ゲスト
(ka0000)
【闇光】虚霧姫の憂鬱
マスター:のどか

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 不明
- オプション
-
- 参加費
1,500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 4日
- 締切
- 2015/10/23 22:00
- 完成日
- 2015/11/02 21:44
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
夢幻城の主、ジャンヌ・ポワソン(kz0154)は豪奢な家具に囲まれた自らの部屋で、ベッドの上に気だるげに身を投げ出し、半開きの目で何をするでもなく虚空を見つめていた。
『王』が城へ来てこのかた、いろいろと面倒なことに巻き込まれすぎた。
主賓の立場であるはずがいつの間にか客賓のような扱いになり、出たくも無い戦場への出陣を強いられ、ベッドすらも奪われて。
挙句の果てには城まで空を飛ばされた。
長い人生の中、これほどまでに目まぐるしい日々を過ごした事があっただろうか。
――彼女は、疲れていた。
これまで起きたこと、そしてこれから起きること。
そのすべてが億劫であり、大儀であり、憂鬱であった。
もはや言葉を口にすることも怠惰であり、何かを見ることも怠惰であり、挙句の果てには思考することすらも怠惰であった。
そんな彼女の視線がふと、天井に輝く淡い光を捉えていた。
焦点を合わせるわけでもないが、意識だけふんわりと、その輝きを認識する。
天井のシャンデリアを取り払われて設置されたそれは欲しくもなかった王からの供物であったが、今やすべてのことに怠惰であった彼女にはほんの一瞬目に触れたに過ぎず。
やがて安らかな呼吸音と共に、意識はまどろみの中へと消え去っていった。
●
――偵察の依頼を受け夢幻城の内部へと侵入したハンター達は、息を殺しながら城内の探索へと意識を張り巡らせていた。
今回求められた任務は大きく2つ。
夢幻城内部戦力を把握する事。
そして、攻略の糸口となる何かを見つけ出す事。
前者に関しては、スケルトンやデュラハンといった暴食と目される歪虚達。
それにオークやトロル、オーガと言った大小さまざまなサイズの怠惰の歪虚達。
今のところはそういった下級の歪虚の兵達ばかりであり、十三魔はじめ特筆すべき個体はまだ見受けられていない。
地上での出現報告から見て、おそらくあらかた外に出払っているのではないかと思われていた。
後者に関しては目的自体がやや曖昧であり何を見つけたらよいのかもわからない状況の中、闇雲に城の内部を探る他なく、見つけることができれば幸運とすら思われるものであった。
侵入したハンター達はいくつかのチームに分かれて城内を探索しており、それぞれで何かを掴めれば脱出する手はず。
ハンター達は広く入り組んだ西洋風の古石城の内部を、神経質なまでにゆっくりと、足を進めていた。
いや、慎重――と言うのには、若干の語弊がある。
どちらかと言えば、彼らが感じているのは身体にのしかかる謎の『重圧』であった。
まるで手足に枷をはめたかのように、全身が重く、気だるい。
風邪でも引いたかのようなその状態に、集中しなければならないにも関わらず意識は散漫なものとなり、進行に戸惑いを含んでいたのだ。
とある塔の螺旋階段を上り最上階へと辿り着いた時、ハンター達はうっすらと明かりの漏れる部屋を発見する。
漏れる隙間から恐る恐る中を覗いて見ると、その先には非常に豪華絢爛な家具が広がっていた。
見事な意匠のタンスや机、化粧台などの数々。
カーペットは燃え上がるような赤で、天井から照らされた輝きによって幻想的な色相を奏でてる。
そんな部屋の奥、ひと際豪奢な天蓋付きのベッドに横たわる存在を目にし、ハンター達はドクリと胸が高鳴り、そして同時にゾワリと背筋に冷たいものが通るのを感じていた。
ベッドの上で丸くなるように身を投げ出しながら、無防備に規則的な吐息を立てる美しい女性。
照らされた金色の長い髪が艶やかに光る、虚霧の姫――ジャンヌ・ポワソンの姿がそこにあった。
思わず息をのみ込み、そして殺すハンター達。
幸い、彼女の寝入りは深いようでこちらの存在に気づかれた様子は無い。
ならばまずは下手に刺激する必要もないと判断し、そのままぐるりともう一度部屋の中に視線を這わす。
そんな時、ふとハンター達の視線は天井で止まっていた。
塔の屋根を兼ねた高いドーム型の天井の中心、部屋を照らすその輝きはシャンデリアか何かかと思っていたものであった。
だが一度目にしてしまったらあまりに異様な光景に、ハンターたちは思わず意識を取られ――
「――あれあれあれ。フランカ、彼らは一体誰かしら?」
不意に、背後から響いたその声にハンター達はガバリと後ろを振り向いていた。
「あれあれあれ。ルチア、彼らは一体何かしら?」
ハンター達の目の前には燭台を持つ小豆色のメイド服の少女と、クロッシュを乗せた銀のトレンチを手に持つ藍色のメイド服の少女が、同じような恰好で首を傾げて立っていたのである。
一体いつの間に、どうして誰も気づかなかったのか。
意識が散漫になっていた、この城の空気のせいか。
それとも――
一層高鳴る鼓動と共に、どうしようもない焦燥感が身を襲う。
「分ったわフランカ。彼らはきっとお友達よ」
「分ったわルチア。彼らはきっと悪い人達よ」
言いながら2人の身から噴き出した濃い負のマテリアルに、ハンター達は一斉に己の武器を抜き放っていた。
「ねえねえフランカ、彼ら、私たちと遊んでくれるみたい」
「ねぇねぇルチア、彼ら、私たちと殺し合いをしてくれるみたい」
「久しぶりに来てくれたお友達よ、何をして遊ぼうかしら?」
「久しぶりに来てくれた獲物よ、どうやって殺そうかしら?」
同じ口調、トーンながらも似て非なる言葉を発する2人を前に、ハンター達は最大限の緊張と意識を張り巡らせていた。
ちらりと周囲の状況へと目を走らせる。
階段は彼女達の方向と反対側、駆ければ逃げだせる距離。
この踊り場には2人の不明な歪虚。
背後にはジャンヌの居る部屋。
逃げるか――戦うか。
「分ったわフランカ、鬼ごっこをしましょ」
「分ったわルチア、鬼ごっこをしましょ」
「私たちが鬼で、彼らを捕まえるの」
「私たちが鬼で、彼らを殺すの」
良いことを思いついた、と言わんばかりに2人のメイドはにっこりと笑いあって空いた手を握り合う。
「お城を出られたら、逃がしてあげましょ。その時はまた遊びに来てね」
「私たちが捕まえたら、殺してあげましょ。その時はいっぱい泣き叫んでね」
そう勝手に2人で頷き合ってハンター達の方へと向き直ると、手にした燭台やトレンチをガシャリとその場に取り落とした。
蝋燭の明かりに照らされて、落下の衝撃でぐちゃぐちゃになった料理が闇の中に浮かぶ。
「10数えたら捕まえてあげる。だから頑張って逃げてちょうだい」
「10数えたら殺してあげる。だから頑張って足掻いてちょうだい」
メイド達がそう口にし、大きな声で数を数え始めたとき――ハンター達は一斉に、自らのやるべき事へと駆け出していた。
夢幻城の主、ジャンヌ・ポワソン(kz0154)は豪奢な家具に囲まれた自らの部屋で、ベッドの上に気だるげに身を投げ出し、半開きの目で何をするでもなく虚空を見つめていた。
『王』が城へ来てこのかた、いろいろと面倒なことに巻き込まれすぎた。
主賓の立場であるはずがいつの間にか客賓のような扱いになり、出たくも無い戦場への出陣を強いられ、ベッドすらも奪われて。
挙句の果てには城まで空を飛ばされた。
長い人生の中、これほどまでに目まぐるしい日々を過ごした事があっただろうか。
――彼女は、疲れていた。
これまで起きたこと、そしてこれから起きること。
そのすべてが億劫であり、大儀であり、憂鬱であった。
もはや言葉を口にすることも怠惰であり、何かを見ることも怠惰であり、挙句の果てには思考することすらも怠惰であった。
そんな彼女の視線がふと、天井に輝く淡い光を捉えていた。
焦点を合わせるわけでもないが、意識だけふんわりと、その輝きを認識する。
天井のシャンデリアを取り払われて設置されたそれは欲しくもなかった王からの供物であったが、今やすべてのことに怠惰であった彼女にはほんの一瞬目に触れたに過ぎず。
やがて安らかな呼吸音と共に、意識はまどろみの中へと消え去っていった。
●
――偵察の依頼を受け夢幻城の内部へと侵入したハンター達は、息を殺しながら城内の探索へと意識を張り巡らせていた。
今回求められた任務は大きく2つ。
夢幻城内部戦力を把握する事。
そして、攻略の糸口となる何かを見つけ出す事。
前者に関しては、スケルトンやデュラハンといった暴食と目される歪虚達。
それにオークやトロル、オーガと言った大小さまざまなサイズの怠惰の歪虚達。
今のところはそういった下級の歪虚の兵達ばかりであり、十三魔はじめ特筆すべき個体はまだ見受けられていない。
