了解を示し、空に舞い上がる。モフロウのリスィも慌ててついていく。
「皆、どこを重点的に見るつもりなのー? それと、一度、みんなで廻った方が動きやすいんじゃないかなぁ?」
「皆さんの作業予定もうかがっていたほうが効率よくできますね」
ソナが同意を示す。
「分かりました。えっと、話しながら一周しましょう」
シールが応じ、歩きながら状況の説明をするのだった。
一周して見ることで、今後必要なこともわかる。
水場が一か所であり、若干遠いこともあるが、それは今の問題ではない。
今回は畑と仮住居とする教会の手入れが優先的にすべきだ。次に適当に植えた種やローズマリーの移動だろう。人数で分担すれば終わるかもしれない。
ソナはマッピングセットで大まかな地図と、今回の作業領域を書く。
「どう分担しますか?」
それぞれが得意なこと、考えていることは違う。この場ですり合わせた。
マリィア・バルデス(ka5848) は作業の準備を整える。
「畑を整備するってことは、将来的に村や町を作るってことよね? 二人はいつからここを本拠地にする予定なの?」
マリィアの問いかけにシールとライルは首をひねり、明快に答えがない。
「好きだから整備するんじゃないの?」
「嫌いではないんですよ。でも、良いことも悪いこともありすぎて」
「でも、何かしたいと考えてます」
二人は答える。
「それはわかるわ。これからね。とはいえ、家がなければ当分通うしかないし、今の状態じゃ、自給自足の生活は難しいものね」
マリィアはイスルダ島住民の複雑な心境を垣間見て理解を示す。
「はい。教会をとりあえず、直せば住めますし、港で物資を受け取ればいいのです」
「その件は、運んでくれる人もいるだろうな」
シールとライルは答えた。
「分かったわ。さあ、始めましょうか」
マリィアは覚醒し、道具を使う。
「覚醒して鋤を振るうほうが、一般人よりずいぶん捗ると思うの」
「同じく。問題あれば、スキルも使う」
トリプルJがマリィアに同意する。
「僕は教会の点検に行くけ……あっ! 耕す前に石を拾おー。じゃないと、せっかくの麦の育ちを邪魔しちゃうし」
フューリトが耕そうとした人たちを止める。
「土の状態を見て水撒きしてからの方が、と思いましたが、スキル使うならそこまで気にしなくていいでしょうか」
ソナは内心首を傾げつつも確認は怠らない。
「フォークみたいなので土は起こして、石がないかも見たほうがいいかもー?」
フューリトは石を拾って言う。
「そうね……もともと畑で石はなかったとしても、放置されていたら何があるかわからないわね」
「雑魔やらなんやらが何をしているかわからないしな」
マリィアとトリプルJは了承の旨を示し、柔らかくしつつ、石の状況を見ていく。
「大きい岩とかあるなら、動かせますので言ってくださいねぇ」
ハナは魔導トラックにあるクレーンを指さす。
「では、教会の修繕や植えっぱなしの木の手入れに行きますね。あ、出ている芽をとりあえず植え替えるんですよね? 抜いてはいけないものと区別つきますか?」
レオナはライルに問う。
「……見てみます、正直言って植物に詳しいわけではないので」
ライルは頭を掻いた。
●畑
マリィアとトリプルJが土を柔らかくしつつ、石をどける。フューリトは石を素早く避けていく。
ソナは雑草等、生えていなくていいものをとっていく。
ハナは別の作業に移ることにした。
「メインの農作物を育てる前にぃ、クローバーやレンゲ育ててそれを畑にすきこんじゃうと、肥料代わりにもなりますしぃ、養蜂だって手を出せますからぁ、結構お薦めなんですよぅ?」
ハナがシールに助言する。
「なるほど、他の植物ですね」
「そうですぅ。花で観光も将来的に目指したいじゃないですかぁ」
先を考えている。当事者はどうしても近いところに必死だった。
「では、食事がとれる準備はしておきますねぇ。道具が必要とか、人手大量にいるとかあれば、声をかけてくださいぃ。教会近くで見てますねぇ」
