ゲスト
(ka0000)
恋は譫妄に似ている
マスター:坂上テンゼン

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2015/02/13 22:00
- 完成日
- 2015/02/17 22:35
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●恋は譫妄に似ている
神よ! すべてを捧げてもいいと思える女性に出会えた!
彼女から受けた衝撃はこれまでの人生で感じたことがなかった。
彼女の言葉を聞いた瞬間、世界が彩りに満ちたんだ!
今までは灰色の世界の住人だったと、気づきもしなかったというのに。
彩のある幻が人生というものだ。人が生きると書いて人生……
僕は初めて自分が生きている実感を得ている。
ああ、愛しき人よ……きっと君がいなければ僕は存在さえ保てないだろう。
この想い、堪えきれない。
いますぐ僕を全部まとめて君にプレゼントしよう!
●それは恋とは言わない
「変な男につきまとわれているのじゃ」
ハンターオフィスに訪れた彼女は、リアルブルーの戦国時代の日本の姫のような口調で言った。
「細川さん、ハンターであるあなたがストーカー被害に会うということは……」
「相手はランネル・メッテルニヒどのじゃ」
細川 閃姫(ほそかわ せんひめ)がその名を口にすると、ハンターオフィスの窓口は俄かにざわついた。
ランネル・メッテルニヒと言えば、ベテランのハンターである。
すでに壮年にさしかかっている彼だが、浮いた話はこれまで無かった。
「妾が行く先々に現れては言い寄って来よる。じゃが歳は離れておるし……何とのう生理的に受け付けぬ……なにより付き合うておる人がおる。ゆえにはっきりと断っておるのじゃが、一向に話を聞かぬ。
そればかりか、この間家に帰ったら、行李の中に隠れておったのじゃ」
彼女の言う行李とは衣装箱のことだ。特に珍しいものではない。
珍しいのは彼女の言い方の方である。
「妾は怖くなって逃げ出した。しばらく街を彷徨ったが、こういう事には忍者をということで、ヘザーどのを頼ったのじゃ」
「ちなみにニンジャというのは疾影士のことだぞ」
閃姫の傍に控えていた、ヘザー・スクロヴェーニが付け足した。
そのヘザーは、包帯を巻いていた。
「妾はランネルどのを見くびっておった……」
沈痛した面持ちで閃姫が言った。
「いいんだ閃、いい女のために負った傷なんて勲章さ」
「そなたが男であれば名言であったのにの」
夜のことだった。ヘザーは閃姫の住む館(ごく普通の借家)に向かったのだそうだ。
中に入ると、突然件の行李の中から人が襲いかかってきたらしい。攻撃を避けると、相手は外へと走り去って行った。ヘザーはそれを追った。
だが薄暗い路地裏まで追った所で見失ってしまった。捜索を続けていると、突然路地裏に置かれていた樽の中から現れ、襲いかかってきた。
ヘザーは飛び退きながらもチャクラムを投げた。同時に敵もナイフを投げてきた。互いの武器が空中で交差し、結果としてヘザーは負傷、敵には逃げられたらしい。
「面目ない話さ……」
ヘザーはそう言って包帯で覆われた傷を撫でた。
「ランネルどのとは一度一緒に仕事をしたことがあったのじゃ……」
転移者である閃姫は当時、ランネルが熟練のハンターであることを知らなかった。見た目や言動からそう思えなかったという。
偉そうな態度が気に入らなくて罵倒してしまったのだ。
「今思うと玄人から新米に忠告してただけじゃったのかのう」
初対面の相手に罵倒する彼女も彼女なのだが、相手の方は、なんとそれが原因で入れ込んでしまったらしい。
「気品がある若い女に罵倒されるのって経験したことあるか? 割といいものだぞ、そういう趣味はないが」
ヘザーが実にどうでもいい解説をした。
「ヘザーどのの言はまことじゃ。言い寄って来た時に本人がそう言うておった……どうしようもない変態じゃ……そこで皆にランネルどのを捕まえて欲しいのじゃ。
きゃつは人の話など聞かぬであろうな。説得とかではなく説得(物理)でお願いしたい」
物理……素敵な言葉だ、とヘザーが悦に入った。
「オフィスのほうでは住所は把握してないのか?」
「ランネルさんは、住所不定なんです」
問うたヘザーに職員が応えた。これで無職ならばさらに格好がついただろう。
「実は今度の土曜は想い人と逢瀬なのじゃ」
閃姫は少し乙女めいた口調になって言った。
「おそらくは敵はそのこと知っておろう……必ず邪魔をしに現れるはず。彼には余計な心配をかけとうない。ゆえに賊を追いながらも、妾に接触するのを阻んで欲しい」
ちなみにきゃつとか賊とか言われているのが件のランネルのことだ。
「しかしランネルさんは熟練のハンター、それも疾影士です。面と向かってならともかく、本気で逃げ回られたら捕まえるのは容易ではないでしょう。それと街中でのお仕事になると思います、皆さんの行動も制限されるでしょう」
職員が諸注意を述べる。
「もちろん殺人は許容されません」
無表情で怖い事を付け足した。
神よ! すべてを捧げてもいいと思える女性に出会えた!