地上での出現報告から見て、おそらくあらかた外に出払っているのではないかと思われていた。
後者に関しては目的自体がやや曖昧であり何を見つけたらよいのかもわからない状況の中、闇雲に城の内部を探る他なく、見つけることができれば幸運とすら思われるものであった。
侵入したハンター達はいくつかのチームに分かれて城内を探索しており、それぞれで何かを掴めれば脱出する手はず。
ハンター達は広く入り組んだ西洋風の古石城の内部を、神経質なまでにゆっくりと、足を進めていた。
いや、慎重――と言うのには、若干の語弊がある。
どちらかと言えば、彼らが感じているのは身体にのしかかる謎の『重圧』であった。
まるで手足に枷をはめたかのように、全身が重く、気だるい。
風邪でも引いたかのようなその状態に、集中しなければならないにも関わらず意識は散漫なものとなり、進行に戸惑いを含んでいたのだ。
とある塔の螺旋階段を上り最上階へと辿り着いた時、ハンター達はうっすらと明かりの漏れる部屋を発見する。
漏れる隙間から恐る恐る中を覗いて見ると、その先には非常に豪華絢爛な家具が広がっていた。
見事な意匠のタンスや机、化粧台などの数々。
カーペットは燃え上がるような赤で、天井から照らされた輝きによって幻想的な色相を奏でてる。
そんな部屋の奥、ひと際豪奢な天蓋付きのベッドに横たわる存在を目にし、ハンター達はドクリと胸が高鳴り、そして同時にゾワリと背筋に冷たいものが通るのを感じていた。
ベッドの上で丸くなるように身を投げ出しながら、無防備に規則的な吐息を立てる美しい女性。
照らされた金色の長い髪が艶やかに光る、虚霧の姫――ジャンヌ・ポワソンの姿がそこにあった。
思わず息をのみ込み、そして殺すハンター達。
幸い、彼女の寝入りは深いようでこちらの存在に気づかれた様子は無い。
ならばまずは下手に刺激する必要もないと判断し、そのままぐるりともう一度部屋の中に視線を這わす。
そんな時、ふとハンター達の視線は天井で止まっていた。
塔の屋根を兼ねた高いドーム型の天井の中心、部屋を照らすその輝きはシャンデリアか何かかと思っていたものであった。
だが一度目にしてしまったらあまりに異様な光景に、ハンターたちは思わず意識を取られ――
「――あれあれあれ。フランカ、彼らは一体誰かしら?」
不意に、背後から響いたその声にハンター達はガバリと後ろを振り向いていた。
「あれあれあれ。ルチア、彼らは一体何かしら?」
ハンター達の目の前には燭台を持つ小豆色のメイド服の少女と、クロッシュを乗せた銀のトレンチを手に持つ藍色のメイド服の少女が、同じような恰好で首を傾げて立っていたのである。
一体いつの間に、どうして誰も気づかなかったのか。
意識が散漫になっていた、この城の空気のせいか。
それとも――
一層高鳴る鼓動と共に、どうしようもない焦燥感が身を襲う。
「分ったわフランカ。彼らはきっとお友達よ」
「分ったわルチア。彼らはきっと悪い人達よ」
言いながら2人の身から噴き出した濃い負のマテリアルに、ハンター達は一斉に己の武器を抜き放っていた。
「ねえねえフランカ、彼ら、私たちと遊んでくれるみたい」
「ねぇねぇルチア、彼ら、私たちと殺し合いをしてくれるみたい」
「久しぶりに来てくれたお友達よ、何をして遊ぼうかしら?」
「久しぶりに来てくれた獲物よ、どうやって殺そうかしら?」
同じ口調、トーンながらも似て非なる言葉を発する2人を前に、ハンター達は最大限の緊張と意識を張り巡らせていた。
ちらりと周囲の状況へと目を走らせる。
階段は彼女達の方向と反対側、駆ければ逃げだせる距離。
この踊り場には2人の不明な歪虚。
背後にはジャンヌの居る部屋。
逃げるか――戦うか。
「分ったわフランカ、鬼ごっこをしましょ」
「分ったわルチア、鬼ごっこをしましょ」
「私たちが鬼で、彼らを捕まえるの」
「私たちが鬼で、彼らを殺すの」
良いことを思いついた、と言わんばかりに2人のメイドはにっこりと笑いあって空いた手を握り合う。
「お城を出られたら、逃がしてあげましょ。その時はまた遊びに来てね」
「私たちが捕まえたら、殺してあげましょ。その時はいっぱい泣き叫んでね」
そう勝手に2人で頷き合ってハンター達の方へと向き直ると、手にした燭台やトレンチをガシャリとその場に取り落とした。
蝋燭の明かりに照らされて、落下の衝撃でぐちゃぐちゃになった料理が闇の中に浮かぶ。
「10数えたら捕まえてあげる。だから頑張って逃げてちょうだい」
「10数えたら殺してあげる。だから頑張って足掻いてちょうだい」
メイド達がそう口にし、大きな声で数を数え始めたとき――ハンター達は一斉に、自らのやるべき事へと駆け出していた。
リプレイ本文
●鬼さんこちら
「――逃げるよ!」
咄嗟に叫んだイルム=ローレ・エーレ(ka5113)のよく通った声が塔の中に響き、ハンター達は弾かれたように下階を目指して駆け出していた。
「ふふ、いっぱい逃げないとすぐに追いついちゃうから」
声をそろえて数を数えるルチアとフランカの2人のメイドの姿をよそに、全力で元来た道を引き返す。
塔の壁に沿って張り付くように伸びる螺旋階段。吹き抜けとなった中央からは遥か下方に城の石畳が覗き、その先にうっすらと城内の明かりがこぼれるように灯っていた。
「ああっ、もっと詳しく見たかったのに! 何のためにわざわざこんな所まで……!」
石造りの階段を駆け下りながら、名残惜しそうに上階の部屋を見上げて言葉を吐き捨てるルスティロ・イストワール(ka0252)。
「敵地の真ん中で歪虚2匹となんかやってられるかってーの。アレをもう一回拝むのは、一度ズラかってからでも遅くはねぇさ」
彼を宥め、諫めるように口にしたボルディア・コンフラムス(ka0796)の言葉に、ルスティロ自身もも「わかっているさ」と頷いて、階下へ意識を巡らせる。
「彼女らは『10数えたら』……と言っていたな。そろそろか」
「こ、こんな状況で悠長に数なんて数えてないっすよ!?」
自身の盾の表面を指で叩きながら、クローディオ・シャール(ka0030)はふむりと喉を鳴らした。
それを聞いた神楽(ka2032)は目を白黒させてわめくも、視線を上の階へと走らせていた。
上階にはハンター達を飲み込むかのように広がる虚空の闇。
そんな暗幕の先、ぼうと蝋燭に火を灯したかのような明かりがたなびいたのを皮切りに、まるで道々の燭台に順に明かりをつけるかのような光の筋が、頭上より迫っていた。
「みんな避けるっす!」
神楽が叫ぶと同時に、ハンター達は一斉に階段を飛び抜かすように足元を蹴り上げた。
ほんの数瞬の後、すぐ背後の壁に真っ赤に燃える火柱が突き刺さったかと思うと、それは石造りの壁を貫いて城の外へと貫いてゆく。
「何だ今のは!?」
「わかりません……ただ、おそらく先ほどのメイドの放ったものでしょう」
着地に足を取られそうになってつんのめりながら問うたジャック・エルギン(ka1522)に、天央 観智(ka0896)もまたずり下がった眼鏡の位置を正しながら含むように答える。
今の一撃は牽制だったのか、第二射が飛んでくる気配は無い。
代わりに上の方から規則正しい、かつ早い速度で石畳を叩く靴底の音が響いてきていた。
「あと少しで下階だ、急ごう!」
眼前に迫ってきた下階の明かりに、キヅカ・リク(ka0038)は仲間たちを鼓舞する。
が、同時に眉をひそめたボルディアがその逸る気持ちを抑えるように左手を後続へと掲げた。
「まて、上からの足音『1つしかない』ぞ……もう1つはどうした?」
そう語るや否や、トンネルを風が吹き抜けるかのような轟音と共にバサバサとはためく衣類の音が塔の中に響く。
ハンター達の真横――螺旋の中心の吹き抜けを、ミサイルのように直滑降する赤い物体。
その物体は階下の石畳に突き刺さるかのように粉塵を巻き上げて降り立つと、くるりとハンター達の方へと向き直ってスカートの先をつまみ上げた。
「さぁ、誰から捕まえちゃおうかしら?」
そのままぺこりとお辞儀をすると、低く下げた重心のまま、ハンター達へ向かって一気に階段を駆け上がる。
その動きに考える間も持たず、細剣の輝きが石段に閃いた。
咄嗟にレイピアを抜き放ったイルムが、階段を駆け下りる勢いのままにルチアへと刃を翻していたのだ。
「アハァ……♪」
その動きにルチアの表情はにっこりと満面の笑みへと変わると、掌をイルムの方へと向けて払いのけるように振るう。
刹那、人形質の掌紋を突き破るように現れた短剣の刃が、軽い金属音と共にレイピアの一閃を遮った。
「みんな、今のうちだよ……!」
イルムは振り返らずに自身の背後に道だけ開け、力任せに小さなルチアの体を刃で押し切る。
「先には行くとは言わんぞ……すぐに追いつけ!」
クローディオがそう言い残して、残るハンター達は光ある城内へと身を滑り込ませた。
ルチアはイルムに押し込まれた反動でくるりと宙返りをして距離を取ってみせると、乾いた技巧音を響かせて刃を腕の中へと戻す。
「こんなにかわいらしい女の子とダンスだなんてとても魅力的だけれどね……たまには焦らす事だって駆け引きの1つさ」