ハナが立ち去った。
「畑の方は特に生えていないというのは、負のマテリアルの影響でしょうか?」
「否定できないです。僕たちは意識しなくても、それらがいた影響は目で見えません」
ソナの言葉にシールが溜息を吐く。
「そうですね、念のため浄化しておきましょう?」
「その方が安心ですよね」
ソナはAWI「フォーティアン」を手に載せ、マテリアルを集中させる。そして、【祓奏】を用いる。旋律とともに紡がれたマテリアルが、ソナの周囲に広がり、ふわりと舞い、草木が芽吹くような風景が見えるようだった。
「あちらの方をしておきますね」
否もでないため、何か所かで【祓奏】や【ピュリフィケーション】を用いた。
「さて、私はローズマリーの方に行ってきますね? 一旦植木鉢に植えるということですし、枝の状況によっては石灰等で土を改良する必要もあります。クロさんはどうしますか?」
「僕は教会に行くねー」
ソナとフューリトが移動するのに合わせ、クローディルもついていった。
「さて、こっちもやろう」
「土にこれを混ぜていくのね?」
トリプルJとマリィアに確認をされる。シールは手順を書いた紙を取り出して、どこに何を混ぜるのかなど説明した。
この二人の作業は早い。雑談や今後のことを話しながらも手が止まらない。
「お前さんたちは、まずはここで頑張るんだろう? 俺はスワローテイルの活動をメインにしつつ、レクエスタや王国の聖導士学校に関わっていく予定でなぁ」
「世界を飛び回るんですね」
「そういうことだな。だから、もう一回、きちんとこことお前らの活動を見ておきたかった」
「うわっ、僕たち責任重大!?」
トリプルJは笑う。
「結局、この村が復興したら、誰が領主になるのかしらね。まさか、女王の直轄地になるのかしら?」
マリィアの問いに、シールが止まる。
「さあ? 一応、領主はいると思います。神殿跡がひどいですし、国のバックアップ必要かもしれませんね」
「なるほどね。いろいろ山積み、でも、一歩ずつね」
「はい」
作業は進み、昼食ころには終わりそうだ。
●教会
教会の脇には確かに芽が出ている物がたくさんある。雑草と区別がつくかという疑問に対し、レオナもライルも安堵した。
樹木の芽なため、茎がしっかりしているから区別がつきやすい。
「ずいぶんいっぱいありますね」
「知り合いからもらってシンボルツリーに育てようとしたんですが、とりあえず埋めたという……」
「うまく芽が出たということですね。それは良いことです」
ライルはレオナの言葉から前向きに考えた。
「では、ここは受け持ちます」
「よろしくお願いします」
ライルは教会の中に入る。
しばらくするとそこにフューリトが合流する。
「お待たせー。畑の方は順調そうだよ。それと、巡回に出たシフさんたちもくつろいでるしー。で、どういう感じなの?」
「まだです」
「分かったー。僕は上の方から見てくるね」
「助かります」
「それがお仕事だよー。それに状況を確認して、エクラ教にほーこくすれば、教会は協力してもらえると思うんだよね」
フューリトが世の中の仕組みを元に告げる。
「開拓するにしても教会があった方がいいと思うの。ヨリドコロってやつだね」
「そうですね。すぐにでなくとも、言っておくということは肝心ですね」
ライルが納得したのを見て、フューリトがうなずく。
「まずは、ここを拠点に考えるなら、寝泊まりする場所にもなるしー、みんなが集まる場所にもなるしー、あと、怪我や病気の時に頼れる人がいたら、ココロヅヨイと思うんだよねー」
「皆さんが色々気づいてくれるのは助かります」
ライルはうなずいた。そのあと、二人は作業に移る。
雨露をしのぐ場所と言うだけでも、最初は心のよりどころになりうる。
フューリトは屋根の状況などを見に行く。
「ぶっ壊れた場所を紙に書き出してーと」
大きな壊れはないようだが、細かいところは多い。その上、今は雨露しのげそうだが、強風などで傷んでいるところは多い。
