ゲスト
(ka0000)
武具のデモンストレーション ※危険手当有
マスター:坂上テンゼン

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~10人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/03/21 19:00
- 完成日
- 2015/03/25 21:55
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
グラズヘイム・シュバリエ――
王国騎士団で採用され、一線の騎士達から支持されている武具のブランド。
それ自体がブランドの価値である。機能性もさることながら、騎士としての気高さを醸し出していると評判だ。
創始者は武具職人スタードリンカー。
彼の造った武具が騎士団に採用されたことをきっかけに、以後も騎士団向けの高品質な品を造るようになった。以後も彼の製品は『グラズヘイム・シュバリエ』として多くの騎士に愛用され続けている。
品質第一を心がけ、様々な戦局に対応できる実践的な対・歪虚用装備を開発している。これらは実用性を重視しており、いわゆる騎士のイメージにふさわしくないものもある。一方で、騎士に必要な各種小道具の製造も行っている。
グラズヘイム・シュバリエはこれからはハンター向けにも武具を売っていく方針を打ち出していた。
とはいえ、今現在ハンター界隈では日本刀やら銃やらが幅をきかせている。そんな中に飛び込んで、存在感をアピールしなければならない。
『性能』『雰囲気』と声高に叫ぶだけでは足りないのだ。
ジェレミア・スタードリンカー……ブランド創始者ウィリアム・スタードリンカーの次男にして営業を任されている男は、そう考えていた。
「なんとか武具の良さを伝える手段は無いものか……」
果たして、ジェレミアは自室で腕組みをしてうろうろ歩き回っていた。
「やはり実際に戦っている所を見て貰うのが一番だな!」
三十週ほど回った所で案が纏まった。
「対歪虚用装備なんだ。それ以外に説得力はない。
となると、歪虚を探さなくては……」
こうして、ジェレミアの『歪虚との実戦デモンストレーション』計画が動き出した。
街角・酒場・etc……情報が得られそうな所にはどこにでも赴いた。
調べれば、結構出てくる。
何しろ王国は実際に歪虚の侵攻を受けている。例えばかの忌まわしき双子・フラベルとクラベルが、転移門への注意を逸らせるために各地で攻撃を仕掛け、そのまま駆逐されなかった歪虚もいたりするのだ。
得られた情報から場所を絞り、ハンターに依頼して実際にどんな歪虚がいるかも調査する。
その上で、各国よりハンターズソサエティ関係者に招待状を書く。
グラズヘイム・シュバリエの武器防具を使って歪虚と戦うという、一大ショーへの誘いだった。
そして実際に戦うのは、ハンターだ。
デモンストレーション当日――
歪虚によって滅ぼされた廃村には、未だに歪虚が闊歩していた。
大気中に微細な塵が舞い、雲もないのに太陽が陰って見える。
雰囲気が出ている、と言えば聞こえはいいのだが、居るだけで生理的にうんざりさせられてくる。
ここがデモンストレーション会場だった。
「皆さん! 本日はようこそご来場下さいました!
これから皆さんにお目にかかっていただくのは、ハンター達と歪虚どもの戦い。そしてハンター達が身に纏う武具こそ、我がグラズヘイム・シュバリエの傑作なのです」
ジェレミアが、廃村の外れで集まった招待客に口上を述べる。招待客は各国のハンターズソサエティ関係者や、一線のハンター達だった。場所が場所なだけに椅子を用意することができず立ち見であるが、興味は惹けているらしかった。
「ご覧ください!」
ジェレミアが指し示す方向に立つものこそ、グラズヘイム・シュバリエの目玉商品となる武具を纏ったハンターだった。
銀色に煌めく全身鎧。『ソリッドハート』――堅牢な心と名付けられたそれを身に纏い、手には騎士剣『ローレル・ライン』の白刃が輝いている。
賓客の間から、どよめきとため息が漏れた。
その流麗なフォルムは高貴でありながらも力強く、まさにグラズヘイム王国を護る騎士に相応しいとともに、歪虚と戦い人類を護るハンターの姿にも似つかわしいものであった。
「それではみなさん……かれらを惜しみない拍手とエールで、戦いの場へと送り出して下さい!」
招待客の間から歓声と拍手が巻き起こった。
ハンター達は廃村へと進んでいく。
それに対し、牙を剥く歪虚達。
いずれも野の獣や家畜を原型とした雑魔だった。
程なくして戦闘は開始され、それは予定通り進んだ。
戦いは終始ハンター側が歪虚を圧倒し、雑魔どもはローレル・ラインの刃にかかって、いとも簡単に倒されていった。
その時だった。
突如、横から注意を促す声が聞こえた。
見れば黒い影が、いくつか廃屋の影から姿を現し始めていた。
ハンターには、それがオークであることにすぐ気づいた。
妖魔――人型の歪虚の一種として知られるオークは力は強く、恐れを知らず、知性は高く手先も器用で、攻城兵器を作成した事すらある。中でも抜きん出た存在がハイオークと呼ばれるが、悪い事に、ハイオークの姿もあった。
招待客の中にも声をあげるものがいた。
どうやら、ハンター達の前方だけでなく、周辺にも現れたようだ。
危険度的に見て、依頼を受ける時に説明されてしかるべき相手だ。
しかし、ハンター達が受けた説明にはなかった。
ジェレミアも同じ気持ちだった。
そんなもの調査を依頼したハンターの報告には無かった。
デモンストレーションをしているハンターとは別のハンターであるが、彼らがミスを犯したのか、それとも敵の方が上手だったのか。
とにかく、覚悟を決める必要があった。
(神よ……ハンター達にご加護を!)
