ゲスト
(ka0000)
【郷祭】村長祭ダービー!’15
マスター:cr

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/11/07 12:00
- 完成日
- 2015/11/17 00:17
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●人馬一体
広大な緑の絨毯の上を風が吹き抜ける。朝露が運ばれ辺りに爽やかな匂いを振りまく。
それとは対照的に、その周囲には多くの人々が集まり、むせ返るような熱気に包まれている。
やがてドドドドッ、という重く深い音が響く、音はどんどん増え、走るために生まれた流線型の姿が緑の上を駆け抜ける。流れるたてがみ。揺れる尻尾。その姿を見て人々は今か今かと開始を待ちかねていた。
今年もこの時期がやってきた。人々は村長祭の一大イベント、競馬大会を見るために集まってきたのだ。
●ウマく行くのか
特設競馬場を一周してスタート地点まで戻ってくる2400メートルで争われる村長祭競馬大会。先日は祝勝祭を兼ねて帝国のスポンサードの元、皇帝杯の冠を付けて開催されたが、今回は村長祭のイベントとして開催される。
本来の目的はジェオルジで育てられる馬の能力を試験するためのものだったが、同時にそのシンプルな戦いは人々の心を熱狂させる。予選と決勝。二つのレースを勝ち抜いてトップに立つ馬はどれなのか。
●ウマ合う二人
「今年も見に来ましたがやはり盛り上がってますね」
バロテッリ商会番頭、モア・プリマクラッセ(kz0066)はそう淡々とつぶやく。声に感情は出ないが、心のなかは興奮しているだろうか。
「へえ、こりゃすげえな! アタシも参加したくなって来たぜ」
そんなモアにつれられて、イバラキ(kz0159)も興奮していた。争いごととなると火が付くようだ。
「馬は貸してもらえますよ。エントリーしてみるのはいかがですか?」
「よっし、じゃあちょっと行ってくるぜ!」
そしてまもなく第一レースが始まる。ゲートに馬が入る。村長祭競馬大会、優勝するのは――
広大な緑の絨毯の上を風が吹き抜ける。朝露が運ばれ辺りに爽やかな匂いを振りまく。
それとは対照的に、その周囲には多くの人々が集まり、むせ返るような熱気に包まれている。
やがてドドドドッ、という重く深い音が響く、音はどんどん増え、走るために生まれた流線型の姿が緑の上を駆け抜ける。流れるたてがみ。揺れる尻尾。その姿を見て人々は今か今かと開始を待ちかねていた。
今年もこの時期がやってきた。人々は村長祭の一大イベント、競馬大会を見るために集まってきたのだ。
●ウマく行くのか
特設競馬場を一周してスタート地点まで戻ってくる2400メートルで争われる村長祭競馬大会。先日は祝勝祭を兼ねて帝国のスポンサードの元、皇帝杯の冠を付けて開催されたが、今回は村長祭のイベントとして開催される。
本来の目的はジェオルジで育てられる馬の能力を試験するためのものだったが、同時にそのシンプルな戦いは人々の心を熱狂させる。予選と決勝。二つのレースを勝ち抜いてトップに立つ馬はどれなのか。
●ウマ合う二人
「今年も見に来ましたがやはり盛り上がってますね」
バロテッリ商会番頭、モア・プリマクラッセ(kz0066)はそう淡々とつぶやく。声に感情は出ないが、心のなかは興奮しているだろうか。
「へえ、こりゃすげえな! アタシも参加したくなって来たぜ」
そんなモアにつれられて、イバラキ(kz0159)も興奮していた。争いごととなると火が付くようだ。
「馬は貸してもらえますよ。エントリーしてみるのはいかがですか?」
「よっし、じゃあちょっと行ってくるぜ!」
そしてまもなく第一レースが始まる。ゲートに馬が入る。村長祭競馬大会、優勝するのは――
リプレイ本文
今日は村長祭競馬大会の開催日。これから人が集まり盛大に開催される競馬場も、しかし早朝となるとそうではない。そんな競馬場に一番乗りでやって来たのはザレム・アズール(ka0878)であった。
「鍛えた力を発揮できるよう頑張ろうな」
愛馬、オラシオンを丁寧に撫でるザレム。彼が一足先に競馬場に来たのは、馬場に愛馬を慣らし、移動の疲れを少しでも抜くためだ。先日行われた皇帝杯競馬大会で彼らは同着とはいえ、優勝を遂げている。あの時もらった盾は宝物として飾っている。そこにもう一つ宝物を加えるべく、彼はやれることを全部やろうとしていた。
愛馬を厩舎に繋ぐと、馬場に転がっている石を拾おうと向かう。すると関係者達の会話が聞こえてきた。
「今年のエントリーは15頭か。どうする?」
「5頭立てで予選を組んで、上位2着まで決勝進出にすればいいだろう」
どうも予選のやり方が少し変更になったようだ。そんな会話を聞きつつ、レース開始までザレムは石を拾っているのであった。
●第1レース
1枠:アーリフラヴィア・エクスドミナ(ka4484)&フランカ
2枠:アイビス・グラス(ka2477)
3枠:ザレム・アズール&オラシオン
4枠:リュー・グランフェスト(ka2419)&テンペスト
5枠:ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)
「幾多の任務を共にこなして鍛えたお前の力を発揮する時だ」