「僕やほかの人で直せそうで優先すべきところはどこかな?」
紙に書き、ライルに確認するのだった。
●ごはん
ハナは魔導トラックのBBQグリル「ベガン」を用いて、バンズを焼いて肉をガンガン焼く。
「こういう時にガンガン食べないで、いつ食べるんですぅ? どんどんどうぞですぅ」
焼くおよび空の皿には載せていく。
「なんか、こういうところで料理食べられるっていいですね」
「魔導トラックかぁ……貸与してもらおうと思えばできるのか」
シールとライルはまじめに検討している。
「物資が限られても温かい食べ物が胃に入るか否かは結構重要ですよぅ」
セールスされるとシールとライルは心が動く。
「物資の調達考えるといるんじゃないのかしら?」
マリィアが言うと、ハナが「そうですぅ」とうなずいた。
「クロさんは歌や演奏はいかがですか?」
『ふっ、我は黒い電光と呼ばれたユグディラだぞ、そのくらいできるぞ!』
ソナに問われ、クローディルは胸を張って答え、竪琴を取り出す。
「そうですね、準備万端ですね」
「私もご一緒させていただいてよろしいですか? 幸運を願って歌いませんか? これから先、良い方向に進みますように、と」
レオナがソナとクローディルに言う。
「良いですね。クロさん?」
『うむ、かまわないぞ』
そして、ソナのカンテレとクローディルの奏でる楽器の音が響く。レオナの歌声に、ソナの声が重なり、暗さの残る地域に、澄んだ歌声は響き渡る。
食後、それぞれ作業に移る。
「そのうち、家も建て直すんだろ? 名残惜しいが、きちんと撤去して、懐かしくも新しい街を作れりゃと思ってるぜ」
畑作業は終わっているため、トリプルJは言う。
「そうですね、自分たちがどうするかの次ですが」
「んー、じゃ、どこ直すか?」
トリプルJにフューリトが声をかける。
「建物はガンジョーぽいけど床板とかおかしいところはあったねー」
「じゃ、私もそっちにいくわ」
マリィアも加わり、道具を持って三人は教会の中に行く。
「ライルさん、花壇を作り直してもいいでしょうか? それとも教会の掃除でしょうか?」
レオナは作業中、花壇ではなく、そこが埋めたのがわからなくなるように囲っただけと気づいていた。
「掃除優先でお願いします。花壇の件は適当すぎました。どうすると良いかなどアドバイスを頂けるなら嬉しいです」
ライルの言葉に、レオナは微笑みうなずいた。
「こっちの片づけが終わったら私はどうしますー?」
ハナは昼食の後片付けをしている。それは数時間かかるものではない。
「教会は手が空くならば、ローズマリーの方を手伝っていただいていいですか?」
「分かりましたー」
ハナはソナの言葉に了解を示した。
太陽があるうちだけの作業。幸い、予定していたことは終わる。
●麦秋へ
帰り支度をしつつ、状況の情報交換が始まる。
植木鉢に移した植物は、今後の在り方を検討していく必要がある。
「ローズマリーって割とジョーブなんだけど、風通しが悪かったりすると病気になったりするしね」
フューリトは教会の直しを終えて後日やるべきことリストをライルに渡す。
「ローズマリー以外にもゆくゆくはタイムとかセージも植えるといいかもー。あと、ヤロウとか薬効あるハーブあったら、開拓の手助けになると思うよー」
「そうですね。あとは草木によって肥料等が違うとこいうことです」
フューリトの言葉を受け、ソナが「クリムゾンウェスト薬草百科」を見せる。
「あ、シフさん、リスィ、お帰りぃ」
フューリトのポロウとモフロウが戻ってきた。
見回りもあったし、ハンターも何かが来ることを警戒はしていた。それが功を称したのか何もなかった。
「寝所の確保はできましたよ」
レオナは掃除が完了したと告げる。
「壁や天井の状況も問題はないと思います」
働く上で休むところは重要だ。台所に近いところを選んでもある。当面、二人で作業ならば、広いところを行き来するのは意味がない。
