ゲスト
(ka0000)
【機創】暗躍する教導団
マスター:植田誠

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~10人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/05/10 22:00
- 完成日
- 2016/05/24 09:09
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
「面倒くさい状況だな、おい」
クロウは報告書を手に頭を抱えていた。
帝都の下水に謎のスライムが現れたというのだ。元々下水は雑魔が発生しやすい環境にあり、毎年定期的にその処理に当たっているが、今年は少し時期が早いように思える。大規模作戦の戦果が帝都に及んだ影響なのかもしれない。
現在、練魔院が対応に当たっているらしいのだが……悪いときに悪いことは重なる物で。
最近内偵を続けてやっと見つけたスパイたちが、こぞって下水道内に逃げ込んだというのだ。
「こんだけスパイがいたってのも正直驚きだけどな……」
錬金術師組合は比較的開けた組織である。ある意味でその弱みが露呈したとも考えられる。この辺りのセキュリティ強化を今後は徹底する必要があるかもしれないが……
(そうしていくことで組合が練魔院のようになっていくのではないか?)
そう言った懸念もクロウの中にはある。この辺りは今後良く考えていかなければいけないだろう。
「とにかくだ。いずれにせよスパイを逃がすわけにはいかない」
彼らが逃げる先は十中八九歪虚とつながりのある組織であるのは間違いないのだから。
「クリューガー組合長も向かうそうです」
「分かった。俺達も下水に行くぞ。スパイも確保する、スライムの除去もする。両方やらなきゃならないのが辛いところ……」
「クロウさん!」
そう言って研究員がクロウを止めたのは、そんな時だった。
●
「此処まで来たら安心してもよさそうだな」
「そうですね」
下水の出口に4人の白衣を着た男達。錬金術師組合の組合員……の恰好をしてはいるが、彼らは組合に潜入していたスパイだ。
そして、出口から少し歩くとそこには魔導トラック。そして6人ほどの男。脱出を援護するためにやってきたとある組織の構成員だ。
「……来ちまったか。間に合うかねぇ……」
草むらの陰からその様子を窺っていた、鉄仮面を着けた男……エルウィンは様子を見て舌打ちする。
退役兵と復興の手伝いをしている際目を付けた怪しい集団。こっそり後を付けてみたらこんな状況になっていた。
(こんだけの装備を整えられる。それに……)
見た限り、その集団はみな機導師のような装備している魔導機械を見ればなんとなく察せる。
「本格的に動き出したって訳だな。錬金術教導団が……」
ヴルツァライヒが潰されたあと反帝国運動というのはなりを潜めていたわけだが、皇帝の記憶喪失や帝都の襲撃など……帝国への被害による国力の衰えがみられるようになる。そのタイミングを見計らったかのように各地の反帝国組織が活動を再開した。
錬金術教導団もその一つだ。
といっても、エルウィンにしても多くの情報を持っているわけではない。退役兵の支援活動に際し地方に行った時の噂話や、怪しい研究者を縛り上げて得た情報が主だ。
分かっているのは、帝国の武による支配を打倒し、知による発展を目指すという組織の目的。
構成員のほとんどが錬金術に精通する機導師であるということ。
そして、資金は豊富にあるということだけだ。
特に、その資金はトラックに積まれている物……2体の魔導アーマーなどを手に入れられることからかなりのものだと推測される。
「……来たな。よし……」
見ると、魔導トラックが一台こちらに向かってきている。面識があるわけではないが、運転席に乗っているのはクロウに間違いない。こちらの連絡が上手く組合に伝わったものと見える。
「急げ! 追手だ!」
「くそ、なんでここがわかったんだ……!」
あわててトラックに乗り込んでいく男達。だがエルウィンとしても逃がすわけにはいかない。
草むらに体を隠したまま、エルウィンは手中に生じたマテリアルの刃をナイフでも投げるように投じる。
煌めく剣はトラックのタイヤに命中し、破裂音とともにトラックのバランスが崩れる。
「なんだ!?」
「どこからか攻撃された、囲まれてるのか?」
タイヤがパンクしているのを確認した男達は、戦闘を決意したようだ。2人は魔導アーマーの方に、そして残りは魔導機械を用意する。
「さて、引退した身でこれ以上手を出すのは野暮だな」
そう呟くと、エルウィンは再び気付かれないように身を隠した。
周囲に機械の駆動音が響く。こうして、クロウたちと機導師集団との戦闘が始まったのだった。
「面倒くさい状況だな、おい」
クロウは報告書を手に頭を抱えていた。
帝都の下水に謎のスライムが現れたというのだ。元々下水は雑魔が発生しやすい環境にあり、毎年定期的にその処理に当たっているが、今年は少し時期が早いように思える。大規模作戦の戦果が帝都に及んだ影響なのかもしれない。
現在、練魔院が対応に当たっているらしいのだが……悪いときに悪いことは重なる物で。
最近内偵を続けてやっと見つけたスパイたちが、こぞって下水道内に逃げ込んだというのだ。
「こんだけスパイがいたってのも正直驚きだけどな……」
錬金術師組合は比較的開けた組織である。ある意味でその弱みが露呈したとも考えられる。この辺りのセキュリティ強化を今後は徹底する必要があるかもしれないが……
(そうしていくことで組合が練魔院のようになっていくのではないか?)
