魔鷹~ルモーレの夜襲

マスター:深夜真世

シナリオ形態
シリーズ(続編)
難易度
難しい
オプション
参加費
1,300
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/06/13 19:00
完成日
2016/06/30 02:18

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●前回の記憶
「……消えた、の?」
 フラ・キャンディ(kz0121)が呆然として言った。
 ジェオルジの田舎村に近い森に砦を築いた骸骨歪虚一団のボス、ルモーレのいた部屋の中は陽光あふれる屋外とは対照的に薄暗かった。
 とにかく、今さっきまで目の前で悠然と立っていた男は一瞬にしていなくなった。
「は、速いだけなら目で追えますが……」
 隣でフラを守るようにエスカラムサーベルを構えた少年も驚いている。
「室内に罠はありませんでした。……突然消えてしまうような仕掛けも、もちろん」
 和装の少女はそれまでずっと注意深く確認していた。それでも、この環境下で特に変わったことは確認できなかった。
「『お休みさない』、って言ってたね?」
「寝言は寝てから言ってほしいわよね~」
 確認するフラに眠そうな目をした少女がテンション低く返す。
「っていうか、私の言った通り棺桶で大人しく寝てることにしたのかしら?」
 だったら私の手柄よね、とか言いつつもやっぱりテンション低かったり。
「洗いざらい白状……はっ! もしかしたらもう眠いから早退しますって伝える人を待ってたのかも!」
 出入り口に罠を仕掛けていたニンジャガールかそんなことを思い付いていたり。
「あははっ。逃げる気満々かなーって思ってたらやっぱりだね~」
 別の窓からは、くしゃっとピンクの髪をかきつつ右眼帯の男がよいしょと屋内に入って来た。
「神出鬼没だったならこの場所にこんな砦はもともといらないんじゃないのかな?」
 さらに別の窓から入って来た少年は銀髪姿から黒い髪に変化しつつあった。覚醒状態から戻っているのだ。
「せっかく楽しく踊ろうかと思ったのですけど……」
 裏口からは細身のエルフが入って来た。
「舞台から捌けるのがとても上手ですこと」
 とにかく、八人の仲間と残った出入口に仕掛けた罠の包囲をすり抜けて伝説の盗賊団「ラパーチェ・ラーロ」のボス、ルモーレが姿を消した。
 ここで、唯一外にいた鞭とナイフを使う少女がやって来た。
「中央の方には逃げて来てないよ」
 この後、部屋の中を調べたが隠れていた様子もない。
 消えるように撤退したとしか言いようがなかった。

●テニヌ四天王
 後日。
「ここか? フラの嬢ちゃんたちが落した砦ってのは」
「ふうん。確かにすり鉢状になってて建物以外隠れるところもないな」
「で、我ら四人はここを占領維持してればいいのか?」
「いや。ここを砦として使えないよう破壊してほしいということだ」
 彼ら四人はテニスとマテリアルスキルを合わせて戦う「テニヌ四天王」。順にヘルマ、タケゾー、セッサク、ピューマという。
「土木工務店じゃないぞ、俺たちは」
 熱血ヘルマの不満。
「何、正面の門扉は壊れてる。後は裏口を壊せばそれでお終いさ」
 セッサクがそう言って裏門に近寄った時だった。
 ――ばんっ!
「何?」
 突然裏門が開き、巨斧を手にした鎧が襲い掛かって来た。
「おわっ」
「セッサク!」
 吹っ飛んだセッサクにいきり立ち、ヘルマが一気に間合いを詰めて牽制。
「おのれ、『大吹雪山おろし~』!」
 その後ろからタケゾーが頭上で巨大化させた打撃専用ラケットをぶんぶん振り回して、クラッシュ!
 が、敵の後続もすぐ後ろに来ていた。
「お前は?!」
 ピューマ、後続が鎧の敵だけではないことに気付き叫んだ!
「ラパーチェ・ラーロ頭目、ルモーレ。……『妖翼飛爪』!」
 陶器のような肌を持つ男、ルモーレが両手で羽ばたいた。
「おわっ!」
「む!」
 至近距離から両手を使ってナイフ四本を投げてきたのだ。
「超マテリアルヌンチャク!」
「超マテリアルスピン!」
 防いだセッサクとピューマ。が、敵の動きは速い。まるで最初の攻撃が移動のための行動だったかのように。
 ――ひゅん。
「ぐっ!」
 防御後に攻撃をと思っていたピューマ、気付けば斬られていた。
「よし、なだれ込め!」
「不味い。一旦引くぞ!」
 長剣を持つ鎧兵がぞろぞろやって来たのを見てセッサクが撤退を叫ぶのだった。