「ねぇ、ライルさんとシールさん、私はずっとこのクリムゾンウェストでぇ、死ぬまでハンター続けて行こうと思っているんですよぅ」
ハナはリアルブルー出身である。
「王国も辺境も、同盟も龍園も、東方もぉ、北征や南征にもかかわってずっと生きていこうと思っているんですぅ。このイスルダ島が復興してぇ、人でいっぱいの豊かな村になるのを本当に楽しみしていますからぁ、何かあったら……ううん、何かなくてもどんどん声をかけてくださいねぇ」
ハナは寂しそうな、それでいて未来を見つめる決意のこもった目をしている。
「ここが大きな街になって、ハンターズソサエティも設置されれば、と思ってるぜ。いざという時に分霊樹で脱出できるのは、島民の安全に大きく寄与すると思うからなぁ」
トリプルJがつなげる。
「神がいなくなってもすべての歪虚がいなくなるわけじゃない。結局、この島と人を守るのは、お前たちだと思うからな、頑張れよ、ライルもシールも」
トリプルJは握りこんだこぶしを名前を呼んだ時に差し出す。ライルとシールはこぶしをぶつけた。
それを見ながら、ハナは微笑む。
「……人間の領域が増えること、きっと深紅ちゃんも楽しみにしていると思うんですぅ。私ぃ、世界中を回りながら、深紅ちゃんに話せることをいっぱい集めたいと思っていますからぁ」
ハナは空を見上げた。ハナが深紅ちゃんと呼ぶクリムゾンウェストの大精霊はここにいない。しかし、どこかで会えるかもしれない。それならば、彼女のためにも、世界を作りたいのだ。
「ここにルゥルやイノア様が普通に遊びに来られるくらい復興してほしいと思っているの」
マリィアはそう述べ、二人の頑張りを褒める。
覚醒者でも子どものルゥル(kz0210)や非覚醒者のイノア・クリシスが来られる環境は非常に重要だ。
「クロさんにもお会いできてよかった。時々懐かしく思い出されるものです」
ソナはクローディルに声をかける。クローディルはうなずいた。
皆、多くの出会いがあっただろう。ひと段落するとき、ふと懐かしむ、出会ったヒトたちのことを。
次の夏、ハンターたちに手伝ってもらった畑に埋めた麦の種は無事発芽し、穂をつけた。
まだ弱々しいが人が暮らせるための未来が見えてきた。
ハンターたちの助言を考えつつ、畑を整えていたライルとシールは、試験的な植え付けをそこの畑全面にすることにしたという。
そして、その麦が黄金色に色づく土地に、どれだけの人が戻り、どれだけ新たな人が来ているのか……。
ソナ(ka1352) は植物の力をもって力になりたいと、『クリムゾンウェスト薬草百科』を片手にやってきた。
「空気も真っ黒だった程のイスルダ島、緑がはぐくまれれば、故郷に帰る希望もたくさん芽吹くでしょう」
イスルダ島は歪虚に支配されていたため、負のマテリアルがまだ強い。
依頼で来ると、見覚えのあるユグディラがいた。
「まあ、クロさん、お元気にしていらっしゃいましたか?」
クローディル・ゴーティ、通称クロは大仰にうなずいた。
星野 ハナ(ka5852) は魔導トラックと共に来た。魔導トラックの側面「東方茶屋」には記載があるのが特徴だ。
「耕耘の方はお手伝いはできませんけどぉ、重い物を運搬したり、下したりぃ、お料理作ったりはできますのでぇ、皆さんもよかったら荷台に乗っちゃってくださいぃ」
その申し出に否応もなかった。
「イスルダ島に来る機会って結構限られる気がするんでぇ、こういう時に頑張りたいですぅ」
シールとライル・サヴィスはうなずいた。
「確かに、船に乗るし、オフィスがあるわけでもないですもんね……」
シールは状況を改めて考えるのだった。
レオナ(ka6158) は「素敵な仕事ですね、頑張りましょう」とほほ笑む。
荷物から刻令耕運機「ガンバルン」を取り出す。
「それから、この耕運機を持て余しておりまして、覚醒者であれば使えるというものです。もしお入り用なら差し上げたいです」
