• 詩天

【詩天】あやおりのめ

マスター:鷹羽柊架

シナリオ形態
シリーズ(続編)
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,300
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/09/16 07:30
完成日
2016/09/21 21:33

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 満月を迎える上弦の月の夜、即疾隊は見回りを強化していた。
 辻斬り班が出てきて、取り逃がした後から血気盛んな隊士達にはやる気が満ち、倒す気に溢れる。
 それから一度、遭遇した見回りの隊士の面子は皆、腕自慢の隊士ばかり。
 鬼神の如く、月光の如く煌く髪を逆毛立ちつ形相の浪人と剣を合わせた。
 呼子笛を鳴らし、他の班と合流する。隊士の数、八人であった。
 辻斬りを囲んだ隊士達は強い者と戦える事に対して歓喜に震え、一人が駆けだす。
「でりゃぁああ!」
 気合を込め、一気に間合いを詰めて半身の構えで一気に隊士が辻斬りへと斬りかかる。
 隊士の刀の切っ先が鞘から離れるか否かの瞬間、辻斬りはもう鞘から刀身を抜いており、本能に危険を伝える凶刃の煌きが攻撃を仕掛ける隊士の視界に入った。
 刃は対峙した隊士の首を斬り、切り裂かれた斬り口より血液がとめどなく溢れる。
 ゆっくりと、隊士が刀を振るうこともなく、膝から崩れ落ちた。
 尚も辻斬りは他の隊士へと足を向け、容赦なく手にした刀で隊士達を攻撃していく。
 一人の隊士が何とか辻斬りの剣を受けるものの、その力は人間離れをしており、辻斬りがもう一度振り下ろすと、刀を折り、側頭部を割った。
 崩れるように倒れ込んだ隊士はぴくりとも動かなかった。
 短時間で腕自慢の隊士が二人も殺された。
「た、退避だ!」
 自分達では敵わないと察した生き残った隊士達が逃げ走る。
 尚も辻斬り達は即疾隊を狙って動き出す。
 曲道を三度曲って、一人が転んだ。
「こっちこい」
 転んだ隊士の手を引っ張ったのは亀田医師だ。
 近くの小道に積みあがっている薪の後ろに二人が隠れる。
 息を殺していると、辻斬りだろう影が小道に差し込んできた。
 ゆっくり、ゆっくりと狙いすますような辻斬りの歩みに隠れた隊士の鼓動が破裂しそうなくらいに高鳴っている。
 足音が聞こえなくなると、亀田医師は「手当てしてやる」と小道を進み、診療所で手当てをしてもらった。
「何故、亀田先生があそこに?」
 手当てをしてもらっている最中、隊士が亀田医師に尋ねる。
「呼子笛が聞こえてな。もしかしてと思って」
「危険だ……我々が束になっても敵わないのに」
「すまんのう」
 からから笑う亀田医師に助手の初名が「危ないって言いましたのに」と怒っている。
「そういえば、壬生とかいう隊士は元気かの?」
「壬生か、以前に辻斬りと対峙してから随分と塞ぎ込んでいたな。稽古も鬼気迫るものがあって、少々危うさがあると、副局長が心配していた」
「そうか。あやつは詩天の出身か?」
 亀田医師が更に尋ねると、隊士は知らないと答える。
「我々にとってそのような事は口にはせん。何故かはわからぬが、自然とそうなったな」
 即疾隊には様々な立場の存在がいる。
 触れてほしくない者もいるので、あまり過去は尋ねないのが暗黙の約束となっている事を告げた。
「そうか、それは悪かったな」
 亀田医師はそう言って隊士に包帯を巻いた。
「壬生がどうかしたのか?」
 隊士から見て、和彦は悪いやつではない。規律や礼儀を重んじる真面目な奴だ。
 一般人に対して失礼な態度をとるとは思えなかった。
「……出て行った娘に似ててな……」
「娘がいたのか。しかし、奴は男だぞ?」
「んなもん知っとるわ。何か、放っておけなくてなぁ」
 隊士からのツッコミに亀田医師はじろりと睨み付ける。
「娘さんは修業中の行きずりの剣士に恋に落ちて、亀田先生の反対を振り切って駆け落ちしたそうです」
 隊士と亀田医師の漫才のような会話を聞きつつ、初名が笑って補足をする。
 名も知らぬ剣士について行った娘に憤慨し、剣士が嫌いになったという。
 それから、この辺りの地理について亀田医師より話を聞き、隊士は屯所へ戻る。

