ゲスト
(ka0000)
休みを寄越せ、話はそれからだ
マスター:石田まきば

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 3日
- 締切
- 2016/04/28 15:00
- 完成日
- 2016/05/23 03:23
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
第三師団が駐留管理する、エルヴィンバルト要塞……
「美味いものが食べたい」
師団長カミラ・ゲーベルの忙殺の日々はまだ続いていた。執務室の机上には物資管理上の記録や管理地域の状況資料やら、とにかく上層部に居ては避けられないものが積み上げられている。デバイスでの処理も勿論行うけれど、全ての人間がデバイスを持ち扱えるわけではない。だからアナログな処理は避けて通ることはできないのが実情だった。
「自慢の弟子達が腕によりをかけて作ってるメニューでは不服とは、師匠の風上にも置けませんよゲーベル師団長」
カミラと同じように手元の作業は止めないまま、視線も資料から離さずに対応するのはテオバルト・デッセル。今も上司の機嫌を取る業務と、物資予算のやりくり、要塞で働く者達の健康管理を鑑みた勤務調整と多様な業務を並行して進めていた。
「彼らは実によくやってくれているぞテオ、私はそんな事を言っているんじゃないからな」
要塞内の食堂に詰めている料理人はカミラの手ほどきを受けている者、もしくはカミラと同等に料理かそれに準じる部門に傾倒している者の集まりだ。前者はカミラ考案レシピなどを忠実に再現し師団内の食事水準の上昇に現在進行形で貢献しているし、後者は師団内で別の専門役職を持っているためそちらの業務にかかりきりになっている。
ありていに言ってしまえば、皆忙しくしている。
勿論カミラ達上層部も例外ではない。
「そういやぁ師団長デー、最後にやったの何時だったかねえ、嬢ちゃん」
執務室にいるもう一人の副長、モーリッツ・ハウプトマンがのんびりとした声を出す。手元は先の二人に比べたらゆっくりだが、彼もまた事務仕事に従事しながら会話に混ざった。
「そうなのだ、それだ、よく思い出したなモーリ!」
勢いよく頷くカミラ。師団イベントも随分とやっていない。皆で楽しく美味しいご飯を食べるには、都合がつけられなかったのだ。
「別に私が作らなくたっていいんだ、美味いもの、珍しいものに出会えれば正直なんでもいい」
生活に潤いが足りない、と同じ空気で言ってのける。どこまでも食の道を突き進む女、カミラ。
「数日くれなんて言わないさ。そろそろ半日休みだけじゃなくて、一日の休みとか作れるくらいにはなったんじゃないのか」
「家に帰っても『お父さん寝てるだけなんだもんつまんな~い』って言われる所帯持ちの身も考えてほしいねぇ」
カミラとモーリッツの視線がテオバルトに向かった。
「……」
ちらりと手元のスケジュールを見る。確かに多少無理をすれば、数人ずつくらいならそういった休みを作ってやることが出来る。無理をするのはそれ以外の者達にはなるが、交代で一日の休みを作る事を伝えれば納得もするはずだ。
(一番しわ寄せが来るのは私ですけどね)
言っても無駄なので言わないが。大体二人ともわかっているから言っているのだ。
「我々三人は同時には無理です」
わかっていますよね、と敢えて念を押す。素直に肯定するのは癪に障った。
「よし、じゃあまず私に休みを寄越せ、話はそれからだ」
「あっ嬢ちゃんずりぃ」
「上が率先して態度に示さないと皆も休む気になれないだろう、そういう事だ、悪いなモーリ」
ふふん。楽しげに笑みを浮かべるカミラ。既に脳内ではどこに行くか計画を立て始めているはずだ。
「そりゃそうだけどよぉ……上ってんなら別に俺らでもいいわけだろ?」
「私はもうこの日に休むと決めた、それまでの仕事の目途も付けたしな、たった今!」
「あっ俺が苦手な仕事やってるからってずるぃぞ」
「……『他の者』がもっと楽になるように、更に仕事を先取りしてくれて構わないんですよ……?」
テンポよく繰り出される会話。三人とも、それが今のシュラーフドルンに必要なことだと分かっているから、こうして遊びのような会話で話が決まっていく。
三人での師団運営が決まってから数年……チームワークは、こんな時でも健在だった。
●
「そういうわけだから、どこかいい場所教えてくれ、日帰り可能な範囲で」
「はぁ……」
APVの一角に、ラフな態度で座っている帝国軍人。
(旅行代理店とかじゃないのになあ)
仕事の話を師団長が直々に持ってくるという話に驚いたフクカン。しかも味に煩い相手という事でお茶も丁寧に淹れて気合を入れたというのに。
仕事? ……仕事だと割り切れば、なんとか。いいかな?
(タングラムさまなら仲介料をとれっておっしゃるかも)
そうしよう、それならお茶の代金も無駄にならないし!
頭をぷるりとふったフクカンは、いつものパンフレットを取り出すのだった。
●APV温泉概要~パンフレットより抜粋~
【男湯】、【女湯】、【混浴】と別れておりますので、施設内の案内を元にご利用ください。
仕切りや脱衣所の壁には、リアルブルーの頑丈な設計技術が取り入れられております。
温泉マナーとして、「着衣入浴の禁止」「タオルを湯船に付けるのは禁止」とさせていただいておりますが、【混浴】でのみ、水着の着用やタオルを巻いての入浴を許可しております。また、入浴専用の浴衣や腰巻の貸し出しの用意もございます。
公的良俗のため、ぜひともご協力をよろしくお願いいたします。
着衣のままでも楽しめる設備といたしまして、別途【足湯】のご用意もございます。
足湯の形状は様々で、お一人様でも、大人数様でも共に楽しめるよう工夫を凝らしてございます。
【食事】の提供もさせていただいております。
【足湯】の近く、ベンチに囲まれている建物が該当しております。
温泉の熱い湯気を利用した蒸し料理を中心に提供させていただいております。
特に「温泉芋」は甘みが強く感じられると好評をいただき、今では一番の名物となっております。
他にも野菜やヴルスト、羊肉などお食事向きのもの、甘い餡を入れた饅頭もご用意しております。
お飲物は冷えたお酒やジュースを取り揃えてございます。帝国の技術を駆使した魔導冷蔵庫がございますので、いつでも冷えた状態で提供することが可能となっております。
冷えた羊乳や果実のジュース、濃い目の紅茶を湯上りに一杯、が通とされているようです。
ビールもございますが、未成年の方はお間違えのないようご注意くださいませ。
当施設は宿泊施設を併設しておりません。
ご宿泊の際は近隣都市への移動も考慮し、飲み過ぎには十分にご注意いただければと思います。
持ち込みでのご飲食を望まれるお客様が増えてまいりましたので、貸出可能なキッチンスペースを併設いたしました。
ご利用の際は当施設スタッフに一言お声がけくださいますと幸いです。
それでは、どうぞ和やかなひとときをお楽しみくださいませ。
第三師団が駐留管理する、エルヴィンバルト要塞……
「美味いものが食べたい」
師団長カミラ・ゲーベルの忙殺の日々はまだ続いていた。執務室の机上には物資管理上の記録や管理地域の状況資料やら、とにかく上層部に居ては避けられないものが積み上げられている。デバイスでの処理も勿論行うけれど、全ての人間がデバイスを持ち扱えるわけではない。だからアナログな処理は避けて通ることはできないのが実情だった。
「自慢の弟子達が腕によりをかけて作ってるメニューでは不服とは、師匠の風上にも置けませんよゲーベル師団長」
カミラと同じように手元の作業は止めないまま、視線も資料から離さずに対応するのはテオバルト・デッセル。今も上司の機嫌を取る業務と、物資予算のやりくり、要塞で働く者達の健康管理を鑑みた勤務調整と多様な業務を並行して進めていた。
「彼らは実によくやってくれているぞテオ、私はそんな事を言っているんじゃないからな」
要塞内の食堂に詰めている料理人はカミラの手ほどきを受けている者、もしくはカミラと同等に料理かそれに準じる部門に傾倒している者の集まりだ。前者はカミラ考案レシピなどを忠実に再現し師団内の食事水準の上昇に現在進行形で貢献しているし、後者は師団内で別の専門役職を持っているためそちらの業務にかかりきりになっている。
ありていに言ってしまえば、皆忙しくしている。
勿論カミラ達上層部も例外ではない。
「そういやぁ師団長デー、最後にやったの何時だったかねえ、嬢ちゃん」
執務室にいるもう一人の副長、モーリッツ・ハウプトマンがのんびりとした声を出す。手元は先の二人に比べたらゆっくりだが、彼もまた事務仕事に従事しながら会話に混ざった。
「そうなのだ、それだ、よく思い出したなモーリ!」
勢いよく頷くカミラ。師団イベントも随分とやっていない。皆で楽しく美味しいご飯を食べるには、都合がつけられなかったのだ。
「別に私が作らなくたっていいんだ、美味いもの、珍しいものに出会えれば正直なんでもいい」
生活に潤いが足りない、と同じ空気で言ってのける。どこまでも食の道を突き進む女、カミラ。
「数日くれなんて言わないさ。そろそろ半日休みだけじゃなくて、一日の休みとか作れるくらいにはなったんじゃないのか」
「家に帰っても『お父さん寝てるだけなんだもんつまんな~い』って言われる所帯持ちの身も考えてほしいねぇ」
カミラとモーリッツの視線がテオバルトに向かった。
「……」
ちらりと手元のスケジュールを見る。確かに多少無理をすれば、数人ずつくらいならそういった休みを作ってやることが出来る。無理をするのはそれ以外の者達にはなるが、交代で一日の休みを作る事を伝えれば納得もするはずだ。
(一番しわ寄せが来るのは私ですけどね)
言っても無駄なので言わないが。大体二人ともわかっているから言っているのだ。
「我々三人は同時には無理です」
わかっていますよね、と敢えて念を押す。素直に肯定するのは癪に障った。
「よし、じゃあまず私に休みを寄越せ、話はそれからだ」
「あっ嬢ちゃんずりぃ」
「上が率先して態度に示さないと皆も休む気になれないだろう、そういう事だ、悪いなモーリ」
ふふん。楽しげに笑みを浮かべるカミラ。既に脳内ではどこに行くか計画を立て始めているはずだ。
「そりゃそうだけどよぉ……上ってんなら別に俺らでもいいわけだろ?」
「私はもうこの日に休むと決めた、それまでの仕事の目途も付けたしな、たった今!」
「あっ俺が苦手な仕事やってるからってずるぃぞ」
「……『他の者』がもっと楽になるように、更に仕事を先取りしてくれて構わないんですよ……?」
テンポよく繰り出される会話。三人とも、それが今のシュラーフドルンに必要なことだと分かっているから、こうして遊びのような会話で話が決まっていく。
三人での師団運営が決まってから数年……チームワークは、こんな時でも健在だった。
●
「そういうわけだから、どこかいい場所教えてくれ、日帰り可能な範囲で」
「はぁ……」
APVの一角に、ラフな態度で座っている帝国軍人。
(旅行代理店とかじゃないのになあ)
仕事の話を師団長が直々に持ってくるという話に驚いたフクカン。しかも味に煩い相手という事でお茶も丁寧に淹れて気合を入れたというのに。
仕事? ……仕事だと割り切れば、なんとか。いいかな?
