【未来】繋いだ希望と未来の先で

マスター:赤山優牙

シナリオ形態
イベント
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
1~50人
サポート
0~0人
報酬
無し
相談期間
8日
締切
2019/11/09 19:00
完成日
2019/11/23 04:34

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 俺達の冒険は、まだ続いている。
 これからも、ずっと、未来に至る道が続いている限り――。


●王国歴1025年秋
 毎年恒例となった東方大復興祭は今年も大賑わいだった。
 天ノ都は憤怒歪虚に破壊された時よりも大きく発展し、復興の象徴といえる龍尾城からはエトファリカ連邦国の首都に相応しい街並みが見えていた。
 そんな都に、突如として、港に数隻の中型外洋船が姿を現したものだから、世間は大騒ぎとなる。
 和洋折衷式の不可思議な形状をした船は、東方では見る事はない作りだ。
「私達は“龍の背骨”より南東の地から参った」
 港に降り立った一人の男性が、様子を見にきた幕府の使いに伝えた。
 彼の名は、立花紫之介。かつて、一介の素浪人として天ノ都に滞在していた侍は、開拓団を率い、南に新しく建った共和国の初代首相となっていた。

 祭りそのものは中断しなかったものの、急遽の首脳会談が行われた。
 そこで、建国を認める事、国境線の確認と共に、未開拓地への調査協力が話し合われ、おおむね、良好な関係で両国はスタートする事となる。
 この決定は祭りの間に大きく発表され、人々は新たな旅路を応援するのであった。
 そんな盛り上がりでは別に、もう一つ、決して、公にはされない事が、龍尾城の一角、とある私邸で行われた。数年ぶりの……再会だ。
「大きくなられましたね、スメラギ様」
「まぁ、でかくなったのは身長だけじゃねぇけどな」
「態度も大きくなったでしょうが、それに見合うだけの事をやり遂げたのです。何も言いませんよ」
 立花はスメラギ(kz0158)の身体を抱きしめると、ポンポンと背中を叩いた。
 憎まれ口を叩いてもいいはずなのに、スメラギは立花に文句を言わなかった。
 『八代目征夷大将軍』立花院 紫草(kz0126)が行方不明となり、その後、治政は混乱した。多くの人々の協力があったといえ、東方のすべてを押し付けられる形となったスメラギの苦労は、一言では語れないだろう。
「国を治めるってのは、大変だと分かったぜ」
 結果的には、幕府の長と公家の長、両方の実力者が居なくなったので、スメラギの統治は上手くいった。
 それを考えると、立花が旅立ったのは、東方にとっても、スメラギにとっても、大きい意味があったのだろう。
「分かっていれば、十分です。もはや、私から教える事はなにもないようですね」
「まぁな……それにしても、あれから何年も経ったのに、全く歳を取らないな……化け物かよ」
 抱擁から離れて、マジマジと立花をみつめてスメラギは言った。
 それなりの年齢に達しているはずなのだが、立花の見た目は、最後に見た時と変わっていない。
「不思議な事に、地下龍脈の件以降、歳をとっている気がしないんですよ」
「あー。なんだ、あんいなんちゃらって奴か」
「アンチエイジングですね。もし、そうなら、幸運かもしれません。私には共に生きたい人がいるので」
 その台詞にスメラギが驚く。
「マジかよ! 誰だよ、俺様の知ってる奴か!?」
 唾を飛ばしながら言い寄るスメラギに、立花はいつもの微笑を浮かべるのであった。

●王国歴1026年夏
 レクエスタにより確保された人類生活圏が各国に割譲された。
 グラズヘイム王国も当然、植民地を手にした。植民地といっても単なる更地なので、開発はこれからだ。
 それでも、成り上がる為には貴重な機会であるのに違いはない。王国でも多くの人々が、新天地へと向かう。
「孝純様は新天地には行かれないのですか?」
 とあるハンターオフィスの一室で、紡伎 希(kz0174)の問いに、星加 孝純(kz0276)は頷く。
「同盟、帝国、そして、辺境……交流歴史学者としては、まだまだ、調べないといけない場所が多いですから」
 孝純はハンターとしての活動を続ける傍ら、歴史学者としての道も歩んでいた。
 彼は、クリムゾンウェストとリアルブルー、そして、エバーグリーン、それぞれの歴史とその交流が、どのように影響したかを専門に研究していた。
 ある意味、歴史学の中では最先端の研究分野である。
「希さんは“アルテミス”の活動ですか?」
「はい。結成から数年。活動も多くの方々に認知され始めてきました。いずれ、ホープやリゼリオなどにも支社を開設する予定です」
 誇らしげに応える希。
 彼女が所属している“アルテミス”は、絶望からの救済を目指し、様々な活動を行っている。
 青の隊隊長のノセヤや、クート家の後援、そして、救国の英雄たるハンター達のおかげで、影響力を強めているのだ。
「そういえば、オキナさんは元気ですか?」
「そろそろ引退したいという事で弟子を探していますね……でも、なかなか見つからないようで……」
「僕も力に成れればいいのですが、世界を巡っているので難しいですね。適任者がいれば、声を掛けておきますよ」
「よろしくお願い致します」
 希は丁寧に頭を下げた。
 ただ覚醒者としての素質があれば良いという訳ではない。
 オキナの後継者になるという事は、つまり――あの老人が背負っている事も受け継ぐという事を意味するのだ。
 その中には【魔装】の管理も含まれる。信頼できる人材が必要なのは言うまでもない。
「おとう……いえ、ルスト様も心配していたので……」
 途中で台詞を言い直す希。幾年か前から、表向きな意味合いもあり、希はルストの事を父と呼んでいた。
 ちなみに、オキナはお爺さんの立場だ。親子三代で屋敷に住んでいる事になっている。
「いっその事、希さんが連れてこればいいんじゃないか? “恋人”を」
「その話は止めて下さい。これでも、一応、気にしているのですから」
 凄みを効かせた希の言葉に、孝純は逃げるように扉へと向かう。
「そうだってね。ごめんごめん」
「そういう孝純様こそ、結婚はいつするのですか?」
「あー。えーと……じゃ、そういう事で、もう転移門の時間だから」
 カウンターに出た希の台詞に対して、孝純はとぼけると、部屋から出ていくのであった。

リプレイ本文

●擦違いと交差を繰り返して
 大いに賑わう天ノ都。その賑わいは東方の都に相応しいものだろう。
 他方、東方全ての地が、同様であるかは別だ。詩天のように豊かになる所もあれば、領地経営が上手くいかない所もあるだろう。
「これで南方大陸の富が公然と天ノ都に流れ込むことになったんですね……シャッツは東方が世界の中心になる日は来ると思いますか?」
 穂積 智里(ka6819)の質問にハンス・ラインフェルト(ka6750)は天ノ都を遠くに眺めながら、険しい表情を浮かべて答える。
「北征は西方三国のみを富ませ、南征は天ノ都のみを富ませる。辺境はその思想ゆえに中央とは成り難い」
 大開拓時代を迎えたこの世界を、ハンスはそう分析していた。
「交易の動脈が、それぞれそこで終焉を迎える以上、四国同盟で東征でも始めない限り、詩天はこれから落ちる一方になるでしょうね」
 実質的に詩天を牽引している水野 武徳(kz0196)が引退すれば、その機会は失われるだろう。
 温和な性格の三条 真美(kz0198)はスメラギ(kz0158)の友でもあり、野心は強くない。
「……それじゃ詩天は、いつまで経っても富まないじゃないですか」
「智里さんの言う豊かさ、とは何でしょう」
 刀のような鋭さを含んだような、ハンスの台詞。
 彼はジッと天ノ都を睨みつけながら話を続ける。
「無知と厳しい環境ゆえの“心の豊かさ”だけであるなら、今の東方も充分豊かではないかと思いますよ」
「そうではないと?」
「経済的な豊かさは、緻密な計算と他者を出し抜くところから始まります。胆力や行動力だけで頭一つ抜け出すことはできません」
「私の考える、豊かな詩天は……」
 そこまで言葉を発して智里は声を静めた。
 物や資源、インフラ整備等、便利な生活や富は、ハンスの言う通り、詩天には実らないかもしれない。
 けれど、衛生的な生活や健康な長寿は、経済的な豊かさとは直結しないはずだと心の中で思う。
「……戻ったら、水野様にも相談しようと思います」
 そんな風に締め括り、智里は空を見上げた。
 幸せとは何か、二人の考えの違い。それが交わる事がないのではないかと不安に思った智里はそっと、ハンスの手を握った。応えるように強く握り返すハンス。
「紫草大将軍は黒龍が居る天ノ都のみを富ませた、と思わせるだけで、これから良く荒れるでしょうね、東方は」
 鋭い視線を天ノ都に向けたまま、彼は告げるのであった。


●聖女を書き記した者
 紫光大綬章が、思ったよりも役に立たなかった事は、宵待 サクラ(ka5561)の誤算だった。
 ハンターの活動を有利にするものではない為だ。ハンターという肩書と個人情報の保護は全く別の次元だった。
 そんな訳で、用意していた口上も無駄に終わったのだが……それで挫けるサクラではない。
 聖女として敬う“彼女”本人からの承諾を得て、サクラは一度追い返された貴族の館に入る事ができた。
「遅れた分は確りと取り戻さないとね」
 魔導スマホやカメラを手にして、サクラは“彼女”が生誕した時からの記憶を確認する。
 それらを伝記として残し、遠い未来において発行しようと、サクラは考えているのだ。
「これが終われば、後は聖女様の家庭サービスを、私が書き上げるだけかぁ」
 頭の中で未来を描きつつ、サクラは“彼女”の教育係であった者の日記から手を付けた。
「…………」
 目をこすると、書かれていた文章を二度見した。
 違う子の記憶と混ざっているのかと疑う。
「……黒き龍も逃げ出す鬼童!? え……えっ?」
 確かに“彼女”はやや……というか、まぁまぁ……いや、それなりには無茶をするが……病弱という割には、周囲の手をかなり焼いているような印象を日記からは感じられた。
 本当に記録が正しいのか、目をパチクリさせて、何度も表紙を確認するサクラであった。


