百目夜行

マスター:月宵

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~12人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2015/08/04 09:00
完成日
2015/08/11 22:18

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 辺境の地。そこには、様々な部族が存在している。彼らには、それぞれ崇高し、信仰するトーテムと言うものが存在する。
 彼ら部族をまとめあげるに、不可欠なもの言わば生命線、と言ったところだろうか。

 そんな部族の中に『イチヨ族』と言うものがある。彼らは流浪の少数部族で、各地を転々とする者達だ。
 彼らのトーテムの名は『概念精霊・コリオリ』と言う。
 彼らの信条は『他部族の信仰を信仰する』と言う変わったものだ。
 それが例え、如何なる信仰であろうとも……


 ここに『運』をトーテムとする部族が存在していた。今日は彼らのお祭りだ。
 自らの運に任せてこの日、一日だけは決して外出せず、一日中賭博に明け暮れる。そう、部族の巫女だけを除いて。

 逢魔が時。そんな時刻に、運の巫女はハンター達を引き連れて集落から遠く離れた森、その社へとハンター達を招いた。
 堅牢な石造りの社の前には、仮面を被った中肉中背の人物が皆を待っていた。
 巫女は、彼に会釈を一つ。社の両手開きの厚い扉を開ける。
 朱色の光に照らされた部屋にて、ハンター達は不気味な沢山の『目』に迎えられた。目に気付いた途端。ハンター達に何とも言い換えようも無い不快感が襲った。まるで、恨みがましく睨みつけられている、そんな心持ちにさせられる。
「これがこの社に集められた、賽の目達です。」
 色も材料も様々な賽子が千、いや万はあるのだろうか。中には立方体でなく、十二面体からできる賽子もある。そこには数ではなく巳や午、などと彫刻された変わり種のサイコロもある。新品なものもあれば、人為的なヒビが入った物もある。
「ここにある賽達は、各地方から集められたものです」
 賽子、ダイス、それは多種多様に使われる。賭博、遊戯とそう言う物を扱う人にはとても身近である。
 そう、中には命がかかる人々だっているのだ。

『敗けがこんだ。この賽は呪われている』『このダイスの目が良すぎて大損だ』『負けばかりで、イカサマ疑われた。全てはダイスの――』

「そう言う方々によって、憑かれた賽の目としてお祓いのために集められるのです」
 だが、塵も積もれば山となる。
 溜まりに溜まった悪意は辺り一帯に及ぶ程になるらしく、その影響で歪虚までやって来ると言う。
「今は注連縄を用いて封じています。ですが、祓いの儀式の際に一時的にその封を解かなければなりません」
 そして巫女、更に先程の仮面の人物が儀式結界を張り、賽の目を浄めると言う。手元に賽があれば、ついでに清めていかないか、そう巫女は笑顔でハンター達に語る。

「本日、貴公らの手伝いをするイチヨ族のイ・シダだ。多くは望まない。僕らの儀式終了まで三分間、くれぐれも社へ侵攻を許さないように」
 それだけ簡潔に、そして淡々と言えばシダは黙り混んだ。足元まで伸びる黒髪を払いながら、儀式の準備に入る。

「彼らに罪はないのです。ただ、偶然出目がその時に悪かった」
 だが、賽の目達はそこから使われることはなく、人の怨みだけがその中で蓄積された。
 巫女が悲しげに語るのは、賽子達を幾年に渡り見てきたからかも知れない。

 巫女はハンター達には膝をついて願う。
「危険で死人も出るほどの儀式です。もうここ数年強い術者が現れず、行われてませんでした」
 歪虚のせいと言うより、石塁などの自らが設置した障害物に潰された、などの事故が多いと言う。ただ、運良く障害物に歪虚がこけて、自滅することもあったらしい。今回シダの補助があり、漸く儀式が再開されたのだ。
「儀式中はこの一帯が『凄く運が良くなるか、凄く悪くなる』らしい」
 障害物一つ設置するにも、命がけになるだろう、とシダが付け足す。
 今回の報酬が普段より多いのも、それが理由なのかも知れない。賭けるものは己が運と命。
「ですが、放置していれば賽の目の悪意は強まり、いつか封印が解けてこの一帯……いえ集落にすら及ぶかも知れません」

