ゲスト
(ka0000)
対決ビール&ワイン祭り
マスター:篠崎砂美

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/10/17 19:00
- 完成日
- 2015/10/22 01:24
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「オクトーバー・フェスト? ビール祭り?」
「ええ、そうです。ビール祭りです」
商店街のピロータ・アッフィラート駐在さんの話を聞いて、セレーネ・リコお嬢様がちょっとキョトンとした顔になりました。あまり聞き慣れない言葉のようです。
「サルヴァトーレ・ロッソのハンターたちから聞いたのですが、なんでも、ビールを飲んで騒ぐお祭りだとか」
「ふーん、今月の商店街イベントとしてはまあまあかしらねえ」
「ええ、悪くはないでしょう?」
お嬢様に、何か商店街の売り出しにいい口実はないかと、軽い感じで聞かれた駐在さんは、ハンターたちから聞きかじったお祭りを教えたというわけです。
リアルブルーのドイツから広まったビール祭りは、古い在庫を飲み尽くせとばかりに、盛大にビールを飲んで飲んで飲み尽くします。なんだか、とんでもない大騒ぎになってしまいそうですが、商店街の客寄せには、この上ないイベントでしょう。
「ちょっと待ったあ!」
そこへ、案内所受付嬢のフィネステラが口をはさんできました。
「そういうお祭りだったら、やっぱり、サグラ・デル・ウーヴァでしょ!」
ぶどうまつりの名前を挙げて、受付嬢が主張しました。
郷祭も近い今、ジェオルジからの本格的なブドウの出荷を前に、やはりここはワインで盛り上げるしかありません。
「いや、ビールにブルストというのは、なかなかに捨てがたいと思いますよ」
「何言ってるのよ、ワインにチーズが最高よ!」
なんだか、いつの間にか話が、ビールがいいかワインがいいかにすり替わってしまっています。
「でしたら、飲み比べと言うことで」
見かねた案内所のデレトーレ支配人が、二人の間に入りました。
「それよ!」
何か閃いたらしく、お嬢様がパンと手を叩きました。
「ビール祭り対ワイン祭り。あなたが選ぶのはどっち! ということで売り出しにしましょう」
「まあ、美味しいお酒が飲めるなら……」
「受けてたった、ワインのすばらしさを知らしめるのよ!」
駐在さんも受付嬢も、一気に乗り気です。
「あっ、でも、未成年者は麦茶とブドウジュースですから」
「くっ……」
さり気なく釘を刺されて、受付嬢が陰で悔しがりました。
「それじゃあ、華やかにいきましょう!」
かくして、「ビール&ワイン祭り」開催です。
「ええ、そうです。ビール祭りです」
商店街のピロータ・アッフィラート駐在さんの話を聞いて、セレーネ・リコお嬢様がちょっとキョトンとした顔になりました。あまり聞き慣れない言葉のようです。
「サルヴァトーレ・ロッソのハンターたちから聞いたのですが、なんでも、ビールを飲んで騒ぐお祭りだとか」
「ふーん、今月の商店街イベントとしてはまあまあかしらねえ」
「ええ、悪くはないでしょう?」
お嬢様に、何か商店街の売り出しにいい口実はないかと、軽い感じで聞かれた駐在さんは、ハンターたちから聞きかじったお祭りを教えたというわけです。
リアルブルーのドイツから広まったビール祭りは、古い在庫を飲み尽くせとばかりに、盛大にビールを飲んで飲んで飲み尽くします。なんだか、とんでもない大騒ぎになってしまいそうですが、商店街の客寄せには、この上ないイベントでしょう。
「ちょっと待ったあ!」
そこへ、案内所受付嬢のフィネステラが口をはさんできました。
「そういうお祭りだったら、やっぱり、サグラ・デル・ウーヴァでしょ!」
ぶどうまつりの名前を挙げて、受付嬢が主張しました。
郷祭も近い今、ジェオルジからの本格的なブドウの出荷を前に、やはりここはワインで盛り上げるしかありません。
「いや、ビールにブルストというのは、なかなかに捨てがたいと思いますよ」
「何言ってるのよ、ワインにチーズが最高よ!」
なんだか、いつの間にか話が、ビールがいいかワインがいいかにすり替わってしまっています。
「でしたら、飲み比べと言うことで」
見かねた案内所のデレトーレ支配人が、二人の間に入りました。
「それよ!」
何か閃いたらしく、お嬢様がパンと手を叩きました。
「ビール祭り対ワイン祭り。あなたが選ぶのはどっち! ということで売り出しにしましょう」
「まあ、美味しいお酒が飲めるなら……」
「受けてたった、ワインのすばらしさを知らしめるのよ!」
駐在さんも受付嬢も、一気に乗り気です。
「あっ、でも、未成年者は麦茶とブドウジュースですから」
「くっ……」
さり気なく釘を刺されて、受付嬢が陰で悔しがりました。
「それじゃあ、華やかにいきましょう!」
かくして、「ビール&ワイン祭り」開催です。
リプレイ本文
●ビール屋台
ビール&ワイン祭り当日、商店街は右と左に綺麗に分かれて飾りつけがされていました。
案内所前の中央広場前にはいくつものテーブルが所狭しと並べられ、通りに並ぶ屋台から買ってきたビールやワイン、美味しい料理などを自由に運んでこれます。CAM像もバックパック代わりに樽を背負わされて、お祭り気分を盛りあげています。
商店街の右側は、ビールエリアとなっていました。
ゆであがったブルストやアイスバインの美味しそうな香りが充満し、いくつものジョッキを両手でかかえた人たちがひっきりなしに行き来していきます。
「さあ、いらっしゃいませーなの。美味しいビールが、待ってますのー!」
白地に赤のチューブトップを着た銀 桃花(ka1507)が、ビール屋台の前で積極的に呼び込みをしています。
「い、いらっしゃいませー」
隣で同じ格好をしたリューナ・ヘリオドール(ka2444)も呼び込みをしていますが、こちらはちょっと恥ずかしそうです。
「ねえ。桃ちゃん、これって本当にリアルブルーでのビール販売の正式衣装なの?」
ちょっと疑わしそうな目で、リューナが桃花を見ました。ウエイトレスの衣装にしては、ちょっと派手でセクシーすぎます。
