【闘祭】ダンス・ウィズ・ミー!

マスター:坂上テンゼン

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~7人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
寸志
相談期間
5日
締切
2016/06/17 15:00
完成日
2016/06/25 12:47

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●某日、ヘザー・スクロヴェーニの自宅にて
「紅茶破斬!」
「ぶげがっ!」
 ラシェル・シェルミエルはティーカップでヘザー・スクロヴェーニ(kz0061)を殴りつけた。
「半年以上音沙汰ナシとか舐めてるとか言いようがありませんね殺す」
「アイドルが語尾に殺すなんてつけるのはやめてくれ」
「今の私はただの怒れる女です」

 紅茶系アイドル、ラシェル・シェルミエルは主にハンター達を激励するためにヘザーがプロデュースしたアイドルである。
 プロデュースといっても資金もノウハウも芸能事務所も何もない状態でプロデュースなどと言い張っているので趣味の域と言って差し支え無い。
 一応ヘザーは人脈だけはあるので、知り合いを頼ってまともなライブを開いたことはある。北伐の際、北の大地で戦うハンター達を激励するためのライブは、成功に終わった。去年の10月の話である。
 それ以来活動をしてない。

「ギルドフォーラム'16、ですか」
「そうだ。特設ステージで何組か歌うことになっている。
 大きなイベントだからな、盛り上げに音楽は欠かせないだろう!」
「地道な活動もせずよくそんな大舞台に挑戦しようとか思いますね」
「そう言うな! ギルドフォーラムはハンターの祭り。そして私はハンター。なんの不都合もないじゃないか!」
「……まあ、そうですけど。一応、企画としては筋は通ってます」
「そうだろう!」
「……でも私はハンターじゃないのにいいんですか?」
「ところがステージに立つのは君だけじゃない」
「え?」

「ラシェル・シェルミエルfeat.ハンター有志!」

 ヘザーは語った……ラシェルのバックダンサーをハンター達から募る、という計画を。
 その内の1人は自分なのだと言う。

「猛虎紅茶山!」
「たわらば!」
 うわらばともたわばともつかない断末魔をあげてヘザーがラシェルのティーカップで殴られた。
 ちなみにヘザーが殴られ続けているのは油断しているから。
「真面目にやってください!」
「まかせろ。企画はこの通り」
「どこの世界にダンサーと兼業するプロデューサーがいるんですか!」
「バックダンサーもプロデューサーも裏方だからな、いるかもしれないぞ!」
『知られてないだけでいるかもしれない理論』だった。

「………………まあいいです」
 ラシェルはようやく興奮を鎮めて座った。
「もちろんヒカヤ紅茶は会場で振舞われるんですよね?」
「……ああ」
「ヒカヤ紅茶の広告も大々的に」
「……検討する」
「それからヒカヤ紅茶ポップとヒカヤ紅茶目録とヒカヤ紅茶ゆるキャラと……」
「すまん、メインはハンターだ」



●某日、ハンターオフィスにて
『ダンサー募集! 来たれハンター!』

「これでいいだろう!」
 ヘザーは満足顔で依頼書を受け付けに渡した。後ろではラシェルが成り行きを見守っている。
 受付の女性は受け取って読み上げた。
「なるほど、ギルドフォーラムのステージでバックダンサーをハンターから募集する、ですかー」

「なんだと!? おい、ふざけんなよ!」

 その時どこかから声が上がった。
 見れば生命力に溢れた視線がヘザーを見ていた。目鼻立ちが整っているばかりか、服装も洗練されている若い男。要するに文句無しのイケメンと言っていい男が何やら怒っていた。
 ヘザーに近づいてくる。