彼女から受けた衝撃はこれまでの人生で感じたことがなかった。
彼女の言葉を聞いた瞬間、世界が彩りに満ちたんだ!
今までは灰色の世界の住人だったと、気づきもしなかったというのに。
彩のある幻が人生というものだ。人が生きると書いて人生……
僕は初めて自分が生きている実感を得ている。
ああ、愛しき人よ……きっと君がいなければ僕は存在さえ保てないだろう。
この想い、堪えきれない。
いますぐ僕を全部まとめて君にプレゼントしよう!
●それは恋とは言わない
「変な男につきまとわれているのじゃ」
ハンターオフィスに訪れた彼女は、リアルブルーの戦国時代の日本の姫のような口調で言った。
「細川さん、ハンターであるあなたがストーカー被害に会うということは……」
「相手はランネル・メッテルニヒどのじゃ」
細川 閃姫(ほそかわ せんひめ)がその名を口にすると、ハンターオフィスの窓口は俄かにざわついた。
ランネル・メッテルニヒと言えば、ベテランのハンターである。
すでに壮年にさしかかっている彼だが、浮いた話はこれまで無かった。
「妾が行く先々に現れては言い寄って来よる。じゃが歳は離れておるし……何とのう生理的に受け付けぬ……なにより付き合うておる人がおる。ゆえにはっきりと断っておるのじゃが、一向に話を聞かぬ。
そればかりか、この間家に帰ったら、行李の中に隠れておったのじゃ」
彼女の言う行李とは衣装箱のことだ。特に珍しいものではない。
珍しいのは彼女の言い方の方である。
「妾は怖くなって逃げ出した。しばらく街を彷徨ったが、こういう事には忍者をということで、ヘザーどのを頼ったのじゃ」
「ちなみにニンジャというのは疾影士のことだぞ」
閃姫の傍に控えていた、ヘザー・スクロヴェーニが付け足した。
そのヘザーは、包帯を巻いていた。
「妾はランネルどのを見くびっておった……」
沈痛した面持ちで閃姫が言った。
「いいんだ閃、いい女のために負った傷なんて勲章さ」
「そなたが男であれば名言であったのにの」
夜のことだった。ヘザーは閃姫の住む館(ごく普通の借家)に向かったのだそうだ。
中に入ると、突然件の行李の中から人が襲いかかってきたらしい。攻撃を避けると、相手は外へと走り去って行った。ヘザーはそれを追った。
だが薄暗い路地裏まで追った所で見失ってしまった。捜索を続けていると、突然路地裏に置かれていた樽の中から現れ、襲いかかってきた。
ヘザーは飛び退きながらもチャクラムを投げた。同時に敵もナイフを投げてきた。互いの武器が空中で交差し、結果としてヘザーは負傷、敵には逃げられたらしい。
「面目ない話さ……」
ヘザーはそう言って包帯で覆われた傷を撫でた。
「ランネルどのとは一度一緒に仕事をしたことがあったのじゃ……」
転移者である閃姫は当時、ランネルが熟練のハンターであることを知らなかった。見た目や言動からそう思えなかったという。
偉そうな態度が気に入らなくて罵倒してしまったのだ。
「今思うと玄人から新米に忠告してただけじゃったのかのう」
初対面の相手に罵倒する彼女も彼女なのだが、相手の方は、なんとそれが原因で入れ込んでしまったらしい。
「気品がある若い女に罵倒されるのって経験したことあるか? 割といいものだぞ、そういう趣味はないが」
ヘザーが実にどうでもいい解説をした。
「ヘザーどのの言はまことじゃ。言い寄って来た時に本人がそう言うておった……どうしようもない変態じゃ……そこで皆にランネルどのを捕まえて欲しいのじゃ。
きゃつは人の話など聞かぬであろうな。説得とかではなく説得(物理)でお願いしたい」
物理……素敵な言葉だ、とヘザーが悦に入った。
「オフィスのほうでは住所は把握してないのか?」
「ランネルさんは、住所不定なんです」
問うたヘザーに職員が応えた。これで無職ならばさらに格好がついただろう。
「実は今度の土曜は想い人と逢瀬なのじゃ」
閃姫は少し乙女めいた口調になって言った。
「おそらくは敵はそのこと知っておろう……必ず邪魔をしに現れるはず。彼には余計な心配をかけとうない。ゆえに賊を追いながらも、妾に接触するのを阻んで欲しい」
ちなみにきゃつとか賊とか言われているのが件のランネルのことだ。
「しかしランネルさんは熟練のハンター、それも疾影士です。面と向かってならともかく、本気で逃げ回られたら捕まえるのは容易ではないでしょう。それと街中でのお仕事になると思います、皆さんの行動も制限されるでしょう」
職員が諸注意を述べる。
「もちろん殺人は許容されません」