「ほ、本当にいいんですか」
シールがレオナと耕運機を交互に見る。
「はい、持てあましていますし、必要なところにある方がいいでしょう。土を耕すのになかなか便利なのですが、しっかり持たないと人の方が振り回されてしまいます」
レオナが忠告を述べているが、喜ぶシールは聞いているか不明。ライルが理解した旨を告げた。
昼食のための食料も積んだ魔導トラックに耕運機も早速積まれた。
●村の跡、村の予定
港を離れると静かだ。全く無音ではないが、鳥や動物の音は乏しい。
トリプルJ(ka6653) は畑のサイズや状況を考えると人力が一番良いと考えていた。
「CAMで畑に入ると、土を踏み固めそうな気がして怖くてなぁ」
機械や幻獣にも得て不得手はある。
「んじゃま、雑魔が寄ってこないうちにさっさとやるかぁ」
道具を手に取る。
フューリト・クローバー(ka7146) は連れのポロウのシフに声をかける。
「シフさん、リスィと一緒に飛んで、なんか気づいたことがあったら教えてー」
シフは首をクリッと横にした。
「いちおー雑魔の類がいるとも限んないからねー。見つけるホーで探したり、伝えるホーで情報教えたりしてねー」
フューリトの説明にシフは了解を示し、空に舞い上がる。モフロウのリスィも慌ててついていく。
「皆、どこを重点的に見るつもりなのー? それと、一度、みんなで廻った方が動きやすいんじゃないかなぁ?」
「皆さんの作業予定もうかがっていたほうが効率よくできますね」
ソナが同意を示す。
「分かりました。えっと、話しながら一周しましょう」
シールが応じ、歩きながら状況の説明をするのだった。
一周して見ることで、今後必要なこともわかる。
水場が一か所であり、若干遠いこともあるが、それは今の問題ではない。
今回は畑と仮住居とする教会の手入れが優先的にすべきだ。次に適当に植えた種やローズマリーの移動だろう。人数で分担すれば終わるかもしれない。
ソナはマッピングセットで大まかな地図と、今回の作業領域を書く。
「どう分担しますか?」
それぞれが得意なこと、考えていることは違う。この場ですり合わせた。
マリィア・バルデス(ka5848) は作業の準備を整える。
「畑を整備するってことは、将来的に村や町を作るってことよね? 二人はいつからここを本拠地にする予定なの?」
マリィアの問いかけにシールとライルは首をひねり、明快に答えがない。
「好きだから整備するんじゃないの?」
「嫌いではないんですよ。でも、良いことも悪いこともありすぎて」
「でも、何かしたいと考えてます」
二人は答える。
「それはわかるわ。これからね。とはいえ、家がなければ当分通うしかないし、今の状態じゃ、自給自足の生活は難しいものね」
マリィアはイスルダ島住民の複雑な心境を垣間見て理解を示す。
「はい。教会をとりあえず、直せば住めますし、港で物資を受け取ればいいのです」
「その件は、運んでくれる人もいるだろうな」
シールとライルは答えた。
「分かったわ。さあ、始めましょうか」
マリィアは覚醒し、道具を使う。
「覚醒して鋤を振るうほうが、一般人よりずいぶん捗ると思うの」
「同じく。問題あれば、スキルも使う」
トリプルJがマリィアに同意する。
「僕は教会の点検に行くけ……あっ! 耕す前に石を拾おー。じゃないと、せっかくの麦の育ちを邪魔しちゃうし」
フューリトが耕そうとした人たちを止める。
「土の状態を見て水撒きしてからの方が、と思いましたが、スキル使うならそこまで気にしなくていいでしょうか」
ソナは内心首を傾げつつも確認は怠らない。
「フォークみたいなので土は起こして、石がないかも見たほうがいいかもー?」
フューリトは石を拾って言う。
「そうね……もともと畑で石はなかったとしても、放置されていたら何があるかわからないわね」
「雑魔やらなんやらが何をしているかわからないしな」