「おい、あんた」
「私の事か?」
 ヘザーは負けじと切れ長の目で見返した。
「あんただよ。ステージに素人を上げようとしてんじゃねえ」
「何……? いきなり失礼な奴だな。誰だ君は」
「ヘザーさん! まずいですよ……」
 職員はヘザーに耳打ちした。
「知らないんですか、彼はハンターでありながらアイドルとして活動中のグループ……『ヒュペリ』のヴェレスさんです!」
「何っ……?! ……知らんな」
「仮にもプロデューサー名乗っててそれでいいんですか?!」
 後ろのラシェルが怒った。彼女は知っているようだ。
「ギルドフォーラムのステージには俺達も立つ。見過ごせないんだよ……素人の発表会じゃねえんだ!
 ハンパな奴にステージを汚されてたまるかよ」
 ヴェレスの言葉にヘザーは言い返した。
「私はハンパな奴など集めない。やるからには全力でやる。そんなハンター達をこれまで何人も見てきた!」
「うるせえ。心意気だけで音楽は成り立たねえんだよ。その依頼、取り下げろ!」
 尚も言い合う2人。一歩も譲らない。

「止めるんだ」
 その時、ヴェレスの肩に手を置くものがあった。

「リーダー……」
「ごめんね、彼は悪気は無いんだ」
 気品の漂う、彫刻のように美しい青年だった。絶えず朗らかに笑みを湛えている。
「リベルさん! 『ヒュペリ』のリーダーの……!」
 受付がガタッとなった。
「彼はただ、軽い気持ちで始めることを許せないだけなんだ……わかってあげてくれ」
 リベルは紳士的な態度、優しい声で許しを請う。

「ヴェレスの言うことが正しいと思うがな」
 その男の後ろから、さらにもう一人現れた。いや一人ではない。四人いる。
 いずれもそれぞれ違う個性を持った美男子ばかりだ。
「プロ意識は一朝一夕で身につくものではない。ただ単にパフォーマンスができればいいわけではない」
 理知的な光を目に宿した男が言った。
「いいじゃないですか! みんなで歌えば楽しいでしょ!」
 全身に若さを漲らせた無垢そうな少年が、両腕を広げながら言った。
「うん。ケプリはいいことを言う。僕はもっとお近づきになりたいけどね。
 どうだい、これから食事でも。美味しい所を知っているんだが……」
 華やかな雰囲気、魅惑的な声色の男がヘザーとラシェルに誘いかけた。
「もー……ソールさんはすぐナンパに走るんだから! ね、ネイトさんはどう思いますか?」
「……興味ないな。
 俺は俺のステージをやるだけだ」
 野獣のような眼光、しかし洗練された雰囲気を持つ男が答えた。

「ミスラスさん……ケプリくん……ソールさん……ネイトさんも。
『ヒュペリ』集合じゃないですか!」
 受付が興奮しながらメンバーの名前を教えてくれる。
 そんな中六人は思い思いの言葉を口にしていた。

「ならば勝負だ!」

 突然ヘザーは立ち上がった。

「本番のステージで観客を沸かせた方が勝ち。敗者は勝者の言う事を聞こう! どうだ!?」
「何かと思えばてめえ! 対等に見てんじゃねー!」
「なんだ……格下相手に逃げ腰か?」
 ヘザーとヴェレスの視線が真っ向から火花を散らす。
「くっ……リーダー!」
 ヴェレスはここまで言わせていいのかとリベルを見る。
 ヘザーも見た。

「いいんじゃないかな。その方がお客さんも楽しめるし」
 あまりに朗らかに言ったので2人はガクッとなった。
「わーい! 対バンだね!」
「観客が喜ぶのならそれも良かろう」
「よし、そうと決まればデートしよう」
「…………くだらねぇ…………」

 そして四者四様の反応を見せるメンバー達。
 ヘザーはそれを見て、

「デートはせん」
 とりあえずそれだけは答えた。

リプレイ本文

●ヘザーの家にて、初顔合わせ
「ルドルフ・デネボラ(ka3749)です。よろしくお願いします」

「ミコト=S=レグルス(ka3953)です! 頑張ります……っ!」

「パトリシア=K=ポラリス(ka5996)ダヨ♪ ヨロシク!」

 友達同士だという三人は、それぞれ違った特色のある少年少女だった。

「水流崎トミヲ(ka4852)です……」
 そしてもう一人、戸惑った男がいた。

「あの、これってヒカヤ紅茶いっぱい買ったら握手できるとか、そういうのじゃ」
「何でそうなった」
 依頼人のヘザー・スクロヴェーニは真顔でトミヲを見返す。
 勘違いであっても、帰すわけにはいかない。
「私でよければいくらでも握手しますから、一緒に頑張りましょうね」
 ラシェル・シェルミエルは笑顔で言った。