そう言った懸念もクロウの中にはある。この辺りは今後良く考えていかなければいけないだろう。
「とにかくだ。いずれにせよスパイを逃がすわけにはいかない」
彼らが逃げる先は十中八九歪虚とつながりのある組織であるのは間違いないのだから。
「クリューガー組合長も向かうそうです」
「分かった。俺達も下水に行くぞ。スパイも確保する、スライムの除去もする。両方やらなきゃならないのが辛いところ……」
「クロウさん!」
そう言って研究員がクロウを止めたのは、そんな時だった。
●
「此処まで来たら安心してもよさそうだな」
「そうですね」
下水の出口に4人の白衣を着た男達。錬金術師組合の組合員……の恰好をしてはいるが、彼らは組合に潜入していたスパイだ。
そして、出口から少し歩くとそこには魔導トラック。そして6人ほどの男。脱出を援護するためにやってきたとある組織の構成員だ。
「……来ちまったか。間に合うかねぇ……」
草むらの陰からその様子を窺っていた、鉄仮面を着けた男……エルウィンは様子を見て舌打ちする。
退役兵と復興の手伝いをしている際目を付けた怪しい集団。こっそり後を付けてみたらこんな状況になっていた。
(こんだけの装備を整えられる。それに……)
見た限り、その集団はみな機導師のような装備している魔導機械を見ればなんとなく察せる。
「本格的に動き出したって訳だな。錬金術教導団が……」
ヴルツァライヒが潰されたあと反帝国運動というのはなりを潜めていたわけだが、皇帝の記憶喪失や帝都の襲撃など……帝国への被害による国力の衰えがみられるようになる。そのタイミングを見計らったかのように各地の反帝国組織が活動を再開した。
錬金術教導団もその一つだ。
といっても、エルウィンにしても多くの情報を持っているわけではない。退役兵の支援活動に際し地方に行った時の噂話や、怪しい研究者を縛り上げて得た情報が主だ。
分かっているのは、帝国の武による支配を打倒し、知による発展を目指すという組織の目的。
構成員のほとんどが錬金術に精通する機導師であるということ。
そして、資金は豊富にあるということだけだ。
特に、その資金はトラックに積まれている物……2体の魔導アーマーなどを手に入れられることからかなりのものだと推測される。
「……来たな。よし……」
見ると、魔導トラックが一台こちらに向かってきている。面識があるわけではないが、運転席に乗っているのはクロウに間違いない。こちらの連絡が上手く組合に伝わったものと見える。
「急げ! 追手だ!」
「くそ、なんでここがわかったんだ……!」
あわててトラックに乗り込んでいく男達。だがエルウィンとしても逃がすわけにはいかない。
草むらに体を隠したまま、エルウィンは手中に生じたマテリアルの刃をナイフでも投げるように投じる。
煌めく剣はトラックのタイヤに命中し、破裂音とともにトラックのバランスが崩れる。
「なんだ!?」
「どこからか攻撃された、囲まれてるのか?」
タイヤがパンクしているのを確認した男達は、戦闘を決意したようだ。2人は魔導アーマーの方に、そして残りは魔導機械を用意する。
「さて、引退した身でこれ以上手を出すのは野暮だな」
そう呟くと、エルウィンは再び気付かれないように身を隠した。
周囲に機械の駆動音が響く。こうして、クロウたちと機導師集団との戦闘が始まったのだった。
リプレイ本文
●
「マジか!?」
言うが早いか、クロウは運転席を飛び出した。同時に運転席のガラスが弾丸で吹き飛ぶ。敵魔導アーマーからの攻撃だ。
「さすがに動きが速いな」
「見た? 銃持ちだったわよね。あれが操縦に回るのは予想外だったわ」
柊 真司(ka0705)とロベリア・李(ka4206)はそう話しながらトラックの陰に身を隠す。長くは持たないだろうが、今すぐトラックが破壊されるということは無い。
彼女たちは後衛。事前に打ち合わせたとおり、前衛の味方を援護する立場にあった。
「少なくとも魔導アーマーの管理はもっと厳重にした方がいいと思う……で、どうだ?」
「……機関銃、動力はアーマーから直接取っているみたい。可能なら接続部を狙ってちょうだい」
「了解した」
レオーネ・インヴェトーレ(ka1441)に双眼鏡を構えたロベリアが答える。それを聞きながら、真司は試作機導術のマテリアルチャージャーを使用しながらライフルを構える。
(どれだけ有効か……しかし、試す機会があるかな)
ファイアスローワーを使用してその威力を見るつもりだったが、味方が手前にいる現状では軽々に打つことは出来ないだろう。今はタイミングを測りながら射撃戦に徹することだ。
「こっちも了解っと。包囲されないように各自注意してくれよ!」
レオーネは機杖を構えロックオンレーザー3WAYの準備。誤射の危険性が無い分マテリアルチャージャーの効果を思う存分確かめることが出来そうだ。
「クロウさん、その試作武器、期待しているよ」
試作エネルギーキャノンを引っ張り出したクロウに攻性強化を使用した樹導 鈴蘭(ka2851)。こちらもトラックを遮蔽代わりに魔導銃で攻撃していく構えだ。
「新しいスキルか……使えそう……かな?」
鈴蘭の言うスキルとはマテリアルアーマー。こちらも試作機導術だ。後衛の鈴蘭が使う機会はそもそもないかもしれないが。
●
「スパイねぇ……本来なら、漏洩防止と見せしめに殺してしまうのが一番なんだが、お優しいことで」
「無駄口叩いてねぇで行くぞ! カバーは任せたぜ!」
「はいよ。了解っと」
エヴァンス・カルヴィ(ka0639)は大剣を構え防御しつつ移動。やや速度は落ちるが被弾に対する備えは万全にしておかねばならない。それに対しリカルド=イージス=バルデラマ(ka0356)は回避主体の動き。姿勢を低くしながら、ジグザグに動くことで被弾を減らす。
「軍政の打倒と知による発展、学徒らしい理想を掲げたものだな」
