Rest in peace

マスター:坂上テンゼン

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/05/04 15:00
完成日
2016/05/11 20:34

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●Daily tragedy
「――ジョンの魂が光と共にあらんことを」
 院長は悲痛な顔でそう言い、目を閉じた。――誰もが悲痛な顔をしていた。
 ジョンはまだ6歳だった。この修道院にある孤児院の子供の一人だった。共に過ごした年月は短かかったが、修道女である私にとっては自分の子供も同然だった。
 その子供を奪われたのだ。

 小さな棺に土が被せられていくのを見ながら思い出す。
 二日前の夕方の事だった。
 泥だらけになったテレーズが泣きながら帰ってきたのは。
「化け物が」――それだけは何とか口にできた。
 テレーズは他の子供たちと一緒に近くの森で遊んでいたのだったが、慌てて私達を呼びにきた。急いでテレーズの示す場所に行ってみると、そこには衝撃的な光景が広がっていた。

 ジョンはそこにいた。うつぶせになって、自らの血でできた池の上に。

 そうして哀れなジョンの遺体は、今ではあの小さな棺の中に収められている。

 何の罪もないいたいけな子供が、何故殺されなければならなかったのか……。
 やり場のない想いを抱えた私を含む修道院の有志数名が現場を調べた所、不可思議な足跡をみつけた。あれは人間のものではなかった。
 サイズは人間とそう変わらないものであったが、ひどく細長い。
 無秩序に徘徊した形跡があるが明らかに特定の方向から伸びていた。

 その方向にあるものは打ち捨てられた古い聖堂だけだ。
 色々な理由で使われなくなり、現在は封鎖されている。中には入れないから、どんな物好きの隠棲者がいたとしてもそこには住んでいないはずだ。
 しかし足跡を追ってみれば、行き着く先はその古い聖堂だった。
 恐る恐る近づいて見てみた。封鎖されていたはずなのに、扉が開いていた……。
 中に入るのは危険と見て、私達はそこで引き返した。

 テレーズは彼女が見たという化け物について語ってくれた。
 幼い彼女の知識ではそれが何なのかはわからなかったこともあったようだが、それでも一生懸命に語ってくれたので、大体の想像はついた。

 それはスケルトンだ。歪虚である。

 半年ほど前から、歪虚によって巡礼者が襲撃されるという事件が相次いでいた。
 私のいる修道院も巡礼路の一点であり、他人事ではなかったという認識はあった。
 しかし襲われるのは巡礼者だけだと、どこかで思い込んでいたのかもしれない……。
 巡礼路はもはや昔通りのものではなくなった。巡礼者を襲っていた歪虚そのものでなくとも、巡礼路でそれだけの事件が起これば、負のマテリアルが蓄積し、雑魔が発生することも充分に考えられるのかもしれない。何を隠そう例の古い聖堂も巡礼路に連なっているのだ。
 今のグラズヘイム王国では……いやクリムゾンウエストという世界では、いつどこで歪虚が発生するかまったく予測がつかないのだ。



●Unforgiven
 私は――アハズヤ・ナルガイは覚醒者である。
 修道女となったのちにそれが発覚し、それからはハンターとして活動していた。
 それが光の導きだと信じて……いや、そう思いたかっただけかもしれない。
 少なくとも周囲は信じていた。家族も修道院の皆も誰もが喜んで戦いの道を勧めた。
 だが、戦場で歪虚と戦う事は修道院で祈りを捧げるのとは全く違い……早い話が過度のストレスだった。
 それを適切に処理できず、私は道を外した。
 窃盗、強盗、恐喝……同じ様な奴らと一緒に非行を働いた。全てが憎かった……私に責任を押し付けた周囲も……こんな道を歩ませた自分の能力も……この生き方を神聖視する信仰も……。
 だから信仰を汚す意味合いもこめて、わざと修道服を着て非行に走っていたぐらいだ。

 だが、そんな日々も長くは続かなかった。悪事を聞きつけたハンター達が派遣され、捕縛されてしまったのだ。
 その後はハンターとして復帰する道もあったが、私は真っ当に生きていた頃に所属していた修道院に戻った。戦いから離れたかったからだ。
 私の望みは叶えられた。誰も、それを咎めはしなかった……。