そして、ハンターに希望を託した。
リプレイ本文
●疾走するメタリックシルバー
招待客とハンター達を包囲するようにオークたちが現れたその時、ハンターの集団から数人が離れた。うち三人は銀色に煌く鎧を纏い、その重厚さを苦にもせず駆け……それらは招待客の集団を守るように、オークの行く手を阻んだ!
「ひゃっほう!! まだこいつが使えるぜぇ!」
うち一人、グオルムール・クロム(ka0285)は新たな敵との遭遇を喜んで迎える。というのも、グラズヘイム・シュバリエの提供する剣と鎧の性能は、鍛冶職人たる彼を興奮させるに足りるものであったからだ。
そして招待客の集団を掻き分け、ヴァルトル=カッパー(ka0840)が別のオークの集団の前に立ちはだかった。
「あの鎧は守り通す!」
なにやら矛盾した事を口走り気合を入れる。彼は件の武具は纏っていないが、武具職人であり、興味は人一倍あった。
もう一つのオーク集団には、他の二人よりやや遅れてレオン・イスルギ(ka3168)が立ちはだかった。
「む、ぅ……全身甲冑固めとなりますと、聊か動きづらいものですね……」
彼女も評価対象の武具を装備している。重装備には慣れないレオンだったが、それでも敵の群れに立ち向かう。
「ここを通りたくば、私の屍を越えていくことです」
さらに、レオンが対峙する集団に仕掛けるものがあった。エニグマ(ka3688)だ。1mに満たない小柄な彼だったが、ハンターの多様性を鑑みて作られた、身体に合うソリッドハートを身に纏っている。
「ぐま。オレサマ見世物になるのは慣れてるんよ」
疾影士らしい俊敏な動きに合わせて、ローレル・ラインが幾度も閃いた。
一方で招待客の方に接触した者がいた。鵤(ka3319)だった。補佐で参加しているので件の武具は装備していない。彼の騎乗する、王国産の名馬ゴースロンは誰よりも迅速な行動を可能にして見せた。
降りて集団に呼びかけた。
「はい注目。ちっとばかし予定より敵が多くなっちまった。だが大丈夫だ、落ち着いて欲しい。まずはここで待っててくれ。これから向こうの敵を片付けるから、そっちへ避難してくれるとありがたいな」
招待客は様々な反応を見せたが、彼の話は的確であり説得力があった。
依頼人ジェレミアは、できることなら全てデモンストレーションで治めたいと思っていた。しかし流石に甘すぎると悟ったのか、口を開いた。
「皆さん、ハンターの指示に従ってください!」
鵤の指示は的確だったので、ジェレミアにも補足する事は無かった。
そして、鵤の示した方角には最も戦力が集中されていた。
「各個撃破するぞ、この剣の威力と鎧の堅牢さを見せてやろう」
ゴースロンに跨り、気炎を吐くミリア・コーネリウス(ka1287)。
「ああ……金属いっぱい……
し あ わ せ」
剣の刃や味方の鎧を眺めては悦に浸るサーティカ・ソウディアム(ka0032)。
いずれも例の剣と鎧を装備している。が、微妙に関心の方向性が違う。
「こいつを試すいい機会っちゃいい機会だが……いいのかね?」
シュタール・フラム(ka0024)は手にした試作型魔導銃「狂乱せしアルコル」を見つつ言った。余談だがこれもグラズヘイム王国の「第六商会」製の武器である。
「まあ、『銃と比されても、なおも輝くグラズヘイム・シュバリエの武具』をうまく演出しようじゃないか」
そう言ったテリア・テルノード(ka4423)の手にもライフルが収まっている。リアルブルー製のペネトレイトC26だ。
(それにしても彼は何で布を巻いているのだろうね?)