●港街ガンナ・エントラータにて
 刻令式外輪船フライング・システィーナ号の展望デッキに設けられたテーブルで、幾人かのハンター達が集まっていた。
 星加 孝純(kz0276)の隣に座っているのは、アーシャ(ka6456)だ。
 ここ数年間、二人は共に依頼を受けて活動を続けていた。孝純が交流歴史学者としての調査を行う時も一緒だ。
「私は孝純くんについていくって決めているから。孝純くんのやりたい事に出来る限り、力になっていこうと思ってるの」
「そろそろ、結婚でもするのか?」
 サクッと言ったのは、アーシャの友でもあるレイア・アローネ(ka4082)だった。
 ハンターとして共に活動しているうちに、恋が芽生え、愛を育み、結婚する――というのは珍しい事でもない。
「僕は甲斐性がないから……本当にごめんね」
 申し訳なさそうに頭を下げる孝純。
 彼の収入は決して低い訳ではない。ハンターとしての活動とフライング・システィーナ号ユニット部隊のアドバイザーの掛け持ちなのだから。
 それを上回る勢いで、歴史を調べるのにお金が掛かっているのだ。
「いつか結婚できればしたいと思ってるから」
 アーシャの容赦ない程の笑顔。
 このままだといけないと感じた孝純は話をレイアへ振る。
「レイアさんは、恋人とか結婚とか、そんな話はないのですか?」
「私は、アウローラと二刀の愛剣を手に、変わらないハンターの日々を過ごしているからな」
 呼ばれたと思ったのか、レイアが連れてきたアウローラ(ワイバーン)(ka4082unit001)が見事な機動を描きながら展望デッキの周囲を飛んだ。
「ハンター一筋なのですね」
「結婚は……していないが……。別に諦めている訳ではないのだぞ?」
 頬のあたりを人差し指で撫でながら、レイアは言い訳のように言った。
 自身の剣が友や人々の助けになる事が、今は嬉しいのだ。昔はただ剣を振るって強さを求めていたが、この何年間の間で、剣を振るう理由が見えてきた気がする。
 結婚はいずれ、そんな機会があれば、そうなるだろうが……と水平線を色っぽくみつめるレイアに、何か感じとったのか、アーシャは孝純の腕を掴む。
「レイアは大事な友だけど、孝純くんは譲らないからね」
「心配しなくても、取ったりしないさ。自分の恋愛よりかは、友を応援したり、見物したりしてニヤニヤしている方が性に合っているからな」
 言葉通りの表情を浮かべて応えるレイア。
 だったらいいけど……と呟きつつ、アーシャは展望デッキの扉に視線を向けた。
「ヘル姐さん、遅いな~」
 恋敵であるヘルヴェル(ka4784)は遅れて来ると連絡を受けている。
 ハンターとしても女性としても尊敬していて、ここ最近は手紙だけのやり取りだったが、よく傍にいて孝純同盟を組んでいたものだ。
 アーシャの心配が届いたのか、展望デッキの扉が音を立てて開いた。
「遅れて、ごめんなさいね」
 そう言って入って来たのは――黒髪の赤子を抱いたヘルヴェルだった。
 以前よりも胸が大きくなったのか、今にも零れそうだ。
「「「――ッ!!」」」
 突然の登場に全員の目が丸くなる。
 ガタっと一番先に席を立ったのは、アーシャだった。
「それは一体、誰の子っ!?」
「フフ。誰の子でもないわよ。まぁ、ほら……機会がなかった訳じゃないですし」
「もしかして……あの時の……」
 1年ほど前の出来事を思い出して、顔を真っ赤に染めるアーシャ。
 いつまでもDTな孝純を何とかしようと二人で同盟を組んで臨んだ結果……なのだろうか。
「つ、つまり、僕の子だったら、責任を……」
「落ち着け、孝純」
 狼狽える孝純にレイアが声を掛ける。
 黒髪とタイミングが近いという事だけで、確定する事ではないだろう。黒髪の男性は孝純だけではないのだから。
「この子は私の子。ただ、それだけだから」
 微笑を浮かべるヘルヴェルは、赤子を起こさないように静かに席に座った。
 穏やかな寝息を立てる赤子。母親似なのか可愛らしい顔付きをしている。
「もし、“それだけ”だとしても、譲るつもりはないですから」
「アーシャ……ありがとう」
「二人がいつまで経っても進展しないからですよ。波乱万丈な恋路なのですからね」
 ヘルヴェルの台詞は、年上の貫禄というか、もはや価値観の違い……なのだろう。
 赤子の可愛らしい寝顔を眺めつつ、レイアが尋ねる。
「孝純の調べものがあったと聞いたが?」
 久々の集合とはいえ、ヘルヴェルが遅刻するには理由があった。
「えぇ……ですが、手掛かりは全く……」
「そうですか……赤ん坊がいると知らず、お手数お掛けしました」
 丁寧に頭を下げる孝純。
 彼は龍崎・カズマ(ka0178)というハンターの行方を捜していたのだ。
「名前を変えて、東方で寺子屋をやっていたらしいけれど……そこも弟子に任せて出奔したようですね。幾つかの置書きが残っていたようで」
 写し書いたそれをテーブルに置く。
 そこには東方の未来における懸念と自身に対する不安が記してあった。
 覚醒者に対する危惧と、ある歪虚に刻まれた対価としての記憶。長らく苦悩の日々を過ごしていたようだ。
「カズマさん……一体どこへ……」
「孝純くんの恩人だっけ?」
 慰めるようにアーシャの言葉に彼は小さく頷いて応える。
 そんな二人の様子にヘルヴェルが赤子をゆっくりと揺らしながら言った。
「根拠はないけれど、あの人はきっと大丈夫。この世界に住む人々の未来を繋いだ人なのですから」
 ――と。


●幸せな未来へと
 端的に言えば、檜ケ谷 樹(ka5040)はパパとなった。
 結婚記念日に合わせ、リルエナと一緒にリアルブルーの生まれ育った国へと旅行に行った先で、身籠ったのだ。
「子供の名前?」
 一つのベッドに二人で入っているが、リルエナの胸が大きく、危うくベッドから落ちそうになるのを堪えながら、彼女の疑問に答える樹。
「そう。早めに決めた方が良いと思うし……と言っても、もう決めてあるけど」
 予め記したものを、サッと広げた。
 そこには、聖女の名……つまり、リルエナの実姉の名が書かれていた。
「……男の子だったら?」
「それはない。僕はね、お腹の形で分かるんだ。生まれてくるのは、間違いなく、女の子。しかも、巨乳!」
「まったく……でも、樹が言うのなら、そうなのだろうな」
 呆れながらも笑うリルエナに樹は頷いた。
 そして、新たな命を確かめるように、愛する人のお腹に耳を当てる。
 ぐぐーと内側から押された。早くも反抗期かもしれない。
「……僕は、ぱっとしないサラリーマンだったけど、今も、そして、未来も、ずっと幸せだと思う」
 赤き世界に転移し、命を懸けた日々は、最愛の人と出逢う為にあった。
 そう確信してもいいはずだと、樹は笑みを浮かべるリルエナの瞳をみつめながら思うのであった。
 未来は、確りとこれからも続いていくのだから。


●続いていく明日に
 龍尾城内、かつて、大将軍の私邸だったという小さい家に鬼塚 陸(ka0038)と鬼塚 小毬(ka5959)は案内された。
 今は東方帝であるスメラギ(kz0158)が使っている。公ではなく、あくまでも私的な場という位置づけだ。
「来たか。待ってたぜ」
「思ったより小綺麗だな」
 質素な造りの私邸に入りながら、陸はそんな感想を漏らした。
 すぐさま、小毬が陸の袖を引っ張った。帝相手に失礼だとの意味を込めての事だ。
「気にするなよ。俺様だってまともに掃除してねぇから。そういや、お前らの仲間だったんだろ」
「あ……なるほど」
 掃除している人が誰なのか、二人は顔を見合わせて頷いた。
 人の繋がりとは、案外、近いものだ。
「それで、今日来たのは、その小さい子の話か?」
 スメラギの視線は陸と小毬の後ろに隠れているような幼い兄妹に向けられていた。
 視線に気が付くと恥ずかしそうにモジモジとして余計に隠れてしまった。
「星空と星彩。僕達の子さ」
「二人ともリクさんによく似て、なかなか愛嬌のあるお顔をしてますでしょう?」
「ちょ……」
 狼狽える陸に対して、誇らしげに胸を張る小毬。
「だって、リクさんって、背が高くていらっしゃる割には可愛いお顔だと常々思っていましたのよね。きっと、この子たちの将来もそうなるかと。だから、今から楽しみで仕方がございませんわ」
「背が高いのはいいけど……可愛いはちょっと……」
 そんな二人の様子に、スメラギは声を出して笑った。
 これが邪神を打ち倒した守護者なのだから、威厳も何もない。
「親になっても、相変わらず変わってないな」
「何年も経って、生きるって難しいんだなって思っているよ」
「まぁ、それは俺様も同じだ」
 にこやかにスメラギは笑った。
 子供を抱いて、分かる事もある。それに気が付けたのなら、自身も成長しているのだろうか。
 陸はそれが今、何より楽しかった。きっとこれが、誰もが生きて笑える世界なのだ。
「それで、ただ会いにきた訳じゃないんだろ?」
「七五三とかを見据えて、なんか良い神社ない? 東方の縁ある場所を訊きたいんだ」
「自分で建てた神社があるじゃないか」
 スメラギの応えに陸と小毬は揃って眉をひそめる。
「巨砲神社? あ、うん、それは……彼らが物心と善悪が分かるようになってからね」
「例の神社の事を、どう説明するかは、ほんの少し悩ましかったりはするのですけれど」
 二人の台詞にスメラギはしょうがないなと言わんばかりの表情を浮かべた。
「なら、俺様がやってやるよ」
「「……」」
「なんだよ、その視線は。東方一の俺様だぞ。不足どころか、加護が溢れるぜ」
「「おおぅ……」」
 夫婦とは似る者なのか、反応が全く一緒の陸と小毬であった。


●未来を変える力
 王国内のある場所、かつて、ハンターの教官だったオキナという人物にマリィア・バルデス(ka5848)は力説していた。
「開拓が進んでも、別に私達の基本行動が変わる訳じゃないでしょう?」
 人類は新たなフロンティアを得たが、すぐさま庶民に大きな影響を及ぼさない。
 結局、一人ひとりがやるべき事は変わらないものだ。
「多くに人が、開拓にハンターの人手が必要という話が出るかもしれない。それは最前線でも安全地帯でも同じこと」
「……つまり、狩子制度ではなく、多くの人々に覚醒者としての門徒が開かれるべきと?」
「少なくとも私達は王国の国益には反してない。聖堂教会や王国にWin-Winの関係で食い込むチャンスが来たと思うべきよ」
「……なるほどの。だが、恐らく上申してもオフィスは動かんじゃろ」
 オキナは暫し思案してから答えた。マリィアの言いたい事は理解できる。
 だが、オキナから見れば、彼女は“純粋”過ぎた。
「この世界の住民にとって、覚醒者とは畏怖の対象じゃ」
 端的に言えば、覚醒者全てが聖人ではない以上、危険視される道理もある。
「人々の意識から変える必要がある。じゃが、そんな未来を創るのは容易い事ではない。それでも、お前さんはやるのかの?」
 オキナの挑戦的な言葉に、マリィアは真剣な眼差しで答える。
「私達が未来を変えるのだ」
 未来は無限に広がっている――彼女が望む未来も、あるのかもしれない。


●新興国の地で
 首相官邸のある一室に案内されたアルマ・A・エインズワース(ka4901)は、官邸の主である立花紫之介――立花院 紫草(kz0126)――に飛び抱きつく。
「わふーっ! おひさしぶりですー!」
「何年経っても全く変わってないですね、アルマは」
 微笑を浮かべて受け止める立花も変わっていないのだが。
 一方、早くも胃の辺りを抑えているのはメンカル(ka5338)だった。
「アル。お前は本当いつまで経っても変わらんな……」
「どーなっても、おともだちです」
 無邪気な弟の反応だが、これはある意味、予想済みだ。
 自領で作った菓子折りを、手が離せない立花の為に、そっと机の上に置いた。
「もう驚かんぞ、俺は……まぁ、アルはそれでいいさ」
「少しは健康そうな顔付きになりましたね」
「健康に気も遣ってきたからな」
 そう言いながらも連れてきたエーギル(ポロウ)(ka5338unit003)に頭の毛を突かれている姿は、本当に気を遣っているのだろうかと疑問に思えるが。
 仕方なさそうにエーギルを窓から外へと飛ばす。会話に付き合わせていても可哀想だし、毛がすべて毟り取られそうだし。
「そういえば……スメラギには会ったのか」
「はい。昨年に」
「そうか……いや、会いに行かない筈はないと思ってはいたんだが、その……少々、心配していたんでな……」
 遠く、天ノ都の方角を見つめながら、メンカルは言った。
 身内に忘れられる経験は悲しいものだ。もっとも、彼にとっては昔の話だが。
「わふー。わぅー?」
「ん? 此方の話だ。アルは気にしなくていい。あと、資源の取引の話もしたいんだが」
 弟の頭を撫でつつ、メンカルは立花に話を続ける。
 ようやく、アルマから解放された彼はやや首を傾げた。
「なんでしょうか?」
「昔、アルが見つけたと聞いたんだが、マテリアル鉱石……取引に出せる程出るか?」
「わふー。懐かしい話ですー」
 賑やかに間に入るアルマをグイグイと押し戻すメンカル。
 この地で龍鉱石の一種を最初に発見したのは他でもない、アルマであった。得られた手掛かりから鉱脈を発見し、大量のマテリアル鉱石を用いて、開拓にも転移門にも使われているのだ。
「率直に言って転移門が欲しい。交通の便と弟の為に、な」
「そんな事で、そこまでするのです?」
 門の維持は多くの資源を投入するからアルマの疑問はもっともだった。
 だが、メンカルは堂々とした態度で応える。
「何を言うか。弟が可愛くないお兄ちゃんはいないだろう。何でもするに決まっている」
「なるほどです。まだ未開発の鉱脈もありますから、採掘が出来れば余裕があるはずです……もっとも、今、人的資源が不足していますが」
 立花はそう応えてチラリと視線をアルマへと向けた。
 それに気が付いて、ビシっと元気に手を挙げるアルマ。
「お仕事があるなら、僕のとこにも回してくださいです!」
「そういえば、アルマは帝国で孤児院の『父親』をやっていると……いいですよ。アルマなら問題はないでしょうし」
 帝国の介入は防ぎたいという立花の立場もあるはずだ。
 立花はアルマを知るからこそ、彼の好意を受けようと思った。これが信頼というものだ。
「やったですー! 子供達の就職先は確保しておかないと……」
 嬉しそうな言葉の後、小さく呟いた台詞が聞こえ、立花は微笑を浮かべた。
「まさか、アルマが孤児院の『父親』になるとは思いませんでしたよ」
「それは同感だ」
 意外だという二人の反応に、アルマはふと大人びた目をして、クスクスと笑いながら応える。
「いろんな人が、皆で力を合わせているのです。どこも、こうなると良いです」
「えぇ……そうですね、アルマ。これからも、よろしくお願いしますよ」
 きっと、これからも皆で力を合わせていくのだろう。
 この穏やかな関係を続けながら――。