そのまま踵を返して塔を脱するイルムを、笑顔で見送るルチア。
上階から駆け下りたフランカが合流すると、掌どうしを合わせあった。
「ルチア、追わなくて良いのかしら?」
「せっかくだもの、もっとじっくり遊びましょ」
そう言って確かめ合うようにお互いに頷いてみせると、離れてゆくハンター達の背中へ向かって同時に地面を蹴りだしていた。
「おらっ、どけどけッ!」
ボルディアの振るった戦斧が道行くスケルトンを薙ぎ払う。
竜巻の如き一振りに骨の雑魔は為すすべなく打ち砕かれてゆく。
「くそっ……城に入ってからずっとだ。どうにかならねえもんかな」
手の感覚を確かめるように、自らの獲物の柄を握りしめるボルディア。
彼女が感じていたのは再三の体の不調であった。
その気だるげな身体は戦闘行為に大きく支障を来すものでこそ無かったものの、いつもの得物がずっしりと、まるで枷を嵌めたかのような重さとなって腕に掛かる。
「どうも脳髄に纏わりつくな……これも汚染の影響なのか?」
クローディオは眉間に皺を寄せながら、自身の身体にキュアの光を流し込む。
僅かに気分が良くなったような気もしたが、すぐに変わらず伸し掛かってきた不快感に、一層眉間に力を込める。
「この先に……分かれ道があったはずです。通路上の兵を除けば敵の数は少数ですし……ここは分かれませんか?」
手元のメモ帳をめくりながら口にした観智に、ジャックは力強く頷く。
「分かった。なら、俺たちが分かれるぜ。良いなクローディオ、ルスティロ?」
「もちろんさ。少々息苦しいけど、まだまだ知りたいことは沢山あるんだ」
「そう言うことだ。じゃあな、幸運を祈るぜ!」
T字路に差し掛かり、足も止めずに3人が片方の道へと歩みだす。
残るハンター達は反対の方向へと身を潜らせると、しばらくしてメイド達が分かれ道へと差しかかっていた。
「あれあれフランカ、彼ら分かれちゃったわ」
「さてさてルチア、どっちから行こうかしら」
そうは口にするものの、2人の視線は同じ方向を指し示し。
息もつかぬ間に、その姿は通路の奥へと消え去っていた。
●手の鳴る方へ
ジャック達と別れた5人は、広めの回廊を城を振り返る事無く全力で疾走していた。
「この先、右の通路に何か居るっぽいっす……まだ分かれない方が良いかもしれないっすね」
感覚を研ぎ澄ませながら物音に意識を集中する神楽。
彼ら霊闘士の力で少しでも先の様子をこうして察知しながら進むことにより、余計な戦力との交戦は極力避けられていたのだ。
「しかし、石造りの城っすか……木造なら火事の1つでも起こしてみせるんすけど」
一面を囲む石の壁に、神楽は口惜しそうに吐息を漏らす。
「観智さん、他に分かれ道は?」
問いただすリクに、観智はメモをめくりながら小さく唸る。
「まだしばらく行かないと、ありませんね……細かい道はあるようですが、そちらはどう繋がっていることか」
「なるほど……」
そこで初めてリクは後ろを振り返り、同時にボルディアへと目配せをした。
そうして、2人揃って踵を返して元来た道を引き返す。
「ちょっ……何してるんすか!?」
「どうやらこっちは追ってこないようだし……僕らはもう一度、あの塔に戻るよ。『アレ』が何か、やっぱり確かめたいんだ」
「そう言うことで、悪いが退路は任せた。最悪……置いてって貰っても構わないぜ。見たものは、コレで伝えるからよ」
リクの言葉を補うように、ボルディアが手元のトランシーバーを振りかざしながら声を張る。
「……分かった、必ず迎えに行くよ。なに、レディを待たせるような真似はしないさ」
遠ざかりながら笑いかけるイルムの言葉に「レディ?」と目を丸くするボルディア。
リクも合わせて苦笑して見せるも、手元のゲーム機を手近な部屋に放り込んだ。
そうして再びボルディアへと目配せをすると、彼女は壁沿いの大きな窓ガラスへと斧を振りかぶって一思いに打ち砕いた。
音に気付いて集まったスケルトンや怠惰兵たち。
その目を盗んで、窓の外の外壁へとアンカーで釣り下がる。
窓の方へと集まりって外をのぞき込む歪虚達であったが、すぐに部屋の中から響い騒がしい電子音に一斉に意識を取られる。
そうしてダミーの部屋の中へとわらわら向かっていく雑魔達を尻目に、2人は回廊へと戻って元来た道を引き返していくのであった。
「さてさて、どこまで逃げるのかしら?」
「さてさて、そっちに出口はあるかしら?」
ケラケラと笑いながら、両の指を重ねてハートの形を作るフランカ。
瞬間、赤い火花が飛び散って、ハート型の火柱がハンター達の背中を襲う。
「うおっと、あっぶねぇな!」
髪の毛の先を焦がしながら、寸でのところでそれを躱すジャック。
後ろ目に振り返ると、ルチアが勢いをつけて前へと踏み出すのが見て取れた。
飛び上がった小柄な身体が宙でくるりと回転する。
まるでバレリーナのように捻る身体から脚を伸ばし、遠心力を乗せた勢いで足先から針を乱れ打つ。
「クッ……ただ逃げてばかりもいられんか!」
直撃を察したクローディオはその場に足を留めると、シールドを頭上に掲げて迎撃の姿勢を取る。
針の流星群をはじき返して再び踵を返すと、勢いのまま頭上を飛び越えたルチアがとんと彼の正面に着地をする所であった。
「あらあら、これで終わりなのかしら?」
くるりと身を翻して両の手を振るルチア。
それぞれの掌から刃が飛び出し、クローディオの眼前へと閃めいた。
「させないよ!」
迫るルチアの鼻先をルスティロの銃弾が掠める。
ルチアがのけ反るようにバック宙で距離を取ると、詰め寄るようにジャックが踏み込んでいた。
「レイピアは防げてもな、こいつならどうだ!」
ゴウと唸りを上げて迫る大剣。
小柄なルチアの身体であればそのまま押しつぶしてしまいそうなそれであったが、彼女は笑いながら半身反らしてそれを避け、さらに一歩、大きく後ろへと距離を取った。
「なんだ、鬼のくせに逃げてばっかりかよ」
「違う、ジャック! 後ろだ!」
クローディオの叫びに、咄嗟に後ろを振り返り、そして身を捻るジャック。
直後に、彼の服の裾を巻き込んでハートの熱線が回廊を突き抜けた。
何とかジャックが躱したその先にはルチアの姿。
迫る魔砲の輝きを前にルチアはその目を一瞬見開き……そしてにっこりと細める。
「うふふ、私たちの愛を重ねて――」
魔砲を前に、胸元でフランカのそれと同じく両手の指でハート型を作って見せるルチア。
「ラブリィ……バリアッ!」
気の抜けた掛け声と共に彼女の眼前に現れたハート型の障壁。
その面に触れた魔砲が障壁に直撃し、反射する。
射線を新たにした熱線は、回避運動を取った直後のジャックへと迫る。
「んなっ……!?」
目の前に迫った火柱の輝きに目を見開き、真正面から熱射を受けるジャック。
爆炎の晴れた先、周囲にくすぶる火の手を残しながら、焼け爛れたジャックの姿がよろりと這い出していた。
「ジャック!」
クローディオの魔術により、すぐにその身体の炎は消し止められる。
それでも、痛々しく焼けた皮膚の様子から魔砲の威力は押して知るものであった。
「ったく……おっかねえメイドだな。男のロマンが壊れちまうぜ」
そう、強がるように鼻で笑い飛ばすジャック。
確かにダメージはあるが、戦意が潰えたわけではない。
「そんなに僕らと遊びたいかい? なら、とことん付き合ってあげるよ!」
ルチアの足元を牽制するように、トリガーを引いたルスティロ。
一先ずジャックから気を反らさなければ。
「――次はあなたが遊んでくれるの?」
牽制の銃弾を難なく交わしたルチアは、その身軽な動きで一息にルスティロと目と鼻の先まで迫る。
鼻を突き合わせる距離でにっこりと微笑み掛けると、ルスティロの刃が鞘から抜き掛けに閃いていた。
ルチアは真上に膝を突き上げ、スネから円月刃のような厚刃の刀身を突き出すと、レイピアの一撃を受け止める。
「まともにやり合うつもりはないんだけどな……」
そうつぶやいた視界に、火柱の輝きを捉えた。
回避は間に合わないか――そう思った射線上にクローディオが立ちはだかる。
「くぅ……ッ!」
盾で受け止め、渾身の力で耐える。
弾ける火の粉が頬や足を焼くも、直撃よりはましだと歯をくいしばるのだ。
「色男ばっかり追ってねーで、俺の相手もしてくれよな!」
開けた道を、ジャックが駆けた。
身体の重さに苛まれながらも振るった大剣を、ルチアは地面に手を突いて足の円月刀で迎え撃つ。
剣閃同士がぶつかり合い、火花が散る。
「腕の刃じゃ無理でも、こっちなら大丈夫よ?」
クスクスと笑いながら、腕で身体を支えてコマのように回り斬るルチアに押され気味のジャック。
その間にクローディオとルスティロが先へと抜けて、距離を稼ぐ。
ジャックもまた力任せに円月刀をはじき返して、先を急いだ。
「こんな時に……ごめん、退いて」
曲がり角からぬっと姿を現した大型の巨人へと、鋭い眼光を浴びせるルスティロ。
巨人はひるんだ様に半歩後ずさった。
後方では飛び上がったルチアの足先から再びの針。
ハンター達の足元を縫うように放たれたその攻撃に、一瞬歩みが止まる。