●出撃の時
「とにかく早い。一つの動作が次の予備行動になっている節がある」
 撤退したセッサクは後日、フラにそう説明した。
「そうだね。逃げ足も速かったよ」
「砦は明け渡したが……決着をつけに行くか? 村人は敵の全滅を依頼してきたが」
「もちろん。今度は逃がさないよ」
 フラ、立ち上がる。これ以上好きにさせないと。
 こうして再び砦に籠った歪虚軍団「ラバーチェ・ラーロ」を倒すべく仲間を募った。

 ただし、思い知ることになる。
 敵は、とにかく早いことを。
 村に到着して翌朝に森の偵察に出ようとした晩、村は夜襲を受けることになる。
 村の北側で火の手が上がった。

リプレイ本文


 依頼のあった村に到着した一行は、食事を済ませて寄宿する家屋のリビングに集まっていた。
「一応、夜襲を仕掛けることも可能……ですが、幕開けは夜明けでしょうか」
 ラル・S・コーダ(ka4495)は荷物を確認しつつ歌うように皆に聞いてみる。ランタンや松明を用意してきたようだ。
「そうだね」
 頷いたのは、ネーナ・ドラッケン(ka4376)。
「敵が消えるわけだから夜じゃない方がいい。……前回も暗い屋内だったし」
 ソファに深く沈み、持参したハンディLEDライトをもてあそびつつ理由を話す。
「それはそうとフラさん。四天王の人たちはもう帰ったの?」
 いるといないでずいぶん違うんだけど、と霧雨 悠月(ka4130)。ソファに浅く腰掛けている。
「うん。ボクたちと入れ替わりだって」
 フラ、悠月の前に立つと後ろ手に組んでにっこり。
「そう?」
 悠月、フラの様子に首をひねる。
「……ソファの数が人数分ないからよ」
 ここで、フラの背後からぬっとキーリ(ka4642)が現れ悠月にアップで迫って説明。
 わっ、と悠月がひるむ隙に横に回るキーリ。そのままお尻を向けた。
 ――むぎゅり。
「これでいいわ」
「相変わらず無茶するね」
 浅く座る悠月の背中と背もたれの間に腰掛けて満足そうなキーリ。
 それはそれとして。
「前回、ルモーレはどうやって逃げたのでしょうねぇ…?」
 むぅ、と考え込みながら弓月・小太(ka4679)がネーナに聞いていた。
「ニンジャ的には、影から影に移動する力があるとか地面にドンブラコと潜って移動できるとか……」
 長いソファに座るルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)が元気よく挙手しつつ話に割り込む。
「あはは。どれが正解だろうね~」
 同じソファの背もたれに両肘をついていたラン・ヴィンダールヴ(ka0109)が楽しそうに目を細めている。よほど興に乗る話だったようで、横から回って肘掛けに軽く腰掛けてピンクの髪を撫でつける。
 なおラン、髪をいじった方ではない手にはブランデーの瓶を持っていた。
「……」
 ルンルンの隣に座っていた瀬崎 琴音(ka2560)は、実はずっとその瓶が気になっていた。ルンルン越しにじっと無言で見る。
「んー? ああ、これは今飲むんじゃなくてさー。ちょっと考えがあって……あはは」
 ラン、にこやかに飲酒目的を否定した。
「……」
 琴音、無言。
 ただ、手にしていたハンディLEDライトを天井に方に向けてぺかー、と点けた。了解の意味合いらしい。
「まあ、手品のタネくらいは明かしたい所だね」
 ネーナも琴音に釣られてLEDライトをぺかー。
 この時、キーリ。
「ほら、そうやっていつまでも立ってないで。そこが空いてるから私みたいに座るといいわ」
 ぎゅうぎゅうと悠月に身を預けて場所を広げつつ、まだ一人立ったままのフラに声を掛ける。
 指差した先は、一人掛けのソファに座る小太。
「ふぇ?」
「ええっ?」
「楽しいわよ?」
 びく、と固まるだけの二人にキーリはふふふんと足を高く上げる。悠月はむぎゅりとさらに押しやられているが。
「そ、それじゃ……」
「あら?」
 フラがその気になったところで、ラルが立ち上がった。外を気にしている。
「騒ぎ……かな?」
 静かにしていた琴音もしっかりと外の音を聞き分けていた。立ち上がって窓に寄る。
「何か襲ってきたみたいだね……火の手も上がってる。ルモーレ、かな? せっかちな事だね」
 ネーナも素早く窓まで来て、助けを呼ぶ声と炎を確認し部屋を出る。琴音も追った。
 この時には外からはっきりと「鎧のバケモノが村の北で暴れてる、逃げろ!」などという村人たちの声が聞こえるようになった。
「んー、夜襲だねー?」
 ランも身軽に走り始める。
「まったく、礼節がなっておりませんこと」
 幕が上がるより前に踊りはじめるなんて、とラル。外へ急ぐ。
「あっちから攻めてくるなんておもわなかった…早く村の人たちを避難させないと」
「あいた……まったくなによぅ」
 もちろん悠月も出発。支えのなくなったキーリはごろん、ごちん。気付いた悠月が止まって手を伸ばす。
「あ。村人を逃がさないよう東側を狙ってる可能性があるよ! みんなで手分けしよう」
 その時ピンときて叫ぶ。
 全員、この言葉に頷く。