無表情で怖い事を付け足した。
リプレイ本文
●徐々に奇妙な本件
その日はランネル・メッテルニヒにとっては、入れ込んでいる女が他の男とデートすることを除けばいつも通りの日だったが、いつも通りと言うにはあまりに奇妙な一日となった。
――しかし、今の彼にはその事を知る由もなかった。
ランネルは今日のデートの事を知り、公園の茂みの中に潜んで、閃姫に接触しようと現れるのを待っていた。
その時だった。
「おじさんも、かくれんぼ?」
幼い女の子がしゃがんで覗き込んできた。
「ねえねえ、遊んで?」
女の子は人懐こい笑みを浮かべている。
「僕は今やらなきゃいけないことがあるんです」
ランネルは、つまるところストーカーではあるが――言葉遣いは丁寧だった。
「ほら、あっちに子供達がたくさんいますよ」
そっけない態度をとりつづけると、女の子はしばらく粘ったが、やがて諦めて離れた。
その内閃姫が公園の入り口を通るのが見えた。すぐさま接触しようと、腰を上げた。
――すると、至近距離に誰かがいた。
知らない女が突然立ち上ったランネルに驚いていた。
閃姫と同じように和服を着ている美しい女だったが、エルフだ。
「えーっと……あー……」
視線が泳いでいたが、ランネルに用があるようには見えた。
「こっこの豚野郎でござる!!!」
そして彼女は言った。
「……」
ランネルは疑問を表情に浮かべ、黙って彼女を見た。
……何だろう。
フレーズ自体は彼の好むものだ。
ランネルは罵られると興奮する人間だ。相手が美女ならば余計に。
……しかし、違う。違うのだ。
心から侮蔑していない。ただ言っているという感じだ。
見た目がいいだけに却って拙さが目立つ。
「……Oh my God!」
などと考えていると女が狼狽えた。
「やっぱりMeには無理デース!!!」
乱心である。
「お姉ちゃん!」
もう一人女の子が現れた。やはり和服だ。
狼狽えているほうをなだめると、ランネルに向き直り、こう言った。
「え~と、わたしの靴をなめてください?」
「……」
気まずい沈黙。
二人の女子は、黙って逃げた。
「……何なんだ……」
ランネルは再び閃姫の方を確認する。そして舌打ちした。
どうやら今のやり取りの間に閃姫は行ってしまったらしい。
急いで探さなくてはと思ったが、ふと止まった。
違和感があると気になってしまうのはハンターの性なのだろうか。
公園に、異様な姿があった。
そいつは全身に包帯を巻き、長い髪を乱して、ゾンビのような不自然な動きで彷徨い歩いていた。
見るだけで生理的嫌悪感を催させる様な、そんな類の動きだ。
ランネルと目が合った。
それは暗黒しか映さない虚ろな瞳をして、にたりと笑った。
(明らかに普通じゃない……あれは何だ……?)
思わず目を逸らすと、次の瞬間にはいなくなっていた。代わりに、ぽつんと、それが居た所に折り畳まれた紙が置かれていた。
ランネルはそれとなく茂みから出ると、所々血のついたそれを拾って見た。
「愛しい貴方を見ていますずっとずっと片時も離れず貴方は私を見ない振りをするけれどそんな貴方が愛おしい本当は見えているのでしょう何を考えていますかいつも貴方のことを見てて苦しくて苦しくて振り向いてくださいずっとずっとずっと貴方を」
(……あの人を追いかけよう)
ランネルは見なかったことにした。
手紙を捨て、考えを切り替える。
目の前の事態が理解できず別の行動に逃げたのだ。
……何かが起こっている。
しかし、それが何なのかは、今のランネルには解らなかった。
●女の子の怖さ
「もう行ったぞ」
「あ゛あ゛ーうつろな目って疲れる!」
仲間に言われて、包帯まみれのそれは突如として伸びをした。ストーカー・ランネルを精神的に追い詰めるべく演技をしているリサ=メテオール(ka3520)だった。
「役に立てず面目ないでござる……」
「罵倒って難しいですね~」
駆け寄ってきた仲間の中には先程ランネルを罵倒したシオン・アガホ(ka0117)と葵・ミコシバ(ka4010)の姿もあった。
閃姫から罵り方を教わった2人であったが、こればかりは根っからのサドでなければできない。
「奴め、悪い意味で一途でござるな」
ランネルに最初に話しかけた幼い女の子もいる。しかし口調が違った。齢18の女忍者・藤林みほ(ka2804)が変装した姿だった。
「でも足止めはできたんじゃなぃ~? なら上出来だよ?」
「そうだね。……次の目的地は商店街か」
そう言ったはるな(ka3307)とイーディス・ノースハイド(ka2106)はやがて来るべき瞬間にランネルに仕掛ける手筈になっている。