大会が始まり、予選第1レース。ザレムは馬場で他の参加者を待ちながらオラシオンを撫でていた。
「まあ、村長祭のレースがあるのですね。先日、新しい子をお迎えしたところですし、私もエントリーしてみましょうか」
そこに最初に入ってきたのはアーリであった。先日とある村で手に入れた、彼女がフランカと名付けたこの馬は元気よく脚を動かしている。農家の娘であり、馬の扱いはお手の物の彼女の見立て通り、もうすぐに走りたくて仕方ないといった様子だ。
「前回は怪我で出場できなかったから今回が初出場になるのか」
続いてアイビスが入ってくる。彼女は愛馬を持っているが、重装馬ゆえにこのようなレースには向いていない。
「勝てるかどうか分からないけど、やるだけのことをしていくまでよ」
そこで、あらかじめ馬を借り受けることにした彼女。リクエストしてやって来た馬に跨がり、軽く馬場を歩かせてレースの時を待つ。
「終ったら、ごちそう奢ってやるからな、テンペスト」
続いて馬場に入場してきたリューはそう言いながら、愛馬の首を軽くポンポンと叩く。1年ぶりのレースに気合満点だ。
「ニンジャ力で馬と一つに。ルンルン忍法とニンジンカードの力で私、競馬でもチャンピオンになっちゃいます!」
最後に入ってきたのはルンルン。自称忍者である彼女は忍者らしくなにやら取っておきの忍法を用意しているようだ。その忍法は炸裂するのだろうか。
かくして5頭がゲートに入り、レース開始の時を待つ。そしてゲートが開く寸前、ルンルンの忍法が早速炸裂した。
「ゴールにニンジン山盛りです、美味しい美味しいニンジンの為、だから貴方は誰よりも速い」
とどこからともなく取り出したニンジンを見せながら、耳元で優しく愛馬に語りかけるルンルン。これで暗示をかけるのこそ彼女の忍法
「ルンルン忍法馬の耳にブツ、です!」
であった。
果たして彼女の狙い通り、ゲートが開くとともに真っ先に飛び出していく。一気に加速して逃げを打ち、周りに誰もいない一人旅。
「ずっと私達のターン!」
全力で駆ける愛馬にご満悦なルンルン。
「思う存分走って。フランカ」
その後ろに位置取ったのはアーリ。馬なりに走らせる彼女だが、それだけで十分なスピードが出ている。
そのもう一つ後ろにはザレム。前二頭に道を塞がれないよう、神経を研ぎ澄まして先読みしつつ姿勢を低くして愛馬、オラシオンと共に風になる。皇帝杯の優勝者としてマークが付いていると考え、それに備えているのだ。
それに続くのはリューとテンペスト。テンペストは気性の激しい馬だが、それをぐっと抑えて脚を貯め勝負どころに備える。
そして最後尾にはアイビス。おとなしく興奮しない馬という事でお願いした結果、やって来たのは美しく光る鹿毛の馬。彼女に合わせたのか緑のメンコをつけたその姿は自然体そのもの。マイペースでレースを進める。
このままレースは進み、向こう正面を回って第三コーナーに入ったところでレースが動いた。動いたのはテンペスト。貯めに貯めた脚を気合一発爆発させ、ぐんぐんと加速していく。そのままオラシオンを捉え前に出て、その勢いのままフランカを、そしてルンルンを捉えて先頭に躍り出た。
しかし他の馬達もこれで終わらせるわけがない。抜かれたルンルンはすぐさまテンペストの後ろにピッタリと付いて、最終コーナーに入ると同時に忍法スリップストリーム、つまり風を避けての加速を決めて前に出ようとする。
「今ゴールにダイレクトアタック!」
だがテンペストも抜かせない。二頭が激しい戦闘闘いを繰り広げる中、ここでアイビスも前に出る。さらにザレムも鞭を一発入れ加速をかける。絡みあうように前に出ようとする各馬と、それを耐えて先頭をキープするテンペスト。どの馬も譲らず前に出ようとしてそのまま最後の直線へ。
ゴールまであと300メートル。ルンルンとアーリが追う。しかし前に出させないテンペスト。
ゴールまであと200メートル。アイビスが人馬ともに緑色の風となり前へ前へと進む。だがテンペストはまだ粘る。
ゴールまであと100メートル。ザレムがオラシオンに気合を入れ走る。それでもテンペストは抜かせない。
そしてそのまま、テンペストが一着でゴール板を駆け抜けた。その後ろからアイビスとザレムが同時にゴールを駆け抜け、アーリ、ルンルンと続いてゴール。
一着は決まった。しかし今回は二着まで予選を突破できる。果たして二着に入ったのはどちらか……ゴール板の後ろから判定役のパルム達が現れ、長い時間の協議の末、ハナの差で二着に入ったのはザレムとオラシオンだった。
ザレムとアイビス、その差を分けたのは、共に過ごしてきた時間の差だった。
●第2レース
1枠:ユリアン(ka1664)&アルエット
2枠:Uisca Amhran(ka0754)&ポイナ
3枠:イルム=ローレ・エーレ(ka5113)&シュテルン
4枠:ミオレスカ(ka3496)&ハニーマーブル
5枠:イバラキ
第2レース出場者達が待機している。
「なんだか皆さんの会話の雰囲気が、いつもと違う緊張感があるような?」
他の参加者たちの様子を見て、そう感想を漏らすミオ。しかし緊張感の原因は他でもない彼女自身であった。なぜなら、彼女はザレムと共に前回の皇帝杯競馬大会で優勝したからだ。
そんな所に第1レースの参加者たちが下がってくる。
「前回の決着を決勝で付けられるといいな」