だが、と……アウレール・V・ブラオラント(ka2531)は思う。知識を得るその機会を補修するのは誰なのか、そもそも知性の優越を唱える者が武器を片手に暴力革命とは笑わせる冗談だと。
「……売国奴め、象牙の塔には鉄格子が必要か?」
そう言ってアウレールは盾と槍を構える。
(無策に飛び出しては麻痺拘束でカモになる。しかし……)
攻性防壁を警戒してはいるものの、睨み合っていても始まらない。味方に合わせアウレールも走り出した。
「とっととお縄に着いちゃったほうが身のためだと思うんだけど……」
運動強化を使用しつつレベッカ・アマデーオ(ka1963)は呟く。今回の依頼は捕縛。故に、早々に敵が降伏してくれたら仕事が楽で済むし、向こうも死なずに済む。だが、そう簡単に捕まりそうな様子を見せない。
「……そうもいかない、か……」
レベッカは槍を正面に構え前に出る。
如何にも接近戦が得意ですと言う風に見えるが、これは擬態。敵が接近戦を仕掛けてきたら槍で攻撃すると見せかけてデルタレイを打ち込む算段だ。
数の不利を補うのにデルタレイは最適と言える機導術だ。向こうも同じ手を使っているのだからこちらが使わない手はない。
ただ、この時レベッカの想定と実際の状況はやや差があった。敵の剣持ちは杖持ちの護衛的な動きをしているようで、前には出ずトラックや魔導アーマーを遮蔽として攻撃を避けている。
「槍と機導術の2択をかけるのは難しそうかな……まぁ、臨機応変に行くしかないか」
「よ、よし! それじゃ行くとしようか……」
ちょっとふらつきながらも前に出た南條 真水(ka2377)。その体は淡いマテリアルの光に包まれている。マテリアルアーマーによるものだ。
「ふらついてない? 大丈夫?」
「大丈夫! 酔ってないから! 大丈夫!」
アルスレーテ・フュラー(ka6148)が心配そうに声をかける。が、どうやら車酔いだったらしい。自分に大丈夫だと言い聞かせる。
「チク、タク、チク、タク……」
呟きとともに展開される時計盤型の魔方陣。そこに浮き上がる3つの針が標的を穿つ。凄まじい威力だが、魔導トラックが遮蔽となり杖持ちには当たらない。尤も、本命は魔導アーマーへの攻撃だったので問題は無いが。
「あの調子なら問題無さそうね。それにしてもスパイかぁ……いいわね」
なんかかっこいいと思いつつ……アルスレーテも仕事を受けた以上手心を加えるつもりは無い。捕縛が目的である以上それを念頭に置いてはいるが、手加減して自分がやられたら話にならない。
「……やりすぎたらごめんね」
そう言って、金剛を使用して守りを固めた。
「的がデカいから、外す心配は無いな」
真司がライフルで支援射撃。アーマーの装甲は厚いが、ダメージは蓄積しているはずだ。さらに、その狙いもロベリアから指示された接続部に集中している。そのおかげか、アーマー側の狙いは粗くなっていく。
「この感じだと……そう簡単には……当たらないね」
魔導銃で支援する鈴蘭。これはもちろん鈴蘭たちの支援射撃によるところも大きいのだが、そもそも魔導アーマーの射撃性能自体はあまり高くない。その為にばらまくように弾幕を張っているのだろう。
「そうすると弾丸の密度が薄くなるから回避しやすくなる……本末転倒ね」
真水に攻性強化をかけながらロベリアが言った。尤も、言うほど易しいわけでもない。
「戦争でもする気かよ」
銃撃の応酬の中を舌打ちしつつ進むリカルド。銃撃を回避するのは容易だがデルタレイの方はそうもいかない。1発、2発と被弾。思いのほか正確な狙いだ。対しこちらはアーマーが遮蔽になって射線が通りにくい。
「……自分で言うのもなんだけど、機導師って敵に回すと厄介極まりないわね」
レベッカの方は運動強化のお陰もあって弾幕、デルタレイとも順調に回避。一発直撃コースのデルタレイも防御障壁を使ってダメージを軽減。しかし、その当たった一発だけでもかなりのダメージを受けてしまう。
狙われたのはエヴァンスもだ。大剣を盾代わりに進んでいたため攻撃を防御することは出来るが、防御を意識した分動きはやや硬くなり、被弾が嵩む。ただ、それでもすぐに倒れないのはエヴァンスの類稀な耐久力の賜物か。
「狙いが集中してる……大丈夫かな」
タイミングを測りながらマテリアルチャージャーとロックオンレーザーを使いまわしていくレオーネ。その眼に映った通り、敵の機導術はリカルド、エヴァンス、レベッカに集中している。
「多分堅い相手を避けた結果だろうな」
その答えは真司が出した。防御スキルを使用した真水、アルスレーテ。そして盾持ちのアウレールを避けそれ以外を狙っている。先んじて数を減らしていこうというつもりなのだろう。そして、それは今のところ当たっており狙われた3人のダメージは軽視できない。
「打ち合いになるとちょっと不利かも知れないね……」
だが、自身が狙われないならそれはそれでよい。さらに寄ってより多数を攻撃するだけだ。
真水は二条の紅光を交差させる。丁度敵の姿がその間に収まるように。そして、それを閉じる。間に入ったそれらを断つように。
アイルクロノ……ハサミを模した破壊エネルギーが魔導アーマーの脚部を斬りつけ、その逆では機導師が腕部から血を噴き出す。
「……ちょっと浅かった。もう少し踏み込んで……」
「そうね」
ここで、戦局が大きく動き出す。
「もう一歩、踏み込んでいきましょうか」
まず驚いたのは先程アイルクロノを受けた杖持ちだっただろう。目の前に突然アルスレーテが現れたのだから。
アルスレーテは縮地瞬動を使用して、遮蔽となっていた魔導アーマー、魔導トラックを飛び越え接近。さらに震撃を使用して杖持ちに強力な一打を放つ。吹っ飛ばされた杖持ちはそのまま動かなくなる。
「大丈夫、手応え的に息はあるはずだからね」