「もっちろんなのよ!」
もの凄い自信を込めて、桃花が答えました。
「なら仕方ないかあ……」
半信半疑ながらも、リューナが自分を納得させます。
「つまみを。ブルストとアイスバイン、それと……」
そこへ、榊 兵庫(ka0010)がお客として現れました。
「プレッツェルもお勧めなのよ」
「ビールは何にするの?」
さっそくお仕事です。桃花たちがつまみとビールを勧めます。
「それじゃヴァイスとデュンケルを」
兵庫が、並べられた樽から、好みのビールを選びます。せっかくのお祭りだと言うことで、サルヴァトーレ・ロッソから持ち込まれたビールもあるようです。上面発酵のエール、下面発酵のラガー。明るいピルスナー、黒のデュンケル。珍しいところでは、フレーバービールも各種とりそろえられています。
好みの苦み、酸味、ホップの香りと、様々な種類が選べます。
つまみとしては、定番のブルスト、ザワークラウト、唐揚げ、アイスバイン、ポテト、ベーコン、シュニッツェルにパンなど色々です。
「大漁、大漁」
かかえるようなジョッキとつまみを入れたバスケットをもらって、兵庫は確保してある席へとむかいました。
●ワイン屋台
左側は、ワインのエリアです。フルーティーな香りと、チーズなどの独特な香りがしてきます。
「こちら、お子様でも大丈夫な、ジュースやスイーツも販売しておりまーす」
こちらでは、明王院 雫(ka5738)がワインの屋台を開いていました。ワインになる前のブドウ果汁と、それを利用して作ったゼリー、ブドウのケーキ、ワイン煮込みのお肉など、誰もが食べられるメニューが、各種のワインと共に用意されています。
赤に白、そしてロゼ。炭酸の入ったスパークリング。度数の高いシェリー、甘味の強いアイスワイン、辛口、甘口、こちらも様々です。もちろん、発酵させる前のブドウ液も、良質のジュースとして楽しめます。
つまみには、ムール貝、シュリンプや牡蠣などの魚貝類。牛肉の煮込みや、チーズ、クラッカー、ケーキなど、幅広い味に合わせられます。
「ワインは、食べ物にも色々と応用が利く優れた飲み物なのです」
「やっほー。つまみの買い出しかい?」
屋台の前で冬樹 文太(ka0124)を見つけたシャトン(ka3198)が声をかけました。
「ワインには、チーズやクラッカーだよな」
「カナッペもありますよ」
屋台をのぞき込むシャトンに、雫が勧めました。
「うんうん、そやな。ケーキには、シャンパンやデザートワインも合うで」
「炭酸は嫌いだから、オレは赤ワインかなあ」
適当にオードブルを見繕うと、文太とシャトンはワインとつまみを持って、それぞれの席へとむかいました。
●Aテーブル
「おお、色々買い集めたなぁ」
他の屋台でつまみを買ってきた鵤(ka3319)が、すでにテーブルに着いていた文太を見て言いました。
山盛りのムール貝と生ハムスライスを、すでにチーズやケーキなどが並んだテーブルの上に追加します。
「なんだい、そりゃあ。腹にたまりそうもないつまみだなあ」
ケーキなんか、どうするんだとばかりに、鵤が言いました。
「甘いデザートワインには、甘いケーキが似合うんや」
「最初からデザートワインなんか飲んだら、味が分からなくなるだろうがぁ」
名前の通り、デザートのタイミングで飲むアイスワインは、濃厚で激甘の白ワインです。氷結ワインや、貴腐ワイン、干しぶどうワインなどがあります。
「ワインを楽しむんだから、いいんやて」
そう言って、文太が持ち出したのは白ワインの古酒です。
「ジェオルジ産の10年物やで」
「白は、赤ほど寝かす意味あるのかあ?」
鵤がツッコミます。澱が分離して味が洗練される赤は、年を経るほどに雑味がなくなるわけですが、白はそういうことではありません。もちろん、年と共にワインが呼吸し、水分が減って濃縮されていくので、白も風味は濃くなっていきます。
「ワインか。酒としての優劣はないが、酒の肴に合うのはやっぱりビールだろう」
すぐ横のテーブルでビールを飲んでいた兵庫が、会話に入ってきました。テーブルの上には、山盛りのポテトとブルスト、そして、プレッツェルが載っています。
「ビールの原料は麦、これは主食のパンに通じるものがある。だとすれば、ビールに合わない物はないというわけだ」
ローストされた麦の香り豊かなデュンケルをあおりながら、兵庫が言いました。
「何ごとにも、オールマイティなんてないやろ。魚には白、肉には赤や」
「そして、食前酒にデザートワイン。その場その場で、ワインを替えるのも楽しみってものだよねえ」
「ビールだって、種類はあるぞ。淡いピルスナー、濃いシュヴァルツ、ロゼにも似たハーフアンドハーフ」
何やら楽しげに、三人が銘柄をあげては色々と高説をたれていきました。
●Bテーブル
「それじゃ、支払いは任せたわよ」
「お、おい、ちょっと……」
「毎度ありがとうございますー」
リーラ・ウルズアイ(ka4343)においてきぼりにされた柊 真司(ka0705)が、慌てて桃花へ代金を支払います。
「お待たせー。ねえねえ、変わった服着た売り子さんがいて……」
リーラが、ワインの屋台でつまみなどを買い集めてきたルシェン・グライシス(ka5745)に駆け寄って言いました。
「それは、ぜひお持ち帰りしたかったなあ」
大胆にスリットの開いたドレスを着たルシェンが、ちょっと物欲しそうに言いました。残念ながら、売り子さんは売り物ではありません。
「でも、やっぱりこれですね」
ルシェンはそう言うと、確保していたテーブルにスパーキングワインと海老のカクテルと牡蠣のアヒージョを広げました。
「結局、俺の金で飲みたいだけだろが、お前たちは」
支払いを済ませてきた真司が、軽くなった財布を思って、女性陣に言いました。
「だったら、俺はビールだ。この炭酸の清涼感が、焼き鳥に合う合う♪」
負けじと、ビールとつまみをテーブルの上に広げます。
「あら、私はどっちも好きよ。あえてどちらかと言われたらワインだけれど」
ルシェンと共に、真司を挟むように座ってリーラが言いました。
「ワインだって、炭酸入りはあるわよ」