(タングラムさまなら仲介料をとれっておっしゃるかも)
そうしよう、それならお茶の代金も無駄にならないし!
頭をぷるりとふったフクカンは、いつものパンフレットを取り出すのだった。
●APV温泉概要~パンフレットより抜粋~
【男湯】、【女湯】、【混浴】と別れておりますので、施設内の案内を元にご利用ください。
仕切りや脱衣所の壁には、リアルブルーの頑丈な設計技術が取り入れられております。
温泉マナーとして、「着衣入浴の禁止」「タオルを湯船に付けるのは禁止」とさせていただいておりますが、【混浴】でのみ、水着の着用やタオルを巻いての入浴を許可しております。また、入浴専用の浴衣や腰巻の貸し出しの用意もございます。
公的良俗のため、ぜひともご協力をよろしくお願いいたします。
着衣のままでも楽しめる設備といたしまして、別途【足湯】のご用意もございます。
足湯の形状は様々で、お一人様でも、大人数様でも共に楽しめるよう工夫を凝らしてございます。
【食事】の提供もさせていただいております。
【足湯】の近く、ベンチに囲まれている建物が該当しております。
温泉の熱い湯気を利用した蒸し料理を中心に提供させていただいております。
特に「温泉芋」は甘みが強く感じられると好評をいただき、今では一番の名物となっております。
他にも野菜やヴルスト、羊肉などお食事向きのもの、甘い餡を入れた饅頭もご用意しております。
お飲物は冷えたお酒やジュースを取り揃えてございます。帝国の技術を駆使した魔導冷蔵庫がございますので、いつでも冷えた状態で提供することが可能となっております。
冷えた羊乳や果実のジュース、濃い目の紅茶を湯上りに一杯、が通とされているようです。
ビールもございますが、未成年の方はお間違えのないようご注意くださいませ。
当施設は宿泊施設を併設しておりません。
ご宿泊の際は近隣都市への移動も考慮し、飲み過ぎには十分にご注意いただければと思います。
持ち込みでのご飲食を望まれるお客様が増えてまいりましたので、貸出可能なキッチンスペースを併設いたしました。
ご利用の際は当施設スタッフに一言お声がけくださいますと幸いです。
それでは、どうぞ和やかなひとときをお楽しみくださいませ。
リプレイ本文
●
並ぶ水着を前に、ステラ=ライムライト(ka5122)はちらりと葛音 水月(ka1895)の様子を伺う。
(どんなタイプなら喜んでくれるかな)
可愛いのかな、それとも大人っぽいのかな?
「水着? 湯に浸かるのにどうしてそんなものが要るんだ」
意味が分からないと首を捻る黒沙樹 真矢(ka5714)と、それを宥める水月。
「混浴は隠すのがマナーだからで……」
「じゃあ水月が選べ。ステラの分もだ」
それなら着てやると真矢。
「私のも? ……み、水月くんが言うなら……」
「決まりだな!」
「せっかく作るのですから、この場所らしい要素も必要ですわね?」
音羽 美沙樹(ka4757)が見出した答えは、蒸し肉。元々蒸し料理が供されているが、そこに一味くわえて別のものを生み出すのが美沙樹の腕の見せ所。
清酒に漬けて下拵えした羊肉は蒸してから、柔らかいうちに裂く。あら熱をとる間に作るのは、そこに更に和える予定の調味料だ。
手間のかかる側を先に。種を抜いておろした柔らかい梅干と細かく砕いた干梅で二種類の口当たりを揃えた梅肉、塩気と酸味に少しだけ蜜をたらせば口当たりもまろやかに。
おろし山葵を大豆調味料で溶いた側は辛味が効きすぎないよう、別にとっておいた脂身を少し足した。。
それぞれを冷ました肉に和えれば完成だ。
「梅干が少し余ってしまいましたわ」
それも蒸し野菜と和える。これもさっぱりとした仕上がりだ。湯上りの火照った体に効く、爽やかな涼がとれる事だろう。
「……私は温泉にでも」
自分の分を取り分け、あとはご自由にとスタッフに声をかけた。
羊乳のチーズで作ったサガナキは、チーズの香ばしさ、胡椒と柑橘果汁の香りが重なり酒飲みの心を擽る。
「私の故郷の料理だ」
キッチンスペースでそう答えるのはジュリオ(ka6254)である、匂いに釣られたカミラの襲撃を受けたのだ。パンと共に食べるその品は、気付けば蒸した羊肉も添えられている。気に入ったという事だろう。
「ヴルストでも合いそうだな!」
他にも見知らぬレシピがあるなら、そんな期待の視線がジュリオに向けられる。
「そうだな……時間が許すならば」
濃い目の紅茶と皿を手に、足湯へと向かうのだった。
(今日はたとえ故郷の集落が滅亡の危機に瀕してても休むわよー)
心の中で宣言するアルスレーテ・フュラー(ka6148)。
「働きづめじゃあ倒れちゃうからねー」
一日かけて休暇を満喫する心の準備は万全だった。
(ああ素晴らしき休日!!!)
「温泉なんていいじゃない♪」
耳に残る響の声。ちょっときつい仕事だったあとだからこそ、休息も大事というもの。
(なにより美容にも良さそうっていうのが、いいわね)
この身体を維持するには鍛錬だけじゃダメなのよ。ドロテア・フレーベ(ka4126)の足音はリズムよく、女湯へと向かっていく。
「うふふ、お肌に良さそうねー♪」
あら、お酒もあるの? 湯船で飲みたいし、一式もらえるかしら?