アルスレーテが飛び込んだのを好機と見てアウレールもチャージを使用。
「安全なところから攻撃するだけではな。目にものを見せてやろう」
移動速度を乗せた突きで杖持ちを狙う。この攻撃は間に割って入った剣持ちに止められたが、敵の動きに乱れが生じたのは確かだ。
「全く、コレが終わったら店の仕込みがあるから省エネでいきたいんだけどな」
懐に飛び込み、拳銃を構えたリカルド。至近には杖持ち。
胴部を狙い銃撃。さらに銃撃。確実に対象を仕留めるための打ち方だ。とはいえ、胴部は比較的防御が堅い。やはり本領たる近接戦で仕留めるべきだろう。
踏込でサイドに回り込みつつ振動刀の二刀流で攻めるつもりだ。
だが、それは叶わない。すでに大きなダメージを受けていたリカルド。杖持ちとの間に割って入った剣持ちの攻撃をしのぎ切れない。
「……まぁ、道は開けてやったからな」
倒れたリカルドの背から突っ込んできたのはエヴァンス。できれば魔導アーマーに仕掛けたいところであったが、距離的にまずは目の前の敵から行くべきと、そのまま剣持ちと刃を合わせ、押し返す。
「本職舐めんな!」
純粋な近接戦能力ではエヴァンスに及ぶべくもない。じりじりと剣持ちは押されていく。
「好き放題やってくれたね……お返しだよ!」
その後ろから飛び込んできたレベッカがデルタレイを使用。エヴァンスに対する剣持ちを倒すとともに周辺にダメージを与える。だが、ここまでのダメージが嵩んだ。横から杖持ちのデルタレイを受け倒される。
さらにデルタレイはエヴァンスにもダメージを与える。
「くそ……これが限界か……」
最後の力を振り絞り、横殴りに大剣をぶち当て、杖持ちを気絶させる。そのままエヴァンスも倒れた。
この時点で杖持ち2人と剣持ち1人を倒した。
さらに、地響きが周囲に響く。魔導アーマー1体の機関銃が落ち、機能を停止したようだ。
「今のところはイーブン……一度退こうかしらね」
アルスレーテは周囲を見回す。縮地瞬動で敵を乱せたのは良かったが、すぐに体勢は立て直されるだろう。そうなる前に一度退き、またいつ懐に飛び込んでくるかわからないという余計な警戒心を与えたいという考えだ。
引くのも同じ、縮地瞬動を使って一気に……
「……っ、何!?」
その時だった。目の前に剣持ちが現れたのは。剣持ちはジェットブーツを使って一気にアルスレーテとの間合いを詰めた。先程杖持ちにやったことをやり返された形だ。さらに剣持ちの剣が巨大化。
「超重錬成……!」
不意を突かれた形だ。躱し切れずまともに攻撃を受ける。
体がくの字に曲がり、地面を転がる。そこにデルタレイが撃ち込まれ、致命傷となった。アルスレーテは立ち上がることが出来ない。
デルタレイは真水にも向かう。ハルトを使用して攻撃を行っていた真水は、これに対しケルキオンを展開。ダメージを受けながらも反撃の茨が杖持ちを捕える。
「少し茨と遊んでいて……っ!」
次の瞬間、背中に強い衝撃を受ける。ジェットブーツで飛び込んできた剣持ちがそのまま無防備な背に向かい剣を振り抜いたのだ。
(杖持ちに気を取られすぎた!?)
攻撃を向け前のめりに倒れそうなところを何とか踏みとどまる。
「まずい! これ以上やらせるわけにはいかねぇぜ!!」
マテリアルチャージャーを連続で使用して威力を強化したレオーネ。そこからロックオンレーザーを放ち真水を支援する。追撃をかけようとした剣持ちは防御せざるを得ない。
その隙に真水は態勢を整えようとする。だが、アルスレーテを倒した剣持ちがジェットブーツを使用して上を取り、そのまま剣を背に突き降ろした。
前のめりに倒れかけていたため上が死角になったのが悪かった。背中からその身を貫かれた真水は倒れ、そこに銃撃を受ける。魔導アーマーに乗っていた銃持ちだ。これまでの大きなダメージと出血によりそのまま意識を失った。
敵中に一人残される形となったアウレール。だが、その戦意は衰えを知らず槍を振りかざし周囲を薙ぎ払う。それを避け距離を取る剣持ち。それにより杖持ちへの道が開ける。再度チャージを使用。距離を詰めて突きを放つ。杖で防御するもそのまま弾き飛ばされ、倒れる。
さらにアウレールは追撃……
「この刃は護国の剣。歪虚征伐の刃……人を殺めるためには使わん」
顔の真横を掠めるように突き出された槍。その穂先は地面に突き刺さる。その攻撃で戦意を喪失したか、杖持ちをそのまま気絶する。
「法の裁きを受けるがいい……」
言うが早いか、再度攻撃するため武器を構える。だが、そこに周囲から機導術、銃撃の連続攻撃。
盾を構えそれらを防御する。
(離脱……厳しいか)
後衛が援護してくれているが、離れることは難しい。
何とか反撃して剣持ち1人を倒しはしたが、そこでアウレールも力尽きた。
「気を抜いてる暇はないわよ!」
ロベリアの声。同時にずんと響く地響き。アウレールが引きつけている間にもう一機のアーマーは破壊された。
残りは銃持ちが2人に剣持ち2人。そして麻痺により行動が出来ない杖持ち。
さらに、これまでの戦闘でダメージは確実に敵へと蓄積している。
「出番か。最大までチャージしたらどうなるかっと」
銃持ちからの銃撃が真司の肩口に当たる。だが、真司はそれを意に介さず、最大まで蓄積されたマテリアルチャージャーを解放。強化されたファイアスローワーを放った。
剣持ちは何とか範囲外に逃れる。扇状という性質から逃れる場所が無いではない。
だが、それ以外は逃げられずファイアスローワーをまともに喰らう。さらに、ロベリアが射程重視のデルタレイAを放つ。
戦闘の初期段階、接近するリカルドやエヴァンス、レベッカは敵の集中攻撃を受けた。今度はそれを敵の方がやり返される形になった。
ここで残された剣持ちのうち1人がジェットブーツを併用して接近。なんとか近接戦で埒を明けようというつもりだ。
接近を阻止しようと鈴蘭が銃撃するも、回避。
(来た……!)