 しかし……戦わないという選択は、奪われることを黙って見ているということにもなり得ると……
 私は大切なものを失って初めて気づいた…………。

 気づけば、かつてハンターとして活動していた頃の装備を確認していた。
 アサルトライフルの重みが、妙に頼もしく思えた。こんな風に感じた事は、初めてだった。



●Sister Act
「……それでは依頼の説明をさせて頂きますね。依頼人はこちらの、元ハンターの……」
「元ハンター『崩れ』、よ」
 王都イルダーナのハンターオフィスで、私は依頼の説明をする職員を遮ってそう言った。院長の名で出された依頼であるが、私が同行することも許可を得ている。
 遮ったのは、私がこれからハンターに復帰するつもりだからだ。
「アハズヤ・ナルガイ、聖導師……同行させてもらう。よろしく頼むわ」
 そして集まったハンター達に説明を始めた。
 ……二度とジョンの様な犠牲者を生みたくはない。もう失うのは嫌だ。
 説明している間もそんな考えに支配されていた。

リプレイ本文

●Paradise Lost
(随分と張り詰めた雰囲気の人ッスね……)
 長良 芳人(ka3874)は、アハズヤにそんな印象を抱いた。肩慣らしのつもり依頼を受けた芳人からは、どこか危うげに見えた。

 最初の顔合わせが終わって、ハンターの一人がアハズヤに話しかけた。
「お久し振りです。お手伝いに来ましたよ」
「あなたは……その節は世話になった」
 彼女、ミコト=S=レグルス(ka3953)は非行に走ったアハズヤを捕縛したハンターの一人だった。その時は拒絶したが、今は心を開いて話すことが出来そうだった。
「戦う理由ができると、案外他のことは気にならないものね……」

 その日は話し合うこともなく解散となった。
 次に集まったのは、依頼人のいる修道院だった。

 アハズヤは例の聖堂の、外観から想像される見取り図を紙に描き説明した。
「一階は中央に礼拝堂があり、左右に部屋が並んでいるようね。ただ、高さと用途から考えて地階がありそう。内部までははっきりとは解らない」
「迷宮でも砦でもないし、構造は複雑ではなさそうだけど」
 烏丸 涼子 (ka5728)はアハズヤの言葉に自らの考えを述べる。積極的に発言するのは、アハズヤが気になるからだった。
 元・探偵の勘が疼くのか、この人は自分と同じ匂いがする、と感じていた。
「こういう建物に何があるかは大体予想つくけど、準備は念入りにしておくに越したことはないだろう」
 央崎 枢(ka5153)が言った。教会に馴染みの深い経歴を持つ彼にとって、この状況は無視できない状況だった。安らかに眠るべき死者が歪虚となり、眠ることもできずに飢えて彷徨うのは見過ごせなかった。
 聖堂は相当古いらしく、修道院にも知る者はいなかった。あとは現地で直接探索するしかなさそうだ。

 準備を終え、一行は聖堂跡へと出発した。

「少しいいかな」
 道中、青霧 ノゾミ(ka4377)がアハズヤに話しかけた。
「死者に安らぎを与えたい。レクイエムを歌ってくれないか」
 アハズヤの肩から提げたアサルトライフルを見ながら、ノゾミは言った。
 アハズヤは驚いた。言われるまで、歪虚は倒すという事しか頭になかったからだ。死者と歪虚を切り離して考えていた。
「負の感情に支配されるな。彼らに安らかな眠りを与えよう」
 そんなアハズヤの攻撃的な意思を察してか、ノゾミは言った。
「……わかった」
 戦いを強く意識しすぎてしまったと、アハズヤは反省する。

「歪虚の棲家になるくらいなら、いっそ聖堂ごと焼いてしまえばいい」
 聖堂も間近というところまで来て、金目(ka6190)がアハズヤに言った。独り言ではなく、明らかに反応を期待していた。
「一理ある。しかし……そう簡単に割り切れるものじゃない」
 そう言ってから少し間をおいて、アハズヤは応えた。
「死者が眠る場所は、生者にとっても必要だから」
 その土地には死者が眠っている。それ故に歪虚が発生したのだが……。
「あなた、住む?」
「僕が? 聖堂にですか?」
 誰かが管理すれば解決するのだが、無論ハンターの仕事の範疇ではなかった。



●The velvet darkness
 朝に出発して昼に差し掛かる頃、一行は目的の場所についた。
 木々に囲まれ、山を背にしてその聖堂は建っていた。それなりに大きく形を留めていたが、すでに人から忘れられて久しい年月を感じる、過去の遺物だった。