 二日後、別の班が辻斬り犯と遭遇した。
 その日の班は即逃げ出してしまい、五人いた面子は二手に分けて逃げる。
 二手に分かれた片方は別の隊士より先日、亀田医師に教えて貰った抜け道を走って行く。
 しかし、辻斬りは先に回っており、二人の隊士を斬り殺した。
 屯所へ知らされた訃報に駆け付けた壬生和彦は無残な死体を見て唇をぎゅっと噛みしめる。
「……次こそは……」
 ぐっと、拳を握り締める和彦は殺気に満ちていた。

リプレイ本文

 屯所に集まったハンター達は隊士達の士気消沈ぶりを目の当たりにしていた。
 血の気の多い剣士達が束になっても敵わない力に気が落ちた現状。
 夜に備えて情報収集をしようと局長の部屋を出て行こうとするハンター達と和彦であったが、七葵(ka4740)とルイトガルト・レーデル(ka6356)に呼び止められた。
 逃がさないと言わんばかりに連れていかれた和彦は目を見開いたまま、どうしていいかわからないような表情で連行される。

 連れていかれた和彦の後姿を見た他のハンター達は診療所へと向かった。
 まず、カリン(ka5456)は亀田診療所の近隣の人達より話を聞こうと、近くを歩き回る。
 昼頃なので、人の通りはそこそこあり、診療所から出てきた患者を見つけた。
「どうかしたのかい?」
 カリンが声をかけると、壮年の男は穏やかに声を返す。
「亀田診療所の先生ってどんな感じですか?」
「ああ、いい先生だよ。真面目で金のない患者から金をむしり取るようなことはしないし、とても親切だ」
「……看板、新しい方ですよね?」
 外にかかっているものなので、雨ざらしになってはいるものの、年季が入っているとは思えない。
「先生は確か、千石原の乱より少し前に来た人だからね」
「え、他の土地のお医者さんだったのですか?」
 驚くカリンに男はそうだよと頷く。
「元は天ノ都近くの街で暮らしてたそうだよ」
 次に診察が終わっただろう女が診療所より出てきて、カリンと男の話に加わってきた。
 男が事情を話すと、女は「ああ」と頷いて話をしてくれた。
「なんでも、昔、勘当した娘さんを探すためにここに来たって話だよ」
 ここに来た時にはもう、墓の中って聞いたけどねと、女が言う。
「そうですかー。初名さんも一緒だったんですか?」
「初名先生は詩天のお人だよ。お母上が毒で殺されたらしくて、それがきっかけで医師を目指したらしい」
 父親、弟もまた、千石原の乱で命を落として天涯孤独の身になり、亀田医師のところで支持することになったそうだ。
「師であり、もう一人の父だと言っていたよ」
「まぁ、俺らからみれば、孫とじいさんだけどなー」
 くつくつ笑う二人だが、女の方が「孫といえば」と思い出す。
「即疾隊の壬生様、怪我した隊士を迎えに診療所に来てたけど、亀田先生と目元がよくにてるのよねー」
 女が言えば、カリンはじっと聞いていた。
 辻斬り犯と会った時の和彦の様子を思い出しながら。