●奮闘続ける日々を
 東方大復興祭で賑わう都の一角、とある麺屋で星野 ハナ(ka5852)が女将にボヤいていた。
「南方大陸の開拓ってぇ、一区切りしちゃった訳じゃないですよねぇ?」
「むしろ、これからだと聞いていますよ。なんでも、南回りで西方諸国を目指す航路を探すとかなんとか」
 北回りは北方大陸がずっと続いているので実質的に不可能なのは知られている。
 一方、南方大陸の南端はまだ見つかってない。航路が拓ければ、大陸の調査や開発はより進むはずだ。
「そうだったのですかぁ……良かった。人類領域をこの星全部に拡げるまで、立ち止まって欲しくないですからぁ」
「なら、大丈夫だと思いますよ。ほら、新興国は、未領域の調査を目的とした国みたいですし」
 微笑を浮かべながら女将は空になった器を片付ける。
 その様子を眺めながら、ハナは天井を見上げた。
(まだちゃんと区切りがついてないって事ですかぁ)
 何にせよ、南方大陸の調査は公にされた。
 その調査結果が、西方諸国にどんな影響を及ぼすかは、想像できない。
「まぁ……これからも頑張らなきゃいけない事は、なにも変わらないですもんねぇ」
 胸に溜め込んだ息をゆっくりと全部出し切ると、ハナは勘定をテーブルに置いて立ち上がるのであった。


●優しき光と愛に満ちた日々に
 邪神の驚異が去って幾年月。
 花が咲き誇り、強い陽の光が降り注ぎ、色付いた葉が落ち、銀世界の一面を抜け、また花が咲く。
 変わらない世界の営みの中、それでも、少しずつは違う毎日の繰り返し。天ノ都郊外、大切な記憶と同じ風景の場所に今日は来ていた。
「……都」
 優しく暖かい木漏れ日を受けながら、うたた寝していた志鷹 都(ka1140)は、志鷹 恭一(ka2487)が呼ぶ声でハッと目を覚ました。
 都の腕の中には小さい赤子が、可愛らしいまんまるな目をして笑っている。
 腕を通して伝わる温もりは、初めて我が子を抱いた時と一緒だった。
「暖かくて、つい……」
「そんな日もある」
 赤子が覗き込んできた恭一に気が付き、小さな手を精一杯伸ばす。
 どうやら、恭一に抱っこして欲しいようだ。都は微笑みながら、そっと受け渡した。
「高い高いがいいか?」
 とても大事に赤子を受け取った恭一は、ゆっくりと持ち上げる。
 それが嬉しいのか楽しいのか、声を出して笑う赤子につられるように頬を緩める恭一。
 都は、その夫の姿を見て、想うのであった。
(私は貴方の心に刻まれた傷を……降り積った悲しみを癒やせたかな)
 再会した頃の彼の瞳には暖かみのある輝きはなかった。
 それが、夫になり、父となり、そして、今、祖父となった。
 穏やかに過ぎ去った日々が、雪解けのように彼の奥底に溜まった氷雪を溶かすこと事ができただろうか。
 その時、恭一をお父さんやおじいちゃんと呼ぶ声が聞こえ、赤子を抱いたまま、恭一は声の方を向いた。
 子や孫達が楽しそうな時間を過ごしている。その中には、教会から引き取った子の姿も見えた。
(お父さん、おじいちゃんか……俺がそんな風に呼ばれる日が来るとはな……)
 再会した頃にはそんな事、想いもしなかった。
 ただ冷たく凍っていた。自身も、そして、周りの世界も。
 赤子が無邪気に手を伸ばして頬に触れた。小さい手だが、その温もりはとても大きく感じられる。
「大丈夫。ちゃんと見えてるよ」
 心配かけたかなと思いながら、赤子に優しく告げた。
 家族の笑顔と楽し気な声に包まれる、かけがえのない愛溢れる日々。それは泣きたくなる程、眩しかった。
 恭一は愛する妻へと視線を向けた。ジッと見つめていた都が視線に気が付いて、愛おしそうに笑う。
 この幸せを感じられるのは、ここまで生きていられたからだろう。
「今なら言える。都……今ここに、この命で在れる事が、心から、幸せだと」
 都は愛する夫の言葉に嬉しそうに頷くと、ゆっくりと恭一に身体を寄せて、耳元で応えた。
「恭、生きる道を選んでくれて、ありがとう」
 きっと、この先も優しき光と愛に満ちた日々が待っているはずだ。


●未来を守護する者
 王立学校の一室で、ボルディア・コンフラムス(ka0796)はグラズヘイム王国女王であるシスティーナ・グラハム(kz0020)と意見を交換していた。
 具体的には王立学校と聖導士学校の学校交流や技術連携についての協議だ。
 ボルディアは聖導士学校での教師を続けており、邪神と戦っていた頃からと比べると随分と丸くなった印象があるが、その熱意は戦いから教育へと変わっただけだろう。
「こっちの学校の教育システムは、リアルブルーの最新技術を取り入れて王国用にカスタマイズしたものだ」
「よく出来ていますね。私もリアルブルーで拝見させて貰った事があります」
 ボルディアが持ってきたタブレットを興味津々に手にするシスティーナ。
 通信設備が整えば、僻地でも教育が行えるはずだ。
「各地の教育レベルを大幅に引き上げられる。色々と準備は必要だが」
「確かにその通りですね……」
「俺はこの技術をウチで独占するつもりはない」
 流石に聖導士学校だけでは諸々不足する事もある。補う為にも王立学校の協力は必要で――何より、システィーナ女王であれば、話も通じやすいのは確かだった。
「これからの王国の百年、千年を作るには、子供達への教育が不可欠だ」
「私も同じように考えています」
 女王の頭の中では、王立学校だけではなく、王国各地での初等教育にも活かせる話だと思っていた。
 王都に住もうが、田舎に住もうが、平和な世を築くには、一人ひとりの教育が必要なのだ。
「まだ、大戦での傷跡は完全には治りきっちゃいない。満足な教育を受けられない子供達も、多くいる……」
 ボルディアは守護者としてあの激戦を戦い抜いた。
 けれど、彼女の戦いはまだ続いている。世界を守る事ではなく、未来を守り続ける事だ。
「全ての子供達を助けるために、女王の力添えが欲しい……お願いします」
 だから、そう締め括って、ボルディアは女王へ頭を深々と下げる。
 最初から折れるつもりなどない協議だった。ここが通らなければ、子供達の未来は救えない。そんな信念がボルディアにはあった。
「顔を上げて下さい、ボルディアさん。私としても協力は惜しまないつもりです。だって、私達は立場が違っても、同じ光を目指している……同志、なのですから」
 女王は微笑みながら手を差し出したのであった。
 それを万感の思いで握るボルディア。未来を守護する日々は、邪神との戦い以上に長く辛い日々だからだ。そして、その日々はここからまた新たに始まるのである。


●伝説のロリっ子先生
 時の流れとは残酷なもので……聖導士学校の魔術師学部教授として活躍を続けるエルバッハ・リオン(ka2434)は窓硝子に映った自身の姿にため息をついた。
 どんなに魔術の研究を続けても、身長を伸ばす魔法はなかった。
「胸が大きかったのが、せめてもの救いになるとは……」
 もっとも、単に胸が大きいちびっ子という認識を持たれる事には変わりはなく、毎年、新入生の中には、彼女を舐めてる不届き者もいる。
 そういう時は魔法訓練の授業で大魔法を唱え、圧倒的な力を見せつけている。そうすれば、暫くは黙る。
 むしろ、新入生の舐めた態度よりも、今は別の事で困っていた。
「せんせーい!」
 廊下の先、幾人かの女生徒らが走って向かってくるのが見えた。
 あれらは開拓の手伝いをした縁で引き取った子供達だ。いずれも魔術の才がある、優秀な子達だ。
「廊下は走らない!」
「だって、先生、可愛いから!」
 廊下を走る理由になってない生徒らの容赦ない無邪気な言葉。
 これこそ、エルバッハが困っている理由だった。
 引き取った子らが、たまたま、びっくりするほどの美少女達へと成長したおかげで、そんな趣向のハーレムを学校で作ろうとしているのではないかと、疑いの目を学校関係者から向けられているからだ。
 美少女達に囲まれ、再び大きくため息をつくエルバッハであった。


●天竜寺領――歌舞伎座前
「懐かしい恰好だね」
 勘亭流で書かれた看板を見上げていた妹夫婦に向かって、天竜寺 舞(ka0377)は言う。
 妹夫婦はハンターとして活動をしていた頃の服装で、ここに訪れていたからだ。
「流石にお忍びだからね」
 天竜寺 詩(ka0396)が笑って答える。
 共和国の首相夫妻が堂々と来るには、諸々と準備が多くて大変なので、こうしてお忍びで、来るしかなかった。
「私は慣れていますけどね」
 そう言って微笑を浮かべる立花。
 この人は大将軍時代から、よくお忍びしていたそうので、手慣れたものだろう。
 懐かしい素浪人姿に頷きながら、舞も「そりゃそうか」と笑う。
 そこへ商人らしい姿の人が、舞に軽く会釈して通った。それを営業スマイルで応える舞。お代官の仕事を確りとやっていたからこその事だろう。
「お姉ちゃんが、どれだけ街の人に愛されてるかよく解るよ。今まで、ありがとう」
 詩は舞に深く頭を下げる。
 元々は詩が拝領を受けた地であったが、立花と一緒に行動する為、舞が代官として領地経営に勤しんでいた。
 舞は数々の苦労を乗り越えて、所領の発展に力を注いできた。歌舞伎座はその努力の結晶という訳だ。東方だけではなく、リアルブルーとの文化交流のおかげでもある。
 詩は立花の妻となったので、拝領を受ける条件を満たさなくなった。これにより、この所領を帝に返還する事になるのだが、舞の代官としての役目も終了という訳だ。
 所領がここまで発展するには、想像絶する努力と労力、費やした莫大な時間と資源。そして、幾つかの幸運があってこそだ。情もあるだろう。簡単には手放せるものではないはずだ。
「気にすんな。それに……これからも、この街の為に働くつもりだからさ」
 こめかみの辺りを掻きながら、あっさりと答える舞。
 姉の態度に首を傾げる妹に対して、舞は半分照れながら告白する。
「実はさ……詩の後任である公家……そこの一人息子と結婚するつもりなんだよね」
「えぇぇ! おめでとう!!」
「公家にしては意外と骨のある奴でさ。何度もアタックされて根負けしたって奴かな?」
 詩は、後任人事について、街造りに貢献した人という希望を帝に伝えていた。
 それに対し、帝はその申し出通りに答えたという事だ。それは長年の感謝と、これからも良好な関係を維持したいという想いがあったからこそだろう。
「式には絶対に呼んでね」
 その時はまたお忍びで来ないといけないかもしれないが……それぐらいは、帝も許してくれるだろう。というか、いっその事、帝もお忍びで呼べばいい。
 妹のお願いに舞は「勿論」と答えると、二人の背後に回る。
「そろそろ入ろうか。飛鳥と真紅は、今頃、義母さんがあたしらのユグディラと遊ばせてるから、気にせず芝居に集中しな」 
 と、二人の背中を押しながら建物に入る舞。
 そして、振り返った立花にウィンクした。
「今日の演目は勧進帳だね。主従の絆を描いた物語だよ」
「興味深い演目ですね」
 率直な感想を口にした立花に詩が説明するように告げる。
 どんな話かというと、逃避行を続ける主君義経と忠臣弁慶の二人の絆と、好漢である関守の話だ。
 見所満載な話であるが、強いていえば、忠臣弁慶と関守のやり取りは、手に汗握る屈指のシーンだろう。
「なるほど。それは、東方の地ではウケが良い話かもしれません」
「多分、義経と弁慶の姿が、スメラギ君と貴方に見えるかも」
「弁慶はともかくスメラギが義経、ねぇ」
 苦笑を浮かべる詩と屈託なく笑う舞。
 絶対的な強さと道理の機転、忠義に厚い弁慶が立花というのは、分からなくもないが、あのスメラギが義経だと思うと舞は笑わずにはいられなかった。
 とりあえず、いかに立花とはいえ、リアルブルーの歌舞伎を見た事がないはずなので、きっと楽しめるはずだ。
 ちなみに演じるのは舞や詩の実の親父と兄貴達である。リアルブルーの文化使節としての公演なのだ。これも平和な世界になったからこそ、実現した事だ。
 席へと向かう途中、その足をふいに止めて、詩は後ろからついてくる姉である舞に振り返った。
 LH044からの脱出から始まった二人の姉妹の旅。此処はその終着点のような気がしたからだ。
 妹の物言いたそうな雰囲気を察し、舞は詩の肩をポンっと一つ叩いて頷いた。
「あたし達の旅は、まだまだ続くよ」
「うん。愛する人と出会って、ここからが……新しい旅の始まりなんだよね」
 ずっと一緒に過ごしてきた双子だけど、ここから全く新しい日々が始まる。
 それぞれの人生という旅路に。