 集まったのは四人。
 自己紹介を終えた一行は練習計画について会議を始めた。

「はーい! 『ガッシュク』しまショー♪」
 早速パティが合宿練習を提案した。
 囲んだテーブルには早速お菓子を広げている。
「それはいいな。しかし何処でやる?」
 ヘザーの家には練習するだけのスペースがない。家族も一緒に住んでいる。

 考えた結果、リゼリオ近郊の湖に島があり、そこにキャンプ場があるのをヘザーが思い出した。
「早速問い合わせてみよう…………どうした?」 
「い、いや何でも」
 トミヲが、ひきつった顔をしていた。
 彼は一度も女子とは目を合わせていなかった。




●練習開始
 リゼリオ近郊の湖に浮かぶ島のキャンプ場。
 さわやかな風の吹くここに到着したのはまだ日の昇りきらない頃だ。

 ルドルフが、ヘザーに練習計画について聞いた。
「食事と睡眠以外は全て練習だが?」――こんな調子だった。
「計画表、作ってきました」
 半ば呆れながらもルドルフは自作の計画表を見せた。
 トミヲ、パティ、ミコトはルドルフを賞賛し(そしてヘザーを責め)、それをもとに毎日の計画を練った。

 それが終わると、練習をはじめた。

 ヘザーとラシェルが予め考えていた振り付けを実際に見てもらい、それを覚える所から始まった。

 トミヲはすぐに覚え、一行を驚かせた。
 ルドルフも良く見て一通りこなせるようになる。
 一方、ミコトとパティはなかなか覚えられず苦戦していた。

「もう一回! もう一回お願いしますっ」
「しっかり見て」
「そこ違う。手はこう」
「あっ……」
「もう一回今の所」
「はい!」

 二人ともなかなか覚えられないながらも、懸命に取り組んだ。



 昼食の時間になった。
「水流崎さん、覚えるコツとかあるんですか?」
 食事中、ルドルフが聞いた。
「え? うーん……集中して見ることかな……」
 トミヲは答えたが、やはり視線は女子のほうを向いていない。
「お菓子食べながらじゃダメだね」
「あ、見てタ? タハハ……」
 パティはルドルフに指摘され、頭を掻いた。
「思ってたより難しいね。でも覚えられれば何とかっ」
「振り付けを覚えて終わりじゃないからな。
 見る者の心に響かなければ!」
 ミコトの言葉にヘザーが返した。
「偉そうに言える立場じゃないですよプロデューサー。
 いえ今はダンサーでしたか」
 ラシェルは茶を優雅に嗜みながら指摘した。


●ストイックな衝動
「ええと、確かこうっ……」
 食事が終わり昼休みの時間。
 皆が休憩を取っている中、ミコトは一人木陰にいた。
 目を瞑り、振り付けを思い出しながら体を動かしてみる。
(ええと……次はどうだっけ?)
 しかし、記憶の中の映像は所々抜け落ちている。
(せめてわかる所だけでも完璧にしなきゃ……)