 村の北側では民家一軒が燃えていた。
 揺れる炎に照らされるのは、巨斧を手にした鎧だけの兵士たち。足元には倒され絶命した人たち。
 そして逃げそびれた老人などが。
 鎧兵に狙われてるぞッ。
「ひいっ!」
 ――ききっ、がしゃ~ん!
 老人が恐怖に目をつぶると同時に激しい音。
 恐る恐る目を開けると。
「間に合った!」
 横倒しに滑り込んだ魔導バイク「ゲイル」が鎧兵一体の足を払って倒し、何者かがのしかかって日本刀を突き刺していた。
 振り返る姿は、悠月。
「ほかの人は!?」
「い、生き残ったのはわしらだけじゃ」
「――許さない!」
 死人が出たと悟った瞬間、髪の毛が銀色になった。赤い瞳が怒りでらんと光る。
「もう許さない。全力で狩ってあげる!」
 悠月、刀を引き抜くと低い姿勢のまま背後に迫る敵の懐へ。振りかぶった巨斧の懐を赤い瞳が駆け抜け斬る。
 が、敵は倒れず振り返りざま反撃。体力があるようだ。
「やるね。……でもなんてことない。ほら、かかってきなよ!」
 傷に手を当て下がる悠月。
 敵四体、挑発されて動く。
 そこに!
 ――ごぉう。
 冷気の嵐が敵の横から吹き荒れた。
「悪いけど今夜はマジモードよ」
 そこにキーリがゆらりと登場。
「ま、魔女?」
「いや魔女モードじゃなくってマジ……」
 震える老人たちに突っ込むキーリだが、すぐに面を改めた。
「……ん、まぁ魔女を怒らせたらどうなるか分からせてあげる。だからすぐに逃げなさい!」
 村人を狙って動く敵に気付き、アースウォール。壁で守って先を促す。キーリ自身はつむじ風のように円を描き回り込んでブリザード。
「正義の味方ってわけじゃないんだけどね」
 正義杖もとい聖儀杖を振るいできるだけ敵を巻き込む。
 ただし、乱戦。
 体当たりで吹っ飛ばされるキーリ。
 追撃も覚悟するが、敵はそのまま崩れた。
「……正義の味方でもいいんじゃない?」
 悠月だ。
「さんきゅ、ユッキー」
 乱戦は続く。