「よし……先に行って状況を確認してこよう!」
ヘザー・スクロヴェーニが意気揚々と輪の中から抜けた。
「私達も急ごう」
「はい。女の子の怖さ……思い知らせてあげましょう」
イーディスの言葉に葵が繋いだ。
……ここに集いし女子七名。
恋する乙女のために、ストーカー討伐作戦を展開中である。
●追うもの追われるもの
公園から出た二人は商店街へと向かっていた。王都第三街区の商店街は土曜日となれば人でごった返しており、熟練ハンターのランネルと言えど思い通りに進むことは出来なかった。
「あ~、やっと見つけたよーオジサン」
ランネルは突如声をかけられた。
「昨日から探してたのにずっと見つからないんだもん。神出鬼没ってカンジぃ~? ミステリアスでカッコいいよね~」
どこから見てもリアルブルー日本で言うところのギャルがランネルに話しかけていた。
「君は?……僕に何か用ですか」
無視しようにもまとわりついて来る。走って逃げるには人が多すぎるので、ランネルは仕方なしに相手をした。
「はるなだよっ。ずっと探してたんだぁ~」
「何故ですか……」
「え~、それを言わせるぅ~? わかるでしょぉ、有名なハンターのランネル・メッテルニヒさん?」
ちっとも解らなかった。
「今日も細川閃姫ちゃんのことを追っかけてたんでしょぉ」
ランネルは息を飲んだ。
自分の行動を気にする人間がいるなどと、思いもよらなかったのだ。
「はるな知ってるんだよ~この間……先週だっけ? 家に忍び込んだんだよねぇ~衣装箱の中に入ったりしてさぁ」
自分の行動を知っている。
「誰だか知りませんが放っておいてくれませんか。僕は急いでいるんです」
「はるなだってば。それに自分だって閃姫ちゃんを放っておかないくせに~?」
「それは僕が彼女を好きだからです」
「でも閃姫ちゃんは他に好きな人いるみたいだよぉ?」
「相手は僕でもいいはずだ。なぜいけないんです」
「わけわかんない……」
人が人を好きになる。
それだけのことだとランネルは信じていた。
しかもこの男は自分を棚に上げている。
はるなは言葉を交わすのが無駄だと感じた。
その時、ランネルの視界に違和感があった。
まただ。
公園にも居た、あの包帯まみれのあれが、人混みに紛れている。
虚ろな瞳で自分を見ている。
(あれか……あれが何らかの能力で攻撃してきているのか……)
空気が重い音を立てて流れるのを感じた。
奇妙な事態だ。
自分がこんなに女子に話しかけられることはあり得ない。
それでいて、一番話しかけて欲しい人からは話しかけられない。
何らかの陰謀に巻き込まれている可能性がある。
「ねー、どうしたのぉ」
ランネルははるなを無視して、包帯まみれの方に人混みをかきわけて進んでいく。
「あ、無視ー? 激おこー」
はるなの言葉を背中で跳ね返して進んでいく。
やがて包帯まみれのそれの姿が明らかに確認できるまで近づいた。
突如、殺気を感じた。
人混みから飛び出した何か。
ランネルは最小限の動きで避けた。
それは忍者だった――藤林みほ18歳。わかりやすい忍者ルックにもかかわらず完全に人混みに紛れ、鞘に収まったままの刀でランネルに不意打ちを繰り出したのだ。
(これも奴の『能力』かッ!)
目的のものには近づけないと見たランネルは跳躍すると、近くにあった帽子屋の看板の上に降り立った。
みほは寸分の無駄のない動作で懐から手裏剣を投げる。ランネルはさらに跳躍して避け、店の壁にカカカッと三枚続け様に手裏剣が突き立った。
突如として巻き起こった騒動に人々がどよめき出す。
「ハンターだ! 全員速やかに避難しろ!」
周辺に潜んでいたヘザーが咄嗟に叫んだ。
仕掛け時だった。
ランネルは常人離れした身のこなしで店の看板や僅かな人混みの間などを飛び移って移動した。
閃姫の向かった方向へと進んでいる。
しかし、その跳躍力が仇となった。
空中で突如起る旋風。
身を取られ、体勢を崩す。
「マジ今日風強すぎってカンジぃ?」
はるなが髪に手を当てて乱れを直す仕草をする。その手には魔術具が握られていた。
そして、中空でランネルの脚にみほの手裏剣が突き刺さる。
着地に失敗し地面に激突するランネルだが、すぐ起き上がる。
近くにいた人々が蜘蛛の子を散らすように逃げた。
人混みが散っていくと――
その中で、包帯まみれのあれが、独り立っているのをランネルは認めた。
包帯巻きはゆっくりと手紙を落とし、髪を振り乱して走り去った。
(こいつが元凶に違いない……!)