「ザレムさんと決着ですか? いえ、前回がまぐれのようなものですから」
そんな会話をかわす二人。だが、ミオは最後に
「また、決勝で会えるといいですね」
と付け加えていた。
そして各人が馬場に入ってくる。最初に入ってきたのはユリアンとアルエット。彼らが競馬に参加するのも3回め。
「一番長い付き合いで、旅の相棒はお前だと思っているよアルエット」
そう、ぽんぽんと叩くユリアン。彼は戦場にはもう一頭の軍馬を連れて行くようになったが、競馬なら相棒はアルエットだ。そう思っていた。そんな彼の期待に答えてか、愛馬の栗毛の馬体も一段と輝いている。今日はすこぶる調子が良いようだ。身体を温め消耗させないように軽く返し馬を行う。
「初代チャンピョンのキララ姉さまの名に恥じない走りをするよう、がんばるのです!」
続いて愛馬ポイナと共に入ってきたのはイスカ。彼女の姉は言葉通り前回優勝者。姉妹で優勝の栄冠を獲得するため、気合が入っている。それに彼女はエルフであり、巫女である。自然とともに生きてきた民として、この勝負、負けられない。装備も限界まで減らした。後はレースに挑むだけだ。
「流星の如く、全ての観客を魅了したいものだね」
次に入ってきたのはイルム。白毛の愛馬、シュテルンと共に入ってきたその姿はまさに白馬の王子様。それを見て観客たちから黄色い歓声が上がる。先ほどのレースに参加したルンルンも歓声を上げている。
しかし、イルムはそれを知ってか知らずか
「馬群に沈んでも観客とシュテルンが楽しんでくれればいいさ」
と言っていた。
最後に現れたのはイバラキ。しかし、肝心の馬の方はどうも既にお疲れの様子。それもこれも鞍上が重すぎるのが原因だ。実際このレースの参加者の中で最も体格が良い。
「負けたくないけどアタシが重すぎるんだな。こりゃこいつには悪いことしたな」
と独りごちる。
かくして揃った五頭がゲートに入り、一斉にスタート。
このスタートに最大限の集中をしていたのはイルムであった。神経を研ぎ澄ませ、ゲートが開く瞬間に一気に飛び出し、そのまま前へ前へ、ずーっと前に出る。その差六馬身から七馬身はあろうか。ただの逃げではない。大逃げだ。
あまり馬の扱いがわかっていないイバラキは早速付いていこうとしたが、すぐに馬のほうがバテてしまった。
結果悠々と一人旅。その様子に会場は、先ほどの黄色い歓声とは違うどよめきに包まれていた。
「早く捕まえないと逃げ切ってしまうよっ」
余裕の笑みを浮かべそうシュテルンを走らせるイルム。
一方残りの三頭はそれに付いて行くわけではなく、後方からペースを保って競馬を進めていた。馬の方も鞍上の考えを察したか、先頭を譲りあうかのように動いていた。結果先をゆくシュテルンとの差は更に開いていく。八馬身、九馬身……結果十馬身ほど開いたところで、先を行くイルムも一安心、あとは手綱を持ったままシュテルンの走りたいように走らせる。
そのままの並びでレースは進む。第二コーナー、向こう正面、第三コーナーと来てもレースは動かない。そしてとうとう最終コーナーに入った所で急に動き始めた。
身体を低くし、鞭を一つ入れ加速を始めるユリアンとアルエット。
広く開いた先を見て、そのまま真っすぐにハニーマーブルを走らせるミオ。
そしてポイナの気持ちを感じ取り、Yesの代わりに鞭を入れてスパートをかけるイスカ。
一斉に加速した三頭の前にイバラキは成すすべなく沈んでいった。
トップを目指し激しく競り合う三頭。風景は一瞬のうちに後ろに流れ、馬場の周囲の様子も観客たちの声も聞こえない。
「これが噂の0の領域……です?」
今まで見たことのない光景に、思わずそう漏らしてしまうイスカ。直線を駆けゴールへゴールへと突き進んでいく。
だが、三頭とシュテルンとの差はあまりに開きすぎていた。多少ペースは落ちようとも、ここまで差があると追いかけても距離が足りない。間に合わない。結果抜けて一着でシュテルンがゴール。しかし予選を突破できるのは二頭。あと一つの枠を巡り、この三頭によるデッドヒートが始まる。
ハニーマーブルが出る。アルエットが抜ける。ポイナも負けじと先へ進む。ポイナが出ればハニーマーブルが抜き返し、アルエットがさらに進んでいく。
そのまま三頭絡みあうようにゴールイン。再びのパルム判定後二着に入ったのはユリアンとアルエットだった。
馬の力にも、鞍上と馬の呼吸にも差は無かった。勝負を分けたのはただ一つ、レース経験の差であった。
●第3レース
1枠:龍崎・カズマ(ka0178)
2枠:アシェ-ル(ka2983)
3枠:エアルドフリス(ka1856)&グィー
4枠:イーディス・ノースハイド(ka2106)&エクレール
5枠:ルイーザ・ジェオルジ
「そんじゃま、楽しくやるとしますかね」
第3レースの本馬場入場が始まり、愛馬に跨がり真っ先に入ってきたのは龍崎だった。しかし、彼の愛馬は軍馬、競走馬と比べると一回り体格が大きく、その分スピードは出ない。勝敗を考えれば競走馬を借りてきたほうが良いだろうが、彼の本心は別のところにあった。
「軍馬っつっても戦場だけじゃなく偶にはこういう場所を何も考えず思いっきり走らせてやりたいんでな。こいつが満足すれば、勝ち負けはどうでもいいさ」
後はどのような結果になろうと受け入れる。そんな覚悟と共にレースへ向かう。
「さて、どうなることか」