 こちら、西側。
「んー…なんで村人から襲うんだろうねー?」
 ゴースロン馬「シリウス」に乗り急ぎながらランが疑問を口にする。
「さあ…でも騒ぎは大きくなってますね。こちらは静かですが」
 後に乗るラルが腰にランタンを結び付けながら返す。
「んー、ちょっと思ったんだけど、避難は固まってしてもらった方がいいんじゃないかなー…?」
「民家は多くありませんね……どうしましょう」
「いや、ほら、瞬間移動ができて、驚かせたいなら、僕は避難中に襲撃をかけるなーって。あはは」
 そんなこんなで民家に声を掛けて回る。
 その時だった。
「んー、何か森にいるー?」
 超越感覚で音を気にしていたランが反応した。
「行ってみましょう。皆さんはまず一番東の民家に固まって。全員揃ったら東に避難して!」
 ラルが村人に指示を出すと同時にランがシリウスを急がせた。
 近寄ると木々の間を一団が移動しているのが見て取れた。
 その時。
「んん、やるねー」
 ひひん、と立ち止まるシリウス。
 鞍上でランが自分に刺さった骨を抜き取っていた。投擲を避けなかったのは、後ろのラルを気遣ったため。
 ひゅんひゅんと闇に紛れて次の骨が来る。
「暗いと厄介だねー」
 ラン、ラルと下馬してシリウスを帰した。狙われたくはない。
「またお前らか?」
 その動きに合わせるように森から青白い顔の男が出てきた。
「ルモーレ!」
 ラル、叫び両手を頭上に上げ甲をそろえる。踊りの音楽待ちの構えだ。
「まったく、礼節がなっておりませんこと。幕が上がるより前に踊りはじめるなんて」
「準備は幕が上がる前にするもんじゃねぇのか?」
 ランを襲うと見せ掛けてラルに接近するルモーレ。
「挨拶くらいはするもんじゃないかなー?」
 ラン、ルモーレの背後に回る。
「無礼者には容赦しません
さあ、さあ、今度こそ
わたしと一緒に踊りましょう!」
 ラル、ソウルトーチで目立つように輝き幕開けとする。
 ざざ、と右に動いてアックスブレードをアックスに。横にぶうんと薙ぐ。
 下がったルモーレにランの竜槍が一直線に伸びる。これは海老反りでかわされる。ラルはアックスブレードをブレードに畳み突き。激しい連続攻撃も敵は楽しそうにダンスしている。もちろんラルも楽しそう。ランも楽しく。
 ――しゅんしゅん。
 時折響くのは骨兵たちの投擲。ルモーレの妖翼飛爪投擲も加わり円舞にラルとランの血がしぶく。
 ばっ、と距離を取るランとラル。呼吸を整えランが再び突っ込み……ラルは今度は骨兵に向かった。
「アドリブを利かせるのはいいが……こうなるよ?」
 ぐっさりとランに刺さる剣。ランの青い瞳が一瞬曇る。
 しかし!
「んー…『弱き者の為に戦う』ために必要だしねー」
 ふっ、と気分を変えたように瞳の色が元通り。刺さった剣から逃れると呼吸を整える。見る見る傷跡が治っている。
「ソロはそこまで。そちらはソロになりましたけど」
 ラル、アックスを振るいながら戻ってきた。ルモーレをラン一人に任せた代わりにほかの骨兵を激しくステップして全滅させていた。
 ――ざく……
「いいよ、一匹が村人を追ったし」
 戻りばなを逃さず狙ったルモーレ、ラルにぐっさり斬りつけていた。一匹逃していたことに愕然としたこともある。
「……次の舞台で会おう」
「じゃ、これでも飲んでいい踊りするんだねー」
 ラン、敵の撤退を予感しブランデーをルモーレにぶちまけるのだった。
 とにかく、二人は村人に向かった一匹を追って倒した。



 その後、南で。
「せっかちな事だね」
 ネーナが白い鞭を振るって闇の中、踊っていた。神秘的な光が光がひゅんひゅんと円弧を描く。
 かしゃん、かしゃんと骨兵たちが伴奏するように体をくの字に折っていた。
 敵の一団が、西から南へと大回りし封鎖していたのだ。
「無事かい? 走れるかな? 避難場所は東だから、間違えないようにね」
 村の方では琴音が東に急ぐよう住民を促していた。村を焼き尽くされると考えた村人が南からの脱出しようとしていたのだ。敵の手の平の上だが。
 刹那、ひゅんと鞭がうなる。
「そうはさせないよ」
 東に行こうとする住民を狙った敵をネーナが阻止する。反撃で投げられた骨は刺さったが構わない。乱戦なので気にもしない。
 何より、ここで住民を叩くという敵の目論見を阻止するのが先だ。
「怪我はないね? さあ、慌てずに東に向かって」
 東に逃げようとして転倒した子を抱き起した琴音が優しく声を掛ける。自らは投擲の骨に当たるが意に介さない。
 それだけ、余裕があった。
 余裕がなくなったのは……。
「はい……え、ルモーレがこちらに?」
 ラルからの魔導短電話に出た琴音がネーナに伝えようと顔を上げた時だった!
「遅くなってすまないな……こっちもいつものキャストか」
 ナイフの乱舞とともにルモーレ、登場。
「くっ。……劇場か何かと勘違いしてるね?」
 食らったネーナ、少し下がる。
「劇場だよ。だってこんなに楽しいじゃないか!」
 激しく剣で攻勢に出るルモーレ。ネーナ、完全に崩された!
「ネーナさん…」
 そこに琴音がデルタレイ。
 ルモーレ、影のような分身を作りこれを盾にするが一発くらい吹っ飛ぶ。そこへ琴音がジェットブーツ。琴音にしては派手に太刀「蛍丸」を振り回して詰める。
 ――ガツ、かつん……
 崩れたルモーレ、蛍丸を弾き反対の手に持つナイフで琴音の首を狙う。しかし、そこに「洞爺湖」の文字。愛用の木刀を構え切っ先を止めていた。
「全部予定の動きってか? こっちにゃもう用はねぇし、幕だな」
 ルモーレ、消えた。