●
「ん……ここも久しぶりだ、な」
オウカ・レンヴォルト(ka0301)がすぐ隣に声をかければ、イレーヌ(ka1372)が小さく笑う。
「そうだな。今日も背中を洗ってやろうか?」
「っ! ……いや、遠慮する」
恥ずかしいさと、懐かしいような記憶に、からかう声に耳を擽られる。オウカは顔が熱くなったのを感じ取る。
「別に私は気にしないぞ?」
「……そうじゃなくて、だな」
前と同じでは済まないだろうから。肩を寄せ合う距離でしか聞こえないよう声を潜める。
「わかっているとも」
素直な答えに免じて、今はやめておいてやろう。イレーヌの笑みが深くなった。
時音 ざくろ(ka1250)はタオルを巻いて混浴へと向かっていた。
「ざくろ~ん!」
同じくタオルを巻いた姿のアルラウネ(ka4841)が手を振りながら近づいてくる。その隣を歩く白山 菊理(ka4305)は周囲の様子が気になっているようで、ぎゅっと、巻き付けたタオルの裾部分を握り込む。
「菊理、大丈夫?」
ざくろの心配そうな声に顔を向ければ、上目遣いのガーネットに見つめられた。
「無理してるなら……」
「だっ大丈夫だ、水着も着ているし」
「ざくろは一緒だと嬉しいけど」
「混浴大好きだもんね~」
からかい混じりの声はアルラウネ。その口元は勿論笑みの形。大人の特権とばかりに花見酒も手配済みで、楽しむ気満々……訂正、既に酔っ払いになっていた。
●
(何を凹んでんだか)
若いなぁと思いながらユリアン(ka1664)の肩をがっしと抱く劉 厳靖(ka4574)。好きなだけ肩を落として頭を捻って熱を出したっていいと思う。
(それをどう持ち上げるかが肝心だろうよ)
向かう先は、男湯の入り口である。
「そうね……前回のお花見は一緒に行けなかったものね……」
エルティア・ホープナー(ka0727)の言葉に少しばかり耳が痛い。けれども了承を取り付けたこと、実際に花見に来ることが出来た事。その事実に感謝しようと思いながらシルヴェイラ(ka0726)は男湯での入浴を楽しむ。
(浴衣を買ったと言っていたが……)
どんな柄だろうか。楽しみにしながら、湯の中で筋を伸ばす。
●
「……温泉……」
今年の桜は見ることが出来ているから。今日の目的は温泉の方だ。
のんびり、楽しめればいい。浅黄 小夜(ka3062)が友も誘わず、一人で来たのはそれが理由だった。
人が多かったり、考えることが多かったり。そんな仕事続きだったのだから、自分に休みをプレゼントするつもりで。
(……お休みも、大事)
ずっと走り続けていては、身体だけじゃなく心も疲れてしまう。勿論、湯中りにはしっかり気を付けるけれど。
ぷかり
共に浸かろうと、猫のぬいぐるみを桶で浮かべて。自分は湯船の縁に両腕重ねて頬を乗せ、徐々に身体の力を抜いていく。
ぷかり、ぷかり
ひとつずつ、考えを眠らせて。少しの間、目も閉じて……
ちゃぷ……
(混浴に行くような子達もいたけど……絶対無理)
女湯に浸かりながら、自分より年若いと思われた子達を思い出すアルスレーテ。ものすごく、生き生きしていた。
「みんな綺麗でさー……」
肌のきめ細かさとか、ハリとか。羨ましいったら。自分もあれくらい綺麗なら自信が持てるのだろうか。
(……ないわね)
もとから自信なんてない。恋人に愛想を尽かされたら婚期なんて二度と来ない、そう思っているのである。
「ほんと、ダイエットって難しいわー……」
でも今日は休日なのだ。わざわざ沈むようなことを考えても仕方ない。温泉から出たら、ベンチを確保して惰眠を貪ろう。来る前に見かけたけれど気持ちがよさそうだった。そうだ、楽しむことだけを考えよう。
(温泉、美容にもいいって話もあったしー……)
ああ、でも湯船で寝ないように気を付け…なくちゃ……
「温泉なんて初めてですけど……」
控えめにも聞こえるけれど、レイン・オーキス(ka6264)は恥ずかしがっているわけではない。今は洗い場で身体を流しているところだが、胸をはり、堂々とした様子だ。むしろその姿勢は、彼女のふくよかな胸元を際立たせるものであったりする。
(自慢まではしませんけど、これくらいならいいですよね)
チラチラと周囲を気にした様子のアルスレーテの視線が自分に向かってくるのが分かる。少しだけ気分がよかった。
ちゃぷ……
「お花、とても綺麗ですね……」
すっきりと洗った肌に湯をかけながら花を眺める。湯船に浮かんだ花弁が、レインの肌に貼りついた。
「やはり満開が一番です」
散った後の新緑も生命力が感じられて好きだけれど。
●
「きくりんはお風呂のマナーは知ってるのよね?」
「無論、湯船につかる前に体を洗うのは常識だ」
「そのあとゆっくり浸かるの気持ちいいよね!」
生真面目に答える菊理の後に続くざくろは、アルラウネの淡く染まった肌に見とれて反応が遅れた。
「それじゃ話は早いわね~、ざくろん座って?」
背中流してあげるからと、アルラウネはざくろの正面に座る。菊理は背中側だ。
「2人で背中流してくれるの? ありが……って!?」
ボディソープを自分の身体に垂らしたアルラウネが抱きついて、ざくろは一瞬言葉に詰まる。
「そんないきなり、なっ」
菊理も背中側から抱きついてくる。
あたたかくて柔らかいスポンジが……4つ?
「ん、ふっ。き、気持ち良いか?」
菊理のかすれ声も聞こえてくる。ざくろの頬の赤みが強くなった。
「気持ち良いに決まってるわよね~?」
アルラウネのタオルは肩からかけられている。つまり(自主規制)。
「び、吃驚しただけだもん……はわぁ」
ざくろのタオルも酔っ払いの手によって外されていたのだが、大事なところは泡がいい仕事した模様。
「やっぱり混浴はいいものですね!」
ヒヨス・アマミヤ(ka1403)の声が高らかに響いて、周囲の色々とアレな空気の方々がびくりと震えた。そんなことも分かったうえでやっているのだけれど。
(むしろもっとそういう空気になってもいいと思いますよぅ、特にそこの二人とか!)
ちらりと見るのはヒース・R・ウォーカー(ka0145)と南條 真水(ka2377)である。色々と画策しているというのに進展がないとはどういうことなのか。純情にもほどがある。
(今日はもっとストレートに! いっちゃいますからねっ)
覚悟ぉー! その気合の籠った視線に、真水の肩がびくりと震えたような気がした。
(なんだか嫌な予感がする……)
前と同じアクシデントに見舞われないように、細心の注意を払って水着は面積も広くしっかりした厚みのあるものを選んできたつもりだ。タオルの端もきっちりあわせ、空いた手でぎゅっと握る。
(こう、みんなに嵌められるような……南條さんらしくないとわかっちゃいるけど)
どうしても、不安がぬぐえない真水である。
(なにがいいものだよ。1回や2回で慣れるわけないだろう!)
当たり散らしたいくらいなのだが、それは自分を更に追い込むだけとも本能で気付いている。
「何はともあれ花見と湯を愉しもうかぁ」
どこか達観した様子のヒースの呑気な声が恨めしかった。
一通り酒の支度が揃った桶を真水に示すヒース。
「ご所望かい? 仕方がないからお酌してあげるよ」
軽い口調での返答に、そうでなくちゃと薄く笑う。
「ありがとう、真水。花見と温泉、それにお酌までしてもらえるとちょっと贅沢すぎるかなぁ」
「これぞ風流ってやつなのかな」
南條さんはまだ未成年だからお酒は遠慮、来年のお楽しみということにしておくよ。いつも通りのやり取りの中、真水は花を見ている。ヒースも視線を高くに向けた。
(……うん、大丈夫)
特殊加工の包帯があるから大丈夫。シェリル・マイヤーズ(ka0509)は小さく頷いて、改めて湯船に身体を沈める。
(ヒヨも、手伝ってくれると……言ってた)
自分一人では巻けない場所もほどけたらなおしてくれると、彼女がそう言ってくれた。
(湯治で……傷の治りが早くなるかも、しれないし……?)
少しの建前。心の底で、あまり自覚はないけれど。皆と一緒に遊べる機会というのは、出来るだけ逃したくなかった。
白スク水を着たステラは今、水月の膝上に座っている。
(どうしよう、恥ずかしいけど、でも、水月くんが選んでくれた水着だしっ)
既にお湯にも入ってしまった。濡れて透けないだろうかが心配でたまらなくなっているのだが。
「ステラさん、温泉久しぶりって言ってましたよね。こっちではなかなか無いですしねー」
いつもと同じ調子で話す水月に、心配のしすぎだろうかと内心で慌てる。ならば自分もいつも通りにと、水月の首に腕を回して抱き締めた。
「水月くん? あの、これ……」
似合ってるかな? 耳元に唇を寄せる。
「とっても良いと、思います……っ」
「ひゃん!?」
抑えたような声音の水月に強く抱きしめられた。
勿論水月だって水着は着ている。だけれど、薄い布なのは変わらないわけで。いつも通りにしようと努力しても、柔らかいとかいい匂いとか……意識してしまうのだ。
(文句言われたら水月のせいだな)
気にしないことにして、真矢が見まわした先には体を寄せあう二人の姿。
(ちょっとステラの邪魔しちまうが、三人で来たんだからな)
「おーう二人とも、ちと遅れちまったな」
声をかければ、二人同時にはっとした顔で真矢を見る。水月はやや目を見開いて、そんな水月を見てステラの眉は下がった。
水月が選んだ真矢の水着は黒のスリングショットである。隠れていない。
……水着、とは。
「ヒヨ、オウカさんと彼女さんに馴れ初めを聞きたいと思ってたんです!」
きっと素敵なお話に間違いないですよね。隣のシェリルににこりと笑えば、こくり、いつもの頷き。
「ヒースさん、真水さん、どう思いますか?」
察したイレーヌはオウカを見て、友人の幸せを願うオウカも頷いた。
杯は一度桶に戻し、先に口を開くのはイレーヌ。
「合コン依頼でたまたまペアになったのが切っ掛けだったな」
再び隣に視線を向ける。頷いて引き継ぐのはオウカ。
「告白は、こちらから、だ」
「最初は、ただ賑やかしで参加したつもりだったが」
真面目に答える様子のオウカに、更に体を寄せる。折角のシチュエーションを楽しまないなんて損だ。逃げないだろうことも分かった上で、オウカの腕に両腕を絡めた。勿論ぎゅうと、密着させて。
「こうなるとは、分からないものだよ」
「……ま、まあ、なんだ」
湯当たりとは違う赤みがオウカの顔に広がる。それはイレーヌのせいだとは周囲にも明白なのであるけれど。オウカはそれでも、いや、だからこそ自身を律する。
「受け入れてみたら、案外すんなりしっくりくるもんだ、ぞ」
明らかに動揺してはいたが、言葉の説得力は非常に高いものだった。
(一度は諦めていた気持ちだから、か)
胸に宿る熱いものを感じながらヒースの様子を伺うオウカ。幸せのお裾分けのような偽善的な気持ちではない。ただ幸せを知ってほしいように思うのだ。
(……興味深いとも、思う)
関係が変わることで変化があるのか、それともないのか。策謀に肩入れするのは、これが本音かもしれない。
「……あ」
「シェリル……?」
バシャン!