ルシェンが、真司の腕をとると、自分の胸とワイングラスを同時に押しつけました。
「なんなら、試してみます?」
チラチラと胸の谷間をワイン越しにちらつかせます。
居心地がいい……、いえ、居づらいと言うか、真司には逃げ場がありません。
「ええっと……」
「何顔赤くしてるのよ。ワインとビールでしょ、試すのは。このバカ真司」
対抗するかのようにリーラも、真司の腕に胸を押しつけてきます。まだ酔ってもいないのに、ますます真司の顔が赤くなりました。
「勘弁してくれ……。俺は、どっちかってえとのんびりビールを飲みたい派なんだ」
そう言うと、真司は一気にジョッキを空にしました。それを見て、両端から、女性陣が拍手します。
「じゃあ、もう一杯いこー」
「ビア・スプリッツアね」
そう言うと、リーラとルシェンが、真司のジョッキにピルスナーと白ワインをドボドボと注いでカクテルにしていきました。
●C・Dテーブル
「やっぱり、ワインはいいよねー」
甘口のロゼを前にして、同じ色のドレスを着たジュード・エアハート(ka0410)が言いました。男なのに、女物のドレスがよく似合います。
「お勧めはありますか?」
ユリアン(ka1664)が、ジュードに訊ねました。
「ワインにはこれかなあ」
ジュードが、ドライフルーツを練り込んだクリームチーズに手をのばします。
「美味しそうですね」
温めたホットワインを飲みながら、ユリアンが薄切りバケットにクリームチーズを塗ってカナッペにして口に運びました。
ホットワインは見た目ほどアルコールが飛んでいるわけではないので、ちびちびと飲んでいきます。
ワインは王国の特産でもありますし、嫌いではないのですが、やはりアルコールはたくさんは飲めません。気にせず飲める仲間たちが、少し羨ましくもあります。
「ほんと、このおつまみ美味しいですね」
グレープジュースを飲みながら、フレデリク・リンドバーグ(ka2490)が言いました。ワイン用のブドウから作ったジュースですので、濃厚です。チーズにも負けません。
本当はお酒を飲めるのですが、先日酔っ払ったときの記憶が飛んでしまったので、今回は用心のためにセーブしています。
隣のテーブルでは、年長者たちが飲んでいます。
「ふふっ、隣は楽しんでいるかしらあ」
そんなジュードたちの様子を肴に、沢城 葵(ka3114)がビールのジョッキをぐいっとあおりました。本当は焼酎党なのですが、ビールもいける口です。まあ、どんな酒も葵にとっては水みたいな物ですから。
「戦いが控えているからね。一息つくのもよかろうさ」
ブドウジュースを傾けながら、エアルドフリス(ka1856)が言いました。こういう席でお酒が飲めない体質なのは残念ですが、このブドウジュースは絶品です。チーズの盛り合わせも、ブドウによく合います。
「そろそろ寒くなってきたから、ホットワインとか美味しくなってクルヨネ」
チーズや、他のおつまみをパクパクと食べ比べながら、アルヴィン = オールドリッチ(ka2378)が言いました。
「リッチーはワイン党であるか。ならば、それがしはビールで対抗いたそう」
そう言うと、ダリオ・パステリ(ka2363)が、ひときわ大きなジョッキになみなみと注いだビールを一気に飲み干しました。
「オオ、いけるネ」
負けじと、アルヴィンもワインのおかわりをデカンタからグラスに注ぎます。
「なんの、まだまだ」
またもやダリオが一気飲みです。酒に対しては、完全なザルです。
「アレ? ルールーはお酒飲めないんダッケ? お子様?」
ちびちびとジュースを飲んでいるエアルドフリスを見て、アルヴィンが言いました。
「お子様だと? 体質だ!」
エアルドフリスがアルヴィンに言い返しました。飲めないものは飲めないのですから仕方がありません。
「まあまあ、楽しく飲もうヨ」
バンバンと、アルヴィンがエアルドフリスを叩いて言います。すでに、かなりできあがりつつあります。エアルドフリスがしらふなのをいいことに、すっかり絡みたいお年頃です。
「すっかり、エアはオールドリッチ係ねえ」
葵が、楽しそうに言います。
「俺が、いつアルヴィン係になったんだ。お守りはごめんだぞ」
寄っかかってくるアルヴィンを押しのけながら、エアルドフリスが葵に言い返しました。
「あら、違うの?」
「うむ」
わざとらしく、葵が聞き返しました。違わないと、ダリオがうなずきます。
「お前ら……」
「さてと、酒のおかわりとつまみの補充に行くかな」
涼しい顔をしたダリオが、エアルドフリスを見捨てて買い物に出かけました。
「むこうも盛りあがっているよね」
「なかなか楽しそうですね」
ユリアンと共に隣のテーブルを観察しながらフレデリクが言いました。
「アルヴィンさんは、エアさんで遊ぶ天才ですね」
隣のテーブルで、フレデリクが感心します。
「あー、エアルド師匠大丈夫かなあ」
「ちょっと遠征してくる」
そうユリアンに言うと、ほろ酔いのジュードが隣のテーブルへとむかいました。
「なんだか、みなさんお酒が入ると子供っぽいですよね。どうどうどう」
そう言うと、ジュードがエアルドフリスをお母さんのようにだきしめました。アルヴィンと二人に抱きつかれて、エアルドフリスが身動きできなくなります。
「だから、子供ではないと……。こ、こら、放せ……」
もがくエアルドフリスに、ますますジュードとアルヴィンが絡んでいきます。
「ああ、そこです、そこ!」
離れた所から、フレデリクが応援しました。お酒は飲んでないはずなのですが、雰囲気に酔っています。
「この酔っ払い共があ!」
ついに我慢できなくなったエアルドフリスが、伝家の宝刀ハリセンを取り出して、周囲の人間の頭をすぱぱぱーんと叩いていきました。
●Eテーブル
「これは、ビーフジャーキーに近いですね」
干し肉をつまみにビールを飲みながら、鹿東 悠(ka0725)が言いました。リアルブルーほど香辛料が利いているわけではありませんが、乾き物としてはナッツと一緒になかなかいけます。
「あら、なんでこんなとこでぼっちなん? こっち来て一緒に飲もうやん」
そんな悠を見つけた白藤(ka3768)が、自分たちのテーブルに問答無用で引っぱってきます。
