ゲスト
(ka0000)
『特効薬』を求めて
マスター:瀬良はひふ

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/07/25 15:00
- 完成日
- 2014/08/03 09:12
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
ある日、のハンターオフィス。
ちょっとした依頼をこなして帰還したエニー・オイマトは、顔見知りの事務員、フィオ・リーリーの様子がおかしいことに気づいた。
「ハロー、フィオ。どうしたの、変な顔して」
「……あら、顔に出てたかしら」
「お得意の澄まし顔が台無しよ」
「困ったわね。大事な商売道具なのに」
大して困っていないように笑う彼女だが、その表情にいつもの生気はない。
重症かしら、と眉をひそめたエニーに、フィオはひらひらと手を振ってみせる。
「大したことないのよ。ただ、今朝から頭痛が酷くて」
「やぁね。二日酔い?」
「下戸なの、知ってるでしょ」
「頭痛持ちなのもね。いつもの薬、どうしたの」
「ん……例の薬師さん、遠くに引っ越したらしくてね……」
今度は、本当に困ったようにフィオは笑った。
遠くねぇ、とエニーは呟く。
件の薬師の噂は、彼女も聞いたことがあった。腕はいいが、控えめに言って変わり者で、どこかに定住するということをしない人物。
名前は、確か――
「アケルナル・ヴァオー」
「ええ。『忘却の』アケルナル。病を忘れるほど効き目のいい薬を創る……なんて触れ込みだったかしら。贔屓にしてたのに、残念だわ」
「行き先に心当たりとか、ないの?」
「さぁ……。最後に会った時は、リゼリオは賑やかすぎる、みたいなことを言ってたけど」
冒険都市リゼリオ。
ハンターズソサエティの本拠があるこの都市は、確かに静寂とは無縁だろう。
もしも穏やかな環境を求めるならば、自由都市同盟やゾンネンシュトラール帝国も不適のはずだ。前者はリゼリオに近く、後者は物々しすぎる。
消去法で、グラズヘイム王国か、あるいは辺境か、といったところか。真っ当ならば、王国なのだろうが。
そこまで考えたところで、エニーは思い出したことがあった。辺境のとある部族の知人が、流れの医者もどきが小さな遺跡に住み着いた、と話していたのだ。
「……まぁ、無理は禁物よ。貴女がいないと、無茶を聞いてくれる人が減っちゃうの」
「ふふ、ありがとう」
軽く手を挙げて別れると、エニーはオフィスの片隅で依頼を吟味していたハンター達のもとへと向かう。
幸いにも、あるいは不幸にも、依頼を終えたばかりの彼女の懐は温かい。
たまには、あの友人の驚く顔が見てみたい。そう考えたのだ。
「ハロー。暇なら、私の依頼、受けてみない?」
ついでに、面白い話でも聞ければ最高だ。そんな下心も、ないわけではなかった。
辺境に限った話ではないのだが、この世界には大小様々な遺跡がある。
その数は、恐らく誰も把握しきれていないだろう。無論のこと、よほど重要なものでない限りは、荒れるままになっているものが大多数だ。
そんな大多数のうちのひとつで、一人の男が起居していた。
名は、アケルナル・ヴァオー。
薬師であり、医者もどきであり、実は考古学者でもあり……つまりは、才能を持て余して隠者を決め込んでいる、そんな男だ。
「……これも、ダメだな。この程度では」
茫洋とした瞳で、何かの結果を見つめながら、男は首を振る。
わざわざ辺境の遺跡まで越してきたはいいが、今のところ成果ははかばかしくない。
「……気分を変えるか」
本業の手慰みに、アケルナルは薬草の調合を始めた。
『忘却の』という大層な二つ名とは裏腹に、彼にとっての薬師はあくまでも副業……いや、暇つぶしだ。
請われれば処方するが、薬代などはもらったことのほうが少ない。これは同業者からは酷く嫌われる要因であった。
お代を貰い忘れるから『忘却の』アケルナルなのさ、というのは、彼を嫌う者が好む言い回しである。
もっとも、彼自身がそれを気に病んだことはない。
彼にとっては、自らが興味を持っているもの以外は、全て認識の外だからだ。
いずれにせよ、である。
アケルナル・ヴァオーは、遺跡にいる。
ちょっとした依頼をこなして帰還したエニー・オイマトは、顔見知りの事務員、フィオ・リーリーの様子がおかしいことに気づいた。
「ハロー、フィオ。どうしたの、変な顔して」
「……あら、顔に出てたかしら」
「お得意の澄まし顔が台無しよ」
「困ったわね。大事な商売道具なのに」
大して困っていないように笑う彼女だが、その表情にいつもの生気はない。
重症かしら、と眉をひそめたエニーに、フィオはひらひらと手を振ってみせる。