 綿狸 律(ka5377)と皆守 恭也(ka5378)は街に出て聞き込みを行っていた。
 今は昼食時、定食屋は人が入り、賑やかな様子を見せている。
 ある一軒に入った二人はそれぞれの注文を頼み、暫し周囲の会話に耳を澄ます。
 話の内容は辻斬りの話であり、即疾隊が狙われているのではないかという話がちらほら聞こえてきた。
「ああ、見ない顔だね」
 そう言って来た定食の女将に恭也は少し緊張した面持ちで「はい」と固い声で返し、律は「ここのところ来たんだ」と笑顔で返す。
「辻斬りって、聞こえたんだけど、物騒だな。女将さんも気を付けろよ」
 わざと大きな声を上げた律に周囲が一度口をつぐむ。
「心配、ありがとうよ。でもね、今の辻斬りは即疾隊を狙っているようなの」
 その話から律が女将と話て即疾隊の評判の事や、辻斬り犯の話などを聞いていると、即疾隊の手当てをしているのが亀田医師であることの話へ突入する。
 亀田医師の剣士嫌いの話は浸透しているようであり、駆け落ちした娘を探すために詩天に来たのは知っているようであった。
「その娘って、どこの娘?」
 律の言葉に全員はぴたりと止まる。
 知らない様子の周囲を窺っていた恭也に一石を投じる。
「修行に出ていた剣士が嫁を連れて帰ったという話は聞いたことは?」
 恭也の言葉に周囲の客や女将はしらないと首を振っていた。
「二十年にはならん前かなぁ……よくは覚えてねぇが、葦原流の道場息子が修行に出てた時に娘を連れて帰ったって聞いたなぁ」
 店の厨房で料理を作っていた親爺が盆に小皿を載せて奥から現れる。
「あしはら……?」
 律が確かめるように口にすると、「死にかけた町道場だ」と親爺は返す。
「あそこの息子が道場継ぐ前に修行に出てて、別嬪の娘連れ帰ったのはちょっと噂になった。息子ができたって話だ。お前さんたちはもう少し待ってくれよ。これでもつまんどけ」
「お、おう。ありがとな」
「待ちます。その子は今……」
 恭也の言葉に親爺は盆を持ったまま考え込み、周囲を見る。
「葦原流は敗れた三条側の家だからよ……」
 言い淀む親爺の言葉に皆は察した。
 千石原の乱の後、敗れた三条側についた家の殆どが取り潰しなどの裁きがあったという。
 武家として潰され、官として仕えることができなくなった者達が浪人となって若峰の街にあふれた。
「もし、娘の子供が生きてたとしても、葦原の名は名乗れないだろうよ」
 親爺はそう言って奥へと引き込んだ。

 七葵とルイトガルトは和彦に鉢金を外させて連れて大通りより二本離れたところで昼食をとっていた。
 粗方食べ終わった頃に七葵が「壬生」と口を開く。
「前回、辻斬り犯と相対してた時、冷静さが欠けていた。感情のままに剣を振るっていたようにも見えた」
 淡々と告げる七葵の言葉に和彦は心当たりがあったのだろうか、黙ったまま七葵の言葉に耳を傾けていた。
「もし、壬生殿が多勢、例えば俺達を相手にとるならどのような剣を振るう?」
 びくりと、肩を震わせる和彦だが、ゆっくりと告げた和彦の言葉は、あの辻斬り犯と同じ行動だった。
「貴様とて察せない朴念仁ではないだろう」
 念を押すルイトガルトに和彦は恐れを振り切るようにぎゅっと目を瞑る。
「……ルイトガルトど……すまない、今、『俺』は心が乱れている。敬称も敬語を今は使わないことを許してくれ」
「かまわん」
 ルイトガルトと七葵と同時に応える。
「七葵は以前、俺に今の三条家の話を振ったことを覚えているか」
「初めて、即疾隊の依頼を受けた時か」
 七葵が言えば、和彦は頷く。
「俺は、仙石原の乱で今の三条家に父を、家族のように慕った兄弟子達の命を奪われた」
 小さな声で告白する和彦の目は暗く澱んだような気がした。
 今の三条家が即疾隊を作った。
 それを知って和彦は家族の敵のもとへ下る。
「ずっと、探していた。あの辻斬りを……何も情報は見つからなくて、数か月、若峰の街を彷徨い歩いていた。即疾隊ならば、情報が入るだろうと一縷の望みを託して……」
「……その髪は、世間の目から逃れるためか」
 ルイトガルトの言葉に和彦は頷いた。
「先代詩天に仕えていた剣士で凄腕がいたという話は知っているか」
 七葵が尋ねると、和彦は「詩天には腕利きの剣士も多い。それが、父の事だったら嬉しいな」と、寂しそうに笑う。
 初めて見た、和彦の笑顔だった。
 帰り道、ルイトガルトは和彦に声をかける。
「努力を怠らぬ貴様は遠慮しすぎている。甘えられたところで私は構わん」
「……だ、男子たるもの、そのような……」
 真っ赤になる和彦を見た二人は免疫なしかと思った。