「あっ?!」
 練習中、ミコトは誰かが来たのを感じた。
 目を開けるとルドルフが飲料水を持って立っていた。

「……やっぱりね」
 水をミコトに差し出す。

 ルドルフはミコトを止めるでもなく、彼女の個人練に付き合うのだった。



 昼休みが終わり、練習は夜まで続いた。

 結局ミコトとパティは振り付けを最後まで覚え切れなかった。
 みんなで作ったご飯をみんなで食べて、その日の練習は終わりとなった。



●三十路男の哀愁
 キャンプ場には小屋があり、男女に分かれて寝泊まりする。
 女子がピロートークに明け暮れている夜の事だった。

「水流崎さん、なんだか疲れてますか?」
 男性陣の小屋で、ルドルフはトミヲに声をかけた。

「ああ……ちょっとね」

「何か悩んでるんですか?」
 ルドルフはそういう事が聞ける少年だった。

「ルドくん……相談してもいいかな」

 疲れた笑みを見せてトミヲは語った。

 自分は女子が苦手で、見られていると緊張してしまう。
 自分の失敗で皆を落胆させるのが怖い、と。

「えーと、まず……女の子だから特別って事はないですよ」
 ミコトが幼馴染だったりするルドルフはトミヲよりは女子を知る機会があった。
「ミコとパティは俺の友達だけど、いい子です。きっと仲良くなれますよ」
「そうかなぁ……」
 トミヲは不安げだ。向こうに問題なくとも彼に苦手意識があった。
「何かきっかけがあればいいんですけど……」
「きっかけ……」
「そう。話題作りの。……たとえば料理とか?」




 次の日……

 その日の練習を終え、夕食を食べていた時の事だった。
 献立は皆で作ったカレーだ。

「あっ?! この風味……」
 ラシェルが声を上げた。

「味付けは水流崎さんがしたんだよ」
 ルドルフが咄嗟に反応して、トミヲに返事を振る。

「そう! 実はね結構いい隠し味になるんだよ! 紅茶カレー!」

 快活な笑顔で、言えた。

「紅茶カレー?!」
 ラシェルが目を見開いてトミヲを見る。
「トミヲ、スゴイ! 何でも知ってるんだネ!」
 パティが目を輝かせた。
「はっはっは何でもは知らないよ、知ってることだけ」
 場の勢いもあって流暢な返事を返せた。
 ヘザーやミコトも好意的な態度だ。
 ラシェルなど瞳を潤ませてトミヲを見ていた。
「それは、さすがに大げさじゃないかな……」



●ヘザーの注意がどう見ても口説いてるようにしか見えない件
 合宿三日目、朝。

「パティー」

「パティ! 起きろ」

「ハッ!」

 練習中だというのにパティは居眠りしていた。

「パティ……」

 慌てて立ち上がったパティにヘザーは詰め寄る。

 スッ!
 そして彼女の頭の横に手を突き出し、顔を近づける。
『壁ドン』みたいになったが、壁は無かったので『エア壁ドン』になった。

「君はとても素敵な女の子だ」
 そしてパティの耳元にささやく。
「だけど欲望に打ち勝つ心だけは備えていないね」
 それだけ言ってヘザーは離れた。

「パティちゃんを口説いてたんですか?」
 傍で見ていたミコトがヘザーに近寄って聞いた。
「まさか! 私は王女殿下一筋だ」
 無駄にポーズを決めてヘザーは応えた。
「ただ注意をしただけっ……」
「そうだが」
「……」

 ヘザーなりに『良い所を誉めてから注意をした』つもりだった。



 そして、午前の練習と昼休みが終わり……。
 昼の練習が後半に差し掛かった頃……。

「みんな! 走ロウ!」
 パティが何の脈絡も無く言った。

「何で?」

「パティは……ホントは頑張りたいんダ……
 ケド……自分を甘やかしちゃうカラ……
 自分に渇を入れなきゃ、ダメなんダヨ!」

 皆が彼女を見ていた。

「よし島内十週ー!」
「ヘザーさん?!」
 ヘザーはもう走り出していた。

 空には夕日が昇り、湖水を緋色に煌かせていた。

 島内を十週、皆で息を合わせて走った。



 走り終わって、皆が呼吸を整える中、パティは言った。
「ありがとう……皆! パティ頑張るヨ!」
 一行は一つのことをやり遂げ、連帯感が強まったのを感じていた。



●敵に塩を送る?
 合宿四日目。
 この頃になるとミコトとパティも振り付けを覚え、ダンスもこなせるようになっていた。
 彼女らはリズム感や表現力に秀でており、逆にルドルフとトミヲはその分野が苦手だった。
 とはいえミコトもパティも、ヘザーもラシェルも問題が無いわけではない。
 それぞれが課題を抱え、頑張っていた。