●終わりなき冒険
 南方大陸を東西に分断する“龍の背骨”。
 自然環境はそれにより大きく変化する。西側は極めて厳しい自然環境であり、東側は自然豊かな大地が広がっていた。
 その為、東西の交流は皆無に等しかった。理由は明らかで“龍の背骨”そのものが文字通り、巨大な障壁となっていたのだ。その“龍の背骨”に三人のハンター達が姿を現した。
「……」
 青毛に白い鬣と距毛が輝くゴースロン種にチャーリー(馬車)(ka0234unit003)を牽かせ、岩井崎 旭(ka0234)はどこまでも続く荒山野へ瞳を輝かせている。
 振り返ると、騎突――アサルトライダーズ――のシルヴィア=ライゼンシュタイン(ka0338)が、いつもと変わらない表情をしており、叢雲(イェジド)(ka2689unit001)を伴って馬に乗るミィリア(ka2689)は如何にも楽しそうな顔付きで、振り返った旭に気が付いて、えへっと笑った。
「どうしたでござるか?」
 流暢な侍言葉の語尾をつけながらミィリアが尋ねる。
 仲間からの質問に、旭は来た道を、特別な腕輪を付けた腕を挙げて指した。
「……実はな。生き残れるとは思ってなかったんだよ。いつだって、全力突撃ありったけだったからな」
「意外、です。旭さんがそう思うなんて」
 すかさずツッコミを入れるシルヴィア。
 しかし、その表情は僅かに緩んでいるようにも見える。
 いつもいつも突撃ばっかりで、まともな生還など顧みなかったメンバーの中、その筆頭とも言える旭からそんな言葉が出るとは思っていなかったようだ。
 もしくは、戦場を常々駆け巡りながらも、もしかして、心の奥底ではそう考えていたかもしれない。仲間達に気を遣って言葉にしなかったのだろう。
「そう思う位は、戦いの連続だっただろう。邪神との戦いの前も後も」
「確かに、そうでござるな。でっかい蟻の群れとか、蜂のように素早い大蛭とか」
 これまでの戦いを思い出し、ミィリアはうんうんと頷いた。
 邪神は滅んだが、歪虚の残党はいるし、雑魔だって出現する。おまけに開拓地には見知らぬ存在が沢山だ。歴戦のハンターとはいえ、100%の安全は絶対にない。
「戦って未来を切り開いて、金を貰った。でも、これは次の未来を切り開くために託された資本だ」
「沢山、依頼をこなして来ましたからね」
「確かに小金持ちにはなったけど、使っていられる時間と場所もあまり無いでござる」
 ハンターの中には持て余して、とんでもない額を寄付する者もいるという。そして、旭には、使い道が既に決まっていた。
「だから、俺が金を持ってたってしょうがない。いつも通り。全部乗っけて、未来を切り開く。明日に向けての、突撃だ!」
「……つまり、意訳すると、その資本は開拓に費やすって事でよろしいですか?」
 突撃体質なチームの頭脳ともいえるシルヴィアの簡潔なまとめに旭は親指を立てた。
 今と未来に生きるヒト、龍、コボルドのために、全私財を投じて南方大陸の発展に努めるつもりなのだ。それは途方もない事でもあるが、大きなやりがいにもなる。
「それで、具体的にはどうするでござるか?」
「えーと、馬、資源、鉱脈のあてがあるなら、拠点もいくつか整備して……ってことは、道路の整備も必要で……」
 ミィリアの疑問に指を折って数える旭。
 それら一つ一つに律儀に頷くミィリアがパッと手を挙げる。
「山脈の西側のコボルトもいるでござる!」
「そうだったな。なら、まずは乗合馬車か。それと、輸送が追っつかなくなる前に、鉄道網引くってのもアリだな。拠点にいい場所と交通網に便利な場所と、そしたら要所は街になる。その為にも安全な土地の確保は外せねぇ」
 ついに折る指が足りなくなったが、そんな事は些細な事だ。
「やる事沢山でござるよ!」
「あぁ、もう! よし、思いついた事、全部やろう!」
「全部やるでござるー!」
 勝手に盛り上がる二人を内心楽しそうに見つめるシルヴィア。
 きっと、自分一人だけだったら、こんな風に過ごしていなかっただろう。別の意味でやりがいのある日々だ。
「ソサエティに、人手だとか色々お願いしてみて、いくつか会社でも作るか!」
「カイシャ良いでござるな? ん? カイシャでござる?」
 いつになっても変わらないやり取りに微笑を浮かべてシルヴィアは手を叩いた。
「まったく……仕方がないですね。まずは計画を立てる為の調査から始めましょうか」
 そう言ってシルヴィアは狙撃銃を背負い直すと二人よりも前に進み出る。
 そして、キョトンとしている二人に振り返った。
「さぁ、行きましょう。なんだかあっちには……何かがありそうです」
「お、おうぅ! 行くでござる! なんてたって、ライダーズだからね!」
 飛び跳ねるような勢いでミィリアは叫んだ。
 仲間達の雰囲気に旭は胸が熱くなる。そう、まだまだ自分達の冒険は終わっていない。いや、ここからが新たな始まりなのだ。
「うおお! 一生かけても楽しみ切れないな、クリムゾンウェスト!!」
 そして、アサルトライダーズは次の冒険へ向けて駆け出したのであった。


●天ノ都――東方大復興祭
「――っと、そんな訳で“龍の背骨”を東西に繋げる開拓中でござる!」
 土産話をしたミィリアが胸を大いに張りつつ、酒を呷った。
 空になった杯に、すかさず、本多 七葵(ka4740)が酒を注ぐ。これは詩天から仕入れた極上の酒だ。
「噂には聞いていたが、大活躍ではないか」
「他にも色々と小話残してきたでござるよ。題して、おサムライさんマル秘ノート! じゃじゃーん、でござる!」
 メモ帳かと思うようなものが掲げられた。
 いずれは、正秋隊の面々の活躍も記す予定だ――ミィリアは皆より少しだけ長生きするだろうから。
「大将軍……いや、立花殿が天ノ都に帰還したが、まさか、ミィリア殿も帰還とはな」
 楽しそうなミィリアの仕草に銀 真白(ka4128)は微笑む。連れてきた若緑(リーリー)(ka4128unit001)がやや離れた所で寝かかっていた。
 今年の大復興祭は、開拓地で新興した国から首相が訪れたのだ。その首相の正体を知る一人として、真白はホッとしていた。
 長年、スメラギに口を噤み続ける事が苦しかったからだ。
「ミィリア殿や七葵殿も、元気そうで良かった」
「俺も最近は色々と忙しかったからな」
 銀領と本多領は、それなりに近い。
 だが、二人とも領地経営に忙しかった。その甲斐あってか、誰に見せても恥ずかしくない程、領地は発展している。
「実は先日、男子が産まれてな。千秋と名を付けたのだが……」
「「えぇー!!」」
 七葵のサラっとした告白を遮って、ミィリアと真白の二人が驚いた。
 まず、子供が生まれたという事実の前に、真面目過ぎて全く浮ついた話もなかった、あの七葵が結婚していたという事に。
「馴れ初めを聞いてもいいでござるか?」
「詩天との関わりの中、舞い込んだ縁談のひとつがトントン拍子で進んでな」
「それでか……通りで、兄上が最近、やたらに婿取りの話を進めて来るわけだ……」
 合点いった様子で真白が呟いた。
 手の平を返したように、縁談の話を持ち掛けてくるのだ。以前は「男は狼だ」とか言ってたのに。
「領地を治める以上、これは避けては通れない事だからな。兄上は何と?」
「『彼氏が出来るのはイヤだが伴侶は別だ』と……兄心は難解過ぎる」
 訳の分からぬ謎の兄理論を思い出して、ガクッと項垂れる真白。
 ジッと見つめていた杯の中の酒を一気に口の中へと流し込んだ。
「まぁ、子供はいいぞ。まず一に可愛い。二も三も可愛い。小さい手、輝く瞳」
「あの七葵殿が……こんなにも子煩悩になるとは……」
「驚きでござる」
「ちなみに、息子の名は自領名から千の字、それに尊敬する三条秋寿と戦友の仁々木正秋の二人から秋の字を貰ったのだ」
 楽し気に語る姿は親バカかと言われても否定できないだろう。
 人は変わるものだと話を聞きながら二人は思った。
「それで、二人はまだ身を固める予定はないのか?」
 ――訂正。変わる所と変わらない所があるようだ。
 容赦ない七葵の台詞に、真白は空になった杯を注ぐ手間を省く為、酒瓶から直に呷った。
「婚期が遅れた領主ですが、なにか……」
 ぐぬぬとしつつ、酒瓶を握る手に力を籠める。真白は知っている……自身が“白姫”と呼ばれている事を――それは“穢れのない雪のよう”という話だという事も。
 跡継ぎの事もあると分かっている。ただ、いつか自然に、共に生きる誰かと……という程度には、感じてはいるのだ。
「ミィリアは、結婚とかの予定はないでござるよ。やってきたものを自慢できるように毎日全力で駆け抜けてやるんだから!」
 まるで恋とは無縁のような台詞を言い放つ筋肉侍。
 恩師に貰った『春霞』と言う名を、胸を張って名乗れるように、彼女は己の信じる道を突き進んでいくのだろう。
「もう少ししたら、狩子を迎えて『春霞流』なんて、立ち上げてみてもいいかも」
「武芸集団となったら、それはそれで凄い」
 真白の褒め言葉にエッヘンと勝ち誇るミィリア。
 一方の七葵は首を傾げた。
「ん……いつだったか、蒼人殿に会った時に『振られた』とか言っていたが、あれは……?」
「私ではないな。最近は会ってもいないから」
 首を振る真白は視線をミィリアに向けた。
「蒼人? あー。何年か前に『僕の眼鏡をずっと一緒に作ってくれないか』って言われたけど、眼鏡作るより冒険の方が楽しそうだったから、断ったでござる」
「「……蒼人殿……」」
 無自覚なミィリアの話に、ガックシと肩を落とす真白と七葵。
 どれだけ回りくどい言い回しをしたのだろうか。意図がちっとも伝わっていない。
「どういう事でござるか?」
「ミィリア殿。それは、蒼人殿からのプロポーズかと」
「そうなのぉ!?」
 驚きのあまり、語尾を付け忘れる。
 あまりの反応に七葵が次の酒を注ぎながら告げた。
「今度、会いに行ったらどうだ? 今は共和国に建てた東方の領事館に詰めているのであろう」
「そうするでござる。思いっきり、からかってくるでござる!」
 楽しそうな笑顔だが、言ってる事はかなり鬼である。
 杯に注がれた酒を、グイっと飲んでから、ミィリアは高々と掲げる。
「よぉし! これからも全力で夢いっぱいでござる!」
「そうだな」
「当然だ」
 真白と七葵も、ミィリアに倣って酒が入った杯を掲げた。
 未来はずっとずっと、続いているのだから。