小さな声に違和感を感じて振り返る。移動していたシェリルが『予定とは違う場所で』ふらついたのだ。その手にはタオル。オウカの腰に巻かれていたものである。
「大丈夫ですかっ!」
バシャバシャと大慌てで駆け寄るヒヨスと、うっかり見ないように慌てて視線を逸らす真水。リラックスしていたせいで反応が鈍るヒース。この機を逃すヒヨスではない。
(えいっ)
真水の背中を力いっぱい押した。それはもう容赦なく、押し付けるくらいの勢いで。
「っ!? すまない、真水。大丈夫か!?」
近すぎる真水。赤紫の猫目がすぐ目の前にある。
(!?)
人の声が聞こえない、頭の中が煩い。視界が狭い。……そうじゃない、深呼吸だ。
「ん、ヒース、マミズ……どうした、の?」
「責任、取ってくださいね?」
シェリルとヒヨスの声にいつもの世界が戻る。立ち上がり、頬が赤いままの真水に手を差し伸べた。
「ヒヨコが取ればいいだろぉ。……ボクの不注意で悪かったねぇ」
「えーっ!?」
「……ゴメン。すぐ……出るね。ごゆっくり」
シェリルが湯からあがり、ヒヨスも追いかけていった。
「このお詫びは後でさせてもらうよ、真水」
体勢を戻すために触れる手が熱いような、冷たいような。相手が熱いのか、それとも自分か。
「……またみんなで、こうして来れるといいね」
離れた後、囁き声で伝える。こうして集まってじゃれ合うこと自体は嫌いじゃないのだ。それを素直に言うのはとても恥ずかしいだけで。
……ヒース、さん
最後にいつもと違う呼び方を口に乗せる。言った事実で赤くなる顔と声を隠すためにも、口までお湯に浸かったけれど。きっと、ぶくぶくと泡の音しか届いていないはずだ。
平静は装えたはずだけれど。ヒースも小さく呟きながら湯から上がる。
「……らしくないな」
こんなに動揺するなんて。
「さっきの、は」
「……事故だからなあ、うん」
仕方ない事だ、気にしてはいないぞとオウカに笑顔を向けるイレーヌ。
慌ただしいことだなと。湯から先に上がっていく4人を眺めていた。
「むぅ、やっぱりおっきいなぁ……」
ステラの声が止まっていた時間を動かす。
「なんだじろじろ見おって、おかしいわけでもなかろ?」
俺も混ぜろとばかりに真矢が2人へと手を伸ばす。
「じろ……す、凄く、魅力的で……わぅっ」
抱き締めあった状態の水月とステラを、更に抱きこむくらい真矢には簡単なことで。
「くははは、ほれほれういやつどもめー」
慌てながらも腕の中と頭にあたる感触に全神経を集中している水月は、色々と抑えるのがで精いっぱいだ。
「ねえ、水月くんの趣味って一体……」
自分の意図以上に体を押し付けることになりながら、恥ずかしさよりも恋人の嗜好が気になるステラ。
「くふ、いい趣味してるよなぁ?」
真矢が楽しげに笑い、その声で自分が話題に上がっている事を理解する水月。
「ぇえと……僕は二人に、似合いそうなのをー」
真矢さんは言わずもがなですが、ステラさんも違う良さで一杯なんです。そう言おうと口を開くのだが、真矢の腕の力が強くなり、話すのも簡単ではいかなくなっている。
「ほれ、触りたければ好きに揉むといいぞ」
好きなのだろう? 言いながら真矢も水月に押し付けてくる。
「揉むってここで……ぁっ?!」
面積の少ない水着姿で押し付けたらどうなるか。外れるのも道理。気付いてすぐに隠そうと手を伸ばした水月は、その手をむにゅりと……埋まった!?
「おう、積極的じゃの?」
「そ、そんなつもりじゃ」
「真矢さんばっかりずるいよ、水月くん!」
「そうだぞ、ステラも平等に構わねば駄目だな」
「えっ……えっ!?」
●
賑やかさに溢れているけれど、静かに過ごしたい者も居る。それぞれのパーソナルスペースを侵さない距離を保ちながら、Gacrux(ka2726)も湯治を満喫していた。
肩までしっかりと浸かり、淡い色の花を仰ぎ見る。……時折力を抜くように、溜息もこぼれた。
(今年のうちにしっかり堪能しておきましょう……)
体を芯まで温めながら、ただ、花の美しさを眺めた。
深く息をはくのがやめられない。ユリアンは何度目かの息を吐いて、それでも顔は、花を見るために上げる。
「……花が咲くまで何年かかったんだろう」
「もーちぃっと肩の力を抜けないのかね」
ざばぁと湯の音。厳靖だ。
「身体が疲れてちゃ気持ちも上向かねえぜ……んま、話は聞いてやる」
とりあえず一杯飲め、差し出される器におずおずとユリアンの手が伸びた。
とある縁の少女の話。
「命は助けたけど。心の拠り所を、荒らしてしまったんだ」
森の墓、なんだけどね。
「何時か償いをって思っても、少なくとも今は距離を置いた方がいいのもわかってるんだけど……」
気が逸る。大事な事だと思うからこそ。
「ごめん」
折角の温泉なのに。聞いてくれるから。甘えている自覚はあって。このままでいることも良くないと分かっていて……
ぶくぶく……
(体まで沈んでどうするよ)
顔の下半分まで湯につけたユリアンに心の中でツッコむ。酒を一口、くぴり。この方が好都合か?
「そうだなぁ、息止めて、頭の先まで湯に潜ってみろ。限界まで」
「うん……」
素直な青年の頭を、厳靖はガシィと押さえつけた。悪戯だというように、笑顔で。
ごぼっ? ざばざばがぼっ!
手を離すのは限界の一歩手前。そこの見極めは外さない。
「げほっ! 厳靖さん!?」
混乱と焦りと、恨みの混じったユリアンの視線。
「はっはっは! ほれ、お前さんはまだ生きてる」
前に進まねぇとな。必要なことも、やりすぎは不要だぜ。聞こえるかどうかの声で続ける。
「大抵のこたぁ何とかならぁ!」
頑張れよ、若人!
湯上りに羊乳でも奢ってやろう、いくぞ?
「……俺、冷えたジュースの方が」
「お、言うようになったじゃないか」
背をバシバシと叩かれる。痛いと返しながら、感謝の気持ちを込めた。
(マッサージでも返そうかな)
●
足湯で待ち合わせるつもりだからと、男湯の出入り口の方を見もせずに歩き出すエア。
「丁度よかった」
抱え持っていた本を開こうとしたところで、同じく浴衣姿のシーラの声に呼び止められた。
「……長湯、しすぎた……」
ベンチに転がりくたりと横になる。会いたい人にはなかなか会えない。助けたい人も助けられない。そんな日々を思い出してしまって。シェリルは自分の力を向ける先を思う。
(それでも……諦めるわけには、いかない……)
だから、今は少しだけ……おやす、み……
「嗚呼、素晴らしいロケーションですのに、どうして私は1人なので御座いましょう!」
足湯でエフィー(ka6260)の声が響いている。彼女の周辺だけ、人の波が途切れているからだ。
温泉で背中を流したり、足湯でマッサージしたり食事を供したり。ここはエフィーにとって奉仕精神をくすぶられる場所。
「嗚呼、私のご主人様……一体何処にいらっしゃるので御座いますか……」
物憂げな溜息。周囲の視線に同情が混じった。
定番の温泉芋と、よく冷えた羊乳を湯上りに。
「に、してもですよ」
Gacruxが気になるのは魔導冷蔵庫だった。売り場のものは流石に触れなかったけれど、キッチンスペースにもそれなりの大きさの物が置いてある。いわゆる家庭用サイズである。
バタン、パタパタ
開閉を繰り返せば、扉が開くたびに冷気が出てくると言う寸法。まだ熱い芋を食べながらの行為は冒涜的に気持ちがいいもので。
「市場だと幾らぐらいでしょうね?」
流通度合いも疑問が出るところである。
食材が腐らないという話に感心しながらも、パタパタ……
ごっきゅごっきゅごっきゅ
「ぷはー!」
キンキンに冷えたジュールは喉ごしも格別。
「にしても、魔導冷蔵庫なんてハイテクですね!」
「冷蔵庫の扉は開けると涼しいですよ」
「本当です!」
Gacruxに教わった通りに冷蔵庫をバタバタ開閉するレインは田舎者なのを曝け出してしまっていたが、当人たちが楽しそなので良しとしようか。
腹が満たされた後は瞼が重く。
(敵もいない事ですし……)
ベンチを確保したGacruxの意識は睡魔に誘われていった。
金目(ka6190)は湯上りにぼんやりと花を眺め歩いていた。
「……あれは」
花目当ての客も混ざり賑わう中、暖かな色の人を見つける。それはまだ短いハンター生活の中でも色鮮やかな記憶を占める人。
「良いお湯だったわー♪」
そうよねえ気持ちいいわよねえ。温かいと眠くもなるわよね。寝ているGacruxはそっとしておく。
どうしようかしらね……あら?