ランネルは手紙は捨て置いて、痛む脚にかまわず追った。
まず障害物を排すべき――ランネルの考えは理に叶っていた。理に叶った考え方ができるがゆえに、策にはまってしまったのだと言える。
包帯お化けを追いかけると、そこは人気のない路地裏だった。左右には建物が並んでいる。
強烈なオーラがランネルを出迎えた。
全身を鎧で包み、大型の盾を正面に構え、抜き身の剣を道を塞ぐように携えている。
イーディス・ノースハイド。
体格は華奢ながら、白銀に煌く武具を身に纏ったその偉容は城砦を思わせた。
「今日一日カップルばかりを見て鬱憤が溜まって……違うな……
人々の幸せな暮らしを護るのも騎士の勤めだ」
見た目の立派さはさておき、真っ先に本音が漏れていると突っ込むと同時に、あの金属の具足で踏まれたい、まずランネルが思ったのはそこだった。
その背後から現れるものがある。
例の包帯巻きだ。しかし、挙動が違う。
元気に飛び出してランネルを正面から見据えていた。
まるで普通の人間のような動きだ。
「何かもの凄い異能使いとでも思った? 残念、聖導士でした!」
リサは勢いよく顔の包帯を取り、投げ捨てた。
「えっ」
「なんでそこでこっち見るの!?」
イーディスに意外そうな顔をされた。
「おじさん、ストーカーは犯罪です~」
今度は背後から声がした。
葵だった。こんな口調だが、本気で怒っている。
それだけではなかった。はるな、みほ、ヘザー、シオンの姿もある。
ランネルは自分が追い詰められたことを知った。
●怒れる七人の乙女たち
「あなたのは恋じゃない! 性癖の押し付けだよ!」
リサが叫ぶ。
「そうか。つまり、君達は僕の邪魔をしたいのか……」
ランネルが腰に差していた短剣を抜いた。ヘザーに強襲されたことで普段から武器を持ち歩くようになっていた。
「僕は彼女を純粋に想っている! それの何がいけない!」
そして、迷いの無い言葉を返した。
ランネルは姿勢を低くしリサに向かって駆け出す。
「おっと……ここは通せないな!」
イーディスがその前に立ちはだかる。
全長140cmの盾が、ランネルの剣を防いだ。イーディスは強く踏み込み、相手を押し返す。
イーディスとランネルが離れた一瞬を狙って、シオンがワンドを向ける。
「貴殿! 好きな女性の幸せを無視し自分の気持ちばかりぶつけておっては、心は余計離れていくとは思わんでござるか?!」
シオンは、激昂にも似た言葉を投げかける。
激情を発露させるように虚空に水塊が現れ、ランネルに向けて飛んだ。
シオンはこの距離ならば外さないと確信する。しかし――それは建物の壁に当たって弾け飛んだ。
僅かな挙動で避けてみせたのだ。希少な髪の毛は少し減ったが。
「僕はいつだって彼女のためを思って行動している!」
その上で、シオンに言葉を返す。
不細工な上言ってることは滅茶苦茶だったが、ほんの少しだけ、カッコ良かった。
そしてイーディスからも、シオンからも距離をとった地点に立ち、姿勢を低くして構えた。
「閃姫ちゃん困らせたら、アウトでしょ?!」
はるなも苛立たしげに言うと、早口で詠唱を紡いだ。疾風が刃となってランネルを襲う。
ランネルは身を低くし、風の当たる面積を最小限に抑えることで、損害を最大限に抑えてみせた。
「……僕が、いつ、誰を困らせた?」
そして、まるで自覚のない言葉を返した。
「どうやら……言っても聞かぬようでござるな!」
「どうしようもない男だ……」
みほが刀を手に、距離を詰めた。ヘザーも距離を詰め、ジャマダハルを繰り出す。
さらに背後からはイーディスが盾を構えて肉薄し、退路を断つ。
そしてリサがやや離れた場所から、仲間の武器にホーリーセイバーをかけていった。
ランネルは三人を相手に立ち回る。繰り出される刃をいなし、受け止める。
金属がぶつかり合う音が響き、幾度と無く火花が散った。
善戦するランネルだったが、やがて手数に押され不利になり始めた。
不利を悟ったランネルは跳躍する。イーディスの盾を蹴り、反動で敵から逃れようとする。
空中で回転するランネル。
しかし、着地するよりも早く――
その背中に矢が突き立った。
離れたところから、葵がずっと狙いを定めていたのだ。
反動で頭から地面に叩きつけられるランネル。
「今だ! 人の恋路を邪魔する奴は――」イーディスが吼えた。
「――何に蹴られれば良いんだっけー?」はるなが迷った。
「――乙女に蹴られて地獄に堕ちろ!」そして強引にヘザーが纏めた。
恋する乙女を応援する
怒れる乙女の蹴り――
七人がかりで足の感覚がなくなるくらい踏みまくった。
「笑ってる……」
「キモ~い」
「そういやこいつ罵られて喜ぶんだっけ……」
ともかく、ストーカーは無事お縄となった。
こうして――
何の障害も無くなった閃姫は、無事心置きなく彼氏とのデートを楽しむことができ、七人の乙女達はそれを影ながらそれとなく見守っていた。