この時、鈴蘭はマテリアルアーマーを使用。そして、あえて前に出る。実際の戦闘でどの程度の効果があるのか、攻撃を受けてみようというのだ。
一矢報いようと渾身の力を込めて振り抜かれた剣劇。鈴蘭は盾で防御するも、大きなダメージを受ける。
「っ……痛い……な」
平時、何もない状態であれば一撃で致命傷となっていたかもしれない。だが、実際はまだ多少動く余裕がある。やはり多少以上の防御効果はありそうだ。
「後は……倒すだけ……だね」
その声を聴き剣持ちは振り向く。すでに立って動く者はなく、残りは自分ひとりとなっていた。
「さぁ、残ったのはあんただけだけど……まだやるかい?」
レオーネの言葉に戦意を喪失した剣持ちは剣を取りこぼしその場に座り込んだ。
●
こうしてハンターたちは勝利した。うめき声をあげ地面に突っ伏す機導師たちを残ったハンターたちは捕獲していく。
「新型スキルの使用感もまずまず……とりあえず死んだ奴もいないし、まずまずだな」
手錠をかけながら真司は言った。
「トラックはボロボロだがまだ走れそうだな……怪我人も急いで連れて行きたいし都合が良かったぜ」
「まだよ。どんな横やりが入るかも分からないわ。周囲を警戒して!」
一息ついた様子のクロウにロベリアの厳しい指示が入る。狙撃や浮遊砲台。以前組合から逃げ出したスパイはその途上で殺されている。そう考えると口封じをするために敵が出てこないとも限らない。
「確かに……注意しないと……」
ダメージにふらつきながら、鈴蘭も周囲の警戒を行う。
「しかし、この敵のトラック……」
その最中、レオーネは敵がトラックで逃げなかったことに疑問を感じ軽く調査を行った。その結果、戦闘が始まる前に誰かが意図的に壊したような形跡が見られた。
「一体誰が……」
そう思い辺りを見回しても、それらしき人物の姿はすでに見当たらなかった。
「作戦はいまいちだったが、個々の実力でねじ伏せた感じだな」
その張本人であるエルウィンは物陰からこっそり引き揚げつつ呟いた。
前衛と後衛を分けた結果、前衛に攻撃が集中することになってしまい、被害が拡大した。
トラックを遮蔽に全員で打ち合いするもよし、その逆に全員で突っ込むもよし。どちらでもこの状況よりは被害が減らせた……かもしれない。
だが、どれも机上の空論。結果としてハンターたちは被害を出したものの敵を倒したのだから問題ないだろう。
「そう、問題はこの後だな」
錬金術教導団。その実態がどれだけ分かるか。それは今後の尋問次第ということになりそうだ。
その尋問が可能なのも、ハンターたちが死者を出さずに敵を抑えることが出来たからだ。それは確かな成果であった。
「マジか!?」
言うが早いか、クロウは運転席を飛び出した。同時に運転席のガラスが弾丸で吹き飛ぶ。敵魔導アーマーからの攻撃だ。
「さすがに動きが速いな」
「見た? 銃持ちだったわよね。あれが操縦に回るのは予想外だったわ」
柊 真司(ka0705)とロベリア・李(ka4206)はそう話しながらトラックの陰に身を隠す。長くは持たないだろうが、今すぐトラックが破壊されるということは無い。
彼女たちは後衛。事前に打ち合わせたとおり、前衛の味方を援護する立場にあった。
「少なくとも魔導アーマーの管理はもっと厳重にした方がいいと思う……で、どうだ?」
「……機関銃、動力はアーマーから直接取っているみたい。可能なら接続部を狙ってちょうだい」
「了解した」
レオーネ・インヴェトーレ(ka1441)に双眼鏡を構えたロベリアが答える。それを聞きながら、真司は試作機導術のマテリアルチャージャーを使用しながらライフルを構える。
(どれだけ有効か……しかし、試す機会があるかな)
ファイアスローワーを使用してその威力を見るつもりだったが、味方が手前にいる現状では軽々に打つことは出来ないだろう。今はタイミングを測りながら射撃戦に徹することだ。
「こっちも了解っと。包囲されないように各自注意してくれよ!」
レオーネは機杖を構えロックオンレーザー3WAYの準備。誤射の危険性が無い分マテリアルチャージャーの効果を思う存分確かめることが出来そうだ。
「クロウさん、その試作武器、期待しているよ」
試作エネルギーキャノンを引っ張り出したクロウに攻性強化を使用した樹導 鈴蘭(ka2851)。こちらもトラックを遮蔽代わりに魔導銃で攻撃していく構えだ。
「新しいスキルか……使えそう……かな?」
鈴蘭の言うスキルとはマテリアルアーマー。こちらも試作機導術だ。後衛の鈴蘭が使う機会はそもそもないかもしれないが。
●
「スパイねぇ……本来なら、漏洩防止と見せしめに殺してしまうのが一番なんだが、お優しいことで」