「大したことないのよ。ただ、今朝から頭痛が酷くて」
「やぁね。二日酔い?」
「下戸なの、知ってるでしょ」
「頭痛持ちなのもね。いつもの薬、どうしたの」
「ん……例の薬師さん、遠くに引っ越したらしくてね……」
今度は、本当に困ったようにフィオは笑った。
遠くねぇ、とエニーは呟く。
件の薬師の噂は、彼女も聞いたことがあった。腕はいいが、控えめに言って変わり者で、どこかに定住するということをしない人物。
名前は、確か――
「アケルナル・ヴァオー」
「ええ。『忘却の』アケルナル。病を忘れるほど効き目のいい薬を創る……なんて触れ込みだったかしら。贔屓にしてたのに、残念だわ」
「行き先に心当たりとか、ないの?」
「さぁ……。最後に会った時は、リゼリオは賑やかすぎる、みたいなことを言ってたけど」
冒険都市リゼリオ。
ハンターズソサエティの本拠があるこの都市は、確かに静寂とは無縁だろう。
もしも穏やかな環境を求めるならば、自由都市同盟やゾンネンシュトラール帝国も不適のはずだ。前者はリゼリオに近く、後者は物々しすぎる。
消去法で、グラズヘイム王国か、あるいは辺境か、といったところか。真っ当ならば、王国なのだろうが。
そこまで考えたところで、エニーは思い出したことがあった。辺境のとある部族の知人が、流れの医者もどきが小さな遺跡に住み着いた、と話していたのだ。
「……まぁ、無理は禁物よ。貴女がいないと、無茶を聞いてくれる人が減っちゃうの」
「ふふ、ありがとう」
軽く手を挙げて別れると、エニーはオフィスの片隅で依頼を吟味していたハンター達のもとへと向かう。
幸いにも、あるいは不幸にも、依頼を終えたばかりの彼女の懐は温かい。
たまには、あの友人の驚く顔が見てみたい。そう考えたのだ。
「ハロー。暇なら、私の依頼、受けてみない?」
ついでに、面白い話でも聞ければ最高だ。そんな下心も、ないわけではなかった。
辺境に限った話ではないのだが、この世界には大小様々な遺跡がある。
その数は、恐らく誰も把握しきれていないだろう。無論のこと、よほど重要なものでない限りは、荒れるままになっているものが大多数だ。
そんな大多数のうちのひとつで、一人の男が起居していた。
名は、アケルナル・ヴァオー。
薬師であり、医者もどきであり、実は考古学者でもあり……つまりは、才能を持て余して隠者を決め込んでいる、そんな男だ。
「……これも、ダメだな。この程度では」
茫洋とした瞳で、何かの結果を見つめながら、男は首を振る。
わざわざ辺境の遺跡まで越してきたはいいが、今のところ成果ははかばかしくない。
「……気分を変えるか」
本業の手慰みに、アケルナルは薬草の調合を始めた。
『忘却の』という大層な二つ名とは裏腹に、彼にとっての薬師はあくまでも副業……いや、暇つぶしだ。
請われれば処方するが、薬代などはもらったことのほうが少ない。これは同業者からは酷く嫌われる要因であった。
お代を貰い忘れるから『忘却の』アケルナルなのさ、というのは、彼を嫌う者が好む言い回しである。
もっとも、彼自身がそれを気に病んだことはない。
彼にとっては、自らが興味を持っているもの以外は、全て認識の外だからだ。
いずれにせよ、である。
アケルナル・ヴァオーは、遺跡にいる。
リプレイ本文
●旅は道連れ
それにしても、とエニー・オイマトは集まった面々を見渡した。
(適当に声を掛けたにしては、集まってくれるものね)
そんな彼女の視線に気づいたのか、ソフィア =リリィホルム(ka2383)がニッコリと笑う。
「こんにちわっ。今回はよろしくお願いしますねっ」
「ハァイ、よろしくね」
単なるお使いに9人は多いかとも思ったが、それで困ることはないだろう。
「……というコトはYou達はサムライなんデースネ~!?」
不意にシオン・アガホ(ka0117)が声を上げた。
どうやら、米本 剛(ka0320)やこなゆき(ka0960)から刀を見せてもらっていたらしい。
刀=サムライ、というのも中々素敵な連想だが、実際のところ剛はクルセイダー、こなゆきはベルセルクだ。――というのは、無粋なツッコミであろうか。
「こんなキラキ~ラしたの、ドコで手に入れたのデースか~? 名前は何と言うネ~?」
「名前……銘ですかな? 自分のは『烏枢沙摩』と付いておりますよ」
「Oh!」
剛の返答に、シオンのギアがまた一段上がったようだ。ずいと身を乗り出すように近づいて、剛を苦笑させている。
シオンの刀へのものとはベクトルが少々違うが、武器への思い入れという意味ではソフィアもなかなかのようだ。
先ほどの挨拶の後は、すぐに美作さくら(ka2345)の持つ薙刀の観察に戻っている。