 どうか皆様お願いします、巫女の悲痛な声が青と朱の混ざった雲の空に響いた。

リプレイ本文

 ジャラジャラジャラジャラ

 何かがぶつかりあい、一つの濁流のような響。それが儀式の始まりであった。

 最初に夕焼けに映る歪虚の影を確認したのは、社の北側に配備したもの達であった。

「なんだかおめめって良い薬になりそうなのなー、残らないかなぁ…ふふー」
 お気楽に構えるのは、エルフ黒の夢(ka0187)。遥か遠くには目玉軍団。但し今回は長期戦を覚悟しなければならない。その為、使用スキルも限られる。今は我慢の時。その時が来るまで、温存をするしかない。
 魔導バイクを止めて、広域に確認出来たサイクロプス一体に銃口を構えるのはオルドレイル(ka0621)である。
「運も実力の内というし、無様な姿は見せられんだろう」
 合図は来ると言えど、魔法巻き込まれは避けたい。彼女は黒の夢から距離を取りつつ、この地の防衛を決意した。
 いち早く銃声を鳴らしたのはアルヴィン = オールドリッチ(ka2378)だ。しかも運良く、サイクロプスの腕から棍棒を奪うと泰山の如き声が響き渡った。割りと運が良い方なのだ、その効果がいきなり出たのだろうか。

「このギャンブルはどう転ぶだろうネ」

 東側は比較的、敵の波が薄い。だが見逃す理由も無い。ボルディア・コンフラムス(ka0796)は三つ目鬼を迎え撃つ。
「とおりゃ!」
 精霊に祈った肉体は、早速一匹の鬼を斧で横にまっ二つ。ハルバードを担ぎ直した。

「いくらなんでも胡散臭ぇや。いくらマテリアルが色んな影響出すからったって人の運まで左右できるワケ」
 彼女は自分の目で見たものしか信じないタチだった。

 紅薔薇(ka4766)は魔導二輪に乗りながら、目標を待った。何よりも狙うは、闇目玉だった。この歪虚は状態異常を用いる。なんとか早めに始末したい。
(ここは一匹か)
 その時だ。

「至急援護求むヨー!」
 この場に合わない陽気な声はアルヴィン、場所は北側だ。
「ここは僕達に任せて!」
「何かあったら、すぐ呼ぶのじゃぞ」

 紅薔薇は、ボルディア、ピオス・シルワ(ka0987)の二人に東側を任せてバイクで北に向かった。

 南にも歪虚は出現していた。こちらでは、尾形 剛道(ka4612)が三つ目鬼と戦中だ。
「…チッ、うようよ居やがる…」
 早めに奥にいる闇目玉をこのハンマーの餌食にしたいのだが、予想より賢しく三つ目ので動きやしない。
 二匹の小鬼の指で弾いた小石が、ほぼ同時。しかも両者運良く、剛道の兜に衝撃が加わり、更に一つの小石が弾かれ彼の喉笛にめり込む。
「がっ……ハ、イ…ねェか、賭け…てのも悪くねェ!」
 咥内に溜まる血を吐き出せば連続で石が迫る。
「これでさけて~!」
 剛道が十色 エニア(ka0370)の唱えたウインドガストを纏う。間一髪、追撃を避けた。

「ほらよォ!」
 少量のマテリアルが剛道の体に入り込む。彼の振り向いた先ではシガレット=ウナギパイ(ka2884)が治癒をしてくれていた。
 シガレットは戦況を確認する。精密度は高けれど、威力はそれなりの小石だが、剛道の装備からみても傷が深い気がした。

「賽は投げられたって事かねェ」
 やはり、一筋縄ではこの依頼済まされないらしい。


 西側は少し様子が違っていた。他の場所より闇目玉が多いのだ。
 ただこれも偶然か、幸運なのかレイ・T・ベッドフォード(ka2398)が与作って木々を儀式前に障害物に変えていた。その為か、どうにか見えない刃を防いでいる。逆に闇目玉にその障害物を利用されてもいるのだが。
 レイは遠くにいるサイクロプスに引き金を引いた。

 カチン

 撃鉄を叩くだけ、不発である。近付いてくるサイクロプス、レイは早速こう願った。

(キアーラ様…私にもしもの事があったら、故郷の姉上達に夕飯の支度を頼む、とお伝えください…)
 再び動かしたトリガー。手応えが軽い、まるで誰かが一緒に引いているようだ。

 ダンッ

 その一撃は、サイクロプスの腕を弾き飛ばすに至る。無言で素直に驚くレイ。戦う前すら不運に巻き込まれる気がしていたのに、これは確信に変わりそうだ。

 レイの背後から様子を伺うのは、キアーラ(ka5327)だ。前線のレイに運動強化をしながら、オロオロと歪虚に視線を送る。
「そう言えば、説明を聞いた時珍しくイライラしていなかったかい」
 黒いくまのぬいぐるみグレゴリーに向き合い、彼女は言葉を発していた。そう、と変わらぬ声で少女は戸惑いつつもぬいぐるみに応えた。
「「ただ、偶然出目がその時に悪かった」って…聞いて、ちょっともやもやした、の」