その勢いのまま足の刃を振るうルチアであったが、標的となったルスティロは咄嗟に身を翻して怠惰兵の脚の裏へと回り込んだ。
刃の一閃に巨人の足は真っ二つ。
巨体が、地面に転倒する。
「チャンスだ、こいつを壁にして――」
巨体を壁に乗り越えようとしたジャックへ、再びの魔砲。
クローディオが受け止め事なきを得るも、火炎の中から飛び出すように3人の間に飛び込んできたルチアが、ルスティロの眼前で笑顔を浮かべる。
「――つーかまえた♪」
「ルスティロ……!」
ジャックの前で、ルチアの全身から数多の刃が飛び出すのが見えた。
刹那、吹き出した数多の飛沫が美しい回廊の壁を真っ赤に染め上げたと言う。
「――やったよ、一人捕まえたよフランカ」
「そうね、ルチア」
手を取り合って戦果を喜ぶ2人の前で、血だまりに沈んだルスティロを抱きおこすクローディオ。
「お前ら……!」
怒りに任せて振ったジャックの刃。
しかし怪我のせいか、それとも全身の気だるさのせいか、力なく降られた一撃は2人の間で空を切る。
「他の2人はどうしようかしら?」
「いえ……ちょっと待って、ルチア。あれを見て?」
肩で息をするジャックの前で、フランカがどこかを指さした。
「あらあら……もうあんな所に」
「あらあら……たいへん」
「「――追いかけなきゃ」」
直後、2人のメイドの身体はガラスの破砕音と共に窓の外へと消え去っていた。
虚ろな視線の先、その背中を追う気力はジャックの中に残されてはいなかった。
●憂鬱なる目覚め
じめりとした空気の中、リクとボルディアの2人は塔の最上階へと戻って来ていた。
「それじゃぁ、僕が中を見て来るから……何かあったら、これで引っ張り出してね」
「分かったぜ。見張りは俺に任せな」
どんと胸をはって答える彼女に、リクは一度だけ頷き返すと大きな扉に手を掛けてそっと中へと足を踏み入れていた。
塔の最上階――ジャンヌの部屋は、相変わらずの様子であった。
豪奢な家具はあの後使われた様子はなく、ベッドの上では相変わらず部屋の主が気持ちよさそうに寝息を立てている。
(――寝姿だけ見れば、普通の人間と大差ないんだよなぁ)
それでも、寝ていても分かる全身から発せられる負のマテリアル。
そしてこの部屋に足を踏み入れた瞬間からより重く、鉛のように圧し掛かる全身の重みに自分の置かれている状況を再認識する。
それでも目的のため――リクはジャンヌの眠りの深さを確かめるようにもう一度目線を配ると、そのまま視線を天井へと向けていた。
彼の瞳に映ったのは青々と光る1つの大きな『結晶体』であった。
ドーム型の天井にすっぽりと収まるそれは、大きさ4~5mはあるであろう、それは巨大なもの。
その輝きは決して澄んだものではなく、ほの暗くて見えない中心部から、青い輝きが部屋を照らすかのように漏れ出している。
(一体なんなんだ……ありゃ)
扉の隙間から中の様子をのぞき込むボルディアも、その結晶体に目を奪われていた。
少なくとも、人間の手で作り出されたものではない。
それは結晶体が光と共にぼんやりと放っている負のマテリアルの存在から明らかであった。
その時、不意にボルディアの耳に騒めく階下の音が届いていた。
慌てて螺旋階段の吹き抜けに目を落とすと、骸骨と巨人の群れがわらわらと石段を登り始めるのが視線の先に映りこむ。
(……ちぃ、意外と早く感づきやがったか。そりゃ、一度ここに来ているわけだしな)
ボルディアはリクに繋がれたロープの端をわずかに引っ張る。
「戻るぞ」の合図であったが、リクは静かに頭上の結晶体を見上げると大きく息を吸い込んだ。
(これで破壊されてしまったとしても……突いてみるべきか)
その正体が何であるにしても、人間にとって良くないものであることは間違いない。
音を立てないように素早く銃を抜き放つと、重い体に鞭を打つように力を込めて、照準を合わせた。
「――ん……う」
不意に甘く扇情的な吐息が塔に響き、リクとボルディアは背筋に冷たい棒を差し込まれたかのような悪寒が走った。
この部屋を訪れてからずっと、その存在を意識しなかったことは無い。
常に視界の端に捉え、その動向には細心の注意を払っていた。
だからこそ、直面するであろうその状況は措定しうる最悪の事態。
――決して起きて欲しくはなかった
「んっ……ぇ……だれ……?」
寝ぼけ眼を擦るそのしなやかな指の先で、城の主ジャンヌ・ポワソンの宝石のように澄んだ青い瞳が銃を構えるリクの姿をハッキリと捉えていた。
●捉まえた
先の分岐でメイド達の目から逃れた観智、神楽、イルムの3人は脱出ルート確保のため城の外――開けた庭を目指して石城の中を駆け抜けていた。
「観智さん、あとどのくらいっすか!?」
「次の角を右へ行って階段を下りれば……ポイントへは一直線です」
観智の言葉を受けて、神楽はそっと耳に手を当てて意識を研ぎ澄ます。
「敵は……たぶん、居ないと思うっす。このまま突っ切るっすよ!」
そうして頷くと、駆ける足に勢いを増す。
そんな中で、ザザっと乾いた電子音が3人の腰から響く。
『こちらジャックだ……聞こえてっか?』
トランシーバーから響くジャックの声に、イルムが手に取り応答する。
「聞こえてるよ、ジャック君。そちらは無事かい?」
『ルスティロがやられた……大丈夫、命はあるぜ。今……クローディオが付きっ切りで治療している。場所は……1階の東の部屋だ』
「それで、メイドの子達は?」
『悪い……取り逃がした。いや……正確には見逃された。畜生、俺も大分やられたもんだ……見張りに立つので精一杯だぜ』
乾いた笑いを零すジャックであるが、その口調から相当なダメージを受けているであろう事は確かである。
それでも、仲間たちの無事を耳にして一つ安堵の息を漏らす。
「それで……結局のところメイドさん達はどちらに?」
『それだ……気を付けろ。最後にあいつらが見ていたモン……あれはきっと――』
観智の問いにジャックが答えようとした直後――けたたましい音と共に頭上から降り注いだガラス片に、咄嗟に目を伏せるハンター達。
同時に割れた窓から転がり込むように回廊へと着地した赤いメイド服の少女を前にして、観智は何か含んだ笑みを浮かべて見せた。
「なるほど……ゴールに近い、こちらに来たということですね」
「うふふ、みぃつけた♪」
間髪入れずに、床を蹴ったルチア。
あっという間にハンター達との距離を詰め、その目と鼻の先に腕を振り上げる。
「熱烈なアンコール、できれば好意と受け取らせて欲しいかな」
先ほどもそうであったように、イルムが一足の間合いでルチアに迫り、振るい上げられた手刀にレイピアで応える。
勢いの差か今度は押され気味のイルムであったが、ルチアがそのまま彼女の頭上を越えるように身を捻りあげると、その隙を突いて一目散に脱する。
「追われるならマネキンメイドより、ジャンヌちゃんの方がよかったっす~!」
「それはそれで……面倒なことになりそうですけれどね」
完全に欲望丸出しの神楽の悲痛の叫びに、観智は苦笑するように答えた。
だが実際の所は笑っている暇などなく、段を飛び越えるようにして階段を一気に駆け下りて行く。
「――! 伏せるっすよ!」
咄嗟に叫んだ神楽の言葉に、他の2人は伏せようとし――実際の所は、勢いのまま地面を転がった。
その頭上を、天窓から突き刺さった真っ赤な光線が通り抜けてゆく。
「そんなに急いでどこへ行くの? もう少しゆっくり、殺し合いましょ?」
「ごめん被るっすよ!」
ハンター達は体制を立て直すと、割れた天窓から舞い降りたフランカに目も合わせずに先を目指す。
「そんなに急いでどうするの? もっと楽しく遊びましょ?」
階段の手すりを滑るようにして下階に降りたルチアが、相変わらずのスピードで遠ざかって行く背中を追った。
飛び上がり、ひねりを加えて回転した足先から放たれる針の弾。
観智の背中を寸分違わず狙われたその攻撃だが、目前で振るわれた神楽の槍の一閃によってその全てを弾き落とされた。
「君だけは、少し休憩して貰わなければならないかな……?」
地面に舞い降りたルチアへ、イルムのレイピアが雷の如く突き込まれていた。
身を捻ってそれを躱そうとするも、身動きの取れない中ゆえか肩口を抉るように刃は彼女の身へと突き刺さる。
「本当ならレディを傷つける真似なんてしたくないんだけれどね――」
「あっはぁ……そうこなくっちゃ♪」
口惜しそうに語るイルムに、ルチアは満面の笑みで彼女の肩を掴むと、刃がより深く貫くのも構わずに彼女の身体を抱き寄せた。
「でも、これは鬼ごっこよ。だから、つーかまえた……♪」
はるか後方から戦場を貫いた熱線がルチアの翳した右手に集まる。
それは右手で張られたハート状のバリアの中で乱反射を行う、炎の渦。
熱戦はやがてその軌道を変え、横っ面からイルムの身体を貫いていた。
「離れるっすよ……!」
直後に、神楽の戦槍の柄が彼女らの間に割って入り、力任せにルチアの身体を吹き飛ばす。
思いの他軽かったその身体は、ボールのようにポンと後続へ弾かれていった。
「イルムさん、大丈夫っすか!?」
「大丈夫……まだ、歩くくらいはできるよ」
熱線の直撃を受けた肩を抱いてよろりと立ち上がるイルム。