「うーん、カタナはもちろんですが、ナギナタもこの刃紋が綺麗ですねっ! どうやればこの紋様が出るんでしょう……」
「あはは……部活で使ってましたから、薙刀の使い方は自信あるんですが、作り方とかまでは」
もともと薙刀部だったというさくらだが、流石に製造法には明るくない。
「ブカツって?」
ハル・シャイナー(ka0729)が反応したのはそこだった。
「あっ、えーと、学校で同じ活動をする人が集まって、一緒に練習したりするグループで……」
「学校! 聞いたことあるよ! リアルブルーで俺くらいの年だとみんな行って、勉強? してるって。どんな勉強してるの?」
「色々あるんですけど、例えばですね――」
エニー自身、色々な話を聞ければいいと考えていたのは事実だが、どうやら他の参加者も同じであったらしい。
とはいえ、無理もないことではあるだろう。文字通り『別世界』の話が聞けるとあれば、お互い、好奇心が騒ぐというものだ。
『せっかくなら色々知りたいし、見ておきたいじゃないですか』
そう言っていたのは牧 渉(ka0033)であるが、言い得て妙だろう。
問題があるとすれば――
「いつ出発できるかしらねぇ……」
「皆様、盛り上がってらっしゃいますからね」
エニーのぼやきに、ソナ(ka1352)がくすくすと笑った。
「う~……つい興奮してしまったでござる……」
顔を真っ赤にしながら歩くシオンは、小柄な体をさらに小さくしているように見える。
「あはは、わたしもその気持ちわかるなー。カッコいいですもんねっ」
その隣でソフィアが朗らかに笑う。
「そういえば、ソフィアさんはアルケミストでしたっけ。機導術でも刀剣ってメジャーなんですか?」
「んー、どちらかと言うと、鍛冶師としての興味ですかね? いつかは、私も名刀・名剣と呼ばれる一振りを打つのが目標ですっ」
「おおー……スゴい。それがソフィアさんの目標、なんですね」
さくらは、そのドワーフの少女からの返答に何か思うところがあったらしい。
「青春の悩み、といったところですかなぁ」
「ふふ……何のための力か、という感じでしょうか」
年の離れた妹を見る兄姉のような剛とこなゆきである。
そして、リアルブルー出身ということからか、渉もしみじみと頷いていた。
「うーん、僕も中学生の頃は悩みましたよ。だから、分かります」
「ちゅ……!? わ、私、こう見えて17ですよ!?」
『えっ』
思わずといったように、複数人の驚きの声がハモる。具体的に誰が驚いたかは、御想像にお任せしよう。
ずーん、という効果音が聞こえる勢いで凹んださくらだが、彼女はそれくらいでは負けない。
異世界への転移にも負けなかった少女が、これくらいで負けるはずはないのだ。
「それにしても、病を忘れるほどの薬、ですか。ぜひ、お会いしたいわ」
趣味で薬の調合をしているというソラは、件の薬師に興味があるらしい。
「わざわざ遺跡で……何してるんでしょうね」
ハルはそこが気になっているようだ。
彼にしてみれば、この広い『外の』世界ではなく、敢えて『内の』遺跡に篭もる、という考えが不思議なのかもしれない。
「そこは人それぞれって感じでしょうが……ああ、場所はエニーさんが知ってるんですよね?」
「そーよ。ま、ちょっと遠いけど、危険な旅じゃないわ」
確認するように問うた渉に、エニーは気安く答えた。
「危険じゃないといっても……ふふ、お優しいのですね」
今回の目的は、他人のための薬を取りに行く、ということだ。頼まれてもいないのに、である。
ソラはそれを『優しい』と評したわけだが、エニーは悪戯っぽく笑った。
「貸しを作る絶好の機会じゃない?」
「あら、では、そういうことにしておきます」
くすくすと笑いあう二人の姿を見て、これが『依頼』の最中だと考える者は少ないだろう。
実際に、お互いが思い思いの様子で歩く様子は、素晴らしくのどかだ。
「……いつもこのような依頼でしたら、嬉しいのです」
流れるそよ風を頬に受けて、こなゆきが呟いた。
「戦いだけがハンターではない……でしょうしね」
僅かに噛みしめるように、剛も応じる。
小旅行に相応しい、ゆっくりとした時間が流れていた。
●さくらのパーフェクト和の国教室
「そうだ、こなゆきさん」
長城を背景にして歩きながら、さくらが口を開いた。
「何でしょう」
「えっと、着物とか刀とか持ってますよね? もしかして、日本……っと、和の国のこと、御存知です?」
「ああ、私のこれは師匠の影響で……意匠が気に入りましてね。肝心の和の国のことは、疎いのです。よろしければ、お話を聞かせてくださる?」
「和の国……サムライ!? ワァオ、私も聞きたいデース!」
「俺も!」
和の国=サムライという発想が妥当かはともかくとして、シオンと、更にはハルも話題に食いついた。