視線を感じ振り向けば金目。
「ドロテアさんも、足休めですか」
足湯に行こうと思ってと続ける金目、手ではジョッキを傾ける仕草。
「……仕切り直しの分で。驕りますよ」
ハンターとして初仕事のあの日に叶わなかったから。
「あら、楽しそうね?」
自分の用意した服とは違う、見慣れない格好。シンプルなラインの服だからこそ、エアの佇まいを綺麗に魅せる。
足湯で二人、不躾にならない程度に眺めた後、シーラは違和感に気付いた。
(……慣れてないとはいえ)
エアの胸元のあわせが緩いのだ。人並みの体型であれば体の線にあっているはずだが、彼女の場合は事情が違った。
果実のジュースを傾けながら花も楽しもうと、顔をあげたエアはシーラの視線に気付く。
「あらシーラ、どうかした?」
首を傾げれば、浴衣も合わせて衣擦れる。シーラの視線が一瞬気まずげに逸れ、けれど唇が紡ぐのはからかいの言葉。
「無いんだから見えてしまうぞ」
「……」
音もなく手近な桶を掴み投げつけるエア。珍しく微笑みを浮かべているが、それは怒りから来るものだ。
「ほんと、良い度胸ね? ……それなら向こうの混浴にでも入ってくれば良いのだわ」
自分でもわかってはいるのだ、着付けの際に用意した手拭いが無駄になって、悔しくて巻いたせいなのだ。なにせこれはエアのコンプレックスの象徴。
(怒らせてしまったか……?)
いつものやりとりのつもりだったシーラは慌てる。
「悪かったよ、からかって」
機嫌をなおしてくれとすぐに頭を下げる。許してくれるまでは謝り続けるとばかりに、謝罪の言葉が繰り返される。
「本当は綺麗だ、と言いたかったんだが……」
つい、いつもの『幼馴染』の距離を意識してしまった。タイミングが悪かったのだろうとひたすら頭を下げる。
(……わざと困らせるのも、たまには面白いわね?)
本当はもう許しているけれど、もう少しだけ。シーラは内心の笑みを隠して怒ったふりを続けるのだった。
一人妄想劇は終わっていなかった。
「そうです! これだけ沢山の人が居らっしゃるのであればご主人様も見つかるやも知れない!」
すっくと立ちあがるエフィー。
「嗚呼、馬鹿な私! それでしたらば、女湯でも混浴でも、勿論男湯でもご一緒させて頂きましたのに……!」
男性陣がそわそわし始めた。エフィーは清楚系だがないすうばでーなメイドさんだ。
「嗚呼、馬鹿な私! 誰か、叱って叩いて踏んで下さいませ……!!」
男性陣引いた!
「嗚呼、ご主人様! どうぞ馬鹿な私を叱って下さいませ……!」
周囲が更に離れた!
彼女に決まったご主人様は居ない。見つかるのはまだ先のようである。
●
「上手く誘えたみたいだけど……どう思う、厳靖さん」
「どちらかって言うとあれ、体のいい飲み相手じゃ」
気付いた金目が手をあげ声をかけてくるまでは、観戦を決め込むユリアンと厳靖であった。
他愛もない話で盛り上がる。酒飲みの女性、しかも蠱惑的で、笑い囁くような声も耳に気持ち良く響く。店なら迷わず肩を抱く。だが先輩でもあるドロテアだ、金目は手は示しても冒険はしない、空気を読める男であった。
「目立つような傷が残らず、良かったです」
うまい事言ってくれるわねと、笑うドロテアの様子に小さく安堵の息を吐く。
「……どうなるのかしらね。あの病院」
声に出した後、一瞬動きを止めるドロテア。
(今日も綺麗だ)
数日も経てば回復するのが能力者だ。それは便利なことだけれど、身体も道具も心もメンテナンスが大切だ。
ハンター家業一月半の僕ですら、考える事が多いのに……
(僕より強いこのヒトは、どれ程のものを背負っているのだろう)
止まったその表情に微かに影が見えた気がして。
「ううん、辛気臭い話はやめ!」
笑顔が戻る。
(あっちの二人も真面目な話、終わっているみたいだし)
見とれるならともかく、面白がられるのは趣味じゃないのよ、おわかり?
「あたし美味しい物が食べたいわ! お付き合いして頂戴な」
ビールを人数分と、スタッフに声をかけるドロテア。
「温泉芋にビールは最高よっ」
浴衣姿の片手に持つのは冷えた羊乳。温泉芋もお供に梅和えとサガナキを添えて。
「……いいお湯、やった……」
ベンチの空きを探すうちに、見知った顔を見つけだす。
「小夜じゃないか」
ひとりか? 一緒に面白いものでも見ようじゃないか……言いかけた厳靖の言葉はユリアンに防がれる。
「それはちょっと教育に」
「……?」
首を傾げた小夜には2人の笑顔が返った。
机にネットを張った簡易卓球セットを挟んで、お手製ラケットを構える菊理とアルラウネ。
「2人共がんばって! 勝ったらざくろがご褒美だよ」
ざくろは審判役で、ネットの横でにこにこと二人の攻防を見守る姿勢。
その一言で、恋人達が俄然張り切るのは言うまでもない。ラリーを重ねるごとに、その空気は別の何かへと変わっていく。
「これはどうかしら?」
「なんのこれしきっ」
「あらやるわね~」
「こうだ!」
白熱していくにつれ、二人の動きも大きなものになる。それすなわち着崩れフラグ。
「……2人とも、浴衣、浴衣っ!」
菊理の清楚な白を見てしまったざくろが止めようとする頃には、ラリーは第三者の手には負えない状況になっていた。
チラチラ
どんどん、レースの面積が大きくなっていく。リアルブルーでの厳格な生活が現れているお嬢様の定番、白レース。
「ならこうね~♪」
ぶぅんっ! アルラウネの声に振り向けば、肌蹴るを通り越して、浴衣の合わせが重なってもいない。いつもの水着は不運な事故で行方不明だとかで、彼女は浴衣しか身につけていないのだ。
「はわわわ☆?!」
アルラウネがふりかぶった拍子にこぼれた一瞬。それには菊理も気づき、自らのあわせも確かめ……
「き、きゃぁっ!?」
玉が飛んでくるのも厭わずへたり込む。その点がちょうど、アルラウネの勝利を決めた。
「……み、見たか?」
「ごめん……その、お詫びに」
菊理に近づき唇を寄せるざくろ。体を寄せれば胸元も自然に人の目から隠される。
「ざくろん、勝ったのは私なんだけど~?」
私には? 催促する唇には、ご褒美の熱い口付けを。
「桜の仲間……ということは、桜湯も作れるかもしれない」
請われるままに話し、次第に飲み物への話になっていく。花を眺めながらジュリオが思いついたのは風情を、季節を愛しむ一品だ。
「花を塩漬けにして湯に浮かべるんだ。花の香りを楽しむものでな」
腹は膨れないが、この花を使えれば客寄せにもなるかもしれない。その話はスタッフに届けられ、作り方の確認もうける。
(来年は桜湯が楽しめるのかもしれないな)
今年の花の時期には間に合わないだろう。けれど、次の楽しみが出来た。
後日美沙樹にある知らせが届いた。羊肉の和え物を夏の定番にしたいから、レシピを教えてほしいとの申し出だった。
並ぶ水着を前に、ステラ=ライムライト(ka5122)はちらりと葛音 水月(ka1895)の様子を伺う。
(どんなタイプなら喜んでくれるかな)
可愛いのかな、それとも大人っぽいのかな?
「水着? 湯に浸かるのにどうしてそんなものが要るんだ」
意味が分からないと首を捻る黒沙樹 真矢(ka5714)と、それを宥める水月。
「混浴は隠すのがマナーだからで……」
「じゃあ水月が選べ。ステラの分もだ」
それなら着てやると真矢。
「私のも? ……み、水月くんが言うなら……」
「決まりだな!」
「せっかく作るのですから、この場所らしい要素も必要ですわね?」
音羽 美沙樹(ka4757)が見出した答えは、蒸し肉。元々蒸し料理が供されているが、そこに一味くわえて別のものを生み出すのが美沙樹の腕の見せ所。
清酒に漬けて下拵えした羊肉は蒸してから、柔らかいうちに裂く。あら熱をとる間に作るのは、そこに更に和える予定の調味料だ。
手間のかかる側を先に。種を抜いておろした柔らかい梅干と細かく砕いた干梅で二種類の口当たりを揃えた梅肉、塩気と酸味に少しだけ蜜をたらせば口当たりもまろやかに。
おろし山葵を大豆調味料で溶いた側は辛味が効きすぎないよう、別にとっておいた脂身を少し足した。。
それぞれを冷ました肉に和えれば完成だ。
「梅干が少し余ってしまいましたわ」
それも蒸し野菜と和える。これもさっぱりとした仕上がりだ。湯上りの火照った体に効く、爽やかな涼がとれる事だろう。
「……私は温泉にでも」
自分の分を取り分け、あとはご自由にとスタッフに声をかけた。
羊乳のチーズで作ったサガナキは、チーズの香ばしさ、胡椒と柑橘果汁の香りが重なり酒飲みの心を擽る。
「私の故郷の料理だ」
キッチンスペースでそう答えるのはジュリオ(ka6254)である、匂いに釣られたカミラの襲撃を受けたのだ。パンと共に食べるその品は、気付けば蒸した羊肉も添えられている。気に入ったという事だろう。
「ヴルストでも合いそうだな!」
他にも見知らぬレシピがあるなら、そんな期待の視線がジュリオに向けられる。
「そうだな……時間が許すならば」
濃い目の紅茶と皿を手に、足湯へと向かうのだった。
(今日はたとえ故郷の集落が滅亡の危機に瀕してても休むわよー)
心の中で宣言するアルスレーテ・フュラー(ka6148)。
「働きづめじゃあ倒れちゃうからねー」
一日かけて休暇を満喫する心の準備は万全だった。
(ああ素晴らしき休日!!!)