「ビーフジャーキー? 懐かしいなあ、さすがにこっちの干し肉は硬すぎるもんなあ」
悠の囓っている干し肉を見て、シミジミと白藤が言いました。右手にワイン、左手にビールと、もうちゃんぽんにしているので、何を飲んでいるのかよく分かりません。
「それでは、味がよく分からんだろ」
なんというもったいない飲み方だと、扼城(ka2836)が白藤にツッコミました。さすがに、現在酒場の仮の主をしている扼城にとっては、この飲み方はちょっといただけません。
「そんなこと言わんで、両方とも飲んでみいや。ほれほれ」
味見しろと、白藤がワインとビールをいっぺんに勧めます。
「ふむ、どちらも悪くはないな。銘柄はなんだ?」
一口ずつお酒をテイストしてから、扼城が言いました。自分の店で提供することを視野に入れて、酒の産地を確かめます。ワインは昔からのジェオルジ産のようですが、ビールは最近できたポルトワールの地ビールのようです。
「ふむ、どちらも捨てがたいが、今日の気分は葡萄酒というところかのう」
白藤が勧める酒からワインの方を選んで、蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009)が言いました。
「確かに、ワインの方が洗練されていると思うな」
目が高いと、扼城が蜜鈴に同意しました。
「えー、ビールもいいんやー」
ジタバタする白藤を半ば無視して、扼城と蜜鈴が、カチンとワイングラスをならします。
「んっ、つまみのうなった? 悠、買ってきたってや」
テーブルの上が淋しくなったのを見て、白藤が言いました。ターゲット変更のようです。
「買い出しなら、俺が……」
すかさず、喬栄(ka4565)が、金をくれと手を差し出します。
「あんたは、ここで大人しい飲んどけばええの」
白藤が、ぱっぱっとその手を払いのけました。喬栄なんかにお金を預けたら、何に使われるか分かったものではありません。
「さあ、悠、はよはよぉ」
「仕方ありませんねえ」
白藤にせがまれ、やれやれという体で、悠がつまみの買い出しに出かけました。
「ほう、店をのう。次は、そこで飲むのも面白いかもしれぬのう」
扼城の話を聞いた蜜鈴が、ほろ酔いで答えました。
「つまみがくるまで暇やあ」
また白藤がジタバタしていると、突然陽気な音楽が聞こえてきました。
CAM像の前に作られたステージで、バンドの演奏が始まったようです。
ポンポンと、蜜鈴が、持っていた扇子で軽く手のひらを叩いて拍子をとります。それに合わせて、扼城も拍手をし始めました。
音楽に合わせて、一斉に手拍子が始まり、盛りあがっていきました。
「あー、こんな所で飲んでいたのか」
右手に白いヴァイス、左手に黒いデュンケルのビールジョッキを持ったゲルト・フォン・B(ka3222)が、音楽に乗るようなステップで流れてきました。
「あー、こっちこっち」
ついでに、テーブルの上に、頼んで運ばせていた料理をドンとおきます。肉料理にマッシュポテトとザワークラウトを山盛りです。
「よし、でかしたでー!」
悠を買い出しに行かせたことをさらっと忘れて、白藤がゲルトの持ってきた料理にかぶりつきました。
●ステージ前
「貴様らの右手には何がある!」
すっかりできあがったレーヴェ・W・マルバス(ka0276)が、ビールジョッキを高く掲げて叫びました。ちっこいドワーフ姐さん、絶好調です。
「ビールだー!」
商店街の半分から、歓声があがります。
「貴様らの左手には何がある!」
「ワインだ!」
レーヴェに合わせて、今度は反対側の半分から歓声があがります。
「そして、貴様らの口はなんのためにある!」
「飲むためだあ!」
「その通り!」
そう答えると、レーヴェががぼがぼと自らの口に酒を注ぎ込みました。さすがはドワーフ、豪快な飲みっぷりです。
「ようし、次はつまみじゃ、腸詰めじゃあ!」
「はいはい、こっちだよー」
桃花とリューナに誘われて、レーヴェがドドドドっと走っていきます。
「次はチーズじゃあ!」
「はーい、チーズはこっちでーす」
今度は、雫の屋台にむかって突進します。口には、ブルストを銜えたままです。
「さあ、貴様らも飲め!」
「ええと、私たちは警備中ですので……」
巡回していた駐在さんが、いきなりレーヴェにワインを勧められてやんわりと断りました。
「ワインは最高じゃぞー」
レーヴェが叫びます。
「それで、酔い潰れた人はどこなんですか?」
さらりとレーヴェをスルーして、駐在さんがエルバッハ・リオン(ka2434)に訊ねました。すでに、あっちこっちで、路上で大の字で寝ている人がいるとか、マッシュポテトの皿に顔を埋めている人がいるとか、CAM像によじ登っている人がいるとか、警備担当者は息つく暇もありません。
「でも、あれをほっといてもいいんですか?」
順番に各テーブルに突撃していくレーヴェをさして、エルバッハが聞き返しました。
「動ける人は、まだ大丈夫ですから。倒れたら引きずっていきましょう。それよりも、今倒れている人の方が、危険です」
「はい」
駐在さんにうながされて、エルバッハは通報のあったテーブルへと急ぎました。
●Fテーブル
「おい大丈夫か? 弱いんのに、無理しなんなや」
つまみの補充の買い出しの途中で、テーブルに突っ伏して寝ているシャトンを見つけて、文太が足を止めました。
「わりい、もうちょっと、寝かせて……」
手だけを軽く挙げて、シャトンが返事をします。
一人宴会モードの末に、いい気分になってしまったようです。
「これは、ダメだな」
そばにいた喬栄が、思わず拝みます。坊さんに拝まれるだなんて、縁起でもありません。
「要救護者がいるのはここですかー?」
そこへ、エルバッハと駐在さんが駆けつけてきました。
「おーい、ここや、ここ」
文太が二人を手招きします。誰かが、寝てしまっているシャトンを見て、警備の人を呼んでくれたようです。
「案内所に、救護センターができていますから、そこに運びましょう」
「おお、分かったで。さあ」
文太がシャトンをだきあげました。
「すいません、通してくださーい」