マリィアとトリプルJは了承の旨を示し、柔らかくしつつ、石の状況を見ていく。
「大きい岩とかあるなら、動かせますので言ってくださいねぇ」
ハナは魔導トラックにあるクレーンを指さす。
「では、教会の修繕や植えっぱなしの木の手入れに行きますね。あ、出ている芽をとりあえず植え替えるんですよね? 抜いてはいけないものと区別つきますか?」
レオナはライルに問う。
「……見てみます、正直言って植物に詳しいわけではないので」
ライルは頭を掻いた。
●畑
マリィアとトリプルJが土を柔らかくしつつ、石をどける。フューリトは石を素早く避けていく。
ソナは雑草等、生えていなくていいものをとっていく。
ハナは別の作業に移ることにした。
「メインの農作物を育てる前にぃ、クローバーやレンゲ育ててそれを畑にすきこんじゃうと、肥料代わりにもなりますしぃ、養蜂だって手を出せますからぁ、結構お薦めなんですよぅ?」
ハナがシールに助言する。
「なるほど、他の植物ですね」
「そうですぅ。花で観光も将来的に目指したいじゃないですかぁ」
先を考えている。当事者はどうしても近いところに必死だった。
「では、食事がとれる準備はしておきますねぇ。道具が必要とか、人手大量にいるとかあれば、声をかけてくださいぃ。教会近くで見てますねぇ」
ハナが立ち去った。
「畑の方は特に生えていないというのは、負のマテリアルの影響でしょうか?」
「否定できないです。僕たちは意識しなくても、それらがいた影響は目で見えません」
ソナの言葉にシールが溜息を吐く。
「そうですね、念のため浄化しておきましょう?」
「その方が安心ですよね」
ソナはAWI「フォーティアン」を手に載せ、マテリアルを集中させる。そして、【祓奏】を用いる。旋律とともに紡がれたマテリアルが、ソナの周囲に広がり、ふわりと舞い、草木が芽吹くような風景が見えるようだった。
「あちらの方をしておきますね」
否もでないため、何か所かで【祓奏】や【ピュリフィケーション】を用いた。
「さて、私はローズマリーの方に行ってきますね? 一旦植木鉢に植えるということですし、枝の状況によっては石灰等で土を改良する必要もあります。クロさんはどうしますか?」
「僕は教会に行くねー」
ソナとフューリトが移動するのに合わせ、クローディルもついていった。
「さて、こっちもやろう」
「土にこれを混ぜていくのね?」
トリプルJとマリィアに確認をされる。シールは手順を書いた紙を取り出して、どこに何を混ぜるのかなど説明した。
この二人の作業は早い。雑談や今後のことを話しながらも手が止まらない。
「お前さんたちは、まずはここで頑張るんだろう? 俺はスワローテイルの活動をメインにしつつ、レクエスタや王国の聖導士学校に関わっていく予定でなぁ」
「世界を飛び回るんですね」
「そういうことだな。だから、もう一回、きちんとこことお前らの活動を見ておきたかった」
「うわっ、僕たち責任重大!?」
トリプルJは笑う。
「結局、この村が復興したら、誰が領主になるのかしらね。まさか、女王の直轄地になるのかしら?」
マリィアの問いに、シールが止まる。
「さあ? 一応、領主はいると思います。神殿跡がひどいですし、国のバックアップ必要かもしれませんね」
「なるほどね。いろいろ山積み、でも、一歩ずつね」
「はい」
作業は進み、昼食ころには終わりそうだ。
●教会
教会の脇には確かに芽が出ている物がたくさんある。雑草と区別がつくかという疑問に対し、レオナもライルも安堵した。
樹木の芽なため、茎がしっかりしているから区別がつきやすい。
「ずいぶんいっぱいありますね」
「知り合いからもらってシンボルツリーに育てようとしたんですが、とりあえず埋めたという……」
「うまく芽が出たということですね。それは良いことです」
ライルはレオナの言葉から前向きに考えた。
「では、ここは受け持ちます」
「よろしくお願いします」
ライルは教会の中に入る。