「温泉なんていいじゃない♪」
耳に残る響の声。ちょっときつい仕事だったあとだからこそ、休息も大事というもの。
(なにより美容にも良さそうっていうのが、いいわね)
この身体を維持するには鍛錬だけじゃダメなのよ。ドロテア・フレーベ(ka4126)の足音はリズムよく、女湯へと向かっていく。
「うふふ、お肌に良さそうねー♪」
あら、お酒もあるの? 湯船で飲みたいし、一式もらえるかしら?
●
「ん……ここも久しぶりだ、な」
オウカ・レンヴォルト(ka0301)がすぐ隣に声をかければ、イレーヌ(ka1372)が小さく笑う。
「そうだな。今日も背中を洗ってやろうか?」
「っ! ……いや、遠慮する」
恥ずかしいさと、懐かしいような記憶に、からかう声に耳を擽られる。オウカは顔が熱くなったのを感じ取る。
「別に私は気にしないぞ?」
「……そうじゃなくて、だな」
前と同じでは済まないだろうから。肩を寄せ合う距離でしか聞こえないよう声を潜める。
「わかっているとも」
素直な答えに免じて、今はやめておいてやろう。イレーヌの笑みが深くなった。
時音 ざくろ(ka1250)はタオルを巻いて混浴へと向かっていた。
「ざくろ~ん!」
同じくタオルを巻いた姿のアルラウネ(ka4841)が手を振りながら近づいてくる。その隣を歩く白山 菊理(ka4305)は周囲の様子が気になっているようで、ぎゅっと、巻き付けたタオルの裾部分を握り込む。
「菊理、大丈夫?」
ざくろの心配そうな声に顔を向ければ、上目遣いのガーネットに見つめられた。
「無理してるなら……」
「だっ大丈夫だ、水着も着ているし」
「ざくろは一緒だと嬉しいけど」
「混浴大好きだもんね~」
からかい混じりの声はアルラウネ。その口元は勿論笑みの形。大人の特権とばかりに花見酒も手配済みで、楽しむ気満々……訂正、既に酔っ払いになっていた。
●
(何を凹んでんだか)
若いなぁと思いながらユリアン(ka1664)の肩をがっしと抱く劉 厳靖(ka4574)。好きなだけ肩を落として頭を捻って熱を出したっていいと思う。
(それをどう持ち上げるかが肝心だろうよ)
向かう先は、男湯の入り口である。
「そうね……前回のお花見は一緒に行けなかったものね……」
エルティア・ホープナー(ka0727)の言葉に少しばかり耳が痛い。けれども了承を取り付けたこと、実際に花見に来ることが出来た事。その事実に感謝しようと思いながらシルヴェイラ(ka0726)は男湯での入浴を楽しむ。
(浴衣を買ったと言っていたが……)
どんな柄だろうか。楽しみにしながら、湯の中で筋を伸ばす。
●
「……温泉……」
今年の桜は見ることが出来ているから。今日の目的は温泉の方だ。
のんびり、楽しめればいい。浅黄 小夜(ka3062)が友も誘わず、一人で来たのはそれが理由だった。
人が多かったり、考えることが多かったり。そんな仕事続きだったのだから、自分に休みをプレゼントするつもりで。
(……お休みも、大事)
ずっと走り続けていては、身体だけじゃなく心も疲れてしまう。勿論、湯中りにはしっかり気を付けるけれど。
ぷかり
共に浸かろうと、猫のぬいぐるみを桶で浮かべて。自分は湯船の縁に両腕重ねて頬を乗せ、徐々に身体の力を抜いていく。
ぷかり、ぷかり
ひとつずつ、考えを眠らせて。少しの間、目も閉じて……
ちゃぷ……
(混浴に行くような子達もいたけど……絶対無理)
女湯に浸かりながら、自分より年若いと思われた子達を思い出すアルスレーテ。ものすごく、生き生きしていた。
「みんな綺麗でさー……」
肌のきめ細かさとか、ハリとか。羨ましいったら。自分もあれくらい綺麗なら自信が持てるのだろうか。
(……ないわね)
もとから自信なんてない。恋人に愛想を尽かされたら婚期なんて二度と来ない、そう思っているのである。
「ほんと、ダイエットって難しいわー……」
でも今日は休日なのだ。わざわざ沈むようなことを考えても仕方ない。温泉から出たら、ベンチを確保して惰眠を貪ろう。来る前に見かけたけれど気持ちがよさそうだった。そうだ、楽しむことだけを考えよう。
(温泉、美容にもいいって話もあったしー……)
ああ、でも湯船で寝ないように気を付け…なくちゃ……
「温泉なんて初めてですけど……」
控えめにも聞こえるけれど、レイン・オーキス(ka6264)は恥ずかしがっているわけではない。今は洗い場で身体を流しているところだが、胸をはり、堂々とした様子だ。むしろその姿勢は、彼女のふくよかな胸元を際立たせるものであったりする。
(自慢まではしませんけど、これくらいならいいですよね)
チラチラと周囲を気にした様子のアルスレーテの視線が自分に向かってくるのが分かる。少しだけ気分がよかった。
ちゃぷ……
「お花、とても綺麗ですね……」
すっきりと洗った肌に湯をかけながら花を眺める。湯船に浮かんだ花弁が、レインの肌に貼りついた。
「やはり満開が一番です」
散った後の新緑も生命力が感じられて好きだけれど。
●
「きくりんはお風呂のマナーは知ってるのよね?」
「無論、湯船につかる前に体を洗うのは常識だ」
「そのあとゆっくり浸かるの気持ちいいよね!」
生真面目に答える菊理の後に続くざくろは、アルラウネの淡く染まった肌に見とれて反応が遅れた。
「それじゃ話は早いわね~、ざくろん座って?」
背中流してあげるからと、アルラウネはざくろの正面に座る。菊理は背中側だ。
「2人で背中流してくれるの? ありが……って!?」
ボディソープを自分の身体に垂らしたアルラウネが抱きついて、ざくろは一瞬言葉に詰まる。
「そんないきなり、なっ」
菊理も背中側から抱きついてくる。
あたたかくて柔らかいスポンジが……4つ?
「ん、ふっ。き、気持ち良いか?」
菊理のかすれ声も聞こえてくる。ざくろの頬の赤みが強くなった。
「気持ち良いに決まってるわよね~?」
アルラウネのタオルは肩からかけられている。つまり(自主規制)。
「び、吃驚しただけだもん……はわぁ」
ざくろのタオルも酔っ払いの手によって外されていたのだが、大事なところは泡がいい仕事した模様。
「やっぱり混浴はいいものですね!」
ヒヨス・アマミヤ(ka1403)の声が高らかに響いて、周囲の色々とアレな空気の方々がびくりと震えた。そんなことも分かったうえでやっているのだけれど。
(むしろもっとそういう空気になってもいいと思いますよぅ、特にそこの二人とか!)
ちらりと見るのはヒース・R・ウォーカー(ka0145)と南條 真水(ka2377)である。色々と画策しているというのに進展がないとはどういうことなのか。純情にもほどがある。
(今日はもっとストレートに! いっちゃいますからねっ)
覚悟ぉー! その気合の籠った視線に、真水の肩がびくりと震えたような気がした。
(なんだか嫌な予感がする……)
前と同じアクシデントに見舞われないように、細心の注意を払って水着は面積も広くしっかりした厚みのあるものを選んできたつもりだ。タオルの端もきっちりあわせ、空いた手でぎゅっと握る。
(こう、みんなに嵌められるような……南條さんらしくないとわかっちゃいるけど)
どうしても、不安がぬぐえない真水である。
(なにがいいものだよ。1回や2回で慣れるわけないだろう!)
当たり散らしたいくらいなのだが、それは自分を更に追い込むだけとも本能で気付いている。
「何はともあれ花見と湯を愉しもうかぁ」
どこか達観した様子のヒースの呑気な声が恨めしかった。
一通り酒の支度が揃った桶を真水に示すヒース。
「ご所望かい? 仕方がないからお酌してあげるよ」
軽い口調での返答に、そうでなくちゃと薄く笑う。
「ありがとう、真水。花見と温泉、それにお酌までしてもらえるとちょっと贅沢すぎるかなぁ」
「これぞ風流ってやつなのかな」
南條さんはまだ未成年だからお酒は遠慮、来年のお楽しみということにしておくよ。いつも通りのやり取りの中、真水は花を見ている。ヒースも視線を高くに向けた。
(……うん、大丈夫)
特殊加工の包帯があるから大丈夫。シェリル・マイヤーズ(ka0509)は小さく頷いて、改めて湯船に身体を沈める。
(ヒヨも、手伝ってくれると……言ってた)
自分一人では巻けない場所もほどけたらなおしてくれると、彼女がそう言ってくれた。
(湯治で……傷の治りが早くなるかも、しれないし……?)