さくらのパーフェクト和の国教室はじまるよー。
さて、名前からすれば渉と剛も日本出身と思しき名前である。
その二人はどうしていたかというと、ソフィアに捕まっていた。
「やー、米本さんのカタナもすっごいですねっ。牧さんのそれは、変わったナイフですけど……」
「ああ、これは取り回し重視で、こう――」
渉が軽く手を振るうと、手元のナイフがくるりと回って刃が収納される。バタフライナイフだ。
「おー、鞘と刀身が一体化してるんですねっ。面白い機構だなぁ」
「基本護身用ですし、片手はなるべく使えるようにしておきたいので」
「なるほどっ」
理に適った選択だ、とソフィアは頷く。
「ところで」
ふと、思い出したように剛が問うた。
「紅の世界では、自分らの刀のような、独自に発達した武具は何かありませんか」
「うーん、そうですね」
鍛冶師としては奇跡のように美しい指先を顎に当て、ソフィアは少し考える。
「わたしのタクトとか、ソラさんのロッドとか、そういう、術関連のものですかねー」
不意に、エニーが笑った。
「せっかくの旅行なのに、色気がない話題よね。職業病かしら」
「言われてみれば、そうですね。じゃあ……この辺りで美味しいもの、あります?」
安直ですかね、と笑いながら、渉が聞く。
「では自分からも。もう少し踏み込んで、オイマト族の特色など」
剛も加わってきた。
そうねぇ、とエニーが答える。
「この辺りというか、辺境だと食べ物はそんなにないのよ。だから、美味しいものといっても、チーズとか干し肉とかよね」
辺境は農耕に適した土地ではなく、細々とした遊牧と、狩猟とが中心の時代が長かった。
最近では芋や穀物、野菜類が輸入されるようになっているため、部族によっては、あるいは凝った料理を供するところもあるかもしれ
ない。
「で、オイマトの特色だっけ。んー、そうね。ああ、馬の扱いは得意な方よ。それと――」
少しばかり、彼女は言葉を選ぶ。
「良くも悪くも保守的、かしら。スコールの連中も、そこが歯がゆいんでしょうねぇ」
「それは……」
どういう、と剛が聞こうとしたところで、さくらのヘルプを求める声が響いた。
「ま、牧さーん、米本さーん、ちょ、ちょっと手伝ってくださーい……!」
何かと見れば、シオンとハルが少女を質問攻めにしているようだ。
二人は一瞬顔を見合わせると、思わずというように笑い、少女の元へと向かう。
入れ替わるように、こなゆきが近寄ってくる。
「美味しいもののお話をしてるのが聞こえたので、エニーさんのお薦めとか伺えます?」
旅暮らしの彼女にとって、そうした食べ物との出会いは貴重なのだろう。
その点は、エニーも同意するところである。
なお、最近の彼女のお気に入りは、ハンターオフィス近くの定食屋らしい。カボチャの冷製スープが美味しいんだとか。
「王国も同盟もいいけど、ま、食べ物ならリゼリオよね。その点は、ソフィアも詳しそうだけど」
「あー……わたしは、食べ物関連はー……」
エニーの指摘に、ソフィアはてへへと頭をかく。
同盟の商人について商売をしていたのは事実だが、それは専ら製造業であった。
「その代わり、武器から日用品、彫金・木工・革細工! 工房系のお仕事ならぜひ御用命くださいっ」
つきましてはー、と彼女はこなゆきに視線を送る。
「こなゆきさんのカタナも、見せてもらっていいですか?」
「かまいませんよ」
「やたっ!」
歓声をあげ、恭しくこなゆきのカタナを受け取るソフィア。
「職業病ねぇ」
感心したようにエニーが呟く。
と、そこまで笑顔で聞き役に徹していたソラが、何かに気づいた。
「あら……あれが遺跡、でしょうか」
●『忘却の』
その遺跡は、どうやらソラの想像通りの場所であったらしい。
かつては住居だったのだろうが、その壁の割れ目やいたるところから植物が芽を出し、根を張り巡らせている。
そして、風化した建物が砂となり、自らを埋めていた。
こころなしか、少女の目が輝いているように見える。
ハルもまた、興味深そうにあちこちを見て回っている。
「……客か。珍しい」
いつの間にか、遺跡の奥から男が一人現れていた。
残念ながら、シオンが期待していたような赤髭ではない。
「あなたが、アケルナルさんですか?」
「そうだ。用件は?」
ソラの問に、男、アケルナル・ヴァオーは淡々と答える。
「と、突然すいません。えっと、頭痛のお薬が欲しくって」
さくらがペコリと頭を下げると、男は9人を見渡し、怪訝な声を上げる。
「見たところ、健康な者ばかりだが」
「ああ、俺達じゃないんだ。えっと、フィオさんっていう事務員の人で」
「フィオ……ああ、リゼリオの。はるばる御苦労なことだ」