続いて入ってきたのはイーディス。彼女がまたがる愛馬、エクレールもまた戦馬である。大きな身体は鞍上の小柄なイーディスと並ぶことによって、より一層大きく見える。
普段ならイーディスはフルプレートを身にまとい騎乗している。セットになればさすが元王国騎士団従騎士。立派な一角の騎士に見える。しかし、今はレースに備えて装備を全て脱ぎ軽装になっている。アンバランスにも見えるほど両者の大きさに違いはあるが、長い間共に過ごしてきて息はピッタリ。人馬一体となって優勝を狙う。
「1年ぶりの競馬参戦になるな。集まった人たちを楽しませられると良いね」
愛馬グィーと共に入ってきたのはエアルドフリス。あれから一年。その間も共に様々な依頼で戦場を駆けてきた。経験からかその芦毛の馬体にも少し貫禄が出たようにも思える。
「今年こそ上位入賞も狙いたいが、さて」
丁寧にたっぷり返し馬を行い、馬場に慣らす。勝負に向けて準備を整える。
「参加したいと思ってたんだ!」
そして入ってきたのはルイーザ。ジェオルジ一族に連なる人物である彼女は今までさまざまな理由があって参加できなかったが、念願かなってとうとう参加できた。このレースを楽しもう、と他のものに負けず劣らずやる気にあふれている。
しかし、最後に入ってきた者はそうではなかった。
「お馬さんと走れると聞いてきてみたら、競馬だった」
愕然としているアシェール。
しかしいつまでもぐちぐち言っていられない。アシェールは今回共にレースに挑む馬を見定める。引きこもっていた間に、馬にかぎらず動物を見る目は磨いてきたつもりだ。結果選んだのは小柄ながらも、美しい毛並みを持つ馬。ピンとたった耳は見るからに元気が良さそうだ。
かくして出走する五頭が揃い、レースが始まる。
「私は馬の好きなように走らせるのが好みなんだ、だから馬に特に指示は出さないよ」
ゲートが開くと同時に飛び出していったのはエクレール。イーディスの言うとおり、真っ直ぐなターフに飛び出して行くと一気に加速していく。その姿は戦場で的に向かって一直線に突撃をするかのようだ。
「この子は一番前を走るのが好きなんだ。負けず嫌いとも言うのかな」
だが、そんなエクレールをぐいぐいと追いかけ先頭争いを繰り広げる馬が一頭。
「結果なんぞ気にするな、思いっきり思うが儘に走れ」
龍崎は愛馬を思い切り走らせるために、全力でサポートしていく。馬の動きに合わせて体重を細かく移動し、脚を運ばせサポートする。
「全ての先頭に立って、殺意のないトラックをな」
そんな龍崎の思いに応えようと加速していく気持ちが、鞍上にも触れている手を通して伝わってくる。
「慌てず、楽しく走りましょう」
その後ろからルイーザが付いていく。他の馬の進路を妨害しないようにあくまでペースを守って、この位置からレースを進めていく。
「彼女は我慢強いんだ」
そして最後方から競馬を進めるのはグィー。ここから他の馬の様子を見て、二手、三手先を読みチャンスをじっと待つ。
そのまま最終コーナーへ。ここでエアルドフリスの手に感じるものがあった。グィーが彼にチャンスを教えてくれる。すかさず手綱を緩める。急加速を開始し、どんどん進んでいくグィー。それに弾かれるようにルイーザが外に流れる。そしてゴールへと向かうポッカリと開いた穴。
「今です! 一番前に!」
そのチャンスを見逃さず馬体を飛び込ませるアシェール。邪魔する者は何もない。抜けた勢いを止める必要なく、直線を走りきればいい。
すぐ後ろにはグィーが付いた状態だが両者の差は変わらない。そのままのかたちでゴールへ飛び込んだ。
ルイーザが外に流れたことによって生まれたルート。このルートが開かれたことがアシェールの勝因だった。まさしく、運も実力の内というべき状況であった。
●決勝レース
1枠:リュー・グランフェスト&テンペスト
2枠:イルム=ローレ・エーレ&シュテルン
3枠:アシェ-ル
4枠:ザレム・アズール&オラシオン
5枠:ユリアン&アルエット
6枠:エアルドフリス&グィー
「まさか予選で負けるなんてな」
決勝レースを迎える直前、裏ではザレムがミオを慰めていた。
「勝負は時の運ともいいますから……残念ですけど」
「ミオの分も頑張ってくるよ」
そう言って決勝の馬場へと向かったザレム。
そして決勝に参加する六頭がゲートに入り、いよいよ勝負の時を待つ。
ファンファーレが鳴り響き、残響が轟く中スターターの旗が振り下ろされゲートが開いた。
「俺達に限界なんかねえ! いけ!」
それと同時にテンペストが真っ先に飛び出す。リューはそれを一切止めない。予選で我慢させた分のストレスは闘争心へと変わり、二人は同調してどんどんペースが上がっていく。
「逃げ馬は幸運に恵まれないと勝てないと言うけれど、追われてる彼は強いよ?」
その後ろからはイルムが続く。残り四頭の位置を神経を研ぎ澄ませて把握し付いて行く。その想いに応えペースを上げていくシュテルン。
「さあ、シュテルン! 一番星を捕まえろ!」
そんなイルムの思いに応えるかのように、シュテルンは流星となった。
その後ろからはアシェールとグイーが付いて行く。最後方にはアルエット。
そのまま大きくグーッと進んで最終コーナーへ。勝負とばかりに全馬に鞭が入る。
「行こうぜ、テンペスト! どこまでもなあ!」
「勝利を信じて、走れ!」