少しの建前。心の底で、あまり自覚はないけれど。皆と一緒に遊べる機会というのは、出来るだけ逃したくなかった。
白スク水を着たステラは今、水月の膝上に座っている。
(どうしよう、恥ずかしいけど、でも、水月くんが選んでくれた水着だしっ)
既にお湯にも入ってしまった。濡れて透けないだろうかが心配でたまらなくなっているのだが。
「ステラさん、温泉久しぶりって言ってましたよね。こっちではなかなか無いですしねー」
いつもと同じ調子で話す水月に、心配のしすぎだろうかと内心で慌てる。ならば自分もいつも通りにと、水月の首に腕を回して抱き締めた。
「水月くん? あの、これ……」
似合ってるかな? 耳元に唇を寄せる。
「とっても良いと、思います……っ」
「ひゃん!?」
抑えたような声音の水月に強く抱きしめられた。
勿論水月だって水着は着ている。だけれど、薄い布なのは変わらないわけで。いつも通りにしようと努力しても、柔らかいとかいい匂いとか……意識してしまうのだ。
(文句言われたら水月のせいだな)
気にしないことにして、真矢が見まわした先には体を寄せあう二人の姿。
(ちょっとステラの邪魔しちまうが、三人で来たんだからな)
「おーう二人とも、ちと遅れちまったな」
声をかければ、二人同時にはっとした顔で真矢を見る。水月はやや目を見開いて、そんな水月を見てステラの眉は下がった。
水月が選んだ真矢の水着は黒のスリングショットである。隠れていない。
……水着、とは。
「ヒヨ、オウカさんと彼女さんに馴れ初めを聞きたいと思ってたんです!」
きっと素敵なお話に間違いないですよね。隣のシェリルににこりと笑えば、こくり、いつもの頷き。
「ヒースさん、真水さん、どう思いますか?」
察したイレーヌはオウカを見て、友人の幸せを願うオウカも頷いた。
杯は一度桶に戻し、先に口を開くのはイレーヌ。
「合コン依頼でたまたまペアになったのが切っ掛けだったな」
再び隣に視線を向ける。頷いて引き継ぐのはオウカ。
「告白は、こちらから、だ」
「最初は、ただ賑やかしで参加したつもりだったが」
真面目に答える様子のオウカに、更に体を寄せる。折角のシチュエーションを楽しまないなんて損だ。逃げないだろうことも分かった上で、オウカの腕に両腕を絡めた。勿論ぎゅうと、密着させて。
「こうなるとは、分からないものだよ」
「……ま、まあ、なんだ」
湯当たりとは違う赤みがオウカの顔に広がる。それはイレーヌのせいだとは周囲にも明白なのであるけれど。オウカはそれでも、いや、だからこそ自身を律する。
「受け入れてみたら、案外すんなりしっくりくるもんだ、ぞ」
明らかに動揺してはいたが、言葉の説得力は非常に高いものだった。
(一度は諦めていた気持ちだから、か)
胸に宿る熱いものを感じながらヒースの様子を伺うオウカ。幸せのお裾分けのような偽善的な気持ちではない。ただ幸せを知ってほしいように思うのだ。
(……興味深いとも、思う)
関係が変わることで変化があるのか、それともないのか。策謀に肩入れするのは、これが本音かもしれない。
「……あ」
「シェリル……?」
バシャン!
小さな声に違和感を感じて振り返る。移動していたシェリルが『予定とは違う場所で』ふらついたのだ。その手にはタオル。オウカの腰に巻かれていたものである。
「大丈夫ですかっ!」
バシャバシャと大慌てで駆け寄るヒヨスと、うっかり見ないように慌てて視線を逸らす真水。リラックスしていたせいで反応が鈍るヒース。この機を逃すヒヨスではない。
(えいっ)
真水の背中を力いっぱい押した。それはもう容赦なく、押し付けるくらいの勢いで。
「っ!? すまない、真水。大丈夫か!?」
近すぎる真水。赤紫の猫目がすぐ目の前にある。
(!?)
人の声が聞こえない、頭の中が煩い。視界が狭い。……そうじゃない、深呼吸だ。
「ん、ヒース、マミズ……どうした、の?」
「責任、取ってくださいね?」
シェリルとヒヨスの声にいつもの世界が戻る。立ち上がり、頬が赤いままの真水に手を差し伸べた。
「ヒヨコが取ればいいだろぉ。……ボクの不注意で悪かったねぇ」
「えーっ!?」
「……ゴメン。すぐ……出るね。ごゆっくり」
シェリルが湯からあがり、ヒヨスも追いかけていった。
「このお詫びは後でさせてもらうよ、真水」
体勢を戻すために触れる手が熱いような、冷たいような。相手が熱いのか、それとも自分か。
「……またみんなで、こうして来れるといいね」
離れた後、囁き声で伝える。こうして集まってじゃれ合うこと自体は嫌いじゃないのだ。それを素直に言うのはとても恥ずかしいだけで。
……ヒース、さん
最後にいつもと違う呼び方を口に乗せる。言った事実で赤くなる顔と声を隠すためにも、口までお湯に浸かったけれど。きっと、ぶくぶくと泡の音しか届いていないはずだ。
平静は装えたはずだけれど。ヒースも小さく呟きながら湯から上がる。
「……らしくないな」
こんなに動揺するなんて。
「さっきの、は」
「……事故だからなあ、うん」
仕方ない事だ、気にしてはいないぞとオウカに笑顔を向けるイレーヌ。
慌ただしいことだなと。湯から先に上がっていく4人を眺めていた。
「むぅ、やっぱりおっきいなぁ……」
ステラの声が止まっていた時間を動かす。
「なんだじろじろ見おって、おかしいわけでもなかろ?」
俺も混ぜろとばかりに真矢が2人へと手を伸ばす。
「じろ……す、凄く、魅力的で……わぅっ」
抱き締めあった状態の水月とステラを、更に抱きこむくらい真矢には簡単なことで。
「くははは、ほれほれういやつどもめー」
慌てながらも腕の中と頭にあたる感触に全神経を集中している水月は、色々と抑えるのがで精いっぱいだ。
「ねえ、水月くんの趣味って一体……」
自分の意図以上に体を押し付けることになりながら、恥ずかしさよりも恋人の嗜好が気になるステラ。
「くふ、いい趣味してるよなぁ?」
真矢が楽しげに笑い、その声で自分が話題に上がっている事を理解する水月。
「ぇえと……僕は二人に、似合いそうなのをー」
真矢さんは言わずもがなですが、ステラさんも違う良さで一杯なんです。そう言おうと口を開くのだが、真矢の腕の力が強くなり、話すのも簡単ではいかなくなっている。
「ほれ、触りたければ好きに揉むといいぞ」
好きなのだろう? 言いながら真矢も水月に押し付けてくる。
「揉むってここで……ぁっ?!」
面積の少ない水着姿で押し付けたらどうなるか。外れるのも道理。気付いてすぐに隠そうと手を伸ばした水月は、その手をむにゅりと……埋まった!?
「おう、積極的じゃの?」
「そ、そんなつもりじゃ」
「真矢さんばっかりずるいよ、水月くん!」
「そうだぞ、ステラも平等に構わねば駄目だな」
「えっ……えっ!?」
●
賑やかさに溢れているけれど、静かに過ごしたい者も居る。それぞれのパーソナルスペースを侵さない距離を保ちながら、Gacrux(ka2726)も湯治を満喫していた。
肩までしっかりと浸かり、淡い色の花を仰ぎ見る。……時折力を抜くように、溜息もこぼれた。
(今年のうちにしっかり堪能しておきましょう……)
体を芯まで温めながら、ただ、花の美しさを眺めた。
深く息をはくのがやめられない。ユリアンは何度目かの息を吐いて、それでも顔は、花を見るために上げる。
「……花が咲くまで何年かかったんだろう」
「もーちぃっと肩の力を抜けないのかね」
ざばぁと湯の音。厳靖だ。
「身体が疲れてちゃ気持ちも上向かねえぜ……んま、話は聞いてやる」
とりあえず一杯飲め、差し出される器におずおずとユリアンの手が伸びた。
とある縁の少女の話。
「命は助けたけど。心の拠り所を、荒らしてしまったんだ」
森の墓、なんだけどね。
「何時か償いをって思っても、少なくとも今は距離を置いた方がいいのもわかってるんだけど……」
気が逸る。大事な事だと思うからこそ。
「ごめん」
折角の温泉なのに。聞いてくれるから。甘えている自覚はあって。このままでいることも良くないと分かっていて……
ぶくぶく……
(体まで沈んでどうするよ)
顔の下半分まで湯につけたユリアンに心の中でツッコむ。酒を一口、くぴり。この方が好都合か?
「そうだなぁ、息止めて、頭の先まで湯に潜ってみろ。限界まで」
「うん……」
素直な青年の頭を、厳靖はガシィと押さえつけた。悪戯だというように、笑顔で。
ごぼっ? ざばざばがぼっ!
手を離すのは限界の一歩手前。そこの見極めは外さない。
「げほっ! 厳靖さん!?」
混乱と焦りと、恨みの混じったユリアンの視線。
「はっはっは! ほれ、お前さんはまだ生きてる」
前に進まねぇとな。必要なことも、やりすぎは不要だぜ。聞こえるかどうかの声で続ける。
「大抵のこたぁ何とかならぁ!」
頑張れよ、若人!
湯上りに羊乳でも奢ってやろう、いくぞ?