「ああ、ああ!そうだね、似ているね」
「え、似てる?」
 何のことか、そのときのキアーラは思い出せなった。

 同じく後方にはリュー・グランフェスト(ka2419)が長銃を構えている。レイのラウンドスウィングで討ち漏らした敵を確実に撃ち抜く。
 ただそのなかでも、やはり闇目玉は強敵なのか悠々と回避されるのだ。

「くそっ、目玉のくせにチョロチョロすんなよ!」



 時間は秒刻みで刻々と過ぎていく。歪虚達も一定の圧迫感を用いて社へと接近をしてくる。
 ハンター達が防衛ラインと決めた位置も越えられてしまうが、幸いその瞬間から奴らが走り出すことは無かった。サイクロプスは思っていたより、移動速度は遅く、眼前にいれば進行も止まる。
 逆に早さと数を極めている三つ目鬼は、力不足のためか侵入されたとしても確実に潰していける。
 だが、この空間ではそれも一時の喜びでしかなかった……

 特に北面は、サイクロプスの数が多い。流動戦力として援軍に来た紅薔薇は、ブレイドを手に縦横無尽に前衛を駆け抜ける。
 サイクロプス、三つ目鬼を斬撃が巻き込む。だが、サイクロプスの強靭な肉体には僅かな傷を残すのみ。
 同時に、狙ったかのように遥か遠くより、闇目玉の無の風が紅薔薇に文字通りの紅を残す。
「くぅ、あんな遠くから撃っておるのか?」

 同じ危機が、アルヴィンにも迫る……が。

 ゴチン

 闇目玉は振りかぶった途端、あらぬ方向に吹き飛んだ刃の突風に吹き飛んだ石で運悪く目をやられたらしい。
「ドジっ子だネー」
 アルヴィンが言う通り、まさに涙目である。

 そんな他と比べ、サイクロプスに一対一の形でオルドレイルは挑まざるを得なかった。
 距離を取りつつの集中放火。だがやはり、固い。他方向にも増援がやってきている。これ以上の流動戦力は、恐らく望めない。
 一瞬の油断。それが彼女へサイクロプスへの接近を許してしまった。それも運悪く、下腹部から足への重すぎる一撃だ。
「………ガァっ」
 体を半分むしりとられた。それに近い激痛と衝撃に、思わず崩れそうになる肢体を村雨丸の刃を借りてなんとか保った。
「ワーやられちゃうヨ!」

 自らを回復するオルドレイルに、アルヴィンもまた回復を促す。このまま自分が後退していれば、直にこいつは社に辿り着いてしまうだろう。接近戦に持ち込むしかない。

「ここから通すわけにはいかない!」
 彼女の瞳が、碧く光ったことを敵は理解しただろうか。


 同じく、辛さを極めたのは西側だった。何せ、援軍に闇目玉が五匹も増えたのだから……
 ありがたいことに、闇目玉はあまり動きはしない。その代わりに、嫌なものを置いてきてくれる。

「レイ、め……目の前」
 キアーラの声に気付くと、倒木の裏に潜む闇目玉に気付く。だが、気付いただけ。運悪く、レイは黒い霧を瞳に噴出を浴びた。
 瞳を開けると、辺りには霧が立ち込めていた。彼の周り、全ての形が黒い影だ。標的が黒ではない。障害物の全てが黒だ。
 だが、この目の前の大きな黒が、自らが倒した倒木だと知っている。
 そして、目の前に敵がいるのも理解している。レイは障害物を利用し、その上によじ登った。

 さて、ここで巫女の話を覚えているだろうか『障害物による死傷者は多い』と言う話。
 それは勿論レイにも襲い掛かった。登った倒木の一部が運悪く腐っていたのだ、本当に運悪く。

「私達に隙はありません……!」
 そんな状態で武器を振り回したら……
「あ、ああ!?」
 滑り落ちるだろう。しかし、不思議なことに、落下の衝撃はない。倒木の枝が鎧に引っ掛かったのだ。またもや、運とは異なる『なにかしら』に彼は助けられたのだ。


●本命
 あれから何れだけ時間が経っただろう。ハンター達は、もう何匹の歪虚を無に帰したかわからない。

 東側では、手負いのピオスが逃げる闇目玉をライトニングボルトで一直線に貫く。どうやら体力は無いに等しいようだ、と消滅を確認し安堵した。ボルディアのクラッシュブロウがサイクロプスを貫き、ぐらりと、その一つ目から光を奪う。
 問題はその先だ。まず、耳につく地響き。次いで、サイクロプスを赤ん坊かと思えるほどの巨体。
 夕日色に反射する百と言う数を越えた、身体と言う名の目であった。
 ボルディアの得物を持つ手から震えが止まらない。
 無意識にだが、口の端が上がり笑みが溢れる。
 相手をしてやろう。遊撃隊が来るその時間稼ぎに……