「……なんで彼氏、首輪で繋がれてるの?」
「閃姫だから」
「……実はランネルでもお似合いのカップルになれたのでは……」
一行は複雑な思いで二人を見守った。
首輪につけた鎖を持つ閃姫と、繋がれた彼氏(ちなみに美少年だった)。
色々突っ込みどころはあるが、とりあえずとても幸せそうではあったので良しとした。
葵の、今の気持ちを言葉にするなら。
「この世には不思議なことがたくさんあるんですね……」
(おじさんがもう二度とストーカーしませんように)
「本音と建前が逆だぞ葵」ヘザーに突っ込まれた。
「はっ?! ……えへへ、お約束です……」
その日はランネル・メッテルニヒにとっては、入れ込んでいる女が他の男とデートすることを除けばいつも通りの日だったが、いつも通りと言うにはあまりに奇妙な一日となった。
――しかし、今の彼にはその事を知る由もなかった。
ランネルは今日のデートの事を知り、公園の茂みの中に潜んで、閃姫に接触しようと現れるのを待っていた。
その時だった。
「おじさんも、かくれんぼ?」
幼い女の子がしゃがんで覗き込んできた。
「ねえねえ、遊んで?」
女の子は人懐こい笑みを浮かべている。
「僕は今やらなきゃいけないことがあるんです」
ランネルは、つまるところストーカーではあるが――言葉遣いは丁寧だった。
「ほら、あっちに子供達がたくさんいますよ」
そっけない態度をとりつづけると、女の子はしばらく粘ったが、やがて諦めて離れた。
その内閃姫が公園の入り口を通るのが見えた。すぐさま接触しようと、腰を上げた。
――すると、至近距離に誰かがいた。
知らない女が突然立ち上ったランネルに驚いていた。
閃姫と同じように和服を着ている美しい女だったが、エルフだ。
「えーっと……あー……」
視線が泳いでいたが、ランネルに用があるようには見えた。
「こっこの豚野郎でござる!!!」
そして彼女は言った。
「……」
ランネルは疑問を表情に浮かべ、黙って彼女を見た。
……何だろう。
フレーズ自体は彼の好むものだ。
ランネルは罵られると興奮する人間だ。相手が美女ならば余計に。
……しかし、違う。違うのだ。
心から侮蔑していない。ただ言っているという感じだ。
見た目がいいだけに却って拙さが目立つ。
「……Oh my God!」
などと考えていると女が狼狽えた。
「やっぱりMeには無理デース!!!」
乱心である。
「お姉ちゃん!」
もう一人女の子が現れた。やはり和服だ。
狼狽えているほうをなだめると、ランネルに向き直り、こう言った。
「え~と、わたしの靴をなめてください?」
「……」
気まずい沈黙。
二人の女子は、黙って逃げた。
「……何なんだ……」
ランネルは再び閃姫の方を確認する。そして舌打ちした。
どうやら今のやり取りの間に閃姫は行ってしまったらしい。
急いで探さなくてはと思ったが、ふと止まった。
違和感があると気になってしまうのはハンターの性なのだろうか。
公園に、異様な姿があった。
そいつは全身に包帯を巻き、長い髪を乱して、ゾンビのような不自然な動きで彷徨い歩いていた。
見るだけで生理的嫌悪感を催させる様な、そんな類の動きだ。
ランネルと目が合った。
それは暗黒しか映さない虚ろな瞳をして、にたりと笑った。
(明らかに普通じゃない……あれは何だ……?)
思わず目を逸らすと、次の瞬間にはいなくなっていた。代わりに、ぽつんと、それが居た所に折り畳まれた紙が置かれていた。
ランネルはそれとなく茂みから出ると、所々血のついたそれを拾って見た。
「愛しい貴方を見ていますずっとずっと片時も離れず貴方は私を見ない振りをするけれどそんな貴方が愛おしい本当は見えているのでしょう何を考えていますかいつも貴方のことを見てて苦しくて苦しくて振り向いてくださいずっとずっとずっと貴方を」
(……あの人を追いかけよう)
ランネルは見なかったことにした。
手紙を捨て、考えを切り替える。
目の前の事態が理解できず別の行動に逃げたのだ。
……何かが起こっている。
しかし、それが何なのかは、今のランネルには解らなかった。
●女の子の怖さ
「もう行ったぞ」
「あ゛あ゛ーうつろな目って疲れる!」
仲間に言われて、包帯まみれのそれは突如として伸びをした。ストーカー・ランネルを精神的に追い詰めるべく演技をしているリサ=メテオール(ka3520)だった。
「役に立てず面目ないでござる……」
「罵倒って難しいですね~」
駆け寄ってきた仲間の中には先程ランネルを罵倒したシオン・アガホ(ka0117)と葵・ミコシバ(ka4010)の姿もあった。
閃姫から罵り方を教わった2人であったが、こればかりは根っからのサドでなければできない。
「奴め、悪い意味で一途でござるな」