 マシロビ(ka5721)は診療所に来ている患者が捌けるのを待っていた。
 亀田医師に「待ってもらっても邪魔だから手伝え」と言われてしまい、お湯沸かしや洗濯などをの雑務をさせられていた。
 初名にすみませんねと謝れつつ、マシロビは昼食のお握りと煮つけを頂いて食べていると、さっさと食べ終わった亀田医師が口を開く。
「で、話とは」
 マシロビは単刀直入に本題へ入った。
「辻斬りの事件で、無茶をなさっていると聞きました」
 今は即疾隊が標的になっている。
 いつ、辻斬りの標的が変わるのかわからない。
「気遣わせてすまんな」
 周囲の聞き込みを終えたカリンも中に入ってくる。
「亀田先生、こんにちは!」
 元気なカリンもまた、速攻で本題に入る。
「先生の娘さんのお話聞いちゃいました! どんな人ですか!」
 半端ない斬り込み隊長ぶりを発揮するカリンにマシロビは動じることなく亀田医師の方を向く。
「私も聞きました。いつぐらいに出奔を?」
 勢いに押されたかのように亀田医師はため息を吐いた。
「もう、十八、十九年前か……娘が危機を助けてくれた剣士に惚れたと言われたな。ワシは反対した。反対すれば、諦めると、たかを括っていた」
 娘は家を飛び出して剣士と共に行ってしまった。
 一年、二年も戻らず、亀田医師自身も後悔しながら、十五年は経とうとした時に娘の行方をようやく知った。
「若峰のはずれにある葦原道場の嫁になって、儂がここに来た時にはとうに死んでいたそうだ。道場へ行く気も失せ、儂は妻にも先立たれたし、娘の最期の地で診療所を開いた」
 寂しそうに俯く亀田医師の目がとても和彦に似ているような気がするとカリンとマシロビは思う。

 夕方、全員が屯所に戻ると、局長のの部屋に局長、副局長、和彦、ハンター達が集まった。
 口火をきったのは和彦。
「今回の辻斬り事件の犯人は、葦原流前当主、葦原若松の仕業です」
「葦原流……だと」
 反応したのは局長だけではなかった。
 今回、調査に出ていたハンター達が耳にしていた名前。
「お前は知っていたのか」
 副局長の前沢が言えば、和彦は確約はなかったと告げる。
「辻斬りに遭った者達の太刀筋は彼のものと判断し、私は一人で探し続けてきました。葦原流は三条秋寿側の剣士。葦原若松は千石原の乱で命を落としたと聞きましたが、前回遭遇した際、確信が持てました」
 和彦は今まで目を隠していた前髪をぐっと掻き上げて黒曜石の双眸を信頼……信用に値する者達へ晒した。
「今まで謀って申し訳ありませんでした。私は葦原流現当主、葦原和彦。辻斬り犯、葦原若松の息子です」
「千石原の乱にいなかったのか?」
 尋ねる恭也の問いに和彦は「父の使いで天ノ都にいました」と答えた。
「父は、あの戦いを若い剣士……武士を巻き込む事を憤っていました。せめて、私を生かすためにそうしたと思います」
 秋寿側の人間ならば、身分を隠す必要はあっただろう。
 今まで、彼は日の光をさけて辻斬りをずっと追って来た。髪を伸ばし、顔を隠して。
「……父……いえ、辻斬り犯の状態は覚醒状態だけではありません。斗跋という、葦原流の禁じ手を使っている状態です」
 禁じ手という言葉に皆が目を細める。
「負のマテリアルを体内に取り込み、身体能力を強制的に引き上げる技です」
「それって……」
 はっとなるマシロビに和彦はゆっくり頷く。
「歪虚化の道を辿ると言われてます。私には教えてもらえませんでしたが」
 一度静かになる場に律は唇を噛む。
「俺。壬生の親父さんでも、きょーやを傷つけた奴、許せねぇ」
「律」
 恭也が言えば、律は更に言葉を続ける。
「でも、親父さん死んだってのに、生きてるんだろ。何でこんなことしてるのか、訊かなきゃ気が済まない。壬生だってそうだろ」
「ええ」
 律の言葉に同意する和彦もまた同じ考えである。
「斉鹿さんの件も、彼が何者かに託されていた蜘蛛を倒したのも若松さんの同一犯行です。若松さんが何者かに動かされている可能性があります」
「まだ悪い奴がいる可能性あるんだな!」
 マシロビの言葉に律が反応すると、カリンが頷いた。
「局長、マシロビ様宛に手紙を持ってきたと、亀田診療所の初名医師がお見えです」
 障子の向こうより、摩耶の声が響く。
「行きます」
 マシロビが声を出すと、ハンター達もまた後を追う。
 正面玄関に初名が立っており、マシロビの姿を見つけると、ほっとした様子で手紙を差し出した。
 受け取ったマシロビには自身が手紙を受け取る理由に心当たりがある。
 亀田医師が剣士嫌いの即疾隊へ関与を考え、何か裏があるのではという結果に出て、亀田医師へ手紙をそっと渡していた。
 その返事が記されていた。
 内容は自身が娘を追って詩天へ来たこと。九代目詩天の跡目争いの千石原の乱で戦死した娘の夫の遺体を発見し怒りのままに遺体を切り刻もうとした時、歪虚に手を差し伸べられた。
 娘を奪ったこの地を蹂躙してやりたいと思い、手をとった事。
 歪虚は娘の夫の身体を再び動けるようにした。
 歪虚の名は三条秋寿と名乗った。
 協力している人間は他にもおり、斉鹿の事も記述していた。
 斉鹿もまた現詩天を担ぐ一派に怒りを持ち、いずれは、三条家へ強襲をかけようとしていたとあったが、即疾隊やハンターに気づかれて切った。
 言われるままに、娘の夫を辻斬り犯と仕立てていたことに悪いとは思っていない。
 しかし、娘の面影を持つ和彦と会い、歪虚に手を切ると伝えた。
 初名の事を頼む旨と、和彦の事を気遣う所で手紙は終わった。