「百目鬼が出たぜぇ! 場所は東だぁ!!」

 彼女の声を耳にすれば、ピオス、黒の夢、エニアの三人がほぼ同時にアースウォールを社の前に立ち上げる。
「社にはいれさせないよ!」
 百目鬼にとって障子にすら近いものかも知れないが、それでも護ると言う行為は大事だ。

 南側にもその声は聴こえていた。シガレットの耳にもそれは届いている。
「行ってくれ! こっちは問題ねぇ」
 剛道が増援にきた三つ目鬼を踏み込んで叩き潰す。同じくエニアが取り零した鬼を鞭で打ち払い、遠くへ追いやる。悪魔退治には彼女曰く、鞭らしい。
「魔法が無くても、それなりには戦えるつもりだよ~」

 エニアの言葉を背に、シガレットはバイクを跨いだ。

「こっちは頼んだぜ!」


 つよい風、流動戦力として東側にきたアルヴィンはそれを感じた。実際には突風ではない、百目鬼が振り回した巨大な棍棒を衝撃だ。
 当たりはしなかったものの、シールドで防いでもその威力が腕を振動させ実感出来る。
 百目鬼の腕の隙間を、リューはバイクで掻い潜り側面に出現した。
「ダイスの運よ、俺に向いてくれ」
 バイクの勢いをそのまま凪ぎ払う、何十もの腕の瞳が失明にいたり、赤い涙を流す。
 遥か下方にて、シガレットがセイクリッドフラッシュを連発させる。目映い光はが辺りを美しく包むが、百目鬼にとってはそれだけじゃすまない。

「はは、さぞ眩しかろうなァ」


 戦いは東ばかりではない。北では未だオルドレイルが、サイクロプスと死闘を繰り広げる。

 近付かせるものか、その一心で今彼女は一人戦っている。アルヴィンが東へ行ってしまい、自ら手当てをしてきたが限界そうだ。
 彼女はサイクロプスに飛び付いた、どすん、胴に入った棍棒で内部がひしゃげる。
「ハァァァァ!」
 しかしオルドレイルは離れず、無防備となった頭部を刀で貫いた。粘着質な音、吹きあがる血に漸くサイクロプスは地に沈んだ。

(心の余裕を保つためサイコロのような敵がいるのかと少々期待してみていたのだが……いなかった………な)
 立ち上がったオルドレイルはスーツの袖で刃を拭えば、そのまま気絶してする。スーツの紅に赤を重ね塗って。

 西側では、闇目玉が動きを見せてくる。
「えいっ、えい!」
 近付き始めた闇目玉に、一定の距離を保ちながらキアーラが機動砲を放射する。
 だが、当たらない。当たったとしても目玉ではなく霧の部位で突き抜けてしまう。
(まけちゃう!)

 キアーラの耳に、二匹の犬の鳴き声が聴こえた。

「退くのである娘っこ」
 レイではない女性の声に、応じるようにキアーラは走ってその場から離脱する。視認したのは、北側にいた黒の夢であった。
 破裂する球炎は一気に広がり、闇目玉達を巻き込んで焼き払った。
「むむーっ!このお目目ちゃん用に虫取り網欲しかったのな…!」
 何てことはない。北と西は繋がっているのだ、黒の夢の狙う三つ目鬼の一隊に接近した闇目玉達が巻き込まれたのだ。
「ほれもう一発! ふむー…目薬に水魔法でも良かったかな?」
 大火を目の当たりにしたキアーラに、今回の依頼内容が再び頭のなかで輪唱する。グレゴリーが話かける。
 似ているね、一度の不運で狂う運命。そっくり、ちょうどいい。あれもこれも、全部全部、盛大な八つ当たり。

「そう、そうね…わたシの…ボクらのボクの嫌いな大嫌いな理不尽と不運と歪虚の集まり…ああ、ああ…撃って斬って砕いて磨り潰して、みんな、みぃんな…やっつけてやらなきゃ!」
 彼女は嬉々として大火を眺めた。具体的に言うならば、歪虚が崩れゆくその瞬間を堪能しているのだ。

「……宿命も運命も道は自ら切り拓くものである、あくまで我輩達……と語っている場合ではないなー」
 人形に何かを言いかけた魔女は、再びファイアーボールを唱えるのであった。