テリアはシュタールが、身体の上から布を巻きつけているのが気になっていた。
そんな中、レオナルド・テイナー(ka4157)ひとりが前に出る。
「おい、きみ――」
テリアが静止しようとする中、レオナルドは敵に対して、左手を胸に、右手を背にして優雅に一礼して見せ、こう言った。
「さあ始めましょう、楽しいお祭りを」
格好の的と思われたのか、オーク達はレオナルドに対して矢を放ってきた。
レオナルドは何処からか手に似た形の魔術具を取り出し詠唱を紡いだ。すると、背中から四枚の翼が生え、怪しい風が巻き起こって飛んでくる矢をすべて薙ぎ払ったではないか。
「攻撃こそ最大の防御! 行くぞ!」
ミリアが剣を掲げ、手綱を引いた。馬が身体を起こして嘶く。
それは攻撃の開始を告げた。
●断頭台への行進
「とくと味わえ!」
シュタールが勇んでアルコルの引き金を引くと、その瞬間、オークの腕が根こそぎ無くなった。
「あれ……」
感想を言えば、重いし精度も悪い。狙ったのは頭だった。
しかし、威力には目を見張るものがある。
「せいぜい雑魚を掃除するとしようか」
テリアも負けじとペネトレイトC26の引き金を引く。狙うのはハイオークの周りにいるオークどもだ。
「その剣いっぱい振るって!」
前に出たサーティカは恋人に向けるような視線で、同じく前に出たミリアに運動強化を施す(ただし視線は剣に向けられていた)。
「わかった!」
馬上のミリアはそれに応えるように、より機敏になった動きでローレル・ラインを振るった。
ごくわずかな抵抗しか感じさせずに、オークの首が落ちた。
「ステキっ!」「凄い……!」
女二人に嬌声をあげさせるローレル・ラインという剣。
その威力にゴースロンの突撃力が加わり、ソリッドハートの守りも得て、ミリアはまさにこの時、戦場の華だった。サーティカも負けじと攻撃に出て、武具の性能を示した。
一方、レオナルドはその場所から姿を消していた。
違う方面で別の集団を食い止めるヴァルトルの救援に向かったのだ。
ヴァルトルはというと、一人をエレクトリックショックで麻痺させたはいいが、さすがに多勢に無勢だった。
そこに風の刃と同時にレオナルドが現れる。
「お・ま・た・せ」
敵の一体が傷を負い、ヴァルトルへの攻撃が一時止んだ。
「テイナー殿、感謝するぞ!」
ヴァルトルは並んだレオナルドを横目で見ながら言った。
「あたし達で守ってあげなくっちゃ。とってもとっても弱い子達だから」
レオナルドが言ったのは招待客の事だ。まだ元の場所に固まっている。
確かにレオナルドの言う通り戦う力のない者もいて、少なからず怯えている者もいた。
だが大人しくない者も中にはおり、一人が武器を手に敵に向かおうとしていた。
「待ってられるかぁ! 俺がやってやる!」
彼はハンターだった。
そんな彼の頬を光線が掠めた。
「邪魔しちゃ駄目だろ?」
レオナルドが凄まじい形相で睨んでいた。化粧が迫力を増している。手には魔術具が。本気だ。
いきり立った男は舌打ちをして一歩引いた。頬が熱い。マジックアローが掠めただけだが火傷くらいはしたか。
「そう、いい子ね」
レオナルドは優しく微笑んだ。
鵤は招待客に告げることだけ告げた後は、グオルムールの方へと向かっていた。
「はい、お疲れちゃん。がんばって頂戴よ?」
「ん? おお、任せとけ! 叩き斬るだけだ!」
鵤が攻性強化をかけたのだが、グオルムールは特に気にした様子も無く、敵集団に切り込んでいく。
「うん、死なない程度に狙われるのがいいんだろーねえ。おっさんはここから応援させてもらおうかね?」
鵤はグオルムールから少し下がった位置に陣取った。
「けど……ホントに死なないでよ?」
対するのはハイオークを含めた六体である。
その動きは統率が取れており、三体が一斉にグオルムールに武器を突き立てた。
「ぬぅっ……!」
「……おい?」
鵤が一瞬心配そうな顔を見せる。
「……効くかぁぁぁ!」
グオルムールは両腕でオークの武器を振り払った。
鍛冶職人である彼は鎧の厚い部分を熟知しており、そこで攻撃を受けたのだ。
「はっはっは! このソリッドハートの前にはお前達の攻撃など、蟷螂の斧も同然よ!」
そう言って鎧に覆われた胸を叩く。
この上なく頼もしい音がした。
別の集団とやり合うレオンの周囲には、オークどもが倒れ伏していた。スリープクラウドの詠唱に成功し、眠らせたのである。
「ケッ。一方的にボコんのはつまんねー」
戦っていた敵が眠ってしまったエニグマは、攻撃の手を一時休めてレオンを見た。
「ぐま。どうやら奴も同じらしーな」
レオンも眠った敵に攻撃を加えようとしない。
闘いは愉しむもの、と考えているエニグマは、別の敵へと向かって転進した。
ゴースロンの蹄が眠っているオークの頭を踏み潰した。
ミリアだ。最初の敵集団が片付いたので、レオンの救援に来たのだった。
「よく眠っているな……今のうちに!」
ミリアは眠っている敵に攻撃を仕掛け始めた。
レオンはこれを見て複雑な気持ちになった。動けない敵に攻撃することは矜恃に障ると考えていた。しかし客観的に見れば、敵を確実に減らすミリアの行いは正しい。眠りの魔法は何かの弾みで解けることがある。何より自分の矜持を他人に押し付けるつもりもない。
だからと言って自分が間違っているとは思えなかった。一時の勝利が、矜恃を傷つけてまで得るものだろうか。
見ればミリアの他にテリアも来ていた。
「テリア様。ここは二人いれば充分かと存じます。私は別の戦場に参ります」
「え……ん、わかった……あまり無理してはいけないよ。ああ、補助だけさせて」
テリアは別れ際に、レオンにプロテクションの加護を与える。
レオンは礼を言い、他の敵を求めてその場を後にした。
敵集団のうち一つは壊滅したものの、少数で多数を足止めするのにはある程度の限界があるらしく、招待客にいくらかのオークの接触を許していた。
ジェレミアは戦闘に関しては素人だ。ゆえにオークが迫って来たのに対して、対処する術が思いつかなかったのも無理はない。
オークが戦斧を振りぬこうとしていた。
そこに割って入ったものがある。
シュタールだった。無防備な姿勢でオークの連撃を受ける。
纏っていた布が襤褸切れになって落ちた。
「さすがは俺の鎧だ。何とも無いぜ」
だがシュタールの体勢は崩れておらず、布の下から現れた姿は、
「その鎧、ソリッドハート! しかもこれは……」
ジェレミアが声を上げる。新品のソリッドハートと違う。かなりの改造がなされているのがわかった。
「いや、俺のは自前でかなり手を入れちまってるからな。公正な評価にならないかもしれないだろ?」
それが隠した理由だ。
「いえ……評価うんぬんよりも……私は感激しています!」
ハンターが既に自前のソリッドハートを着ており、しかも改造がなされており、その上自分の命を救ってくれたとは。
「感激するのはあとだ。逃げられるのなら早目によろしくな」
「はっ……はい!」
「殿をつとめるよ! 早くこっちへ!」
サーティカが声をかける。その方面の敵は全員倒し終わっていた。
ジェレミア達と招待客は誘導に従い、移動していく。
●乱戦突入
残るのはハンター達とオーク達だったが、もはや集団に関係なく、乱戦となっていた。
「うおぉぉお! その剣で切られるのは俺の役目である! 邪魔するでない!」
雄叫びをあげ突進するヴァルトルが獣の顎のようなナックルで、オークの頭蓋を砕いた。
「あらやだ聞きました?! 今なんて言ったのかしら?!