●古の塔
 王国を守る秘術にして巨大なる知識の宝庫。
 管理者であるクリスティア・オルトワール(ka0131)は、久々に訪れたエリオット・ヴァレンタイン(kz0025)と二人だけの日を過ごしていた。
 塔の内部を巡回するゴーレムの製造と制御。塔自体の異常の有無など、確認事項が多い故、二人だけの時間は長い。
 どの隊も忙しいのだが、エリオットは青の隊の番も引き受け、精力的にクリスティアの手伝いをしていた。騎士団の一部で、通い妻ならぬ通い旦那と噂されている事を、勿論、クリスティアは知る由もない。
「……エリオット様、私と初めて出逢った日の事、覚えておられますか?」
 二人で一緒に夕食の支度をしている最中、ふと、クリスティアは尋ねた。
「デュニクスでの戦いの事か」
 即答。
 だが、本当に知りたいのは、その事ではない。
「あの頃は強く頼もしい、それでいて苦労されてる方だと思いましたが……そうあるしかない、背負うしかなかったのですよね」
「……昔の事だ」
「以前、仰られてましたね? あくまで王国のために生きると。そういう人生を選ぶのも、エリオット様らしいとも思いましたが……」
 シチューが入った鍋に伸ばした手が、偶然にも重なった。
 幾多の戦場を戦い抜いたゴツゴツしたエリオットの手甲。
「それは、貴方の幸せですか?」
 王国の為に尽くす。確かに幸せの形の一つであろう。
 それを否定するつもりはない。ただ、クリスティアは思うのだ。沢山尽くしてきたからこそ、幸せになって欲しいと。
「……俺には、俺の幸せというのがよく分からない。だが、一つ、言える事がある」
「エリオット……様?」
 ジッと見つめ込んできた者の名を、クリスティアは思わず呼んだ。
 彼なりに、何か伝えたいのかもしれない。
「傲慢王を倒して国を守れた。そして、今、こうしてこの場にいるのは、王国の仕事だが……俺は己の好きで来ている。それでは、ダメなのか?」
 思わぬ台詞に重ねていた手が離れない。
 どんな形が幸せなのか、結局は人による所なのだろう。
 そして、彼は確かに言った。ここに来ている事が好きなのだと。この男はもう自分を許している。生来の真面目さは残っているが、彼は彼なりに幸せな日々を過ごしているのだ。
 ……単に女性からの積極的なアプローチが苦手なだけかもしれないが。
「いえ……ダメではありません」
「そうか……」
 相変わらず一言少ないが、それがエリオットという男なのだ。
 先程の台詞を頭の中で繰り返し思い出しながら、夕食の支度を続けるクリスティアであった。


●慰霊祭
 Uisca Amhran(ka0754)は瀬織 怜皇(ka0684)と結婚後、名をUisca=S=Amhran(ウィスカ=セオリ=オーローン)と名乗り、アルテミスの活動を続けていた。
 邪神を打ち倒した守護者としての実力と名声は、アルテミスの存在自体を強く後押ししたのは言うまでもない。
 やがて、一人の女の子を出産。ミュールと名前を付けた。盤上遊戯や昆虫が大好きな子に育っているという。
 Uiscaは出産後も各地での活動を継続。一時期はリアルブルーへの遊学も行い、青き世界の世界的な慈善団体とも協力体制を取り付けた。
 そして、王国歴1030年……アルテミス主催での慰霊祭に臨む……。
「……あなた達が守った世界は、こんなにも輝いていますよ。そして、これからもこの輝きを守っていきます」
 慰霊碑の前で長い演説を終えて、Uiscaは壇上から降り立つ。
 そして、所定の席に戻ると、隣に座る紡伎 希(kz0174)が軽く頭を下げた。
「お疲れ様です。流石、イスカさんです」
 アルテミス主催であるので、本来であればノセヤか希かが壇上に立つはずだったのだが、希の強い希望でUiscaに役が回ってきたのだ。
 世間一般に対するアピールの一環ではあるが、心の奥底から、希が願った事だ。ソルラや牡丹の事もあるのだから。
「でも、来年はノゾミちゃんでね」
「はい。確りと頑張りたいと思います」
「ノゾミちゃんは私の自慢の妹なんだから、大丈夫」
 そう言ってUiscaは胸を張った。
 沢山の苦楽を共にした時間が、ふと頭の中を過り、希の耳元で小さく告げる。
「これまで。ありがとう。そして、これからもよろしくねっ」
「何、面白そうにヒソヒソ話しておるのじゃ」
 後ろの席からニョっと顔を出したのは、星輝 Amhran(ka0724)改め、神薙=A=星輝だった。
 その姿は大人びた女性……ではなく、傲慢歪虚との戦いに明け暮れるあの頃のように小さい背姿だ。
「これからもよろしくと話していただけですよ、キララ姉さま」
「並んで座っているとミュールちゃんの姉みたいですね、星輝様」
「今だけじゃ。少しでも子供が多ければ多少騒いでも問題なかろう」
 ニヤリと笑う星輝。
 【魔装】の監視者として翁の跡継となった星輝は、鞘に宿る負のマテリアルを色々と調査。
 そんな事をしているうちに、以前のように負のマテリアルの影響を受けて、身体に異変が起こる事を見つけたのだ。
「オキナが嘆いておったぞ。あれやこれや、根掘り葉掘り、イスカに“尋問”されたとな」
「それは言い掛かりです。昔の約束を守ってもらっただけですから。それに“尋問”言うなら、キララ姉さまも同じでは?」
「ちゃんと名前を教えんかったからの。それはいいのじゃ」
 オキナは自身の名前を公表していない。
 いい加減、教えろと何度も詰め寄り、ようやく聞き出したのだ。
「え? オキナのお名前を聞けたのですか?」
「まぁの……じゃが、秘密じゃ。これは、【魔装】を継いだ、わしと蒼とオキナだけのものじゃからな」
「なら、後でアオ義兄さまから直接、聞きます」
「それは、絶対にダメじゃ。うっかり口を滑らしたら、わしが我慢ならんからの」
 星輝の台詞に希が思わず声を出して笑うのであった。

 妙な悪寒を感じ、思わず身震いした神薙 蒼(ka5903)は、隣に座る瀬織 怜皇(ka0684)に声を掛けた。
「なんか、寒くないか?」
「いえ、特には。エニアさんはどうです?」
 振られた話を更に横に座る十色 エニア(ka0370)へと続ける怜皇。
 エニアは軽く首を横に振って答えた。
「辺境は凄く寒いから、この位なら、特に言うほどかな」
「なるほどな……とりあえず、辺境が寒い所だっていうのは、同感だぜ」
 そう言って自身の息で両手を温める蒼。
 幾度か星輝に連れられて辺境へと足を運んだので、よく分かる。少なくとも王国よりも寒いのは確かだ。
「王国も場所によっては、かなり寒い場所もあったりしますよ」
 会場の温度設定にも気を配っているノセヤが、そんな事を言いながら、うす掛けを蒼に渡した。
「寒い場所といえば“聖火の氷”があった所もそうだったかも。洞窟の中だけど」
 懐かしい出来事を思い出すエニア。
 ネル・ベルとの熾烈な争奪戦は、今でも印象深い。
「そういえば、【魔装】も来ていましたね。今は部屋でオキナが見ているようですが」
「あの重たい鞘、運ぶの大変なんだぜ」
「まだ、重たいままなんだ、あれ……」
 【魔装】はオキナに見張らせて、今は控室に置かれている。
 ハンター達の声に反応する事はなくなったが、聞こえているらしい。
「……振り返ると、時が流れるのは早いものです。此処まで来る道のりは決して簡単ではなかったと……」
 怜皇がしみじみと感慨深げに言う。
 出来れば、志半ばで倒れた者達に、ゆっくり見守っていて欲しいと願う。
「ほんとに、あっという間……敵が歪虚だからの一言で片付けて良い話じゃないって、思うような依頼が沢山あったからね」
 頷いて同感しながらエニアが苦笑を浮かべる。
 思い出してみればネル・ベルや希に出会ったのは、ずっと前の事だ。
 傲慢歪虚との戦いはただ悪と剣を交えるだけではなかった。特に緑髪の少女が絡む依頼や、傲慢歪虚ミュール、ティオリオスが引き起こした事件は、人の闇に迫るものが多かったと思う。
「そうでしたね。途中、ソルラさんとの別れや、水の精霊との出会いもありましたか」
「想い出話になると、ずっと続きそう」
「全くだぜ。そうなると、俺は子供の面倒しか見られなくなるからなっ!」
 どちらかというと出会ったのが遅かった蒼はこういう話の中には入りにくいものがあった。
 だが、話に入りにくいという意味でいうと、エニアも実は似ている。
「わたしだって、最近の話になると、ずっと辺境で暮らしているから分からないよ」
 エニアはアルテミスで覚醒者の先生を務めているが、普段は辺境暮らしだ。
 その為、この数年の話になると話題についていく事が難しい。
「そういう時は話題を作って参加すればどうです? ほら、アルテミスの制服を着てたじゃないですか」
「いやいや、あれは……若い頃の話だって。今日の慰霊祭も、わたしなりに『死』を見てきているからね。敵も味方も思う所が沢山あったから」
「なんだ。女装するなら手伝ってやるぜ」
「だから、しないって!」
 思わず少し大きめの声を上げた所で、ハッとして顔を真っ赤に染め、俯くエニアだった。

 ウイヴル(ワイバーン)(ka0754unit003)と由野(リーリー)(ka0724unit001)を囲んで遊ぶ子らをオドオドしながら子守するオキナ。
 そんな平和な一時を見守りつつ、星輝は蒼に寄り添っていた。
「一言、蒼には謝らないといけない事があるんじゃ」
「……【魔装】の事だったら、気にする必要はないぜ」
 言わんとした事を先回りされ、星輝はポカンと口を開ける。
 引退したオキナの跡継として、星輝は手を挙げたのだ。そして、色々な準備を終えて、今日から星輝は【魔装】の監視者となる。
「碌に相談もなしで行き当たりばったりだったからのぉ」
「星輝はずっと俺に付き合ってくれた。だから、今度は俺がずっと星輝に付き合う番さ」
「時々、怖くなるのじゃ。余計なものを背負わしてしまうのではないかとな」
 それが星輝……一世代だけなら、それでも良かったかもしれない。
 けれど、監視者としての使命は【魔装】が在る限り、続くのだ。やがて、いつか、それが子、あるいは孫の“呪い”になってしまうのではないかと。
「だからこそ、俺が一緒なんだろ」
 蒼は星輝の身体をグッと抱き締めた。
 しおらしく小さく頷く星輝。
「ありがとうじゃ、蒼」
「星輝っ、ずっとずっと、これからいつまでも、また宜しくなんだぜっ!」
 その言葉通り、数十年後、監視者としての役目を続けた夫婦は、その役目を次代に継ぎつつも、確りとやり遂げるのであった。