しばらくするとそこにフューリトが合流する。
「お待たせー。畑の方は順調そうだよ。それと、巡回に出たシフさんたちもくつろいでるしー。で、どういう感じなの?」
「まだです」
「分かったー。僕は上の方から見てくるね」
「助かります」
「それがお仕事だよー。それに状況を確認して、エクラ教にほーこくすれば、教会は協力してもらえると思うんだよね」
フューリトが世の中の仕組みを元に告げる。
「開拓するにしても教会があった方がいいと思うの。ヨリドコロってやつだね」
「そうですね。すぐにでなくとも、言っておくということは肝心ですね」
ライルが納得したのを見て、フューリトがうなずく。
「まずは、ここを拠点に考えるなら、寝泊まりする場所にもなるしー、みんなが集まる場所にもなるしー、あと、怪我や病気の時に頼れる人がいたら、ココロヅヨイと思うんだよねー」
「皆さんが色々気づいてくれるのは助かります」
ライルはうなずいた。そのあと、二人は作業に移る。
雨露をしのぐ場所と言うだけでも、最初は心のよりどころになりうる。
フューリトは屋根の状況などを見に行く。
「ぶっ壊れた場所を紙に書き出してーと」
大きな壊れはないようだが、細かいところは多い。その上、今は雨露しのげそうだが、強風などで傷んでいるところは多い。
「僕やほかの人で直せそうで優先すべきところはどこかな?」
紙に書き、ライルに確認するのだった。
●ごはん
ハナは魔導トラックのBBQグリル「ベガン」を用いて、バンズを焼いて肉をガンガン焼く。
「こういう時にガンガン食べないで、いつ食べるんですぅ? どんどんどうぞですぅ」
焼くおよび空の皿には載せていく。
「なんか、こういうところで料理食べられるっていいですね」
「魔導トラックかぁ……貸与してもらおうと思えばできるのか」
シールとライルはまじめに検討している。
「物資が限られても温かい食べ物が胃に入るか否かは結構重要ですよぅ」
セールスされるとシールとライルは心が動く。
「物資の調達考えるといるんじゃないのかしら?」
マリィアが言うと、ハナが「そうですぅ」とうなずいた。
「クロさんは歌や演奏はいかがですか?」
『ふっ、我は黒い電光と呼ばれたユグディラだぞ、そのくらいできるぞ!』
ソナに問われ、クローディルは胸を張って答え、竪琴を取り出す。
「そうですね、準備万端ですね」
「私もご一緒させていただいてよろしいですか? 幸運を願って歌いませんか? これから先、良い方向に進みますように、と」
レオナがソナとクローディルに言う。
「良いですね。クロさん?」
『うむ、かまわないぞ』
そして、ソナのカンテレとクローディルの奏でる楽器の音が響く。レオナの歌声に、ソナの声が重なり、暗さの残る地域に、澄んだ歌声は響き渡る。
食後、それぞれ作業に移る。
「そのうち、家も建て直すんだろ? 名残惜しいが、きちんと撤去して、懐かしくも新しい街を作れりゃと思ってるぜ」
畑作業は終わっているため、トリプルJは言う。
「そうですね、自分たちがどうするかの次ですが」
「んー、じゃ、どこ直すか?」
トリプルJにフューリトが声をかける。
「建物はガンジョーぽいけど床板とかおかしいところはあったねー」
「じゃ、私もそっちにいくわ」
マリィアも加わり、道具を持って三人は教会の中に行く。
「ライルさん、花壇を作り直してもいいでしょうか? それとも教会の掃除でしょうか?」
レオナは作業中、花壇ではなく、そこが埋めたのがわからなくなるように囲っただけと気づいていた。
「掃除優先でお願いします。花壇の件は適当すぎました。どうすると良いかなどアドバイスを頂けるなら嬉しいです」
ライルの言葉に、レオナは微笑みうなずいた。
「こっちの片づけが終わったら私はどうしますー?」
ハナは昼食の後片付けをしている。それは数時間かかるものではない。
「教会は手が空くならば、ローズマリーの方を手伝っていただいていいですか?」