 百目鬼の猛威は、未だ誰にも当たらずただその場にあり続ける。だが、近付けば餌食になりうるのも事実。運が悪ければ、ハンター達の冒険はここで終わる。

 リューと対になる形で、紅薔薇もまた百目鬼の脇に構えてライフルを撃ち込む。
「通らせはせぬのじゃ!」
 当たりはした。しかし、瞼は装甲の意味を成すのか衝撃を与え、凹ませるのみにとどまる。
 刃では精度が落ちる。その油断は今回では本当に命取りなのだ。完璧、絶対以外は信用ならないと彼女は日常の鉄くずから教わった。

 後数歩、そんなところまで百目鬼に迫られていた。幸い他の東側にいた歪虚は、この百目鬼の巨体に踏み潰されたようだ。

 シガレットは詠唱を中断し、足で駆けて百目鬼の目の前に陣取る。
 手にはシールド。命を賭けたデコイであろう。百目鬼は小石程度としか思えないシガレットに対し、頭上から棍棒を振り上げた。

 吹き上がる砂ぼこり。衝撃波を見たアルヴィンは確認もせずヒールを唱えていた。
 確かに直撃だった。その筈なのに、シガレットは五体満足を保っていた。
「…………」
 しかし、誰よりこの事実に驚いていたは彼本人である。携えていたシールドをまじまじと確認する。確かにシールドによる受け流しは出来ていた。
 だが、こんなにも軽く流せるような打撃とは思えなかった。

 ほぼ同時だった。今まで五月蝿いまでぶつかる音がなり止む。
「これで終い……かァ」
 社を中心に光の波紋が幾つも広がり、纏っていた空気を払拭していく。


 ビャグファンブルァァァァラ……

 それは百目鬼の声だ。途端に、ぱちんと破裂し小さな歪虚の大群となってちりぢりに散っていった……

「終わった……のか」
「チッ、終わった途端に逃げんのかよ。意気地のねぇ奴ら」
 ボルディアとリューが、得物を手に歪虚達を目で追った。あれだけいた筈が、今はただ山に静みかけの夕日が見えるのみ。
 歪虚が逃げたことにより、皆が社へとぞろぞろと集まってきた。運の巫女とシダも、汗に髪を湿らせながらも無事のようだ。

「あ、あの…お祓い、無事に終わりました、か?」
 社を覗きこむキアーラ。日が落ちかけているのに心なしか、室内の賽子が綺麗に輝いているように思えた。
「何いってんだよ、元々こうだったんだよ」
「うん……きっとこれが本来のダイスなんですね」

 紅薔薇もまた賽を眺めていた。巫女は説明をしてくれた。これより、この賽子達を持ち主に返すらしい。
「勿論、望む方にのみですが」
 その返却を望む方、も多くは無いらしいが。
「次に振られる時は、平和な遊びをする主人の所に貰われると良いのう」

依頼結果

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MVP一覧

  • 黒竜との冥契
    黒の夢ka0187

  • オルドレイルka0621
  • 紫煙の守護翼
    シガレット=ウナギパイka2884
  • 不破の剣聖
    紅薔薇ka4766

重体一覧


  • オルドレイルka0621

参加者一覧

  • 黒竜との冥契
    黒の夢(ka0187
    エルフ|26才|女性|魔術師
  • 【ⅩⅧ】また"あした"へ
    十色・T・ エニア(ka0370
    人間(蒼)|15才|男性|魔術師

  • オルドレイル(ka0621
    人間(紅)|23才|女性|闘狩人
  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士

  • ピオス・シルワ(ka0987
    エルフ|17才|男性|魔術師
  • 嗤ウ観察者
    アルヴィン = オールドリッチ(ka2378
    エルフ|26才|男性|聖導士
  • SKMコンサルタント
    レイ・T・ベッドフォード(ka2398
    人間(蒼)|26才|男性|霊闘士
  • 巡るスズラン
    リュー・グランフェスト(ka2419
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • 紫煙の守護翼
    シガレット=ウナギパイ(ka2884
    人間(紅)|32才|男性|聖導士
  • DESIRE
    尾形 剛道(ka4612
    人間(紅)|24才|男性|闘狩人
  • 不破の剣聖
    紅薔薇(ka4766
    人間(紅)|14才|女性|舞刀士
  • グレゴリーの人形術師
    キアーラ(ka5327
    人間(蒼)|14才|女性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/08/01 00:02:40
アイコン 相談卓
シガレット=ウナギパイ(ka2884
人間(クリムゾンウェスト)|32才|男性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2015/08/04 01:12:13