カオスですわァァーーー!!」
レオナルドが魔法の風を起こし、敵を攻撃する。そのたびに髪や服が風に激しく靡いた。
「はぁー、濃いメンツだねぇ。ねぇグオルムールくん?」
「ドワーフ+鉄壁の鎧+名剣=無敵ィーッ!」
「眼中に無しかッ」
鵤が防御障壁をかけるのだが、グオルムールの目には敵しか映っていなかった。
「八ツ原御流天津交法が剣士、レオン・イスルギ……参ります!」
乱戦の中、ハイオークと対峙したレオンは、剣を構え名乗りをあげた。
「粋がりおって! その首かき切ってくれるわァ!!」
ハイオークが応え、両手に構えた蛮刀を振りかぶった。
(言葉を話すのですね)
やや意外に思いながら体裁きで袈裟懸けの一撃をいなすと、回避の動作からそのまま攻撃の動作へと移る。
「八ツ原御流天津交法――“破軍”」
大上段からの一撃を、ハイオークの頭部に打ち下ろす。
レオンのローレル・ラインは兜すら切り裂いたが、頭蓋骨で止まった。
ハイオークは血を流しながらも蛮刀を振るう。
その豪腕は剣で受け止めたレオンをよろめかせ、後退せしめた。
だが、次の攻撃には移れない。
「こんなザコのお相手はお嫌かしらァ?」
横から歩み寄ったエニグマがハイオークの脚に一撃を入れたのだ。
「ウガァァァ! 小癪な!」
ハイオークの振るった一撃でエニグマが宙を舞った。
すぐさま反撃に移ろうとするレオンだったが、
「そのまま! 動くな!」
「えっ?!」
反射的に停止する。
轟音と共に衝撃がハイオークの胸を貫き、膝を折って崩れ落ちた。
レオンが振り向くと、シュタールが銃を構えていた。
「いやー、疲れる狙撃だぜ……」
アルコルは狙撃に特化した銃。
重く精度も悪いが、狙いが決まれば……結果は見ての通りだ。
アルコル……『凶兆の星』の名は伊達ではなかった。
(剣の道、未だ遠し……修練あるのみ!)