「無駄口叩いてねぇで行くぞ! カバーは任せたぜ!」
「はいよ。了解っと」
エヴァンス・カルヴィ(ka0639)は大剣を構え防御しつつ移動。やや速度は落ちるが被弾に対する備えは万全にしておかねばならない。それに対しリカルド=イージス=バルデラマ(ka0356)は回避主体の動き。姿勢を低くしながら、ジグザグに動くことで被弾を減らす。
「軍政の打倒と知による発展、学徒らしい理想を掲げたものだな」
だが、と……アウレール・V・ブラオラント(ka2531)は思う。知識を得るその機会を補修するのは誰なのか、そもそも知性の優越を唱える者が武器を片手に暴力革命とは笑わせる冗談だと。
「……売国奴め、象牙の塔には鉄格子が必要か?」
そう言ってアウレールは盾と槍を構える。
(無策に飛び出しては麻痺拘束でカモになる。しかし……)
攻性防壁を警戒してはいるものの、睨み合っていても始まらない。味方に合わせアウレールも走り出した。
「とっととお縄に着いちゃったほうが身のためだと思うんだけど……」
運動強化を使用しつつレベッカ・アマデーオ(ka1963)は呟く。今回の依頼は捕縛。故に、早々に敵が降伏してくれたら仕事が楽で済むし、向こうも死なずに済む。だが、そう簡単に捕まりそうな様子を見せない。
「……そうもいかない、か……」
レベッカは槍を正面に構え前に出る。
如何にも接近戦が得意ですと言う風に見えるが、これは擬態。敵が接近戦を仕掛けてきたら槍で攻撃すると見せかけてデルタレイを打ち込む算段だ。
数の不利を補うのにデルタレイは最適と言える機導術だ。向こうも同じ手を使っているのだからこちらが使わない手はない。
ただ、この時レベッカの想定と実際の状況はやや差があった。敵の剣持ちは杖持ちの護衛的な動きをしているようで、前には出ずトラックや魔導アーマーを遮蔽として攻撃を避けている。
「槍と機導術の2択をかけるのは難しそうかな……まぁ、臨機応変に行くしかないか」
「よ、よし! それじゃ行くとしようか……」
ちょっとふらつきながらも前に出た南條 真水(ka2377)。その体は淡いマテリアルの光に包まれている。マテリアルアーマーによるものだ。
「ふらついてない? 大丈夫?」
「大丈夫! 酔ってないから! 大丈夫!」
アルスレーテ・フュラー(ka6148)が心配そうに声をかける。が、どうやら車酔いだったらしい。自分に大丈夫だと言い聞かせる。
「チク、タク、チク、タク……」
呟きとともに展開される時計盤型の魔方陣。そこに浮き上がる3つの針が標的を穿つ。凄まじい威力だが、魔導トラックが遮蔽となり杖持ちには当たらない。尤も、本命は魔導アーマーへの攻撃だったので問題は無いが。
「あの調子なら問題無さそうね。それにしてもスパイかぁ……いいわね」
なんかかっこいいと思いつつ……アルスレーテも仕事を受けた以上手心を加えるつもりは無い。捕縛が目的である以上それを念頭に置いてはいるが、手加減して自分がやられたら話にならない。
「……やりすぎたらごめんね」
そう言って、金剛を使用して守りを固めた。
「的がデカいから、外す心配は無いな」
真司がライフルで支援射撃。アーマーの装甲は厚いが、ダメージは蓄積しているはずだ。さらに、その狙いもロベリアから指示された接続部に集中している。そのおかげか、アーマー側の狙いは粗くなっていく。
「この感じだと……そう簡単には……当たらないね」
魔導銃で支援する鈴蘭。これはもちろん鈴蘭たちの支援射撃によるところも大きいのだが、そもそも魔導アーマーの射撃性能自体はあまり高くない。その為にばらまくように弾幕を張っているのだろう。
「そうすると弾丸の密度が薄くなるから回避しやすくなる……本末転倒ね」
真水に攻性強化をかけながらロベリアが言った。尤も、言うほど易しいわけでもない。
「戦争でもする気かよ」
銃撃の応酬の中を舌打ちしつつ進むリカルド。銃撃を回避するのは容易だがデルタレイの方はそうもいかない。1発、2発と被弾。思いのほか正確な狙いだ。対しこちらはアーマーが遮蔽になって射線が通りにくい。
「……自分で言うのもなんだけど、機導師って敵に回すと厄介極まりないわね」
レベッカの方は運動強化のお陰もあって弾幕、デルタレイとも順調に回避。一発直撃コースのデルタレイも防御障壁を使ってダメージを軽減。しかし、その当たった一発だけでもかなりのダメージを受けてしまう。
狙われたのはエヴァンスもだ。大剣を盾代わりに進んでいたため攻撃を防御することは出来るが、防御を意識した分動きはやや硬くなり、被弾が嵩む。ただ、それでもすぐに倒れないのはエヴァンスの類稀な耐久力の賜物か。