やるべきことはやった。あとは心の問題。一団となった六頭と六人は抜きつ抜かれつ、先頭がめまぐるしく変わりながらゴール板へと向かっていく。そしてパルムが捉えた一着は……
●
レースは全て終わった。祭りの後は懇親を兼ねて宴が始まる。そこに流れる美しい歌声。
イスカが皆の健闘を称える歌を歌う。
ルンルンは一瞬のうちに美しいドレスに着替え、少しでもお近づきになるためイルムに話しかけている。
「お疲れ様、グィー。風は楽しめたかね?」
そんな歌声を聞きながら、エアルドフリスはグィーにリンゴを食べさせてあげる。その名の通り風とかした人馬は全く譲らずゴールへと向かう。だがあと一歩が間に合わず惜しくも三着。それでも悔いはない。グィーが楽しんでくれたことを感じ取れたからだ。
「準優勝凄いです」
「でも優勝できなかったな」
そんな会話をしていたのはミオとザレム。鍛えた力を発揮できたが、ほんの少しの差で惜しくも二着。
そしてほんの少しの差を制して優勝した人馬は、いつもの様に走った後を過ごしていた。レースの余韻を楽しんだ後、後ろに戻り
「気持ちよかったなぁ。ありがとう」
体を拭いて水を飲ませていた。美味しそうに水を飲むアルエットの首には優勝馬を示すメダルがかけられていた。最後に勝負を分けたもの、それは経験の差だった。
三度目のレース参加で彼岸の優勝を成し遂げたユリアンとアルエットだった。最後尾から一瞬しか無いチャンスを見事物にして、優勝という最大の栄冠を手に入れたのだった。
だが、優勝者以外も皆晴れ晴れとした顔をしていた。悔いなく力を発揮できたようだ。そんな笑顔があちこちで弾けながら宴は月明かりに照らされずっと続いていた。
「鍛えた力を発揮できるよう頑張ろうな」
愛馬、オラシオンを丁寧に撫でるザレム。彼が一足先に競馬場に来たのは、馬場に愛馬を慣らし、移動の疲れを少しでも抜くためだ。先日行われた皇帝杯競馬大会で彼らは同着とはいえ、優勝を遂げている。あの時もらった盾は宝物として飾っている。そこにもう一つ宝物を加えるべく、彼はやれることを全部やろうとしていた。
愛馬を厩舎に繋ぐと、馬場に転がっている石を拾おうと向かう。すると関係者達の会話が聞こえてきた。
「今年のエントリーは15頭か。どうする?」
「5頭立てで予選を組んで、上位2着まで決勝進出にすればいいだろう」
どうも予選のやり方が少し変更になったようだ。そんな会話を聞きつつ、レース開始までザレムは石を拾っているのであった。
●第1レース
1枠:アーリフラヴィア・エクスドミナ(ka4484)&フランカ
2枠:アイビス・グラス(ka2477)
3枠:ザレム・アズール&オラシオン
4枠:リュー・グランフェスト(ka2419)&テンペスト
5枠:ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)
「幾多の任務を共にこなして鍛えたお前の力を発揮する時だ」
大会が始まり、予選第1レース。ザレムは馬場で他の参加者を待ちながらオラシオンを撫でていた。
「まあ、村長祭のレースがあるのですね。先日、新しい子をお迎えしたところですし、私もエントリーしてみましょうか」
そこに最初に入ってきたのはアーリであった。先日とある村で手に入れた、彼女がフランカと名付けたこの馬は元気よく脚を動かしている。農家の娘であり、馬の扱いはお手の物の彼女の見立て通り、もうすぐに走りたくて仕方ないといった様子だ。
「前回は怪我で出場できなかったから今回が初出場になるのか」
続いてアイビスが入ってくる。彼女は愛馬を持っているが、重装馬ゆえにこのようなレースには向いていない。
「勝てるかどうか分からないけど、やるだけのことをしていくまでよ」
そこで、あらかじめ馬を借り受けることにした彼女。リクエストしてやって来た馬に跨がり、軽く馬場を歩かせてレースの時を待つ。
「終ったら、ごちそう奢ってやるからな、テンペスト」
続いて馬場に入場してきたリューはそう言いながら、愛馬の首を軽くポンポンと叩く。1年ぶりのレースに気合満点だ。
「ニンジャ力で馬と一つに。ルンルン忍法とニンジンカードの力で私、競馬でもチャンピオンになっちゃいます!」
最後に入ってきたのはルンルン。自称忍者である彼女は忍者らしくなにやら取っておきの忍法を用意しているようだ。その忍法は炸裂するのだろうか。
かくして5頭がゲートに入り、レース開始の時を待つ。そしてゲートが開く寸前、ルンルンの忍法が早速炸裂した。
「ゴールにニンジン山盛りです、美味しい美味しいニンジンの為、だから貴方は誰よりも速い」
とどこからともなく取り出したニンジンを見せながら、耳元で優しく愛馬に語りかけるルンルン。これで暗示をかけるのこそ彼女の忍法
「ルンルン忍法馬の耳にブツ、です!」
であった。
果たして彼女の狙い通り、ゲートが開くとともに真っ先に飛び出していく。一気に加速して逃げを打ち、周りに誰もいない一人旅。
「ずっと私達のターン!」
全力で駆ける愛馬にご満悦なルンルン。
「思う存分走って。フランカ」
その後ろに位置取ったのはアーリ。馬なりに走らせる彼女だが、それだけで十分なスピードが出ている。
そのもう一つ後ろにはザレム。前二頭に道を塞がれないよう、神経を研ぎ澄まして先読みしつつ姿勢を低くして愛馬、オラシオンと共に風になる。皇帝杯の優勝者としてマークが付いていると考え、それに備えているのだ。