レオンは己の未熟さを感じ、さらなる精進を固く誓った。
乱戦ともなれば多彩な戦い方を身に着けたハンター達に分があった。オーク達は次々と倒れていく。
「忙しいのは仕方が無いことだけどね……」
テリアが懸命にヒールを飛ばしていた。
評価対象の武具を纏っている五人は傷を負う事が評価に繋がるということもあり、積極的に敵の攻撃を受けている。あと、ヴァルトルが結構評価に関係ない傷を負っている。
聖導師求む。
という状況だが、一人でもかなり違った。
「キミ達に欠けているものは――金属光沢だ!」
粗末か古めかしい武具しかつけていないオークに対し、サーティカが容赦の無い機導砲を見舞う。
さらに、ミリアが馬上からローレル・ラインを一閃させ、また一人オークが倒れた。
「次で終わりだ!」
その目は、残り一人となったハイオークを見据える。
「こいつはもらったッ!」
グオルムールが、獣のごとく躍りかかる。
攻めの構えから、踏み込んでの渾身の一撃。
ローレル・ラインが血を求め光った。
刃はハイオークの肩に深く食い込み、狂おしく鮮血を噴き出させた。
ハイオークは痛みに顔を歪ませ数歩後ずさると、このままでは敵わないと見たのか、背中を向けて駆け出した。
その背中に……
無慈悲な銃弾が撃ち込まれ、ハイオークは倒れた。
「マギア経典第2章32節――『汝右の頬を打たれたら、左の拳で倍返し』」
襲撃者に贈られたのは、テリアの信じる神の教えだった。
ペネトレイトC26の銃口から、ゆらめく硝煙が上がった。
●宴の終わり
「お疲れ様ファイアーッ☆」
レオナルドが天に向かってマジックアローを放つ。流星の如く尾を引いて天へと登る光が宴の終焉を告げていた。
ジェレミアが招待客にお詫びの言葉や謝辞、締めの言葉を述べている間、ハンター達は思い思いの時を過ごしていた。
「ぐーまぐーまぐー」
「はぁ……いいなぁ」
エニグマは蜂蜜を舐めながらごろごろしていた。傷は負っているが、あまり気にしていないようだ。
サーティカがいいなぁと言ったのはエニグマでも蜂蜜でもなく、纏っているソリッドハートのことなのは言うまでもない。
そしてヴァルトルとグオルムールは何か目配せをしたかと思うと、不自然に距離を詰めていた。
「おおっとぉ! 転んでしまったであぐわぁっ!」
「あれー? 躓いて不幸にも仲間を斬っちゃったぞー?」
「お前ら何をやってるんだあああああ!?」
ヴァルトルが、グオルムールのローレル・ラインに貫かれた。
思わず叫んだミリアにも誰の目にも、ヴァルトルが自分から剣に突っ込んだように見えた。
「ぐはぁ……す、すごく、キレる、である……」
その証拠に、ヴァルトルは気持ちの良い笑顔で倒れながらサムズアップしているではないか。
「一歩間違えば重体行きだよ……」
テリアも両手を上げた。
「さすがはローレル・ライン……さすがはグラズヘイム・シュバリエ……!」
「感心してる場合か?!」
ミリアが叫んだ。すごく血が出ている。
招待客は送迎の馬車に乗って帰途に着き、ジェレミアとスタッフ、そしてハンター達だけがその場に残された。
「この度は、真に申し訳ありませんでしたっ……!」
ジェレミアが誠心誠意、頭を下げる。
「そして、無事終了させていただき、ありがとうございました。
皆さんのおかげで、怪我人を一人も出す事もなく、デモンストレーションを終えることができました」
ジェレミアはここから、熱を帯びた口調になった。
「しかし……皆さんの戦いぶり……感動しました。
皆さんのような強いハンターに、わたくしどもの武具を使っていただけましたら、この上ない喜びでございます。
……お世辞などではなく!
このジェレミア・スタードリンカー、心からそう思っております。
また、強さもさることながら、不測の事態に対応できる柔軟さ……招待客に対してのフォロー……わたくしも見習わせて頂きたいと思わされました。
此度は本当に、忘れられない日となったようです」
そして姿勢を正して、幾多の商売人としての経験が刻まれた顔に最高の笑顔を浮かべて言った。
「これからもグラズヘイム・シュバリエを、よろしくお願いいたします!」
招待客とハンター達を包囲するようにオークたちが現れたその時、ハンターの集団から数人が離れた。うち三人は銀色に煌く鎧を纏い、その重厚さを苦にもせず駆け……それらは招待客の集団を守るように、オークの行く手を阻んだ!
「ひゃっほう!! まだこいつが使えるぜぇ!」
うち一人、グオルムール・クロム(ka0285)は新たな敵との遭遇を喜んで迎える。というのも、グラズヘイム・シュバリエの提供する剣と鎧の性能は、鍛冶職人たる彼を興奮させるに足りるものであったからだ。
そして招待客の集団を掻き分け、ヴァルトル=カッパー(ka0840)が別のオークの集団の前に立ちはだかった。
「あの鎧は守り通す!」
なにやら矛盾した事を口走り気合を入れる。彼は件の武具は纏っていないが、武具職人であり、興味は人一倍あった。
もう一つのオーク集団には、他の二人よりやや遅れてレオン・イスルギ(ka3168)が立ちはだかった。
「む、ぅ……全身甲冑固めとなりますと、聊か動きづらいものですね……」
彼女も評価対象の武具を装備している。重装備には慣れないレオンだったが、それでも敵の群れに立ち向かう。
「ここを通りたくば、私の屍を越えていくことです」
さらに、レオンが対峙する集団に仕掛けるものがあった。エニグマ(ka3688)だ。1mに満たない小柄な彼だったが、ハンターの多様性を鑑みて作られた、身体に合うソリッドハートを身に纏っている。
「ぐま。オレサマ見世物になるのは慣れてるんよ」
疾影士らしい俊敏な動きに合わせて、ローレル・ラインが幾度も閃いた。
一方で招待客の方に接触した者がいた。鵤(ka3319)だった。補佐で参加しているので件の武具は装備していない。彼の騎乗する、王国産の名馬ゴースロンは誰よりも迅速な行動を可能にして見せた。
降りて集団に呼びかけた。
「はい注目。ちっとばかし予定より敵が多くなっちまった。だが大丈夫だ、落ち着いて欲しい。まずはここで待っててくれ。これから向こうの敵を片付けるから、そっちへ避難してくれるとありがたいな」
招待客は様々な反応を見せたが、彼の話は的確であり説得力があった。
依頼人ジェレミアは、できることなら全てデモンストレーションで治めたいと思っていた。しかし流石に甘すぎると悟ったのか、口を開いた。
「皆さん、ハンターの指示に従ってください!」
鵤の指示は的確だったので、ジェレミアにも補足する事は無かった。
そして、鵤の示した方角には最も戦力が集中されていた。
「各個撃破するぞ、この剣の威力と鎧の堅牢さを見せてやろう」
ゴースロンに跨り、気炎を吐くミリア・コーネリウス(ka1287)。
「ああ……金属いっぱい……
し あ わ せ」
剣の刃や味方の鎧を眺めては悦に浸るサーティカ・ソウディアム(ka0032)。
いずれも例の剣と鎧を装備している。が、微妙に関心の方向性が違う。
「こいつを試すいい機会っちゃいい機会だが……いいのかね?」
シュタール・フラム(ka0024)は手にした試作型魔導銃「狂乱せしアルコル」を見つつ言った。余談だがこれもグラズヘイム王国の「第六商会」製の武器である。
「まあ、『銃と比されても、なおも輝くグラズヘイム・シュバリエの武具』をうまく演出しようじゃないか」
そう言ったテリア・テルノード(ka4423)の手にもライフルが収まっている。リアルブルー製のペネトレイトC26だ。
(それにしても彼は何で布を巻いているのだろうね?)