「分かりましたー」
ハナはソナの言葉に了解を示した。
太陽があるうちだけの作業。幸い、予定していたことは終わる。
●麦秋へ
帰り支度をしつつ、状況の情報交換が始まる。
植木鉢に移した植物は、今後の在り方を検討していく必要がある。
「ローズマリーって割とジョーブなんだけど、風通しが悪かったりすると病気になったりするしね」
フューリトは教会の直しを終えて後日やるべきことリストをライルに渡す。
「ローズマリー以外にもゆくゆくはタイムとかセージも植えるといいかもー。あと、ヤロウとか薬効あるハーブあったら、開拓の手助けになると思うよー」
「そうですね。あとは草木によって肥料等が違うとこいうことです」
フューリトの言葉を受け、ソナが「クリムゾンウェスト薬草百科」を見せる。
「あ、シフさん、リスィ、お帰りぃ」
フューリトのポロウとモフロウが戻ってきた。
見回りもあったし、ハンターも何かが来ることを警戒はしていた。それが功を称したのか何もなかった。
「寝所の確保はできましたよ」
レオナは掃除が完了したと告げる。
「壁や天井の状況も問題はないと思います」
働く上で休むところは重要だ。台所に近いところを選んでもある。当面、二人で作業ならば、広いところを行き来するのは意味がない。
「ねぇ、ライルさんとシールさん、私はずっとこのクリムゾンウェストでぇ、死ぬまでハンター続けて行こうと思っているんですよぅ」
ハナはリアルブルー出身である。
「王国も辺境も、同盟も龍園も、東方もぉ、北征や南征にもかかわってずっと生きていこうと思っているんですぅ。このイスルダ島が復興してぇ、人でいっぱいの豊かな村になるのを本当に楽しみしていますからぁ、何かあったら……ううん、何かなくてもどんどん声をかけてくださいねぇ」
ハナは寂しそうな、それでいて未来を見つめる決意のこもった目をしている。
「ここが大きな街になって、ハンターズソサエティも設置されれば、と思ってるぜ。いざという時に分霊樹で脱出できるのは、島民の安全に大きく寄与すると思うからなぁ」
トリプルJがつなげる。
「神がいなくなってもすべての歪虚がいなくなるわけじゃない。結局、この島と人を守るのは、お前たちだと思うからな、頑張れよ、ライルもシールも」
トリプルJは握りこんだこぶしを名前を呼んだ時に差し出す。ライルとシールはこぶしをぶつけた。
それを見ながら、ハナは微笑む。
「……人間の領域が増えること、きっと深紅ちゃんも楽しみにしていると思うんですぅ。私ぃ、世界中を回りながら、深紅ちゃんに話せることをいっぱい集めたいと思っていますからぁ」
ハナは空を見上げた。ハナが深紅ちゃんと呼ぶクリムゾンウェストの大精霊はここにいない。しかし、どこかで会えるかもしれない。それならば、彼女のためにも、世界を作りたいのだ。
「ここにルゥルやイノア様が普通に遊びに来られるくらい復興してほしいと思っているの」
マリィアはそう述べ、二人の頑張りを褒める。
覚醒者でも子どものルゥル(kz0210)や非覚醒者のイノア・クリシスが来られる環境は非常に重要だ。
「クロさんにもお会いできてよかった。時々懐かしく思い出されるものです」
ソナはクローディルに声をかける。クローディルはうなずいた。
皆、多くの出会いがあっただろう。ひと段落するとき、ふと懐かしむ、出会ったヒトたちのことを。
次の夏、ハンターたちに手伝ってもらった畑に埋めた麦の種は無事発芽し、穂をつけた。
まだ弱々しいが人が暮らせるための未来が見えてきた。
ハンターたちの助言を考えつつ、畑を整えていたライルとシールは、試験的な植え付けをそこの畑全面にすることにしたという。
そして、その麦が黄金色に色づく土地に、どれだけの人が戻り、どれだけ新たな人が来ているのか……。
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/10/03 23:12:36 |