それに続くのはリューとテンペスト。テンペストは気性の激しい馬だが、それをぐっと抑えて脚を貯め勝負どころに備える。
そして最後尾にはアイビス。おとなしく興奮しない馬という事でお願いした結果、やって来たのは美しく光る鹿毛の馬。彼女に合わせたのか緑のメンコをつけたその姿は自然体そのもの。マイペースでレースを進める。
このままレースは進み、向こう正面を回って第三コーナーに入ったところでレースが動いた。動いたのはテンペスト。貯めに貯めた脚を気合一発爆発させ、ぐんぐんと加速していく。そのままオラシオンを捉え前に出て、その勢いのままフランカを、そしてルンルンを捉えて先頭に躍り出た。
しかし他の馬達もこれで終わらせるわけがない。抜かれたルンルンはすぐさまテンペストの後ろにピッタリと付いて、最終コーナーに入ると同時に忍法スリップストリーム、つまり風を避けての加速を決めて前に出ようとする。
「今ゴールにダイレクトアタック!」
だがテンペストも抜かせない。二頭が激しい戦闘闘いを繰り広げる中、ここでアイビスも前に出る。さらにザレムも鞭を一発入れ加速をかける。絡みあうように前に出ようとする各馬と、それを耐えて先頭をキープするテンペスト。どの馬も譲らず前に出ようとしてそのまま最後の直線へ。
ゴールまであと300メートル。ルンルンとアーリが追う。しかし前に出させないテンペスト。
ゴールまであと200メートル。アイビスが人馬ともに緑色の風となり前へ前へと進む。だがテンペストはまだ粘る。
ゴールまであと100メートル。ザレムがオラシオンに気合を入れ走る。それでもテンペストは抜かせない。
そしてそのまま、テンペストが一着でゴール板を駆け抜けた。その後ろからアイビスとザレムが同時にゴールを駆け抜け、アーリ、ルンルンと続いてゴール。
一着は決まった。しかし今回は二着まで予選を突破できる。果たして二着に入ったのはどちらか……ゴール板の後ろから判定役のパルム達が現れ、長い時間の協議の末、ハナの差で二着に入ったのはザレムとオラシオンだった。
ザレムとアイビス、その差を分けたのは、共に過ごしてきた時間の差だった。
●第2レース
1枠:ユリアン(ka1664)&アルエット
2枠:Uisca Amhran(ka0754)&ポイナ
3枠:イルム=ローレ・エーレ(ka5113)&シュテルン
4枠:ミオレスカ(ka3496)&ハニーマーブル
5枠:イバラキ
第2レース出場者達が待機している。
「なんだか皆さんの会話の雰囲気が、いつもと違う緊張感があるような?」
他の参加者たちの様子を見て、そう感想を漏らすミオ。しかし緊張感の原因は他でもない彼女自身であった。なぜなら、彼女はザレムと共に前回の皇帝杯競馬大会で優勝したからだ。
そんな所に第1レースの参加者たちが下がってくる。
「前回の決着を決勝で付けられるといいな」
「ザレムさんと決着ですか? いえ、前回がまぐれのようなものですから」
そんな会話をかわす二人。だが、ミオは最後に
「また、決勝で会えるといいですね」
と付け加えていた。
そして各人が馬場に入ってくる。最初に入ってきたのはユリアンとアルエット。彼らが競馬に参加するのも3回め。
「一番長い付き合いで、旅の相棒はお前だと思っているよアルエット」
そう、ぽんぽんと叩くユリアン。彼は戦場にはもう一頭の軍馬を連れて行くようになったが、競馬なら相棒はアルエットだ。そう思っていた。そんな彼の期待に答えてか、愛馬の栗毛の馬体も一段と輝いている。今日はすこぶる調子が良いようだ。身体を温め消耗させないように軽く返し馬を行う。
「初代チャンピョンのキララ姉さまの名に恥じない走りをするよう、がんばるのです!」
続いて愛馬ポイナと共に入ってきたのはイスカ。彼女の姉は言葉通り前回優勝者。姉妹で優勝の栄冠を獲得するため、気合が入っている。それに彼女はエルフであり、巫女である。自然とともに生きてきた民として、この勝負、負けられない。装備も限界まで減らした。後はレースに挑むだけだ。
「流星の如く、全ての観客を魅了したいものだね」
次に入ってきたのはイルム。白毛の愛馬、シュテルンと共に入ってきたその姿はまさに白馬の王子様。それを見て観客たちから黄色い歓声が上がる。先ほどのレースに参加したルンルンも歓声を上げている。
しかし、イルムはそれを知ってか知らずか
「馬群に沈んでも観客とシュテルンが楽しんでくれればいいさ」
と言っていた。
最後に現れたのはイバラキ。しかし、肝心の馬の方はどうも既にお疲れの様子。それもこれも鞍上が重すぎるのが原因だ。実際このレースの参加者の中で最も体格が良い。
「負けたくないけどアタシが重すぎるんだな。こりゃこいつには悪いことしたな」
と独りごちる。
かくして揃った五頭がゲートに入り、一斉にスタート。
このスタートに最大限の集中をしていたのはイルムであった。神経を研ぎ澄ませ、ゲートが開く瞬間に一気に飛び出し、そのまま前へ前へ、ずーっと前に出る。その差六馬身から七馬身はあろうか。ただの逃げではない。大逃げだ。
あまり馬の扱いがわかっていないイバラキは早速付いていこうとしたが、すぐに馬のほうがバテてしまった。
結果悠々と一人旅。その様子に会場は、先ほどの黄色い歓声とは違うどよめきに包まれていた。
「早く捕まえないと逃げ切ってしまうよっ」