 慰霊祭が終わり、寝静まった子を間に挟み、Uiscaと怜皇は座って夜空を見上げていた。
「邪神との戦いで、ずいぶん星が減っちゃった気がする……」
 それは純粋な意味の星と、人という星と二つの意味があるのだろう。
 愛する人の手助けをしつつ、クリムゾンウェストとリアルブルーを行き来し、天文学者として日々を送っている怜皇にとって、赤き世界の夜空は興味深かった。
「消えた星達も、確かに多いけど……また新しく生まれてくる星達もある、から」
「そうなの?」
 素朴な疑問に怜皇は微笑を浮かべて答えた。
「輝いている星々は、太陽のような恒星なんだ。それは広大な宇宙のどこかで、新しく生まれてくる」
 もっとも、二人が見ている煌めきは幾億年前のものかもしれないが。
 ただ、そんな細かい事は大事な事ではない。重要なのは、新しく輝くという事実なのだから。
「新たに誕生した星は、また輝いていける。勿論……俺達も」
 怜皇の力強い言葉にUiscaは頷くと、愛する人に寄り掛かった。
「この世界がもっと明るくなるように……これからも、一緒に歩んでいこうね!」
「勿論だよ。僕達とこの子の煌めく未来に向けて」
 夜空の輝きは、過去から未来へ贈られた“希望”そのものなのだ――。


●壁掛けの狐面
 女王が即位し、貴族派は勢力を一時的に減退させたが、マーロウ家は尚も勢力を保持していた。
 といっても、以前のような積極的な政争を大公は挑まなかった。それが、女王への敬意からなのか、それとも、別の理由かは分からない。
「ふん、相変わらず質素な部屋よ」
 文月 弥勒(ka0300)に与えた部屋を訪れたマーロウはそんな感想を口にする。
 立場に相応しい待遇は与えているのに、敢えて飾らない事の意味があるのだ。それをマーロウは理解していた。
「……必要なら変えるが?」
「いいや、このままで何も問題はない。……お前は下手に行動を縛らぬ方がよほど良い働きをする類の人間であろうしな」
 弥勒はグリム領における家督争いの助力を得る為、マーロウ家に身売りしたのだ。
 優秀な覚醒者であり、以前より、弥勒の目端の利く頭に注目していた大公がそれを断るはずがない。
 おかげで、ユエルは極めて強力な後ろ盾を手にする事が出来た。
 少なくとも彼女を陥れようとする輩の動きは抑えられるはずだ。
「その仮面。オブジェと化しているな」
 マーロウの視線は壁にかけてある狐面へと向けられた。
 そのお面は弥勒にとっては大事なものである。今は大公からの“雑用”の時だけに使用している。
「此奴は俺を見届けているのさ。俺の進む未来を」
「お前ではなく“かの者”ではないのか」
 見透かすような大公の台詞を弥勒は鼻で笑う。
 もし、そうだとしても、これが見届ける未来は同じだからだ――。


●温泉王御一行
 時音 ざくろ(ka1250)と言えば、東方の地でそれなりに名が知られた新興領主の一人だ。
 優秀な覚醒者を多数抱えての堅実な領地経営に、領内での温泉観光が大きく、その温泉街の規模は、東方随一とも呼ばれる程である。
 今日は、領主自らが魔導剣を振り上げて見つけたとされる露天温泉を備える領主館に、幾人かの妻と共に来ていた。
 もっとも、領主だけの特別な館ではない。平時では帝や各国からの首脳、幹部を受け入れるVIPな宿も兼ねているのだ……時音領の発展には、こうした外交的な事に対して、力を入れている事があり、強いのだ。
「子供達、大分大きくなった子も、まだ手の掛かる小さい子も居るけど……今日は安心してゆっくり休んでよ。勿論、ざくろも甘えさせて貰うけど」
 堂々とした発言の途中から、顔を赤らめて宣言するざくろ。
 小高い場所に建てられた領主館の露天風呂から眺める領内の風景は格別であり、日々多忙な妻らの慰安には持って来いだろう。
「はやてにおまかせですの!」
 一番早く手を挙げて答えたのは、温泉というのに、なぜか手に収まるサイズのドリルを持ち込んだ八劒 颯(ka1804)だった。
 だが、彼女の功績なくして、温泉は出なかったので、颯が真っ先に手を挙げるのは、誰の目から見ても納得の事であった。
「ドリルは万能。戦う為だけではなく、土木工事などにも役に立っているのですわ!」
「おかげで領内のインフラ工事は驚くべきスピードで進んでいるよ。ここも颯のドリルが温泉を掘り当ててくれたからだし」
 道路を作る場合、整地が出来ないとちゃんとした道路が作れない。
 何もない場所ならいいが、巨大な岩や堅い岩盤があった際には、ドリルの力は頼もしい限りだ。
「お時ちゃん、なんでも、おまかせですの!」
 ギュイーンとドリルを回しながら力強く颯は言った。
 なお、動いているドリルは装着者のマテリアルを基にして駆動しているので、温泉でも感電の心配なく使える代物だ。だから、雨でも水の中でも作業は行える。
「ドリルはいいですが、タオルは必要ないでしょう。他に誰も居ませんし」
 そう言って、颯が身体に巻いているタオルを剥がしたのは時音 巴(ka0036)だった。
 突然の事に慌てる颯だが、不可思議な事に湯煙が包み込んで裸には……ならない。
「すごい、この煙、どうなってるの!?」
「大人の事情……ではなく、マテリアルの流れが何か作用して、きっと、こういう仕組みになったのですよ」
「どっちでもいいけど、寒いですわー!」
 ざくろと巴の会話の間を駆け抜け、颯はザブンと湯に飛び込んだ。
 高い水柱が挙がるが……ここはプライベートな空間だ。危険でなければ……許さる範疇か。
「巴様も、子供達は全員、部屋で楽しく過ごしているので、主様と共に入浴を楽しんで下さい」
 慰安旅行のしおりを手にしながら、時音 リンゴ(ka7349)が告げた。
 ざくろと妻らの子供達の人数は、それはそれで、かなりの数になる。子供達の世話の都合をリンゴはつけてきたのだ。おかげでこうして皆で温泉を楽しめる訳である。
「あら。子供達と一緒に入れると思ったのに」
「それは、明日です」
「そっか……それじゃ、今日は夫婦水入らずなのね」
 ポンと手を叩いた巴。
 まぁ、その妻だけでも、それでも数が多いのだが。この辺り、普通の夫婦水入らずとは違う意味になるのは、ざくろだからしょうがない。
「主様にも、しっかり休日を楽しんでいただかないと」
「ふふーん。それなら、まずは、リンゴちゃんから楽しまないと、ね!」
 ドーンと彼女を温泉へと押したのは、アルラウネ(ka4841)だった。
 リンゴはバランスを崩して温泉に入ってしまう。
「い、いけません。まずは温泉に入る前に身を清めなければ……」
「さっき、自分の身体、確り洗っていたじゃない」
「そ、それは……主様が……」
 顔を真っ赤に染めたリンゴの言葉に妻らの視線が一斉に、ざくろへと向かう。
「え……ざくろん、まさか、温泉に入る直前の、あの短い時間で!?」
「こ、これには、まぁ、その……色々あって」
 ごにょごにょと後ろに下がるざくろを、ニヤリと笑ったアルラウネが、彼の身体を抱き締めて確保する。
 その際に、確りと胸を当てるのも忘れない。
「こうやって皆でお風呂に入るのも、久しぶりかな」
 白山 菊理(ka4305)が泡立てた手ぬぐいを手にしながら、ざくろへと近づく。
「菊理の目が真剣だよ」
「ちゃんとお背中流しますからね」
「そっち、背中じゃないし。じ、自分で洗うから! アー!」
 楽しそうな光景に微笑を浮かべながら眺めるアデリシア・R・時音(ka0746)は、先に自身の身体を洗い終える所だった。
 ざくろの嫁が全員、仲が良いのは良い事だ。だからこそ、領地経営が上手くいっている。これが、ざくろでなければ大変な事になっていたはずだ。
「それにしても、忙し間に、結構な時間が経ったような気もしますが……過ぎてみると、あっという間でしたね」
「ですねー。子供達もこんな調子ですぐに大きくなるのかしら」
 父親似の子供らが大きく育ったら、どんな子になるのだろうと思いつつ、巴はアデリシアの話に応える。
 まだ小さい事もあるからか、子供全員がざくろを好き好きなのは、ちょっと心配になる……。
「子供達の手が掛からくなれば、また、ハンターに戻ってみるのも良いかもしれませんね」
 布教の途中ですからねと言葉を続けるアデリシア。
 彼女にとって、戦神の教えもまだまだ広めていかねばならないのだ。
 思い思いに温泉を楽しむ一行の中で、八重 桜(ka4253)だけは少し気分が落ち込んでいた。
 体の周囲を漂う湯煙を掴んで胸元に寄せるが、悲しく四散してしまう。
「これは絶望です! なんで、私だけ胸が小さいのでしょうか!」
「ざくろんの揉み方が足りないのじゃないかな」
 迷探偵アルラウネの台詞にざくろが否定の声を上げる。
「確り、揉んでるよ! もう、手が腱鞘炎になるぐらいには!」
 続けて温泉の中からリンゴと颯が顔を出した。
「なら、まだまだ足らないという事かもしれません」
「ドリルだと削っちゃうですの」
「なら、皆に揉んで貰えれば、大きくなるのです!? 桜ちゃん天才!」
 パッと表情を明るくして胸を張る桜。
「どこかの女狐が聞いたら喜んで飛びつきそうだけど、そういう事なら、私も手伝おう」
 ざくろを隅々まで洗った菊理が手拭を桶の中に沈めると、両手をわしゃわしゃとしながら立ち上がる。
 それに並ぶアルラウネとアデリシア。
「当然のように、私も手伝うよ」
「共に過ごす大切な仲間からの申し出です。手伝わない訳にはいきません」
 あっという間に囲まれる桜は、別の意味の圧迫感を感じ、思わず後退った。
 大人な時間の都合で唐突に湯煙が一層濃くなった。
「あ、あの、桜には、胸は二つまでしか、ないですから!」
「どさくさに紛れて、ざくろの胸を揉むのはだれぇぇ!?」
 こうして、楽しい(?)温泉の時間が始まったのであった。

 騒ぎ過ぎた事もあって、全員が疲れ切った様子で温泉に浸かっていた。
 もう、あの時のようには若くはない……という事なのだろう。
「服がはだけるぐらいの大きいおっぱいを……ください……」
 半分ほど意識が飛んでいるのか、上の空で桜が呟く。
 一番、消耗しているのは彼女なのかもしれない。
 そんな桜の頭をざくろが優しく撫でる。胸の大きさは、ざくろは特に気にしていないが、桜が気にするのであれば、応援するまでだ。
「流石にあれだけ騒げば疲れるだろう」
「……うん。まぁ、そうなんだけどさ。桜、菊理……両親にちゃんとご挨拶に行くからね」
 転移してから色々ありすぎて、リアルブルーにはまともに帰っていなかった。
 少なくとも、きちっとけじめはつけたいとは思うが……。
「止めておけ。私は政治の道具のようなものだったからな。挨拶なんていらないさ」
 真顔で菊理は言った。ざくろの気持ちは嬉しいが、それとこれは別だ。
「なら……啖呵を切るのはいいかな?」
「な……ったく……それなら、いいよ。ただ、その時は私も一緒だ」
 頼もしく、そして、力強く言い放ったざくろに菊理は顔を赤く染めて答えた。
 力量的にも、これだけの領地を抱えているざくろの方が上だし、良い機会かもしれない。
 そこへ、アルラウネが寄り掛かってきた。
「森から離れてても、温泉のおかげで色々保ててるのは、ありがたい話ね~」
 泉質がかなり良い温泉だ。温泉を観光に出来たのも納得できる。
 ついでいうと、ざくろの肌も艶々で、いつになっても女の子のような肌だ。
「子供達も温泉が好きみたいですし、良い事です」
「アルラ、巴。最近、娘達がよく似てきてない?」
「似てきたってどこを指して言ってるのかしら? ざくろんの血が流れているから当たり前じゃない」
 いたずらっぽく笑いながらアルラウネが言う。
 娘達は全員、ざくろと妻らとの愛の結晶なのだ。
「ふふ……愛しています……あなた」
 子供の事がちゃんと話に出てきた事が嬉しかったのか、ピタリと身体を寄せる巴。
 遊び疲れた子供達はどうしただろうか……世話人からの連絡を受けていたリンゴが温泉へと戻ってくる。
「ぐずっている子はなく、皆、ぐっすりと寝ているそうです」
「ありがとう、リンゴ。気に出会えて本当に良かった」
 ちゅっと彼女の頬に唇を当てると、すぐにリンゴは顔を赤く染める。
 数え切れない程繰り返されている事なのに、未だに慣れないのだ。
 その時、颯がドリルを駆動させ、景観の邪魔になる樹木を倒した。
 発展した領地が一望でき、家々に灯りが、星々の輝きのように見事であった。
「領主館の露天風呂から、大発展した領地を眺めると感慨深いですね」
「これからも発展していくには、もっと色々な事を知っていた方がいいですの」
 リンゴと颯の言葉に、ざくろは大きく頷いた。
 他の地を見聞に行くというのは、領地の発展には良い案だ。
 帝国や辺境、新たに開拓されている北方、まだまだ、行っていない所は多い。
「遠くに出かけるのもいいですね」
「アデ、遠乗りは次の休み迄待ってね」
 一人二人で出掛ける分には良いだろうが、ざくろはそれをあまり好まなかった。
 やはり、一人ひとりが大事な妻達なのだ。出来れば、その時、行ける人全員で行きたいものだ。
「まあ、その前に、今日は領主様を相手に勝ち戦と参りましょう」
 スッと立ち上がったアデリシア。全身を覆う湯煙が風に乗って晴れていく。
 慌てたのはざくろだ。思わず鼻を抑えながら立ち上がろうとしたが、四方八方を妻らに取り囲まれている。
「それでは、始めましょうか」
「お、お手柔らかにお願いします……というか、皆……これからも、よろしくね」
 そうして、妻らに一斉に飛びつかれるざくろであった。