ハルが説明すると、男は僅かに目を細め、踵を返して遺跡の中へと入っていき、ちらりと背中越しに視線をよこした。
ついてこい、ということらしい。
遺跡の中は、崩れた天井から入る光で、思ったよりも明るい。
その一画に、男の仕事場があった。
様々な器具や薬草、その他諸々が雑多に散らばっている。
「少し時間がかかる。好きに場所を作って待っていろ」
茶までは出さんが、と本気なのか冗談なのか分かりかねることを言いながら、男は作業を始める。
そこに、ソラがおずおずと声を掛けた。
「あの、差し支えなければ、調合を見ていても……?」
「好きにしろ」
その答えに、少女はホッとしたような表情を浮かべる。
ややつっけんどんな印象を受けたが、決して不親切ではないらしい。
「あ、じゃあ俺は遺跡の中を見ててもいいかな?」
ハルが便乗して問うた。
「俺の遺跡ではない」
「いいってことですかね。じゃ、お言葉に甘えて俺も」
へらりと笑い、渉がハルの背中を軽く叩く。
嬉しそうに歩き出す少年とは対照的に、渉の表情は真剣だった。
さて、作業の間、シオンが真剣な顔で相談を持ちかけていた。
内容はこうだ。彼女も刀を使いこなしたい。どうすれば良いだろうか……。
「拙者が持つと……身動きが取れなくなってしまうのでござる」
「そ、それは……」
「何と申しましょうか……」
滂沱と涙を流すシオンに、剛とこなゆきが視線を交わし合う。
術具としての性質をもった刀なら、とも考えられるが、シオンはマギステル。
要するに、重すぎるのだ。
あるいは、極めて軽い刀があれば……。
自然と、視線はソフィアに向けられる。いい機会とばかりに、皆の武器を手入れしていた彼女は、その視線の意味を図りかねて、とりあえず笑ってみせた。
「えっと……筋トレするとか?」
さくらのアドバイスに、それしかないかのう、とシオンはもう一度肩を落としたのだった。
結局、遺跡はいたって普通の造りで、妙な点は見当たらなかった。
そこが渉には不可解だったが、変わり者なのだな、という結論しか現時点では見いだせない。
「変わってるんだね、あの人」
同じ結論は、ハルも出していたようだ。
もっとも、彼にしてみれば、何で外に出ないんだろう、くらいの感覚ではある。
「うふふ。でも良いお話が聞けました」
対照的に、ソラは上機嫌だ。
調合の見学に加えて、多少の手ほどきも受けていたのがその理由だろう。
「万能の調合はない……その人を知り、最も適切な分量の薬草を配合する。基本を忠実に守った結果が、『忘却の』二つ名なのですね」
「噂通り、中々の方のようでしたね」
こなゆきも頷いた。
彼女としては、放浪を繰り返すという男の姿に、何か共感を覚えたのかもしれない。
「いずれ、あの遺跡からも離れるのでしょう」
「何をしたいか、がちょっと気になりますけどね」
渉は、少しだけ肩をすくめた。
研究にしろ、何にしろ、一人の方がいいという状況は少ないはずだ。
あるいは、物騒な目的であれば……?
(いや、考え過ぎかな)
本当に、ただの変わり者なのかもしれない。
「でも、わたしはちょっと笑っちゃいましたよ、最後のアレ」
不意にソフィアが、思い出したように笑った。
「ああ……あれは、そうですな」
「言われてみればって感じですけど」
剛とさくらも、である。
「わかってたなら、早く言えばよかったのにね」
「いや、まぁ、ね。実は私も気になってたんだけど、あの子、自分のことには無頓着でね」
不思議そうにハルが呟くと、エニーは困ったような、呆れたような表情を浮かべた。
薬を手渡すときに、アケルナルはこう言ったのだ。
『治っていないなら、伝えてくれ。早く眼鏡の度を測り直せ、とな』
「うう……拙者がサムライになれる薬は、やっぱりなかったのう……」
現実は非情である。
それにしても、とエニー・オイマトは集まった面々を見渡した。
(適当に声を掛けたにしては、集まってくれるものね)
そんな彼女の視線に気づいたのか、ソフィア =リリィホルム(ka2383)がニッコリと笑う。
「こんにちわっ。今回はよろしくお願いしますねっ」
「ハァイ、よろしくね」
単なるお使いに9人は多いかとも思ったが、それで困ることはないだろう。
「……というコトはYou達はサムライなんデースネ~!?」
不意にシオン・アガホ(ka0117)が声を上げた。
どうやら、米本 剛(ka0320)やこなゆき(ka0960)から刀を見せてもらっていたらしい。
刀=サムライ、というのも中々素敵な連想だが、実際のところ剛はクルセイダー、こなゆきはベルセルクだ。――というのは、無粋なツッコミであろうか。
「こんなキラキ~ラしたの、ドコで手に入れたのデースか~? 名前は何と言うネ~?」
「名前……銘ですかな? 自分のは『烏枢沙摩』と付いておりますよ」