テリアはシュタールが、身体の上から布を巻きつけているのが気になっていた。
そんな中、レオナルド・テイナー(ka4157)ひとりが前に出る。
「おい、きみ――」
テリアが静止しようとする中、レオナルドは敵に対して、左手を胸に、右手を背にして優雅に一礼して見せ、こう言った。
「さあ始めましょう、楽しいお祭りを」
格好の的と思われたのか、オーク達はレオナルドに対して矢を放ってきた。
レオナルドは何処からか手に似た形の魔術具を取り出し詠唱を紡いだ。すると、背中から四枚の翼が生え、怪しい風が巻き起こって飛んでくる矢をすべて薙ぎ払ったではないか。
「攻撃こそ最大の防御! 行くぞ!」
ミリアが剣を掲げ、手綱を引いた。馬が身体を起こして嘶く。
それは攻撃の開始を告げた。
●断頭台への行進
「とくと味わえ!」
シュタールが勇んでアルコルの引き金を引くと、その瞬間、オークの腕が根こそぎ無くなった。
「あれ……」
感想を言えば、重いし精度も悪い。狙ったのは頭だった。
しかし、威力には目を見張るものがある。
「せいぜい雑魚を掃除するとしようか」
テリアも負けじとペネトレイトC26の引き金を引く。狙うのはハイオークの周りにいるオークどもだ。
「その剣いっぱい振るって!」
前に出たサーティカは恋人に向けるような視線で、同じく前に出たミリアに運動強化を施す(ただし視線は剣に向けられていた)。
「わかった!」
馬上のミリアはそれに応えるように、より機敏になった動きでローレル・ラインを振るった。
ごくわずかな抵抗しか感じさせずに、オークの首が落ちた。
「ステキっ!」「凄い……!」
女二人に嬌声をあげさせるローレル・ラインという剣。
その威力にゴースロンの突撃力が加わり、ソリッドハートの守りも得て、ミリアはまさにこの時、戦場の華だった。サーティカも負けじと攻撃に出て、武具の性能を示した。
一方、レオナルドはその場所から姿を消していた。
違う方面で別の集団を食い止めるヴァルトルの救援に向かったのだ。
ヴァルトルはというと、一人をエレクトリックショックで麻痺させたはいいが、さすがに多勢に無勢だった。
そこに風の刃と同時にレオナルドが現れる。
「お・ま・た・せ」
敵の一体が傷を負い、ヴァルトルへの攻撃が一時止んだ。
「テイナー殿、感謝するぞ!」
ヴァルトルは並んだレオナルドを横目で見ながら言った。
「あたし達で守ってあげなくっちゃ。とってもとっても弱い子達だから」
レオナルドが言ったのは招待客の事だ。まだ元の場所に固まっている。
確かにレオナルドの言う通り戦う力のない者もいて、少なからず怯えている者もいた。
だが大人しくない者も中にはおり、一人が武器を手に敵に向かおうとしていた。
「待ってられるかぁ! 俺がやってやる!」
彼はハンターだった。
そんな彼の頬を光線が掠めた。
「邪魔しちゃ駄目だろ?」
レオナルドが凄まじい形相で睨んでいた。化粧が迫力を増している。手には魔術具が。本気だ。
いきり立った男は舌打ちをして一歩引いた。頬が熱い。マジックアローが掠めただけだが火傷くらいはしたか。
「そう、いい子ね」
レオナルドは優しく微笑んだ。
鵤は招待客に告げることだけ告げた後は、グオルムールの方へと向かっていた。
「はい、お疲れちゃん。がんばって頂戴よ?」
「ん? おお、任せとけ! 叩き斬るだけだ!」
鵤が攻性強化をかけたのだが、グオルムールは特に気にした様子も無く、敵集団に切り込んでいく。
「うん、死なない程度に狙われるのがいいんだろーねえ。おっさんはここから応援させてもらおうかね?」
鵤はグオルムールから少し下がった位置に陣取った。
「けど……ホントに死なないでよ?」
対するのはハイオークを含めた六体である。
その動きは統率が取れており、三体が一斉にグオルムールに武器を突き立てた。
「ぬぅっ……!」
「……おい?」
鵤が一瞬心配そうな顔を見せる。
「……効くかぁぁぁ!」
グオルムールは両腕でオークの武器を振り払った。
鍛冶職人である彼は鎧の厚い部分を熟知しており、そこで攻撃を受けたのだ。
「はっはっは! このソリッドハートの前にはお前達の攻撃など、蟷螂の斧も同然よ!」
そう言って鎧に覆われた胸を叩く。
この上なく頼もしい音がした。
別の集団とやり合うレオンの周囲には、オークどもが倒れ伏していた。スリープクラウドの詠唱に成功し、眠らせたのである。
「ケッ。一方的にボコんのはつまんねー」
戦っていた敵が眠ってしまったエニグマは、攻撃の手を一時休めてレオンを見た。
「ぐま。どうやら奴も同じらしーな」
レオンも眠った敵に攻撃を加えようとしない。