 亀田医師が死を悟っているのは明白。
「亀田医師のもとへ」
 七葵がいうより早いか、ハンター達が駆け出す。夜道の中を走り抜けた先は亀田診療所。
 診療所は通り道の行き止まりであり、直線の道が長い。
 夕方の診療が終了すると共に閉められているはずの門が開かれている。
「皆、よけろ!」
 叫んだ律が構えているのは龍弓「シ・ヴリス」。
 診療所の侵入者へ牽制射撃を行う。
「きょーや、無茶すんなよ」
 律の願いを背で受けた恭也が牽制射撃を受けた侵入者……辻斬り犯を見据える。
 足元に転がっているのは亀田医師の姿があり、刃が赤に濡れていた。
 一人飛び出すわけにはいかない。
 精神を統一し、恭也が駆けだした。
 一撃目は横に一閃し、受け流させる。がら空きになる瞬間を見極めようとした恭也は辻斬りの次の動きに気づき、本能で危機を感じた。
 恭也を守る様に一気に間合いを詰めたのはルイトガルト。
 彼女の剣は辻斬りの刃を受けたが、衝撃の重さにルイトガルトは赤の瞳を見開き、踏ん張ろうとしたが、吹き飛ばされてしまう。
「父上、もうやめてくださいっ」
 和彦が叫び辻斬り…葦原若松を斬りかかる。
 もう言葉が聞こえないのは分かっている。しかし、叫ばずにはいられない。
 何とか若松の力を抑えているが、それも虚しく、次の剣撃で撃ち落とされてしまう。
 次の瞬間、若松へ繰り出されたのは七葵の防御を捨てた大上段の一撃が落とされて刀で受けられる。勢いが強すぎたのか、七葵の刀が滑ったが、捻りを加えて若松の左腕を傷つけた。
 七葵の刃が離れる瞬間、若松の刀が七葵のこめかみ狙って素早く繰り出されたが、カリンの防御障壁が発動された事を知らしめる光のガラスが七葵の視界を覆うが、七葵自身は吹き飛ばされてしまう。
「亀田先生!」
 マシロビが亀田医師の方へと向かうと少しだけ動いたところを確認した。
「……お、まえ……なん……と」
 亀田医師が見ているのは、和彦の方だ。
「……あなたの娘さんの息子です」
 素直にマシロビ告げる言葉に亀田医師は茫然としたのち、意識を手放した。
 再びハンター達を蹴散らかした若松は勝手口の方より逃げ出し、姿を消した。

依頼結果

依頼成功度成功
面白かった! 4
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

  • 千寿の領主
    本多 七葵ka4740
  • 即疾隊一番隊士
    マシロビka5721

重体一覧

参加者一覧

  • 千寿の領主
    本多 七葵(ka4740
    人間(紅)|20才|男性|舞刀士
  • 仁恭の志
    綿狸 律(ka5377
    人間(紅)|23才|男性|猟撃士
  • 律する心
    皆守 恭也(ka5378
    人間(紅)|27才|男性|舞刀士
  • 鈴蘭の妖精
    カリン(ka5456
    エルフ|17才|女性|機導師
  • 即疾隊一番隊士
    マシロビ(ka5721
    鬼|15才|女性|符術師
  • 戦場に疾る銀黒
    ルイトガルト・レーデル(ka6356
    人間(紅)|21才|女性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談しましょう!
カリン(ka5456
エルフ|17才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2016/09/15 21:42:02
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/09/11 22:48:45