「狙いが集中してる……大丈夫かな」
タイミングを測りながらマテリアルチャージャーとロックオンレーザーを使いまわしていくレオーネ。その眼に映った通り、敵の機導術はリカルド、エヴァンス、レベッカに集中している。
「多分堅い相手を避けた結果だろうな」
その答えは真司が出した。防御スキルを使用した真水、アルスレーテ。そして盾持ちのアウレールを避けそれ以外を狙っている。先んじて数を減らしていこうというつもりなのだろう。そして、それは今のところ当たっており狙われた3人のダメージは軽視できない。
「打ち合いになるとちょっと不利かも知れないね……」
だが、自身が狙われないならそれはそれでよい。さらに寄ってより多数を攻撃するだけだ。
真水は二条の紅光を交差させる。丁度敵の姿がその間に収まるように。そして、それを閉じる。間に入ったそれらを断つように。
アイルクロノ……ハサミを模した破壊エネルギーが魔導アーマーの脚部を斬りつけ、その逆では機導師が腕部から血を噴き出す。
「……ちょっと浅かった。もう少し踏み込んで……」
「そうね」
ここで、戦局が大きく動き出す。
「もう一歩、踏み込んでいきましょうか」
まず驚いたのは先程アイルクロノを受けた杖持ちだっただろう。目の前に突然アルスレーテが現れたのだから。
アルスレーテは縮地瞬動を使用して、遮蔽となっていた魔導アーマー、魔導トラックを飛び越え接近。さらに震撃を使用して杖持ちに強力な一打を放つ。吹っ飛ばされた杖持ちはそのまま動かなくなる。
「大丈夫、手応え的に息はあるはずだからね」
アルスレーテが飛び込んだのを好機と見てアウレールもチャージを使用。
「安全なところから攻撃するだけではな。目にものを見せてやろう」
移動速度を乗せた突きで杖持ちを狙う。この攻撃は間に割って入った剣持ちに止められたが、敵の動きに乱れが生じたのは確かだ。
「全く、コレが終わったら店の仕込みがあるから省エネでいきたいんだけどな」
懐に飛び込み、拳銃を構えたリカルド。至近には杖持ち。
胴部を狙い銃撃。さらに銃撃。確実に対象を仕留めるための打ち方だ。とはいえ、胴部は比較的防御が堅い。やはり本領たる近接戦で仕留めるべきだろう。
踏込でサイドに回り込みつつ振動刀の二刀流で攻めるつもりだ。
だが、それは叶わない。すでに大きなダメージを受けていたリカルド。杖持ちとの間に割って入った剣持ちの攻撃をしのぎ切れない。
「……まぁ、道は開けてやったからな」
倒れたリカルドの背から突っ込んできたのはエヴァンス。できれば魔導アーマーに仕掛けたいところであったが、距離的にまずは目の前の敵から行くべきと、そのまま剣持ちと刃を合わせ、押し返す。
「本職舐めんな!」
純粋な近接戦能力ではエヴァンスに及ぶべくもない。じりじりと剣持ちは押されていく。
「好き放題やってくれたね……お返しだよ!」
その後ろから飛び込んできたレベッカがデルタレイを使用。エヴァンスに対する剣持ちを倒すとともに周辺にダメージを与える。だが、ここまでのダメージが嵩んだ。横から杖持ちのデルタレイを受け倒される。
さらにデルタレイはエヴァンスにもダメージを与える。
「くそ……これが限界か……」
最後の力を振り絞り、横殴りに大剣をぶち当て、杖持ちを気絶させる。そのままエヴァンスも倒れた。
この時点で杖持ち2人と剣持ち1人を倒した。
さらに、地響きが周囲に響く。魔導アーマー1体の機関銃が落ち、機能を停止したようだ。
「今のところはイーブン……一度退こうかしらね」
アルスレーテは周囲を見回す。縮地瞬動で敵を乱せたのは良かったが、すぐに体勢は立て直されるだろう。そうなる前に一度退き、またいつ懐に飛び込んでくるかわからないという余計な警戒心を与えたいという考えだ。
引くのも同じ、縮地瞬動を使って一気に……
「……っ、何!?」
その時だった。目の前に剣持ちが現れたのは。剣持ちはジェットブーツを使って一気にアルスレーテとの間合いを詰めた。先程杖持ちにやったことをやり返された形だ。さらに剣持ちの剣が巨大化。
「超重錬成……!」
不意を突かれた形だ。躱し切れずまともに攻撃を受ける。
体がくの字に曲がり、地面を転がる。そこにデルタレイが撃ち込まれ、致命傷となった。アルスレーテは立ち上がることが出来ない。
デルタレイは真水にも向かう。ハルトを使用して攻撃を行っていた真水は、これに対しケルキオンを展開。ダメージを受けながらも反撃の茨が杖持ちを捕える。
「少し茨と遊んでいて……っ!」
次の瞬間、背中に強い衝撃を受ける。ジェットブーツで飛び込んできた剣持ちがそのまま無防備な背に向かい剣を振り抜いたのだ。
(杖持ちに気を取られすぎた!?)