正直息も絶え絶えであったが、敵が離れたこのチャンスに立ち止まっている暇はない。
「出口はすぐそこです……急ぎましょう」
先行く観智の指さすその先に、ハンター達が侵入した庭への扉が目に入っていた。
●また遊びましょ
「――あらあらルチア、大丈夫?」
ゆっくりとした足取りで、廊下に倒れ込むルチアの傍で、その姿を見下ろすフランカ。
ルチアはぴょんと身体をばねのようにして起き上がると、すすけた顔でにっこりと微笑み返す。
「大丈夫よフランカ。お友達を追いましょ?」
変な方向に折れ曲がった肩を、文字通り人形でも直すかのようにガキリと元の位置に戻すと、そのまま2人並んで姿の見えなくなってしまったハンター達の後を追う。
しばらく行くと庭への勝手口へと差し掛かり、彼女たちはその扉を凝視する。
僅かに開いた扉が、おそらくその先へ目標が向かったのであろう事を示しているように見えた。
そんな時、向かいの部屋からかすかな物音が聞こえるのを2人は確かに聞いていた。
何かを話し込むようなニンゲンの声。
2人はにっこりと微笑み合うと、部屋の扉を一思いに開け放つ。
『――これでいいよ。あとは……脱出するだけだ』
『うまくいくと……良いですけれど』
『大丈夫っすよ。あとはひとっ飛び、みんなを回収するだけっす!』
開け放たれた部屋には誰もおらず、その中央に、無造作に投げ込まれた1個のトランシーバー。
掠れるような電子音と共に、その受話口からハンター達の声がただただむなしく、誰もいない部屋に響いていた。
弾かれたように、庭への勝手口へと駆け出す2人。
半開きの扉を半ば押しのけるように外へ出ようとするも――開かない。
まるで、外から何か大きなもので押さえつけられているかのように、扉は頑なに開くことを拒んでいた。
扉の先の庭では連絡を受けて急来したグリフォンライダー達と、その後ろに同乗する3人のハンター。
「急造ですが……時間を稼ぐには十分だったみたいですね」
離れてゆく地面を前に、風で帽子が飛ばされないよう手で押さえつけながら眼下を眺める観智。
その視線の先――扉の前には、地面からせり出すように築かれた大きな土の壁が、まるでバリケードのように鎮座しているのであった。
「――おいリク、ズラかるぞ!」
声を聞かれるのもお構いなしに、叫びながらロープの端を引くボルディア。
僅かに空いた扉の先、部屋の中では今まさに目が覚めて上半身をもたげたジャンヌの前で、全身の力が抜けてしまったかのようにぐったりと地面につっぷすリクの姿が見えていた。
そうなったのは、ジャンヌが目を覚ましてリクの姿を捉えた直後の事。
不意に、全身を苛んでいた怠惰感が強く増したかと思えばそれは一気に膨れ上がり、ついには立つ事すらもままならなくなってしまったのだ。
それは扉の外のボルディアにも感染し、リクほどではないにしても、ロープを引く手に満足に力が入らない程度には身体を蝕んでいた。
そんな状態の中で、階段を駆け上がって来る歪虚の兵達。
ボルディアはもう一度部屋の中に視線を向けると、震える手で戦斧を握る。
「やってやるさ……だからリク、活路を見いだせ!」
迫りくるスケルトンの頭上に、いつもの鋭い一撃の半分の勢いもない彼女の斧が、ふらりと振るい上げられていた。
部屋の中では相変わらず、絨毯に突っ伏すリクとベッドの上で気だるげなジャンヌの姿。
「困ったわ……こんな時にルチアもフランカも居ないし。彼女たちはどこへ行ったの……? まったく……本当に……なんて……めんどくさい」
そう口にして大きなため息を吐くと同時に、リクとボルディアを襲う虚無感がさらに加速する。
もはやモノを考えることも能わず、ただただこの状況に身を委ねるのみである。
「アレを狙って来たのかしら……あれは暴食王からのおみやげで――私は全然いらないのだけど。なのに私一人をほっぽって、みんな居なくなって……ああ、お昼寝の時間を返して」
嘆くように天井を見上げた末に、ぽふりと枕に顔をうずめるジャンヌ。
「だけど……ここから誰もいなくなれば、またお昼寝できるのかしら」
ぽつりと、枕の中からくぐもった声が聞こえる。
「結果としては……その方が楽よね。ええ……きっとそう」
再びゆっくりと上半身を起こしたジャンヌは、そのまましなやかな足をベッドの外、絨毯の上へとつけて、慣れない足取りで立ち上がる。
ベッドの上では分からない、2m近い彼女の体躯がゆらりと聳え立ち、身体が動かぬ最中でも流石に目を見開いたリク。
いや、その瞬間、確かに彼は彼の意志で目を見開いていた――身体に力が入る。
それを認識できるほど意識がはっきりしている事に気づいたリクは、跳ねるように飛び起きながら扉の外へと声を荒げる。
「ボルディアさん、部屋の中へ!」
「何!?」
驚いたように問い返すボルディア。
だが、身体の自由が利く事を彼女も気付いたのだろう。
スケルトンの群れを今度は渾身の一振りで打ち払うと、ポケットの中の球体に火を点けてを歪虚の群れへと投げ込む。
直後、通路を包み込んだ大量の煙幕の中から逃げ込むにジャンヌの私室へと転がり込む。
「どうすんだよリク……!」
「分からない! でも、作戦通りに皆が既に脱出してくれていたなら――」
よたついた足取りで歩み寄るジャンヌ。
その手が2人を打ち払うように振り上げられたと同時に、トランシーバーがけたたましく鳴り響く。
『――2人とも、すぐに近くの窓から飛び出してください!』
観智の言葉に、2人は弾かれたように床を蹴った。
ゆっくりと、それでも威圧感を持って振りぬかれたジャンヌの平手を、今だ手足に纏わりつく枷を圧して、横っ跳びに回避する。
そして、そのまま倒れるように壁の窓へと背中から飛び込んでいた。
怠惰感に苛まれる中でも、2人分の体重を乗せてぶつかった窓ガラスはいとも簡単に砕け散り、2人の身体が塔の最上階から宙に放られる。
「――掴まれ!」
そんな2人の視線の先に、グリフォンの上から手を伸ばすクローディオとジャック。
彼らの手がリクとボルディアの身体を掴み、力任せに並走するグリフォンの背へと放り投げる。
彼らを受け取ったグリフォンとそのライダーは全速力で城の上空を離脱する。
離れてゆく最中、襲い来る疲労感で虚ろなその目の先には、空を飛ぶ歪虚の城がマテリアルの輝きで鈍く光り輝いたのと同時に、塔の最上階の窓から同じような鈍い輝きが漏れ出したような――そんな気がしていたという。
「――逃げるよ!」
咄嗟に叫んだイルム=ローレ・エーレ(ka5113)のよく通った声が塔の中に響き、ハンター達は弾かれたように下階を目指して駆け出していた。
「ふふ、いっぱい逃げないとすぐに追いついちゃうから」
声をそろえて数を数えるルチアとフランカの2人のメイドの姿をよそに、全力で元来た道を引き返す。
塔の壁に沿って張り付くように伸びる螺旋階段。吹き抜けとなった中央からは遥か下方に城の石畳が覗き、その先にうっすらと城内の明かりがこぼれるように灯っていた。
「ああっ、もっと詳しく見たかったのに! 何のためにわざわざこんな所まで……!」
石造りの階段を駆け下りながら、名残惜しそうに上階の部屋を見上げて言葉を吐き捨てるルスティロ・イストワール(ka0252)。
「敵地の真ん中で歪虚2匹となんかやってられるかってーの。アレをもう一回拝むのは、一度ズラかってからでも遅くはねぇさ」
彼を宥め、諫めるように口にしたボルディア・コンフラムス(ka0796)の言葉に、ルスティロ自身もも「わかっているさ」と頷いて、階下へ意識を巡らせる。
「彼女らは『10数えたら』……と言っていたな。そろそろか」
「こ、こんな状況で悠長に数なんて数えてないっすよ!?」
自身の盾の表面を指で叩きながら、クローディオ・シャール(ka0030)はふむりと喉を鳴らした。
それを聞いた神楽(ka2032)は目を白黒させてわめくも、視線を上の階へと走らせていた。
上階にはハンター達を飲み込むかのように広がる虚空の闇。
そんな暗幕の先、ぼうと蝋燭に火を灯したかのような明かりがたなびいたのを皮切りに、まるで道々の燭台に順に明かりをつけるかのような光の筋が、頭上より迫っていた。
「みんな避けるっす!」
神楽が叫ぶと同時に、ハンター達は一斉に階段を飛び抜かすように足元を蹴り上げた。
ほんの数瞬の後、すぐ背後の壁に真っ赤に燃える火柱が突き刺さったかと思うと、それは石造りの壁を貫いて城の外へと貫いてゆく。
「何だ今のは!?」
「わかりません……ただ、おそらく先ほどのメイドの放ったものでしょう」
着地に足を取られそうになってつんのめりながら問うたジャック・エルギン(ka1522)に、天央 観智(ka0896)もまたずり下がった眼鏡の位置を正しながら含むように答える。
今の一撃は牽制だったのか、第二射が飛んでくる気配は無い。
代わりに上の方から規則正しい、かつ早い速度で石畳を叩く靴底の音が響いてきていた。
「あと少しで下階だ、急ごう!」
眼前に迫ってきた下階の明かりに、キヅカ・リク(ka0038)は仲間たちを鼓舞する。