「Oh!」
剛の返答に、シオンのギアがまた一段上がったようだ。ずいと身を乗り出すように近づいて、剛を苦笑させている。
シオンの刀へのものとはベクトルが少々違うが、武器への思い入れという意味ではソフィアもなかなかのようだ。
先ほどの挨拶の後は、すぐに美作さくら(ka2345)の持つ薙刀の観察に戻っている。
「うーん、カタナはもちろんですが、ナギナタもこの刃紋が綺麗ですねっ! どうやればこの紋様が出るんでしょう……」
「あはは……部活で使ってましたから、薙刀の使い方は自信あるんですが、作り方とかまでは」
もともと薙刀部だったというさくらだが、流石に製造法には明るくない。
「ブカツって?」
ハル・シャイナー(ka0729)が反応したのはそこだった。
「あっ、えーと、学校で同じ活動をする人が集まって、一緒に練習したりするグループで……」
「学校! 聞いたことあるよ! リアルブルーで俺くらいの年だとみんな行って、勉強? してるって。どんな勉強してるの?」
「色々あるんですけど、例えばですね――」
エニー自身、色々な話を聞ければいいと考えていたのは事実だが、どうやら他の参加者も同じであったらしい。
とはいえ、無理もないことではあるだろう。文字通り『別世界』の話が聞けるとあれば、お互い、好奇心が騒ぐというものだ。
『せっかくなら色々知りたいし、見ておきたいじゃないですか』
そう言っていたのは牧 渉(ka0033)であるが、言い得て妙だろう。
問題があるとすれば――
「いつ出発できるかしらねぇ……」
「皆様、盛り上がってらっしゃいますからね」
エニーのぼやきに、ソナ(ka1352)がくすくすと笑った。
「う~……つい興奮してしまったでござる……」
顔を真っ赤にしながら歩くシオンは、小柄な体をさらに小さくしているように見える。
「あはは、わたしもその気持ちわかるなー。カッコいいですもんねっ」
その隣でソフィアが朗らかに笑う。
「そういえば、ソフィアさんはアルケミストでしたっけ。機導術でも刀剣ってメジャーなんですか?」
「んー、どちらかと言うと、鍛冶師としての興味ですかね? いつかは、私も名刀・名剣と呼ばれる一振りを打つのが目標ですっ」
「おおー……スゴい。それがソフィアさんの目標、なんですね」
さくらは、そのドワーフの少女からの返答に何か思うところがあったらしい。
「青春の悩み、といったところですかなぁ」
「ふふ……何のための力か、という感じでしょうか」
年の離れた妹を見る兄姉のような剛とこなゆきである。
そして、リアルブルー出身ということからか、渉もしみじみと頷いていた。
「うーん、僕も中学生の頃は悩みましたよ。だから、分かります」
「ちゅ……!? わ、私、こう見えて17ですよ!?」
『えっ』
思わずといったように、複数人の驚きの声がハモる。具体的に誰が驚いたかは、御想像にお任せしよう。
ずーん、という効果音が聞こえる勢いで凹んださくらだが、彼女はそれくらいでは負けない。
異世界への転移にも負けなかった少女が、これくらいで負けるはずはないのだ。
「それにしても、病を忘れるほどの薬、ですか。ぜひ、お会いしたいわ」
趣味で薬の調合をしているというソラは、件の薬師に興味があるらしい。
「わざわざ遺跡で……何してるんでしょうね」
ハルはそこが気になっているようだ。
彼にしてみれば、この広い『外の』世界ではなく、敢えて『内の』遺跡に篭もる、という考えが不思議なのかもしれない。
「そこは人それぞれって感じでしょうが……ああ、場所はエニーさんが知ってるんですよね?」
「そーよ。ま、ちょっと遠いけど、危険な旅じゃないわ」
確認するように問うた渉に、エニーは気安く答えた。
「危険じゃないといっても……ふふ、お優しいのですね」
今回の目的は、他人のための薬を取りに行く、ということだ。頼まれてもいないのに、である。
ソラはそれを『優しい』と評したわけだが、エニーは悪戯っぽく笑った。
「貸しを作る絶好の機会じゃない?」
「あら、では、そういうことにしておきます」
くすくすと笑いあう二人の姿を見て、これが『依頼』の最中だと考える者は少ないだろう。
実際に、お互いが思い思いの様子で歩く様子は、素晴らしくのどかだ。
「……いつもこのような依頼でしたら、嬉しいのです」
流れるそよ風を頬に受けて、こなゆきが呟いた。
「戦いだけがハンターではない……でしょうしね」
僅かに噛みしめるように、剛も応じる。
小旅行に相応しい、ゆっくりとした時間が流れていた。
●さくらのパーフェクト和の国教室
「そうだ、こなゆきさん」
長城を背景にして歩きながら、さくらが口を開いた。
「何でしょう」