余裕の笑みを浮かべそうシュテルンを走らせるイルム。
一方残りの三頭はそれに付いて行くわけではなく、後方からペースを保って競馬を進めていた。馬の方も鞍上の考えを察したか、先頭を譲りあうかのように動いていた。結果先をゆくシュテルンとの差は更に開いていく。八馬身、九馬身……結果十馬身ほど開いたところで、先を行くイルムも一安心、あとは手綱を持ったままシュテルンの走りたいように走らせる。
そのままの並びでレースは進む。第二コーナー、向こう正面、第三コーナーと来てもレースは動かない。そしてとうとう最終コーナーに入った所で急に動き始めた。
身体を低くし、鞭を一つ入れ加速を始めるユリアンとアルエット。
広く開いた先を見て、そのまま真っすぐにハニーマーブルを走らせるミオ。
そしてポイナの気持ちを感じ取り、Yesの代わりに鞭を入れてスパートをかけるイスカ。
一斉に加速した三頭の前にイバラキは成すすべなく沈んでいった。
トップを目指し激しく競り合う三頭。風景は一瞬のうちに後ろに流れ、馬場の周囲の様子も観客たちの声も聞こえない。
「これが噂の0の領域……です?」
今まで見たことのない光景に、思わずそう漏らしてしまうイスカ。直線を駆けゴールへゴールへと突き進んでいく。
だが、三頭とシュテルンとの差はあまりに開きすぎていた。多少ペースは落ちようとも、ここまで差があると追いかけても距離が足りない。間に合わない。結果抜けて一着でシュテルンがゴール。しかし予選を突破できるのは二頭。あと一つの枠を巡り、この三頭によるデッドヒートが始まる。
ハニーマーブルが出る。アルエットが抜ける。ポイナも負けじと先へ進む。ポイナが出ればハニーマーブルが抜き返し、アルエットがさらに進んでいく。
そのまま三頭絡みあうようにゴールイン。再びのパルム判定後二着に入ったのはユリアンとアルエットだった。
馬の力にも、鞍上と馬の呼吸にも差は無かった。勝負を分けたのはただ一つ、レース経験の差であった。
●第3レース
1枠:龍崎・カズマ(ka0178)
2枠:アシェ-ル(ka2983)
3枠:エアルドフリス(ka1856)&グィー
4枠:イーディス・ノースハイド(ka2106)&エクレール
5枠:ルイーザ・ジェオルジ
「そんじゃま、楽しくやるとしますかね」
第3レースの本馬場入場が始まり、愛馬に跨がり真っ先に入ってきたのは龍崎だった。しかし、彼の愛馬は軍馬、競走馬と比べると一回り体格が大きく、その分スピードは出ない。勝敗を考えれば競走馬を借りてきたほうが良いだろうが、彼の本心は別のところにあった。
「軍馬っつっても戦場だけじゃなく偶にはこういう場所を何も考えず思いっきり走らせてやりたいんでな。こいつが満足すれば、勝ち負けはどうでもいいさ」
後はどのような結果になろうと受け入れる。そんな覚悟と共にレースへ向かう。
「さて、どうなることか」
続いて入ってきたのはイーディス。彼女がまたがる愛馬、エクレールもまた戦馬である。大きな身体は鞍上の小柄なイーディスと並ぶことによって、より一層大きく見える。
普段ならイーディスはフルプレートを身にまとい騎乗している。セットになればさすが元王国騎士団従騎士。立派な一角の騎士に見える。しかし、今はレースに備えて装備を全て脱ぎ軽装になっている。アンバランスにも見えるほど両者の大きさに違いはあるが、長い間共に過ごしてきて息はピッタリ。人馬一体となって優勝を狙う。
「1年ぶりの競馬参戦になるな。集まった人たちを楽しませられると良いね」
愛馬グィーと共に入ってきたのはエアルドフリス。あれから一年。その間も共に様々な依頼で戦場を駆けてきた。経験からかその芦毛の馬体にも少し貫禄が出たようにも思える。
「今年こそ上位入賞も狙いたいが、さて」
丁寧にたっぷり返し馬を行い、馬場に慣らす。勝負に向けて準備を整える。
「参加したいと思ってたんだ!」
そして入ってきたのはルイーザ。ジェオルジ一族に連なる人物である彼女は今までさまざまな理由があって参加できなかったが、念願かなってとうとう参加できた。このレースを楽しもう、と他のものに負けず劣らずやる気にあふれている。
しかし、最後に入ってきた者はそうではなかった。
「お馬さんと走れると聞いてきてみたら、競馬だった」
愕然としているアシェール。
しかしいつまでもぐちぐち言っていられない。アシェールは今回共にレースに挑む馬を見定める。引きこもっていた間に、馬にかぎらず動物を見る目は磨いてきたつもりだ。結果選んだのは小柄ながらも、美しい毛並みを持つ馬。ピンとたった耳は見るからに元気が良さそうだ。
かくして出走する五頭が揃い、レースが始まる。
「私は馬の好きなように走らせるのが好みなんだ、だから馬に特に指示は出さないよ」
ゲートが開くと同時に飛び出していったのはエクレール。イーディスの言うとおり、真っ直ぐなターフに飛び出して行くと一気に加速していく。その姿は戦場で的に向かって一直線に突撃をするかのようだ。
「この子は一番前を走るのが好きなんだ。負けず嫌いとも言うのかな」
だが、そんなエクレールをぐいぐいと追いかけ先頭争いを繰り広げる馬が一頭。
「結果なんぞ気にするな、思いっきり思うが儘に走れ」
龍崎は愛馬を思い切り走らせるために、全力でサポートしていく。馬の動きに合わせて体重を細かく移動し、脚を運ばせサポートする。