が、同時に眉をひそめたボルディアがその逸る気持ちを抑えるように左手を後続へと掲げた。
「まて、上からの足音『1つしかない』ぞ……もう1つはどうした?」
そう語るや否や、トンネルを風が吹き抜けるかのような轟音と共にバサバサとはためく衣類の音が塔の中に響く。
ハンター達の真横――螺旋の中心の吹き抜けを、ミサイルのように直滑降する赤い物体。
その物体は階下の石畳に突き刺さるかのように粉塵を巻き上げて降り立つと、くるりとハンター達の方へと向き直ってスカートの先をつまみ上げた。
「さぁ、誰から捕まえちゃおうかしら?」
そのままぺこりとお辞儀をすると、低く下げた重心のまま、ハンター達へ向かって一気に階段を駆け上がる。
その動きに考える間も持たず、細剣の輝きが石段に閃いた。
咄嗟にレイピアを抜き放ったイルムが、階段を駆け下りる勢いのままにルチアへと刃を翻していたのだ。
「アハァ……♪」
その動きにルチアの表情はにっこりと満面の笑みへと変わると、掌をイルムの方へと向けて払いのけるように振るう。
刹那、人形質の掌紋を突き破るように現れた短剣の刃が、軽い金属音と共にレイピアの一閃を遮った。
「みんな、今のうちだよ……!」
イルムは振り返らずに自身の背後に道だけ開け、力任せに小さなルチアの体を刃で押し切る。
「先には行くとは言わんぞ……すぐに追いつけ!」
クローディオがそう言い残して、残るハンター達は光ある城内へと身を滑り込ませた。
ルチアはイルムに押し込まれた反動でくるりと宙返りをして距離を取ってみせると、乾いた技巧音を響かせて刃を腕の中へと戻す。
「こんなにかわいらしい女の子とダンスだなんてとても魅力的だけれどね……たまには焦らす事だって駆け引きの1つさ」
そのまま踵を返して塔を脱するイルムを、笑顔で見送るルチア。
上階から駆け下りたフランカが合流すると、掌どうしを合わせあった。
「ルチア、追わなくて良いのかしら?」
「せっかくだもの、もっとじっくり遊びましょ」
そう言って確かめ合うようにお互いに頷いてみせると、離れてゆくハンター達の背中へ向かって同時に地面を蹴りだしていた。
「おらっ、どけどけッ!」
ボルディアの振るった戦斧が道行くスケルトンを薙ぎ払う。
竜巻の如き一振りに骨の雑魔は為すすべなく打ち砕かれてゆく。
「くそっ……城に入ってからずっとだ。どうにかならねえもんかな」
手の感覚を確かめるように、自らの獲物の柄を握りしめるボルディア。
彼女が感じていたのは再三の体の不調であった。
その気だるげな身体は戦闘行為に大きく支障を来すものでこそ無かったものの、いつもの得物がずっしりと、まるで枷を嵌めたかのような重さとなって腕に掛かる。
「どうも脳髄に纏わりつくな……これも汚染の影響なのか?」
クローディオは眉間に皺を寄せながら、自身の身体にキュアの光を流し込む。
僅かに気分が良くなったような気もしたが、すぐに変わらず伸し掛かってきた不快感に、一層眉間に力を込める。
「この先に……分かれ道があったはずです。通路上の兵を除けば敵の数は少数ですし……ここは分かれませんか?」
手元のメモ帳をめくりながら口にした観智に、ジャックは力強く頷く。
「分かった。なら、俺たちが分かれるぜ。良いなクローディオ、ルスティロ?」
「もちろんさ。少々息苦しいけど、まだまだ知りたいことは沢山あるんだ」
「そう言うことだ。じゃあな、幸運を祈るぜ!」
T字路に差し掛かり、足も止めずに3人が片方の道へと歩みだす。
残るハンター達は反対の方向へと身を潜らせると、しばらくしてメイド達が分かれ道へと差しかかっていた。
「あれあれフランカ、彼ら分かれちゃったわ」
「さてさてルチア、どっちから行こうかしら」
そうは口にするものの、2人の視線は同じ方向を指し示し。
息もつかぬ間に、その姿は通路の奥へと消え去っていた。
●手の鳴る方へ
ジャック達と別れた5人は、広めの回廊を城を振り返る事無く全力で疾走していた。
「この先、右の通路に何か居るっぽいっす……まだ分かれない方が良いかもしれないっすね」
感覚を研ぎ澄ませながら物音に意識を集中する神楽。
彼ら霊闘士の力で少しでも先の様子をこうして察知しながら進むことにより、余計な戦力との交戦は極力避けられていたのだ。
「しかし、石造りの城っすか……木造なら火事の1つでも起こしてみせるんすけど」
一面を囲む石の壁に、神楽は口惜しそうに吐息を漏らす。
「観智さん、他に分かれ道は?」
問いただすリクに、観智はメモをめくりながら小さく唸る。
「まだしばらく行かないと、ありませんね……細かい道はあるようですが、そちらはどう繋がっていることか」
「なるほど……」
そこで初めてリクは後ろを振り返り、同時にボルディアへと目配せをした。
そうして、2人揃って踵を返して元来た道を引き返す。
「ちょっ……何してるんすか!?」
「どうやらこっちは追ってこないようだし……僕らはもう一度、あの塔に戻るよ。『アレ』が何か、やっぱり確かめたいんだ」
「そう言うことで、悪いが退路は任せた。最悪……置いてって貰っても構わないぜ。見たものは、コレで伝えるからよ」
リクの言葉を補うように、ボルディアが手元のトランシーバーを振りかざしながら声を張る。
「……分かった、必ず迎えに行くよ。なに、レディを待たせるような真似はしないさ」
遠ざかりながら笑いかけるイルムの言葉に「レディ?」と目を丸くするボルディア。
リクも合わせて苦笑して見せるも、手元のゲーム機を手近な部屋に放り込んだ。
そうして再びボルディアへと目配せをすると、彼女は壁沿いの大きな窓ガラスへと斧を振りかぶって一思いに打ち砕いた。
音に気付いて集まったスケルトンや怠惰兵たち。
その目を盗んで、窓の外の外壁へとアンカーで釣り下がる。
窓の方へと集まりって外をのぞき込む歪虚達であったが、すぐに部屋の中から響い騒がしい電子音に一斉に意識を取られる。
そうしてダミーの部屋の中へとわらわら向かっていく雑魔達を尻目に、2人は回廊へと戻って元来た道を引き返していくのであった。
「さてさて、どこまで逃げるのかしら?」
「さてさて、そっちに出口はあるかしら?」
ケラケラと笑いながら、両の指を重ねてハートの形を作るフランカ。
瞬間、赤い火花が飛び散って、ハート型の火柱がハンター達の背中を襲う。
「うおっと、あっぶねぇな!」
髪の毛の先を焦がしながら、寸でのところでそれを躱すジャック。
後ろ目に振り返ると、ルチアが勢いをつけて前へと踏み出すのが見て取れた。
飛び上がった小柄な身体が宙でくるりと回転する。
まるでバレリーナのように捻る身体から脚を伸ばし、遠心力を乗せた勢いで足先から針を乱れ打つ。
「クッ……ただ逃げてばかりもいられんか!」
直撃を察したクローディオはその場に足を留めると、シールドを頭上に掲げて迎撃の姿勢を取る。
針の流星群をはじき返して再び踵を返すと、勢いのまま頭上を飛び越えたルチアがとんと彼の正面に着地をする所であった。
「あらあら、これで終わりなのかしら?」
くるりと身を翻して両の手を振るルチア。
それぞれの掌から刃が飛び出し、クローディオの眼前へと閃めいた。
「させないよ!」
迫るルチアの鼻先をルスティロの銃弾が掠める。
ルチアがのけ反るようにバック宙で距離を取ると、詰め寄るようにジャックが踏み込んでいた。
「レイピアは防げてもな、こいつならどうだ!」
ゴウと唸りを上げて迫る大剣。
小柄なルチアの身体であればそのまま押しつぶしてしまいそうなそれであったが、彼女は笑いながら半身反らしてそれを避け、さらに一歩、大きく後ろへと距離を取った。
「なんだ、鬼のくせに逃げてばっかりかよ」
「違う、ジャック! 後ろだ!」
クローディオの叫びに、咄嗟に後ろを振り返り、そして身を捻るジャック。
直後に、彼の服の裾を巻き込んでハートの熱線が回廊を突き抜けた。
何とかジャックが躱したその先にはルチアの姿。
迫る魔砲の輝きを前にルチアはその目を一瞬見開き……そしてにっこりと細める。
「うふふ、私たちの愛を重ねて――」
魔砲を前に、胸元でフランカのそれと同じく両手の指でハート型を作って見せるルチア。
「ラブリィ……バリアッ!」
気の抜けた掛け声と共に彼女の眼前に現れたハート型の障壁。
その面に触れた魔砲が障壁に直撃し、反射する。
射線を新たにした熱線は、回避運動を取った直後のジャックへと迫る。
「んなっ……!?」
目の前に迫った火柱の輝きに目を見開き、真正面から熱射を受けるジャック。
爆炎の晴れた先、周囲にくすぶる火の手を残しながら、焼け爛れたジャックの姿がよろりと這い出していた。
「ジャック!」
クローディオの魔術により、すぐにその身体の炎は消し止められる。
それでも、痛々しく焼けた皮膚の様子から魔砲の威力は押して知るものであった。
「ったく……おっかねえメイドだな。男のロマンが壊れちまうぜ」
そう、強がるように鼻で笑い飛ばすジャック。
確かにダメージはあるが、戦意が潰えたわけではない。
「そんなに僕らと遊びたいかい? なら、とことん付き合ってあげるよ!」
ルチアの足元を牽制するように、トリガーを引いたルスティロ。