駐在さんとエルバッハが、先導して人々をかき分けていきました。
「もったいない、もったいない。ここは俺が片づけておくから、安心してくれ」
そう言うと、調子よく席に座った喬栄が、シャトンが飲み残した酒や肴をいただいていきました。ただ酒は最高です。
「あれ? あれはシャトンか?」
通りを運ばれていくシャトンに気づいて、ゲルトが自分の席から立ちあがりました。
「まったく、一人で飲んだりするから……」
そう言うと、ゲルトは駐在さんたちについていきました。
「やれやれ、弱い人は大変であるな」
つまみをかかえてテーブルに戻る途中のダリオが、その行列を見てつぶやきました。
「だが、しかし、それがしはまだ飲むのである!」
●案内所
「よいしょっと、やれやれ、幸せそうに寝てるなあ」
シャトンをベッドの上に転がして、文太が一息つきました。そっと、ほつれ髪をなおしてあげます。
「こんなんじゃ、誰かに連れ去られても、わからへんで」
そう言って、文太はシャトンを見つめました。
「まったく、案内所がお酒臭くて、やっ!」
次々と運び込まれてくる酔っ払いを見て、フィネステラが顔を顰めました。
「まあまあ、お祭りだから、いいではないか」
ラガーのジョッキ片手に、ゲルトが言いました。
「それでは、また巡回に出かけます」
そう支配人に言うと、エルバッハは駐在さんと再び出かけていきました。
「それで、どっちの方が盛りあがっているの? ビール? ワイン?」
ちょっと、興味津々でフィネステラが支配人に聞きました。
「どちらもちゃんと盛りあがっていますが、わずかにワインの方が売り上げが上でしょうか」
定時報告を確認して、支配人がフィネステラに答えました。
「やっぱり、ジェオルジ産のワインがあるからかなあ」
「さあ。でも、お祭りはこれからです。まだまだ分かりませんよ」
それぞれのテーブルで盛りあがる酔っ払いたちを回して、支配人が言いました。
広場では、まだまだこれからみんなが盛りあがるところです。
「さあ、酒樽を飲み干せー!」
ビール&ワイン祭り当日、商店街は右と左に綺麗に分かれて飾りつけがされていました。
案内所前の中央広場前にはいくつものテーブルが所狭しと並べられ、通りに並ぶ屋台から買ってきたビールやワイン、美味しい料理などを自由に運んでこれます。CAM像もバックパック代わりに樽を背負わされて、お祭り気分を盛りあげています。
商店街の右側は、ビールエリアとなっていました。
ゆであがったブルストやアイスバインの美味しそうな香りが充満し、いくつものジョッキを両手でかかえた人たちがひっきりなしに行き来していきます。
「さあ、いらっしゃいませーなの。美味しいビールが、待ってますのー!」
白地に赤のチューブトップを着た銀 桃花(ka1507)が、ビール屋台の前で積極的に呼び込みをしています。
「い、いらっしゃいませー」
隣で同じ格好をしたリューナ・ヘリオドール(ka2444)も呼び込みをしていますが、こちらはちょっと恥ずかしそうです。
「ねえ。桃ちゃん、これって本当にリアルブルーでのビール販売の正式衣装なの?」
ちょっと疑わしそうな目で、リューナが桃花を見ました。ウエイトレスの衣装にしては、ちょっと派手でセクシーすぎます。
「もっちろんなのよ!」
もの凄い自信を込めて、桃花が答えました。
「なら仕方ないかあ……」
半信半疑ながらも、リューナが自分を納得させます。
「つまみを。ブルストとアイスバイン、それと……」
そこへ、榊 兵庫(ka0010)がお客として現れました。
「プレッツェルもお勧めなのよ」
「ビールは何にするの?」
さっそくお仕事です。桃花たちがつまみとビールを勧めます。
「それじゃヴァイスとデュンケルを」
兵庫が、並べられた樽から、好みのビールを選びます。せっかくのお祭りだと言うことで、サルヴァトーレ・ロッソから持ち込まれたビールもあるようです。上面発酵のエール、下面発酵のラガー。明るいピルスナー、黒のデュンケル。珍しいところでは、フレーバービールも各種とりそろえられています。
好みの苦み、酸味、ホップの香りと、様々な種類が選べます。
つまみとしては、定番のブルスト、ザワークラウト、唐揚げ、アイスバイン、ポテト、ベーコン、シュニッツェルにパンなど色々です。
「大漁、大漁」
かかえるようなジョッキとつまみを入れたバスケットをもらって、兵庫は確保してある席へとむかいました。
●ワイン屋台
左側は、ワインのエリアです。フルーティーな香りと、チーズなどの独特な香りがしてきます。
「こちら、お子様でも大丈夫な、ジュースやスイーツも販売しておりまーす」
こちらでは、明王院 雫(ka5738)がワインの屋台を開いていました。ワインになる前のブドウ果汁と、それを利用して作ったゼリー、ブドウのケーキ、ワイン煮込みのお肉など、誰もが食べられるメニューが、各種のワインと共に用意されています。
赤に白、そしてロゼ。炭酸の入ったスパークリング。度数の高いシェリー、甘味の強いアイスワイン、辛口、甘口、こちらも様々です。もちろん、発酵させる前のブドウ液も、良質のジュースとして楽しめます。
つまみには、ムール貝、シュリンプや牡蠣などの魚貝類。牛肉の煮込みや、チーズ、クラッカー、ケーキなど、幅広い味に合わせられます。
「ワインは、食べ物にも色々と応用が利く優れた飲み物なのです」
「やっほー。つまみの買い出しかい?」
屋台の前で冬樹 文太(ka0124)を見つけたシャトン(ka3198)が声をかけました。
「ワインには、チーズやクラッカーだよな」
「カナッペもありますよ」
屋台をのぞき込むシャトンに、雫が勧めました。
「うんうん、そやな。ケーキには、シャンパンやデザートワインも合うで」
「炭酸は嫌いだから、オレは赤ワインかなあ」
適当にオードブルを見繕うと、文太とシャトンはワインとつまみを持って、それぞれの席へとむかいました。
●Aテーブル
「おお、色々買い集めたなぁ」
他の屋台でつまみを買ってきた鵤(ka3319)が、すでにテーブルに着いていた文太を見て言いました。