「全ての先頭に立って、殺意のないトラックをな」
そんな龍崎の思いに応えようと加速していく気持ちが、鞍上にも触れている手を通して伝わってくる。
「慌てず、楽しく走りましょう」
その後ろからルイーザが付いていく。他の馬の進路を妨害しないようにあくまでペースを守って、この位置からレースを進めていく。
「彼女は我慢強いんだ」
そして最後方から競馬を進めるのはグィー。ここから他の馬の様子を見て、二手、三手先を読みチャンスをじっと待つ。
そのまま最終コーナーへ。ここでエアルドフリスの手に感じるものがあった。グィーが彼にチャンスを教えてくれる。すかさず手綱を緩める。急加速を開始し、どんどん進んでいくグィー。それに弾かれるようにルイーザが外に流れる。そしてゴールへと向かうポッカリと開いた穴。
「今です! 一番前に!」
そのチャンスを見逃さず馬体を飛び込ませるアシェール。邪魔する者は何もない。抜けた勢いを止める必要なく、直線を走りきればいい。
すぐ後ろにはグィーが付いた状態だが両者の差は変わらない。そのままのかたちでゴールへ飛び込んだ。
ルイーザが外に流れたことによって生まれたルート。このルートが開かれたことがアシェールの勝因だった。まさしく、運も実力の内というべき状況であった。
●決勝レース
1枠:リュー・グランフェスト&テンペスト
2枠:イルム=ローレ・エーレ&シュテルン
3枠:アシェ-ル
4枠:ザレム・アズール&オラシオン
5枠:ユリアン&アルエット
6枠:エアルドフリス&グィー
「まさか予選で負けるなんてな」
決勝レースを迎える直前、裏ではザレムがミオを慰めていた。
「勝負は時の運ともいいますから……残念ですけど」
「ミオの分も頑張ってくるよ」
そう言って決勝の馬場へと向かったザレム。
そして決勝に参加する六頭がゲートに入り、いよいよ勝負の時を待つ。
ファンファーレが鳴り響き、残響が轟く中スターターの旗が振り下ろされゲートが開いた。
「俺達に限界なんかねえ! いけ!」
それと同時にテンペストが真っ先に飛び出す。リューはそれを一切止めない。予選で我慢させた分のストレスは闘争心へと変わり、二人は同調してどんどんペースが上がっていく。
「逃げ馬は幸運に恵まれないと勝てないと言うけれど、追われてる彼は強いよ?」
その後ろからはイルムが続く。残り四頭の位置を神経を研ぎ澄ませて把握し付いて行く。その想いに応えペースを上げていくシュテルン。
「さあ、シュテルン! 一番星を捕まえろ!」
そんなイルムの思いに応えるかのように、シュテルンは流星となった。
その後ろからはアシェールとグイーが付いて行く。最後方にはアルエット。
そのまま大きくグーッと進んで最終コーナーへ。勝負とばかりに全馬に鞭が入る。
「行こうぜ、テンペスト! どこまでもなあ!」
「勝利を信じて、走れ!」
やるべきことはやった。あとは心の問題。一団となった六頭と六人は抜きつ抜かれつ、先頭がめまぐるしく変わりながらゴール板へと向かっていく。そしてパルムが捉えた一着は……
●
レースは全て終わった。祭りの後は懇親を兼ねて宴が始まる。そこに流れる美しい歌声。
イスカが皆の健闘を称える歌を歌う。
ルンルンは一瞬のうちに美しいドレスに着替え、少しでもお近づきになるためイルムに話しかけている。
「お疲れ様、グィー。風は楽しめたかね?」
そんな歌声を聞きながら、エアルドフリスはグィーにリンゴを食べさせてあげる。その名の通り風とかした人馬は全く譲らずゴールへと向かう。だがあと一歩が間に合わず惜しくも三着。それでも悔いはない。グィーが楽しんでくれたことを感じ取れたからだ。
「準優勝凄いです」
「でも優勝できなかったな」
そんな会話をしていたのはミオとザレム。鍛えた力を発揮できたが、ほんの少しの差で惜しくも二着。
そしてほんの少しの差を制して優勝した人馬は、いつもの様に走った後を過ごしていた。レースの余韻を楽しんだ後、後ろに戻り
「気持ちよかったなぁ。ありがとう」
体を拭いて水を飲ませていた。美味しそうに水を飲むアルエットの首には優勝馬を示すメダルがかけられていた。最後に勝負を分けたもの、それは経験の差だった。
三度目のレース参加で彼岸の優勝を成し遂げたユリアンとアルエットだった。最後尾から一瞬しか無いチャンスを見事物にして、優勝という最大の栄冠を手に入れたのだった。
だが、優勝者以外も皆晴れ晴れとした顔をしていた。悔いなく力を発揮できたようだ。そんな笑顔があちこちで弾けながら宴は月明かりに照らされずっと続いていた。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/11/06 22:56:11 |
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脚質について モア・プリマクラッセ(kz0066) 人間(クリムゾンウェスト)|22才|女性|一般人 |
最終発言 |
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出走前(雑談用 龍崎・カズマ(ka0178) 人間(リアルブルー)|20才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2015/11/07 07:29:40 |