ランネルに最初に話しかけた幼い女の子もいる。しかし口調が違った。齢18の女忍者・藤林みほ(ka2804)が変装した姿だった。
「でも足止めはできたんじゃなぃ~? なら上出来だよ?」
「そうだね。……次の目的地は商店街か」
そう言ったはるな(ka3307)とイーディス・ノースハイド(ka2106)はやがて来るべき瞬間にランネルに仕掛ける手筈になっている。
「よし……先に行って状況を確認してこよう!」
ヘザー・スクロヴェーニが意気揚々と輪の中から抜けた。
「私達も急ごう」
「はい。女の子の怖さ……思い知らせてあげましょう」
イーディスの言葉に葵が繋いだ。
……ここに集いし女子七名。
恋する乙女のために、ストーカー討伐作戦を展開中である。
●追うもの追われるもの
公園から出た二人は商店街へと向かっていた。王都第三街区の商店街は土曜日となれば人でごった返しており、熟練ハンターのランネルと言えど思い通りに進むことは出来なかった。
「あ~、やっと見つけたよーオジサン」
ランネルは突如声をかけられた。
「昨日から探してたのにずっと見つからないんだもん。神出鬼没ってカンジぃ~? ミステリアスでカッコいいよね~」
どこから見てもリアルブルー日本で言うところのギャルがランネルに話しかけていた。
「君は?……僕に何か用ですか」
無視しようにもまとわりついて来る。走って逃げるには人が多すぎるので、ランネルは仕方なしに相手をした。
「はるなだよっ。ずっと探してたんだぁ~」
「何故ですか……」
「え~、それを言わせるぅ~? わかるでしょぉ、有名なハンターのランネル・メッテルニヒさん?」
ちっとも解らなかった。
「今日も細川閃姫ちゃんのことを追っかけてたんでしょぉ」
ランネルは息を飲んだ。
自分の行動を気にする人間がいるなどと、思いもよらなかったのだ。
「はるな知ってるんだよ~この間……先週だっけ? 家に忍び込んだんだよねぇ~衣装箱の中に入ったりしてさぁ」
自分の行動を知っている。
「誰だか知りませんが放っておいてくれませんか。僕は急いでいるんです」
「はるなだってば。それに自分だって閃姫ちゃんを放っておかないくせに~?」
「それは僕が彼女を好きだからです」
「でも閃姫ちゃんは他に好きな人いるみたいだよぉ?」
「相手は僕でもいいはずだ。なぜいけないんです」
「わけわかんない……」
人が人を好きになる。
それだけのことだとランネルは信じていた。
しかもこの男は自分を棚に上げている。
はるなは言葉を交わすのが無駄だと感じた。
その時、ランネルの視界に違和感があった。
まただ。
公園にも居た、あの包帯まみれのあれが、人混みに紛れている。
虚ろな瞳で自分を見ている。
(あれか……あれが何らかの能力で攻撃してきているのか……)
空気が重い音を立てて流れるのを感じた。
奇妙な事態だ。
自分がこんなに女子に話しかけられることはあり得ない。
それでいて、一番話しかけて欲しい人からは話しかけられない。
何らかの陰謀に巻き込まれている可能性がある。
「ねー、どうしたのぉ」
ランネルははるなを無視して、包帯まみれの方に人混みをかきわけて進んでいく。
「あ、無視ー? 激おこー」
はるなの言葉を背中で跳ね返して進んでいく。
やがて包帯まみれのそれの姿が明らかに確認できるまで近づいた。
突如、殺気を感じた。
人混みから飛び出した何か。
ランネルは最小限の動きで避けた。
それは忍者だった――藤林みほ18歳。わかりやすい忍者ルックにもかかわらず完全に人混みに紛れ、鞘に収まったままの刀でランネルに不意打ちを繰り出したのだ。
(これも奴の『能力』かッ!)
目的のものには近づけないと見たランネルは跳躍すると、近くにあった帽子屋の看板の上に降り立った。
みほは寸分の無駄のない動作で懐から手裏剣を投げる。ランネルはさらに跳躍して避け、店の壁にカカカッと三枚続け様に手裏剣が突き立った。
突如として巻き起こった騒動に人々がどよめき出す。
「ハンターだ! 全員速やかに避難しろ!」
周辺に潜んでいたヘザーが咄嗟に叫んだ。
仕掛け時だった。
ランネルは常人離れした身のこなしで店の看板や僅かな人混みの間などを飛び移って移動した。
閃姫の向かった方向へと進んでいる。
しかし、その跳躍力が仇となった。
空中で突如起る旋風。
身を取られ、体勢を崩す。
「マジ今日風強すぎってカンジぃ?」
はるなが髪に手を当てて乱れを直す仕草をする。その手には魔術具が握られていた。
そして、中空でランネルの脚にみほの手裏剣が突き刺さる。
着地に失敗し地面に激突するランネルだが、すぐ起き上がる。
近くにいた人々が蜘蛛の子を散らすように逃げた。
人混みが散っていくと――
その中で、包帯まみれのあれが、独り立っているのをランネルは認めた。
包帯巻きはゆっくりと手紙を落とし、髪を振り乱して走り去った。
(こいつが元凶に違いない……!)