闘いは愉しむもの、と考えているエニグマは、別の敵へと向かって転進した。
ゴースロンの蹄が眠っているオークの頭を踏み潰した。
ミリアだ。最初の敵集団が片付いたので、レオンの救援に来たのだった。
「よく眠っているな……今のうちに!」
ミリアは眠っている敵に攻撃を仕掛け始めた。
レオンはこれを見て複雑な気持ちになった。動けない敵に攻撃することは矜恃に障ると考えていた。しかし客観的に見れば、敵を確実に減らすミリアの行いは正しい。眠りの魔法は何かの弾みで解けることがある。何より自分の矜持を他人に押し付けるつもりもない。
だからと言って自分が間違っているとは思えなかった。一時の勝利が、矜恃を傷つけてまで得るものだろうか。
見ればミリアの他にテリアも来ていた。
「テリア様。ここは二人いれば充分かと存じます。私は別の戦場に参ります」
「え……ん、わかった……あまり無理してはいけないよ。ああ、補助だけさせて」
テリアは別れ際に、レオンにプロテクションの加護を与える。
レオンは礼を言い、他の敵を求めてその場を後にした。
敵集団のうち一つは壊滅したものの、少数で多数を足止めするのにはある程度の限界があるらしく、招待客にいくらかのオークの接触を許していた。
ジェレミアは戦闘に関しては素人だ。ゆえにオークが迫って来たのに対して、対処する術が思いつかなかったのも無理はない。
オークが戦斧を振りぬこうとしていた。
そこに割って入ったものがある。
シュタールだった。無防備な姿勢でオークの連撃を受ける。
纏っていた布が襤褸切れになって落ちた。
「さすがは俺の鎧だ。何とも無いぜ」
だがシュタールの体勢は崩れておらず、布の下から現れた姿は、
「その鎧、ソリッドハート! しかもこれは……」
ジェレミアが声を上げる。新品のソリッドハートと違う。かなりの改造がなされているのがわかった。
「いや、俺のは自前でかなり手を入れちまってるからな。公正な評価にならないかもしれないだろ?」
それが隠した理由だ。
「いえ……評価うんぬんよりも……私は感激しています!」
ハンターが既に自前のソリッドハートを着ており、しかも改造がなされており、その上自分の命を救ってくれたとは。
「感激するのはあとだ。逃げられるのなら早目によろしくな」
「はっ……はい!」
「殿をつとめるよ! 早くこっちへ!」
サーティカが声をかける。その方面の敵は全員倒し終わっていた。
ジェレミア達と招待客は誘導に従い、移動していく。
●乱戦突入
残るのはハンター達とオーク達だったが、もはや集団に関係なく、乱戦となっていた。
「うおぉぉお! その剣で切られるのは俺の役目である! 邪魔するでない!」
雄叫びをあげ突進するヴァルトルが獣の顎のようなナックルで、オークの頭蓋を砕いた。
「あらやだ聞きました?! 今なんて言ったのかしら?!
カオスですわァァーーー!!」
レオナルドが魔法の風を起こし、敵を攻撃する。そのたびに髪や服が風に激しく靡いた。
「はぁー、濃いメンツだねぇ。ねぇグオルムールくん?」
「ドワーフ+鉄壁の鎧+名剣=無敵ィーッ!」
「眼中に無しかッ」
鵤が防御障壁をかけるのだが、グオルムールの目には敵しか映っていなかった。
「八ツ原御流天津交法が剣士、レオン・イスルギ……参ります!」
乱戦の中、ハイオークと対峙したレオンは、剣を構え名乗りをあげた。
「粋がりおって! その首かき切ってくれるわァ!!」
ハイオークが応え、両手に構えた蛮刀を振りかぶった。
(言葉を話すのですね)
やや意外に思いながら体裁きで袈裟懸けの一撃をいなすと、回避の動作からそのまま攻撃の動作へと移る。
「八ツ原御流天津交法――“破軍”」
大上段からの一撃を、ハイオークの頭部に打ち下ろす。
レオンのローレル・ラインは兜すら切り裂いたが、頭蓋骨で止まった。
ハイオークは血を流しながらも蛮刀を振るう。
その豪腕は剣で受け止めたレオンをよろめかせ、後退せしめた。
だが、次の攻撃には移れない。
「こんなザコのお相手はお嫌かしらァ?」
横から歩み寄ったエニグマがハイオークの脚に一撃を入れたのだ。
「ウガァァァ! 小癪な!」
ハイオークの振るった一撃でエニグマが宙を舞った。
すぐさま反撃に移ろうとするレオンだったが、
「そのまま! 動くな!」
「えっ?!」
反射的に停止する。
轟音と共に衝撃がハイオークの胸を貫き、膝を折って崩れ落ちた。
レオンが振り向くと、シュタールが銃を構えていた。
「いやー、疲れる狙撃だぜ……」
アルコルは狙撃に特化した銃。
重く精度も悪いが、狙いが決まれば……結果は見ての通りだ。
アルコル……『凶兆の星』の名は伊達ではなかった。
(剣の道、未だ遠し……修練あるのみ!)