 周囲に歪虚の姿はなく、入る事自体は難なくできそうだ。
 所々破れた扉は開いている。

 中は漆黒の闇だった。

 一行はLEDライトで闇を照らし、中に入った。

 まだ入って一歩かそこらだというのに、骸骨がうろついていた。
 玄関から礼拝堂に通じる扉が壊れている。ライトの光は、礼拝堂にいる歪虚の姿を照らし出していた。
 一行は数える。
 八体……後方にもう一体。
 闇の中をゆっくりと徘徊していた。
 閑散とした聖堂跡の中に骨のこすれる音だけが響いていた。

 スケルトンの動きは思いの外早かった。一行が身構えるよりも早く、死体らしからぬ俊敏な動きで襲い掛かってくる。
 前衛に立っていた芳人、ミコト、枢、涼子は攻撃を避け、あるいは盾で弾き返した。
 枢の反撃が、スケルトンの首を斬り飛ばす。勢いで横殴りにふっ飛ばされたスケルトンは、そのまま塵となって消えた。光の属性を持つ枢の剣「ガラティン」が効果を発揮していた。
 スケルトンはありふれた歪虚なので、弱点も周知だった。光のほか火にも弱く、ミコトの「イシュカルド」涼子の「セルモクラスィア」金目の「ヴァルカン」芳人の「フラーメ・ルージュ」はいずれも火属性を持つ。先手を取られはしたが有利に戦いを進めることができた。
 反撃を開始すると同時に、アハズヤが歌いだした。物悲しくも荘厳なメロディはレクイエムだ。
 その調べは死から転化した存在である歪虚の動きを阻害する。
 そうなれば脆い。ミコトの剣が一体を両断、涼子の拳がさらに一体を叩き伏せ、金目が戦槌で頭蓋を叩き割った。
 芳人は後方に控えたスケルトンメイジから魔法の矢を撃たれるが回避し、眼前にいる骸骨の頭蓋骨を剣で穿つ。それは燃え上がり、一瞬で塵と化した。
 スケルトンメイジにはノゾミがファイアアローを飛ばし、灰に還す。
 残る三体も瞬く間に倒され、9体のスケルトンは一分と経たずに全滅した。

 戦闘が終わると辺りは静まり返った。
 壊れた長椅子や床の穴に気をつけながら、一行は探索を開始する。
(暗くて静かなところだなあ……)
 金目はこの場所が好きになれそうになかった。
 礼拝堂からは左右に廊下が伸びているほか、奥に小部屋があるようだった。
 一行は奥の小部屋から調べることにした。

 扉を開けるや否や、床に転がっていた骨が組みあがり、襲い掛かってきた。
 二体いたが、奇襲を想定していたので難なく倒す。その部屋の中にはめぼしい物はなかった。
 一行は二手に別れ、それぞれ廊下を進んだ。

 芳人は部屋の一つに入り、ライトを巡らせる。
 床や壁を見る。何もない。
 ライトを天井に向けた。

 天井に張り付いたスケルトンの姿があった。

「!」
 スケルトンは飛び掛ったが、突如として飛んだ炎の矢に撃たれ落下し、燃え尽きた。
 芳人の後方に控えたノゾミがファイアアローを放ったのだった。
「上にも気を配って良かったッス」
「良い判断だ」
 引き続き部屋を調べたが、もう何も出てこなかった。

 一行は探索を進めていった。部屋は全部で5つあった。何箇所かには歪虚が潜んでいたが、扉を開けたり小石を投げ込んだりしても何も反応せず、入った段階で物影から現れてきた。
 幸い、物陰や隙間もくまなく調べたため、不意を突かれる事はなかった。
 また、右側の通路の突き当たりに下り階段を発見した。
 一行は全ての部屋を調べ終わると、トランシーバーで連絡を取り合流し、下へと降りた。