一先ずジャックから気を反らさなければ。
「――次はあなたが遊んでくれるの?」
牽制の銃弾を難なく交わしたルチアは、その身軽な動きで一息にルスティロと目と鼻の先まで迫る。
鼻を突き合わせる距離でにっこりと微笑み掛けると、ルスティロの刃が鞘から抜き掛けに閃いていた。
ルチアは真上に膝を突き上げ、スネから円月刃のような厚刃の刀身を突き出すと、レイピアの一撃を受け止める。
「まともにやり合うつもりはないんだけどな……」
そうつぶやいた視界に、火柱の輝きを捉えた。
回避は間に合わないか――そう思った射線上にクローディオが立ちはだかる。
「くぅ……ッ!」
盾で受け止め、渾身の力で耐える。
弾ける火の粉が頬や足を焼くも、直撃よりはましだと歯をくいしばるのだ。
「色男ばっかり追ってねーで、俺の相手もしてくれよな!」
開けた道を、ジャックが駆けた。
身体の重さに苛まれながらも振るった大剣を、ルチアは地面に手を突いて足の円月刀で迎え撃つ。
剣閃同士がぶつかり合い、火花が散る。
「腕の刃じゃ無理でも、こっちなら大丈夫よ?」
クスクスと笑いながら、腕で身体を支えてコマのように回り斬るルチアに押され気味のジャック。
その間にクローディオとルスティロが先へと抜けて、距離を稼ぐ。
ジャックもまた力任せに円月刀をはじき返して、先を急いだ。
「こんな時に……ごめん、退いて」
曲がり角からぬっと姿を現した大型の巨人へと、鋭い眼光を浴びせるルスティロ。
巨人はひるんだ様に半歩後ずさった。
後方では飛び上がったルチアの足先から再びの針。
ハンター達の足元を縫うように放たれたその攻撃に、一瞬歩みが止まる。
その勢いのまま足の刃を振るうルチアであったが、標的となったルスティロは咄嗟に身を翻して怠惰兵の脚の裏へと回り込んだ。
刃の一閃に巨人の足は真っ二つ。
巨体が、地面に転倒する。
「チャンスだ、こいつを壁にして――」
巨体を壁に乗り越えようとしたジャックへ、再びの魔砲。
クローディオが受け止め事なきを得るも、火炎の中から飛び出すように3人の間に飛び込んできたルチアが、ルスティロの眼前で笑顔を浮かべる。
「――つーかまえた♪」
「ルスティロ……!」
ジャックの前で、ルチアの全身から数多の刃が飛び出すのが見えた。
刹那、吹き出した数多の飛沫が美しい回廊の壁を真っ赤に染め上げたと言う。
「――やったよ、一人捕まえたよフランカ」
「そうね、ルチア」
手を取り合って戦果を喜ぶ2人の前で、血だまりに沈んだルスティロを抱きおこすクローディオ。
「お前ら……!」
怒りに任せて振ったジャックの刃。
しかし怪我のせいか、それとも全身の気だるさのせいか、力なく降られた一撃は2人の間で空を切る。
「他の2人はどうしようかしら?」
「いえ……ちょっと待って、ルチア。あれを見て?」
肩で息をするジャックの前で、フランカがどこかを指さした。
「あらあら……もうあんな所に」
「あらあら……たいへん」
「「――追いかけなきゃ」」
直後、2人のメイドの身体はガラスの破砕音と共に窓の外へと消え去っていた。
虚ろな視線の先、その背中を追う気力はジャックの中に残されてはいなかった。
●憂鬱なる目覚め
じめりとした空気の中、リクとボルディアの2人は塔の最上階へと戻って来ていた。
「それじゃぁ、僕が中を見て来るから……何かあったら、これで引っ張り出してね」
「分かったぜ。見張りは俺に任せな」
どんと胸をはって答える彼女に、リクは一度だけ頷き返すと大きな扉に手を掛けてそっと中へと足を踏み入れていた。
塔の最上階――ジャンヌの部屋は、相変わらずの様子であった。
豪奢な家具はあの後使われた様子はなく、ベッドの上では相変わらず部屋の主が気持ちよさそうに寝息を立てている。
(――寝姿だけ見れば、普通の人間と大差ないんだよなぁ)
それでも、寝ていても分かる全身から発せられる負のマテリアル。
そしてこの部屋に足を踏み入れた瞬間からより重く、鉛のように圧し掛かる全身の重みに自分の置かれている状況を再認識する。
それでも目的のため――リクはジャンヌの眠りの深さを確かめるようにもう一度目線を配ると、そのまま視線を天井へと向けていた。
彼の瞳に映ったのは青々と光る1つの大きな『結晶体』であった。
ドーム型の天井にすっぽりと収まるそれは、大きさ4~5mはあるであろう、それは巨大なもの。
その輝きは決して澄んだものではなく、ほの暗くて見えない中心部から、青い輝きが部屋を照らすかのように漏れ出している。
(一体なんなんだ……ありゃ)
扉の隙間から中の様子をのぞき込むボルディアも、その結晶体に目を奪われていた。
少なくとも、人間の手で作り出されたものではない。
それは結晶体が光と共にぼんやりと放っている負のマテリアルの存在から明らかであった。
その時、不意にボルディアの耳に騒めく階下の音が届いていた。
慌てて螺旋階段の吹き抜けに目を落とすと、骸骨と巨人の群れがわらわらと石段を登り始めるのが視線の先に映りこむ。
(……ちぃ、意外と早く感づきやがったか。そりゃ、一度ここに来ているわけだしな)
ボルディアはリクに繋がれたロープの端をわずかに引っ張る。
「戻るぞ」の合図であったが、リクは静かに頭上の結晶体を見上げると大きく息を吸い込んだ。
(これで破壊されてしまったとしても……突いてみるべきか)
その正体が何であるにしても、人間にとって良くないものであることは間違いない。
音を立てないように素早く銃を抜き放つと、重い体に鞭を打つように力を込めて、照準を合わせた。
「――ん……う」
不意に甘く扇情的な吐息が塔に響き、リクとボルディアは背筋に冷たい棒を差し込まれたかのような悪寒が走った。
この部屋を訪れてからずっと、その存在を意識しなかったことは無い。
常に視界の端に捉え、その動向には細心の注意を払っていた。
だからこそ、直面するであろうその状況は措定しうる最悪の事態。
――決して起きて欲しくはなかった
「んっ……ぇ……だれ……?」
寝ぼけ眼を擦るそのしなやかな指の先で、城の主ジャンヌ・ポワソンの宝石のように澄んだ青い瞳が銃を構えるリクの姿をハッキリと捉えていた。
●捉まえた
先の分岐でメイド達の目から逃れた観智、神楽、イルムの3人は脱出ルート確保のため城の外――開けた庭を目指して石城の中を駆け抜けていた。
「観智さん、あとどのくらいっすか!?」
「次の角を右へ行って階段を下りれば……ポイントへは一直線です」
観智の言葉を受けて、神楽はそっと耳に手を当てて意識を研ぎ澄ます。
「敵は……たぶん、居ないと思うっす。このまま突っ切るっすよ!」
そうして頷くと、駆ける足に勢いを増す。
そんな中で、ザザっと乾いた電子音が3人の腰から響く。
『こちらジャックだ……聞こえてっか?』
トランシーバーから響くジャックの声に、イルムが手に取り応答する。
「聞こえてるよ、ジャック君。そちらは無事かい?」
『ルスティロがやられた……大丈夫、命はあるぜ。今……クローディオが付きっ切りで治療している。場所は……1階の東の部屋だ』
「それで、メイドの子達は?」
『悪い……取り逃がした。いや……正確には見逃された。畜生、俺も大分やられたもんだ……見張りに立つので精一杯だぜ』
乾いた笑いを零すジャックであるが、その口調から相当なダメージを受けているであろう事は確かである。
それでも、仲間たちの無事を耳にして一つ安堵の息を漏らす。
「それで……結局のところメイドさん達はどちらに?」
『それだ……気を付けろ。最後にあいつらが見ていたモン……あれはきっと――』
観智の問いにジャックが答えようとした直後――けたたましい音と共に頭上から降り注いだガラス片に、咄嗟に目を伏せるハンター達。
同時に割れた窓から転がり込むように回廊へと着地した赤いメイド服の少女を前にして、観智は何か含んだ笑みを浮かべて見せた。
「なるほど……ゴールに近い、こちらに来たということですね」
「うふふ、みぃつけた♪」
間髪入れずに、床を蹴ったルチア。
あっという間にハンター達との距離を詰め、その目と鼻の先に腕を振り上げる。
「熱烈なアンコール、できれば好意と受け取らせて欲しいかな」
先ほどもそうであったように、イルムが一足の間合いでルチアに迫り、振るい上げられた手刀にレイピアで応える。
勢いの差か今度は押され気味のイルムであったが、ルチアがそのまま彼女の頭上を越えるように身を捻りあげると、その隙を突いて一目散に脱する。
「追われるならマネキンメイドより、ジャンヌちゃんの方がよかったっす~!」
「それはそれで……面倒なことになりそうですけれどね」
完全に欲望丸出しの神楽の悲痛の叫びに、観智は苦笑するように答えた。
だが実際の所は笑っている暇などなく、段を飛び越えるようにして階段を一気に駆け下りて行く。
「――! 伏せるっすよ!」
咄嗟に叫んだ神楽の言葉に、他の2人は伏せようとし――実際の所は、勢いのまま地面を転がった。
その頭上を、天窓から突き刺さった真っ赤な光線が通り抜けてゆく。
「そんなに急いでどこへ行くの? もう少しゆっくり、殺し合いましょ?」