●伝説の工房
 開拓が進む南方大陸の開拓地に、その工房はあった。
 新旧のありとあらゆるユニットを瞬く間に修理するその工房の功績は大きく、一説には工房のおかげで開拓が数年は早まったという。
 その工房の片隅に1機のユニットが保管されていた。型番も来歴も不明であり、誰も動かす事ができないというそのユニット――ビッグ・バウ(マスティマ)(ka0665unit012)――は、工房に流れる時の流れをただ見守り続けている。
 噂によると、そのユニットは、満月の夜に唐突に動きだして世界を飛び回ったり、親の言う事を聞かない悪い子を怒りに来るという……そんな少し怖い話のある工房の片隅に、この伝説の工房の主の口癖が、誰かの落書きで残されている。
「まったくもって晩年に守護者になんてなるもんじゃないわい。死に損ねた」
 なんでも、今は表舞台から姿を消しているが、年を1回りどころか、幾回りもしていたそうな。
 今、その落書きは、工房の可愛らしい看板娘が躍起になって消そうとしている。不思議なもので、なかなか消えないらしい――。

 ――と数十年後には伝説として語られる訳ではあるが、王国歴1030年頃、工房の主であるミグ・ロマイヤー(ka0665)は多忙な日々を過ごしていた。
 なんせ、南方大陸は開拓途上なのだ。ユニットの工房が沢山ある訳ではない。転移門でリゼリオに戻れればいいが、戻る手間を考えれば、開拓の最前線に近い場所に工房が重宝されるのは当然の事だった。
「何度言えば分かるんじゃ!」
 突然、ミグの怒鳴り声が工房に響き渡る。
 これが一見、可愛らしい看板娘と見間違えるミグから飛び出る言葉なのだから、工房に初めて訪れる人は驚く。
「整備の良し悪し一つで、パイロットの命が左右されるのじゃ。しっかり確認せぇ!」
 ユニットに対する並々ならぬ熱意。実戦に基づいた現実的で緻密にて繊細な作業工程。
 それが工房の質をひたすらに高めていた。人によってはミグにだけ見て欲しいと、わざわざ世界を越えてくる常連もいる程だという。そんな評価を聞き、弟子の志願者が一人、二人と増えていき……まぁ、容姿に騙される者もいない訳ではないが。
「ミグをボーと見ている暇があったら、ちゃっちゃと動かんか!」
 バンバンと丸めた設計図でテーブルを叩く姿は、ロリっ子が駄々こねているようにも見えて、それはそれで、可愛かったという。
 そして、そんな日々は、もう暫く続くのであった。


●女王の拳友
 王国の最高意思決定機関の場である“円卓会議”。
 限られた一部の者しか会議には参加できないそこに、ジャック・J・グリーヴ(ka1305)の姿があった。
「……待てよ。異議ありだぜ」
 それは、女王の裁決によって決まりそうな法案を止めた瞬間だった。
 止められた事が意外だったようで、女王であるシスティーナは一度、咳払いをして、間を確保してから尋ねた。
「コホン……グリーヴ殿、異議の理由をお聞かせ下さい」
「通信設備を使っての地方への教育ってのは、構わない。だが、設備構築を地方毎に分けて落札方式で受注させるのは反対だ」
「地方毎の特色を大切にする為の事だと……」
 システィーナの会話が終わるよりも早く、ジャックが言った。
「格差が生じるだけだってのが分からねぇのかよ」
「女王様に無礼であろう!」
「ハッ! それがどうした! この国の為にならねぇ事だから、こっちは言ってんだ。女王とか貴族とか関係ねぇだろ」
 ジャックを諌めようとした上位貴族に、負けじと言い返す。
 保守的な傾向が強い王国内部でも革新派である女王とジャックは、犬猿の仲であった。
 方向性の違いというか、考えの違いというか、埋められない溝があるのだ。だが、女王はそれを悪いと一度も思った事はない。
「懸念がある事は留めておきましょう。ですが、誰になんと言われようとも、これは私の決定です」
「……チッ! 頑固なこった」
 舌打ちしたジャックは女王の視線から目を反らした。
 数年前の気弱な王女時代がどれだけ可愛かったかと、陳腐な事が浮かんだが、ジャックはすぐに払い捨てる。
「まぁ、なんだ……あまり気負うなよ」
「……あぁ」
 会議が終わり、ポンと保守派の貴族の一人がジャックの肩を叩いて立ち去った。
 慰めているつもりのようだが、愚かな事だ。奴らから見れば、女王に盾突く馬鹿な男にジャックが見えているのだろう。
 だが、実際は違う。反対意見を口にした真意は“落札”が女王決定の正統なものだとの再確認だったのだ。
 黄金商会を使って全部落札してしまえばいいだけの話なのだから。そうすれば、王国内に共通の基盤で設備が作れ、格差が少なく、教育が提供できる。
「手の掛かる女王だ」
「こっちの台詞ですよ、グリーヴ殿」
 声が聞こえていたのか、にっこりと笑顔を浮かべた女王と視線が宙で再びぶつかった。
 きっと、明日も明後日もずっと衝突を繰り返し、都度、火花が散るだろう。
 しかし、それは悪い火花ではない。未来を照らす眩しい程の輝きなのだ。


●東方最強
 模造刀とはいえ、達人が扱えば十分に凶器になるだろう。
 アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は立花と模擬戦を繰り広げていた。
 王国騎士として新興国の情報を得る為に東方に足を運び、東方帝との謁見も済ませた。戦闘等による傷病者の治療や研究等の社会復帰の支援をする団体設立の話も、東方帝と共和国首相である立花に話をつけた。
 それで、要件はそれで終わりではない……いや、むしろ、ここからが本番というべきだろう。
「こんなに打ち込みが続いたのは久々ですね」
「そう簡単には負けられないからね」
 二人が会話を交わす。
 チラリとアルトは五光に視線を向けた。開いた口が間抜けだが、アルトが意図した事は確りと伝わっているだろう。
 マテリアルを集中させ、模造刀を正眼に構えるアルト。
 一方の立花は模造刀を無防備にもだらりと下げた。
 あれがそういう“刀の型”だとアルトは知っている。繰り出されるのは定め無き刀捌き。
「正直、驚いていますよ。アルトさんは会う度に強くなっている」
「そうでないと、挑んだりはしないさ」
 アルトは意識を研ぎ澄ませる。型に惑わされてはいけない。
 どんなに強力な技も、それを引き出す為のカタチは決まっているのだ。立花の斬撃を誘うように間合いを詰めた。
 ゆらりとした刀先の動き――瞬きすらも長いと感じられる、その僅かな間。
(最上段に上がった……終之……ッ)
 立花の先手を読んだアルトは空間に放たれた無数の斬撃――普通は避けられない強度――を、アクロバティックな動きで避け切った。
「よく避けましたね!」
「無我天誅ッ!」
 超加速したアルトが必殺の刀を振るう。
 それに反応した立花も流石だった。受け流し、素早く反撃に出る……はずだった。
 より早く加速していたアルトの二撃目は、模造刀の刀身部分を左逆手で握ると間髪入れずに立花の脇下へと叩き込まれたのだ。
 もし、本物の刀であれば、アルトの左手も大変な事になっていただろうが、あらゆる戦場で敵を倒し、生き残る傭兵だからこその機転だ。
「お見事、です……完全に意表を突かれましたね」
 脇を強打した事で、呼吸を乱す立花が、なんとか言葉を発した。
「二度は通用しないだろうけど」
 苦笑を浮かべながら言ったアルトに、立花は微笑を向ける。
 仮に本物の刀でも同様の結果だっただろう。そして、回復手段がある限り、左手の損傷は大して大きな意味を持たないはずだ。
「これが戦場なら“二度目”はないですよ」
 この日、東方最強が過去の伝説となったのであった。
 高みを目指し努力の日々を歩み続けた一人の人間が、勝利を得たのだから。


●仕事に生き続ける日々
 エラ・“dJehuty”・ベル(ka3142)が拝領した土地は、これまでの東方の統治方法と違い斬新であった。
 会社経営に似た組織形態を形成し、開拓と後継育成に力を注いで、幾数年。
 運営は極めて順調に進み、エラは次の目的の為、領主を譲り、今は相談役として領地経営に関わりながら遠征の準備を続けている。
「不足しているのであれば、方針に則り、規則を作り、機能させる。これが大事です」
「すぐさま智者を集め、策定に入ります」
 助言に対し、新領主はすぐに行動に移す。
 それでエラの仕事は終わらない。どんな智者が集まるのか、策定された規則は方針にズレが生じていないか。チェックするのも彼女の役目なのだ。
 多忙なので、気が付けば明け方……という状況も当たり前になってきた。
「こんなに忙しいと婿を取るのも難しくないですか、エラ殿」
 新領主の何気ない一言にエラは一瞬、何を言われたか分かっていなかった。
 普段から全くというほど気にしていなかった事なだけに、すんなりと耳に言葉が入らなかったのだ。
 トントンと書類を整頓しつつ、エラは満面の笑みを浮かべて告げるのであった。
「仕事と元所領、後は世界が私の子供のようなものよ」
 ――と。
 結局、エラは未婚のままで人生を終えたというが、彼女の多くの弟子達が想いを継ぎ続けたという。


●此処に在る光
 ユノ(ペガサス)(ka3199unit003)が、一人の女性――未悠(ka3199)――の姿を遠くに見ながら、風を操るようにゆっくりと羽ばたく。
 優しく穏やかな微風が草原を駆け抜けて1本の桜の木の枝々を揺らした。