 一行は冷たい石段を降りる。
 階段を降りると曲がり角だった。ミコトは一旦止まり、手鏡とライトで先を見る。
 長い廊下ではあったがLEDライトの有効範囲は壁まで達し、光は地下の闇を払った。
「まっすぐな廊下で……骨が寝てる……4体かな……」
 ミコトは見えたものを報告した。他には扉が五つあった。
 二列に並んで進む。それが精一杯の広さだ。
 骨から40m程の距離まで進むと、2体の骸骨が立ち上がり、魔法の矢を放ってきた。
 先頭を行く芳人と涼子は武器や盾でこれを受ける。受け止めるのは難しくないが、遠い。攻撃が届かない距離だ。
 走って距離を詰める。長射程の攻撃手段を持つ金目とアハズヤが最前列に立った。この時枢とノゾミは装備が重く、遅れをとってしまう。
 また魔法の矢が来た。後に仲間が居るため、金目とアハズヤは敢えて受ける。
「この程度、後でいくらでも治せる……!」
 アハズヤはアサルトライフルの引き金を引く。スケルトンメイジの一体は弾丸を受け、大きく体を揺らした。
「術式、展開!」
 金目のデバイスが作動し、デルタレイが四体の骸骨のうち三体を射抜いた。メイジの一体がこれで消滅する。
 涼子、芳人が前に出て、間合いまで踏み込む。それにミコトが続いた。
 魔法の矢がもう一撃来る。涼子は盾で防いだ。同時に沈黙を保っていた二体の骸骨が立ち上がった。
 二体は続けざまに両腕を広げ、回転して涼子と芳人を同時に攻撃する。一糸乱れぬ動きだったが二人の勢いを止めるほどではない。
 涼子は攻撃をしのぐと拳を繰り出し、一体を屠った。もう一体は芳人の強撃を受け、四散して消滅した。最後の一体にミコトが追い縋り、両手剣を叩き付ける。炎の魔力を内包した剣は敵を燃え上がらせ、完膚なきまでに消滅せしめた。

 廊下の脅威は消えた。
 アハズヤが傷ついた仲間にヒールをかけてから、探索を再会する。

 全部で五つある部屋はやはり歪虚が潜んでいた。
 うち一つの扉は開けるなり魔法の矢が飛んできたが、警戒して扉の横に立って開けたため被害はなかった。
 スケルトンは強くはなかったが隠密には秀でていた。部屋を一通り調べた後、最後に枢が壁際の棚の隙間を照らすと、わずかな隙間に挟まっていた骨が動き出して襲い掛かってきた。勿論駆除した。
 一行は壁の亀裂や影など、すべての場所にライトを当てて探索を進めた。
「なーんか、アレ探してるみたいッスね。Gではじまる」
「アレの話は止めて……」
 芳人の軽口にアハズヤは顔をしかめる。脅威と生理的嫌悪感は別の話だ。

 廊下の突き当たりには下り階段があり、その先に扉があった。
 この聖堂跡に満ちている邪悪な気配が、一段と強くなっていた。正のマテリアルが著しく欠けているのを感じる。
 一行は覚悟を決め、扉を開けた。

●The underground ossuary
 扉を開けると、何世紀分もの過ぎ去った時間の臭いが一行の鼻を突いた。物理的な攻撃は来なかったので、入った。

 中は意外と整然とされていた。
 空間は広く、その中央に巨大なものが控え、一行を待ち受けていた。
 ノゾミのリトルファイアがその姿を映し出す。
 整然と並んだ脚の骨、放射状に並んだ骨盤、それらが組み合わさって胴体を造っており、束ねられ柱のようになった腕の骨が4対の脚を造っていた。頚椎と手の骨、足の骨が組み合わさった腕のようなものを何本も生やしている。天辺からは多頭竜のように六又に伸びた、孤を描いて直列に繋がった無数の頭蓋骨があった。
 無数の頭蓋骨はそれぞれが動いており、一行におびただしい数の視線を向けていた。

「アア……」「ウウゥゥゥゥウウウウ」「ォオオオォォォォ……」

 呻き声や啜り泣きのような声がはっきりと聞こえた。
 無数の人骨が歪虚という存在を媒介にして統一され、一種の秩序を築き上げている。
(美しいと思う人もいるかもな……)
 金目は歪虚を目利きした。

 一行は二手に分かれ、挟み撃ちをするように骨の塊である歪虚と向き合った。
 頭蓋骨の連なりが不気味にうねり、乾いた音を奏でる。

「……アア……」「カナシイィ……」「サビ、シイ……」「オォォォォォ……」

 マテリアルのうねりが現象を引き起こした。それは魔術師のスキルに似ていたが、負の力があまりに濃い。
 吹雪にも似た負の想念がミコト、涼子、ノゾミ、アハズヤを襲った。心も体も震え上がるような狂おしい何かに耐える。

 アハズヤは体勢を立て直し、歌いはじめた。

(永遠の安息を彼らに与え、彼らに与え、彼らに与え――)