攻撃を向け前のめりに倒れそうなところを何とか踏みとどまる。
「まずい! これ以上やらせるわけにはいかねぇぜ!!」
マテリアルチャージャーを連続で使用して威力を強化したレオーネ。そこからロックオンレーザーを放ち真水を支援する。追撃をかけようとした剣持ちは防御せざるを得ない。
その隙に真水は態勢を整えようとする。だが、アルスレーテを倒した剣持ちがジェットブーツを使用して上を取り、そのまま剣を背に突き降ろした。
前のめりに倒れかけていたため上が死角になったのが悪かった。背中からその身を貫かれた真水は倒れ、そこに銃撃を受ける。魔導アーマーに乗っていた銃持ちだ。これまでの大きなダメージと出血によりそのまま意識を失った。
敵中に一人残される形となったアウレール。だが、その戦意は衰えを知らず槍を振りかざし周囲を薙ぎ払う。それを避け距離を取る剣持ち。それにより杖持ちへの道が開ける。再度チャージを使用。距離を詰めて突きを放つ。杖で防御するもそのまま弾き飛ばされ、倒れる。
さらにアウレールは追撃……
「この刃は護国の剣。歪虚征伐の刃……人を殺めるためには使わん」
顔の真横を掠めるように突き出された槍。その穂先は地面に突き刺さる。その攻撃で戦意を喪失したか、杖持ちをそのまま気絶する。
「法の裁きを受けるがいい……」
言うが早いか、再度攻撃するため武器を構える。だが、そこに周囲から機導術、銃撃の連続攻撃。
盾を構えそれらを防御する。
(離脱……厳しいか)
後衛が援護してくれているが、離れることは難しい。
何とか反撃して剣持ち1人を倒しはしたが、そこでアウレールも力尽きた。
「気を抜いてる暇はないわよ!」
ロベリアの声。同時にずんと響く地響き。アウレールが引きつけている間にもう一機のアーマーは破壊された。
残りは銃持ちが2人に剣持ち2人。そして麻痺により行動が出来ない杖持ち。
さらに、これまでの戦闘でダメージは確実に敵へと蓄積している。
「出番か。最大までチャージしたらどうなるかっと」
銃持ちからの銃撃が真司の肩口に当たる。だが、真司はそれを意に介さず、最大まで蓄積されたマテリアルチャージャーを解放。強化されたファイアスローワーを放った。
剣持ちは何とか範囲外に逃れる。扇状という性質から逃れる場所が無いではない。
だが、それ以外は逃げられずファイアスローワーをまともに喰らう。さらに、ロベリアが射程重視のデルタレイAを放つ。
戦闘の初期段階、接近するリカルドやエヴァンス、レベッカは敵の集中攻撃を受けた。今度はそれを敵の方がやり返される形になった。
ここで残された剣持ちのうち1人がジェットブーツを併用して接近。なんとか近接戦で埒を明けようというつもりだ。
接近を阻止しようと鈴蘭が銃撃するも、回避。
(来た……!)
この時、鈴蘭はマテリアルアーマーを使用。そして、あえて前に出る。実際の戦闘でどの程度の効果があるのか、攻撃を受けてみようというのだ。
一矢報いようと渾身の力を込めて振り抜かれた剣劇。鈴蘭は盾で防御するも、大きなダメージを受ける。
「っ……痛い……な」
平時、何もない状態であれば一撃で致命傷となっていたかもしれない。だが、実際はまだ多少動く余裕がある。やはり多少以上の防御効果はありそうだ。
「後は……倒すだけ……だね」
その声を聴き剣持ちは振り向く。すでに立って動く者はなく、残りは自分ひとりとなっていた。
「さぁ、残ったのはあんただけだけど……まだやるかい?」
レオーネの言葉に戦意を喪失した剣持ちは剣を取りこぼしその場に座り込んだ。
●
こうしてハンターたちは勝利した。うめき声をあげ地面に突っ伏す機導師たちを残ったハンターたちは捕獲していく。
「新型スキルの使用感もまずまず……とりあえず死んだ奴もいないし、まずまずだな」
手錠をかけながら真司は言った。
「トラックはボロボロだがまだ走れそうだな……怪我人も急いで連れて行きたいし都合が良かったぜ」
「まだよ。どんな横やりが入るかも分からないわ。周囲を警戒して!」
一息ついた様子のクロウにロベリアの厳しい指示が入る。狙撃や浮遊砲台。以前組合から逃げ出したスパイはその途上で殺されている。そう考えると口封じをするために敵が出てこないとも限らない。
「確かに……注意しないと……」
ダメージにふらつきながら、鈴蘭も周囲の警戒を行う。
「しかし、この敵のトラック……」
その最中、レオーネは敵がトラックで逃げなかったことに疑問を感じ軽く調査を行った。その結果、戦闘が始まる前に誰かが意図的に壊したような形跡が見られた。
「一体誰が……」
そう思い辺りを見回しても、それらしき人物の姿はすでに見当たらなかった。
「作戦はいまいちだったが、個々の実力でねじ伏せた感じだな」
その張本人であるエルウィンは物陰からこっそり引き揚げつつ呟いた。
前衛と後衛を分けた結果、前衛に攻撃が集中することになってしまい、被害が拡大した。
トラックを遮蔽に全員で打ち合いするもよし、その逆に全員で突っ込むもよし。どちらでもこの状況よりは被害が減らせた……かもしれない。
だが、どれも机上の空論。結果としてハンターたちは被害を出したものの敵を倒したのだから問題ないだろう。
「そう、問題はこの後だな」
錬金術教導団。その実態がどれだけ分かるか。それは今後の尋問次第ということになりそうだ。
その尋問が可能なのも、ハンターたちが死者を出さずに敵を抑えることが出来たからだ。それは確かな成果であった。
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作戦相談卓 レオーネ・インヴェトーレ(ka1441) 人間(クリムゾンウェスト)|15才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2016/05/09 23:35:04 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/05/06 22:16:08 |