山盛りのムール貝と生ハムスライスを、すでにチーズやケーキなどが並んだテーブルの上に追加します。
「なんだい、そりゃあ。腹にたまりそうもないつまみだなあ」
ケーキなんか、どうするんだとばかりに、鵤が言いました。
「甘いデザートワインには、甘いケーキが似合うんや」
「最初からデザートワインなんか飲んだら、味が分からなくなるだろうがぁ」
名前の通り、デザートのタイミングで飲むアイスワインは、濃厚で激甘の白ワインです。氷結ワインや、貴腐ワイン、干しぶどうワインなどがあります。
「ワインを楽しむんだから、いいんやて」
そう言って、文太が持ち出したのは白ワインの古酒です。
「ジェオルジ産の10年物やで」
「白は、赤ほど寝かす意味あるのかあ?」
鵤がツッコミます。澱が分離して味が洗練される赤は、年を経るほどに雑味がなくなるわけですが、白はそういうことではありません。もちろん、年と共にワインが呼吸し、水分が減って濃縮されていくので、白も風味は濃くなっていきます。
「ワインか。酒としての優劣はないが、酒の肴に合うのはやっぱりビールだろう」
すぐ横のテーブルでビールを飲んでいた兵庫が、会話に入ってきました。テーブルの上には、山盛りのポテトとブルスト、そして、プレッツェルが載っています。
「ビールの原料は麦、これは主食のパンに通じるものがある。だとすれば、ビールに合わない物はないというわけだ」
ローストされた麦の香り豊かなデュンケルをあおりながら、兵庫が言いました。
「何ごとにも、オールマイティなんてないやろ。魚には白、肉には赤や」
「そして、食前酒にデザートワイン。その場その場で、ワインを替えるのも楽しみってものだよねえ」
「ビールだって、種類はあるぞ。淡いピルスナー、濃いシュヴァルツ、ロゼにも似たハーフアンドハーフ」
何やら楽しげに、三人が銘柄をあげては色々と高説をたれていきました。
●Bテーブル
「それじゃ、支払いは任せたわよ」
「お、おい、ちょっと……」
「毎度ありがとうございますー」
リーラ・ウルズアイ(ka4343)においてきぼりにされた柊 真司(ka0705)が、慌てて桃花へ代金を支払います。
「お待たせー。ねえねえ、変わった服着た売り子さんがいて……」
リーラが、ワインの屋台でつまみなどを買い集めてきたルシェン・グライシス(ka5745)に駆け寄って言いました。
「それは、ぜひお持ち帰りしたかったなあ」
大胆にスリットの開いたドレスを着たルシェンが、ちょっと物欲しそうに言いました。残念ながら、売り子さんは売り物ではありません。
「でも、やっぱりこれですね」
ルシェンはそう言うと、確保していたテーブルにスパーキングワインと海老のカクテルと牡蠣のアヒージョを広げました。
「結局、俺の金で飲みたいだけだろが、お前たちは」
支払いを済ませてきた真司が、軽くなった財布を思って、女性陣に言いました。
「だったら、俺はビールだ。この炭酸の清涼感が、焼き鳥に合う合う♪」
負けじと、ビールとつまみをテーブルの上に広げます。
「あら、私はどっちも好きよ。あえてどちらかと言われたらワインだけれど」
ルシェンと共に、真司を挟むように座ってリーラが言いました。
「ワインだって、炭酸入りはあるわよ」
ルシェンが、真司の腕をとると、自分の胸とワイングラスを同時に押しつけました。
「なんなら、試してみます?」
チラチラと胸の谷間をワイン越しにちらつかせます。
居心地がいい……、いえ、居づらいと言うか、真司には逃げ場がありません。
「ええっと……」
「何顔赤くしてるのよ。ワインとビールでしょ、試すのは。このバカ真司」
対抗するかのようにリーラも、真司の腕に胸を押しつけてきます。まだ酔ってもいないのに、ますます真司の顔が赤くなりました。
「勘弁してくれ……。俺は、どっちかってえとのんびりビールを飲みたい派なんだ」
そう言うと、真司は一気にジョッキを空にしました。それを見て、両端から、女性陣が拍手します。
「じゃあ、もう一杯いこー」
「ビア・スプリッツアね」
そう言うと、リーラとルシェンが、真司のジョッキにピルスナーと白ワインをドボドボと注いでカクテルにしていきました。
●C・Dテーブル
「やっぱり、ワインはいいよねー」
甘口のロゼを前にして、同じ色のドレスを着たジュード・エアハート(ka0410)が言いました。男なのに、女物のドレスがよく似合います。
「お勧めはありますか?」
ユリアン(ka1664)が、ジュードに訊ねました。
「ワインにはこれかなあ」
ジュードが、ドライフルーツを練り込んだクリームチーズに手をのばします。
「美味しそうですね」
温めたホットワインを飲みながら、ユリアンが薄切りバケットにクリームチーズを塗ってカナッペにして口に運びました。
ホットワインは見た目ほどアルコールが飛んでいるわけではないので、ちびちびと飲んでいきます。
ワインは王国の特産でもありますし、嫌いではないのですが、やはりアルコールはたくさんは飲めません。気にせず飲める仲間たちが、少し羨ましくもあります。
「ほんと、このおつまみ美味しいですね」
グレープジュースを飲みながら、フレデリク・リンドバーグ(ka2490)が言いました。ワイン用のブドウから作ったジュースですので、濃厚です。チーズにも負けません。
本当はお酒を飲めるのですが、先日酔っ払ったときの記憶が飛んでしまったので、今回は用心のためにセーブしています。
隣のテーブルでは、年長者たちが飲んでいます。
「ふふっ、隣は楽しんでいるかしらあ」
そんなジュードたちの様子を肴に、沢城 葵(ka3114)がビールのジョッキをぐいっとあおりました。本当は焼酎党なのですが、ビールもいける口です。まあ、どんな酒も葵にとっては水みたいな物ですから。
「戦いが控えているからね。一息つくのもよかろうさ」
ブドウジュースを傾けながら、エアルドフリス(ka1856)が言いました。こういう席でお酒が飲めない体質なのは残念ですが、このブドウジュースは絶品です。チーズの盛り合わせも、ブドウによく合います。
「そろそろ寒くなってきたから、ホットワインとか美味しくなってクルヨネ」