ランネルは手紙は捨て置いて、痛む脚にかまわず追った。
まず障害物を排すべき――ランネルの考えは理に叶っていた。理に叶った考え方ができるがゆえに、策にはまってしまったのだと言える。
包帯お化けを追いかけると、そこは人気のない路地裏だった。左右には建物が並んでいる。
強烈なオーラがランネルを出迎えた。
全身を鎧で包み、大型の盾を正面に構え、抜き身の剣を道を塞ぐように携えている。
イーディス・ノースハイド。
体格は華奢ながら、白銀に煌く武具を身に纏ったその偉容は城砦を思わせた。
「今日一日カップルばかりを見て鬱憤が溜まって……違うな……
人々の幸せな暮らしを護るのも騎士の勤めだ」
見た目の立派さはさておき、真っ先に本音が漏れていると突っ込むと同時に、あの金属の具足で踏まれたい、まずランネルが思ったのはそこだった。
その背後から現れるものがある。
例の包帯巻きだ。しかし、挙動が違う。
元気に飛び出してランネルを正面から見据えていた。
まるで普通の人間のような動きだ。
「何かもの凄い異能使いとでも思った? 残念、聖導士でした!」
リサは勢いよく顔の包帯を取り、投げ捨てた。
「えっ」
「なんでそこでこっち見るの!?」
イーディスに意外そうな顔をされた。
「おじさん、ストーカーは犯罪です~」
今度は背後から声がした。
葵だった。こんな口調だが、本気で怒っている。
それだけではなかった。はるな、みほ、ヘザー、シオンの姿もある。
ランネルは自分が追い詰められたことを知った。
●怒れる七人の乙女たち
「あなたのは恋じゃない! 性癖の押し付けだよ!」
リサが叫ぶ。
「そうか。つまり、君達は僕の邪魔をしたいのか……」
ランネルが腰に差していた短剣を抜いた。ヘザーに強襲されたことで普段から武器を持ち歩くようになっていた。
「僕は彼女を純粋に想っている! それの何がいけない!」
そして、迷いの無い言葉を返した。
ランネルは姿勢を低くしリサに向かって駆け出す。
「おっと……ここは通せないな!」
イーディスがその前に立ちはだかる。
全長140cmの盾が、ランネルの剣を防いだ。イーディスは強く踏み込み、相手を押し返す。
イーディスとランネルが離れた一瞬を狙って、シオンがワンドを向ける。
「貴殿! 好きな女性の幸せを無視し自分の気持ちばかりぶつけておっては、心は余計離れていくとは思わんでござるか?!」
シオンは、激昂にも似た言葉を投げかける。
激情を発露させるように虚空に水塊が現れ、ランネルに向けて飛んだ。
シオンはこの距離ならば外さないと確信する。しかし――それは建物の壁に当たって弾け飛んだ。
僅かな挙動で避けてみせたのだ。希少な髪の毛は少し減ったが。
「僕はいつだって彼女のためを思って行動している!」
その上で、シオンに言葉を返す。
不細工な上言ってることは滅茶苦茶だったが、ほんの少しだけ、カッコ良かった。
そしてイーディスからも、シオンからも距離をとった地点に立ち、姿勢を低くして構えた。
「閃姫ちゃん困らせたら、アウトでしょ?!」
はるなも苛立たしげに言うと、早口で詠唱を紡いだ。疾風が刃となってランネルを襲う。
ランネルは身を低くし、風の当たる面積を最小限に抑えることで、損害を最大限に抑えてみせた。
「……僕が、いつ、誰を困らせた?」
そして、まるで自覚のない言葉を返した。
「どうやら……言っても聞かぬようでござるな!」
「どうしようもない男だ……」
みほが刀を手に、距離を詰めた。ヘザーも距離を詰め、ジャマダハルを繰り出す。
さらに背後からはイーディスが盾を構えて肉薄し、退路を断つ。
そしてリサがやや離れた場所から、仲間の武器にホーリーセイバーをかけていった。
ランネルは三人を相手に立ち回る。繰り出される刃をいなし、受け止める。
金属がぶつかり合う音が響き、幾度と無く火花が散った。
善戦するランネルだったが、やがて手数に押され不利になり始めた。
不利を悟ったランネルは跳躍する。イーディスの盾を蹴り、反動で敵から逃れようとする。
空中で回転するランネル。
しかし、着地するよりも早く――
その背中に矢が突き立った。
離れたところから、葵がずっと狙いを定めていたのだ。
反動で頭から地面に叩きつけられるランネル。
「今だ! 人の恋路を邪魔する奴は――」イーディスが吼えた。
「――何に蹴られれば良いんだっけー?」はるなが迷った。
「――乙女に蹴られて地獄に堕ちろ!」そして強引にヘザーが纏めた。
恋する乙女を応援する
怒れる乙女の蹴り――
七人がかりで足の感覚がなくなるくらい踏みまくった。
「笑ってる……」
「キモ~い」
「そういやこいつ罵られて喜ぶんだっけ……」
ともかく、ストーカーは無事お縄となった。
こうして――
何の障害も無くなった閃姫は、無事心置きなく彼氏とのデートを楽しむことができ、七人の乙女達はそれを影ながらそれとなく見守っていた。
「……なんで彼氏、首輪で繋がれてるの?」
「閃姫だから」
「……実はランネルでもお似合いのカップルになれたのでは……」
一行は複雑な思いで二人を見守った。
首輪につけた鎖を持つ閃姫と、繋がれた彼氏(ちなみに美少年だった)。
色々突っ込みどころはあるが、とりあえずとても幸せそうではあったので良しとした。
葵の、今の気持ちを言葉にするなら。
「この世には不思議なことがたくさんあるんですね……」
(おじさんがもう二度とストーカーしませんように)
「本音と建前が逆だぞ葵」ヘザーに突っ込まれた。
「はっ?! ……えへへ、お約束です……」
依頼結果
依頼成功度 | 普通 |
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面白かった! | 7人 |
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MVP一覧
- 運命の回答者
リサ=メテオール(ka3520)
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/02/08 21:38:16 |
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相談卓 リサ=メテオール(ka3520) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2015/02/13 21:04:09 |
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質問はこちら ヘザー・スクロヴェーニ(kz0061) 人間(クリムゾンウェスト)|26才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2015/02/11 09:09:35 |