 地下納骨堂にレクイエムが響き渡る。

 その歌声に勇気付けられるようにハンター達は動いた。
「それ以上、死者達を叫ばせるな」
 ノゾミが、低く言った。死者は眠るものだ。叫ばない。
 向けられたワンドから火炎が迸り、積み上げられた骨の塊に幾度も炸裂する。

(聞いてください、私の祈りを)

 回転を加えたミコトの剣が敵を捉えた。退くと入れ替わりに涼子が肉薄し、拳の連打を浴びせる。
 反対側から芳人の渾身の一撃が骨塊に打ち据え、火花を散らす。
 枢は敵の体を足場にして跳び、不規則な軌道から斬撃を浴びせていく。
 姿勢を低くし接近した金目の戦槌が骨塊の脚を叩きつけ、爆炎をあげた。

(憐れみたまえ)

「ゥオオ……」「ニクイ……」「ユル……サン……」「…………キエロ…………!」

 地の底から響くような声と共に骨塊が震え、骨が打ち合って盛大な音楽を奏でた。
 骨塊が形を変える。頭蓋骨が環状に連なり、それに囲まれるように骨の柱が伸びて、柱の中ごろには骨が規則的に放射状に広がった形状を取った。
 そして歪虚は無数の頭蓋骨の口から炎を噴出した。否、炎というにはあまりに昏い。炎というにはあまりに醜い。
 それは爆発的に広がり周囲のハンター達をも飲み込んだ。

(光よ、慈しみ深き光よ)

「ヒーローは……倒れないっ!」
 負の炎を振り払うようにミコトは剣を振るう。
「行けぇ!」
 金目が目を大きく見開く。金色に変じた瞳が敵をはっきりと見据えた。
 二人の攻撃は盛大に火花を散らす。安定していた歪虚の体勢が大きく崩れた。

(絶えることのない光よ、彼らを照らしたまえ)

 飛び散る骨の中を一陣の光が奔る。
 枢だ。
 駆け込み、柱のような胴体を斬り払う。

「もう眠らせてやれ……遺された生きる人達が悲しむからよ」

 暁を告げるように、赤い光が弾けた。
 生きる者の力――マテリアルだ。

(――かくあれかし)

 歪虚の胴体は両断され、全身が崩れ落ちる。
 盛大な無数の骨の音が鳴り響き、そして、
 全ては消え、静寂が訪れた。



●Rest in peace
 枢は殺された少年の墓を訪れていた。
 死者の冥福を祈り、手向けの言葉を送る。
 とても短い言葉を。
 それだけを贈り終え、墓に背を向けた。

 仕事を無事終えた一行は修道院へと戻り、依頼人に報告した。
 一行は一息ついてから街へと帰ることになった。

 アハズヤは一緒に行くと言った。

「いいのか? あんたがハンターになったら、子供たちの日常は誰が守る?」
 ノゾミはそれを聞いて、もう一度考えるよう提案した。
 だが、アハズヤの気持ちはすでに決まっていた。
「日常を守るのは覚醒者でなくともできる。けど歪虚と戦えるのは覚醒者だけよ」
「じゃあ仲間って事で、今度飲みに行きましょう」
 金目が提案するが、アハズヤはすまなそうにうつむいた。
「……すまない、私は」
 ……修道女だ……。
「……あ」
 金目は誘い方を間違えた事を悟った。
「……でも、できる範囲で親しくしてくれると嬉しい」
 反応自体は、冷たいものではなかった。

「一緒に頑張りましょう、アハズヤさん」
 ミコトは歓迎の言葉を持って迎え、
 涼子は何も言わずに彼女を見ていた。

(杞憂だったみたいッス)
 アハズヤに危うさを見ていた芳人は、今や安堵していた。
 彼女には仲間がいた。
 少なくとも、同じように悩みを抱きつつも前向きに生きることを選択した者が他にもいるという意味では。

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参加者一覧

  • 三下の闘狩人
    長良 芳人(ka3874
    人間(蒼)|20才|男性|闘狩人
  • コル・レオニス
    ミコト=S=レグルス(ka3953
    人間(蒼)|16才|女性|霊闘士

  • 青霧 ノゾミ(ka4377
    人間(蒼)|26才|男性|魔術師
  • 祓魔執行
    央崎 枢(ka5153
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士

  • 烏丸 涼子 (ka5728
    人間(蒼)|26才|女性|格闘士
  • 細工師
    金目(ka6190
    人間(紅)|26才|男性|機導師

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依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
長良 芳人(ka3874
人間(リアルブルー)|20才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2016/05/04 12:47:23
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/05/01 18:03:38