チーズや、他のおつまみをパクパクと食べ比べながら、アルヴィン = オールドリッチ(ka2378)が言いました。
「リッチーはワイン党であるか。ならば、それがしはビールで対抗いたそう」
そう言うと、ダリオ・パステリ(ka2363)が、ひときわ大きなジョッキになみなみと注いだビールを一気に飲み干しました。
「オオ、いけるネ」
負けじと、アルヴィンもワインのおかわりをデカンタからグラスに注ぎます。
「なんの、まだまだ」
またもやダリオが一気飲みです。酒に対しては、完全なザルです。
「アレ? ルールーはお酒飲めないんダッケ? お子様?」
ちびちびとジュースを飲んでいるエアルドフリスを見て、アルヴィンが言いました。
「お子様だと? 体質だ!」
エアルドフリスがアルヴィンに言い返しました。飲めないものは飲めないのですから仕方がありません。
「まあまあ、楽しく飲もうヨ」
バンバンと、アルヴィンがエアルドフリスを叩いて言います。すでに、かなりできあがりつつあります。エアルドフリスがしらふなのをいいことに、すっかり絡みたいお年頃です。
「すっかり、エアはオールドリッチ係ねえ」
葵が、楽しそうに言います。
「俺が、いつアルヴィン係になったんだ。お守りはごめんだぞ」
寄っかかってくるアルヴィンを押しのけながら、エアルドフリスが葵に言い返しました。
「あら、違うの?」
「うむ」
わざとらしく、葵が聞き返しました。違わないと、ダリオがうなずきます。
「お前ら……」
「さてと、酒のおかわりとつまみの補充に行くかな」
涼しい顔をしたダリオが、エアルドフリスを見捨てて買い物に出かけました。
「むこうも盛りあがっているよね」
「なかなか楽しそうですね」
ユリアンと共に隣のテーブルを観察しながらフレデリクが言いました。
「アルヴィンさんは、エアさんで遊ぶ天才ですね」
隣のテーブルで、フレデリクが感心します。
「あー、エアルド師匠大丈夫かなあ」
「ちょっと遠征してくる」
そうユリアンに言うと、ほろ酔いのジュードが隣のテーブルへとむかいました。
「なんだか、みなさんお酒が入ると子供っぽいですよね。どうどうどう」
そう言うと、ジュードがエアルドフリスをお母さんのようにだきしめました。アルヴィンと二人に抱きつかれて、エアルドフリスが身動きできなくなります。
「だから、子供ではないと……。こ、こら、放せ……」
もがくエアルドフリスに、ますますジュードとアルヴィンが絡んでいきます。
「ああ、そこです、そこ!」
離れた所から、フレデリクが応援しました。お酒は飲んでないはずなのですが、雰囲気に酔っています。
「この酔っ払い共があ!」
ついに我慢できなくなったエアルドフリスが、伝家の宝刀ハリセンを取り出して、周囲の人間の頭をすぱぱぱーんと叩いていきました。
●Eテーブル
「これは、ビーフジャーキーに近いですね」
干し肉をつまみにビールを飲みながら、鹿東 悠(ka0725)が言いました。リアルブルーほど香辛料が利いているわけではありませんが、乾き物としてはナッツと一緒になかなかいけます。
「あら、なんでこんなとこでぼっちなん? こっち来て一緒に飲もうやん」
そんな悠を見つけた白藤(ka3768)が、自分たちのテーブルに問答無用で引っぱってきます。
「ビーフジャーキー? 懐かしいなあ、さすがにこっちの干し肉は硬すぎるもんなあ」
悠の囓っている干し肉を見て、シミジミと白藤が言いました。右手にワイン、左手にビールと、もうちゃんぽんにしているので、何を飲んでいるのかよく分かりません。
「それでは、味がよく分からんだろ」
なんというもったいない飲み方だと、扼城(ka2836)が白藤にツッコミました。さすがに、現在酒場の仮の主をしている扼城にとっては、この飲み方はちょっといただけません。
「そんなこと言わんで、両方とも飲んでみいや。ほれほれ」
味見しろと、白藤がワインとビールをいっぺんに勧めます。
「ふむ、どちらも悪くはないな。銘柄はなんだ?」
一口ずつお酒をテイストしてから、扼城が言いました。自分の店で提供することを視野に入れて、酒の産地を確かめます。ワインは昔からのジェオルジ産のようですが、ビールは最近できたポルトワールの地ビールのようです。
「ふむ、どちらも捨てがたいが、今日の気分は葡萄酒というところかのう」
白藤が勧める酒からワインの方を選んで、蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009)が言いました。
「確かに、ワインの方が洗練されていると思うな」
目が高いと、扼城が蜜鈴に同意しました。
「えー、ビールもいいんやー」
ジタバタする白藤を半ば無視して、扼城と蜜鈴が、カチンとワイングラスをならします。
「んっ、つまみのうなった? 悠、買ってきたってや」
テーブルの上が淋しくなったのを見て、白藤が言いました。ターゲット変更のようです。
「買い出しなら、俺が……」
すかさず、喬栄(ka4565)が、金をくれと手を差し出します。
「あんたは、ここで大人しい飲んどけばええの」
白藤が、ぱっぱっとその手を払いのけました。喬栄なんかにお金を預けたら、何に使われるか分かったものではありません。
「さあ、悠、はよはよぉ」
「仕方ありませんねえ」
白藤にせがまれ、やれやれという体で、悠がつまみの買い出しに出かけました。
「ほう、店をのう。次は、そこで飲むのも面白いかもしれぬのう」
扼城の話を聞いた蜜鈴が、ほろ酔いで答えました。
「つまみがくるまで暇やあ」
また白藤がジタバタしていると、突然陽気な音楽が聞こえてきました。
CAM像の前に作られたステージで、バンドの演奏が始まったようです。
ポンポンと、蜜鈴が、持っていた扇子で軽く手のひらを叩いて拍子をとります。それに合わせて、扼城も拍手をし始めました。
音楽に合わせて、一斉に手拍子が始まり、盛りあがっていきました。
「あー、こんな所で飲んでいたのか」
右手に白いヴァイス、左手に黒いデュンケルのビールジョッキを持ったゲルト・フォン・B(ka3222)が、音楽に乗るようなステップで流れてきました。