 その時、東。
「あそこ、やっぱりいる!」
 叫ぶフラの指差す先で、長剣兵が村を出る道を封鎖していた。その数、五体。
「来ると予想していれば奇襲にはならないのですぅ。纏めて撃ち貫きますよぉ!」
 ロングボウ「ホークアイ」を構える小太。瞳がひときわ赤く鮮明になる。
「夜の鷹、舞うのです!」
 マテリアルを込めてつがえた矢が連続して飛んでいく。まず距離があるうちにできるだけ削るのだ。
 敵、もちろん小太目掛けてやって来る。
 その足元っ!
 ――どぽっ。
 突然足元がぬかるみになって止まる敵に、さらに予想外が襲い掛かる。
「とうっ!」
 横の木々から跳躍する影。扇のように開いた何かを散らすとそれぞれが雷となって長剣兵を襲う。
 ――ずざっ。
 ぱりり、っと敵が感電する間に着地する姿は、ルンルン。
 これを見て敵が方向を変えて襲い掛かろうとした瞬間、小太のホークアイから矢の雨の第二陣が横から襲う。
「……鷹は舞い降りた、なんてね♪」
 顔を上げたルンルン、きりきり舞いになる敵に向かって、てへっ。
「やあっ!」
 さらに突撃したフラが打撃武器をぶん回し。
「ルンルンさん、ルモーレに関する情報は?」
「とぅるるる……もしもし、ルンルンです」
 口伝符を取り出したルンルン、ほかに聞いてみる。
「ニンジャテレカで聞いてみたけど、南からこっちに向かってるんじゃないかって」
「はわっ!」
 言ったと同時に後方から小太の声。
 背後から忍び寄ってきたルモーレに刺されて吹っ飛ばされたのだ。血が派手にしぶく。
「こっちも同じキャストね。いいだろう、認めてやるよ」
 高速移動するルモーレ、たんと跳躍した。
「うわっ!」
「ルンルン忍法土蜘蛛の術……きゃん!」
 ルンルンが足止めの術に入ったが、ルモーレは長く宙を舞いフラを蹴って方向を変えルンルンにざっくり深く斬りつけた。
「……やっぱり俺にゃ待ちより攻めが似合うな。安心しろ。これでここらに籠るのはやめだ。今度は世界が舞台だぜ、うしゃしゃしゃ」
 ルモーレ、背中越しに高笑いして残った手勢とともに闇に消えるのだった。



 村人の被害は皆の働きでほとんどなかった。
「消える瞬間、足元から影のような黒いものを伸ばしてたね。……で、ブランデーとかの匂いを犬に追わせたら西方面にかなり離れた場所に出現したみたいだ」
 集まった仲間を前にネーナが言った。戦闘中に息を潜め、全力で敵を観察していたのだ。
「影?」
「……ちゃんと点けてた」
「影は光源とは反対に伸びてたよ。とにかく琴音が派手に戦ってくれて感謝だね」
 ルンルンに答え、ネーナは琴音に微笑むのだった。
「んー、でも連発はできないみたいだねー」
「こちらからは普通に逃げましたからね」
 ランとラルの考察だ。
「そういえば……」
「東からもですぅ」
 フラと小太も同意。
「……世界が舞台、か」
「客は選んでほしいわね」
 ぎゅっと拳を固める悠月。そしてキーリの機嫌は傾くだけ傾いていた。

 とにかく、村人の死者は最低限で抑えることができた。

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  • 皇帝を口説いた男
    ラン・ヴィンダールヴka0109
  • 感謝のうた
    霧雨 悠月ka4130

重体一覧

参加者一覧

  • 皇帝を口説いた男
    ラン・ヴィンダールヴ(ka0109
    人間(紅)|20才|男性|霊闘士
  • 漆黒深紅の刃
    瀬崎 琴音(ka2560
    人間(蒼)|13才|女性|機導師
  • 感謝のうた
    霧雨 悠月(ka4130
    人間(蒼)|15才|男性|霊闘士
  • 光森の舞手
    ネーナ・ドラッケン(ka4376
    エルフ|18才|女性|疾影士
  • 戦場の蝶
    ラル・S・コーダ(ka4495
    エルフ|27才|女性|闘狩人
  • メテオクイーン
    キーリ(ka4642
    エルフ|13才|女性|魔術師
  • 百年目の運命の人
    弓月・小太(ka4679
    人間(紅)|10才|男性|猟撃士
  • 忍軍創設者
    ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784
    人間(蒼)|17才|女性|符術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談ですぅー
弓月・小太(ka4679
人間(クリムゾンウェスト)|10才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2016/06/13 12:29:39
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/06/09 14:57:17