「えっと、着物とか刀とか持ってますよね? もしかして、日本……っと、和の国のこと、御存知です?」
「ああ、私のこれは師匠の影響で……意匠が気に入りましてね。肝心の和の国のことは、疎いのです。よろしければ、お話を聞かせてくださる?」
「和の国……サムライ!? ワァオ、私も聞きたいデース!」
「俺も!」
和の国=サムライという発想が妥当かはともかくとして、シオンと、更にはハルも話題に食いついた。
さくらのパーフェクト和の国教室はじまるよー。
さて、名前からすれば渉と剛も日本出身と思しき名前である。
その二人はどうしていたかというと、ソフィアに捕まっていた。
「やー、米本さんのカタナもすっごいですねっ。牧さんのそれは、変わったナイフですけど……」
「ああ、これは取り回し重視で、こう――」
渉が軽く手を振るうと、手元のナイフがくるりと回って刃が収納される。バタフライナイフだ。
「おー、鞘と刀身が一体化してるんですねっ。面白い機構だなぁ」
「基本護身用ですし、片手はなるべく使えるようにしておきたいので」
「なるほどっ」
理に適った選択だ、とソフィアは頷く。
「ところで」
ふと、思い出したように剛が問うた。
「紅の世界では、自分らの刀のような、独自に発達した武具は何かありませんか」
「うーん、そうですね」
鍛冶師としては奇跡のように美しい指先を顎に当て、ソフィアは少し考える。
「わたしのタクトとか、ソラさんのロッドとか、そういう、術関連のものですかねー」
不意に、エニーが笑った。
「せっかくの旅行なのに、色気がない話題よね。職業病かしら」
「言われてみれば、そうですね。じゃあ……この辺りで美味しいもの、あります?」
安直ですかね、と笑いながら、渉が聞く。
「では自分からも。もう少し踏み込んで、オイマト族の特色など」
剛も加わってきた。
そうねぇ、とエニーが答える。
「この辺りというか、辺境だと食べ物はそんなにないのよ。だから、美味しいものといっても、チーズとか干し肉とかよね」
辺境は農耕に適した土地ではなく、細々とした遊牧と、狩猟とが中心の時代が長かった。
最近では芋や穀物、野菜類が輸入されるようになっているため、部族によっては、あるいは凝った料理を供するところもあるかもしれ
ない。
「で、オイマトの特色だっけ。んー、そうね。ああ、馬の扱いは得意な方よ。それと――」
少しばかり、彼女は言葉を選ぶ。
「良くも悪くも保守的、かしら。スコールの連中も、そこが歯がゆいんでしょうねぇ」
「それは……」
どういう、と剛が聞こうとしたところで、さくらのヘルプを求める声が響いた。
「ま、牧さーん、米本さーん、ちょ、ちょっと手伝ってくださーい……!」
何かと見れば、シオンとハルが少女を質問攻めにしているようだ。
二人は一瞬顔を見合わせると、思わずというように笑い、少女の元へと向かう。
入れ替わるように、こなゆきが近寄ってくる。
「美味しいもののお話をしてるのが聞こえたので、エニーさんのお薦めとか伺えます?」
旅暮らしの彼女にとって、そうした食べ物との出会いは貴重なのだろう。
その点は、エニーも同意するところである。
なお、最近の彼女のお気に入りは、ハンターオフィス近くの定食屋らしい。カボチャの冷製スープが美味しいんだとか。
「王国も同盟もいいけど、ま、食べ物ならリゼリオよね。その点は、ソフィアも詳しそうだけど」
「あー……わたしは、食べ物関連はー……」
エニーの指摘に、ソフィアはてへへと頭をかく。
同盟の商人について商売をしていたのは事実だが、それは専ら製造業であった。
「その代わり、武器から日用品、彫金・木工・革細工! 工房系のお仕事ならぜひ御用命くださいっ」
つきましてはー、と彼女はこなゆきに視線を送る。
「こなゆきさんのカタナも、見せてもらっていいですか?」
「かまいませんよ」
「やたっ!」
歓声をあげ、恭しくこなゆきのカタナを受け取るソフィア。
「職業病ねぇ」
感心したようにエニーが呟く。
と、そこまで笑顔で聞き役に徹していたソラが、何かに気づいた。
「あら……あれが遺跡、でしょうか」
●『忘却の』
その遺跡は、どうやらソラの想像通りの場所であったらしい。
かつては住居だったのだろうが、その壁の割れ目やいたるところから植物が芽を出し、根を張り巡らせている。
そして、風化した建物が砂となり、自らを埋めていた。
こころなしか、少女の目が輝いているように見える。
ハルもまた、興味深そうにあちこちを見て回っている。
「……客か。珍しい」
いつの間にか、遺跡の奥から男が一人現れていた。
残念ながら、シオンが期待していたような赤髭ではない。
「あなたが、アケルナルさんですか?」
「そうだ。用件は?」