「ごめん被るっすよ!」
ハンター達は体制を立て直すと、割れた天窓から舞い降りたフランカに目も合わせずに先を目指す。
「そんなに急いでどうするの? もっと楽しく遊びましょ?」
階段の手すりを滑るようにして下階に降りたルチアが、相変わらずのスピードで遠ざかって行く背中を追った。
飛び上がり、ひねりを加えて回転した足先から放たれる針の弾。
観智の背中を寸分違わず狙われたその攻撃だが、目前で振るわれた神楽の槍の一閃によってその全てを弾き落とされた。
「君だけは、少し休憩して貰わなければならないかな……?」
地面に舞い降りたルチアへ、イルムのレイピアが雷の如く突き込まれていた。
身を捻ってそれを躱そうとするも、身動きの取れない中ゆえか肩口を抉るように刃は彼女の身へと突き刺さる。
「本当ならレディを傷つける真似なんてしたくないんだけれどね――」
「あっはぁ……そうこなくっちゃ♪」
口惜しそうに語るイルムに、ルチアは満面の笑みで彼女の肩を掴むと、刃がより深く貫くのも構わずに彼女の身体を抱き寄せた。
「でも、これは鬼ごっこよ。だから、つーかまえた……♪」
はるか後方から戦場を貫いた熱線がルチアの翳した右手に集まる。
それは右手で張られたハート状のバリアの中で乱反射を行う、炎の渦。
熱戦はやがてその軌道を変え、横っ面からイルムの身体を貫いていた。
「離れるっすよ……!」
直後に、神楽の戦槍の柄が彼女らの間に割って入り、力任せにルチアの身体を吹き飛ばす。
思いの他軽かったその身体は、ボールのようにポンと後続へ弾かれていった。
「イルムさん、大丈夫っすか!?」
「大丈夫……まだ、歩くくらいはできるよ」
熱線の直撃を受けた肩を抱いてよろりと立ち上がるイルム。
正直息も絶え絶えであったが、敵が離れたこのチャンスに立ち止まっている暇はない。
「出口はすぐそこです……急ぎましょう」
先行く観智の指さすその先に、ハンター達が侵入した庭への扉が目に入っていた。
●また遊びましょ
「――あらあらルチア、大丈夫?」
ゆっくりとした足取りで、廊下に倒れ込むルチアの傍で、その姿を見下ろすフランカ。
ルチアはぴょんと身体をばねのようにして起き上がると、すすけた顔でにっこりと微笑み返す。
「大丈夫よフランカ。お友達を追いましょ?」
変な方向に折れ曲がった肩を、文字通り人形でも直すかのようにガキリと元の位置に戻すと、そのまま2人並んで姿の見えなくなってしまったハンター達の後を追う。
しばらく行くと庭への勝手口へと差し掛かり、彼女たちはその扉を凝視する。
僅かに開いた扉が、おそらくその先へ目標が向かったのであろう事を示しているように見えた。
そんな時、向かいの部屋からかすかな物音が聞こえるのを2人は確かに聞いていた。
何かを話し込むようなニンゲンの声。
2人はにっこりと微笑み合うと、部屋の扉を一思いに開け放つ。
『――これでいいよ。あとは……脱出するだけだ』
『うまくいくと……良いですけれど』
『大丈夫っすよ。あとはひとっ飛び、みんなを回収するだけっす!』
開け放たれた部屋には誰もおらず、その中央に、無造作に投げ込まれた1個のトランシーバー。
掠れるような電子音と共に、その受話口からハンター達の声がただただむなしく、誰もいない部屋に響いていた。
弾かれたように、庭への勝手口へと駆け出す2人。
半開きの扉を半ば押しのけるように外へ出ようとするも――開かない。
まるで、外から何か大きなもので押さえつけられているかのように、扉は頑なに開くことを拒んでいた。
扉の先の庭では連絡を受けて急来したグリフォンライダー達と、その後ろに同乗する3人のハンター。
「急造ですが……時間を稼ぐには十分だったみたいですね」
離れてゆく地面を前に、風で帽子が飛ばされないよう手で押さえつけながら眼下を眺める観智。
その視線の先――扉の前には、地面からせり出すように築かれた大きな土の壁が、まるでバリケードのように鎮座しているのであった。
「――おいリク、ズラかるぞ!」
声を聞かれるのもお構いなしに、叫びながらロープの端を引くボルディア。
僅かに空いた扉の先、部屋の中では今まさに目が覚めて上半身をもたげたジャンヌの前で、全身の力が抜けてしまったかのようにぐったりと地面につっぷすリクの姿が見えていた。
そうなったのは、ジャンヌが目を覚ましてリクの姿を捉えた直後の事。
不意に、全身を苛んでいた怠惰感が強く増したかと思えばそれは一気に膨れ上がり、ついには立つ事すらもままならなくなってしまったのだ。
それは扉の外のボルディアにも感染し、リクほどではないにしても、ロープを引く手に満足に力が入らない程度には身体を蝕んでいた。
そんな状態の中で、階段を駆け上がって来る歪虚の兵達。
ボルディアはもう一度部屋の中に視線を向けると、震える手で戦斧を握る。
「やってやるさ……だからリク、活路を見いだせ!」
迫りくるスケルトンの頭上に、いつもの鋭い一撃の半分の勢いもない彼女の斧が、ふらりと振るい上げられていた。
部屋の中では相変わらず、絨毯に突っ伏すリクとベッドの上で気だるげなジャンヌの姿。
「困ったわ……こんな時にルチアもフランカも居ないし。彼女たちはどこへ行ったの……? まったく……本当に……なんて……めんどくさい」
そう口にして大きなため息を吐くと同時に、リクとボルディアを襲う虚無感がさらに加速する。
もはやモノを考えることも能わず、ただただこの状況に身を委ねるのみである。
「アレを狙って来たのかしら……あれは暴食王からのおみやげで――私は全然いらないのだけど。なのに私一人をほっぽって、みんな居なくなって……ああ、お昼寝の時間を返して」
嘆くように天井を見上げた末に、ぽふりと枕に顔をうずめるジャンヌ。
「だけど……ここから誰もいなくなれば、またお昼寝できるのかしら」
ぽつりと、枕の中からくぐもった声が聞こえる。
「結果としては……その方が楽よね。ええ……きっとそう」
再びゆっくりと上半身を起こしたジャンヌは、そのまましなやかな足をベッドの外、絨毯の上へとつけて、慣れない足取りで立ち上がる。
ベッドの上では分からない、2m近い彼女の体躯がゆらりと聳え立ち、身体が動かぬ最中でも流石に目を見開いたリク。
いや、その瞬間、確かに彼は彼の意志で目を見開いていた――身体に力が入る。
それを認識できるほど意識がはっきりしている事に気づいたリクは、跳ねるように飛び起きながら扉の外へと声を荒げる。
「ボルディアさん、部屋の中へ!」
「何!?」
驚いたように問い返すボルディア。
だが、身体の自由が利く事を彼女も気付いたのだろう。
スケルトンの群れを今度は渾身の一振りで打ち払うと、ポケットの中の球体に火を点けてを歪虚の群れへと投げ込む。
直後、通路を包み込んだ大量の煙幕の中から逃げ込むにジャンヌの私室へと転がり込む。
「どうすんだよリク……!」
「分からない! でも、作戦通りに皆が既に脱出してくれていたなら――」
よたついた足取りで歩み寄るジャンヌ。
その手が2人を打ち払うように振り上げられたと同時に、トランシーバーがけたたましく鳴り響く。
『――2人とも、すぐに近くの窓から飛び出してください!』
観智の言葉に、2人は弾かれたように床を蹴った。
ゆっくりと、それでも威圧感を持って振りぬかれたジャンヌの平手を、今だ手足に纏わりつく枷を圧して、横っ跳びに回避する。
そして、そのまま倒れるように壁の窓へと背中から飛び込んでいた。
怠惰感に苛まれる中でも、2人分の体重を乗せてぶつかった窓ガラスはいとも簡単に砕け散り、2人の身体が塔の最上階から宙に放られる。
「――掴まれ!」
そんな2人の視線の先に、グリフォンの上から手を伸ばすクローディオとジャック。
彼らの手がリクとボルディアの身体を掴み、力任せに並走するグリフォンの背へと放り投げる。
彼らを受け取ったグリフォンとそのライダーは全速力で城の上空を離脱する。
離れてゆく最中、襲い来る疲労感で虚ろなその目の先には、空を飛ぶ歪虚の城がマテリアルの輝きで鈍く光り輝いたのと同時に、塔の最上階の窓から同じような鈍い輝きが漏れ出したような――そんな気がしていたという。
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相談卓 ルスティロ・イストワール(ka0252) エルフ|20才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2015/10/23 17:43:10 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/10/19 20:16:15 |
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質問卓 イルム=ローレ・エーレ(ka5113) 人間(クリムゾンウェスト)|24才|女性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2015/10/21 15:42:58 |