 そんな中、意外な人物が訪ねてきた。

「観客の気持ちになって考えろ。作曲者が伝えたいものが伝わるか?」
「ちょ、ちょっとミスラスさん」

 ヒュペリのメンバー、ミスラスとケプリだった。
 ミスラスは何を思ったか、挨拶も適当に済ませ指導し始めた。

 ミスラスは『アイドルの心得』を述べた上で、一人一人の演技を見て細かい指導に入った。
 それは食事を取るのも忘れて続いた……。

「ねえミスラスさん、そろそろ……」
「……む、もうこんな時間か。
 ではな。精進しろ」
 朝から始まった指導を三時まで続け、ミスラスは去っていった。
「……ごめんなさい。これ、差し入れです……リーダーから」
 ケプリはケーキの紙箱を見せる。
「でも、どうして? 競争相手なんじゃ」
 ルドルフが聞くと、ケプリは外を見て答えた。
「同じ観客に演技を見せるから、かな……
 ボクにはミスラスさんの考えが全部はわかりません。
 でも、観客を喜ばせることを第一に考えてる人です。
 リーダーも同じ理由で皆さんに頑張って欲しいんだと思います」

 それだけ言ってケプリは帰った。



●本番
 練習の日々は過ぎ去り、合宿は終了した。
 最終日の夜は打ち上げで盛り上がり、特別な連帯感ができたのを全員が実感していた。

 ギルドフォーラム当日、ステージ前――

「まだ俺達に挑戦する気でいんのか」
 ヴェレスだった。
 一行は、ヒュペリのメンバーと対峙していた。
 他のメンバーは黙って成り行きを眺めている。
 ネイトだけは目を閉じてイメージトレーニングに浸っていた。
「フッ、当然だ」
 ヘザーは不適な笑みを浮かべた。その一方で、

「私達は確かに素人です!」
 ミコトが一歩前に出た。
「けどそんなこと関係ない。勝ち負けよりもまず自分が楽しんで、結果的に他の人も一緒に楽しめれば、それが一番だと思いますっ!」

「ふん……その通りに行けばいいがな」
「行くよ、ヴェレス。
 じゃ、みんなも後でね」
 リベルはあくまでも朗らかに、ヴェレスの肩を引いてその場を後にした。


 一行は衣装に着替えた。

 ヘザーとトミヲは上流階級の紳士のようなスーツ姿。ルドルフは執事服、ミコトとパティはワンピースやゴシックドレスをメイド服風に着こなし、ラシェルは夜会ドレスをモチーフに、と瀟洒な装いで揃えられている。
 まるで貴族と若い使用人達のようだった。
 打ち合わせで衣装が決まったと同時に、ユニット名も決まったのだった。

 ――『ロイヤルハーツ』。ヘザーの案だった。

 やがてステージでの発表が始まった。
 ギルド街の一角に用意されたステージで出演アーティストが順番に演奏していく。
 多くの人達が集まっていた。

 ヒュペリの番が来た。
 ステージに出るなり黄色い声が飛ぶ。
「今日は来てくれてありがとう! それじゃ聞いてくれ『Dangerous scent』!」
 ヴェレスがマイクを掴むなり演奏が始まり、ヒュペリの世界が広がった。



 ヒュペリは文句無しにカッコいい男達だった。
 ルックスは勿論、歌唱力も抜群。
 動きが洗練されていて、すべてのポーズが決まっている。
 完成度の高いダンスに魅入っていたら、いつの間にか陶酔に我を忘れてしまう。

 演奏が終わると黄色い声が辺りを覆いつくした。
 女達の声が凄い。
 
 ヒュペリがステージから降りる。
 その時ヴェレスは挑発的な視線を送った。

 ヘザーは睨み返した。
 自分達の出番も近い。

●本番
「も、もうすぐ、出番か……」
「水流崎さん、そんなに緊張しなくても……」
 明らかに緊張しているトミヲ。ルドルフは冷静なように見える。
「そう……緊張すること……ない!」
「ヘザーさん、震えすぎ……」
「武者震いだッ」
 ヘザーはブルブル震えていた。
「モウ! たくさん練習したカラ大丈夫ダヨ♪
 ホラ! スマイルスマイル!」
 パティが緊張している面々に極上の笑顔を見せる。
「そうだね。やるだけやったんだ」
「So!」
 トミヲもヘザーも力強い笑みを返した。
 一方ミコトは今か今かとステージを見ている。
 皆に自分の演技を見せる事が楽しみで仕方がないのだ。
 それは、ラシェルも同じだった。