ソラの問に、男、アケルナル・ヴァオーは淡々と答える。
「と、突然すいません。えっと、頭痛のお薬が欲しくって」
さくらがペコリと頭を下げると、男は9人を見渡し、怪訝な声を上げる。
「見たところ、健康な者ばかりだが」
「ああ、俺達じゃないんだ。えっと、フィオさんっていう事務員の人で」
「フィオ……ああ、リゼリオの。はるばる御苦労なことだ」
ハルが説明すると、男は僅かに目を細め、踵を返して遺跡の中へと入っていき、ちらりと背中越しに視線をよこした。
ついてこい、ということらしい。
遺跡の中は、崩れた天井から入る光で、思ったよりも明るい。
その一画に、男の仕事場があった。
様々な器具や薬草、その他諸々が雑多に散らばっている。
「少し時間がかかる。好きに場所を作って待っていろ」
茶までは出さんが、と本気なのか冗談なのか分かりかねることを言いながら、男は作業を始める。
そこに、ソラがおずおずと声を掛けた。
「あの、差し支えなければ、調合を見ていても……?」
「好きにしろ」
その答えに、少女はホッとしたような表情を浮かべる。
ややつっけんどんな印象を受けたが、決して不親切ではないらしい。
「あ、じゃあ俺は遺跡の中を見ててもいいかな?」
ハルが便乗して問うた。
「俺の遺跡ではない」
「いいってことですかね。じゃ、お言葉に甘えて俺も」
へらりと笑い、渉がハルの背中を軽く叩く。
嬉しそうに歩き出す少年とは対照的に、渉の表情は真剣だった。
さて、作業の間、シオンが真剣な顔で相談を持ちかけていた。
内容はこうだ。彼女も刀を使いこなしたい。どうすれば良いだろうか……。
「拙者が持つと……身動きが取れなくなってしまうのでござる」
「そ、それは……」
「何と申しましょうか……」
滂沱と涙を流すシオンに、剛とこなゆきが視線を交わし合う。
術具としての性質をもった刀なら、とも考えられるが、シオンはマギステル。
要するに、重すぎるのだ。
あるいは、極めて軽い刀があれば……。
自然と、視線はソフィアに向けられる。いい機会とばかりに、皆の武器を手入れしていた彼女は、その視線の意味を図りかねて、とりあえず笑ってみせた。
「えっと……筋トレするとか?」
さくらのアドバイスに、それしかないかのう、とシオンはもう一度肩を落としたのだった。
結局、遺跡はいたって普通の造りで、妙な点は見当たらなかった。
そこが渉には不可解だったが、変わり者なのだな、という結論しか現時点では見いだせない。
「変わってるんだね、あの人」
同じ結論は、ハルも出していたようだ。
もっとも、彼にしてみれば、何で外に出ないんだろう、くらいの感覚ではある。
「うふふ。でも良いお話が聞けました」
対照的に、ソラは上機嫌だ。
調合の見学に加えて、多少の手ほどきも受けていたのがその理由だろう。
「万能の調合はない……その人を知り、最も適切な分量の薬草を配合する。基本を忠実に守った結果が、『忘却の』二つ名なのですね」
「噂通り、中々の方のようでしたね」
こなゆきも頷いた。
彼女としては、放浪を繰り返すという男の姿に、何か共感を覚えたのかもしれない。
「いずれ、あの遺跡からも離れるのでしょう」
「何をしたいか、がちょっと気になりますけどね」
渉は、少しだけ肩をすくめた。
研究にしろ、何にしろ、一人の方がいいという状況は少ないはずだ。
あるいは、物騒な目的であれば……?
(いや、考え過ぎかな)
本当に、ただの変わり者なのかもしれない。
「でも、わたしはちょっと笑っちゃいましたよ、最後のアレ」
不意にソフィアが、思い出したように笑った。
「ああ……あれは、そうですな」
「言われてみればって感じですけど」
剛とさくらも、である。
「わかってたなら、早く言えばよかったのにね」
「いや、まぁ、ね。実は私も気になってたんだけど、あの子、自分のことには無頓着でね」
不思議そうにハルが呟くと、エニーは困ったような、呆れたような表情を浮かべた。
薬を手渡すときに、アケルナルはこう言ったのだ。
『治っていないなら、伝えてくれ。早く眼鏡の度を測り直せ、とな』
「うう……拙者がサムライになれる薬は、やっぱりなかったのう……」
現実は非情である。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/07/20 19:18:17 |
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相談卓 米本 剛(ka0320) 人間(リアルブルー)|30才|男性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2014/07/25 07:26:22 |