「……俺、冷えたジュースの方が」
「お、言うようになったじゃないか」
背をバシバシと叩かれる。痛いと返しながら、感謝の気持ちを込めた。
(マッサージでも返そうかな)
●
足湯で待ち合わせるつもりだからと、男湯の出入り口の方を見もせずに歩き出すエア。
「丁度よかった」
抱え持っていた本を開こうとしたところで、同じく浴衣姿のシーラの声に呼び止められた。
「……長湯、しすぎた……」
ベンチに転がりくたりと横になる。会いたい人にはなかなか会えない。助けたい人も助けられない。そんな日々を思い出してしまって。シェリルは自分の力を向ける先を思う。
(それでも……諦めるわけには、いかない……)
だから、今は少しだけ……おやす、み……
「嗚呼、素晴らしいロケーションですのに、どうして私は1人なので御座いましょう!」
足湯でエフィー(ka6260)の声が響いている。彼女の周辺だけ、人の波が途切れているからだ。
温泉で背中を流したり、足湯でマッサージしたり食事を供したり。ここはエフィーにとって奉仕精神をくすぶられる場所。
「嗚呼、私のご主人様……一体何処にいらっしゃるので御座いますか……」
物憂げな溜息。周囲の視線に同情が混じった。
定番の温泉芋と、よく冷えた羊乳を湯上りに。
「に、してもですよ」
Gacruxが気になるのは魔導冷蔵庫だった。売り場のものは流石に触れなかったけれど、キッチンスペースにもそれなりの大きさの物が置いてある。いわゆる家庭用サイズである。
バタン、パタパタ
開閉を繰り返せば、扉が開くたびに冷気が出てくると言う寸法。まだ熱い芋を食べながらの行為は冒涜的に気持ちがいいもので。
「市場だと幾らぐらいでしょうね?」
流通度合いも疑問が出るところである。
食材が腐らないという話に感心しながらも、パタパタ……
ごっきゅごっきゅごっきゅ
「ぷはー!」
キンキンに冷えたジュールは喉ごしも格別。
「にしても、魔導冷蔵庫なんてハイテクですね!」
「冷蔵庫の扉は開けると涼しいですよ」
「本当です!」
Gacruxに教わった通りに冷蔵庫をバタバタ開閉するレインは田舎者なのを曝け出してしまっていたが、当人たちが楽しそなので良しとしようか。
腹が満たされた後は瞼が重く。
(敵もいない事ですし……)
ベンチを確保したGacruxの意識は睡魔に誘われていった。
金目(ka6190)は湯上りにぼんやりと花を眺め歩いていた。
「……あれは」
花目当ての客も混ざり賑わう中、暖かな色の人を見つける。それはまだ短いハンター生活の中でも色鮮やかな記憶を占める人。
「良いお湯だったわー♪」
そうよねえ気持ちいいわよねえ。温かいと眠くもなるわよね。寝ているGacruxはそっとしておく。
どうしようかしらね……あら?
視線を感じ振り向けば金目。
「ドロテアさんも、足休めですか」
足湯に行こうと思ってと続ける金目、手ではジョッキを傾ける仕草。
「……仕切り直しの分で。驕りますよ」
ハンターとして初仕事のあの日に叶わなかったから。
「あら、楽しそうね?」
自分の用意した服とは違う、見慣れない格好。シンプルなラインの服だからこそ、エアの佇まいを綺麗に魅せる。
足湯で二人、不躾にならない程度に眺めた後、シーラは違和感に気付いた。
(……慣れてないとはいえ)
エアの胸元のあわせが緩いのだ。人並みの体型であれば体の線にあっているはずだが、彼女の場合は事情が違った。
果実のジュースを傾けながら花も楽しもうと、顔をあげたエアはシーラの視線に気付く。
「あらシーラ、どうかした?」
首を傾げれば、浴衣も合わせて衣擦れる。シーラの視線が一瞬気まずげに逸れ、けれど唇が紡ぐのはからかいの言葉。
「無いんだから見えてしまうぞ」
「……」
音もなく手近な桶を掴み投げつけるエア。珍しく微笑みを浮かべているが、それは怒りから来るものだ。
「ほんと、良い度胸ね? ……それなら向こうの混浴にでも入ってくれば良いのだわ」
自分でもわかってはいるのだ、着付けの際に用意した手拭いが無駄になって、悔しくて巻いたせいなのだ。なにせこれはエアのコンプレックスの象徴。
(怒らせてしまったか……?)
いつものやりとりのつもりだったシーラは慌てる。
「悪かったよ、からかって」
機嫌をなおしてくれとすぐに頭を下げる。許してくれるまでは謝り続けるとばかりに、謝罪の言葉が繰り返される。
「本当は綺麗だ、と言いたかったんだが……」
つい、いつもの『幼馴染』の距離を意識してしまった。タイミングが悪かったのだろうとひたすら頭を下げる。
(……わざと困らせるのも、たまには面白いわね?)
本当はもう許しているけれど、もう少しだけ。シーラは内心の笑みを隠して怒ったふりを続けるのだった。
一人妄想劇は終わっていなかった。
「そうです! これだけ沢山の人が居らっしゃるのであればご主人様も見つかるやも知れない!」
すっくと立ちあがるエフィー。
「嗚呼、馬鹿な私! それでしたらば、女湯でも混浴でも、勿論男湯でもご一緒させて頂きましたのに……!」
男性陣がそわそわし始めた。エフィーは清楚系だがないすうばでーなメイドさんだ。
「嗚呼、馬鹿な私! 誰か、叱って叩いて踏んで下さいませ……!!」
男性陣引いた!
「嗚呼、ご主人様! どうぞ馬鹿な私を叱って下さいませ……!」
周囲が更に離れた!
彼女に決まったご主人様は居ない。見つかるのはまだ先のようである。
●
「上手く誘えたみたいだけど……どう思う、厳靖さん」
「どちらかって言うとあれ、体のいい飲み相手じゃ」
気付いた金目が手をあげ声をかけてくるまでは、観戦を決め込むユリアンと厳靖であった。
他愛もない話で盛り上がる。酒飲みの女性、しかも蠱惑的で、笑い囁くような声も耳に気持ち良く響く。店なら迷わず肩を抱く。だが先輩でもあるドロテアだ、金目は手は示しても冒険はしない、空気を読める男であった。
「目立つような傷が残らず、良かったです」
うまい事言ってくれるわねと、笑うドロテアの様子に小さく安堵の息を吐く。
「……どうなるのかしらね。あの病院」
声に出した後、一瞬動きを止めるドロテア。
(今日も綺麗だ)
数日も経てば回復するのが能力者だ。それは便利なことだけれど、身体も道具も心もメンテナンスが大切だ。
ハンター家業一月半の僕ですら、考える事が多いのに……
(僕より強いこのヒトは、どれ程のものを背負っているのだろう)
止まったその表情に微かに影が見えた気がして。
「ううん、辛気臭い話はやめ!」
笑顔が戻る。
(あっちの二人も真面目な話、終わっているみたいだし)
見とれるならともかく、面白がられるのは趣味じゃないのよ、おわかり?
「あたし美味しい物が食べたいわ! お付き合いして頂戴な」
ビールを人数分と、スタッフに声をかけるドロテア。
「温泉芋にビールは最高よっ」
浴衣姿の片手に持つのは冷えた羊乳。温泉芋もお供に梅和えとサガナキを添えて。
「……いいお湯、やった……」
ベンチの空きを探すうちに、見知った顔を見つけだす。
「小夜じゃないか」
ひとりか? 一緒に面白いものでも見ようじゃないか……言いかけた厳靖の言葉はユリアンに防がれる。
「それはちょっと教育に」
「……?」
首を傾げた小夜には2人の笑顔が返った。
机にネットを張った簡易卓球セットを挟んで、お手製ラケットを構える菊理とアルラウネ。
「2人共がんばって! 勝ったらざくろがご褒美だよ」
ざくろは審判役で、ネットの横でにこにこと二人の攻防を見守る姿勢。
その一言で、恋人達が俄然張り切るのは言うまでもない。ラリーを重ねるごとに、その空気は別の何かへと変わっていく。
「これはどうかしら?」
「なんのこれしきっ」
「あらやるわね~」
「こうだ!」
白熱していくにつれ、二人の動きも大きなものになる。それすなわち着崩れフラグ。
「……2人とも、浴衣、浴衣っ!」
菊理の清楚な白を見てしまったざくろが止めようとする頃には、ラリーは第三者の手には負えない状況になっていた。
チラチラ
どんどん、レースの面積が大きくなっていく。リアルブルーでの厳格な生活が現れているお嬢様の定番、白レース。
「ならこうね~♪」
ぶぅんっ! アルラウネの声に振り向けば、肌蹴るを通り越して、浴衣の合わせが重なってもいない。いつもの水着は不運な事故で行方不明だとかで、彼女は浴衣しか身につけていないのだ。
「はわわわ☆?!」
アルラウネがふりかぶった拍子にこぼれた一瞬。それには菊理も気づき、自らのあわせも確かめ……
「き、きゃぁっ!?」
玉が飛んでくるのも厭わずへたり込む。その点がちょうど、アルラウネの勝利を決めた。
「……み、見たか?」
「ごめん……その、お詫びに」
菊理に近づき唇を寄せるざくろ。体を寄せれば胸元も自然に人の目から隠される。
「ざくろん、勝ったのは私なんだけど~?」
私には? 催促する唇には、ご褒美の熱い口付けを。
「桜の仲間……ということは、桜湯も作れるかもしれない」
請われるままに話し、次第に飲み物への話になっていく。花を眺めながらジュリオが思いついたのは風情を、季節を愛しむ一品だ。
「花を塩漬けにして湯に浮かべるんだ。花の香りを楽しむものでな」
腹は膨れないが、この花を使えれば客寄せにもなるかもしれない。その話はスタッフに届けられ、作り方の確認もうける。
(来年は桜湯が楽しめるのかもしれないな)
今年の花の時期には間に合わないだろう。けれど、次の楽しみが出来た。
後日美沙樹にある知らせが届いた。羊肉の和え物を夏の定番にしたいから、レシピを教えてほしいとの申し出だった。
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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面白かった! | 30人 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/04/27 10:24:51 |
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雑談所 ドロテア・フレーベ(ka4126) 人間(クリムゾンウェスト)|25才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2016/04/28 10:00:15 |