 ざわざわざわ――。
 何かの気配を感じ、太陽のように輝かしい金髪を持つ男性が寝ていた上体を起こそうとした。
 義手が小さく駆動する。
「大丈夫。風が桜の枝を撫でただけよ」
 女性は安心させるように穏やかな口調で告げると、そっと大事に男性の額を、風が枝を揺らしたように優しく撫でる。
 右腕から発していた駆動音が静まると共に、男性はその義手で女性の手に触れた。
「……」
「……そう、夢を見ていたの」
 男性の唇の動きから、女性は言葉を読み解いた。
 穏やかに寝ていたはずなのに、僅かなざわめきで起きる夢だ――決して良い夢ではないだろう。
 安心したのか、再び寝息を立てる男性の手を両手で包み込む。
 そこには、確かに温もりがあった。
 かけがえのない存在。
 戦場に立つ以上、温もりが失われる可能性は常にあった。その可能性の中で男性は辛うじて生き残る……利き腕と殆どの視力と引き換えに。
「私は幸せよ」
 もし、あの戦いでどちらかが死んでいたらどうなっていただろうか。
 彼は私の死をどう感じただろうか。あるいは、私は私でいられたのだろうか。
 想像するだけで、身が張り裂けてしまう恐怖を感じ、女性の心は震える。
 そして、同時に思うのだ。だからこそ、彼と共に在れる事が幸せなのだと。
「――」
 頬を流れる涙が、男性に零れないように慌てて拭う。
 その為に離してしまった彼の手を、女性は愛おしそうに、再び握った。
「『運命とは最も相応しい場所へとあなたの魂を運ぶ』……あなたの好きな言葉……私達の魂はお互いへと辿り着いて、最期まで共に在り続ける。あなたは私の希望。あなたは私の幸せ……愛してるわ」
 女性は静かに唇を重ねる。
 確かな感覚に男性は瞳を開くと、ゆっくりと包み込むように、女性の身体を抱き締めた。
 そして、唇を合わせたまま、男性は女性の名を呼んだ。
「……」
 微かな鼓動が、そこに温もりがある事を感じさせた。
 感覚全てに広がる幸せ。
 男性が今度こそ上体を起こそうとしていると察し、女性は名残惜しそうに唇を離した。
「おはよう……陽が少し傾いたから、桜の映り方も変わったわ。風に揺れて、花弁が幾重にも重なって絨毯のよう」
 周囲の美しい景色を伝えると、男性は見渡すように首を回し、香りを確かめる。
「……」
「……もうっ」
 男性の呟きに女性は微笑を浮かべる。 
 そして、彼の肩に寄り添うと、確りとその手を握った。
 きっと、この先も、この手は離さないだろう。彼女にとっての光が、旅立つその日まで。


●π乙カイデーハンター
 受付嬢極秘リスト7418――ラスティ・グレン(ka7418)――の現況について、紡伎 希より、分かりやすく記します。

 _| ̄|○

 ↑こんな感じですが、お分かり頂けたでしょうか。
 π乙カイデーを求め彷徨い、巨人に一蹴された彼は、南方大陸にやってきました。
 ですが、コボルトは犬。
 更に、リザードマンに至ってはmanです。故に南方大陸には彼が探し求めるπ乙カイデーはあるはずもなく。
「この南方大陸には、俺の求めるπ乙カイデーな姉ぇちゃんの楽園は無いって事だ……チックショォォォォォ!」
 そのようにラスティ様の叫び声を数多くのパルムが録音しています。
 転移門を通じてリアルブルーに行くつもりだったようですが、人格的に難があるかもしれないという事で、私の方でストップさせています。
「西方で仕事すりゃ、胸筋ムキムキなあんちゃんしか寄ってこねぇ! π乙カイデーは都市伝説かよっ」
 とオフィスの入り口で泣き崩れていましたので、流石に可哀想と思い、彼が行けそうな所をピックアップしました。
 そちらに行くと思いますので、適切なるご対応の程、よろしくお願いします。


 サッと書き留めたメモがパルムに運ばれるとは知らず、ラスティは転移門の前で声を大にしていた。
「まだ龍園行ってねぇ! 俺の冒険はこれからだぁ!!!」
 終わりなき彼の旅は、まだ始まったばかりなのだ。


 ――完。










●虹の橋へ
 幾色にも輝く砂のようなものが……いや、星のような煌めきが、無数に集まって橋となっていた。
 そこを長く伸びた黒髪の男が歩いている。心の奥底に刻まれた記憶や様々な感情を抱えながら。
(俺を呼んだのはお前か?)
 橋の横、上下左右のない空間に巨大な朱雀が、ゆっくりとした動きで飛んでいる。
 朱雀は男の頭の中に直接、答えてきた。
(正確には違うかな。これは虹の道そのものの残滓だよ)
(そうか……まぁ、構わないが)
 忘却が出来ない憎悪を抱えたまま、誰かの迷惑になるよりかは、余程“マシ”だろう。
 自分の願いから逃れられない呪い――と、かつて、朱雀はそう言ったが、その通りだと思う。
 虹の橋を歩き続ける男は、その先の方を見つめた。光り輝いているようにも見えたからだ。あれが人生の終着駅なら、それも良いだろう。
(橋の先には何があるのだ?)
(ファナティックブラッドの体内とは違うから分からないけど……でも、ここは虹の橋の残滓だから、先にあるのは“願い”じゃないかな)
 朱雀の言葉に男は思わず足を止めた。
 今更“願い”とは何だ。それが叶わないというのは自分が一番良く知っている。
 橋を辿り着いた先に、あっていいはずがない……過去は変えられないのだ。
(このまま、足を止め続けてもいい。けれど“願い”は叶えるもの。叶える為の努力は、否定されるものじゃないと思う……だから、貴方が行っても良いはず。虹の橋の先にあるのは、過去を変える事でもやり直す事でもない。貴方が“願った”世界なのだから)
(俺が……“願った”世界……)
 ふと、懐かしい声で呼ばれたような気がした。
 役目は終わったとばかりに巨大な朱雀は大きく羽ばたくと高く飛翔していく。最後に一言告げながら。
(貴方は沢山の人々の未来に繋がる道を作った。この虹の橋は、きっと、その沢山の感謝。貴方が“願う”未来へと繋がる橋)
 虹の橋の先の光から、激しい戦いの音が聞こえる。
 男はハッとして、利き腕へと意識を向けた。知らぬ間に、霊氷剣の柄を握っていたのだ。
(――ッ!)
 何をすべきか理解したのか、彼は虹の橋を駆け出した。
 かつて愛したものの名を叫びながら……虹の橋の先の光を目指して。

 “願う”未来をその手に掴む為に――。

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参加者一覧

  • 母親の懐
    時音 巴(ka0036
    人間(蒼)|19才|女性|疾影士
  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • 古塔の守り手
    クリスティア・オルトワール(ka0131
    人間(紅)|22才|女性|魔術師
  • ユニットアイコン
    エトワール
    エトワール(ka0131unit001
    ユニット|幻獣
  • 虹の橋へ
    龍崎・カズマ(ka0178
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士
  • 戦地を駆ける鳥人間
    岩井崎 旭(ka0234
    人間(蒼)|20才|男性|霊闘士
  • ユニットアイコン
    チャーリー
    チャーリー(ka0234unit003
    ユニット|馬車
  • 壁掛けの狐面
    文月 弥勒(ka0300
    人間(蒼)|16才|男性|闘狩人
  • 凶獣の狙撃手
    シルヴィア=ライゼンシュタイン(ka0338
    人間(蒼)|14才|女性|猟撃士
  • 【ⅩⅧ】また"あした"へ
    十色・T・ エニア(ka0370
    人間(蒼)|15才|男性|魔術師
  • 行政営業官
    天竜寺 舞(ka0377
    人間(蒼)|18才|女性|疾影士
  • ユニットアイコン
    ニャンゴロウ
    にゃん五郎(ka0377unit002
    ユニット|幻獣
  • 征夷大将軍の正室
    天竜寺 詩(ka0396
    人間(蒼)|18才|女性|聖導士
  • ユニットアイコン
    セツナ
    雪那(ka0396unit002
    ユニット|幻獣
  • 伝説の砲撃機乗り
    ミグ・ロマイヤー(ka0665
    ドワーフ|13才|女性|機導師
  • ユニットアイコン
    マスティマ
    ビッグ・バウ(ka0665unit012
    ユニット|CAM
  • 聖なる焔預かりし者
    瀬織 怜皇(ka0684
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • 【魔装】の監視者
    星輝 Amhran(ka0724
    エルフ|10才|女性|疾影士
  • ユニットアイコン
    ユーノ
    由野(ka0724unit001
    ユニット|幻獣
  • 戦神の加護
    アデリシア・R・時音(ka0746
    人間(紅)|26才|女性|聖導士
  • 緑龍の巫女
    Uisca=S=Amhran(ka0754
    エルフ|17才|女性|聖導士
  • ユニットアイコン
    ウイヴル
    ウイヴル(ka0754unit003
    ユニット|幻獣
  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • ユニットアイコン
    コクレイゴーレム「ノーム」
    刻令ゴーレム「Gnome」(ka0796unit004
    ユニット|ゴーレム
  • 母のように
    都(ka1140
    人間(紅)|24才|女性|聖導士
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • ノブレス・オブリージュ
    ジャック・J・グリーヴ(ka1305
    人間(紅)|24才|男性|闘狩人
  • びりびり電撃どりる!
    八劒 颯(ka1804
    人間(蒼)|15才|女性|機導師
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • 天壌無窮
    恭一(ka2487
    人間(紅)|34才|男性|闘狩人
  • 春霞桜花
    ミィリア(ka2689
    ドワーフ|12才|女性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    ムラクモ
    叢雲(ka2689unit001
    ユニット|幻獣
  • 茨の王
    アルト・ヴァレンティーニ(ka3109
    人間(紅)|21才|女性|疾影士
  • 世界は子供そのもの
    エラ・“dJehuty”・ベル(ka3142
    人間(蒼)|30才|女性|機導師
  • シグルドと共に
    未悠(ka3199
    人間(蒼)|21才|女性|霊闘士
  • ユニットアイコン
    ペガサス
    ユノ(ka3199unit003
    ユニット|幻獣
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    アウローラ
    アウローラ(ka4082unit001
    ユニット|幻獣
  • 正秋隊(雪侍)
    銀 真白(ka4128
    人間(紅)|16才|女性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    ワカミドリ
    若緑(ka4128unit001
    ユニット|幻獣
  • ざくろの奥さん
    八重 桜(ka4253
    人間(蒼)|11才|女性|魔術師
  • 黒髪の機導師
    白山 菊理(ka4305
    人間(蒼)|20才|女性|機導師
  • 千寿の領主
    本多 七葵(ka4740
    人間(紅)|20才|男性|舞刀士
  • 絆を繋ぐ
    ヘルヴェル(ka4784
    人間(紅)|20才|女性|闘狩人
  • 甘えん坊な奥さん
    アルラウネ(ka4841
    エルフ|24才|女性|舞刀士
  • フリーデリーケの旦那様
    アルマ・A・エインズワース(ka4901
    エルフ|26才|男性|機導師
  • 幸せを手にした男
    檜ケ谷 樹(ka5040
    人間(蒼)|25才|男性|機導師
  • 胃痛領主
    メンカル(ka5338
    人間(紅)|26才|男性|疾影士
  • ユニットアイコン
    エーギル
    エーギル(ka5338unit003
    ユニット|幻獣
  • イコニアの騎士
    宵待 サクラ(ka5561
    人間(蒼)|17才|女性|疾影士
  • ベゴニアを君に
    マリィア・バルデス(ka5848
    人間(蒼)|24才|女性|猟撃士
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
  • 【魔装】の監視者
    神薙 蒼(ka5903
    鬼|15才|男性|格闘士
  • 舞い護る、金炎の蝶
    鬼塚 小毬(ka5959
    人間(紅)|20才|女性|符術師
  • 孝純のお友達
    アーシャ(ka6456
    エルフ|20才|女性|舞刀士
  • 変わらぬ変わり者
    ハンス・ラインフェルト(ka6750
    人間(蒼)|21才|男性|舞刀士
  • 私は彼が好きらしい
    穂積 智里(ka6819
    人間(蒼)|18才|女性|機導師
  • 何時だってお傍に
    時音 リンゴ(ka7349
    人間(紅)|16才|女性|舞刀士
  • 桃源郷を探して
    ラスティ・グレン(ka7418
    人間(紅)|13才|男性|魔術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
紡伎 希(kz0174
人間(クリムゾンウェスト)|14才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2019/11/06 07:00:52
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/11/09 17:09:04
アイコン 質問卓だよ
天竜寺 詩(ka0396
人間(リアルブルー)|18才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2019/11/04 19:38:34