「あー、こっちこっち」
ついでに、テーブルの上に、頼んで運ばせていた料理をドンとおきます。肉料理にマッシュポテトとザワークラウトを山盛りです。
「よし、でかしたでー!」
悠を買い出しに行かせたことをさらっと忘れて、白藤がゲルトの持ってきた料理にかぶりつきました。
●ステージ前
「貴様らの右手には何がある!」
すっかりできあがったレーヴェ・W・マルバス(ka0276)が、ビールジョッキを高く掲げて叫びました。ちっこいドワーフ姐さん、絶好調です。
「ビールだー!」
商店街の半分から、歓声があがります。
「貴様らの左手には何がある!」
「ワインだ!」
レーヴェに合わせて、今度は反対側の半分から歓声があがります。
「そして、貴様らの口はなんのためにある!」
「飲むためだあ!」
「その通り!」
そう答えると、レーヴェががぼがぼと自らの口に酒を注ぎ込みました。さすがはドワーフ、豪快な飲みっぷりです。
「ようし、次はつまみじゃ、腸詰めじゃあ!」
「はいはい、こっちだよー」
桃花とリューナに誘われて、レーヴェがドドドドっと走っていきます。
「次はチーズじゃあ!」
「はーい、チーズはこっちでーす」
今度は、雫の屋台にむかって突進します。口には、ブルストを銜えたままです。
「さあ、貴様らも飲め!」
「ええと、私たちは警備中ですので……」
巡回していた駐在さんが、いきなりレーヴェにワインを勧められてやんわりと断りました。
「ワインは最高じゃぞー」
レーヴェが叫びます。
「それで、酔い潰れた人はどこなんですか?」
さらりとレーヴェをスルーして、駐在さんがエルバッハ・リオン(ka2434)に訊ねました。すでに、あっちこっちで、路上で大の字で寝ている人がいるとか、マッシュポテトの皿に顔を埋めている人がいるとか、CAM像によじ登っている人がいるとか、警備担当者は息つく暇もありません。
「でも、あれをほっといてもいいんですか?」
順番に各テーブルに突撃していくレーヴェをさして、エルバッハが聞き返しました。
「動ける人は、まだ大丈夫ですから。倒れたら引きずっていきましょう。それよりも、今倒れている人の方が、危険です」
「はい」
駐在さんにうながされて、エルバッハは通報のあったテーブルへと急ぎました。
●Fテーブル
「おい大丈夫か? 弱いんのに、無理しなんなや」
つまみの補充の買い出しの途中で、テーブルに突っ伏して寝ているシャトンを見つけて、文太が足を止めました。
「わりい、もうちょっと、寝かせて……」
手だけを軽く挙げて、シャトンが返事をします。
一人宴会モードの末に、いい気分になってしまったようです。
「これは、ダメだな」
そばにいた喬栄が、思わず拝みます。坊さんに拝まれるだなんて、縁起でもありません。
「要救護者がいるのはここですかー?」
そこへ、エルバッハと駐在さんが駆けつけてきました。
「おーい、ここや、ここ」
文太が二人を手招きします。誰かが、寝てしまっているシャトンを見て、警備の人を呼んでくれたようです。
「案内所に、救護センターができていますから、そこに運びましょう」
「おお、分かったで。さあ」
文太がシャトンをだきあげました。
「すいません、通してくださーい」
駐在さんとエルバッハが、先導して人々をかき分けていきました。
「もったいない、もったいない。ここは俺が片づけておくから、安心してくれ」
そう言うと、調子よく席に座った喬栄が、シャトンが飲み残した酒や肴をいただいていきました。ただ酒は最高です。
「あれ? あれはシャトンか?」
通りを運ばれていくシャトンに気づいて、ゲルトが自分の席から立ちあがりました。
「まったく、一人で飲んだりするから……」
そう言うと、ゲルトは駐在さんたちについていきました。
「やれやれ、弱い人は大変であるな」
つまみをかかえてテーブルに戻る途中のダリオが、その行列を見てつぶやきました。
「だが、しかし、それがしはまだ飲むのである!」
●案内所
「よいしょっと、やれやれ、幸せそうに寝てるなあ」
シャトンをベッドの上に転がして、文太が一息つきました。そっと、ほつれ髪をなおしてあげます。
「こんなんじゃ、誰かに連れ去られても、わからへんで」
そう言って、文太はシャトンを見つめました。
「まったく、案内所がお酒臭くて、やっ!」
次々と運び込まれてくる酔っ払いを見て、フィネステラが顔を顰めました。
「まあまあ、お祭りだから、いいではないか」
ラガーのジョッキ片手に、ゲルトが言いました。
「それでは、また巡回に出かけます」
そう支配人に言うと、エルバッハは駐在さんと再び出かけていきました。
「それで、どっちの方が盛りあがっているの? ビール? ワイン?」
ちょっと、興味津々でフィネステラが支配人に聞きました。
「どちらもちゃんと盛りあがっていますが、わずかにワインの方が売り上げが上でしょうか」
定時報告を確認して、支配人がフィネステラに答えました。
「やっぱり、ジェオルジ産のワインがあるからかなあ」
「さあ。でも、お祭りはこれからです。まだまだ分かりませんよ」
それぞれのテーブルで盛りあがる酔っ払いたちを回して、支配人が言いました。
広場では、まだまだこれからみんなが盛りあがるところです。
「さあ、酒樽を飲み干せー!」
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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面白かった! | 14人 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/10/16 17:12:25 |
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お祭り会場はこちら? アルヴィン = オールドリッチ(ka2378) エルフ|26才|男性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2015/10/16 21:41:55 |