レオンは己の未熟さを感じ、さらなる精進を固く誓った。
乱戦ともなれば多彩な戦い方を身に着けたハンター達に分があった。オーク達は次々と倒れていく。
「忙しいのは仕方が無いことだけどね……」
テリアが懸命にヒールを飛ばしていた。
評価対象の武具を纏っている五人は傷を負う事が評価に繋がるということもあり、積極的に敵の攻撃を受けている。あと、ヴァルトルが結構評価に関係ない傷を負っている。
聖導師求む。
という状況だが、一人でもかなり違った。
「キミ達に欠けているものは――金属光沢だ!」
粗末か古めかしい武具しかつけていないオークに対し、サーティカが容赦の無い機導砲を見舞う。
さらに、ミリアが馬上からローレル・ラインを一閃させ、また一人オークが倒れた。
「次で終わりだ!」
その目は、残り一人となったハイオークを見据える。
「こいつはもらったッ!」
グオルムールが、獣のごとく躍りかかる。
攻めの構えから、踏み込んでの渾身の一撃。
ローレル・ラインが血を求め光った。
刃はハイオークの肩に深く食い込み、狂おしく鮮血を噴き出させた。
ハイオークは痛みに顔を歪ませ数歩後ずさると、このままでは敵わないと見たのか、背中を向けて駆け出した。
その背中に……
無慈悲な銃弾が撃ち込まれ、ハイオークは倒れた。
「マギア経典第2章32節――『汝右の頬を打たれたら、左の拳で倍返し』」
襲撃者に贈られたのは、テリアの信じる神の教えだった。
ペネトレイトC26の銃口から、ゆらめく硝煙が上がった。
●宴の終わり
「お疲れ様ファイアーッ☆」
レオナルドが天に向かってマジックアローを放つ。流星の如く尾を引いて天へと登る光が宴の終焉を告げていた。
ジェレミアが招待客にお詫びの言葉や謝辞、締めの言葉を述べている間、ハンター達は思い思いの時を過ごしていた。
「ぐーまぐーまぐー」
「はぁ……いいなぁ」
エニグマは蜂蜜を舐めながらごろごろしていた。傷は負っているが、あまり気にしていないようだ。
サーティカがいいなぁと言ったのはエニグマでも蜂蜜でもなく、纏っているソリッドハートのことなのは言うまでもない。
そしてヴァルトルとグオルムールは何か目配せをしたかと思うと、不自然に距離を詰めていた。
「おおっとぉ! 転んでしまったであぐわぁっ!」
「あれー? 躓いて不幸にも仲間を斬っちゃったぞー?」
「お前ら何をやってるんだあああああ!?」
ヴァルトルが、グオルムールのローレル・ラインに貫かれた。
思わず叫んだミリアにも誰の目にも、ヴァルトルが自分から剣に突っ込んだように見えた。
「ぐはぁ……す、すごく、キレる、である……」
その証拠に、ヴァルトルは気持ちの良い笑顔で倒れながらサムズアップしているではないか。
「一歩間違えば重体行きだよ……」
テリアも両手を上げた。
「さすがはローレル・ライン……さすがはグラズヘイム・シュバリエ……!」
「感心してる場合か?!」
ミリアが叫んだ。すごく血が出ている。
招待客は送迎の馬車に乗って帰途に着き、ジェレミアとスタッフ、そしてハンター達だけがその場に残された。
「この度は、真に申し訳ありませんでしたっ……!」
ジェレミアが誠心誠意、頭を下げる。
「そして、無事終了させていただき、ありがとうございました。
皆さんのおかげで、怪我人を一人も出す事もなく、デモンストレーションを終えることができました」
ジェレミアはここから、熱を帯びた口調になった。
「しかし……皆さんの戦いぶり……感動しました。
皆さんのような強いハンターに、わたくしどもの武具を使っていただけましたら、この上ない喜びでございます。
……お世辞などではなく!
このジェレミア・スタードリンカー、心からそう思っております。
また、強さもさることながら、不測の事態に対応できる柔軟さ……招待客に対してのフォロー……わたくしも見習わせて頂きたいと思わされました。
此度は本当に、忘れられない日となったようです」
そして姿勢を正して、幾多の商売人としての経験が刻まれた顔に最高の笑顔を浮かべて言った。
「これからもグラズヘイム・シュバリエを、よろしくお願いいたします!」
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作戦会議室 ミリア・ラスティソード(ka1287) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2015/03/20 23:50:34 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/03/16 23:06:12 |