 そして、発表の時が来た。
 一行は並んでステージに出る。
 拍手が一行を迎えた。
 観客席から見てラシェルの右にトミヲ、ヘザー、左にルドルフ、ミコト、パティと並ぶ。

「聞いてください。ロイヤルハーツで、『夢と同じもので』」

 ラシェルが宣言する。
 空気が変わり、演技の世界へと入った。



 両腕をクロスさせ直立する六人。
 ピアノが哀しげな旋律を奏でる。

 ラシェルが歌い上げる。
 その声は遠くまで届く。

 1フレーズ歌ったところで曲調が変わった。
 楽器が入り、心臓を打つ激しい律動を刻む。
 
 ダンサーが動く。静から動へ。
 躍動する肉体。
 イメージは闘争。
 暗闇の時代を切り開く力を。

 嵐に向かう航海者のように、ラシェルは歌う。
 
 歌が途切れ、ダンサーが前に出る。
 段々と曲調が明るくなっていく。
 一人ずつが前に出て順番に演技をする。
 長い両腕、両脚で迫力のある動きを見せるヘザー。
 横幅のある体躯で機敏に動くトミヲ。
 少年らしい軽やかさで舞い踊るルドルフ。
 元気に飛び跳ねて愛嬌を振りまくパティ。
 銀のトレイを回しクールに決めるミコト。

 それらが終わりダンサーはラシェルを囲む。
 音楽に合わせて身体を動かす六人。
 ラシェルは天に向かって歌声を響かせた。
 それは生の喜びを、春の訪れを歌う歌。

 音の高まりが最高潮に達した時、ダンサー達は最後の演技に入った。
 ラシェルの前でしゃがみトレイを差し出したミコトに、パティがお茶を淹れる様な姿勢になり、
 その反対側で執事のルドルフが恭しく一礼する。
 後方、ラシェルの左右でヘザーとトミヲが雄雄しく立ち、
 かれらのステージは終わりを告げた。


●嵐、駆け抜けて
 真っ白に燃え尽きたトミヲ。ルドルフにもたれかかるヘザー。
 抱き合うミコトとパティ。目を閉じて浸るラシェル。
 誰もがやりきった表情だった。

「おい。ハッキリさせるぞ」
 ヴェレスの声。ヒュペリが来た。
 どうなっても悔いはない。
 かれらはそう思っていた。勝っても負けても――自分達はロイヤルハーツだ。



 結果は……



 あの時あの場に居たハンターオフィス職員をはじめとして審査員を頼まれた人間が何人かいたが、その多くは『比べられない』『どちらかを負けにしたくない』『どっちも善い』と言ったのだった。

「引き分けだね」
 リベルはあくまでも楽しそうに言った。この関わり自体を愛しむように。
 ヴェレスは何も言わない。だが異論は口にしなかった。

「それじゃ親睦を深めるためにごはん食べに行こうか?
 お洒落な店があるんだ」
 ソールは一見ナンパ師だが、実は皆と仲良くするのが大好きな博愛主義者だと一行が知るのは、間もなくのことである。

 夜が更けるにつれて、熱気は高まっていく。
 祭りの夜。
 今日は何かが起こりそうな、そんな予感がする。

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参加者一覧

  • カウダ・レオニス
    ルドルフ・デネボラ(ka3749
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • コル・レオニス
    ミコト=S=レグルス(ka3953
    人間(蒼)|16才|女性|霊闘士
  • DTよ永遠に
    水流崎トミヲ(ka4852
    人間(蒼)|27才|男性|魔術師
  • 金色のもふもふ
    パトリシア=K=ポラリス(ka5996
    人間(蒼)|19才|女性|符術師

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依頼相談掲示板
アイコン いざ、ダンスバトル☆
ミコト=S=レグルス(ka3953
人間(リアルブルー)|16才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2016/06/16 22:48:08
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/06/16 16:47:01